親族による犯罪の特例と証人等威迫罪
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第18章 国家的法益|国家の存立・国交・国家の作用 ⑩/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
母がかくまった
図:設例
前回の最後に予告したとおり、今日は、親族による犯罪の特例と、証人等威迫罪を見ます。設例です。青年が、ひったくりをして逃げています。青年の母が、二つのことをしました。一つ目は、自分の家に青年を泊めて、かくまったこと。二つ目は、自分ではかくまえない事情があり、職場の同僚に頼んで、同僚に青年をかくまってもらったことです。一つ目の場合は、免除がありえます。ところが二つ目、同僚に頼んだ場合は、結論が変わりえます。母が自分でかくまえば免除がありうるのに、人に頼むと変わる。なぜでしょうか。答えは、今日の条文の趣旨を読んだあとで出します。
図:今日の地図
地図です。前の二回で、人をかばう103条と、証拠に手を加える104条を見ました。今日の前半は、その二つの罪を、親族が犯したときの特例、105条です。後半は、証人や参考人に圧力をかける罪、105条の2です。前半は、一本の物差しで通せます。その人自身に、身内をかばう事情があるか、です。後半の105条の2は、この物差しの反対側に立ちます。自分の事件であっても大目に見ない罪だからです。
105条の全文と句ごとの読み
図:105条の構造
条文です。期待可能性の回で、一度読んだ105条です。
条文刑法105条
刑法105条(親族による犯罪に関する特例) 前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
四つの言葉で読みます。一つ目は、前二条の罪です。105条の前の二つ、つまり、103条の犯人蔵匿等と、104条の証拠隠滅等だけです。二つ目は、犯人又は逃走した者の親族です。親族の範囲は、民法725条で決まります。六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族です。かくまわれた犯人との関係です。設例なら、母と青年の関係です。母の同僚は、青年とは親族ではないので、この条文の親族には当たりません。三つ目は、これらの者の利益のために、です。犯人の利益のためにした、ということです。親族である犯人のためではなく、専ら、その共犯者のためにした場合は、文言から外れます。親族である犯人の利益と、共犯者の利益が両方あるときは、大審院の判例は、105条を使わせませんでした。学説には、使えるとする見解もあります。四つ目は、その刑を免除することができる、です。罪は成立していて、刑を免除できる。免除するかどうかは、裁判官が事情を見て決めます。必ず免除する、ではありません。これを、任意的免除といいます。比べておきます。盗品等の罪の回で見た、親族の特例、257条は、その刑を免除する、と書いてあります。こちらは、必ず免除です。105条は、できる、です。具体例です。母が、息子が盗んだバッグを、証拠になると考えて川に捨てました。息子の事件は、母にとって他人の事件ですから、104条の証拠隠滅罪の対象です。ただし、母が息子の利益のためにした行為なので、105条の対象にもなります。
趣旨——期待可能性は「低い」
図:本人・親族・他人
趣旨です。親族が犯人をかばうのは、情愛からで、ある程度は無理もありません。つまり、期待可能性が低いのです。期待可能性の回で見たとおり、期待可能性とは、行為者本人に、その場の具体的な事情を前提として、違法な行為を思いとどまり、適法な行為を選ぶよう期待できることでした。その期待が、低い。だから、刑の任意的免除を認めます。期待可能性が無い、と書いてはいけないのですか。いけません。理由は、条文の効果から逆算できます。期待可能性が無いなら、責任が無く、犯罪は成立しないはずです。ところが105条は、犯罪の成立を前提に、刑だけ免除できる、としています。成立を前提にしている以上、期待可能性は、無いのではなく、低いのです。補強があります。105条は、かつては、罰しない、という規定でした。戦後の改正で、その刑を免除することができる、に改められました。効果の読み方が、変わったのです。三人を並べます。犯人本人が自分で逃げ隠れしても、そもそも罪になりません。期待可能性が、無いからです。親族は、罪は成立するけれど、刑を免除できます。期待可能性が、低いからです。全くの他人には、減る事情がないので、通常どおり処罰です。無いと低いの違いが、不成立と免除できるの違いに、そのまま出ています。
山場の入口——4つの共犯パターン
図:3つの問いと物差し
山場です。共犯が絡むと、誰に105条が使えるのかが問題になります。場面は四つです。親族が他人を唆す。他人が親族を唆す。犯人が親族を唆す。親族が犯人を唆す。四つとも、同じ三つの問いで解きます。一つ目は、誰が正犯で、誰が教唆か。二つ目は、正犯に罪は成立するか。三つ目は、105条が使えるのは誰か。教唆は、他人を唆して、犯罪を実行する決意を生じさせることでした。三つ目の問いを解く物差しは、一本だけです。冒頭の、身内をかばう事情があるか、を、趣旨の言葉で言い直します。その人自身に、期待可能性が低いといえる事情があるか。105条が刑を免除できる理由は、期待可能性が低いことでした。ですから、親族という形ではなく、その人に、この理由が当てはまるかを見ます。親族だからといって、自動的に免除されるのではありません。
パターン1 親族が第三者を唆した
図:親族が他人を唆す
一つ目は、設例の二つ目、母が同僚に頼んだ場面です。母が同僚に、息子をかくまって、と頼み、同僚がかくまいました。三つの問いで解きます。正犯は同僚、教唆は母です。同僚には、犯人蔵匿罪が成立します。同僚は青年の親族ではないので、105条は使えません。母にも、教唆犯が成立します。争いがあるのは三つ目、母に105条が使えるか、です。大審院の判例は、使えないとしました。親族である犯人をかばう目的でも、他人を唆して罪を犯させるのは、庇護の濫用で、法律の認める庇護の範囲を超える、という理由です。ただ、105条が、罰しない、という規定だった時代の判例です。いまの条文のもとでも、学説では、使えないとする見解が有力です。理由は、他人を巻き込んでいるからです。わが子を、自分の手でかくまってしまうのは、情愛から、無理もないことです。しかし、同僚に頼めば、同僚に罪を犯させることになります。頼まない、という道は残っています。ですから、他人を巻き込む点で、もはや、定型的に、つまり、この種の場面なら一般に、期待可能性が低いとはいえない、と考えます。反対に、使えるとする見解も考えられます。条文の文言上、母は、親族が犯人の利益のために犯したときに当たります。しかも、免除は任意です。事情に応じて裁判官が決めればよい、という考え方です。
図:設例の回収
設例に戻ります。一つ目、母が自分の家でかくまった場合は、母が犯人蔵匿罪の正犯です。犯人の親族が、犯人の利益のために犯したので、105条で、刑を免除できます。二つ目、同僚に頼んだ場合は、いま見たとおり、大審院の判例は使えないとし、学説でも、使えないとする見解が有力です。分かれ目は、他人を巻き込んだかどうか、です。ここで、逆の向きを考えてみてください。同僚が母を唆して、母が青年をかくまった場合、同僚に105条は使えるでしょうか?理由を、次のパターンで確かめます。
パターン2 第三者が親族を唆した
図:他人が親族を唆す
二つ目です。同僚が母に、息子さんをかくまってあげなよ、と勧め、母がかくまいました。正犯は母、教唆は同僚です。母には、犯人蔵匿罪が成立し、105条の適用を受けます。同僚にも、教唆犯が成立します。105条が使えるのは、母だけです。同僚には使えません。105条の趣旨は、親族間の情愛ゆえの期待可能性の低さ、つまり責任の減少でした。責任は、行為者に対する非難可能性です。共犯が絡んでも、責任は、一人ひとり別々に考えます。従属性の回の、違法は連帯的に、責任は個別的に、でした。母には、期待可能性が低い事情があります。同僚には、ありません。だから、同僚に免除はありません。条文の比較を一つ。盗品等の257条2項や、窃盗の親族相盗例の244条3項には、親族でない共犯については適用しない、と明文があります。244条は、その人だけに関わる事情だから、257条は、責任の減少が人ごとだから、でした。105条には、この明文がありません。そのため、同僚に使えないという結論は、条文から直接ではなく、責任は個別に考える、という解釈から導きます。
パターン3 犯人が親族を唆した
図:前回の問いの呼び戻し
三つ目は、犯人が親族を唆す場面です。前回の問いを、思い出してください。犯人が他人に、証拠を壊してくれ、と頼んだ場合、頼んだ犯人本人に教唆犯は成立するか。判例はどう考えるか?今回は、青年が母に、かくまってくれ、と頼み、母がかくまった場面です。正犯は母で、教唆は青年です。母には、犯人蔵匿罪が成立し、105条を受けます。問いは二段です。一つ目、青年に教唆犯は成立するか。二つ目、成立するとして、青年に105条を及ぼせるか。
図:犯人自身の教唆と105条
一つ目の問いは、前回と同じ考え方で解きます。判例は、成立を認めます。理由の一つ目が、防禦権の濫用でした。防禦権は、疑いをかけられた者が、自分を守ろうとして取る、自己防衛の自由です。自分で隠れる範囲は、大目に見られます。しかし、他人に頼んで、罪を犯す人を、新しく一人増やすのは、その範囲を超えます。前回の、二つ目の理由、学説の言う期待可能性から説明すると、こうです。自分で隠れるのとは違い、頼めば、母に罪を犯させることになります。他人に罪を犯させないことなら、期待できます。正犯である母に罪が成立する以上、それを唆す行為は、定型的に期待可能性が、ないとはいえない。だから、成立を認めてよい、と考えます。
パターン1とここで、期待可能性の言い方が違うのは、問いが違うからです。パターン1の母は、罪が成立する人で、問いは、刑を免除できるほど、期待可能性が低いか、でした。ここの青年は、犯人本人です。自分で隠れても罪にならないのは、期待可能性が、無いからでした。問いは、母に頼む場面でも、無いままか、です。だから、無いかどうか、を見ます。成立しない説も、前回のとおり、学説にあります。正犯としてさえ期待できないのだから、教唆はなおさら、という考えです。二つ目の問いです。成立を認めたとして、青年に105条を使えるか。学説では、使うのが妥当と考えます。正犯の母に刑の免除の可能性がある以上、教唆した青年にも、同じ可能性を認めるのが均衡だからです。成立しない説を採るなら、青年に教唆犯が成立しないので、105条の問題になりません。他方で、使えないとする考え方もありえます。条文上の主体は、犯人又は逃走した者の親族、です。青年自身は、この文言には当たらない、というものです。
パターン2では、同僚には使えないと言いました。青年に使うのは、矛盾しませんか。矛盾しません。物差しは、その人自身に、期待可能性が低い事情があるか、でした。パターン2の同僚は、全くの他人で、減る事情がありません。パターン3の青年は、教唆者ですが、正犯の母との間に親族関係があり、青年自身にも、期待可能性が減る事情があります。物差しは、一貫しています。
パターン4 親族が犯人を唆した
図:親族が犯人を唆す
四つ目です。母が青年に、どこかに隠れていなさい、と言い、青年が自分で隠れました。正犯は青年、教唆は母です。青年は、自分で隠れただけです。103条の条文は、蔵匿し、又は隠避させた者、でした。罰しているのは、犯人とは別の人が、犯人をかくまうことです。自分で逃げ隠れることを、蔵匿とも、隠避させたとも言えません。ですから、青年は、構成要件に当たらず、正犯は成立しません。正犯が成立しない以上、母の教唆犯も、成立しないと考えられます。前回の、逆向き、第三者が犯人に、自分の事件の証拠を壊させた場面と、同じ形です。共犯の処罰根拠の回で見た混合惹起説は、共犯自身の関与と、正犯の行為の、両方に違法性を求める考え方でした。二つのスイッチです。この場面では、正犯側のスイッチが入りません。制限従属性説でも、同じ結論です。105条は、使う前に、終わっています。
結論表と設例の完結
図:4パターンの結論表
四つの結論を、一枚にします。パターン1は、第三者が正犯、親族が教唆です。親族に105条が使えるかは、大審院の判例が否定し、学説でも否定が有力です。パターン2は、親族が正犯、第三者が教唆です。105条は、親族だけです。パターン3は、親族が正犯、犯人が教唆です。犯人の教唆は判例で成立し、105条は犯人にも及ぼすのが妥当、とされます。パターン4は、犯人が正犯で、構成要件に当たらないので、親族の教唆も成立せず、105条の問題になりません。板の下の凡例も大事です。パターン1の否定には、大審院の判例があります。105条が、罰しない、という規定だった時代のものです。パターン2とパターン3で105条が使えるかどうかは、学説です。パターン3の教唆犯の成立は判例、パターン4の不成立は、共犯の処罰根拠から導く結論です。冒頭の問いに答えます。母が自分でかくまえば免除できるのに、同僚に頼むと変わりうるのはなぜか。母が自分でかくまうのは、情愛から無理もない範囲の内側です。同僚に頼むと、同僚に罪を犯させます。頼まない、という道が残っています。ですから、期待可能性が低いとは、定型的にはいえない、と考えるのです。四つの場面を貫く物差しは、その人自身に、期待可能性が低いといえる事情があるか、でした。ここは、論文で論点になりえます。次は、証人に圧力をかける罪、105条の2です。
105条の2の全文と保護法益
図:105条と105条の2の比較
105条は、103条と104条だけに使える特例でした。次の105条の2は、その外側にある、別の罪です。まず条文です。
条文刑法105条の2
刑法105条の2(証人等威迫) 自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
保護法益は、第一次的には、刑事司法作用です。副次的には、証人その他の者の、安全と私生活の平穏です。事件を知っている人が、圧力を受けずに話せなければ、捜査も裁判も、正しく働けないからです。103条や104条との違いは、条文の最初にあります。自己若しくは他人の刑事事件、とあります。自分の事件でも成立します。103条と104条は、自分の事件は対象外でした。物差しで説明できます。自分が逃げ隠れる、自分の証拠に触れる、というのは、自分を守る行為です。大目に見られる範囲でした。ところが、証人は、他人です。圧力を受けると、証言が歪み、証人本人の自由や平穏も害されます。自分を守る範囲を、超えるのです。立法の背景として、暴力事件の被疑者や被告人の側が、被害者や目撃者に圧力をかける、お礼参りを防ぐために、昭和33年に作られた条文です。事件の当事者が圧力をかけるのが、典型的な場面でした。法定刑は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金です。103条、104条より、拘禁刑の上限が一年低く設計されています。
要件——客体・事件・3つの行為
図:客体と事件
要件です。まず、誰に対して、です。刑事事件の捜査又は審判に必要な知識を有すると認められる者、つまり、被害者、証人、参考人などです。その親族も入ります。親族の範囲は、民法のとおりです。認められる者、とあります。実際に知っているかどうかではなく、外から見て、知識を持っていそうな者であれば足ります。刑事事件には、被告事件と被疑事件のほか、将来、被疑事件となりうるものも含む、と解されています。起訴される前の、捜査の段階の事件も含む、とした下級審の判決があります。民事事件や行政事件は、前回の104条と同じ線で、対象外です。当該事件に関して、とあるので、その刑事事件に関連してでなければなりません。無関係な押し売りや取り立ての過程の強談は、文言からも対象外です。正当な理由がないのに、は、違法性の一般原則の確認です。正当な理由があれば罰されないのは当然で、要件を新しく足す言葉ではない、という意味です。
図:3つの行為
行為は三つです。面会を強請、強談、威迫。一つずつ見ます。面会を強請は、相手の意思に反して、面会を強いて求めることです。証人になる予定の人の勤め先に押しかけて、会ってくれ、と繰り返し迫るのが、例です。強談は、言葉で、強いて自分の要求に応じるよう迫ることです。参考人に、事件のことは忘れたことにしろ、と強く迫る場合です。威迫は、言葉や動作で気勢を示し、不安や困惑の念を生じさせることです。証人になる予定の人の自宅の前で、余計なことを言ったらどうなるか、と繰り返すのが、例です。顔を合わせる場合に限られるのか、文書を送るだけでも当たるのかについては、判断があります。
判例——文書の送付と威迫
図:事案の板
事案から見ます。暴行の罪で起訴された被告人が、裁判の係属中に、自分の事件の証人に宛てて、文書の写しを、配達記録郵便で郵送し、郵便局で閲覧させました。文書には、偽証罪で告訴するので覚悟しておくように、という趣旨のことや、謝罪も反省もなければ、刑事告訴も民事裁判も、永遠に続くと思う、という趣旨のことが、二枚にわたって書かれていました。第一審も原審も、威迫に当たると認めた事案です。最高裁は、次のように判断しました。
判例最高裁判所決定(平成19年11月13日・刑集61巻8号743頁)
文書の送付と威迫 「なお,刑法105条の2にいう「威迫」には,不安,困惑の念を生じさせる文言を記載した文書を送付して相手にその内容を了知させる方法による場合が含まれ,直接相手と相対する場合に限られるものではないと解するのが相当であり,これと同旨の原判断は相当である。」
上告を棄却する中で、なお、と述べた短い判示で、理由は示されていません。結論は、文書を送って内容を了知させる方法でも、威迫に当たる、直接向き合う場合に限られない、というものです。理由は、威迫の意味から考えられます。威迫は、不安や困惑の念を生じさせることでした。文書でも、読めば、不安や困惑は生じます。証人が圧力を受けずに話せるように、という保護法益から見ても、向き合ったかどうかで分ける理由がありません。読みどころは、了知させる方法、という言葉です。文書でもよいのですが、相手がその内容を知る方法であることが前提です。届いたけれど読まれなかった場合まで、この決定が答えているわけではありません。注意点が一つあります。この決定は、威迫についての判断です。面会を強請が、直接でなければならないかには、触れていません。
罪数と105条の位置
図:罪数と105条
最後に二点です。一つ目は、罪数です。威迫の行為が、脅迫の程度に達していれば、脅迫罪や強要罪との関係は、観念的競合です。一つの行為が、両方の構成要件に当たるからです。二つ目は、105条の位置です。条文で見たとおり、105条の前二条は、103条と104条です。105条の2は、105条の後にある別の条文です。ですから、家族が証人に圧力をかけても、105条は使えません。親族の特例の趣旨は、情愛ゆえに犯人をかばう場面を大目に見ることでした。証人に圧力をかける場面は、その趣旨の外にある、と考えられます。
弁別とまとめ
図:弁別ミニ事例
事例を五つ、考えてください。一つ目。母が自分の家で、青年をかくまいました。母は、どうなりますか。二つ目。母の同僚が母に頼み、母が青年をかくまいました。同僚に、105条は使えますか。三つ目。母が青年に、隠れていなさい、と言い、青年が自分で隠れました。母の教唆犯は、どうなりますか。四つ目。ひったくりで起訴された被告人が、自分の事件の証人に電話をかけ、余計なことを言うな、と繰り返しました。五つ目。その被告人の家族が、同じことを証人にしました。家族に105条は使えますか。使えません。105条の前二条は、103条と104条だけだからです。見るのは、誰が、誰のために、何をしたか、です。
図:今日の整理
まとめます。
⭐ 論文で書く規範:今日の4点 「① 105条は、103条・104条の罪を、親族が犯人の利益のために犯したとき、刑を免除できる。期待可能性は、低い。無い、ではない。」 「②共犯の4場面は、その人自身に、期待可能性が低い事情があるかで解く。」 「③ 105条の2は、自己の事件でも成立する。面会強請・強談・威迫。文書の送付でも威迫に当たる(判例)。」 「④ 105条は、105条の2には使えない。脅迫罪・強要罪とは観念的競合。」 (要点)
四つの場面を貫いたのは、冒頭の物差し、その人自身に、身内をかばう事情があるか、でした。そして、105条の2は逆に、自分の事件であっても大目に見ない罪でした。
参照条文
- 刑法105条
- 刑法105条の2