捜索・差押え③執行の方法と必要な処分
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第2章 捜査 ㉑/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
前編の金庫、今度は「どう開けるか」

前回、Bさんの301号室の中の、あの金庫まで、令状の効力が及ぶ、というところまで決まりました。でも、及ぶと決まっただけでは、まだ現場では何もできません。その金庫、鍵がかかっています。玄関のドアにも、鍵がかかっています。今日、Bさんは家にいますが、インターホンを鳴らして、「令状があります」と名乗った瞬間、中で証拠を流されるかもしれません。それに、鍵が開かなければ、壊していいのか。誰かを立ち会わせるのか。今、何時なのか。及ぶ範囲が決まった先に、まだこれだけの問題が残っています。今日は、ここを全部片づけます。
提示——なぜ見せなければならないか

まず、「誰の目の前で」の1つ目、提示です。根拠を見てみます。
条文刑事訴訟法第110条
刑事訴訟法第110条 差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。
これは、裁判所が主語の条文です。捜査機関が行う捜索・差押えにも、準用されます。前回、102条を準用していた、あの222条1項です。令状を見せる相手は、処分を直接受ける人、つまりその場所を管理している人です。住居なら住居主、会社なら責任者ですね。今日でいえば、301号室の管理権を持つ、Bさん本人です。本人が留守なら、「代わるべき者」に示せば足ります。これは、この後に出てくる立会人の条文が決めています。令状を見せる、その一手間が、大事な部分です。趣旨は2つあります。1つは、処分を受ける人の人権への配慮です。いきなり見知らぬ人が家に踏み込めば、相手は恐怖と混乱の中に置かれます。正当な令状に基づく捜査だと知らせることで、不安とトラブルを防ぎます。
2つ目は、手続の公正の担保です。令状を見せれば、相手は、「どこを、何を捜索するか」確認できます。捜査機関が、令状の範囲を超えていないか、相手の目でチェックさせる、という機能です。提示は、ただの儀式ではありません。
呈示の時期——原則と例外

110条にも、それを準用する222条1項にも、時期の明文はありません。いつでもいいんですか。違います。ここは解釈で決まります。原則は、執行に着手する前の呈示です。でも、例外があります。証拠を隠滅されるおそれがあり、執行の実効性を確保するためにやむを得ないときは、執行に着手した直後、短い時間のうちに呈示すれば足ります。トイレに流せる覚醒剤や、数秒で隠せる賭博の点数表です。玄関先で律儀に令状を読み上げている間に、証拠は流されてしまいます。提示の趣旨、つまり人権への配慮と手続の公正、この2つと、捜査の目的、真実発見と証拠の保全、この2つを、比較して決めます。
この「天秤にかける」という発想、覚えておいてください。今日、何度も出てきます。
「必要な処分」——「錠をはずし、封を開き」は例示

「誰の目の前で」は、ここまでにしておきます。次は、「どこまでの実力で」です。条文を見てみます。
条文刑事訴訟法第111条第1項
刑事訴訟法第111条第1項 差押状又は捜索状の執行については、錠を外し、封を開き、その他必要な処分をすることができる。公判廷で差押え又は捜索をする場合も、同様とする。
ここが大事なところです。「錠を外し、封を開き」は、その後に続く「その他必要な処分」の例示にすぎません。この条文が実際に及ぶ範囲は、もっと広いです。施錠された金庫を開けること、封をされた信書を開封すること、走行中の自動車を止めること、合鍵を使うこと、合鍵もなければ、錠前屋を呼んで鍵を開けさせることまで、含まれます。それも、「必要な処分」の1つです。もう1つ、条文を見ておきます。
条文刑事訴訟法第111条第2項
刑事訴訟法第111条第2項 前項の処分は、押収物についても、これをすることができる。
1項が、「これから開ける物」への処分だとすると、2項は、「すでに押収した物」への処分です。押収した未現像のフィルムを現像すること、押収した記録媒体からデータを読み出して、画面に表示したり、プリントアウトしたりすること、これも同じ条文で説明できます。新しい令状は、いらないんですか。いりません。押収そのものは終わっているので、その中身を見るための処分は、この条文がカバーします。
「必要な処分」の限界——比例原則という物差し

「必要な処分」って、なんでもできちゃうんですか。鍵が開かなければ、いきなりドアを破壊してもいいとか。そこが、今日の山場の1つです。鍵やガラス戸を破壊することも、「必要な処分」に含まれうる。でも、無制限ではありません。限界は、条文には書いてありません。解釈で立てます。捜索・差押えは、相手の権利・利益を侵害する処分です。だから、目的を達するのに必要な限度を超えてはなりません。ここでも、比例原則が効きます。任意捜査の限界で使った、あの比例原則です。あちらは、後から適法かを測る物差し。ここは、令状の中で使える実力の上限です。証拠隠滅の危険が際立って大きく、ほかに手段がないと言えるときに限って、強い処分が許されます。
⭐ 論文で書く規範:「必要な処分」の限界——比例原則による限定 「必要な処分」の適法性は、①証拠等が破棄隠匿されるおそれの大きさ・緊急性、②他に手段がないか、③処分による相手方の権利・利益の侵害の程度、この3つを権衡して判断する。 (判例の理解を学説が整理したもの(下記・マスターキー事件の理解として通説))
この3つを天秤に乗せて、釣り合っているかを見ます。一度、練習してみましょう。密造酒の製造工場と疑われる倉庫があります。鉄の扉に、何重にも鎖が巻かれています。中には、証拠となる原料を、すぐに下水へ流せる設備があります。考えてみてください。①証拠はすぐに流されてしまう、緊急性が高いです。②鎖を切る以外、中に入る手段がありません。③鎖を切っても、壊れるのは鎖と錠前だけで、建物自体は傷つけません。この場合は、工具で鎖を切断することも、「必要な処分」として許されると考えられます。
マスターキーで開けて入る——実際の判例を読む

この比例原則の考え方が、実際に使われた判例を読みます。冒頭の金庫の話に、そのままつながります。覚醒剤取締法違反の事件です。警察官は、被疑者が宿泊するホテルの客室に、捜索差押許可状を執行しようとしました。この被疑者には覚醒剤の前科があり、来意を告げれば、短時間のうちに覚醒剤を洗面所に流されてしまうおそれがありました。さっきの「原則、着手前に見せる」という話と、矛盾しませんか。そこが争点です。警察官らは、ホテルの支配人からマスターキーを借り受けました。そして、来意を告げることなく、施錠された客室のドアをマスターキーで開けて、中に入りました。令状を見せたのは、その直後です。
この措置が適法か、最高裁が判断しました。この決定は、大きく2つのことを言っています。1つは、マスターキーで開けることが、「必要な処分」として許されるか。もう1つは、令状を見せるのが、入った後でもよいか。この順に読みます。
判例最高裁判所第一小法廷決定・平成14年10月4日(刑集56巻8号507頁・百選A6・裁判長裁判官 深澤武久)
最高裁判所第一小法廷決定〈捜索差押許可状の呈示に先立つ入室措置〉 捜索差押許可状の呈示に先立って警察官らがホテル客室のドアをマスターキーで開けて入室した措置は、捜索差押えの実効性を確保するために必要であり、社会通念上相当な態様で行われていると認められるから、刑訴法222条1項、111条1項に基づく処分として許容される。……令状の執行に着手する前の呈示を原則とすべきであるが、前記事情の下においては、警察官らが令状の執行に着手して入室した上その直後に呈示を行うことは、法意にもとるものではなく、捜索差押えの実効性を確保するためにやむを得ないところであって、適法というべきである。
判旨は、「必要」と「相当」の2つの言葉で、比例原則の3つの要素を表しています。証拠隠滅のおそれが大きく、実効性を確保する必要があった。そして、マスターキーで開けるのは、器物を壊さない、相当な手段だった。マスターキーを使わず、いきなりドアを破壊して入っていたら、違法と判断される可能性が大きい、とされています。マスターキーでの解錠は、「より穏当な手段」だったから、許されたんです。「着手前の呈示を原則とすべき」だと、まず確認した上で、「証拠隠滅のおそれがあるこの事情の下では、直後の呈示も適法」だと判断しました。
この決定は、呈示の時期と、必要な処分の限界、2つの論点が、1つの事件の中に同居している例です。提示も、必要な処分も、結局は、捜査の必要性と、相手の権利・利益を、天秤にかけて決めます。今日の論点は、全部この1本の物差しで測れます。
偽計を用いた立入り——侵害の強さは4段階

もう1つ、「開け方」のバリエーションを見ます。宅配便や郵便配達を装って、対象者にドアを開けさせる手法です。開いた瞬間に、令状を提示して、執行に着手します。下級審の判決に、この手法を扱ったものがあります。
判例大阪高等裁判所判決・平成6年4月20日(判例タイムズ875号291頁)
高等裁判所判決〈宅配便を装った立入り〉 ごく短時間で証拠隠滅ができる薬物犯罪において、捜索に拒否的態度をとるおそれのある相手方であって、その住居の玄関扉等に施錠している場合は……開扉をめぐっての押し問答等をしている間に、容易に証拠を隠滅される危険性がある……。このような場合、捜査官は、令状の執行処分を受ける者らに証拠隠滅工作に出る余地を与えず、かつ、できるだけ妨害を受けずに円滑に捜索予定の住居内に入って捜索に着手でき、かつ捜索処分を受ける者の権利を損なうことがなるべく少ないような社会的に相当な手段方法をとることが要請され、法は、111条の「必要な処分」としてこれを許容しているものと解される。
ここでも同じ物差しが使われています。一般に、嘘をついて開けさせる方が、力ずくで開けるより、相手の権利・利益への侵害は小さい、と評価されます。「錠を壊してもいい」という条文の趣旨からすれば、それより穏当な嘘をつく程度は、なおさら許される、という発想です。

ここまでで、「開け方」の手段が4つ出そろいました。侵害の強さが上がる順に並べてみます。1つ目、錠前屋を呼ぶ。最も穏当です。2つ目、マスターキーで解錠する。器物は壊しません。3つ目、偽計で開けさせる。相手は気づかず開けます。4つ目、鍵やガラス戸を破壊する。最も強い実力行使です。必要性が高いほど、そして他に手段がないほど、右側まで許容されます。これが、「どこまでの実力で」の答えです。
立会人——密室での執行を防ぐ
図:301号室の玄関にBさんの家族が立ち会う様子とその根拠114条を示す板
ここから、「誰の目の前で」の話に戻ります。さっきの301号室、あの管理権を持つ人は誰だったか思い出せますか?Bさんです。そのBさんに、ただ令状を見せるだけでなく、執行の間、立ち会わせなければならない、という条文があります。
条文刑事訴訟法第114条
刑事訴訟法第114条 公務所内で差押状又は捜索状の執行をするときは、その長又はこれに代わるべき者に通知してその処分に立ち会わせなければならない。(1項)人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状又は捜索状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者をこれに立ち会わせなければならない。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。(2項)
「看守する」は、見張って管理している、という意味です。人が住んでいなくても、管理している人がいる建物や船は、ここに入ります。公務所なら、その長、または代わるべき者です。301号室のような住居なら、住居主、つまりBさん本人、または代わるべき者です。住居主も代わるべき者もいないときは、隣人、または地方公共団体の職員、たとえば市役所の職員などを立ち会わせます。この順番、住居主本人から遠い順に補充されていくことに注目してください。誰の目もない密室で捜索・差押えが行われれば、何が行われたか、検証しようがありません。立会人は、密室化を防ぎ、手続の公正さを担保する役割です。さっきの「見せる」の趣旨、覚えていますか。
手続の公正の担保、でしたね。提示と立会人は、「誰の目の前で執行するか」という、同じ趣旨でつながっています。
女子の身体の捜索と、立ち会えない2人

立会人には、もう1つ、特別なルールがあります。
条文刑事訴訟法第115条
刑事訴訟法第115条 女子の身体について捜索状の執行をする場合には、成年の女子をこれに立ち会わせなければならない。但し、急速を要する場合は、この限りでない。
女性の身体を捜索する場面では、捜索に乗じた不当な性的行為を防ぐこと、そして、異性に身体を触れられる羞恥心や不快感を軽減すること、この2つが趣旨です。ただし、急速を要する場合は例外です。例えば、目の前で証拠を飲み込まれそうで、成年の女子を呼んでいる時間がない、というような場面です。ここが、今日、一番誤解されやすいところです。被疑者には、立会権はありません。
条文刑事訴訟法第222条第6項
刑事訴訟法第222条第6項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押え、捜索又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。
「できる」というのは、捜査機関の裁量です。被疑者の側から、「立ち会わせろ」と要求できる権利ではありません。ここが、もっと大事なところです。弁護人にも、立会権はありません。裁判所が行う捜索・差押えについては、弁護人の立会権を定めた条文があります。でも、捜査機関が行う捜索・差押えに、この条文は準用されていません。弁護人に立会権がないことの直接の根拠は、「そういう条文がある」ことではなく、「準用リストに入っていない」ことです。この点は、後でもう一度まとめて見ます。捜査には、密行性、つまり事前に知られずに進める必要性があります。弁護人に立会いを認めてしまうと、執行の日時や場所が事前に漏れるリスクが生じます。
実務上、権利として要求はできませんが、捜査機関の判断で立ち会わせる運用そのものを妨げる規定はありません。
出入禁止——現場に線を引く

次は、「誰の目の前で」の、うら側です。現場そのものに線を引く話です。立会人が、「誰を中に入れるか」を決める条文だとすれば、112条は、「誰を入れないか」を決める条文です。同じ「誰の目の前で」の軸の、おもてと裏です。
条文刑事訴訟法第112条
刑事訴訟法第112条 差押状又は捜索状の執行中は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止することができる。(1項)前項の禁止に従わない者は、これを退去させ、又は執行が終わるまでこれに看守者を付することができる。(2項)
家族であっても、居住者本人であっても、出入りを禁止できます。目的は、証拠の持ち出し、つまり隠滅を防ぐことと、現場の混乱を防ぐことです。従わない人は、退去させたり、執行が終わるまで看守者を付けたりできます。この「看守者」は、さっき出てきた、建物や船を管理している人とは別です。退去に応じない人を見張るために、その場で付ける人です。
夜間執行の制限——時計の針も条文が決める

最後は、「いつ」の話です。条文を見ます。
条文刑事訴訟法第116条
刑事訴訟法第116条(夜間執行の制限) 日出前、日没後には、令状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、差押状又は捜索状の執行のため、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入ることはできない。(1項)日没前に差押状又は捜索状の執行に着手したときは、日没後でも、その処分を継続することができる。(2項)
ただし、例外があります。日没前に着手していれば、日没後も続けられます。途中で打ち切る必要はありません。記載がなくても、夜間にできる場所はないんですか。あります。もう1つ条文を見ます。
条文刑事訴訟法第117条
刑事訴訟法第117条 次に掲げる場所で差押状又は捜索状の執行をするについては、前条第一項に規定する制限によることを要しない。一 賭博、富くじ又は風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所 二 旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入りすることができる場所。ただし、公開した時間内に限る。
賭博場のような場所は、そもそも夜に動く場所ですし、旅館や飲食店は、公開している時間内なら、誰でも出入りできる場所だからです。なぜ、そもそも夜間執行が制限されるか、考えてみてください。夜間は、住居の平穏、つまり就寝中の私生活を乱される度合いが大きい時間帯です。その利益と、証拠保全の必要性を調整したのが、この2つの条文です。
222条の準用、もう一段深く

今日見た条文には、実は共通点があります。全部、222条が準用しています。ここを、もう一段正確に見ておきます。
条文刑事訴訟法第222条第1項
刑事訴訟法第222条第1項(準用部分抜粋) 第百十条、……第百十一条第一項前段及び第二項、……第百十二条、第百十四条、第百十五条、……の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について、……それぞれ準用する。
111条1項は、「錠を外し、封を開き、その他必要な処分をすることができる」という前段と、「公判廷で差押え又は捜索をする場合も、同様とする」という後段に分かれます。後段は、準用されないんですか。されません。後段は、裁判所が公判廷で直接捜索する場面の規定なので、捜査機関の執行には、そもそも場面が違います。さっきの、弁護人の立会権の113条は、このリストにありましたか。ありません。もう一度、見てみてください。110条、111条、112条、114条、115条はあるのに、113条だけ、抜けています。これが、弁護人に立会権がないことの、条文操作そのものです。「113条という規定がない」のではなく、「113条はあるが、この準用リストに入っていない」のです。
116条と117条は、222条1項のリストにはありません。どちらも、222条1項ではなく、222条3項で準用されています。
条文刑事訴訟法第222条第3項
刑事訴訟法第222条第3項 第百十六条及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする差押え又は捜索について準用する。
短答式で、「222条1項で準用される条文をすべて挙げよ」というような出題があったとき、116条・117条を混ぜてしまうと、誤りになります。今日、見た条文を整理すると、こうなります。222条1項で準用されるのは、110条、111条1項の前段と2項、112条、114条、115条。222条3項で準用されるのは、116条と117条。そして、113条は、どちらにも入っていません。
今日のまとめ

今日の内容を振り返ります。冒頭で立てた、3本の軸に沿ってまとめます。1つ目、「誰の目の前で」。令状は、処分を受ける人に示さなければならず、その趣旨は人権への配慮と手続の公正でした。立会人は、場所の種類に応じて振り分けられ、密室化を防ぎます。逆に、執行中は、誰であっても出入りを禁止できます。立ち会わせる人と、遠ざける人。どちらも、「誰の目の前で」の話です。ただし、被疑者に立会権はなく、弁護人の立会いを定めた113条は、そもそも準用されていません。2つ目、「どこまでの実力で」。「必要な処分」は、「錠を外し、封を開き」という例示にとどまらず、破壊にまで及びうる。でも、比例原則によって、証拠隠滅のおそれの大きさ、他に手段がないか、相手への侵害の程度、この3つで限界づけられます。錠前屋を呼ぶ、マスターキーで解錠する、偽計で開けさせる、破壊する、この4段階のどこまでが許されるかは、この物差しで測ります。3つ目、「いつ」。呈示は原則として着手前ですが、証拠隠滅のおそれがあるときは、着手直後の呈示も許されます。さっきのマスターキーの決定は、この2つの論点、つまり必要な処分の限界と、呈示の時期を、1つの決定の中で示していました。夜間執行は、令状に記載がなければ原則できませんが、日没前に着手していれば継続でき、賭博場や旅館・飲食店にはそもそも制限がかかりません。そして、これらすべてが、222条という1つの条文の、1項と3項に準用の根拠を持っています。
提示も、必要な処分も、立会人も、夜間執行も、全部「必要性と権利・利益の権衡」という、同じ物差しで測れるんですね。条文はバラバラに見えても、そこに流れている発想は1本です。
参照条文
- 刑事訴訟法第110条
- 刑事訴訟法第111条第1項
- 刑事訴訟法第111条第2項
- 刑事訴訟法第114条
- 刑事訴訟法第115条
- 刑事訴訟法第222条第6項
- 刑事訴訟法第112条
- 刑事訴訟法第116条
- 刑事訴訟法第117条
- 刑事訴訟法第222条第1項
- 刑事訴訟法第222条第3項