類似事実による立証と主観面の立証
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第5章 証拠法 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
導入

具体的な場面で考えます。商店街で、半年の間に空き巣が5件起きました。Aさんは、そのうち4件は自分がやったと認め、5件とも同じ裁判で審理されています。ところが5件目だけは、やっていないと争っています。検察官は、認めている4件を使って、5件目もAさんだと立証したいと考えました。認めた件数が多いほど、残りも同じ人の仕業だと感じる。その直感には、答案では待ったがかかります。4件やった人だから、5件目もやっただろう、という考え方は、前回見た二段の推認、つまり悪い性格を経由する推論の形だからです。前回の判決は、この推論を避けるために、前科を犯人性の証明に使える場合を、3つの言葉で絞りました。1つ目の問いは、その枠組みが、前科ではない併合審理中の事件にも及ぶのか、です。
もう1つの、わざとだったかどうかを示す場合は、どうなるのですか。そちらは、同じ枠組みを使わない道があります。分かれ目は、何を立証するための証拠なのか、つまり、関連性の回で見た、要証事実です。犯人が誰かを示すのか、故意など内心を示すのか。ここを取り違えないことが、今日の一番の目標です。
類似事実による立証とは何か

類似事実による立証とは、証明したい事実、たとえば起訴された事実と似た別の事実を証明して、そこから起訴された事実を推認する立証です。今日のように犯人が被告人かどうかが争いなら、別の類似事実から、犯人は被告人だ、と推す形になります。前科との違いは、その別の事実が、確定判決を受けた過去の事実か、それ以外か、です。前科以外の被告人の他の犯罪事実、たとえば、同じ裁判で併合して審理されている別の起訴事実や、まだ起訴されていない余罪が、類似事実にあたります。前科ではなく、同じ裁判で審理中の事実なら使いやすい、と感じるのは、もっともです。実際、併合審理されていて被告人も認めている事実なら、他の証拠で認定できます。前の事件は本当に被告人の仕業だったのか、という争いに審理が広がる、争点の拡散は小さくなります。前科があるという事実自体が、被告人の評価を下げる、という弊害も小さいでしょう。
使えるということですか。そこが、落とし穴です。推論の骨組みは、前科のときと同じです。4件やっている、だからAさんは空き巣をする性格の人だ、だから5件目もやっただろう。性格を経由する二段の推認で、弱さは残ります。減ったのは弊害の一部であって、推論の弱さそのものは変わりません。過去の事実から今回の事実へ渡る、この中継ぎを、今日は、橋と呼びます。前回の枠組みは、併合審理中の事件にも及ぶ、というのが最高裁の答えです。その決定を、次に読みます。なお、量刑の資料として余罪を見る場面は、犯人性の立証とは別の話で、別の回で扱います。
併合事件にも及ぶ枠組み——決定の事案と規範

ここで、1問です。前回の判決が、前科を犯人性の証明に使うために求めた、3つの言葉は、何でしたか?顕著な特徴と、相当程度の類似と、それ自体で、でした。それ自体で、とは、前回の折り鶴のように、同じまれな特徴が現れているので同じ人物だと言える、ということでした。今日の決定は、この3つを、前科以外にも広げました。先に、決定の型を言います。これは、原判決、つまり控訴審の判決の判断は違法である、ただし、その間接事実を除いても事実誤認はないから判決に影響を及ぼさない、として、上告を棄却した決定です。違法だが結論は動かない。短答で問われる型です。
上告理由に当たらない法令違反を理由に、上告審が職権で原判決を破棄するには、その法令違反が判決に影響を及ぼすことに加えて、破棄しなければ著しく正義に反することも要るからです。証拠の使い方が違法でも、その証拠を除いた残りの証拠で結論が支えられるなら、破棄されません。事案です。ここは、決定が認定した事実だけを言います。住居侵入、窃盗、現住建造物等放火などが、併合して審理されました。被告人は、住居侵入と窃盗の一部を認め、他の事実の多くについて、犯人が自分であることを争いました。争われた事実には、放火が含まれます。原判決は、被告人の前科の犯罪事実と、被告人が認める住居侵入と窃盗の事実から、3つを認めました。1つ目は、色情盗、つまり女性用の物を性的な関心から盗む、という特殊な性癖。2つ目は、侵入先の下見をし、女性用の物の入手が主な目的で、留守宅の窓ガラスを割って侵入するという手口。3つ目は、女性用の物を盗んだ際に、被告人本人にも説明できない、女性に対する独特の複雑な感情を抱いて放火する、という極めて特異な犯罪傾向です。そして、これが争いのある各事実に一致するとして、犯人性の間接事実の1つにしました。
最高裁は、原判決のこの認定の使い方を違法としました。枠組みを、判旨のまま読みます。
判例最決平25・2・20 刑集67巻2号1頁
前科以外の他の犯罪事実にも及ぶ枠組み このことは,前科以外の被告人の他の犯罪事実の証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いようとする場合にも同様に当てはまると解すべきである。そうすると,前科に係る犯罪事実や被告人の他の犯罪事実を被告人と犯人の同一性の間接事実とすることは,これらの犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,その特徴が証明対象の犯罪事実と相当程度類似していない限りは,被告人に対してこれらの犯罪事実と同種の犯罪を行う犯罪性向があるという実証的根拠に乏しい人格評価を加え,これをもとに犯人が被告人であるという合理性に乏しい推論をすることに等しく,許されないというべきである。
前科について示された枠組みが、前科以外の他の犯罪事実にも、同じく当てはまる、と言っています。橋が性格なら、顕著な特徴がなければ渡れない。前科か、併合事件かは、橋の作りを変えません。だから、商店街の4件も、5件目と並ぶ顕著な特徴がなければ、性格を経由する推論になり、許されません。
⭐ 論文で書く規範:犯人性の立証に前科・他の犯罪事実を使う規範 前科・他の犯罪事実が顕著な特徴を有する | その特徴が証明対象の事実と相当程度類似する | それ自体で犯人の同一性を合理的に推認させる (判例が立てた規範(条文の要件ではない))
当てはめ——顕著な特徴と言えなかったもの

原判決が挙げた3つのうち、性癖と手口の2つは、判旨で直接言及されています。読みます。
判例最決平25・2・20 刑集67巻2号1頁
当てはめ——性癖と手口は顕著な特徴といえない 原判決指摘アの色情盗という性癖はさほど特殊なものとはいえないし,同イの,あらかじめ下見をするなどして侵入先の情報を得る,女性用の物の入手を主な目的とする,留守宅に窓ガラスを割るなどして侵入するという手口及び態様も,同様にさほど特殊なものではなく,これらは,単独ではもちろん,総合しても顕著な特徴とはいえないから,犯人が被告人であることの間接事実とすることは許されないというべきである。
顕著な特徴といえるかどうかは、手口がありふれているかどうかが決め手です。ありふれた手口なら、他の人も同じことをします。つまり、被告人だけに絞る力がありません。前回の、折り鶴を置いて帰る、のようなまれな特徴とは、正反対です。3つ目の、特異な犯罪傾向についても、決定は述べています。原判決の言う行動傾向は、前科の事実に照らしても曖昧で、特異な犯罪傾向とは言い難い、と。さらに、そもそもこのような犯罪傾向を犯人性の間接事実にすること自体が、実証的根拠に乏しい人格的評価にほかならない、としました。ありふれているか、曖昧か、という以前に、傾向で犯人を決めるのは、性格を橋にする推論そのものだからです。そして、結論の部分です。
判例最決平25・2・20 刑集67巻2号1頁
結論——原判決は違法だが判決に影響しない しかしながら,上記間接事実を除外しても,その余の証拠によれば,第1審判決の各犯罪事実の認定について事実誤認はないとした原判断は是認することができるから,原判決の上記法令違反は,判決に影響を及ぼすものではない。
答案では、証拠の使い方が許されるかどうかと、それが判決の結論を左右するかどうかを、分けて考えます。今日の決定は、前者は許されない、後者は影響なし、という結論でした。
補足意見——併合された類似事実を、別の角度で使う余地

法廷意見、つまり、裁判所としての決定そのものの考え方では、前科と同じ厳しさです。ただ、この決定には、金築裁判官の補足意見があります。先に断ります。補足意見は、裁判官個人の意見であって、判例法理ではありません。法廷意見と混ぜないでください。補足意見が言いたいのは、併合審理された類似事実には、別の考え方の余地がある、ということです。補足意見は、この事案の事実を、こう指摘します。起訴された10件の放火は、約4か月の間に連続していました。どの放火でも、火を付けたとみられる時刻より前、長くても約10時間のうちに、被告人がその家に侵入し、室内で金品を盗み、または盗もうとしたことが認められます。こうした近接した連続がある中で、こう述べています。
判例最決平25・2・20 刑集67巻2号1頁 金築誠志裁判官の補足意見
補足意見——近接した連続と偶然 仮に,争いのある放火が,被告人の関与なしに他の者によって犯されたとするならば,それは極めて確率の低い偶然の事態が発生したことを承認することになろう。
ここでの橋は、性格ではありません。近接性そのものです。被告人が関与していないとすれば、あまりに偶然が重なる。だから、第三者の可能性が下がる。性格を通らずに、偶然性を排除する推論です。もう1つの指摘は、併合審理される類似事実は、前科のように存在そのものが人格評価を下げる危険や、争点が拡散するおそれが考えにくい、という点です。だから、顕著な特徴という例外の要件は、事案によって幅をもって考えることが否定されないのではないか、という意見です。
判例最決平25・2・20 刑集67巻2号1頁 金築誠志裁判官の補足意見
補足意見——顕著な特徴の要件の幅 「顕著な特徴」という例外の要件について,事案により,ある程度の幅をもって考えることは,必ずしも否定されないのではないだろうか。
これを答案の根拠にしてよいのですか。そこが大事です。補足意見自身が、射程を留保しています。
判例最決平25・2・20 刑集67巻2号1頁 金築誠志裁判官の補足意見
補足意見——射程の留保 本決定は,あくまで原判決における証拠の使用方法を違法と判断したものであって,上記2に述べた点についてまで判断したものではない。
上記2とは、併合審理された類似事実を、近接性などで使う考え方の部分です。つまり、法廷意見は、そこまで判断していません。順序があります。まず法廷意見の枠組み、顕著な特徴と相当程度の類似で検討します。それで足りないときに、時間的、場所的な近接、件数、他の証拠で認定できるか、といった事情から、偶然性を排除する推論が別に立つかを書きます。そのときは、立つと解する余地がある、と断定を避けます。どの程度の時間の幅まで近接性だけで推せるかは微妙だ、と補足意見自身が認めています。そのときに類似事実は、近接性からの推認を後押しする、補強的な証拠になりうる、という位置づけです。
主観面の立証——枠組みがなぜ変わるのか

ここからは、犯人が誰かではなく、故意など内心を立証する場合です。この場合は、前科や類似事実を使える余地が出ます。ただし、なぜ使えるのかを分けて理解してください。まず前提です。この場面では、行為があったこと、つまり客観面は、他の証拠で認められています。争いは、被告人が、その行為の意味を分かっていたかどうか、頭の中にあります。設例です。Aさんが、中古ブランド時計を、正規品だと言って買主Bさんに売りました。実際は偽物で、詐欺で起訴されましたが、Aさんは、偽物とは知らなかった、と主張しています。偽物を正規品と偽って売ったという客観面は、他の証拠で認定できています。Aさんには、2年前にも、偽物を正規品として売り、そのとき鑑定書で偽物だと指摘された事実があります。
言い方が2通りあります。1つ目は、Aさんは詐欺を繰り返す悪い人だ、だから今回も故意があった、です。これは、犯罪性向という実証的根拠の乏しい人格評価を通っているので、許されません。2つ目は、2年前に同じやり方で偽物を売り、偽物だと指摘された。だから、この売り方を偽物でやれば、相手が正規品と信じてお金を払うことを、経験から知っていた。だから今回も、偽物と分かっていた、です。橋は、悪い人だという評価ではなく、経験で得た具体的な認識と知識です。性格を通らないので、成り立つ余地があります。同種前科があるから故意があった、と丸暗記するのは危険です。橋が性格なら許されず、橋が認識や知識なら許される余地がある。判断するのは、ラベルではなく、推論の中身です。前回名前だけ触れた、習慣に近い行動様式や常習賭博罪の例と同じく、人格評価を介さない推論の1つです。
⭐ 論文で書く規範:主観面の立証に過去の事実を使う場合の整理 客観面が他の証拠で認められている | 過去の事実と本件の行為態様が類似している | 人格評価を介さず具体的な認識・知識として推認できる (解釈による整理(判例が示した規範ではない))
3つの条件は、どうして必要なのですか。1つずつ言います。客観面が他の証拠で認められていること。今回の行為がどうだったかが他の証拠で決まっていないと、過去の行為と態様が似ているか比べられません。似ていなければ、違法と認識していたはず、という推論が立たないからです。過去の事実と本件の行為態様が類似していること。境界のペアで確かめます。同じ偽物を正規品として売った過去なら、今回の売り方を偽物と分かって売った、と推す材料になります。ところが、Aさんの過去の前歴が、車の修理費を水増しして請求した件だったらどうでしょう。
水増し請求の前歴は、時計が偽物だと知っていたことにはつながりません。行為態様が類似していなければ、今回の行為が違法だという認識の推論が成り立たないからです。3つ目が、性格ではなく認識や知識として言葉にできることです。ここが、答案で自分の言葉で書く部分です。それなら、故意の立証だと言えば、何でも通りますか。通りません。故意の立証というラベルだけで前科を出すと、実は、またやる人だから、という性格を通っていることがあります。
犯人性と主観面で、なぜ求めるものが違うのか

犯人性では顕著な特徴が要るのに、主観面では要らないのは、どうしてですか。立証しようとしていることが違うからです。犯人性では、ほかの誰かではなく、この人だ、と絞り込む必要があります。商店街の空き巣で言えば、4件の手口がありふれていれば、同じ手口の空き巣はほかにもいるので、5件目をAさんに絞り込めません。だから、まれな特徴、顕著な特徴が要ります。主観面では、この行為をしたのはこの人だと、他の証拠でもう決まっています。時計の設例で言えば、偽物を売ったのがAさんであることに争いはなく、問われるのは、偽物と知っていたかどうかだけです。絞り込みは要りません。要るのは、この人の頭の中を、経験に基づいて具体的に説明できるかどうかです。他の人と区別できるかは、問題になりません。これは判例の言葉ではなく、判旨から導いた整理です。
次に読む決定は、顕著な特徴を求める言い方をしていません。知識の推認も、同じ考え方です。たとえば、特殊な工具や薬品の扱いの履歴から、その取扱いの知識を持っていると推す使い方です。知識は、その人が持っているかどうかという具体的な事実で、性格の評価ではありません。この推認は、犯人性の間接事実として使う場面でも、人格評価を介さないので、成り立つ余地があります。これは解釈による整理ですが、決め手は、要証事実のラベルより、橋が性格かどうかです。
主観面の立証に関する最高裁の決定

主観面の立証について、最高裁が短く述べた決定があります。詐欺の事件で、上告趣意のうち判例違反の主張は、引用された判例が事案を異にするとして退けられ、その余の主張は、単なる訴訟法違反の主張として退けられました。その退ける理由を添えた括弧書きの中で、こう述べています。
判例最決昭41・11・22 刑集20巻9号1035頁
詐欺の故意を同種前科の内容で認定した原判決 犯罪の客観的要素が他の証拠によつて認められる本件事案の下において、被告人の詐欺の故意の如き犯罪の主観的要素を、被告人の同種前科の内容によつて認定した原判決に所論の違法は認められない。
短答では、この条件付きが押さえどころです。客観的な部分は他の証拠で認められている事案で、詐欺の故意を同種前科の内容で認定しても、違法ではない。前科であれば何にでも使える、という決定ではありません。なぜ許されるのか、決定は書いていますか。書いていません。悪性格を介さない推認だから許される、というのは、さっきの整理です。判例が言った言葉として答案に書かないよう、注意してください。
悪性格の事実を犯罪事実の推認に使わなかった例

悪性格の事実を使って、犯罪事実を推認した例もあるのですか。逆です。これは、悪性格の事実を、犯罪事実の推認には使わなかった、とされた決定です。事件は、動機が全く不明だ、ということが、第一審が無罪とした大きな理由でした。これに対して最高裁は、被告人を異常性格者と認めた原審の判断は相当で、格別の動機なく無差別に犯行に及んだことも首肯できる、と述べました。そして、こう言っています。
判例最決昭57・5・25 集刑227号337頁
異常性格者であることは犯罪事実の推認に使われていない なお、原判決は、犯行の原因が存在することを推測させる事実として被告人が異常性格者であることを挙げたに過ぎないから、これから犯罪事実を推認したという所論の非難はあたらない。
犯行の原因が存在することを推測させる事実、とは、動機の代わりになる、犯行の背景がありうる、という程度の意味だと整理できます。そして、もう1つ。第一審の考え方について、最高裁はこう述べました。
判例最決昭57・5・25 集刑227号337頁
動機の立証がないことから犯行自体を否定できない 通常の人格者を判断の基礎にすえ、本件のような重大な犯罪を犯すについては必ずやそれ相応の動機がなければならないとの前提のもとに、かかる動機の立証のないことなどから直ちに被告人の犯行自体を否定したもので、とうてい支持することができないものといわなければならない。
整理すると、この決定は、異常性格だから犯人だと推したのではありません。動機の立証がないから犯人ではない、という第一審の推論に反論したものです。今日の言葉に置き直します。禁じられているのは、性格を橋にして、犯人性のような犯罪事実を推すことでした。この決定で、異常性格という事実が示したのは、犯行の背景がありうる、というところまでで、犯罪事実へ渡る橋には使われていません。だから、禁じられた推論には当たらない、とされたのです。冒頭の、何を立証するための証拠か、という問いが、結論を分けた例です。ただし、判旨の一文の射程は限られます。悪性格の証拠は、反論なら常に使える、と広げて覚えるのは危険です。
論文の型

答案では、何から書き始めればよいですか。手順です。1つ目、要証事実は何か。犯人性か、故意や目的、あるいは事情を知っていたかという知情か。2つ目、過去の事実から要証事実へ渡る推論の過程を特定します。過去の事実から、性格を経由するのか、認識を経由するのか。3つ目、性格を橋にして犯人性を推すなら、顕著な特徴があり、相当程度類似し、それ自体で同一人物と言えるか、を検討します。4つ目、主観面なら、客観面は他の証拠で立証されているか、行為態様は類似しているか、性格ではなく認識や知識として説明できるか、を検討します。5つ目、併合審理された類似事実なら、近接性など偶然性を排除する推論が別に立つかを付け加えます。
ここまでの犯人性の規範は、条文の要件ではありません。判例が解釈で立てた規範です。条文との接点は、事実の認定は証拠による、という317条で、関連性の根拠として名前を挙げる程度です。主観面のほうは、判例が説示した規範ではなく、解釈による整理です。答案では、解される、という書き方をします。ミニ事例で、争い方が変わると枠組みが変わることを確かめます。偽物時計の設例で、Aさんが、そもそも売ったのは自分ではない、と争う場合。要証事実は犯人性で、前科や類似事実は、顕著な特徴と相当程度の類似が必要です。売ったのは自分だが、偽物とは知らなかった、と争う場合。要証事実は主観面で、経験から得た認識と知識という推論が問題になります。
最初の商店街の設例に戻ります。5件目を、そもそも自分ではない、と争うなら、前回の枠組みで検討します。ありふれた手口の4件では足りません。もし、5件目の侵入は認めたうえで、盗むつもりはなかったと争うなら、要証事実は盗む意思、つまり主観面に変わり、経験から得た認識や知識という推論が問題になります。
今日の地図(保存版)

今日のまとめです。1つ目。併合審理された類似事実も、前科と同じ枠組みで、顕著な特徴と相当程度の類似がなければ、犯人性の証明には使えません。この決定は、原判決を違法としながら、残りの証拠で結論は動かないとして、上告を棄却しました。補足意見は、近接性や要件の幅の余地を示しましたが、判例法理ではありません。2つ目。故意など主観面の立証では、悪性格を通らない推論なら余地があります。客観面は他の証拠で認められていることが前提で、この場面では、他人との区別より、経験による具体的な認識や知識が問題になります。ただし、決定は推論の中身を述べていません。3つ目。答案は、要証事実から入ります。犯人性か主観面かで、使える推論が変わります。ここは、論文でも論点になりうるところです。