特信文書(323条)
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第5章 証拠法 ⑭/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
導入
図:会社の経理担当が、毎晩その日の入出金だけを、感想を交えず個人の手帳に書き続けていた
- 書いた本人を法廷に呼ばなくても、この手帳だけで入出金の事実を証明できるのか
- 同じ人がつけていた私的な日記ならどうか、を問う導入板
前回の最後に、次は323条と324条を見ます、と予告しました。ただ、この2つは、扱う中身がまったく違います。だから、今日は323条だけを、じっくり見ます。324条の、法廷の外で聞いた話を法廷で語る場面は、次の回に回します。先に、答えを言います。手帳は、書いた本人を呼ばなくても、入る可能性があります。日記のほうは、入りにくい。分かれ目は、誰が書いたかではありません。どう作られた書面か、です。今日は、この1本の軸で、1号と2号と3号の線を引きます。
前提の呼び戻し:321条と322条の作り
図:伝聞例外の2本の柱は、必要性と信用性の情況的保障
- 321条は被告人以外の者の書面、322条は被告人の書面で、どちらも誰の供述かで要件を分け、供述不能、署名押印、特信情況といった個別の要件を課す
- 321条の2項から4項は作った人が裁判所、捜査機関、鑑定人かで要件が緩む
伝聞の例外が許される理由は、2つでした。必要性と、信用性の情況的保障です。321条と322条は、この2つを、書面ごとに釣り合わせて、要件にしていました。被告人以外の人の書面なら321条、被告人の書面なら322条に振り分けました。そのうえで、供述不能、署名や押印、特に信用すべき情況といった要件を、1つずつ求めました。例えば、被告人以外の人が自分で書いたメモなら、321条1項3号です。書いた人が亡くなったり行方が分からなかったりして、法廷で話せないこと、これが供述不能です。そのメモがどうしても必要なこと。そして、書いたときの情況が、特に信用できること、これが特信情況です。3つそろって、やっと入ります。つまり、この2つの条文は、誰の供述かを軸にして、要件を決めています。さらに、321条の2項から4項は、作った人が裁判所か、捜査機関か、鑑定人かで、要件が段階的に緩んでいきました。これが、前に見た、作成者の地図です。
今日の323条は、その地図の脇に置かれます。誰の供述か、誰が作ったか、ではなく、書面がどう作られたかで決まるからです。前に見た作成者の地図の最後に、あとで見る条文として書いておいた、特信文書です。
323条の条文と、無条件の意味
図:323条の骨組み
- 柱書は321条から前条までに掲げる書面以外の書面が対象で、次に掲げるものに限り証拠にできる
- 1号は公務員が職務上証明できる事実の書面、2号は業務の通常の過程で作成された書面、3号は前二号のほか特に信用すべき情況の下に作成された書面
条文を、全文で出します。まず、目で追ってください。
条文刑事訴訟法第323条
刑事訴訟法第323条 第三百二十一条から前条までに掲げる書面以外の書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。 一 戸籍謄本、公正証書謄本その他公務員(外国の公務員を含む。)がその職務上証明することができる事実についてその公務員の作成した書面 二 商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面 三 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面
柱書から読みます。対象は、321条から前条までに掲げる書面以外の書面です。321条と322条が、誰の供述か、という枠で要件を決めていた書面とは別に、作られ方に着目して証拠にする条文だ、と読みます。次に、証拠とすることができる、の中身です。同意は要りません。供述不能や、特信情況の立証も要りません。弁護人が不同意でも、この3つのどれかに当たれば、証拠能力が付きます。それなら、書いてあることは、そのまま事実として認められるのですか。違います。ここは、短答で必ず問われます。323条が与えるのは、証拠能力だけです。書いてある中身を信じるかどうか、証明力は、裁判所が別に評価します。入口を通れるだけで、信じてもらえるかは、別の話です。
なぜ要件なしでよいのか
図:要件を置かない2つの理由
- 1つ目は、作られ方そのものが虚偽や誤記を入りにくくする、類型的な信用性
- 2つ目は、作成者を法廷で供述させるより書面のほうが正確、という必要性
- 何年分もの入出金の細目を、記憶だけで語るのは不可能
- 321条は、書面が信用できても作成者が呼べるなら呼ぶのが出発点
323条だけが要件なしでよい理由は、2つあります。2つとも、前に見た、必要性と、信用性の情況的保障の、言い換えです。1つ目は、信用性の側です。323条の書面は、作られ方そのものが、虚偽や誤記を入りにくくしています。個別に調べなくても、種類として信用できる、という考え方です。たとえば、ホテルのフロントが、毎晩、決まった様式で書く宿泊台帳です。間違えると、請求も部屋割りも狂います。だから、書く人は、正確に書かざるをえません。作られ方が、保障になっています。2つ目は、必要性の側です。作った人を法廷に呼んで語らせるより、書面のほうが、正確なことが多いのです。例えば、ある会社の5年分の入出金の細目を、経理担当が、法廷で、記憶だけで語れるでしょうか。
無理です。何月何日にいくら動いたかなんて、覚えていません。語らせても、かえって不正確になります。本人を尋問する意味が薄く、書面のほうが、記録として確かです。ここが、321条との、最大の違いです。321条の出発点は、書面が信用できても、作った人を法廷に呼べるなら、まず呼んで、反対尋問で確かめる、でした。323条は、その出発点が成り立たない書面を、類型として取り出した条文です。作成者を呼ぶ意味が薄いうえに、作られ方が信用性を支えている。だから、個別の要件を置きません。ただし、これは類型の話です。目の前の書面が、実際にそういう作られ方をしているかは、1号から3号の、どれに当たるかの判断で、問われます。
321条・322条との違い
図:比較表
- 決め手は、321条と322条が誰の供述か、323条が書面がどう作られたか
- 要件は、321条と322条が供述不能や特信情況や署名押印を個別に求め、323条は原則なし
- 作成者の扱いは、321条が呼べるなら呼ぶのが出発点、323条は書面のほうが正確で呼ぶ意味が薄い
比較します。決め手は、321条と322条が、誰の供述か。323条が、どう作られた書面か、です。要件は、321条と322条が、個別に求めます。323条は、原則、求めません。作成者の扱いは、321条が、呼べるなら呼ぶ。323条は、呼ばなくても、書面のほうが確かです。個別の要件を置かない代わりに、入口を、3つの型に絞っています。要件が緩い分、入れる書面を、厳しく限る。この釣り合いは、321条の作りと同じ形です。なぜ、入口を絞るのか。要件を置かずに、どんな書面でも入れたら、反対尋問で確かめる機会のない書面が、そのまま通ってしまいます。だから、作られ方が信用性を支えていると言える型だけに、入口を限っているのです。
冒頭の経理担当が、もし事件の被告人本人だったら、手帳の扱いは変わりますか。変わりません。被告人が書いた書面でも、まず323条に当たるかを見ます。作られ方が同じなら、書いた人の立場で、正確さは変わらないからです。決め手は、書いた人ではなく、書面がどう作られたか、です。
1号:公務員の職務上の証明文書
図:1号の骨組み
- 公務員が職務上証明することができる事実について、その公務員が作成した書面
- 例は戸籍謄本、公正証書謄本、不動産登記簿の謄本、印鑑証明書、前科調書、身上照会の回答書
- 外国の公務員が作ったものも含む
- 対比は、住民票の写しは入り、警察官が事件ごとに書く捜査報告書は入らない
まず、1号です。骨は、公務員が、職務上証明することができる事実について、その公務員が作った書面、です。例は、条文にある戸籍謄本と公正証書謄本のほか、不動産登記簿の謄本、印鑑証明書、前科調書、身上照会の回答書、つまり、役所が照会を受けて、人の本籍や身分関係を答えた書面があります。外国の公務員が作った書面も含まれます。括弧書きのとおりです。公務員が作った書面なら、全部入るのですか。入りません。ここに、線があります。キーワードは、職務上証明することができる事実、です。対比で言います。市区町村の窓口が出す住民票の写しは、誰がどこに住んでいるか、という事実を、公務員が、職責として証明するために作ります。記載の正確さに、職務上の責任という担保があります。入ります。一方、警察官が、特定の事件のために、関係者に聞いたり調べたりして、事実を書いた捜査報告書は、入りません。作られた目的が、職責上の証明ではなく、この事件の立証だからです。
住民票は、事件がなくても、毎日、職責として作られます。捜査報告書は、事件があって初めて、その立証のために作られます。作成の目的の違いが、信用性の担保の差になります。ですから、捜査機関が作った書面は、323条ではなく、前に見た321条の側で扱います。警察官が現場を見て書いた実況見分調書のような、見分の結果を書いた書面なら、3項でした。もう1つ。民間の金融機関などが作る回答書は、公務員が作った書面ではないので、1号には入りません。作った人が公務員かどうかで、1号の入口が決まります。ただし、私人でも、専門の知識をもつ人が、実験や分析をして結果を報告した書面なら、前に見たとおり、321条4項に準じて扱います。手元の記録をそのまま答える回答書とは、別の道です。
2号:業務の通常の過程で作られた書面
図:2号の骨組み
- 商業帳簿、航海日誌その他、業務の通常の過程において作成された書面
- 核心は、業務の基礎資料として継続的、規則的に作られ、間違えると業務そのものが回らないこと
- 入る例は運行表、未収金控帳、カルテ
- 入らない例は契約書、領収証、診断書
次に、2号です。条文は、商業帳簿、航海日誌その他、業務の通常の過程において作成された書面です。核心は、業務の通常の過程、という言葉です。業務の基礎資料として、継続的に、規則的に作られる。書いた内容は、作った人以外の目にも触れ、その人たちの仕事のもとになる。だから、間違えると、業務そのものが回らなくなります。誤りが入るおそれが、類型として低いのです。具体例です。運送会社の配車係が、毎朝、様式の決まった運行表に、出発と到着の時刻と、積荷を書き込みます。経理部は、その運行表をもとに、運賃を計算します。何年分も、綴じてあります。
運行表の記入が雑だと、運賃の計算が狂って、荷主との精算が合わなくなります。業務が回らなくなる。つまり、書く人は、正確に書かざるをえません。これが、2号の、正確さの担保です。2号に当たるとされた例には、未収金控帳があります。医師のカルテも、診療の経過を継続して記録した書面で、2号の例です。逆に、入らない例です。契約書や領収証は、事案ごとに内容が違う書面が、その都度作られます。継続的、規則的な記録ではありません。注意が必要なのは、診断書です。診断書は、医師が、カルテをもとに、個別の求めに応じて作ります。継続的、規則的な記録ではないので、2号ではありません。医師が専門の知見で、けがや病気を判断した結果を書く書面なので、鑑定書と同じ性質と見て、前に見た321条4項の側で扱います。
短答で頻出の対比です。同じ医師でも、継続して書く記録と、求めに応じて作る書面は、別物です。
3号:受け皿は、1号2号に準ずる高度の信用性
図:3号の骨組み
- 前二号に掲げるもののほか特に信用すべき情況の下に作成された書面
- 何でも入る箱ではなく、1号2号に準ずる高度の信用性が必要
- 見る観点は2つ
- 1つ目は定型的、類型的な信用性で、決まった書式、所感を交えない記録
- 2つ目は個別具体的な高度の信用性で、作られた具体的な事情から誤記や恣意の疑いが小さいこと
最後に、3号です。条文は、前二号に掲げるもののほか、特に信用すべき情況の下に作成された書面、です。特に信用できる書面なら、何でも入る、ということですか。入りません。ここが、一番大事です。3号は、何でも入る箱ではありません。1号と2号の書面と、同じくらいの高さの信用性が必要です。条文が、前二号のほか、と書くのは、その2つに準ずるもの、という位置づけだからです。3号は、受け皿です。1号と2号の型に、ちょうど当てはまらなくても、その2つと並べて遜色のない信用性がある書面を、すくい上げます。見る観点は、2つです。1つ目は、定型的、類型的な信用性です。決まった書式で、所感を交えず、事実だけが記録される書面。例えば、預金通帳の入出金の記載や、レジが打ち出すレシートです。種類として、誤りが入りにくいかを見ます。2つ目は、個別具体的な、高度の信用性です。その書面が作られた具体的な事情から、誤記や恣意の疑いが小さいと言えるか。例えば、電話を受けた直後に、日時を正確に記録した電話記録のような場面です。
321条1項3号の特信情況とは、別物です。あちらは、供述がされた情況の話でした。323条3号の観点は、書面の作られ方の信用性です。323条の3号に特有の見方です。取り違えやすいので、気をつけてください。例として、一般に広く信頼される、定期刊行物の市場価格表や、統計表、年表が挙げられます。ただし、どこまで広げるかには、議論があります。個別の事情から、継続的で正確な記録だとして、3号を認めた裁判例もあります。ただ、メモなら入る、とはなりません。体験した当時に、自分でメモしたから信用できる、という理屈で3号を広く使う主張には、学説の批判が強いです。当時のメモというだけでは、類型的に、信用性が高いとまでは、言えないからです。ここまでを、規範としてまとめます。
⭐ 論文で書く規範:3号は、1号2号に準ずる高度の信用性が必要 323条3号の書面は | 1号2号の書面に準ずる高度の信用性が必要 | 定型的、類型的な信用性、または個別具体的な高度の信用性により、誤記や恣意のおそれが小さいことが客観的に認められるとき (規範(解釈で立てる)——条文の要件ではない。論文で論点になりうる)
論文では、ここで、3号に当たる理由を、観点に分けて書くことになります。
ロッキード事件の決定:業務日誌と当用日記
図:判例の要点
- 長期間ほぼ毎日、業務の要点を所感なしで箇条書きにした業務日誌は、2号と解するには疑念が残るが、2号書面に比肩しうる高度の信用性の情況的保障があり、3号に該当
- 個人的な心覚えとして前日や数日前の体験を書き、私生活や主観的な所感が混ざる当用日記は、1号2号に準ずる性質の書面と解し得ず、321条1項3号で判断
- 分かれ目は作成目的、作成時期、記載内容
- 出典は判時893号
判例を見ます。ロッキード事件の、児玉・小佐野ルートの裁判で、日誌と日記が、問題になった決定です。判断の要点を、2つに分けて話します。1つ目は、ある会社の幹部が、長期間、ほぼ毎日つけていた業務日誌です。当日の終業後か翌朝に、業務の要点を、所感を交えず、箇条書きで書いていました。他の人の校閲はなく、個人の私物でした。決定は、これを2号と言い切るには、疑問が残る、としました。2号の書面は、さきほどの運行表のように、書いた内容が作成者以外の目にも触れ、その人たちの仕事の基礎にもなります。この日誌には、それがありません。個人の目的で書かれ、ほかの人の目に触れない、つまり、公開性がないからです。それでも、3号に当たるとしました。公開性がない点を除けば、2号の書面に並ぶ、高度の信用性の情況的保障がある。作成の目的と方法から、誤記のおそれが小さい。そう考えました。2つ目は、当用日記です。個人的な心覚えとして、前日、または、2日か3日前の体験を書き、私生活や、主観的な所感や意見が、随所に混ざっていました。こちらは、1号2号に準ずる性質の書面とは、到底解することができない、としました。323条の書面ではなく、321条1項3号で判断します。つまり、供述不能などの要件を満たす必要がある、という結論です。問いです。日記が323条に乗らないとき、次に見る条文は、何条の何号でしたか?
321条1項3号です。被告人の供述なら、322条でした。323条は、入口です。そこで外れても、道が閉じるわけではありません。分かれ目は、3つです。作成の目的。作成の時期。記載の内容です。日誌は、業務のために作られました。当日か翌朝と、記憶の新しいうちに書かれ、中身は所感のない事実の記録です。日記は、個人の心覚えで、前日や数日前のことを、あとから書いたもので、感想が混ざります。3つを合わせて見ると、日誌は記録として固く、日記は、ばらつきます。この3つの軸で、1号2号に準ずるかを測るのが、決定の骨です。
自前の事案で当てはめる
図:事案の関係図
- 会社の経理担当が個人の手帳に毎晩入出金を所感なしで記録し、検察官が証拠請求し、被告人側が不同意とする
- 手帳は3号か、の1枚
- 同じ経理担当が数日後に所感混じりで書く日記は、321条1項3号へ
冒頭の事案に、戻ります。経理担当は、個人の手帳に、毎晩、その日の入出金を、所感なしで箇条書きにしていました。他の人は、見ません。検察官が請求し、弁護人は不同意です。まず、1号か2号か。経理担当は公務員ではないので、1号ではありません。業務の中で作られていますが、手帳は、ほかの人の目に触れず、それをもとに誰かが仕事をするわけでもありません。2号の正確さを支えていた、ほかの人の目と、業務の基礎という性質が、欠けています。2号と言い切るのは、難しい。さきほどの、日誌と同じ型です。次に、3号です。毎晩、その日のうちに書かれ、継続していて、所感がありません。目的は業務の記録、時期は当日、内容は事実のみ。3つの軸が、そろっています。1号2号に準ずると言え、3号に当たる可能性が高い。
確実とまでは言えません。個別の事情で変わるからです。たとえば、あとでまとめて書いた日がある。金額を書き直した跡がある。そうなれば、誤記のおそれが大きくなります。3号は、個別の事情まで見ます。一方、同じ経理担当が、気の向くまま、2日か3日後に、愚痴や私生活も交えて書く日記は、どうでしょうか。目的も、時期も、内容も、ばらつきます。1号2号に準ずる性質は、ありません。323条には乗らず、321条1項3号です。経理担当が法廷で話せない事情があるか、日記がどうしても必要か、書いたときの情況が特に信用できるか、を見ます。
手帳と日記の差は、誰が書いたかではなく、作られ方の差です。
3号の限界:領収証
図:領収証の対比
- 工務店が1通ずつ手書きして相手に渡す領収証は、継続的にまとまった記録にならず、取引実態をそのまま表すとは限らないため323条の書面には当たりにくい
- レジが全取引を同じ形式で打ち出して残す記録や預金通帳は、定型的に継続して作られ、3号の方向
- 参照、東京地決昭56・1・22
入りにくい、とされます。業務の中で作られても、1通ごとに、相手に渡すために、その都度作る領収証は、323条の書面には当たりにくいのです。理由は、2つです。1つ目、独立して1通ずつ作られ、支払った人に渡されます。継続的に、まとまった記録になっていません。2つ目、渡された領収証は、取引の実態を、そのまま表しているとは限りません。対比です。工務店が、1通ずつ手書きして渡す領収証は、入りません。店のレジが、全部の取引を、同じ形式で打ち出して、控えを残す記録は、入る方向です。業務で作っただけでは、足りません。継続的な、まとまった記録になっているか。ここを見ます。短答では、領収証は原則として入らない、と押さえてください。
該当性は書面だけで決めない

もう1つだけ、判断の資料の話です。最高裁は、2号に当たるかどうかを、書面そのものだけでなく、作成した人の法廷での証言なども資料にして判断してよい、としました。この考え方は、323条の各号に広く使えると解されています。作成者が法廷で話した内容などから、特に信用すべき情況で作られたことが明らかになれば、それも考慮に入れます。作られ方は、書面の中より、作った人の話で、よく分かるからです。
答案での順序と、短答の落とし穴
図:判断の順序の保存版
- 書面の種類を確認、1号は公務員の職責上の証明か、2号は業務の通常の過程で継続的に作られたか、3号は1号2号に準ずるか
- 観点は定型的類型的か、個別具体的か
- どれにも当たらなければ321条1項3号、被告人の供述なら322条へ戻る
まとめます。答案では、まず、書面の種類を確かめます。捜査機関の見分の書面は3項、鑑定書は4項でした。そのうえで、日誌や帳簿や証明文書のように、作られ方で信用性が決まる書面を、323条で見ます。書いた人が被告人でも、ここは同じです。1号は、公務員の職責上の証明か。2号は、業務の通常の過程で、継続的に作られたか。3号は、1号2号に準ずるか。
図:判断の順序の後半
- どれにも当たらなければ321条1項3号、被告人の供述なら322条へ戻る
- 短答の落とし穴として、323条が与えるのは証拠能力だけで証明力は別に評価する
どれにも当たらなければ、321条1項3号に戻ります。被告人の供述なら、322条です。短答の落とし穴を、○×で言います。323条の書面は、要件なしで入るから、書いてあることも、そのまま事実と認定される。×です。323条が与えるのは、証拠能力だけです。捜査報告書は、公務員が作るので、1号に当たる。×です。職責上の証明ではなく、事件の立証のために作られます。領収証や契約書は、業務で作るので、2号に当たる。×です。診断書も、2号ではありません。カルテと、帳簿は、○です。3号は、特に信用できる書面なら、何でも入る。×です。1号と2号に準ずる、高度の信用性が必要です。所感の混ざった日記は、323条に乗らず、321条1項3号です。
次は、法廷で証人が、あの人がこう言っていた、と話す、又聞きの証言です。324条と、伝聞が二重になる、再伝聞を見ます。
参照条文
- 刑事訴訟法第323条