刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#118

被告人の供述書面(322条)と共犯者の供述

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第5章 証拠法 ⑪/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

導入

事件の前に被告人が友人へ送ったメッセージ「あいつを痛い目にあわせる」と、本人が法廷で言う「冗談だった」を並べ、被告人自身の言葉でも伝聞法則の網にかかるのかを問う導入板

前回の最後に、被告人の供述書面と、共犯者の供述を見ると言いました。今日は、その中身、322条です。答えを先に言います。被告人自身の言葉でも、過去の事実を認めたものを、その内容が真実だと言うために使うなら、伝聞です。そして322条が、被告人の書面のために、2つの入口を用意しています。1つ目は、自分に不利益な事実を認めた内容のとき。この場合は、任意にされたものでない疑いがなければ、使えます。2つ目は、それ以外の内容のとき。この場合は、特に信用すべき情況が要ります。さらに、共犯者の調書は、誰に対して使うかで条文が変わります。本人に対しては322条、相手の被告人に対しては321条です。電話の録音データが、322条でどう扱われるのかも、確かめます。

322条が要る場面

事件前のメッセージ「あいつを痛い目にあわせる」はこれからの意思で内心の計画を示すため伝聞法則の外、事件後のメッセージ「きのう、あいつを殴ってきた」は過去の事実を認める内容で真実として使うなら伝聞で322条1項、の2通を並べた板

冒頭のメッセージから、切り分けます。事件の前のメッセージは、「痛い目にあわせる」という、これからの意思です。意思は、頭の中にあるものです。それを示すために使う限り、書かれた内容が真実かどうかを確かめる必要がありません。だから、伝聞法則の外です。犯行計画メモの回で見た考え方です。事件のあとに、「きのう、あいつを殴ってきた」と送っていたらどうでしょう。これは、過去の事実を述べた言葉です。殴ったことが真実だと言うために使うので、伝聞です。Cが自分で書いた言葉でも、伝聞になるのですか。なります。伝聞かどうかは、誰の言葉かでは決まりません。法廷の外でされた供述を、その内容が真実だと言うために使うかで決まります。被告人自身の言葉でも、同じです。なお、Cが法廷で言う「冗談だった」は、その言葉をどれだけ信じるか、という証明力の話です。使えるかどうかの証拠能力とは、別の段階です。このメッセージを印刷した書面は、Cが自分で作った、供述書です。被告人自身が作った書面や、被告人の話を書き取った書面が、どんな条件で使えるのか。それが322条です。

322条1項の読み方

322条1項の構造板。書面の種類は、被告人が作成した供述書と、署名又は押印のある録取書。内容の入口は、不利益な事実の承認と、特に信用すべき情況。但書は、不利益な事実の承認の書面に任意性を求める 図:322条1項の構造板

  • 書面の種類は、被告人が作成した供述書と、署名又は押印のある録取書
  • 内容の入口は、不利益な事実の承認と、特に信用すべき情況
  • 但書は、不利益な事実の承認の書面に任意性を求める

条文です。読み方を先に言います。書面の種類を見て、内容の入口を見て、最後に但書を見る。この3段です。

条文刑事訴訟法第322条第1項

刑事訴訟法第322条第1項 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。但し、被告人に不利益な事実の承認を内容とする書面は、その承認が自白でない場合においても、第三百十九条の規定に準じ、任意にされたものでない疑があると認めるときは、これを証拠とすることができない。

1段目は、書面の種類です。2つあります。被告人が自分で作った供述書。そして、被告人の供述を他の人が書き取った録取書で、被告人の署名か押印があるものです。供述書にも、署名押印は要るのですか。要りません。署名若しくは押印のあるもの、という限定は、条文の構造上、録取した書面のほうにかかっています。自分で書いた書面は、録取者が間に入らず、本人が書いたことが明らかだからです。通説は、こう読みます。録取書は、署名か押印の、どちらか一方があれば足ります。321条1項の柱書と同じ型です。署名押印は、何のためかも確かめます。録取書は、被告人から録取者へ、録取者から書面へと、伝聞が2段あります。被告人が書面を確かめて署名か押印をすることで、録取者の段を取り除きます。2段目の内容の入口は、次の設例で見ます。その前に、321条との違いを1つ。録取者が、裁判官でも検察官でも警察官でも、要件は変わりません。321条1項のように、号で分かれません。もう1つ。見るのは、いま誰が裁かれているかです。供述した時点の身分ではありません。

いま裁かれている被告人の供述は322条、別の事件で被告人だった人やこの事件の被告人でない人の供述は被告人以外の者の供述として321条、と分ける板

境界を置きます。Cは、取調べのときは被疑者でした。その後、この事件で起訴されて、いまは被告人です。この調書は、322条です。一方、Cの知人のPは、別の事件で被告人だったとします。この事件から見れば、Pは被告人以外の者です。Pの書面は、321条です。他の事件の公判調書のところで見た結論と、同じです。322条は、いま裁かれている被告人自身の供述を、その被告人に対して使う場面の条文です。

設例T、4つの書面

設例Tの4行の比較表。1は取調べでの自白調書で不利益な事実の承認、任意性だけ。2は夜は一人だったという調書でアリバイが無いことの承認、任意性だけ。3は弁護人が請求する友人宅にいたという書面で有利な内容、特に信用すべき情況が要る。4は徹夜の取調べで取った疑いがある自白調書で、但書により不可 図:設例Tの4行の比較表

  • 1は取調べでの自白調書で不利益な事実の承認、任意性だけ
  • 2は夜は一人だったという調書でアリバイが無いことの承認、任意性だけ
  • 3は弁護人が請求する友人宅にいたという書面で有利な内容、特に信用すべき情況が要る
  • 4は徹夜の取調べで取った疑いがある自白調書で、但書により不可

設例Tです。被告人のCは、傷害致死の罪で起訴されて、殴っていないと否認しています。Cの書面を、4つ見ます。1つ目。取調べで、Cが「私が殴りました」と述べて、署名押印した調書です。内容は、自白です。自分に不利益な事実の承認なので、1つ目の入口です。任意性に疑いがなければ、足ります。冒頭の、事件のあとのメッセージ「きのう、あいつを殴ってきた」も、1つ目の入口に当たります。Cが自分で書いた供述書なので、署名押印も要りません。2つ目。Cが、「事件の夜は、ひとりで家にいて、誰にも会っていません」と述べた調書です。自白ではありません。ただ、アリバイが無いことを認めているので、これも不利益な事実の承認です。残るのは、任意性だけです。3つ目に進む前に、問いです。弁護人が請求した、被告人に有利な内容の書面は、どちらの入口を通るでしょうか?

有利な内容なら、不利益な事実の承認ではないので、特に信用すべき情況のほうです。3つ目は、弁護人が請求する、「その時間は友人宅にいた」という趣旨のCの書面です。特に信用すべき情況が要ります。321条1項3号と同じ言葉で、2号の後段のように法廷の供述と比べるのではありません。その書面そのものが、特に信用できる情況で作られたかを見ます。理由は、借金のメモで考えると分かります。「まだ返していない」と自分に不利に書いたメモは、嘘をつく理由がありません。「もう返した」と自分に都合よく書いたメモは、いくらでも作れます。有利な内容には、不利益な内容にある信用の裏づけが、ありません。特に信用すべき情況に当たる例を、境界ペアで置きます。事件の前に、争いを予想せず、毎日の習慣でつけていた日記に、その時間の行動が書かれていた。これは、認められる方向です。事件のあと、捜査が始まってから、弁護のために書いたメモは、認めにくい。作られた時期と目的が、分かれ目です。4つ目です。1つ目の調書を、徹夜で何時間も続いた取調べの末に取った疑いが残るとき。但書の、任意にされたものでない疑があると認めるとき、に当たります。証拠にできません。

なぜ321条より緩いのか

321条1項と322条1項の比較表。321条は被告人以外の者の書面で、供述不能などの必要性の要件があり、録取者で号が分かれる。322条は被告人自身の書面で、必要性の要件がなく、録取者を問わず、残るのは任意性か特信情況 図:321条1項と322条1項の比較表

  • 321条は被告人以外の者の書面で、供述不能などの必要性の要件があり、録取者で号が分かれる
  • 322条は被告人自身の書面で、必要性の要件がなく、録取者を問わず、残るのは任意性か特信情況

被告人の書面が321条より緩い理由は、4つあります。1つ目。321条の書面が危ないのは、被告人が、その人に反対尋問できないからでした。322条の書面は、被告人自身の供述です。自分に反対尋問する場面は、考えられません。2つ目。自分に不利益なことを、嘘をついてまで認める人は、普通いません。だから、不利益な内容は、類型的に信用できると考えられます。借金のメモの、不利に書いたほうです。3つ目。321条1項にあった、供述不能などの必要性の要件が、322条にはありません。321条では、その人を法廷で話させるのが本筋で、話せないときに限って、書面で代えました。被告人は、証人として呼ぶことができず、法廷で黙っていることもできます。法廷で話させることを本筋に置けないので、話せないときに限る、という条件も置けないのです。4つ目。録取した人が誰かで、区別しません。すると、残るものが決まります。不利益な事実の承認の入口では、任意性。それ以外の入口では、特に信用すべき情況です。答案に理由を書くなら、1つ目と2つ目で足ります。位置づけも1つ。伝聞法則の意義の回で見たとおり、被告人自身の話でも、書面で届けば、裁判官が直接確かめていない証拠になります。だから、320条1項でいったん締め出して、322条で許します。直接主義の色です。

不利益な事実の承認は自白より広い

不利益な事実の承認の分類図。上に不利益な事実の承認、その下に、自己の犯罪事実の全部または主要部分を認める供述である自白と、アリバイが無いこと、動機、被害者との関係のような自白でない承認 図:不利益な事実の承認の分類図

不利益な事実の承認と自白は、同じではありません。自白は、自己の犯罪事実の全部、または主要な部分を認める供述です。不利益な事実の承認は、自白を含みますが、もっと広い。犯罪事実の主要部分を認めなくても、被告人に不利な事実を認めれば足ります。例を並べます。「私が殴りました」は、自白です。「事件の夜は、一人でした」は、自白ではないけれど、アリバイが無いことの承認です。「被害者には、前から腹を立てていました」は、動機の承認です。「被害者とは、金銭のトラブルがありました」は、被害者との関係の承認です。どれも、不利益です。境界のすぐ外も置きます。「その夜は、友人宅にいました」。これは有利な内容で、不利益な事実の承認ではありません。信用の根拠は、自分に不利益だという点にあります。だから、自白に限る理由がありません。但書が「その承認が自白でない場合においても」と書いているのは、このためです。包含関係は、自白が、不利益な事実の承認の一部、です。自白の中身は、別の回で扱います。

任意性と自白法則

319条1項と322条1項但書の関係の板。319条1項は自白そのものの証拠能力の要件で書面かどうかを問わない。322条1項但書は伝聞例外の要件として同じ基準を借りて自白でない承認にも及ぼす。自白を内容とする調書は両方の関門を通る 図:319条1項と322条1項但書の関係の板

  • 319条1項は自白そのものの証拠能力の要件で書面かどうかを問わない
  • 322条1項但書は伝聞例外の要件として同じ基準を借りて自白でない承認にも及ぼす
  • 自白を内容とする調書は両方の関門を通る

但書は、「第三百十九条の規定に準じ」と書いています。319条1項を確かめます。

条文刑事訴訟法第319条第1項

刑事訴訟法第319条第1項 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。

「準じ」とは、この基準を、そのまま借りる、という意味です。強制、拷問、脅迫、不当に長い抑留や拘禁のあと、その他、任意にされたものでない疑いがある。この疑いがあれば、不可です。場面が違います。319条1項は、自白そのものの証拠能力の要件で、書面かどうかを問いません。ただ、自白でない不利益な事実の承認には、及びません。そこで、322条1項但書が、同じ基準を借りて、自白でない承認にまで及ぼします。整理すると、自白を内容とする調書は、関門が2つです。自白として通る関門が319条1項。伝聞例外として通る関門が322条1項です。設例Tの4つ目は、どちらでも止まります。任意性の判断の中身は、別の回で扱います。

322条2項

322条2項の板。被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、任意にされたものであると認めるときに限り証拠にできる。要件は任意性だけで、場面は公判手続の更新 図:322条2項の板

  • 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、任意にされたものであると認めるときに限り証拠にできる
  • 要件は任意性だけで、場面は公判手続の更新

2項です。

条文刑事訴訟法第322条第2項

刑事訴訟法第322条第2項 被告人の公判準備又は公判期日における供述を録取した書面は、その供述が任意にされたものであると認めるときに限り、これを証拠とすることができる。

被告人が、公判準備や公判期日でした供述を書き取った書面、つまり公判調書などです。要件は、任意にされたものであると認めること、だけです。裁判所の管理の下で録られた供述だからです。公判準備や公判期日の供述は、裁判官の前で、弁護人もいる手続の中でされます。それを書面にするのも、捜査官ではなく、裁判所の側です。取調室で聞き取る調書とは、作られる場が違います。場そのものが信用を支えるので、特信情況を別に求める必要が、類型的に小さい。残るのは、任意性です。場面の例は、公判手続の更新です。裁判官が代わったときに、それまでの審理を、新しい裁判体に引き継ぐ手続のことです。更新の前に行われた被告人質問の供述を、録取した書面で使うのが、2項です。被告人以外の者の公判供述を書き取った書面は、別の回で扱います。

共犯者の調書は誰に対して使うか

併合して審理される共犯事件で、共犯者の検察官面前調書を被告人に対して使うのか共犯者自身に対して使うのかを問う板

この節の前に、思い出してください。前の回で見た、321条1項2号の後段で、特信情況は、何と何を比べて判断しましたか?調書を作ったときの状況と、法廷で供述したときの状況を比べて、調書のときのほうが信用できるか、でした。今日は、その2号が、共犯者の調書で、もう一度出てきます。

設例Uの関係図。被告人Cと共犯者Lが併合して審理されている。Lの検察官面前調書から矢が2本出て、Lに対して使う矢は322条1項、Cに対して使う矢は321条1項2号 図:設例Uの関係図

  • 被告人Cと共犯者Lが併合して審理されている
  • Lの検察官面前調書から矢が2本出て、Lに対して使う矢は322条1項、Cに対して使う矢は321条1項2号

設例Uです。被告人のCと、共犯者のLが、一緒に起訴されて、併合して審理されています。このように一緒に審理される被告人どうしを、共同被告人と言います。Lは、捜査の段階で、検察官に「Cと2人で計画して実行した」と話しました。署名押印もして、検察官面前調書が作られました。検察官は、この調書を請求します。図を見てください。同じ1通の調書から、矢が2本出ています。Lに対して使う矢と、Cに対して使う矢です。矢の先で、条文が分かれます。まず、Lに対して使う場合です。この調書は、Lにとって、自分の供述を録取した書面です。だから、322条1項です。内容はLの自白なので、任意性に疑いがなければ足ります。319条1項も通る必要があります。あわせて、Lに対しては自白調書なので、他の証拠を取り調べたあとでなければ、請求できません。301条です。事前準備の回で見た、裁判官が自白から先に見て先入観を持たないための決まりです。では、同じ調書を、Cに対して使うときは、何条でしょうか?

条文刑事訴訟法第321条第1項

刑事訴訟法第321条第1項(柱書・第2号) 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを証拠とすることができる。 二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況の存するときに限る。

Cから見ると、Lは被告人以外の者のはずです。だから、321条1項で、検察官面前調書なので、2号だと思います。前段は供述不能、後段は相反供述と相対的特信情況で、要件は前に見たとおりです。警察官が録取した調書なら、3号になります。理由の決め手は、1つです。Cにとって、Lは、被害者や目撃者と変わらない第三者です。Cの側には、Lの話の信用性を争う機会が要ります。Lが任意に答えるなら、311条にもとづいて、Cの弁護人は裁判長に告げて質問できます。ただしLには、黙秘する権利もあります。だから、被告人自身の供述を予定した322条を、当てはめる基礎がありません。321条1項で絞ります。

併合して審理していても、弁論を分離して、別々の手続にしていても、変わりません。証拠能力は、被告人ごとに判断します。日常の例で言うと、同じ1通の手紙でも、差出人本人に突きつけるなら、あなたの言葉です。別の人に見せるなら、他人の言葉です。誰に対して使うかで、性質が変わります。

⭐ 論文で書く規範:共同被告人の調書は、誰に対して使うかで条文が変わる 共同被告人の書面は | その共同被告人自身に対して使うなら、本人の供述として322条1項 | 相手の被告人に対して使うなら、被告人以外の者の書面として321条1項(検察官面前調書は2号) (規範(判例型・最高裁)——条文の要件ではない)

誰に対して使うかで条文が変わる比較表。共同被告人L自身に対しては、Lの供述として322条1項で任意性。相手の被告人Cに対しては、被告人以外の者の書面として321条1項で検察官面前調書は2号、警察官面前調書は3号 図:誰に対して使うかで条文が変わる比較表

  • 共同被告人L自身に対しては、Lの供述として322条1項で任意性
  • 相手の被告人Cに対しては、被告人以外の者の書面として321条1項で検察官面前調書は2号、警察官面前調書は3号

表にします。本人に対しては322条1項。相手に対しては321条1項です。共犯者の調書を被告人に使うときは、共犯者が被告人にとって被告人以外の者だから、321条1項を当てはめる。ここは、論文で論点になりうるところです。共同被告人が、公判廷でした供述の扱いは、別の回で扱います。

相被告人の調書と2つの判例

判例2件の整理板。1件目は相被告人の検察官調書を被告人に対しては321条1項2号の書面とした。2件目は共同被告人の調書を322条で使ってよいとした原審の判断を誤りとしたが、他の証拠で認定できるため判決に影響がなく上告棄却 図:判例2件の整理板

  • 1件目は相被告人の検察官調書を被告人に対しては321条1項2号の書面とした
  • 2件目は共同被告人の調書を322条で使ってよいとした原審の判断を誤りとしたが、他の証拠で認定できるため判決に影響がなく上告棄却

判例を2つ見ます。判旨と、事案の事実は、分けて読みます。1つ目です。強盗傷人と住居侵入の事件で、相被告人の検察官調書が証拠に使われました。相被告人は、さきほどの共同被告人と同じ意味で、判例はこう呼びます。この判例を、今日の軸で読みます。

判例最決昭27・12・11 刑集6巻11号1297頁

相被告人の検察官調書を、被告人に対して使うときの判旨 第一審判決が証拠とした所論相被告人Cの検察官に対する供述調書は、被告人に対する関係においては刑訴三二一条一項二号の書面と見るべく、しかも、相被告人は公判期日において前の供述と異つた供述をしており、且つ、審理の経過に照し前の供述を信用すべき特別の情況の存すること明らかであり、そして、相被告人自己に対する関係においては他の証拠が取り調べられた後に取り調べたものであるから、証拠としても少しも違法ではない。

カードの中の記号は、その事件の人物に付いたもので、設例のCやLとは別です。所論とは、上告した側の主張のことです。今日の軸で読むのは、最初の部分です。被告人に対する関係においては、321条1項2号の書面。共同被告人の調書は、相手の被告人に対しては、被告人以外の者の検察官面前調書として扱う、という結論です。相被告人自己に対する関係では、他の証拠のあとに取り調べた、とあり、301条の順序も踏まれています。2つ目です。この判例は、結論が2段に分かれます。1段目は、322条で使ったのが違法か。2段目は、違法なら原判決が破棄されるか、です。放火と詐欺の事件で、事実から言います。前に、2号の相反供述で見た決定も、放火と詐欺の相被告人の調書でしたが、それとは別の事件です。第一審は、共同被告人の供述調書を、被告人の犯罪を認定する証拠にしました。控訴を受けた原審は、それを適法としました。原審の考えは、322条1項の「被告人」に、共犯の共同被告人を含む、というものでした。これは、原審の判断です。最高裁が、誤りとしたほうです。取り違えないでください。最高裁の判旨を読みます。

判例最判昭28・7・7 刑集7巻7号1441頁

共同被告人の調書を322条で証拠に供することは違法とする判旨 当小法廷もまた前記第一小法廷及び札幌高等裁判所の見解を正当であると認める。されば被告人Aの犯罪を認定するにつき前記共同被告人Bの供述調書を刑訴三二二条により証拠に供することは違法であつて、この点に関する原判決の判断は誤つているものと言わなければならない。

先に示されていた見解とは、1つ目の判例と同じ考え方です。共同被告人の調書は、相手の被告人に対しては、被告人以外の者の書面として扱う。これを正当と認めたうえで、結論は違法です。共同被告人の調書を、相手の被告人の認定に、322条で使うことはできません。理由は、設例Uと同じです。Bは、Aから見れば被告人以外の者です。Aに対して使うなら、322条ではなく、321条1項の要件を通さなければなりません。ところが、結論は上告棄却、つまり原判決がそのまま維持されました。410条1項は、判例違反などの上告の理由があれば、原判決を破棄する、と定めています。ただし書で、その違反が判決に影響を及ぼさないことが明らかなときは、この限りでない、とします。続きを読みます。

判例最判昭28・7・7 刑集7巻7号1441頁

違法があっても判決に影響を及ぼさないとして上告を棄却した判旨 しかしながら本件において第一審判決は、被告人A本人の自白を録取した司法警察員並びに検事に対する供述調書(それが任意の供述を録取したものであることは原判決の説示するところである)を補強する証拠として、証拠の標目に挙げているように多くの証拠を引用しているのであつて、本件で問題となつた前記Bの供述調書を除外しても、その他の証拠によつて被告人A本人の自白は補強され、判示事実は優に認定し得られるのであるから、前記判例違反の事由は刑訴四一〇条一項但書にいう判決に影響を及ぼさないこと明らかな場合に当り、原判決を破棄する事由とはならない。

理由は、被告人本人の自白を録取した調書のほかに、多くの証拠があったからです。問題のBの調書を除いても、事実は十分に認定できる。だから、410条1項但書の、判決に影響を及ぼさないことが明らかな場合に当たり、破棄されません。短答の落とし穴は、ここです。322条で使うのは違法。でも、上告は棄却。違法と、破棄は、別の話です。逆に、Bの調書を除くと事実を認定できない事件なら、判決に影響がないとは言えず、この但書には当たりません。自白の補強の中身は、別の回で扱います。1つ目の判例が違法でなかったのは、322条ではなく、321条1項2号の要件を確かめて使ったからです。

録音データと322条1項

設例Vの流れの図。被告人Cから友人Pへの供述の過程には322条1項がかかり、友人Pのスマホが声を記録する機械の過程には伝聞性がなく署名押印は不要で、録音媒体に至る 図:設例Vの流れの図

思い出してください。供述録取書で、署名押印が取り除く伝聞の過程は、誰の過程でしたか?書き取った人、録取者の過程です。録音では、ここが変わります。設例Vです。被告人のCが詐欺で起訴されています。友人のPは、Cからかかってきた電話を、スマホで録音していました。録音には、「きのう、例の客から200万円受け取った。分け前の日を決めよう」という声が入っています。検察官は、Cが金を受け取った事実を立証するために、この録音を請求します。内容が真実だと言うために使うので、供述証拠です。伝聞になります。過程は、2つに分けます。1つ目。Cから、聞き手のPへ。供述の過程です。ここに、322条1項の要件がかかります。お金を受け取ったという内容は、不利益な事実の承認です。自分からかけた電話で、強制も脅迫もありません。任意性に疑いはありません。2つ目。Pのスマホが、声を記録する過程です。機械が記録する部分には、聞き違えや書き間違いのような誤りが入るおそれが乏しい。だから、伝聞の過程を考えません。署名押印は、要りません。

録取書は、人が書き取るので録取者の過程があり、署名押印で確かめる必要がありました。録音には、確かめる相手の過程がないのです。設例Vの結論です。不利益な事実の承認で、任意性に疑いがなく、署名押印は不要。証拠能力は、認められます。付け加えが3つあります。1つ目。録音の声が本当にCのものかは、別に立証が要ります。2つ目。録音の内容が、被告人以外の者の供述なら、321条1項3号で考えます。3つ目。現場で録れた音を、声が出たという事実そのものに使う場合は、伝聞ではありません。現場録音の回で見た区別です。取調べの録音録画を実質証拠にする場合は、別の回で扱います。

今日の地図(保存版)

今日の内容を1枚に整理した保存版のまとめ板。322条1項の3段、誰に対して使うかで決まる条文、録音の2つの過程、短答の落とし穴の整理 図:今日の内容を1枚に整理した保存版のまとめ板

まとめます。322条1項は、3段で読みます。書面の種類、内容の入口、但書です。書面の種類は、供述書と、署名か押印のある録取書。供述書に署名押印は要りません。内容の入口は、不利益な事実の承認なら任意性。それ以外なら、特に信用すべき情況。但書で、任意にされたものでない疑いがあれば不可です。共犯者の調書は、誰に対して使うかで決まります。本人に対しては322条1項。相手の被告人に対しては321条1項、検察官面前調書なら2号です。録音は、被告人から聞き手への過程に322条1項がかかり、機械の記録に署名押印は要りません。短答の落とし穴を、○×で言います。322条1項にも、供述不能の要件がある。これは×です。必要性の要件はありません。録取者が警察官なら、3号の要件がかかる。これも×です。録取者で区別しません。共同被告人の調書は、相手の被告人に対しても322条で使える。これは×です。321条1項で、322条で使うのは違法です。ただし、他の証拠で認定できれば、上告は棄却されます。供述書にも、署名押印が要る。×です。録音にも、署名押印が要る。×です。不利益な事実の承認は、自白より広い。○です。不利益でない内容には、特に信用すべき情況が要る。○です。

今日の1問の答えは、こうですね。被告人自身の書面は、自分に不利益な事実の承認なら、任意性に疑いがなければ使える。それ以外の内容なら、特に信用すべき情況が要る。共犯者の調書は、誰に対して使うかで、322条と321条が入れ替わる。

参照条文

  • 刑事訴訟法第322条第1項
  • 刑事訴訟法第319条第1項
  • 刑事訴訟法第322条第2項
  • 刑事訴訟法第321条第1項

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