違法な取調べ・違法な身柄拘束下の自白と派生証拠・反復自白
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第5章 証拠法 ⑱/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
導入
図:違法な逮捕の下で取った自白は、法廷で外された
- ところが同じ人は、その後、裁判官の前でもう一度、やりました、と認めた
- この2度目の自白は、使えるのか
前回の最後に、予告しました。宿泊や手錠という取調べの違法。入口で見た、違法な身柄拘束の下の自白。そして、最初の自白が排除されたあと、もう一度認めた自白。今日は、この3つを、実際に当てはめます。今日の問いを、1つ置きます。違法な逮捕の下で取った自白は、法廷で外されました。ところが、同じ人が、その後、裁判官の前で、もう一度、やりました、と認めました。この2度目の自白は、使えるのでしょうか。最初の違法を引き継ぐのか、別の場で仕切り直されるのか。ここが、後半の山場です。答えを先に言います。2度目の自白は、使えるかどうかが、誰が、何のために取ったか、で分かれます。裁判官の勾留質問なら使える方向、捜査官が取ったなら、違法がつながる方向です。理由は、あとで丁寧に見ます。
図:設例Qの呼び戻し
- 警察官Kは放火事件の犯人は被疑者Dだと睨むが証拠が足りない
- 自転車を無断で持ち去った軽い窃盗の疑いでDを逮捕勾留し、勾留中は自転車の件にほとんど触れず放火だけを連日取り調べる
- Dは脅されも約束もされず落ち着いて放火を認め、調書が作られる
- 前回の結論、この自白は排除法則の側で見る
前回の設例Qを、もう一度、置きます。警察官のKは、ある放火事件の犯人は、Dだと睨みました。ただ、証拠が足りません。そこで、Dが自転車を無断で持ち去った、という軽い窃盗の疑いで、Dを逮捕し、勾留しました。勾留の間、自転車の件には、ほとんど触れず、連日、放火についてだけ、取り調べました。Dは、脅されも、約束もされず、落ち着いて、放火を認め、調書が作られました。前回の結論は、この自白は、自白法則というより、排除法則の側で見る、でした。今日は、その排除法則の側での当てはめを、ここから始めます。今日の3つを整理します。1つ目は、取り方そのものの違法、つまり宿泊と手錠です。2つ目は、取調べより前の違法、つまり設例Qの当てはめと、接見の制限です。3つ目は、自白の先です。自白から得た証拠と、もう一度の自白が、どうなるかを見ます。
呼び戻し:2つの法則と3つの理由
図:前回の道具の呼び戻し
- 自白法則(319条1項)と違法収集証拠排除法則の2本立てが二元説の二元
- 理由は3つ
- 虚偽排除説は、その状況でやっていなくても認めそうか
- 人権擁護説は、供述の自由が侵されたか
- 違法排除説は、取り方が違法か
- 虚偽排除説と人権擁護説は合わせて任意性説
- 委員会のたとえ、生活指導の委員会が自白法則、風紀の委員会が排除法則
前回読んだ、刑事訴訟法319条1項を、もう一度、置きます。
条文刑事訴訟法第319条第1項
刑事訴訟法第319条第1項 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
条文に直接書いてある、強制、拷問、脅迫による自白と、不当に長く抑留、拘禁された後の自白が、明文の事由です。そのほかを広く拾う受け皿が、太字の、任意にされたものでない疑のある自白、です。この受け皿に当たるかを見る道具が、3つありました。虚偽排除説は、その状況で、やっていなくても認めそうか、を拾います。人権擁護説は、供述の自由が侵されたか、を拾います。違法排除説は、取り方が違法か、を拾います。虚偽排除説と人権擁護説は、合わせて、任意性説と呼びます。二元説の二元とは、自白法則と、違法収集証拠排除法則の、2本立てです。排除法則は、捜査の手続に、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、証拠として使うのが相当でない場合に、その証拠を外すルールです。令状主義とは、逮捕のような強制処分は、裁判官の令状によらなければできない、という原則です。精神を没却する、とは、その趣旨を丸ごと無にするほど、という意味でした。前回の整理は、3つありました。1つ目の整理は、多数とされるもので、319条1項は虚偽排除を基礎に、黙秘権の侵害を伴う違法、つまり、話すかどうかを自由に決められない状態に追い込む違法も拾い、それ以外の違法は排除法則に回します。2つ目の整理は、近時有力で、319条1項は虚偽排除に純化し、違法は排除法則に任せます。全部入れの整理は、虚偽排除、人権擁護、違法排除の3つの観点を、すべて319条1項の中に組み込みます。ですから、全部入れの整理は、二元説の2本立てには、当たりません。
前回の、委員会のたとえが、今日も使えますか。使えます。嘘の答えを誘うような聞き方なら、生活指導の委員会、つまり自白法則が審査します。聞き方が、校則そのものに反しているなら、風紀の委員会、つまり排除法則が審査します。今日の作業は、どの事情を、どちらの委員会に回すか、の当てはめです。
取調べの違法①:宿泊を伴う長期の取調べ
図:宿泊を伴う長期の取調べ
- 殺人事件の参考人として警察署に任意同行された者を、連続して9泊、10日間、夜は警察が手配した宿泊場所に泊め、警察官が厳重に監視し、ほぼ外界と隔絶された状態で、休みなく連日長時間取り調べ、自白を得た
- のちに逮捕
- 裁判所の判断、行き過ぎで違法は重大、違法捜査抑制の見地からも証拠能力を付与するのは相当でない
- この自白の証拠能力を否定、有罪は別の証拠で認定(東京高判平14・9・4 判時1808号144頁)
まず、取調べのやり方そのものが違法なとき、その自白は使えるのか、を見ます。1つ目は、宿泊を伴う、長期の取調べです。任意捜査としての取調べは、社会通念上、相当と認められる方法、態様、限度で許されます。その限界は、取調べの限界の回で見ました。ここでは、限界を大きく超えたとき、自白がどうなるかを見ます。高等裁判所の事案を、要旨で語ります。殺人事件の参考人として、警察署に任意同行された人がいました。その人は、そのまま連続して9泊、10日間、警察が手配した場所に泊められました。夜は、警察官に厳重に監視され、ほとんど外の世界と切り離されていました。昼は、休みなく、連日、長時間、取り調べられました。その人は、自白しました。のちに、逮捕されています。
形は、任意です。しかし、9泊10日の宿泊と監視は、実際には、身柄の拘束にかなり近い状態です。裁判所は、明らかに行き過ぎで、違法は重大だ、と判断しました。そして、違法な捜査を抑える、という見地からも、この自白に証拠能力を与えるのは相当でない、としました。結論は、原判決を破棄して、この自白と、これを有力な資料にした、逮捕後の自白の証拠能力を否定した、です。ただし、ほかの証拠で、有罪とされています。この裁判例は、2つの法則の使い分けを意識して判断した点が大事です。自白法則、つまり任意性の問題もありうる。しかし、手続の過程の違法が問題になる場合は、強制や拷問があったかなど、取調べの方法そのものの違法を、1つずつ判断する前に、違法収集証拠排除法則が使えるかを、先に検討する。違法の有無と程度を見て、排除すべきかを考える方が、判断の基準として明確で、妥当だ、と述べました。
前回の分担の、どの整理に当たるか、という名前を、判決は挙げていません。ただ、考え方は、前回の二元説と同じです。取調べの方法が、任意性を疑わせるかは、自白法則で見る。手続の過程そのものが違法なら、排除法則で見る。2本を使い分けています。二元説を、裁判所が実際に使った実例として、読んでください。覚えるのは、これです。手続の過程の違法が問題になるなら、排除法則、つまり違法の重大性と、違法捜査を抑える見地で、先に見る。これは、この裁判例の考え方です。短答の注意です。この自白を、自白法則だけで排除した、は誤りです。排除法則を、先に検討しています。また、結論は、自白の証拠能力の否定です。被告人の有罪そのものは、別の証拠で認められました。
取調べの違法②:手錠をかけたままの取調べ
図:手錠をかけたままの取調べ
- 事案、勾留中の被疑者、公職選挙法違反
- 検察官が手錠を施したまま取り調べて供述を得た
- 上告で憲法38条2項違反を主張
- 判旨、手錠のままだと心身に圧迫を受け任意の供述は期待できないと推定、反証がなければ任意性に一応の疑い
- 結論、終始おだやかな雰囲気で任意と明らか、上告棄却
- 片手錠は心理的圧迫が一般に軽い(最決昭52・8・9)
2つ目は、手錠です。事案は、こうです。公職選挙法違反で勾留されていた被疑者を、検察官が、手錠を施したまま、取り調べました。そして、供述を得ました。上告で、憲法38条2項に違反する、という主張がされました。判旨は、推定と、反証の2段です。
判例最判昭38・9・13 刑集17巻8号1703頁
手錠をかけたままの取調べの判旨 すでに勾留されている被疑者が、捜査官から取り調べられるさいに、さらに手錠を施されたまゝであるときは、その心身になんらかの圧迫を受け、任意の供述は期待できないものと推定せられ、反証のない限りその供述の任意性につき一応の疑いをさしはさむべきであると解するのが相当である。
手錠を施したままなら、任意の供述は期待できない、と推定される。そして、反証がない限り、任意性に、一応の疑いをさしはさむ。推定とは、覆る余地のある、一応の見立てです。反証が出れば、任意と認められます。疑いをさしはさむ、というだけなら、結局、その自白は使えるのですか。それが、事案の結論です。この事案では、検察官は、手錠を施したまま取り調べました。しかし、終始おだやかな雰囲気の中で取調べを進め、供述が、すべて任意になされたことが、明らかでした。つまり、任意であることの反証が、立証されたのです。最高裁は、任意性を認めて、上告を棄却しました。片手錠については、後の決定が、一言だけ触れています。片手錠は、両手錠に比べて、一般に、心理的な圧迫の程度が軽い。取調べの状況を合わせて見ても、自白の任意性を疑わせる状況は見当たらない、としました。手錠は、心理的な圧迫を通じて、嘘を誘う事情にもなります。委員会のたとえでは、生活指導の委員会、つまり自白法則の側で見る事情です。覚えるのは、手錠は、任意性を推定的に疑う事情であり、反証で覆る、という点です。短答の注意です。手錠をかけたままの取調べで得た自白は、常に排除される。×です。この判決は、任意性を認めて、上告を棄却しています。
取調べより前の違法①:違法な身柄拘束の下の自白
図:先行する手続の違法と319条1項の明文
- 明文の不当に長く抑留拘禁された後の自白は拘束の長さの不当を直接の事由にする
- 目安は事件の性質や規模、証拠収集の経過、取調状況に照らして不当に長いか
- 長さ以外の違法な任意同行逮捕勾留は明文なし、心理的圧迫や虚偽誘発のおそれがなくても、違法の程度と関連性で排除を検討、排除法則
ここから、取調べより前の違法です。取調べ自体には違法がなくても、先行する手続に違法があれば、自白の証拠能力は問題になります。まず、319条1項の明文との関係です。条文は、不当に長く抑留、拘禁された後の自白を、直接の事由に挙げています。これは、拘束の長さが不当なとき、という事由です。心理的な圧迫で、嘘の自白が出やすくなる、という虚偽排除の側からも、拘束の違法を拾う側からも、説明できます。長さが不当かどうかの目安は、事件の性質や規模、証拠を集めた経過、取調べの状況などを合わせて見て、決めます。別件逮捕の回で見た、窃盗などの別件で逮捕し、強盗強姦殺人などの本件を取り調べた事案の決定です。さきほどの片手錠の決定と、同じ決定です。この決定は、この目安に照らして、29日目の一部の自白と、32日目の全面的な自白を、不当に長い拘禁の後の自白とは認められない、としました。
長さの問題ではなく、拘束そのものが違法なときは、どうなりますか。そこが、設例Qです。違法な任意同行、違法な逮捕、違法な勾留。こうした、長さ以外の拘束の違法は、条文に書かれていません。そして、被疑者に心理的な圧迫がなく、嘘の自白が出るおそれがなくても、問題になります。違法な手続と、自白との、関連性が認められれば、排除すべきかを検討する。これが、排除法則の枠組みです。見るのは、先行する手続の違法の程度と、自白との関連性、の2つです。関連性とは、違法な手続のおかげで自白が取れた、という、つながりのことです。身体の拘束に関わる違法は、その後の取調べと、密接に結びつきます。拘束されている間に、その拘束を利用して取り調べて得た自白だからです。関連性は、認められやすいです。
図:設例Qの当てはめ
- 虚偽排除、落ち着いて話した、嘘を誘う状況とは言いにくい、319条1項では外しにくい
- 違法の程度、放火を取り調べる目的で自転車の件の逮捕勾留を使い、勾留中は放火だけを連日取り調べた、令状主義を潜脱した違法、重大性は肯定される方向
- 関連性、拘束中にその拘束を利用して取り調べた、密接
- 結論、排除法則の側で排除する方向
設例Qに、当てはめます。第1に、虚偽排除です。Dは、落ち着いて話しています。嘘を誘う状況とは、言いにくいので、319条1項では外しにくいです。第2に、違法の程度です。Kは、放火を取り調べる目的で、自転車の件の逮捕と勾留を使い、勾留の間は、放火だけを連日取り調べました。前回の前提どおり、違法な別件逮捕、勾留と置きます。令状は、自転車の窃盗の疑いにしか出ていません。裁判官が審査していない放火の取調べのために、その拘束を使ったので、令状主義を潜脱した違法です。裁判官の審査を丸ごとすり抜けているので、違法の重大性は、肯定される方向になります。第3に、関連性です。Dは、拘束されている間に、その拘束を利用した取調べで、自白しました。つながりは、密接です。結論は、排除法則の側で、排除する方向です。どれほどの違法なら排除か、という要件の本体は、排除法則の枠組みを扱う回で見ます。覚えるのは、これです。違法な身体拘束の下の自白は、任意に話していても、違法の程度と関連性で、排除を検討する。排除法則の問題です。短答の注意です。違法な拘束の下の自白は、任意に話していれば使える。×です。また、319条1項だけで判断する。これも、×です。前回の○×と、同じです。
取調べより前の違法②:接見制限の下の自白
図:接見制限の下の自白
- 詐欺被告事件の勾留と恐喝被疑事件の勾留が競合していた被疑者に、検察官が余罪の贈収賄を取り調べ
- 弁護人の1人が接見した直後ころ自白
- 他の弁護人が接見を求めたが取調中を理由に断られ、同じ日の夜に接見
- それ以前にも弁護人4名が相前後して接見
- 判示、接見交通権の制限を含めて検討しても自白の任意性に疑いなし、上告棄却
先行する違法のもう1つは、弁護人との接見の制限です。接見の制限が許されるかは、接見交通権の回で見ました。ここでは、制限があった状況で取った自白を、見ます。決定の事案です。詐欺の被告事件の勾留と、恐喝の被疑事件の勾留が、競合している被疑者がいました。担当の検察官は、余罪の、贈収賄の事実を、取り調べました。被疑者は、弁護人の1人が接見した直後ころに、贈収賄の事実を自白しました。他の弁護人が、接見を求めましたが、検察官は、取調べの最中だ、という理由で、断りました。その弁護人は、同じ日の夜に、接見しています。それ以前にも、弁護人4名が、相前後して接見し、その弁護人も、前日に接見していました。判示です。
判例最決平元・1・23 判時1301号155頁
接見制限の下の自白の判示 接見交通権の制限を含めて検討しても、右自白の任意性に疑いがないとした原判断は相当と認められる。
結論は、上告棄却です。任意性に疑いはない、としました。接見を断ったのは、違法だった、ということですか。そこは、決定は、触れていません。制限が違法かどうかの判断を、していないのです。接見交通権の制限を含めて検討しても、と言っています。制限を、任意性を見る事情の1つに、含めたうえで、直前に接見している、前後して多数の接見がある、という事情から、任意性を肯定しました。直前に弁護人の助言を受けていれば、1人の接見を断られても、話すかどうかを自分で選ぶ自由は、保たれていたと考えられます。決定自身は、そこまで書いていません。学説は、分かれます。違法性を考慮しても、重大な違法とまでは言えず、排除されない、という指摘があります。他方、違法排除説の立場なら、接見制限は、排除されうる、という指摘もあります。任意性説は、制限を、1つの事情として、総合して評価します。違法排除説は、重大な違法かどうかで見ます。短答の注意です。接見制限があれば、自白の任意性は否定される。×です。そして、この決定は、接見制限の違法を認定して、排除法則を適用した。これも×です。違法性には、触れていません。
派生証拠:不任意の自白から得た物はどうなるか
図:設例Qの派生
- Dは放火の自白の中で、灯油の容器は川に捨てた、と話す
- Kはその場所で容器を発見し押収
- 容器の鑑定書が作られる
- 自白は排除された
- 容器と鑑定書は使えるか
- 流れ、自白、川に捨てた、容器の発見、鑑定書
自白の先に進みます。まず、派生的証拠です。不任意の自白から得た情報をもとに、捜査機関が、さらに別の証拠を手に入れることがあります。自白そのものは排除されても、そこから派生した証拠は、使えるのでしょうか。前回の、虚偽排除説の読み直しを、覚えていますか。理由の2つ目に、不任意の自白から得た、二次的な証拠を排除する理屈を持ち込みたい、がありました。その中身を、ここで見ます。設例Qの派生を、置きます。Dは、放火の自白の中で、灯油の容器は川に捨てた、と話しました。Kは、その場所で容器を見つけ、押収し、容器の鑑定書が作られました。自白は排除されました。では、容器と鑑定書は、使えるでしょうか。
図:高等裁判所の枠組み
- 自白が排除される理由で派生証拠の扱いが変わる
- 1つ目、強制拷問脅迫による自白や不当に長く抑留拘禁された後の自白、人権擁護のために排除、派生証拠も一律に排除
- 2つ目、約束や偽計など虚偽排除の見地から排除、犯罪事実の解明の必要性や証拠価値などを比較衡量
- 3つ目、黙秘権を告げていない・調書を読み聞かせていない・違法な別件勾留など、適正手続に反する取り方、同じく比較衡量
- 例外、当初から計画的に違法な手段で自白を得て派生証拠を収集しようとしていた場合は排除(大阪高判昭52・6・28 刑月9巻5=6号334頁)
高等裁判所の裁判例は、判断の枠組みを、示しました。要旨で語ります。鍵は、その自白が、なぜ排除されたのか、です。排除の理由によって、派生証拠の扱いが変わります。1つ目の類型は、強制、拷問、脅迫による自白や、不当に長く抑留、拘禁された後の自白です。憲法38条2項と、319条1項が、明文で挙げているものです。これは、人権を守るために排除される類型です。憲法も319条1項も、この取り方の自白は証拠にできない、と言い切っています。違法の重大さが、類型として、はっきりしている、と整理されます。この裁判例は、そこで、派生証拠も、一律に排除する、としています。2つ目の類型は、約束や偽計などの、主として、虚偽排除の見地から排除される場合です。3つ目の類型は、黙秘権の不告知、調書を読んで聞かせなかったこと、違法な別件勾留など、適正手続の見地から排除される場合です。適正手続は、憲法31条が根拠です。この2つの類型では、派生証拠を一律には排除しません。犯罪事実を解明する必要性と、派生証拠の証拠価値などを、比較衡量して、個別に判断します。この3つの分け方は、この裁判例自身のものです。前回の、どの理由で拾うか、の整理とは、物差しが違います。たとえば、黙秘権の不告知は、前回見たとおり、それだけでは排除されない事情でした。この裁判例も、明文の1つ目ではなく、3つ目に置いています。
排除する側と、使う側を、比べます。使う側は、事件の重大さと、派生証拠が、事実の解明にどれほど役立つか、です。排除する側は、先行する自白の取り方の違法の程度と、その取り方と、派生証拠のつながりの強さです。ただし、例外があります。捜査機関が、当初から、計画的に、違法な手段で自白を取り、それをもとに、派生証拠を集めようとしていた場合は、排除すべきだ、とされています。
図:比較衡量と当てはめ
- 使う側は事件の重大さと派生証拠の証拠価値、排除する側は先行する取り方の違法の程度と派生証拠とのつながりの強さ
- 例外、当初から計画的に違法な手段で自白を取り派生証拠を集めようとしたなら排除
- 裁判例の事案、偽計と約束の類型と整理され、検証調書などの証拠能力は否定されなかったとされる
- 設例Q、3つ目の類型、計画的な別件逮捕なら排除、結論は事情次第
この裁判例の事案は、爆発物の事件で、虚偽の事実を告げたり、親族への追及を控えるという趣旨の約束をしたりして得た自白でした。この事案は、偽計と約束の類型に当たるとされ、検証調書などの証拠能力は否定されなかった、と整理されています。設例Qの派生に、当てはめます。自白は、違法な別件勾留の下のものです。3つ目の類型に当たります。比べるものは、重大な放火事件であることと、容器と鑑定書の証拠価値、そして、違法の程度です。もしKが、最初から、容器の入手まで狙って、計画的に別件逮捕を使っていたなら、排除すべきです。結論は、事情次第です。
図:派生証拠の位置づけ
- 2つ目と3つ目の類型は、違法の程度が大きい取り方と派生証拠の因果性が強ければ排除、毒樹の果実の発想と共通
- 毒樹の果実とは、違法な手続で得た証拠から、さらに得た証拠も外す考え方
- 2つ目の類型は違法が認定されていないので、毒樹の論理だけでは説明できない
- 覚えること、明文の類型は一律に排除、虚偽排除型と適正手続型は比較衡量と計画性の例外
理論上の位置づけも、触れておきます。2つ目と3つ目は、違法の程度が大きい自白の取り方が先にあり、その手続と、派生証拠の因果性が強いなら排除する、という考え方に近いです。これは、毒樹の果実の発想と、共通します。毒樹の果実とは、毒のある木の実も毒、つまり、違法な手続で得た証拠から、さらに得た証拠も外す、という考え方です。ただ、2つ目の類型では、違法性が認定されていないので、毒樹の論理だけでは、全部を説明できません。枠組みの当否には、議論があります。毒樹の果実の本体は、その回で見ます。覚えるのは、これです。派生証拠の扱いは、先行する自白が、なぜ排除されたかで変わる。明文の類型は、一律に排除。虚偽排除型と適正手続型は、比較衡量と、計画性の例外です。短答の注意です。不任意の自白から得た物は、常に排除される。×です。他方、明文の類型の自白から得た派生証拠は、一律に排除される。これは、この裁判例の枠組みとして、○です。
反復自白①:設例Qの続きと最高裁の法廷意見
図:設例Qの続き
- Dの最初の自白は違法な別件勾留中のものとして排除された
- KらはこのDの自白を主な資料として、放火の事実でDを逮捕
- 逮捕後、裁判官がDに放火の事実を告げ弁解を聞く勾留質問、Dは再び、やりました、と認め調書
- 勾留中、消防署の職員が火災の原因調査として質問し、Dは同じことを話し調書
- この2つの調書は使えるか
冒頭の問いに戻ります。反復自白です。不任意の自白や、違法な手続の下の自白のあとに、続けて、もう一度、自白することを言います。先行する自白が、排除されるのは、よいとして、後の自白の証拠能力は、どうなるのか。前に、別の回に預けた問題です。先行する自白の影響が、後の自白に及ぶか、という問題でした。設例Qの続きを、置きます。Dの最初の自白は、違法な別件勾留の下のものとして、排除されました。その後、Kらは、この自白を、主な資料として、放火の事実で、Dを逮捕しました。逮捕のあと、裁判官は、Dに、放火の事実を告げて、弁解を聞きました。これが、勾留質問です。Dは、ここで、再び、やりました、と認め、調書が作られました。さらに、勾留の間に、消防署の職員が、火災の原因を調べるために、Dに質問しました。Dは、同じことを話し、調書が作られました。この、勾留質問の調書と、消防職員の調書は、使えるのでしょうか。
先行する自白と一緒に外す、という見方は、自然です。しかし、最高裁は、そうは言いませんでした。この事案は、別件の住居侵入での逮捕のあと、放火の自白があり、その自白を資料にして、放火の逮捕状が出て、勾留質問、勾留、消防職員の質問、と進んだ事件です。設例Qの続きと、同じ流れです。
図:勾留質問調書と消防職員調書の理由
- 勾留質問は、1つ目、捜査官とは別個独立の機関である裁判官が行う
- 2つ目、勾留の理由と必要の審査に慎重を期すため被疑者に被疑事件を告げ自由な弁解の機会を与え、被疑者の権利保護に資する
- 消防職員の質問は、1つ目、捜査官とは別個独立の機関である消防署長等が行う
- 2つ目、消防に関する資料収集という、犯罪捜査とは異なる目的で行う
法廷意見の判断です。勾留質問の調書から見ます。
判例最判昭58・7・12 刑集37巻6号791頁
勾留質問調書についての法廷意見 勾留質問は、捜査官とは別個独立の機関である裁判官によつて行われ、しかも、右手続は、勾留の理由及び必要の有無の審査に慎重を期する目的で、被疑者に対し被疑事件を告げこれに対する自由な弁解の機会を与え、もつて被疑者の権利保護に資するものであるから、……勾留請求に先き立つ捜査手続に違法のある場合でも、被疑者に対する勾留質問を違法とすべき理由はなく、他に特段の事情のない限り、右質問に対する被疑者の陳述を録取した調書の証拠能力を否定すべきものではない。
理由は、2つです。1つ目は、勾留質問は、捜査官とは別個独立の機関である、裁判官が行うことです。2つ目は、勾留質問が、勾留の理由と必要を、慎重に審査するために、被疑者に、被疑事件を告げ、自由な弁解の機会を与える手続で、被疑者の権利を守るのに役立つことです。だから、勾留請求の前の捜査手続に違法があっても、勾留質問を違法とする理由はありません。他に特段の事情がない限り、調書の証拠能力は否定しません。消防職員の質問調書も、同じ形です。消防法32条1項の、質問調査は、捜査官とは別個独立の機関、つまり消防署長などが行います。しかも、消防に関する資料を集める、という、犯罪捜査とは異なる目的で行われます。だから、消防職員が、捜査機関による捜査の違法を知って、これに協力するなど、特段の事情がない限り、証拠能力を否定すべきでない、としました。結論は、上告棄却です。2つの調書の証拠能力を肯定した、原判断は相当、でした。設例Qの続きに、当てはめます。勾留質問の調書も、消防職員の調書も、特段の事情がなければ、使えます。短答の注意です。先行する自白が排除されれば、後の自白も常に排除される。×です。反対に、勾留質問の調書は、常に証拠能力がある。これも×です。特段の事情があれば、別です。
反復自白②:補足意見・希釈法理・先行自白の類型
図:伊藤裁判官の補足意見
- 1、別件逮捕中の自白は違法収集証拠として排除が相当
- 2、第二次的証拠の排除は、第一次的証拠の収集方法の違法の程度、第二次的証拠の重要さの程度、両者の関連性の程度などを総合判断
- 3、第一次的証拠を収集した捜査機関やこれと一体とみられる機関が取った第二次的証拠、捜査官調書は特段の事情がなければ違法がつながる
- 4、勾留質問は裁判官が捜査機関とは別個独立の職責で受動的に聴取、関連性も希薄
- 消防も同様
- 5、事案が重大で証拠として重要、排除は目的を超える
同じ判決に、補足意見が付いています。ここは、法廷意見と、分けて読んでください。法廷意見は、毒樹の果実という言葉も、希釈という言葉も、使っていません。特段の事情があるかどうかで、結論を出しています。毒樹の発想を、はっきり出したのは、補足意見の方です。補足意見の要旨は、全部で5点です。1つ目。別件での逮捕は、令状主義を潜脱した、違法な別件逮捕で、その間の自白は、違法収集証拠として排除するのが相当です。2つ目。ここから得た、第二次的な証拠が、毒樹の実として、どこまで排除されるかは、一律ではありません。第一次的な証拠を集めた方法の違法の程度、第二次的な証拠の重要さの程度、両者の関連性の程度などを、総合して判断します。
判例最判昭58・7・12 伊藤正己裁判官補足意見
補足意見の中心部分 第二次的証拠が、いわゆる「毒樹の実」として、いかなる限度で第一次的証拠と同様に排除されるかについては、……第一次的証拠の収集方法の違法の程度、収集された第二次的証拠の重要さの程度、第一次的証拠と第二次的証拠との関連性の程度等を考慮して総合的に判断すべきものである。
3つ目。第一次的な証拠を集めた捜査官自身や、これと一体とみられる捜査機関が、第二次的な証拠を取った場合です。つまり、捜査官に対する供述調書です。この場合は、特段の事情がない限り、違法がつながります。勾留質問と違って、間に、別の機関も、別の目的も、挟まっていません。違法をした捜査機関が、その結果をそのまま使えるなら、将来の違法捜査を抑える、という排除の目的が果たせないからです。だから、捜査官の調書の証拠能力を否定したのは、適切です。4つ目。しかし、勾留質問は、違います。裁判官が、捜査に対する、司法的な抑制の見地から、捜査機関とは別個独立の職責に基づいて、受動的に聴取したものです。捜査官が、支配力を及ぼしたとみる余地はなく、第一次的な証拠との関連性も、希薄です。許容しても、将来の違法捜査を抑える力が、無くなることも、司法の廉潔性が害されることも、ありません。司法の廉潔性とは、秘密録音の回で見た、違法な証拠を使うこと自体が裁判の公正さを傷つける、という観点です。消防の質問も、同様に、捜査と一体とみられる関連性がありません。例外は、捜査機関が、違法をごまかすために、消防機関に依頼して、違法に集めた証拠を読み聞かせて誘導するなどの場合です。5つ目。事案が重大で、証拠として重要なことも、併せて考えると、排除は、排除の目的を超える、としています。
図:希釈法理と、誰が取ったか
- 希釈法理、先行する違法な手続と証拠のつながりが、別の機関や別の目的の介在で薄まる、という考え方
- 同じ人の再自白でも、裁判官の勾留質問、消防職員は使える方向
- 捜査官や検察官が取った再自白は、補足意見によれば、一体の捜査機関として違法がつながる、特段の事情がなければ排除
補足意見の考え方は、希釈法理に近い、と説明されます。希釈法理とは、先行する違法な手続と、証拠のつながり、つまり、違法のおかげで取れた、という因果性が、別の機関や別の目的が間に入ることで、薄まる、という考え方です。希釈法理は、学説の呼び方で、補足意見は、関連性が希薄、と書いています。設例Qの続きで、整理します。同じDの再自白でも、誰が取ったかで、結論が変わります。裁判官の勾留質問と、消防職員の質問は、使える方向です。しかし、補足意見によれば、Kや検察官などの、捜査官が取った再自白は、一体の捜査機関が取ったものとみられ、特段の事情がなければ、違法がつながります。設例Qの最初の自白のように、手続の違法を理由に外された型を、ここでは違法排除型と呼びます。派生証拠の節で言う適正手続型と、同じ側です。もう1つ、先行する自白が、偽計や約束のように、虚偽排除の類型で排除された場合です。この場合、先行する取調べの違法は、認定されていません。だから、違法を前提にする、毒樹の果実の枠組みを、そのまま使いにくいです。補足意見も、先行する自白に、任意性を疑う事情があるときは、集めた機関が同じか違うかにかかわらず、後の自白にも影響が及ぶとみて、任意性を疑うべきだ、とする見方に触れました。ただし、仮定の形です。本件は、任意性とは別の理由で排除された事案で、単に自白が繰り返された、という理由だけで、直ちに排除するのは適切でない、としています。
違法が認定されていないので、違法とのつながりは、測れません。測れるのは、嘘を誘った状況が、まだ続いているかです。たとえば、自白すれば親族を追及しない、という約束を、2度目の取調べのときにも、まだ信じていれば、2度目の自白も、同じ約束に誘われたものになりえます。そこで、虚偽排除型では、嘘を誘った影響が、被疑者の中に、まだ残っているか、で見る枠組みが、考えられます。覚えるのは、これです。先行する自白が違法排除型なら、関連性と、介在した機関で、薄まるかを見る。虚偽排除型なら、虚偽を誘った影響が、残っているかを見る、という見方が考えられます。
類型と3つの理由と2つの法則の一覧
図:類型の一覧表、前回までの分
- 行は類型、列は拾う理由、見る法則、結論の方向
- 脅迫、人権擁護と虚偽排除、319条1項の明文
- 約束と偽計、虚偽排除、319条1項、心理的強制と虚偽誘発のおそれ
- 黙秘権不告知、それだけでは排除されず総合
- 手錠、心理的圧迫の推定、319条1項、反証で覆る
- 1つ目の整理による割付
全体を、前回までの分と、今日の分の、2枚の表にします。横の並びが類型、縦の並びが、どの理由で拾い、どの法則で見て、結論がどちらに傾くか、です。1つ目の整理に基づく割付です。脅迫は、人権擁護と虚偽排除で拾い、319条1項の明文で見ます。約束と偽計は、虚偽排除で拾い、319条1項で、心理的強制と虚偽誘発のおそれを見ます。黙秘権の不告知は、それだけでは排除されず、他の事情と総合します。手錠は、心理的な圧迫を推定し、319条1項で見て、反証で覆ります。
図:類型の一覧表、今日の分
- 宿泊を伴う長期の取調べ、排除法則を先に検討、違法重大で排除
- 違法な身柄拘束、排除法則、違法の程度と関連性
- 接見制限、任意性を見る事情の1つ、違法排除説なら排除の余地
- 派生証拠、先行自白が排除された理由で扱いが変わる
- 反復自白、違法排除型は希釈、虚偽排除型は影響の残存
- 1つ目の整理による割付、2つ目の整理では黙秘権の侵害を伴う違法も排除法則か憲法の側
ここから、今日の分です。宿泊を伴う長期の取調べは、排除法則を先に検討して、違法が重大なので排除します。違法な身柄拘束は、排除法則で、違法の程度と関連性を見ます。接見制限は、任意性を見る事情の1つで、違法排除説なら、排除の余地があります。派生証拠は、先行自白が排除された理由で扱いが変わります。反復自白は、違法排除型なら希釈、虚偽排除型なら影響の残存で見ます。割付は、整理が変われば、変わるのですか。変わります。2つ目の整理では、黙秘権の侵害を伴う違法も、319条1項ではなく、排除法則か憲法の側で見ます。ただ、表を作る目的は同じです。どの委員会に回すかを決めるのは、その事情を拾う、理由です。この一言を、持ち帰ってください。
今日の地図(保存版)
図:答案の順序
- 第1、自白か、明文の事由に当たるか、受け皿に当たるか
- 第2、どの法則で見るか、分担
- 第3、先行する手続の違法の程度
- 第4、自白との関連性、因果
- 第5、効果、自白の排除、派生証拠や反復自白へ及ぶか
まとめます。答案の順序です。前回の型に、今日の当てはめを足します。第1に、自白か、明文の事由に当たるか、受け皿に当たるか、を言います。第2に、どの法則で見るか、つまり分担です。第3に、先行する手続の、違法の程度。第4に、自白との関連性、つまり因果です。第5に、効果です。自白を排除したあと、派生証拠や、反復自白に、影響が及ぶかまで、書きます。
図:短答の落とし穴、取調べの違法
- 手錠をかけたままの自白は常に排除、は誤り
- 手錠の判決は任意性を認めて上告棄却、は正しい
- 接見制限があれば任意性は否定、は誤り
- 接見制限の決定は違法を認定して排除法則を適用した、は誤り
- 違法拘束の下の自白は任意なら使える、は誤り
- 宿泊の取調べを自白法則だけで排除した、は誤り
短答の落とし穴を、○×で言います。手錠をかけたままの自白は、常に排除される。×です。手錠の判決は、任意性を認めて、上告を棄却した。○です。接見制限があれば、自白の任意性は否定される。×です。接見制限の決定は、違法を認定して、排除法則を適用した。×です。違法性には、触れていません。違法な拘束の下の自白は、任意に話していれば使える。×です。宿泊を伴う取調べの自白を、高等裁判所は、自白法則だけで排除した。×です。排除法則を、先に検討しています。
図:短答の落とし穴、派生証拠と反復自白と録音録画
- 不任意の自白から得た物は常に排除、は誤り
- 明文の類型の自白から得た派生証拠は一律に排除、は高等裁判所の枠組みとして正しい
- 先行自白が排除されれば後の自白も常に排除、は誤り
- 勾留質問調書は常に使える、は誤り
- 昭和58年の法廷意見は毒樹の果実と明言した、は誤り、補足意見が毒樹の実と述べた
- 録音録画義務違反なら自白調書は当然に証拠能力なし、は誤り
不任意の自白から得た物は、常に排除される。×です。明文の類型の自白から得た派生証拠は、一律に排除される。これは、高等裁判所の枠組みとして、○です。先行する自白が排除されれば、後の自白も常に排除される。×です。勾留質問の調書は、常に使える。これも、×です。特段の事情があれば、別です。最高裁の法廷意見は、毒樹の果実と明言した。×です。毒樹の実と言ったのは、補足意見です。最後に、録音、録画です。取調べの録音、録画の義務がある事件で、被告人や弁護人が、任意性を争って異議を述べたのに、検察官が、録音、録画の記録の取調べを請求しないとき、裁判所は、自白の調書の請求を、却下します。ただし、機器の故障など、やむを得ない事情で、記録ができなかった場合は、別です。却下されても、裁判所が職権で採用する余地は残る、と説明されます。義務に違反したことが、自白の証拠能力を当然に否定するか、については、多数説は、排除法則の問題に還元して、一律には否定しません。録音、録画の義務に違反すれば、自白調書は当然に証拠能力がない。×です。
冒頭の問いの答えは、こうですね。違法な逮捕の下の自白が外れても、もう一度認めた自白は、誰が、何のために取ったかで、結論が分かれる。裁判官の勾留質問や、消防職員の質問は、別個独立の機関なので、特段の事情がなければ使える方向です。捜査官が取った自白は、補足意見の見方では、違法がつながる方向です。次は、自白があっても、それだけでは有罪にできない、という補強法則です。共犯者の供述は、本人の自白に当たるのか、も見ます。
参照条文
- 刑事訴訟法第319条第1項