捜索・差押え⑧逮捕に伴う捜索が令状なしで許される理由
問い:逮捕の場面では、なぜ令状なしで捜索・差押えができるのか。被疑者がまだいないうちに始めた捜索も許されるのか。
骨組み
- 1憲法上の例外と:憲「第三十三条の場合を除いては」→ 。逮捕は通常・現行犯・緊急のどれでもよい。主体は検察官・検察事務官・司法警察職員(私人は入らない)。令状は不要()。緊急逮捕で逮捕状が得られなければ差押物は直ちに還付(返す・)。=検察事務官・司法警察職員が勾引状・勾留状を執行する場合に2号・3項を準用(被疑者に対するものなら1号も)
- 21号と2号:1号=住居等に入り被疑者(人)を捜索(第三者の家でもよい)/2号=逮捕の現場で差押・捜索・検証(物)
- 3令状なしで許される根拠(学説):緊急処分説=抵抗・逃亡・証拠隠滅を防ぎ証拠を保全する緊急の必要/相当説=逮捕の現場には証拠が存在する蓋然性が高く、令状を請求すれば発付される。判例は相当説に基づくと説明される
- 4両説共通の限定:差し押さえられるのは逮捕の理由となった被疑事実に関する物だけ
- 5「逮捕する場合」(最大判昭36・6・7):単なる時点よりも幅のある逮捕する際。時間的接着は要るが、逮捕着手時の前後は問わない → 不在中に始めた捜索も、接着して逮捕がなされれば適法(原審の「着手後に限る」を破棄)
- 6判例への批判と限定:判例の事案で被疑者が帰宅せず逮捕できなかったなら相当説からも違法とするほかない → 判例の基準は緩やかすぎるとの批判(解説書)。限定=逮捕すべき者が現在し確実に逮捕できる可能性を要する(解説書の著者が妥当とする)
- 7被逮捕者が現場からいなくなった後の捜索:相当説なら、被逮捕者が逃走しても現場の捜索を続けられると考えうる/緊急処分説なら、警察署へ連行した後に住居を捜索することはできない
- 82号の限界:できるのは差押・捜索・検証だけ。リモートアクセス・電磁的記録提供命令は令状による処分()→ スマホ本体は(被疑事実に関係する限り)無令状で差し押さえられるが、操作してサーバから複写はできない
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。この回の出題で【見解】が2つ並ぶとき(予備R3-16・R5-17・R8-24・司法H22-24)は、どれもⅠ=証拠存在の蓋然性(相当説)・Ⅱ=隠滅防止の緊急の必要(緊急処分説)の順(予備R3-16のⅡは「逮捕者の身体の安全を図る必要」も含む)。
1憲法上の例外と条文
- 憲:住居・書類・所持品について侵入・捜索・押収を受けない権利は、「第三十三条の場合を除いては」、正当な理由に基いて発せられ、捜索する場所・押収する物を明示する令状がなければ侵されない → 例外を条文自身が置いている。
- 外れるのは捜索・押収の令状の要求だけ。逮捕そのものには、現行犯を除き逮捕状が要る(憲)。
- :検察官、検察事務官又は司法警察職員は、により被疑者を逮捕する場合(通常逮捕)、現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、1号・2号の処分ができる。により逮捕する場合(緊急逮捕)も同様(1項後段)。
- :第1項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
- :1項後段(緊急逮捕)の場合に逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付(返すこと)しなければならない。後段:(電磁的記録を移した記録媒体などで留置の必要がないものを、差押えを受けた者などに交付し、又は複写を許す規定)を、この場合に準用。通常逮捕・現行犯逮捕にはこの規定は無い。
- :検察事務官又は司法警察職員(検察官は入っていない)が勾引状・勾留状を執行する場合に、1項2号と3項を準用。被疑者に対して発せられた勾引状・勾留状なら1号も準用。
- 判例(最大判昭36・6・7)は、憲の例外の理由をこう述べる(項目3)。
出題捜索差押えを行うには、必ず捜索差押許可状が発付されていなければならない(×)
出題逮捕状により逮捕する場合には、逮捕に伴う令状によらない捜索差押えはできない(×)
出題現行犯人を逮捕した私人は、逮捕の現場で令状によらずに捜索差押え(差押え)ができる(×)
出題緊急逮捕に伴い無令状で差し押さえたが逮捕状が発付されなかったときは、差押物を直ちに還付しなければならない(○)
- 捜索差押えには必ず令状が要る、とする形(予備H27-17-ア)
- 逮捕状による逮捕(通常逮捕)では、逮捕に伴う無令状の捜索差押えはできない、とする形(予備H30-17-ア)
- 現行犯人を逮捕した私人も、逮捕の現場で無令状の捜索差押えができる、とする形(予備R1-16-オ・予備R6-19-オ・司法H18-23-5)
- 逮捕の場面は令状主義の外にある、とする形(外れるのは捜索・押収の令状だけ。逮捕自体には逮捕状が要る=現行犯を除く)
21号と2号条文
- 1号:人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること → 捜す対象は人。被疑者本人の家に限らず、被疑者が逃げ込んだ第三者の家でもよい。
- 2号:逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること → 捜す対象は物(検証も入る)。実務での活用が多く、論点も多いのはこちら。
- 違いは対象だけではない:1号は「住居・邸宅・建造物・船舶内に入り」、2号は「逮捕の現場で」と場所の書き方も違う。4項での準用も、1号は被疑者に対する勾引状・勾留状のときだけ。
- 1号で入った家で証拠品を探す根拠は1号には無い(物の差押え・捜索は2号)。
通常逮捕しようとしたら、被疑者が隣のマンションの知人宅に駆け込んだ → 警察官はその部屋に入って被疑者を捜せる(1号)。捜せるのは被疑者という人で、その部屋の物を差し押さえる根拠にはならない。
逮捕状を示して被疑者を自宅前の路上で逮捕し、その場で持っていたバッグを開けて血の付いたシャツを差し押さえる → 2号・3項で、捜索差押許可状は要らない(予備H28-16-エ)。
出題逮捕の際に被疑者のバッグを開けて中のシャツを差し押さえるには、捜索差押許可状の発付を受ける必要がない(○)
出題現行犯逮捕した乙が所持していた覚せい剤を押収するには、差押許可状の発付を受ける必要がある(×)
出題所持品検査で覚醒剤を発見したが任意提出を拒まれた場合、差押許可状を取得しない限り差し押さえることはできない(×)
出題覚醒剤所持で逮捕した際に押収したポリ袋と財布は、いずれも押収に令状の発付を受ける必要がある(×)
- 覚醒剤所持で現行犯逮捕した被疑者の覚醒剤でも、押収には差押許可状が要る、とする形(予備H25-15-ア:逮捕の理由になった事実の証拠物なので2号で令状なしに押収できる。乙から任意提出を受ければ、の「任意に提出した物」として領置する道もある)
- ポリ袋も財布も、どちらも押収に令状が要る、とする形(予備R7-20-オ:×になるのはポリ袋の側=逮捕の理由になった覚醒剤所持の証拠物なので2号で令状なしに押収できる。財布は逮捕の理由と別の強盗傷人の証拠で、2号で取れるかは項目4の限定にかかる=この肢は財布の扱いを決めなくても×になる)
- 任意提出を拒まれたら令状を取るしかない、とする形(予備R2-14-オ:令状なしで差し押さえる道は逮捕に伴う2号。覚醒剤と確認でき現行犯逮捕の要件を満たせば所持の事実で現行犯逮捕でき、逮捕すればその現場で令状なしに差し押さえられる。逮捕しないまま令状なしで差し押さえることはできない)
3令状なしで許される根拠:緊急処分説と相当説学説判例
- 緊急処分説:逮捕の際は、被疑者の抵抗・逃亡・証拠隠滅のおそれが大きい → それを防いで証拠を保全する緊急の必要があるから許される。
- 相当説:逮捕の現場には証拠の存在する蓋然性が高い → 令状を請求すれば「正当な理由」ありとして通常発付される → 裁判官の事前審査を経るまでの必要がないから許される。
- 判例の言葉:
- 同三五条が右の如く捜索、押収につき令状主義の例外を認めているのは、この場合には、令状によることなくその逮捕に関連して必要な捜索、押収等の強制処分を行なうことを認めても、人権の保障上格別の弊害もなく、且つ、捜査上の便益にも適なうことが考慮されたによるものと解されるのであつて
- 判例は相当説に基づくと説明される(解説書。誰の説明かは書かれていない)。解説書の流れでは、相当説なら「逮捕する場合」を逮捕の前後を問わず緩やかに考えてよい → 着手の前後を問わないとした判例(項目5)は相当説に基づく、とつながる。判旨の「格別の弊害もなく」「便益にも適なう」と相当説を結ぶ説明は、解説書には無い。判決自身は「相当説」という語は使っていない。
- 緊急処分説に立っても、逮捕の現場に証拠が存在する蓋然性が高いという前提まで否定することにはならない(予備R3-16-D が誤りの発言)。
- 緊急処分説の根拠は、逮捕の際一般に隠滅のおそれが大きいこと。緊急処分説に立つと、被逮捕者が証拠を隠滅する具体的な危険が要件になる、とはいえない(予備R5-17-オ が誤り)。これは2号一般の要件の話。逮捕に着手する前に始める捜索に限っては、解説書の著者は、緊急処分説からも「証拠を保全する緊急の必要性が具体的に認められる場合に限られるであろうが」、着手前の捜索を認める結論を導くことは可能と思われる、とする(項目5)。
- どちらの説でも、が通常逮捕にも使えることは変わらない(予備R8-24-ウ が誤り)。
| 相当説(過去問のⅠ) | 緊急処分説(過去問のⅡ) | |
|---|---|---|
| 根拠 | 証拠存在の蓋然性が高く、令状を請求すれば発付される | 抵抗・逃亡・証拠隠滅を防ぎ、証拠を保全する緊急の必要 |
| 差し押さえられる物 | 逮捕の理由となった被疑事実に関する物だけ(両説同じ・項目4) | |
| 「逮捕する場合」 | 時間的接着を厳しく求めず、逮捕の前後を問わずより緩やかに考えてよい | 逮捕との厳格な時間的接着が要る。着手前の捜索も「証拠を保全する緊急の必要性が具体的に認められる場合に限られるであろうが」認める結論を導くことは可能と思われる(解説書の著者) |
| 判例の事案で、もし被疑者が帰宅せず逮捕できなかったら(仮定・被疑者が現れないまま先に始めた捜索) | 相当説からも違法とするほかない(解説書・項目6) | |
| 被逮捕者が現場からいなくなった後 | 逃走した場合でも、引き続き現場を捜索できると考えることができる(項目7) | 警察署へ連行した後に、逮捕の現場として住居を捜索することはできない(項目7) |
出題Ⅱ(緊急処分説)に立つと、逮捕の現場に証拠の存在する蓋然性が一般的に高いという前提は否定せざるを得ない(×)
出題Ⅱ(緊急処分説)に立つと、被逮捕者が証拠を隠滅する具体的な危険が要件として要求される(×)
出題Ⅱ(緊急処分説)に立つと、無令状の捜索差押えは現行犯逮捕・緊急逮捕に限られ、通常逮捕では認められない(×)
- 緊急処分説なら、逮捕の現場に証拠がある蓋然性という前提は否定される、とする形(予備R3-16-D)
- 緊急処分説なら、具体的な隠滅の危険が要件になる、とする形(予備R5-17-オ)
- 緊急処分説なら、通常逮捕には使えない、とする形(予備R8-24-ウ)
4両説共通の限定:逮捕の理由となった被疑事実学説判例
- どちらの説でも、差し押さえられるのは逮捕の理由となった被疑事実に関する物に限られる(解説書)。
- 解説書は、暴行で通常逮捕した現場の覚醒剤を差し押さえた例を、どちらの説でも違法になるとして挙げる(札幌高判昭58・12・26 を紹介。判決の内容は解説書の紹介による)。
- 判例(最大判昭36・6・7)は、緊急逮捕の現場での捜索・差押えは、逮捕の原由(もとになった理由)である被疑事実に関する証拠物件を集め、保全するためで、その目的の範囲内なら「必要があるとき」に当たる、と述べる(本件の麻薬の捜索・差押えも「緊急逮捕する場合の必要の限度内」とし、余罪の証拠保全のためで違法だとした原審を退けた):
- 緊急逮捕の現場での捜索、差押は、当該逮捕の原由たる被疑事実に関する証拠物件を収集保全するためになされ、且つ、その目的の範囲内と認められるものである以上、同条一項後段のいわゆる「被疑者を逮捕する場合において必要があるとき」の要件に適合するものと解すべきである。
傷害で現行犯逮捕した現場の机の上に、無関係の詐欺の名簿があった → 逮捕の理由になった傷害と関わらない以上、2号では差し押さえられない(必要なら別に令状を取る)。
出題Ⅰ・Ⅱのどちらに立っても、捜索差押えの対象は逮捕の理由とされた被疑事実と関連する物に限られる(○)
出題Ⅰ・Ⅱのどちらに立っても、差押えの対象は逮捕の理由とされた被疑事実に関する証拠物に限られず、他の事件の証拠物も差し押さえられる(×)
- 逮捕の現場で偶然見つけた他の事件の証拠物も、2号で差し押さえられる、とする形(予備R3-16-B・予備R8-24-エ)
5「逮捕する場合」の時間的範囲(最大判昭36・6・7)判例
- 午後8時30分頃、麻薬取締官らが路上の職務質問で麻薬を所持していたAを現行犯逮捕
- Aを連れて、麻薬の入手先である被疑者B宅へ、Bを緊急逮捕するため午後9時30分頃到着 → Bは外出中
- 帰宅次第逮捕する態勢のまま、逮捕に着手する前にB宅の捜索を開始し、麻薬などを押収
- 捜索がほとんど終わる頃Bが帰宅 → 午後9時50分頃に緊急逮捕、直ちに逮捕状を請求し発付
- 問題の所在:「逮捕する場合」を「現実に逮捕した場合」に限って読むと、逮捕前のこの捜索は違法になる。
- 原審(大阪高裁):後段の捜索・差押えは、緊急逮捕に着手した後に開始することを要する → 違法。
- 「逮捕する場合において」と「逮捕の現場で」の意義であるが、前者は、単なる時点よりも幅のある逮捕する際をいうのであり、
…前者の場合は、逮捕との時間的接着を必要とするけれども、逮捕着手時の前後関係は、これを問わないものと解すべきであつて、このことは、同条一項一号の規定の趣旨からも窺うことができるのである。 - 例えば、緊急逮捕のため被疑者方に赴いたところ、被疑者がたまたま他出不在であつても、帰宅次第緊急逮捕する態勢の下に捜索、差押がなされ、且つ、これと時間的に接着して逮捕がなされる限り、その捜索、差押は、なお、緊急逮捕する場合その現場でなされたとするのを妨げるものではない。
- 捜索、差押は、緊急逮捕に先行したとはいえ、時間的にはこれに接着し、場所的にも逮捕の現場と同一であるから、逮捕する際に逮捕の現場でなされたものというに妨げなく
- 結論:違憲違法ではない → 原判決を破棄し、大阪高裁に差し戻した。
- 判例の言い方は「逮捕がなされる限り」=逮捕が実際になされることが前提。
- 着手前でもよいのは、両説どちらの読みでも認めうる:相当説に立てば、捜索の開始時に逮捕行為に着手している必要はないと考えることができる(予備R8-24-イ)。緊急処分説からも、「証拠を保全する緊急の必要性が具体的に認められる場合に限られるであろうが」、着手前の捜索を認める結論を導くことは可能と思われる、と解説書の著者は書く。
到着から逮捕まで約20分。この先行捜索が「時間的に接着」とされた。被疑者が帰らないまま捜索を終えて引き揚げ、翌日別の場所で逮捕した → 接着していないので「逮捕する場合」に当たらない。
出題逮捕に伴う令状によらない捜索差押えを行い得るのは、逮捕の着手後に限られる(×)
出題Ⅰ(相当説)に立つと、無令状の捜索が開始された時点で逮捕行為に着手している必要はないと考えることができる(○)
見解「逮捕する場合」の5つの見解の振り分け(数字は問題の【見解】1〜5の番号。正答:A=3 被疑者が現場にいて直ちに着手しうる/B=2 着手は要るが成功は問わない/C=4 不在でも時間的に接着して逮捕されれば足りる=判例/D=1 現実の逮捕を要する/E=5 逮捕が見込まれれば足りる)
- 逮捕に伴う捜索差押えは、逮捕の着手後に限られる、とする形(予備H30-17-イ=原審の立場)
6判例への批判と限定学説
- 「逮捕した場合」でなく「逮捕する場合」なので、現実に逮捕した場合に限らず、着手前でも認めるのが学説でも一般(解説書)。問題は逮捕の可能性。
- 批判(解説書):判例の事案は被疑者不在のまま捜索を始めている。被疑者が帰宅せず逮捕できなかった場合には、相当説の立場からも違法と判断するほかない → 判例の基準は緩やかすぎる、との批判が強い。
- 横田裁判官の意見(判例ではない):被疑者が間もなく帰宅して逮捕できたのは「予期しない偶然の事実」にすぎず、偶然の事実が起こるかどうかで適法・違法が分かれるのは不合理だ、とした。
- 限定:着手の前後は問わないが、逮捕するべき者が現在していて確実に逮捕できる可能性を要する、と解するのが妥当(解説書の著者。現在の実務もそう運用されているといわれる)。解説書が書く理由は「『逮捕する場合』とされている以上」(解説書の理由はここまで)。この限定の側から見れば、令状なしで許されるのはあくまで逮捕に伴うからで、逮捕できるかどうか分からないうちに捜索を始めれば、逮捕に伴うという前提が確保されないまま、無令状で捜索を始めていることになる。
- 解説書の著者のあてはめ:判例の事案は、被疑者が現在せず逮捕の可能性が確実でない状況で捜索を始めている → 相当説からも緊急処分説からも違法になろう。
- 項目3の「判例は相当説に基づく」と食い違うわけではない:解説書の著者は相当説にもこの限定(確実に逮捕できる可能性)を加えて読むので、同じ相当説から、限定を置かない判例とは逆の結論(違法)になる。
- 大法廷の中でも割れた:小谷・河村裁判官の少数意見=前後は問わないが、時間的・場所的接着に加え被疑者が逮捕の現場に現在することを要する。藤田・奥野裁判官の意見・横田裁判官の意見=被疑者が不在なら適用がない。多数意見に加わった垂水裁判官の補足意見も、逮捕の着手行為か少なくとも身柄の捜索行為がなければ「逮捕する場合」は考えられないのではないかとし、本件の捜索は私見では違法とした(証拠能力はあるとする)。どれも判例(多数意見)ではない。
- 緊急処分説・相当説のどちらに立っても、「逮捕する場合」に現実に被疑者を逮捕できる状況が必要と考えることができる(予備R3-16-E=正しい発言)。
出題Ⅱに立つと「逮捕する場合」には現実に被疑者を逮捕できる状況が必要と考えることができ、Ⅰに立って同様に考えることもできる(○)
- 相当説なら、被疑者が現れないまま先に始めた捜索は、判例の事案で、もし被疑者が帰宅せず逮捕できなかったら(仮定)、それでも適法になる、とする形(相当説からも違法=解説書)
- 緊急処分説からは、逮捕着手前の捜索は一切認められない、とする形(解説書の著者は、緊急の必要性が具体的に認められる場合なら認める結論を導くことは可能と思われるとする)
7被逮捕者が現場からいなくなった後の捜索学説
- 相当説(Ⅰ):被逮捕者が逮捕の現場から逃走した場合でも、引き続きその現場を捜索できると考えることができる(予備R3-16-A=正しい発言)。相当説の根拠(現場に証拠が存在する蓋然性)からは、被逮捕者がいなくなっても捜索を続けられると考えうる。
- 緊急処分説(Ⅱ):被逮捕者を住居で逮捕して警察署まで連行した後に、逮捕の現場としてその住居を捜索することはできない(司法H22-24-オ が誤り)。根拠が隠滅防止の緊急の必要なので、被逮捕者が連れ去られた後には及ばない。
- 項目6の場面とは別:ここは一度逮捕がなされている(「被逮捕者」)。項目6は、判例の事案で、もし被疑者が帰宅せず最後まで逮捕できなかったら(仮定・被疑者が現れないまま先に始めた捜索)=相当説からも違法(解説書)。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 判例の事案で、もし被疑者が帰宅せず逮捕できなかったら(仮定・項目6) | 相当説からも違法(解説書)。判例の言い方(「逮捕がなされる限り」)からは外れる=判例が判断した場面ではない |
| 被逮捕者が現場から逃走した | 相当説なら現場の捜索を続けられると考えうる(予備R3-16-A) |
| 警察署へ連行した後に住居を捜索 | 緊急処分説ならできない(司法H22-24-オ) |
出題Ⅰ(相当説)に立つと、被逮捕者が逮捕の現場から逃走した場合でも、引き続きその現場の捜索が可能と考えることができる(○)
出題Ⅱ(緊急処分説)に立っても、被逮捕者を住居で逮捕して警察署まで連行した後に、逮捕の現場として同住居を捜索できる(×)
- 緊急処分説でも、連行後に逮捕の現場として住居を捜索できる、とする形(司法H22-24-オ)
82号でできることの限界条文
- 2号が認めるのは「差押、捜索又は検証」だけ。
- リモートアクセス()と電磁的記録提供命令()は、令状による処分の側にだけ書かれている。リモートアクセスは、令状に複写すべきものの範囲を記載する仕組み()。
- → 逮捕に伴って、被疑者のスマートフォン本体を(被疑事実に関係する限り)無令状で差し押さえることはできる。それを操作して、接続先のメールサーバからデータを複写する(ダウンロードする)のは、無令状のリモートアクセスになり許されない(解説書。検証としてできるかは別の問題)。
- 令状なしで物を取れるもう1つの場面:遺留物・任意に提出された物の領置(占有者が自分から手放した物を受け取る処分・)。とは別の処分。
逮捕の現場で、被疑者の勤務先の担当者に「データを出せ」と電磁的記録提供命令を出す → 令状が要る()。には無い。
- 逮捕の現場なら、電磁的記録提供命令も令状なしでできる、とする形