通信傍受①傍受令状の要件と通信傍受法
問い:電話の傍受には、どんな令状が、どんな条件で出るのか。捜索差押許可状・検証許可状と何が違うのか。
骨組み
- 1入口():当事者のいずれの同意も得ない電気通信の傍受=強制の処分 → 中身は通信傍受法。傍受=現に行われている他人間の通信を受けること(通信傍受法2条2項)
- 2傍受に当たらない:当事者の一方の同意あり=任意捜査/終わった通話の録音体・送信済みメール=捜索・差押え/任意提出の録音の再生=傍受でない
- 3口頭の会話:通信傍受法の「通信」(電話その他の電気通信)でない=傍受令状ではできない。検証許可状でできるかは最高裁の判断なし(解説書は否定)
- 4制定の経緯(最決平11・12・16):重大な犯罪・十分な理由などの一定の要件を満たす場合に、対象の特定に資する適切な記載がある検証許可状によるなら、電話傍受は当時も法律上許されていた。選別の傍受はの「必要な処分」に含まれうるとし、立会いは条件の付加で埋めた。事後通知・不服申立てが無い点は「問題があることは否定し難い」が、それを理由に許されなかったとまで解するのは相当でない → 平成11年に通信傍受法
- 5対象犯罪:別表第一(薬物・銃器・集団密航・組織的殺人)+別表第二(平成28年改正で追加)。別表第二の罪は、②数人共謀が役割の分担に従って行動する人の結合体によるものに限られる(項目6)→ 単なる殺人は不可
- 6発付の4要件(通信傍受法3条1項):①十分な理由(嫌疑・3つの型)②数人の共謀(別表第二は役割分担の結合体に限る・別表第一の譲渡し等は不要)③犯罪関連通信が行われる状況 ④補充性(他の方法では著しく困難)。捜索・差押え・検証は「必要があるとき」
- 7請求・発付(通信傍受法4条・7条):請求は検事総長が指定する検事・警視以上の指定された警察官等だけ。発付は地方裁判所の裁判官だけ(延長も)
- 8記載事項(通信傍受法6条1項):被疑事実の要旨・罪名・罰条をすべて書く(捜索差押許可状等は罪名だけ)
- 9期間(通信傍受法5条1項・7条1項):10日以内 → 延長も10日以内ずつ → 通じて30日まで。着手の期限=有効期間は別
| 捜索差押許可状・検証許可状 | 傍受令状(通信傍受法) | |
|---|---|---|
| 対象犯罪 | 限定なし | 別表第一・第二の罪だけ(項目5) |
| 要件 | 犯罪の捜査をするについて必要があるとき() | 十分な理由・数人共謀・犯罪関連通信・補充性(項目6) |
| 請求できる者 | 検察官・検察事務官・司法警察員() | 指定された検事・警視以上の指定された警察官等(項目7) |
| 発付する裁判官 | 簡易裁判所の裁判官も出せる(最決平11・12・16の事案は旭川簡易裁判所の裁判官の検証許可状) | 地方裁判所の裁判官(項目7) |
| 記載事項(罪について) | 罪名だけ() | 被疑事実の要旨・罪名・罰条(項目8) |
| 期間 | 有効期間=着手できる期限(原則7日・刑訴規則300条) | 有効期間とは別に、傍受ができる期間=10日以内・通じて30日まで(項目9) |
色の札は出どころ:条文 判例 学説(同じ色の 解説書 は、学説の紹介ではなく解説書の著者自身の検討)。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。通信傍受法の条文番号は札にしていません(文字のまま)。
重さの理由:傍受令状は、発付の時点では「これから話される内容」しか分からず、発付後もしばらく回線を開けたまま待ち受け、無関係な通信まで一緒に聞いてしまう処分であること。ここから出る対象の特定不能性・継続性・無関係な通信への広がり、この3つが、傍受令状の要件を捜索差押許可状や検証許可状より重くしている。
1入口:と通信傍受法条文
- :通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う強制の処分については、別に法律で定めるところによる → その法律が通信傍受法(犯罪捜査のための通信傍受に関する法律・平成11年)。
- 通信の秘密は憲法が保障する(「通信の秘密は、これを侵してはならない」)。電気通信の傍受はこれを実質的に侵害する処分なので、厳格な統制が要る。
- 通信傍受法の定義:「通信」=電話その他の電気通信で、伝送路の全部か一部が有線であるもの、または伝送路に交換設備があるもの(2条1項)。「傍受」=現に行われている他人間の通信について、内容を知るため、当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けること(2条2項)。電気通信には固定電話・携帯電話・電子メールなどが入る。
- 古い教科書の「222条の2」は番号が変わる前の表記。今のは電磁的記録提供命令違反などの罰則で、傍受とは関係ない。
- 「電気通信の傍受は、当事者の一方の同意が無ければ強制の処分になる」(強制の処分になるのは、当事者のいずれの同意も得ない場合)
- 「傍受を別の法律に任せる規定は222条の2」
2傍受に当たらない3つの場面条文
| 場面 | 傍受か | どう扱うか | 外れる理由 |
|---|---|---|---|
| 当事者の一方の同意を得て聞く・録る(誘拐事件で被害者側の同意を得る等) | 当たらない | 任意捜査 | 「いずれの同意も得ないで」に当たらない |
| 終わった通話の録音体・送信済みの電子メール | 当たらない | 捜索・差押え | 「現に行われている」通信でない |
| 被害者から任意提出を受けた録音の再生 | 当たらない | 領置(任意に提出された物を受け取る・)した物の内容の確認 | 手元にある物の中身を確かめるだけ |
押収した携帯電話に保存された過去の通話録音を聞く → 終わった通話の記録で傍受ではない(捜索・差押えで足りる)。同じ携帯電話に、これから1週間かかってくる通話を回線上で聞く → 現に行われる通話を受けるので傍受=傍受令状が要る。
出題恐喝されていた被害者の同意を得て、被害者と被疑者の通話を録音するには、傍受令状は要らない(○)
出題身の代金目的誘拐の被害者の親の同意を得て、親と被疑者の通話を録音するには、令状が必要(×)
- 「被害者の同意を得て、被害者と犯人の通話を録音するにも、傍受令状が要る」(一方の同意があれば任意捜査)
- 「送信済みの電子メールを捜査機関が取得するには、傍受令状が要る」(現に行われている通信でない=捜索・差押え)
3口頭の会話は通信傍受法の外条文解説書
- 検証=五官の作用によって対象の存否・性質・状態・内容等を認識・保全する処分(最決平11・12・16の言い方)。
- 通信傍受法の「通信」は電話その他の電気通信(2条1項)。室内の肉声の会話は入らない → 通信傍受法の傍受令状では行えない。
- 項目2の3つ(同意がある・終わった通信の記録・手元の物)とは外れる理由が違う。口頭の会話は「傍受に当たらないから自由にできる」のではない。強制の処分は、この法律(刑訴法)に特別の定めのある場合でなければできない(ただし書)=だから既存の検証でできるかが争点になる。
- 口頭の会話の傍受を認める規定は無い。既存の検証許可状で行えるかは、最高裁の判断が無い。解説書は、検証としても行うことができないと考えるべきとする(解説書の著者の検討)。
室内に盗聴器を置いて肉声の会話を聞く → 電気通信でないので傍受令状では行えない。検証許可状で行えるかは判例が無く、解説書は否定に考える。
- 「判例は、口頭の会話の傍受は検証許可状によってもできないとした」(最高裁の判断は無い。否定は解説書の見方)
- 「室内の会話も、通信傍受法の傍受令状を取れば傍受できる」
4制定の経緯:最決平11・12・16が埋めたもの、埋められなかったもの判例学説
- 暴力団の組織的・継続的な覚醒剤密売。組事務所のあるマンションの居室の電話で注文を受け、受付担当と譲渡し担当は別人で特定できない
- 警察官が旭川簡易裁判所の裁判官に検証許可状を請求
- 裁判官が、電話2台・覚醒剤取引の通話に限り、2日間(平成6年)・各日午後5時〜11時に区切り、地方公務員2名を立ち会わせ、対象外と思われる通話は立会人に分配器の電源を切らせる方法を記載した検証許可状を発付
- 警察官は記載の制限を守って傍受を実施
- 電話傍受は、通話内容を聴覚により認識し、それを記録するという点で、五官の作用によって対象の存否、性質、状態、内容等を認識、保全する検証としての性質をも有するということができる。
- 「検証と同じ」とは言っていない(「をも有する」)。決定はこの性質を含めて5点を挙げた(ほかに、裁判官が事前に要件を審査できること、傍受すべき通話・回線・方法・場所・期間を限ることで特定の要請を相当程度満たせること、条件の付加、「必要な処分」)。
- 裁判官は、電話傍受の実施に関し適当と認める条件、例えば、捜査機関以外の第三者を立ち会わせて、対象外と思料される通話内容の傍受を速やかに遮断する措置を採らせなければならない旨を検証の条件として付することができる。
- 根拠は身体検査令状の条件の規定(決定当時は218条5項・現行)。条件の付加は強制処分の範囲・程度を狭める方向に働くので、身体検査令状以外の検証許可状にも準用できる、とした。
- 捜査機関において、電話傍受の実施中、傍受すべき通話に該当するかどうかが明らかでない通話について、その判断に必要な限度で、当該通話の傍受をすることは、同法一二九条所定の「必要な処分」に含まれると解し得る。
- :検証については、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊その他必要な処分をすることができる。
- 重大な犯罪に係る被疑事件について、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存する場合において、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許されると解するのが相当である。
- 決定は、この「一定の要件」を満たす場合に限って、検証許可状による傍受を認めた。
- 前記の一定の要件を満たす場合に、対象の特定に資する適切な記載がある検証許可状により電話傍受を実施することは、本件当時においても法律上許されていたものと解するのが相当である。
- もっとも、検証許可状による場合、法律や規則上、通話当事者に対する事後通知の措置や通話当事者からの不服申立ては規定されておらず、その点に問題があることは否定し難いが、
…右の点を理由に検証許可状による電話傍受が許されなかったとまで解するのは相当でない。 - 元原裁判官の反対意見:選別のための聴取は「必要な処分」の範囲を超え、事後の告知・不服申立ての規定も欠くので、検証としては許されず違法。
- 電話傍受に不可避的に伴う選別的な聴取は、検証のための「必要な処分」の範囲を超えるものであり、この点で、電話傍受を刑訴法上の検証として行うことには無理があるといわなければならない。
- 解説書は、検証許可状による傍受の問題点として①分別のために無関係な通話まで傍受せざるを得ず、検証の「必要な処分」の限界を超えるとの批判 ②立会人の要否などの手続規定が無い ③検証には不服申立ての手段が無い、を挙げる。①の「限界を超える」は学説の批判で、元原裁判官の反対意見も同じ立場。多数意見の判断ではない。
- 組織犯罪対策が課題になり(地下鉄サリン事件など)、平成11年に通信傍受法を制定。傍受令状の創設、犯罪関連通話を分別する措置、通信事業者の立会い、事後通知、不服申立ての手段を整えた。
| 検証許可状での弱点 | 最決平11・12・16の扱い | 通信傍受法 |
|---|---|---|
| ①無関係な通話も選別のために聞く | 判断に必要な限度ならの「必要な処分」に含まれうる(学説の批判・反対意見=限界を超える) | 犯罪関連通話の分別の措置 |
| ②立会いなどの手続規定が無い | 条件の付加で第三者の立会いと遮断を命じうる(本件も地方公務員2名が立会い) | 通信事業者の立会い |
| ③事後通知・不服申立てが無い | 問題があることは否定し難い。ただし許されなかったとまで解するのは相当でない | 事後通知・不服申立ての手段 |
決定の事案では簡易裁判所の裁判官が検証許可状を出した。今の傍受令状なら、地方裁判所の裁判官でなければ出せない(項目7)。
- 「事後通知・不服申立ての規定が無いので、検証許可状による電話傍受は許されなかったとした」
- 「最高裁は、選別のための傍受は検証の『必要な処分』の範囲を超えるとした」(それは反対意見・学説の批判。多数意見は含まれうるとした)
- 「最高裁は、電話傍受は検証と同じだから検証許可状で行えるとした」(検証としての性質「をも」有する+特定・条件の付加・事前審査・必要な処分を合わせて根拠にした)
5対象犯罪:別表第一と別表第二条文
- 傍受令状を出せるのは、通信傍受法の別表に掲げる罪だけ(3条1項各号)。刑法犯の法定刑で決まるのではない。
- 別表第一(平成11年の制定当初の4類型):薬物犯罪・銃器犯罪・集団密航・組織的殺人。
- 別表第二(平成28年改正で追加):殺傷犯(現住建造物等放火・殺人・傷害・傷害致死・爆発物の使用)、逮捕・監禁、略取・誘拐、窃盗・強盗、詐欺・恐喝、児童ポルノ。
- 別表第二の罪は、要件②数人の共謀が、その罪に当たる行為が「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるもの」に限られる(3条1項1号の「数人の共謀によるもの」の括弧書き=2号・3号にも及ぶ・項目6)→ 殺人は別表第二に入るが、単なる殺人事件では傍受できない。
- 「死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑(と別表の罪)」は、傍受の実施中に令状の被疑事実以外の犯罪の実行を内容とすると明らかに認められる通信が出たときに傍受できる線(通信傍受法15条)。対象犯罪の線ではない。
1人で計画した殺人事件の被疑者の電話 → 殺人は別表第二だが、役割分担に従って動く結合体による犯行と疑う状況が無い(②を欠く)ので傍受できない。指示役・受け子・出し子が役割を分けて動く特殊詐欺グループ → 詐欺は別表第二で、組織性の状況があれば対象になる(他の要件を満たすことが前提)。
出題傍受の対象犯罪は、死刑・無期・短期1年以上の懲役に当たる刑法犯に限られる(×)
出題傍受の対象犯罪に、組織的な賭博場開張等図利の罪が含まれる(×)
- 「対象犯罪は、死刑・無期・短期1年以上の刑に当たる刑法犯」(司法H19-39-1)=対象犯罪は別表で列挙。「短期1年以上」は15条の線
- 「組織的な賭博場開張等図利の罪も対象犯罪」(司法H23-26-ア)=別表第一・第二に無い
- 「殺人は対象犯罪なので、殺人事件なら傍受できる」(別表第二には組織性の絞りがある)
6発付の4要件(通信傍受法3条1項)条文
- ①嫌疑:どの型も「疑うに足りる十分な理由」(通常逮捕の「相当な理由」=より濃い)。型は3つ。
1号=対象犯罪が犯された。
2号=対象犯罪が犯され、かつ引き続き、同様の態様で同一・同種の対象犯罪が犯される、または一連の犯行計画に基づいて対象犯罪が犯される。
3号=死刑・無期・長期2年以上の拘禁刑に当たる罪が、対象犯罪と一体のものとしてその実行に必要な準備のために犯され、かつ引き続きその対象犯罪が犯される。 - ②数人の共謀によると疑うに足りる状況。別表第二の罪は、この共謀が役割の分担に従って行動する人の結合体によるものに限られる(1号の括弧書き・2号3号も同じ)=組織性の絞りは②の中にある。例外(3条2項):別表第一の罪で、譲渡し・譲受け・貸付け・借受け・交付を罰するものは、数人共謀の状況が要らない(別表第二には例外が無い)。
- ③犯罪関連通信(犯罪の実行・準備・証拠隠滅等の事後措置に関する謀議・指示その他の相互連絡など)が行われると疑うに足りる状況。
- ④補充性:他の方法によっては、犯人を特定し、または犯行の状況・内容を明らかにすることが著しく困難であること。
- 比べる相手:捜索・差押え・検証は「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」()。傍受令状の要件は大幅に重い。
- 傍受できる通信手段も限られる(3条1項柱書):電話番号等で特定され、被疑者が通信事業者等との契約に基づいて使っているもの(犯罪関連通信に使われる疑いが無いものを除く)か、犯人の犯罪関連通信に使われると疑うに足りるもの。
覚醒剤の密売グループで、表に出ない元締めが携帯電話で売人に取引を指示している。取引が続いている疑いが濃い(嫌疑)(2号の型=犯され、引き続き犯される)・元締めと売人(数人共謀。譲渡しなら②は要らないが、ここではそろっている)・指示の電話(犯罪関連通信)・尾行や張り込みでは元締めまでたどれない(補充性)→ 4要件がそろう。受け渡しの日時と場所がもう分かっていて、張り込みと捜索・差押えで足りる → 補充性を欠く。
覚醒剤を1人で売っている売人の譲渡し → 別表第一の譲渡しの罪なので、数人共謀の状況が無くても②は要らない(他の要件は要る)。1人で行った窃盗 → 別表第二には3条2項の例外が無く、組織性の状況も無いので傍受できない。
出題刑訴法の差押え・捜索・検証の要件は「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」だが、傍受令状の要件の一つは「他の方法によっては…著しく困難であるとき」(○)
- 「傍受令状の要件は、捜索差押許可状と同じく、犯罪の捜査をするについて必要があるときである」
- 「嫌疑は、通常逮捕と同じく相当な理由で足りる」(十分な理由)
- 「数人共謀の要件は、薬物の罪を含め、すべての対象犯罪に必要」(別表第一の譲渡し等は不要)/「別表第二の罪でも、譲渡し等の行為なら数人共謀は不要」(例外は別表第一だけ)
7請求する者・発付する裁判官(通信傍受法4条・7条)条文
- 請求できる者(4条1項):検察官は検事総長が指定する検事、司法警察員は国家公安委員会・都道府県公安委員会が指定する警視以上の警察官、厚生労働大臣が指定する麻薬取締官、海上保安庁長官が指定する海上保安官に限る。
- 比べる相手:通常逮捕状の請求は、警察官なら指定された警部以上の司法警察員()。捜索差押許可状等は検察官・検察事務官・司法警察員()。
- 発付する裁判官:地方裁判所の裁判官に限る(4条1項)。期間の延長も、地方裁判所の裁判官が、同じく限られた検察官・司法警察員の請求で行う(7条1項)。
- 同じ被疑事実で前に同じ通信手段への傍受令状の請求・発付があったときは、その旨を裁判官に通知する(4条2項)。
警部の司法警察員:通常逮捕状は指定を受けていれば請求できる()。傍受令状は、警視以上で指定を受けた者でなければ請求できない。
- 「傍受令状は、指定された警部以上の司法警察員が請求できる」(警視以上)
- 「傍受令状は、簡易裁判所の裁判官も発付できる」(地方裁判所の裁判官だけ)
- 「傍受ができる期間の延長は、司法警察員なら誰でも請求できる」(延長も限られた請求権者)
8記載事項:被疑事実の要旨・罪名・罰条(通信傍受法6条1項)条文
- 傍受令状の記載事項:被疑者の氏名、被疑事実の要旨、罪名、罰条、傍受すべき通信、傍受の実施の対象とすべき通信手段、傍受の実施の方法・場所、傍受ができる期間、傍受の実施に関する条件、有効期間(とその経過後は着手できず返還する旨)、発付の年月日など。被疑者の氏名が明らかでないときは、その旨を書けば足りる。
- 比べる相手:捜索差押許可状・検証許可状()は罪名を書くが、被疑事実の要旨・罰条は記載事項に無い。傍受令状は3つとも書く=ここが違い。
捜索差押許可状に罰条が書かれていなくても記載事項の欠けにはならない。傍受令状に罰条が無ければ記載事項の欠け。
出題差押え・捜索・検証の令状には犯罪事実の要旨・罰条の記載は要らないが、傍受令状には被疑事実の要旨・罰条を記載しなければならない(○)
- 「傍受令状も捜索差押許可状と同じく、罪名を書けば罰条は要らない」
- 「捜索差押許可状にも、被疑事実の要旨と罰条を書かなければならない」
9期間:10日・延長10日・通じて30日(通信傍受法5条1項・7条1項)条文
- 発付する裁判官は、傍受ができる期間として10日以内の期間を定める(5条1項)。
- 必要があれば、10日以内の期間を定めて延長できる。ただし傍受ができる期間は、通じて30日を超えられない(7条1項)。
- 傍受令状には、これとは別に有効期間(その経過後は傍受の処分に着手できない期限)も書く(6条1項)。捜索差押許可状の有効期間(原則7日)と並べるべきは、傍受令状の有効期間のほう。「傍受ができる期間」は、処分を続けてよい長さ。
- 10日・30日は条文の数字(解釈で立てる規範ではない)。
最初に10日 → 10日延長 → さらに10日延長で通じて30日。そこからもう一度延長することはできない。
- 「傍受ができる期間は7日以内」(捜索差押許可状の有効期間の原則と混ぜた形)
- 「延長は1回に限り、最長20日」「延長を重ねれば30日を超えてもよい」(10日以内ずつ、通じて30日まで)
- 「傍受令状には有効期間が無い」(傍受ができる期間とは別に有効期間を書く)