刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#137

違法収集証拠の一次証拠と二次証拠(密接関連性と令状審査)

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第5章 証拠法 ㉑/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

導入

同じ違法な逮捕から2つの証拠が出た。尿の鑑定書(逮捕の当日にとった一次証拠)は排除、その鑑定書を使って令状をとり見つけた自宅の覚醒剤(二次証拠)は使える。分かれ目はどこか 図:同じ違法な逮捕から2つの証拠が出た

  • 尿の鑑定書(逮捕の当日にとった一次証拠)は排除、その鑑定書を使って令状をとり見つけた自宅の覚醒剤(二次証拠)は使える
  • 分かれ目はどこか

同じ違法な逮捕から、2つの証拠が出てきました。最高裁は、1つを捨てて、1つを使いました。分かれ目は、どこにあったのでしょうか。同じ違法から出た2つの証拠で、なぜ扱いが分かれるのか。それが、今日の入口です。答えを先に言います。違いは、その証拠が、違法な逮捕からどれだけ近いかです。逮捕の当日にとった尿は、違法のすぐ隣にあります。その鑑定書を使って令状をとり、見つけた覚醒剤は、間に裁判官の審査と、別に適法に出ていた令状の捜索が挟まっています。つながりの強さが違うので、結論が分かれました。前の回の最後の問いです。違法な逮捕で直接得た証拠と、その証拠をもとに令状で得た証拠を、分けて考える。その問いに、今日、判決の言葉で答えます。まず、これまでの道具を短く思い出します。毒樹は、違法な捜査行為そのものでした。果実は、その違法な行為がきっかけで手に入った証拠です。判断の軸は2つで、違法の重大性と、違法と証拠のつながりでした。つながりが薄い類型として、間に適法な手続が入る希釈、現実に別の適法な手続で得た独立入手源、いずれ適法に見つかったはずだと仮定する不可避的発見も見ました。違法が後の手続に引き継がれるかを順に確かめる違法承継論との違いは、手順の違いで、どちらで考えても結論は分かれにくい、という整理でした。今日扱う大津の事件は、前に、判決の骨組みだけを先に見て、中身は別の回で扱う、としていた事件です。今日、事実から正面から扱います。

一次証拠と二次証拠

一次証拠=違法な捜査行為から直接得た証拠(大津では尿の鑑定書)。二次証拠=その一次証拠をきっかけに得た証拠(大津では令状で捜索して見つかった覚醒剤)。どちらも見る枠は同じ=先行行為の違法の重大性と、つながり

  • 一次証拠=違法な捜査行為から直接得た証拠(大津では尿の鑑定書)
  • 二次証拠=その一次証拠をきっかけに得た証拠(大津では令状で捜索して見つかった覚醒剤)
  • どちらも見る枠は同じ=先行行為の違法の重大性と、つながり

言葉を2つ決めます。一次証拠は、違法な捜査行為から、直接得た証拠です。二次証拠は、その一次証拠をきっかけに、手がかりにして得た証拠です。大津の事件では、尿の鑑定書が一次証拠、令状で捜索して見つかった覚醒剤が二次証拠です。二次証拠は、間に別の手続が挟まるぶん、つながりが弱まることがあります。ただし、弱まるかどうかは、事情しだいです。そして、一次でも二次でも、見る事情は同じです。先行行為の違法の重大性と、つながり。二次だから別の枠組み、ということはありません。違うのは、つながりの強さのほうです。

大津の事件:事実を順に追う

大津の事件の流れ。A=警察官3名、B=被疑者。窃盗の逮捕状は発付済み→逮捕状を携行せず自宅へ→同行を説得、Bは逮捕状を見せるよう求めて応ぜず逃走→路上で制圧して逮捕(現場で呈示なし)→署に着いて間もなく逮捕状を呈示(逮捕状には現場で呈示した旨の虚偽記載・虚偽の捜査報告書も)→同日夜に任意の採尿・覚醒剤成分検出(一次証拠=鑑定書)→5日後、鑑定書を疎明資料に覚醒剤の捜索差押許可状→適法に出ていた窃盗の許可状と併せて自宅を捜索→覚醒剤(二次証拠) 図:大津の事件の流れ

  • A=警察官3名、B=被疑者
  • 窃盗の逮捕状は発付済み→逮捕状を携行せず自宅へ→同行を説得、Bは逮捕状を見せるよう求めて応ぜず逃走→路上で制圧して逮捕(現場で呈示なし)→署に着いて間もなく逮捕状を呈示(逮捕状には現場で呈示した旨の虚偽記載・虚偽の捜査報告書も)→同日夜に任意の採尿・覚醒剤成分検出(一次証拠=鑑定書)→5日後、鑑定書を疎明資料に覚醒剤の捜索差押許可状→適法に出ていた窃盗の許可状と併せて自宅を捜索→覚醒剤(二次証拠)

大津の事件の事実を、時間の順に追います。窃盗の被疑事実で、逮捕状は、すでに発付されていました。ある日の朝、警察官3名が、被告人の動向を見て、身柄を押さえるために、被告人の家へ向かいます。ところが、逮捕状は持っていきませんでした。家の前で、任意同行を説得すると、被告人は、逮捕状を見せるよう求めて、同行に応じず、逃げ出しました。午前8時25分ころ、家の近くの路上で、警察官らは被告人を制圧して、手錠と捕縛用のロープで逮捕します。この現場で、逮捕状は示されていません。警察の車で、大津警察署に連れて行かれ、午前11時ころ着きました。逮捕状が示されたのは、着いてから間もなくです。逮捕のときではなく、あとからだった、ということです。

逮捕状を示す、という原則と、その例外を、条文で確かめます。

刑事訴訟法201条1項・2項、73条3項。逮捕状による逮捕は逮捕状を被疑者に示す。逮捕状を所持せず示せない場合で急速を要するときは、被疑事実の要旨と逮捕状が出ている旨を告げて執行できる(緊急執行)。ただし令状はできる限り速やかに示す 図:刑事訴訟法201条1項・2項、73条3項

  • 逮捕状による逮捕は逮捕状を被疑者に示す
  • 逮捕状を所持せず示せない場合で急速を要するときは、被疑事実の要旨と逮捕状が出ている旨を告げて執行できる(緊急執行)
  • ただし令状はできる限り速やかに示す

条文刑事訴訟法第201条第1項・第2項

刑事訴訟法第201条第1項・第2項——逮捕状の呈示 逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。 2 第七十三条第三項の規定は、逮捕状により被疑者を逮捕する場合にこれを準用する。

条文刑事訴訟法第73条第3項(201条2項により逮捕状の場合に準用)

刑事訴訟法第73条第3項——緊急執行(準用) 勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。

読み替えます。勾引状や勾留状は逮捕状、被告人は被疑者、公訴事実は被疑事実です。逮捕状を持っていなくて示せないとき、急ぐ事情があれば、被疑事実の要旨と、令状が出ていることを告げて、逮捕できます。これが緊急執行です。ただし、令状は、できる限り速やかに示します。大津の事件は、逮捕状を持っておらず、現場で示してもいません。そして、緊急執行の手続が執られていないことも、判決が、事件の経過から明らかだと述べています。条文に照らして、手続に違法があった、というところが出発点です。事実の続きです。逮捕状には、午前8時25分ころ、現場で示して逮捕した、という警察官名義の記載がありました。事実と違います。同じ趣旨の、内容の虚偽の捜査報告書も作られました。午後7時10分ころ、署の中で、被告人は尿を求められて、強制なく、任意に提出しました。科学捜査研究所の鑑定で、覚醒剤の成分が検出されます。これが尿の鑑定書、つまり一次証拠です。

ここからが二次証拠です。5日後、裁判官が、覚醒剤の使用を被疑事実として、被告人の家を捜索する許可状を出しました。疎明資料には、この鑑定書が使われました。疎明資料というのは、令状を請求するときに、必要性を裁判官に示す根拠資料のことです。同じ日に、この許可状は、すでに発付されていた窃盗の捜索差押許可状と併せて、家の捜索に使われました。その結果、ビニール袋入りの覚醒剤が1袋見つかり、差し押さえられます。これが二次証拠です。公判では、警察官3名が、現場で逮捕状を示して、被疑事実の要旨を読み聞かせた、と証言しました。しかし、原審は、この証言を信用せず、逮捕状は現場に持っていかれておらず、示されてもいない、と認定しています。第1審も原審も、尿の鑑定書、覚醒剤、覚醒剤の鑑定書を、違法収集証拠として排除しました。覚醒剤の使用と所持は無罪、窃盗だけが有罪です。検察官が上告して、最高裁は、ここから結論を分けます。

一次証拠は排除:判決の2段

一次証拠(尿の鑑定書)の判断は2段。第1段=手続的な違法(呈示なし・緊急執行なし)にとどまらず、取り繕うための虚偽記入・虚偽の報告書・公判廷の虚偽証言→経緯全体で表れた警察官の態度を総合して、令状主義の精神を潜脱し没却するような重大なものと評価されてもやむを得ない(重大な違法)。第2段=このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは、将来の違法捜査抑制の見地から相当でない(排除相当性)

最高裁が、尿の鑑定書を排除した理由を読みます。2段です。1段目が、違法の重大性。2段目が、密接に関連する証拠を許容することの相当性です。

判例最判平15・2・14 刑集57巻2号121頁

大津の事件——逮捕の違法と、密接に関連する証拠 本件逮捕には,逮捕時に逮捕状の呈示がなく,逮捕状の緊急執行もされていない(逮捕状の緊急執行の手続が執られていないことは,本件の経過から明らかである。)という手続的な違法があるが,それにとどまらず,警察官は,その手続的な違法を糊塗するため,前記のとおり,逮捕状へ虚偽事項を記入し,内容虚偽の捜査報告書を作成し,更には,公判廷において事実と反する証言をしているのであって,本件の経緯全体を通して表れたこのような警察官の態度を総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,令状主義の精神を潜脱し,没却するような重大なものであると評価されてもやむを得ないものといわざるを得ない。そして,このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは,将来における違法捜査抑制の見地からも相当でないと認められるから,その証拠能力を否定すべきである。

1段目から読みます。まず、手続的な違法があります。逮捕のときに示していない。緊急執行もしていない。ただ、判決は、それにとどまらない、と続けます。糊塗、つまり取り繕うために、逮捕状に虚偽の事項を書き、内容虚偽の捜査報告書を作り、公判廷で事実と反する証言までした。この3つです。そして、経緯全体を通して表れた、このような警察官の態度を、総合的に考慮します。そうすると、逮捕手続の違法の程度は、令状主義の精神を潜脱し、没却するような重大なものだと、評価されてもやむを得ない、という結論です。判決の書き方は、手続的な違法がある、しかしそれにとどまらず、でした。重さを量ったのは、呈示をしなかったことだけでなく、そのあとの取り繕いまで含めた、経緯全体の態度です。もう1つ、判決の言い回しの強さ、つまり温度に注意してください。前に、重大な違法は総合評価で、特に重みを持ちやすいのは、強制処分に至っていたかと、令状主義を潜脱する意図があったか、の2つだと見ました。大津は、潜脱の意図を重く見て排除した例として、名前を出した事件です。ただ、判決は、意図があった、とは書いていません。評価されてもやむを得ない、と書いています。短答では、この言い回しの差が問われます。2段目です。そして、このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは、将来における違法捜査抑制の見地から相当でない。これは、排除の2要件の、排除相当性です。1段目が重大な違法、2段目が排除相当性。前に作った2要件に、そのまま対応しています。

判例最判平15・2・14 刑集57巻2号121頁

大津の事件——尿は逮捕の当日にとられた 前記のとおり,本件採尿は,本件逮捕の当日にされたものであり,その尿は,上記のとおり重大な違法があると評価される本件逮捕と密接な関連を有する証拠であるというべきである。また,その鑑定書も,同様な評価を与えられるべきものである。したがって,原判決の判断は,上記鑑定書の証拠能力を否定した点に関する限り,相当である。

決め手は、採尿が、逮捕の当日にされたことです。違法な逮捕から時間がほとんど空いていない。だから、尿は、重大な違法があると評価される逮捕と、密接な関連を有する証拠です。鑑定書も、同様に評価されます。尿から作られた書面なので、尿と同じ扱いです。違法のすぐ隣でとった証拠を使わせれば、違法をした捜査が得をします。だから、2段目の、許容は相当でない、につながります。ここまでが、判決の言葉です。次に、この判決のどこが注目されるかを、学説の整理を交えて、3つ見ます。

注目点1と2:先行手続で重大性を見る・密接関連と同一目的

注目点1=重さを量る対象は逮捕手続の違法(採尿手続に違法が引き継がれたかの検討は出てこない)。つながりは「密接に関連する証拠を許容することは相当でない」という排除相当性の文の中→毒樹の果実論の手順に近い(学説の整理)。注目点2=逮捕は窃盗の捜査・尿は覚醒剤使用の捜査で同一目的ではない、それでも密接→同一目的・直接利用は、つながりを測る事情の一部(学説の整理)

  • 注目点1=重さを量る対象は逮捕手続の違法(採尿手続に違法が引き継がれたかの検討は出てこない)
  • つながりは「密接に関連する証拠を許容することは相当でない」という排除相当性の文の中→毒樹の果実論の手順に近い(学説の整理)
  • 注目点2=逮捕は窃盗の捜査・尿は覚醒剤使用の捜査で同一目的ではない、それでも密接→同一目的・直接利用は、つながりを測る事情の一部(学説の整理)

注目点の1つ目です。判決は、違法の重大性を、どの手続について量っているでしょうか。逮捕です。判決は、本件逮捕手続の違法の程度、と言っています。採尿手続に違法が引き継がれたか、採尿が違法性を帯びたか、という検討は、判決文に出てきません。つながりは、密接に関連する証拠を許容することは相当でない、という排除相当性の文の中で、見られています。ここから先は、学説の整理です。前の回に、違法承継論と毒樹の果実論を比べました。毒樹の果実論は、先行行為の違法の重大性を見て、つながりは、証拠を排除するかどうかの判断の中で見る、という手順でした。違法承継論は、違法が後の手続に引き継がれるかを、手続ごとに確かめる手順でした。大津の判決の手順は、毒樹の果実論のほうに近いといえます。そこで、判例は、違法承継論の枠組みから、毒樹の果実論の枠組みに近づいている、と評価されます。ただし、判決は、毒樹の果実という言葉を使っていません。注目点の2つ目です。窃盗の逮捕と、覚醒剤の使用の証拠は、同じ目的でしょうか。

違います。逮捕は窃盗の捜査のため、尿は覚醒剤使用の捜査のためです。同一目的とはいえません。直接利用の関係といえるかも、微妙です。それでも、判決は、密接だとしました。ここでいう、密接に関連する、は、違法な逮捕があったから、その後の手続で証拠が手に入った、という結びつきの有無と強さのことです。因果性、と呼ばれます。違法な逮捕で署に連れてこられていたから、その日のうちに、署の中で尿を求めることができました。目的が別の事件でも、尿を手に入れる機会は、違法な逮捕のおかげで生まれている、と説明できます。使えなくなったのではなく、位置づけが広がります。同一目的や直接利用は、つながりを測る事情の1つです。不可欠の要件ではありません。大津の判決が挙げた具体的な事情は、採尿が逮捕の当日だった、という時間の近さでした。同一目的、直接利用という言葉は、大津の判決には出てきません。前の回で見た、違法な同行と留め置きに続いて尿をとった、奈良の生駒の事件の判決の言葉です。混ぜないでください。

注目点3:違法の後の取り繕いを、なぜ考慮できるのか

注目点3の疑問=虚偽記載・虚偽証言は逮捕よりも後。後の事情のおかげで尿を得たわけではない(因果性は無い)。和歌山の事件(発見の後の暴行は排除につながらない)と整合するか。1つの見解=事後の取り繕いは、逮捕時の令状主義潜脱の意図を推認させる事情として、先行行為の違法の重大性の評価に使う(重大性の話)。和歌山は因果性の話

  • 注目点3の疑問=虚偽記載・虚偽証言は逮捕よりも後
  • 後の事情のおかげで尿を得たわけではない(因果性は無い)
  • 和歌山の事件(発見の後の暴行は排除につながらない)と整合するか
  • 1つの見解=事後の取り繕いは、逮捕時の令状主義潜脱の意図を推認させる事情として、先行行為の違法の重大性の評価に使う(重大性の話)
  • 和歌山は因果性の話

3つ目に入る前に、1問だけ思い出してください。重大な違法の判断で、特に重みを持ちやすい2つは、何でしたか?強制処分に至っていたかと、令状主義を潜脱する意図があったか、です。ここが3つ目の入口になります。疑問です。虚偽の記載も、虚偽の報告書も、公判廷の虚偽の証言も、逮捕より後のことです。後の事情のおかげで尿が手に入ったわけではありません。因果性は無いはずです。和歌山の事件では、捜索で覚醒剤を見つけたあとに、警察官が暴行しました。その暴行は、排除につながらない、と見ました。それと食い違いませんか。食い違いません。話の層が違うからです。和歌山の事件は、因果性の話でした。暴行のおかげで証拠を得たのかどうかが問われ、答えは、得ていない、でした。大津の取り繕いは、因果性ではなく、逮捕の違法の重大性を評価する材料として使われています。こう説明する見解があります。逮捕のあとで取り繕ったという事実は、逮捕のときに、令状主義を潜脱する意図があったことを推認させます。そこで、先行行為である逮捕の違法の重大性を評価するために、事後の事情を使える。後の事情で尿を得たのではなく、先の逮捕の悪質さを、後の事情で読み取っている、ということです。別の説明もあります。逮捕状を持っていかなかったのは、過失だったかもしれず、取り繕いから、意図が論理必然的に導かれるわけではありません。そこで、法を軽く見た態度が、司法の廉潔性を損ない、違法捜査の隠ぺいで、抑止まで妨げる点が悪質だ、と見て、事後でも考慮できる、という説明です。

答案では、虚偽の報告書などは、令状主義を潜脱する意図を推認させる、と書く足場になります。ただし、さきほどの温度を保ってください。判決が意図を認定したのではありません。潜脱し、没却するような重大なものと、評価されてもやむを得ない、という判断です。

二次証拠は許容:判決の構造

二次証拠(自宅の覚醒剤)の判断は4段。(a)鑑定書を疎明資料とした許可状で発見→証拠能力のない証拠と関連性を有する。(b)しかし司法審査を経て発付された許可状・逮捕前に適法に発付されていた窃盗の許可状の執行と併せて行われたなどの諸事情→鑑定書との関連性は密接なものではない。(c)収集手続に重大な違法があるとまではいえない。(d)証拠の重要性等諸般の事情を総合→証拠能力を否定できない

次は、二次証拠、自宅の覚醒剤です。判決は、これを使えると判断しました。理由は4段あります。

判例最判平15・2・14 刑集57巻2号121頁

大津の事件——覚醒剤の差押えと鑑定書の関連性 次に,本件覚せい剤は,被告人の覚せい剤使用を被疑事実とし,被告人方を捜索すべき場所として発付された捜索差押許可状に基づいて行われた捜索により発見されて差し押さえられたものであるが,上記捜索差押許可状は上記(2)の鑑定書を疎明資料として発付されたものであるから,証拠能力のない証拠と関連性を有する証拠というべきである。しかし,本件覚せい剤の差押えは,司法審査を経て発付された捜索差押許可状によってされたものであること,逮捕前に適法に発付されていた被告人に対する窃盗事件についての捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであることなど,本件の諸事情にかんがみると,本件覚せい剤の差押えと上記(2)の鑑定書との関連性は密接なものではないというべきである。したがって,本件覚せい剤及びこれに関する鑑定書については,その収集手続に重大な違法があるとまではいえず,その他,これらの証拠の重要性等諸般の事情を総合すると,その証拠能力を否定することはできない。そうすると,原判決は,上記の点において判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあり,これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。

1段目。覚醒剤は、鑑定書を疎明資料として出た許可状で見つかったので、証拠能力のない証拠と、関連性を有する、と認めます。ここが大事です。関連性を、認めてから入ります。違法と無関係だ、とは言っていません。2段目。しかし、司法審査を経て出た許可状による差押えであること。そして、逮捕前に適法に出ていた窃盗の許可状の執行と、併せて行われたこと。こうした本件の諸事情から、鑑定書との関連性は、密接なものではない、と評価します。3段目。だから、収集手続に重大な違法があるとまではいえない。4段目。その他、証拠の重要性等の諸般の事情を総合して、証拠能力を否定することはできない。

重大な違法と排除相当性という2要件の枠は、同じです。ただ、つながりを置く場所が違います。一次証拠では、密接に関連する証拠を許容するのは相当でない、という排除相当性の文の中でした。二次証拠では、つながりが密接でないから、重大な違法があるとまではいえない、と処理しています。つながりの置き場所は、一つに決まっているわけではありません。つながりの弱さを、事実で示した判決です。ここで1問です。同じ違法な逮捕から出た2つの証拠で、結論が分かれた分かれ目は、どこにありましたか?尿は、逮捕の当日にとられていて、逮捕と密接でした。覚醒剤は、司法審査を経た令状と、適法な窃盗の令状との併せ執行があって、つながりが密接ではありませんでした。これが、冒頭の問いの答えです。

前に見た、排除の目的に戻ります。違法のおかげで手に入った証拠を使わせなければ、違法をしても得をしない、と示せます。違法のすぐ隣でとった尿を捨てれば、その得が消えます。間に裁判官の審査と、適法な窃盗の令状の捜索が挟まった覚醒剤まで捨てても、抑止の面で得られる効果は小さく、真実を明らかにする面の損失のほうが大きい、と説明されます。

学説の整理=二次証拠の2つの事情を、つながりが薄い類型に重ねる。(i)司法審査を経た令状=違法のあとに適法な手続(令状審査)が入り、つながりが薄まる=希釈に近い(大津の判決は、鑑定書のほかの疎明資料の有無を述べていない)。(ii)適法な窃盗の許可状との併せ執行=その捜索でどのみち見つかったはず=不可避的発見に近い(窃盗の令状で覚醒剤をそのまま差し押さえられるわけではない=別の令状を得るなどの蓋然性)。どちらの名前も判決の言葉ではない

  • 学説の整理=二次証拠の2つの事情を、つながりが薄い類型に重ねる
  • (i)司法審査を経た令状=違法のあとに適法な手続(令状審査)が入り、つながりが薄まる=希釈に近い(大津の判決は、鑑定書のほかの疎明資料の有無を述べていない)
  • (ii)適法な窃盗の許可状との併せ執行=その捜索でどのみち見つかったはず=不可避的発見に近い(窃盗の令状で覚醒剤をそのまま差し押さえられるわけではない=別の令状を得るなどの蓋然性)
  • どちらの名前も判決の言葉ではない

ここから学説の整理です。2つの事情を、学説は、これまでの道具に重ねます。まず、1つ目の、司法審査を経た令状です。希釈は、違法のあとに適法な手続が間に入って、つながりが薄まる、という考え方でした。令状審査が間に入ると、違法との結びつきが薄まる、という説明がされます。希釈に近い、という整理です。ただし、大津の判決は、鑑定書のほかに疎明資料があったかを述べていません。司法審査だけで決めず、併せ執行などと合わせた、本件の諸事情で、密接でないとしています。2つ目の、併せ執行です。すでに適法に出ていた窃盗の許可状で、家は捜索されることになっていました。覚醒剤の令状が無くても、その捜索で、どのみち見つかったはずだ、という見方ができます。不可避的発見に近い、という整理です。

併せ執行があったからといって、覚醒剤まで押収できたことにはなりません。窃盗の令状で、覚醒剤をそのまま差し押さえられるわけではありません。差し押さえられるものは、令状に書かれた事件に関係するものです。差押えの対象物の範囲は、前に見ました。ですから、見つかったとしても、別の令状をとるなどして、差し押さえられた蓋然性がある、という話です。そして、どちらの名前も、判決の言葉ではありません。

証拠の重要性は諸事情の1つ

証拠の重要性。大津の二次証拠の判断に「証拠の重要性等諸般の事情」が出てくる(一次証拠の判断には出てこない)。理論上の位置づけははっきりしない。つながりが弱くなった段階で、違法の重大性以外の事情も含めて衡量した可能性。答案では諸事情の1つとして置く程度 図:証拠の重要性

  • 大津の二次証拠の判断に「証拠の重要性等諸般の事情」が出てくる(一次証拠の判断には出てこない)
  • 理論上の位置づけははっきりしない
  • つながりが弱くなった段階で、違法の重大性以外の事情も含めて衡量した可能性
  • 答案では諸事情の1つとして置く程度

4段目の、証拠の重要性にも触れます。大津で、証拠の重要性が出てくるのは、二次証拠の判断です。一次証拠の判断には出てきません。重要な証拠であれば、それだけで違法を乗り越えられる、とまでは言えません。理論上の位置づけは、はっきりしません。つながりが弱くなった段階で、違法の重大性以外の事情も含めて、柔軟に衡量した可能性がある、と考えられています。判決の並びも、重大な違法があるとまではいえない、と言ったあとに、その他、として出てきます。答案では、諸事情の1つとして置く程度で足ります。たとえば、覚醒剤の所持は、人目につかないところで行われ、証拠が残りにくい犯罪で、この覚醒剤は所持を裏づける決定的な証拠だ、と事実で一言添えます。

宅配便のエックス線検査の決定:令状審査が間に入る意味

宅配便エックス線の決定。事実=覚醒剤密売の嫌疑で内偵、宅配便業者の承諾を得て荷物をその都度借り受けエックス線検査(荷送人・荷受人の承諾なし)を5回。許可状は4回目までの射影の写真等を一資料として発付。判断=違法な検査と関連性はある、しかし(1)嫌疑が高まり実質的必要性があった(2)業者の承諾・対象を限定する配慮=潜脱の意図があったとはいえない(3)司法審査を経た許可状・検査の結果以外の証拠も資料として提供されたとうかがわれる→重大な違法があるとまではいえず、重要性等を総合して肯定 図:宅配便エックス線の決定

  • 事実=覚醒剤密売の嫌疑で内偵、宅配便業者の承諾を得て荷物をその都度借り受けエックス線検査(荷送人・荷受人の承諾なし)を5回
  • 許可状は4回目までの射影の写真等を一資料として発付
  • 判断=違法な検査と関連性はある、しかし(1)嫌疑が高まり実質的必要性があった(2)業者の承諾・対象を限定する配慮=潜脱の意図があったとはいえない(3)司法審査を経た許可状・検査の結果以外の証拠も資料として提供されたとうかがわれる→重大な違法があるとまではいえず、重要性等を総合して肯定

令状審査が間に入る、とは、具体的に何を指すのか。宅配便のエックス線検査の決定で、中身を補います。その前に、1問です。令状審査が間に入るとつながりが薄まる、という説明は、どんな温度で受け取るのでしたか?薄まる、という説明がされる、という温度です。違法な資料が疎明資料に入っていても、令状は出ることがあるからです。断ち切られる、とは言いません。その温度のまま、決定を読みます。事実です。警察は、覚醒剤の密売の嫌疑で、ある会社を内偵していました。宅配便業者の営業所の承諾を得て、会社の事務所宛ての荷物を、1個ずつ、5回借り受けます。そして、空港の税関で、荷物にエックス線を当てて、中身の射影を見ました。荷送人と荷受人の承諾は、ありません。検査のあと、荷物は返して、配達されました。2回目以降の検査では、細かい固形物が均等に詰められた袋が写っていました。このエックス線検査は、荷物の中身の形や材質をうかがい知ることができるので、検証、つまり、ものの性質や形状、状態を認識する処分としての性質を有する強制処分で、令状なしに行えば違法です。これは、GPS捜査とエックス線検査を扱った回で、すでに見ました。決定も、まず、違法だと述べます。今日の問題は、その違法な検査の結果を使って出た令状で、見つかった覚醒剤の証拠能力です。

判例最決平21・9・28 刑集63巻7号868頁

宅配便エックス線検査の決定——関連性はある 次に,本件覚せい剤等は,同年6月25日に発付された各捜索差押許可状に基づいて同年7月2日に実施された捜索において,5回目の本件エックス線検査を経て本件会社関係者が受け取った宅配便荷物の中及び同関係者の居室内から発見されたものであるが,これらの許可状は,4回目までの本件エックス線検査の射影の写真等を一資料として発付されたものとうかがわれ,本件覚せい剤等は,違法な本件エックス線検査と関連性を有する証拠であるということができる。

構造は、大津の二次証拠と同じです。まず、関連性を認めます。許可状は、4回目までの射影の写真等を、一資料として発付されたとうかがわれる。そこで、覚醒剤等は、違法な検査と関連性を有する証拠だ、とします。

判例最決平21・9・28 刑集63巻7号868頁

宅配便エックス線検査の決定——それでも重大な違法とまではいえない 本件エックス線検査が行われた当時,本件会社関係者に対する宅配便を利用した覚せい剤譲受け事犯の嫌疑が高まっており,更に事案を解明するためには本件エックス線検査を行う実質的必要性があったこと,警察官らは,荷物そのものを現実に占有し管理している宅配便業者の承諾を得た上で本件エックス線検査を実施し,その際,検査の対象を限定する配慮もしていたのであって,令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとはいえないこと,本件覚せい剤等は,司法審査を経て発付された各捜索差押許可状に基づく捜索において発見されたものであり,その発付に当たっては,本件エックス線検査の結果以外の証拠も資料として提供されたものとうかがわれることなどの諸事情にかんがみれば,本件覚せい剤等は,本件エックス線検査と上記の関連性を有するとしても,その証拠収集過程に重大な違法があるとまではいえず,その他,これらの証拠の重要性等諸般の事情を総合すると,その証拠能力を肯定することができると解するのが相当である。

そのうえで、諸事情を挙げて、重大な違法とまではいえない、とします。決定が挙げる事情のうち、主なものは3つです。1つ目、嫌疑が高まっていて、検査を行う実質的必要性があったこと。2つ目、荷物を管理する業者の承諾を得て、対象を限定する配慮もしていて、令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があったとはいえないこと。3つ目、司法審査を経た許可状で、その発付には、検査の結果以外の証拠も資料として提供されたとうかがわれること。ここで1問です。令状審査が入ったことだけで、証拠は使える、と決まりますか?決まらないと思います。実質的必要性や、潜脱の意図が無かったことなど、ほかの事情も一緒に見ています。令状審査は、諸事情の1つです。さらに、決定の言葉にも注意してください。他の証拠も資料として提供されたと、うかがわれる、です。断定ではなく、推認の言い方です。学説の整理です。令状審査の際には、違法な捜査の結果だけでなく、それ以外の資料も、疎明資料に使われることがあります。そうすると、違法な検査のおかげで令状が出た、という因果性が弱まる。これが、令状審査が間に入るとつながりが薄まる、という説明の中身です。大津の判決は、ここを述べていなかったので、宅配便の決定で中身を補いました。ただし、判決も決定も、希釈という言葉は使っていません。

自前の設例で一次・二次を動かす

設例。U=警察官、V=古物商(偽ブランド品の販売=商標法違反の逮捕状が出ている)。駅前でVを逮捕、逮捕状を携行せず呈示もしない→署でVが任意に売上帳を提出(一次証拠)→売上帳の記載を疎明資料にVの倉庫の捜索差押許可状→在庫品を差押え(二次証拠)。変形1=疎明資料が売上帳だけ。変形2=取引先の被害申告書や店舗の写真など売上帳以外の資料も提供。変形3=逮捕前に別の適法な倉庫の許可状が出ており併せて執行 図:設例

  • U=警察官、V=古物商(偽ブランド品の販売=商標法違反の逮捕状が出ている)
  • 駅前でVを逮捕、逮捕状を携行せず呈示もしない→署でVが任意に売上帳を提出(一次証拠)→売上帳の記載を疎明資料にVの倉庫の捜索差押許可状→在庫品を差押え(二次証拠)
  • 変形1=疎明資料が売上帳だけ
  • 変形2=取引先の被害申告書や店舗の写真など売上帳以外の資料も提供
  • 変形3=逮捕前に別の適法な倉庫の許可状が出ており併せて執行

自前の設例で、一次と二次を動かします。警察官のUは、偽ブランド品を売った商標法違反の被疑事実で、逮捕状が出ている古物商のVを、駅前で逮捕しました。このとき、逮捕状を持っておらず、呈示もしませんでした。署に着いてから、Vは、任意に売上帳を差し出しました。これが一次証拠です。Uは、売上帳の記載を疎明資料にして、Vの倉庫の捜索差押許可状を得て、捜索し、在庫品を差し押さえました。これが二次証拠です。まず一次証拠です。売上帳は、逮捕の当日に出ました。逮捕との時間の近さは、尿と同じです。ですから、逮捕手続の違法が重大と評価されれば、売上帳は排除に傾きます。そして、重大と評価されるかは、呈示しなかっただけで決まりません。署に着いてから逮捕状を示し、逮捕状に現場で示したと嘘を書いたなら、重大に傾きます。単に持ち忘れ、あとから事実どおりに報告していたなら、傾き方は変わります。二次証拠を、3つに動かします。変形1。疎明資料が、売上帳だけだった場合です。令状は、違法な逮捕のおかげで、そのまま出ています。つながりは強く、在庫品も排除に傾きます。

変形2は、どうなりますか。変形2。疎明資料に、売上帳のほかに、取引先の被害の申告書や、店の写真も提供されていた場合です。売上帳だけではなく、他の資料もあったので、違法のおかげで令状が出た、というつながりは、弱まる方向です。薄まる、と説明されます。変形3。逮捕の前に、別に、倉庫の捜索差押許可状が適法に出ていて、併せて執行していた場合です。この令状でも倉庫を捜索する予定でしたから、違法な逮捕と在庫品のつながりは、弱まる方向です。変形1と変形2が、境界のペアです。同じ売上帳から始まる令状でも、疎明資料が売上帳だけか、他にもあったかで、つながりの強さが動きます。ただし、どの変形でも、方向までです。弱まる方向でも、そこで決まりではありません。最後は、重大な違法と排除相当性を、事情全体で総合して決めます。

答案での順序

答案での順序。一次証拠=先行行為(逮捕)の違法の重大性(警察官の態度の総合)→つながり(密接に関連・当日)→排除相当性→排除。二次証拠=同じ枠+つながりを薄める事情(令状審査・併せ執行など)を事実で示す→重大な違法とまではいえない。証拠の重要性は諸事情の1つ 図:答案での順序

  • 一次証拠=先行行為(逮捕)の違法の重大性(警察官の態度の総合)→つながり(密接に関連・当日)→排除相当性→排除
  • 二次証拠=同じ枠+つながりを薄める事情(令状審査・併せ執行など)を事実で示す→重大な違法とまではいえない
  • 証拠の重要性は諸事情の1つ

ここは、論文で論点になりうる部分です。答案の順序をまとめます。一次証拠は、先行行為である逮捕の違法の重大性を、警察官の態度の総合で評価します。次に、つながりが密接か。当日にとられた、という事実を拾います。そして、排除相当性です。二次証拠は、同じ枠です。そのうえで、つながりを薄める事情を、事実で示します。令状審査が間に入ったこと。他の資料も提供されたこと。適法な令状と併せて執行されたこと。これらを当てはめて、密接ではない、重大な違法とまではいえない、と進めます。証拠の重要性は、諸事情の1つに添えます。

短答の落とし穴

短答の落とし穴。大津:逮捕状を携行せず現場で呈示せず署で呈示○。判決は潜脱の意図があったと認定した×(評価されてもやむを得ない)。鑑定書は排除・覚醒剤は否定できない○。覚醒剤は一次証拠と無関係と判断×(関連性を有するが密接ではない)。違法の承継の語で判示×。一次証拠の判断で証拠の重要性を考慮×。破棄自判×(破棄差戻し・その余は上告棄却)。宅配便エックス線:違法としつつ肯定○。令状審査が入ったことのみを理由×。希釈・不可避的発見の語×。 図:短答の落とし穴

  • 大津:逮捕状を携行せず現場で呈示せず署で呈示○
  • 判決は潜脱の意図があったと認定した×(評価されてもやむを得ない)
  • 鑑定書は排除・覚醒剤は否定できない○
  • 覚醒剤は一次証拠と無関係と判断×(関連性を有するが密接ではない)
  • 違法の承継の語で判示×
  • 一次証拠の判断で証拠の重要性を考慮×
  • 破棄自判×(破棄差戻し・その余は上告棄却)
  • 宅配便エックス線:違法としつつ肯定○
  • 令状審査が入ったことのみを理由×
  • 希釈・不可避的発見の語×

短答の確認です。大津の事件で、警察官は、逮捕状を持っていかず、逮捕した現場でも示さず、署に着いたあとに示した。○です。判決は、警察官に、令状主義を潜脱する意図があったと認定した。×です。判決は、潜脱し、没却するような重大なものであると、評価されてもやむを得ない、と書いています。判決は、尿の鑑定書の証拠能力を否定し、覚醒剤の証拠能力は否定できないとした。○です。判決は、覚醒剤は、一次証拠と無関係だと判断した。×です。関連性を有する証拠としたうえで、密接なものではない、としました。判決は、違法の承継という言葉を用いて、採尿手続に違法が承継されたと判示した。×です。承継の検討は出てきません。承継は、判決の言葉ではありません。一次証拠の判断の中で、判決は、証拠の重要性を考慮して排除した。×です。重要性が出てくるのは、二次証拠の部分です。大津は、破棄自判の判決である。×です。最高裁が自分で結論を言い渡す、破棄自判ではありません。原判決と第1審判決のうち、覚醒剤の所持と窃盗の部分を破棄して、大津地方裁判所に差し戻し、覚醒剤の使用の部分は、上告を棄却しました。宅配便のエックス線の決定は、検査を違法としつつ、覚醒剤等の証拠能力を肯定した。○です。同じ決定は、令状審査が入ったことのみを理由に、証拠能力を肯定した。×です。実質的必要性、潜脱の意図が無いこと、許可状の発付に他の証拠も資料として提供されたとうかがわれること、などの諸事情と、重要性等の総合です。

同じ決定は、希釈や不可避的発見という言葉で判断した。×です。その言葉は出てきません。

今日の地図(保存版)

第5章 違法収集証拠の地図。1排除の根拠と2要件(重大な違法・排除相当性)→2当てはめ(総合評価・強制処分に至っていたかと潜脱の意図が特に重い)→3派生証拠(毒樹の果実・つながりが薄い3類型)→4同意・申立適格・私人による収集(排除は誰のためか)→5違法の承継(同一目的・直接利用、毒樹の果実論との手順の違い)→6一次証拠と二次証拠(大津:一次は排除・二次は令状審査と併せ執行でつながりが密接でない/宅配便エックス線の決定) 図:第5章 違法収集証拠の地図

今日のまとめです。同じ違法な逮捕から出た証拠でも、結論が分かれます。分かれ目は、つながりの強さです。逮捕の当日にとった尿の鑑定書は、密接に関連する証拠として排除されました。令状審査と、適法な令状との併せ執行を挟んだ覚醒剤は、密接ではないとして、許容されました。令状審査が間に入るとつながりが薄まる、という説明は、他の資料も疎明資料に提供されたとうかがわれる、といった事実の上で成り立ちます。令状審査だけで決まりはしません。そして、判決の言葉と、学説の整理は、分けて持ち帰ってください。第5章の違法収集証拠を、1枚の地図にします。まず、排除の根拠は、適正手続、司法の廉潔性、違法捜査の抑止の3つ。そこから、重大な違法、排除相当性の2要件。その当てはめでは、総合評価で、強制処分に至っていたかと、令状主義を潜脱する意図が、特に重みを持ちやすい。次に、派生証拠、毒樹の果実と、つながりが薄い3つの類型。同意と、申立適格と、私人による収集は、排除が誰のための、誰に向けた規律か、で答えが決まりました。違法の承継は、同一目的と直接利用で、違法が後の手続に引き継がれるかを見る考え方で、毒樹の果実論とは手順が違うだけでした。そして、今日の、一次証拠と二次証拠です。どの場面も、最後に見るのは、重大な違法と排除相当性でした。次から、第6章、公判の応用に入ります。公判を始める前に、争点と証拠を絞り込む公判前整理手続を扱います。整理のあとに、やむを得ない事由がない限り、新しい証拠調べ請求ができなくなる、失権効まで見ます。

参照条文

  • 刑事訴訟法第201条第1項・第2項
  • 刑事訴訟法第73条第3項(201条2項により逮捕状の場合に準用)

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