捜査段階の弁護活動と証拠保全請求
問い:起訴されるまでの間に、弁護人は何をするか。被疑者・被告人の側が自分で証拠を残したいとき、どんな道具があり、どこまで使えるか。
骨組み
- 1捜査弁護の地図(解説書):①身体拘束からの解放 ②不起訴処分の獲得 ③起訴後の公判準備(起訴された場合に備えて捜査段階のうちにすること)+(4)違法捜査への対応。この回は②〜(4)
- 2起訴猶予をめざす():嫌疑はある前提で「訴追を必要としない」と示す。被害弁償・示談、環境整備。勾留中なら満期の前に示す
- 3嫌疑なし・嫌疑不十分をめざす:被疑事実そのものを争う。アリバイ・正当防衛を支える証言を集めて示す
- 4公判準備と取調べへの対応:証人の確保・有利な証拠の収集。拘束中の被疑者は取調べ自体を拒めない(実務。学説は受忍義務を否定する=拒めるとするのが通説)が、話す義務は無い → 有効かつ容易な手段=黙秘権の行使
- 5黙秘か積極供述か:一律には決まらない。話す利益(不起訴・起訴猶予に効く)と危険(供述の変遷・誘導や誇張・方針前の足かせ)を、弁解の状況・事件の性質・捜査の状況で個別に判断
- 6保釈の準備:保釈は起訴後の被告人だけ(ただし書)→ 勾留のまま起訴されそうなら、身元保証人の確保などを並行して進める
- 7違法捜査への対応:2つ=その場で異議を述べて是正/違法の事実を後で立証できるよう準備。2つ合わせて、権利を守ることと、公判で証拠能力を争う準備につながる(解説書)
- 8証拠保全請求():被告人・被疑者・弁護人が、第1回の公判期日前に限り(起訴後も可)、裁判官に押収・捜索・検証・証人尋問・鑑定などを請求。要件=保全しなければ使用が困難な事情
- 9対象外(最決平17・11・25):捜査機関が収集し保管している証拠は、特段の事情が無い限り対象にならない。判例は結論だけ(理由は述べていない)
色の札は出どころ:条文 判例 学説(同じ色の 解説書・講義解説 は、それぞれの著者の説明)。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。
出題が集まるのは8(誰が・いつまで・誰に)と6(保釈は起訴後だけ)。「捜査段階」の回でも、証拠保全は起訴後の第1回公判期日前まで使える。
1捜査弁護の地図解説書
- 解説書は、捜査段階の弁護人の活動を3つに分ける:①身体拘束からの解放 ②不起訴処分の獲得 ③起訴後の公判準備のための活動。そのうえで(4)違法捜査への対応を別の項として立てる。
- ③は起訴された後の活動ではなく、起訴された場合に備えて捜査段階のうちにすること(公判請求される可能性も念頭に置いて動く=解説書)。
- ①身体拘束からの解放には、勾留理由開示・勾留の取消し・準抗告・勾留の執行停止・接見禁止の一部解除などの手段がある(解説書)。この回は②〜(4)と、それらを支える道具としての証拠保全請求(公判準備・不起訴に向けた証拠集めにも、違法捜査の立証にも使う=解説書)。
- この回の見方:どの活動も、今の材料が後の場面(起訴するかの判断・公判)でどう使われるかを先に読んで動く。
| 解説書の分け方 | 中身 | この回の項目 |
|---|---|---|
| ①身体拘束からの解放 | 勾留理由開示・取消し・準抗告・執行停止・接見禁止の一部解除など | (扱わない) |
| ②不起訴処分の獲得 | 起訴猶予をめざす/嫌疑なし・嫌疑不十分をめざす | 2・3 |
| ③起訴後の公判準備(のために捜査段階ですること) | 証人・証拠の確保、取調べへの対応、保釈の準備 | 4・5・6 |
| (4)違法捜査への対応 | 異議・是正/立証の準備(その道具の一つが証拠保全請求) | 7・8・9 |
- 「捜査段階の弁護活動は、起訴させない・起訴に備える・違法を正すの3つに尽きる」(身体拘束からの解放が抜けている)
2起訴猶予をめざす()条文解説書
- :犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
- 起訴猶予=有罪にできる証拠があっても、検察官があえて起訴しない判断。嫌疑そのものは争わない。
- 弁護人は、のどの事情について、どんな事実を示せば「訴追を必要としない」と判断されるかを考えて資料を集める。検察官はの事情等を総合して判断する(解説書)。
- 比重が大きいのは被害弁償・示談(犯罪後の情況)。被害者のいない犯罪(薬物事犯など)では、立ち直り(リハビリ)のための環境整備などが有益であることもある(解説書)。
- 締切:勾留が続いていれば、その満期の前に検察官に示す(解説書)。満期までに公訴を提起しなければ、検察官は被疑者を釈放しなければならない(。延長されたときは延長後の期間=同条)。
| の事情 | 効く材料の例 |
|---|---|
| 犯人の境遇/犯罪後の情況 | 通院先・家族と暮らす住まいの用意(薬物事犯などの環境整備=有益なこともある) |
| 犯罪後の情況 | 被害弁償・示談(「処罰は求めない」という被害者の書面) |
店で客ともめて殴ってしまった被疑者が、勾留中に弁護人を通じて治療費と見舞金を払い、被害者から「処罰は求めない」という書面をもらった → 弁護人は満期の前にこれを検察官に出す。同じ書面が起訴された翌日に届いたら、起訴猶予の材料としてはもう間に合わない。
- 「起訴猶予は、犯罪の嫌疑が不十分なときにする不起訴である」(起訴猶予は嫌疑がある前提で、訴追を必要としないときの不起訴=)
3嫌疑なし・嫌疑不十分をめざす解説書
- 嫌疑なし=被疑事実を被疑者がやったという証拠が無い場合。嫌疑不十分=その証拠が不十分な場合。どちらも起訴されない(解説書)。
- 被疑事実と本人の言い分を十分に吟味し、どんな事実を示せば嫌疑が弱まる・消えるかを検討する(解説書)。
- 典型:アリバイや正当防衛を支える証言を集めて、検察官に示す(解説書)。
- 起訴猶予(嫌疑は前提)と、こちら(嫌疑そのものを争う)とでは、検察官に示すものの向きが違う(勾留中なら、どちらも満期までに示す必要がある)。
「その時刻は職場の夜勤だった」という被疑者のために、弁護人が勤務記録の写しと同僚の陳述書を集めて検察官に示す。
4公判準備と取調べへの対応条文学説解説書
- 起訴される可能性も念頭に置き、弁護側の証人を確保し、有利な証拠を集める(解説書)。例:事件の夜に被疑者と一緒にいた知人から、記憶が新しいうちに話を聞いて書面に残してもらう。
- どの事件でも課題になるのが被疑者取調べへの対応(解説書)。
- 但書:「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」→ 在宅の被疑者は、出頭を拒み、出頭後いつでも退去できる。
- 拘束中の被疑者は、この「できる」から外されている → だから拘束中は出頭を拒めず退去もできない、と読むのが反対解釈。実務はこの反対解釈から、取調べのために出頭し滞留する義務(取調べ受忍義務)を肯定し、取調べそのものは拒めないとする。学説は受忍義務を否定するのが通説。
- どちらの立場でも、供述する義務は無い。だから取調べの場で被疑者にできる有効かつ容易な手段は黙秘権の行使(解説書)。
- 自分に不利益な供述を強要されないことはが保障する(自己負罪拒否特権)。刑訴法は、利益・不利益を問わずさらに広く、自己の意思に反して供述する必要がないとし、取調べの前にその旨を告げなければならないとする()。黙っていたことを理由に不利益な推認をすることも、原則として許されない。
- ただし黙秘しても、それだけで取調べが直ちに終わるとは限らない。実務では、供述するよう説得が続くことが多い。
| 在宅の被疑者 | 拘束中の被疑者 | |
|---|---|---|
| 出頭の拒否・退去 | できる(但書) | 実務=できない(受忍義務を肯定)/学説=できる(否定が通説) |
| 供述 | しなくてよい(黙秘権) | |
「拘束されている被疑者は取調べを拒めないのだから、黙秘もできない」は誤り。取調べに来る・とどまること(実務の立場)と、話すことは別で、話さない自由は拘束されていても残る。
- 「身体拘束中の被疑者は取調べを拒めないので、供述も拒めない」
- 「拘束中の被疑者の取調べ受忍義務は、学説でも肯定するのが通説である」(肯定は実務。学説は否定が通説)
- 「黙秘権を行使すれば、取調べは直ちに終わる」
5黙秘か積極供述か解説書
- 話す利益:黙秘にとどまらない積極的な否認や説得的な弁解が、不起訴・起訴猶予の獲得に重要な場合がある(解説書)。
- 話す危険①供述の変遷:捜査段階で犯人性を認め、公判で否認すると、公判の供述の信用性を下げるために捜査段階の供述が使われうる(解説書が挙げる典型)。
- 話す危険②歪曲・誇張:取調べでの質問の仕方・誘導・示唆によって、事実と違う供述ができあがる。本人が信じてもらいたい一心で自分から誇張したり嘘をついたりする危険もある(解説書)。
- 話す危険③方針前の足かせ:防御の方向が定まる前に話すと、その供述が後で足かせになりうる(解説書)。
- 弁護人は黙秘権の保障の意味を十分に説明したうえで、被疑者の弁解の状況・事件の性質・捜査の状況から個別に判断する(解説書)。
- アリバイのような言い分は、まず弁護人が被疑者の弁解を十分に聴き取り、裏付けとなる証言を集めて検察官に示す道がある(項目3)。防御の方向が定まる前に取調べで話すと、後で足かせになりうる(解説書)。
| 場面の例(自作) | 傾く方向 | 理由 |
|---|---|---|
| けがをさせたこと自体は認め、示談も進んでいる | 話す価値がある | 経緯と反省を話すこと自体が起訴猶予の材料になる |
| 逮捕の直後で、弁護人がまだ言い分を十分に聴けていない(防御の方向が定まる前)。本人は「その時刻は別の場所にいた」と言う | 黙秘に傾く | 方向が定まる前の供述は、後で足かせになりうる(危険③) |
逮捕直後に「自分がやった」と話した被疑者が、公判で「やっていない」と言い出す → 検察官は捜査段階の供述を出して、公判の供述は信用できないと主張する(危険①)。
- 「被疑者は、どの事件でも黙秘するのが正解である」(一律には決まらない=個別に判断)
- 「誘導が無ければ、捜査段階で話すことに危険は無い」(本人の誇張・嘘、変遷、方針前の足かせの危険がある)
6保釈の準備(ただし書)条文解説書
- :前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
- 保釈を許すのは、勾留されている被告人についての裁判所の権限(・)。本文は勾留の請求を受けた裁判官に裁判所・裁判長と同じ権限を与えるが、ただし書が保釈だけをそこから外している → 被疑者の勾留には保釈が無い。
- 被疑者=犯罪の嫌疑をかけられ捜査の対象となっている者。被告人=公訴を提起された者(解説書)。同じ人でも、起訴の前は被疑者、起訴の後は被告人と呼ぶ。
- 保釈を請求できるのは勾留されている被告人又はその弁護人・法定代理人・保佐人・配偶者・直系の親族・兄弟姉妹()。
- 理由(解説書):被疑者勾留は捜査の必要があるから保釈を認めない。被告人勾留では、無罪推定を受ける当事者として、出頭の確保に支障が無ければ拘束しないことが重要になる。
- だから、勾留されたまま起訴される見通しになったら、起訴後すぐ保釈を請求できるよう、身元保証人の確保などを公判の準備と並行して進める(解説書)。
勾留中の被疑者の家族が「保釈金を用意するので今すぐ出してほしい」と頼んでくる → 起訴前は保釈を請求できない。弁護人は起訴後すぐ請求できるよう、身元引受けの準備を進める。
出題勾留されている被疑者の弁護人は、裁判官に保釈を請求できる(×)
出題裁判官は、勾留中の被疑者でも、犯罪の性質や情状によっては保釈を許せる(×)
出題保釈は、被疑者の勾留には無いが、被告人の勾留にはある(○)
- 「勾留中の被疑者の弁護人は、保釈を請求できる」
- 「勾留中の被疑者でも、事情によっては保釈を許せる」
7違法捜査への対応解説書
- 必要なのは2つ(解説書):①適時適切に異議を述べて是正を図る ②違法な捜査が行われた事実の立証を準備する。
- この2つの対応は合わせて、手続の各段階で進行している違法な状態を是正して被疑者の権利を守ることにつながるとともに、公判で違法捜査によって得られた証拠の証拠能力を争う準備となる(解説書)。
- 違法の例:違法な身体拘束・違法な取調べ・令状の範囲を逸脱した捜索差押えなど(解説書)。
- 違法に気づく経路:起訴後の証拠開示/接見や関係者からの聞き取り(解説書)。
- 逮捕の手続に違法があれば、続く勾留の効力を争う余地がある。違法な取調べには、即時の是正と、得られた供述の証拠能力を争う準備(解説書)。
- 暴行を伴う取調べを後で立証するための身体の検証=証拠保全請求(項目8)。
| ①その場で是正 | ②後で立証できるよう準備 | |
|---|---|---|
| 何をする | 適時適切に異議を述べる | 違法な捜査の事実を証明できる材料を残す |
| 何につながる | 2つ合わせて:進行中の違法を正して権利を守る/公判で証拠能力を争う準備(解説書) | |
接見で「取調べ中に机を蹴られ、肩を押された」と聞いた弁護人 → すぐ抗議して是正を求める(①)と同時に、あざの記録を残す手配をする(②)。
- 「違法捜査への対応は、公判で証拠能力を争うことに尽きる」(その場の異議・是正も要る)
8証拠保全請求()条文
- :被告人、被疑者又は弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収(電磁的記録提供命令(第第1号イに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。)を含む。)、捜索、電磁的記録提供命令(同号ロに掲げる方法による提供を命ずるものに限る。)、検証、証人の尋問又は鑑定の処分を請求することができる。
- :前項の請求を受けた裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する(勾留の裁判官についての本文と同じ形)。
- 趣旨:被疑者・被告人は捜査機関のような強制捜査の権限を持たず、公判準備としての証拠収集が難しい → 裁判所を介して証拠を収集・保全できるようにした(解説書の言い方)。条文上、請求する相手は裁判官。
- 短答で問われる3点:誰が=被告人・被疑者・弁護人。弁護人は自分の名で請求でき、被疑者本人が反対していても請求できる(解説書が、本人の明示・黙示の意思に反しても弁護人が行使できる権限の例にを挙げる)/いつまで=第1回の公判期日前(起訴前でも、起訴後でも期日前ならよい。起訴前は被疑者が、起訴後は被告人が請求できる=解説書)/誰に=裁判官。
- 第1回の公判期日=起訴の後、裁判長が定める最初の公判の日()。解説書は、公判前整理手続に付されない事件では起訴から約1か月後に指定されることが多いとする。
- 検察官はの主語に無い。
- 対象の広さ:犯人性や犯罪の存在を否定する証拠に限らず、自白の任意性を疑わせる資料にも及ぶとされる(解説書が千葉地決昭57・8・4 を挙げて紹介。下級審の裁判例)。
- 集めた書類・証拠物:検察官と弁護人は、裁判所で閲覧・謄写できる(弁護人が証拠物を謄写するときだけ裁判官の許可が要る=)。ただしの記録媒体は謄写できない()。被告人・被疑者本人は、裁判官の許可を受けて閲覧できる。ただし弁護人がいるときは、本人はこの方法で閲覧できない(ただし書)。
- 解説書の著者の評価:申立ての例も認容の例も多くない。
取調べで暴行を受けた被疑者のあざ → 数日で消えるので「使用することが困難な事情」に当たる → 弁護人が裁判官に身体の検証を請求する。
起訴された後、第1回公判期日の前に、アリバイ証人が海外に転勤すると分かった → 被告人の弁護人はで証人尋問を請求できる(「捜査段階だけの制度」ではない)。
出題被疑者・被告人・弁護人は、保全しなければ使用が困難な事情があるとき、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収・捜索・検証・証人尋問・鑑定(司法H20は証人尋問)を請求できる(○)
出題弁護人は、第1回の公判期日前に限り、裁判官に証人の尋問を請求できる(○)
出題弁護人は、第1回の公判期日前に限り、裁判官に押収の処分を請求できる(○)
出題弁護人は、起訴前であっても、裁判官に証人の尋問を請求できる(○)
出題弁護人は、公訴の提起前に限り、裁判官に押収・捜索・検証・証人尋問・鑑定を請求できる(×)
出題弁護人は、被告人のアリバイ証人に海外赴任の予定があっても、第1回の公判期日前に裁判官に証人尋問を請求できない(×)
- 「弁護人は、証拠保全を請求できない」「被告人のアリバイ証人について、弁護人は第1回公判期日前の証人尋問を請求できない」(弁護人もの主語)
- 「証拠保全の請求は、公訴の提起前に限られる」(第1回の公判期日前まで=起訴後も可)
- 「証拠保全は、被疑者の無実を示す証拠に限られる」(自白の任意性を疑わせる資料にも及ぶとされる)
- 「検察官も、で証拠保全を請求できる」
9捜査機関が保管する証拠は対象外(最決平17・11・25)判例講義解説
- 裁判官がした証拠保全における押収の裁判
- 準抗告 → 京都地裁の決定(原審)
- 特別抗告 → 最高裁第二小法廷が棄却
- 事案:上の流れ(裁判所サイトの書誌から分かる範囲)まで。誰が何の押収を求め、裁判官が認めたのか退けたのか、誰が抗告したのかは、決定の全文に書かれていない。
- 判断:抗告の趣意は違憲をいうが実質は単なる法令違反の主張で、抗告理由に当たらない。そのうえで「なお」として次のように述べた。
- 捜査機関が収集し保管している証拠については,特段の事情が存しない限り,刑訴法179条の証拠保全手続の対象にならないものと解すべきであるから,これと同旨の原判断は相当である。
- 判例が述べたのは結論だけ。なぜ対象外かの理由は書いていない。どんな場合が「特段の事情」に当たるかも、決定は示していない。
- なぜ対象外か(講義解説の説明。判例の判示ではない):捜査機関の手元にある証拠は、すでに押さえられていて、ふつうは消えるおそれが無い → の「保全しておかなければ使用が困難な事情」を通常欠く。
- 証拠保全は、消えそうな証拠を消える前に押さえる道具。捜査機関の持つ証拠を見る道は、起訴後の証拠開示など別の制度。
警察署にある実況見分調書をで押収してほしいと弁護人が請求 → 捜査機関が収集し保管している証拠なので、特段の事情が無い限り対象にならない(自作の設例。判例の事案として書いたものではない)。これに対し、店の防犯カメラの映像がまだ捜査機関の手に渡っておらず、数日で上書きされて消える予定なら、対象になりうる。
- 「捜査機関が収集し保管している証拠も、証拠保全の対象になる」(特段の事情が無い限り対象にならない)
- 「捜査機関が保管する証拠は、どんな場合でも証拠保全の対象にならない」(「特段の事情が存しない限り」)
- 「最高裁は、すでに捜査機関の手元にあって消えるおそれが無いからだ、と理由を示した」(決定は結論だけ。理由づけは講義解説の説明)