刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#167

再審公判と非常上告

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第8章 上訴と救済手続 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

導入

今日の問い。Zの再審開始の決定が確定した。再審の2段階=①再審請求手続(再審を開くかどうかを決定で決める)→再審開始の決定→確定→②再審公判(やり直しの裁判)。今日は②から。①やり直しの裁判はどこで、どう進むのか。元の刑より重くなることはあるのか ②法令の誤りだけが見つかったときはどうするのか ③無罪になったあと、失った時間と費用はどうなるのか 図:今日の問い

  • Zの再審開始の決定が確定した
  • 再審の2段階=①再審請求手続(再審を開くかどうかを決定で決める)→再審開始の決定→確定→②再審公判(やり直しの裁判)
  • 今日は②から
  • ①やり直しの裁判はどこで、どう進むのか
  • 元の刑より重くなることはあるのか
  • ②法令の誤りだけが見つかったときはどうするのか
  • ③無罪になったあと、失った時間と費用はどうなるのか

再審を開く、と決まりました。ここから先、やり直しの裁判は、どんな形で進むのでしょうか。今日は、再審の後半を通します。そのうえで、再審とは別の、もう1本の道と、無罪になったあとの補償までを扱います。設例は、同じZさんです。強盗の罪で有罪判決を受け、控訴も上告も退けられて確定しました。Zさんは、ずっと「やっていない」と言っています。新しい鑑定結果をもとに再審を請求したところ、再審を開く決定が出て、その決定が確定しました。これから、やり直しの裁判が始まります。流れを、地図で確かめます。前の回に見たとおり、再審は2段階です。1段階目は、再審請求手続で、再審を開くかどうかを、決定で決めます。開くという決定が確定すると、2段階目の再審公判に進みます。やり直しの裁判のことです。今日の主役は、この2段階目です。問いは3つあります。1つ目。やり直しの裁判は、どこで、どう進むのか。元の判決より重い刑になることはあるのか。2つ目。法令の誤りだけが見つかったときは、どうするのか。3つ目。無罪になったあと、失った時間と費用は、どうなるのか。

開始決定が確定しても、無罪と決まったわけではありません。先に答えの形だけ言います。やり直しの裁判は、通常の公判です。元の刑より重くはなりません。法令の誤りだけなら、非常上告という別の道があります。そして、無罪になれば、補償があります。順に見ていきます。

再審公判はその審級でやり直す

再審公判の進み方。451条1項=再審開始の決定が確定した事件は、449条の場合を除き、その審級に従い、更に審判をしなければならない(Zは第一審の裁判所でやり直し)。2項〜4項の特則=死亡者・回復の見込みがない心神喪失者のための請求などでは、314条1項本文(心神喪失での公判停止)と339条1項4号(被告人死亡での公訴棄却)を適用しない/被告人の出頭がなくても審判できるが、弁護人が出頭しなければ開廷できない/弁護人を選任しないときは、裁判長が職権で付ける。452条=原判決の刑より重い刑は言い渡せない。453条=無罪の判決は官報と新聞紙に掲載して公示。新しい判決が確定すると原判決は効力を失う 図:再審公判の進み方

  • 451条1項=再審開始の決定が確定した事件は、449条の場合を除き、その審級に従い、更に審判をしなければならない(Zは第一審の裁判所でやり直し)
  • 2項〜4項の特則=死亡者・回復の見込みがない心神喪失者のための請求などでは、314条1項本文(心神喪失での公判停止)と339条1項4号(被告人死亡での公訴棄却)を適用しない/被告人の出頭がなくても審判できるが、弁護人が出頭しなければ開廷できない/弁護人を選任しないときは、裁判長が職権で付ける
  • 452条=原判決の刑より重い刑は言い渡せない
  • 453条=無罪の判決は官報と新聞紙に掲載して公示
  • 新しい判決が確定すると原判決は効力を失う

再審公判に入る前に、前の回の内容を思い出してください。再審開始決定に対して、検察官が即時抗告できるのは、どんな場合に限られるのでしたか?取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合に限り、でした。その争いが終わり、開始決定が確定したところから、今日の話が始まります。条文を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第451条

刑事訴訟法第451条 裁判所は、再審開始の決定が確定した事件については、第四百四十九条の場合を除いては、その審級に従い、更に審判をしなければならない。 2 左の場合には、第三百十四条第一項本文及び第三百三十九条第一項第四号の規定は、前項の審判にこれを適用しない。 一 死亡者又は回復の見込がない心神喪失者のために再審の請求がされたとき。 二 有罪の言渡を受けた者が、再審の判決がある前に、死亡し、又は心神喪失の状態に陥りその回復の見込がないとき。

第1項です。再審開始の決定が確定した事件は、その審級に従い、更に審判をしなければなりません。審級とは、第一審、控訴審、上告審という、裁判所の段階のことです。Zさんが再審を請求したのは、Zさんを有罪にした第一審の判決でした。だから、やり直しは、第一審の裁判所で行います。第449条の場合を除く、とあるのは、第一審の判決と、控訴を棄却した判決の両方に請求があったときの調整です。第一審の裁判所が再審の判決をしたときは、控訴を棄却した判決への請求のほうを、決定で棄却します。元の有罪判決がやり直されたなら、控訴を棄却した判決を別に見直す意味がなくなるからです。

再審公判の判決に対しても、上訴はできます。再審公判も、通常の公判と同じように進みますから、判決に不服があれば、上訴の道が続きます。この点は、次の節で判例を読んで確かめます。第2項です。前々回に見たとおり、再審は、有罪の言渡しを受けた人の利益のためにだけ請求できます。その請求が、すでに亡くなった人や、回復の見込みのない心神喪失の人のために出されることがあります。そのままでは、公判が始められません。心神喪失の状態の被告人は、公判手続を停止する決まりがあり、これが第314条第1項本文です。被告人が死亡したときは、公訴を棄却する決まりがあり、これが第339条第1項第4号です。第2項は、この2つを、再審公判には適用しない、としました。そうしないと、名誉を回復する再審の目的を、果たせないからです。

条文刑事訴訟法第451条(続き)

刑事訴訟法第451条(続き) 3 前項の場合には、被告人の出頭がなくても、審判をすることができる。但し、弁護人が出頭しなければ開廷することはできない。 4 第二項の場合において、再審の請求をした者が弁護人を選任しないときは、裁判長は、職権で弁護人を附しなければならない。

第3項と第4項は、被告人が公判に来られないときの手当てです。被告人の出頭がなくても、審判はできます。ただし、弁護人が出頭しなければ、開廷できません。被告人の代わりに言い分を述べる人が、必ず必要だからです。第4項は、請求した人が弁護人を選任していないときです。その場合は、裁判長が、職権で弁護人を付けなければなりません。ここまでは、条文のとおりに読めば足ります。

再審公判は通常の公判・免訴もありうる

再審公判の性格。事案=戦時下に検挙された言論・出版の関係者らが、終戦の直後に治安維持法違反で有罪(懲役2年・執行猶予3年)。有罪を受けた人たちは亡くなっており、妻や子が再審を請求。地方裁判所が再審開始決定→高等裁判所が検察官の即時抗告を退けて確定(高等裁判所の理由=自白の信用性に顕著な疑い)。再審の第一審=治安維持法の廃止と大赦を理由に免訴の判決。弁護人は控訴・上告で無罪を求めたが退けられた。旧刑事訴訟法が適用された事件。開始の理由(無罪を言い渡すべき新証拠)と再審公判の結論(免訴)は別 図:再審公判の性格

  • 事案=戦時下に検挙された言論・出版の関係者らが、終戦の直後に治安維持法違反で有罪(懲役2年・執行猶予3年)
  • 有罪を受けた人たちは亡くなっており、妻や子が再審を請求
  • 地方裁判所が再審開始決定→高等裁判所が検察官の即時抗告を退けて確定(高等裁判所の理由=自白の信用性に顕著な疑い)
  • 再審の第一審=治安維持法の廃止と大赦を理由に免訴の判決
  • 弁護人は控訴・上告で無罪を求めたが退けられた
  • 旧刑事訴訟法が適用された事件
  • 開始の理由(無罪を言い渡すべき新証拠)と再審公判の結論(免訴)は別

再審公判の性格を、判例で確かめます。事案は、戦争中に検挙された、言論や出版の関係者が、終戦の直後に、治安維持法違反で有罪とされたものです。懲役2年、執行猶予3年でした。有罪を受けた人たちは、すでに亡くなっていて、妻や子が再審を請求しました。地方裁判所が再審の開始を決め、検察官の即時抗告は、高等裁判所が退けて、開始決定が確定しました。高等裁判所が示した理由は、自白の信用性に、顕著な疑いが生じた、というものです。ところが、再審の第一審は、免訴の判決をしました。治安維持法がその後廃止され、大赦があった、という理由です。免訴とは、事件の中身を判断せずに、手続を打ち切る判決のことです。刑の廃止があったときと、大赦があったときは、それぞれ第337条の第2号と第3号で、免訴の事由とされています。大赦とは、政令で定めた罪について、有罪の言渡しの効力を失わせ、まだ言渡しを受けていない人の公訴権を消滅させる措置のことです。弁護人は、控訴と上告で、無罪を求めました。無実の人を救う再審の趣旨からすれば、無罪かどうかの判断が優先されるべきだ、という主張でした。最高裁判所は、これを退けました。

無罪かどうかの判断に届かないまま終わる場合があるのは、確かに引っかかる点です。ただ、ここに、この回の山場があります。再審を開く理由と、再審公判の結論は、別の問題です。開始決定が答えたのは、やり直す理由があるか、という問いでした。やり直しの裁判は、改めて通常の手続で行われます。その結論は、無罪にも、有罪にも、免訴にもなりえます。最高裁判所の判断は、2つに分かれます。1つ目は、再審公判でも免訴の規定が働くか。2つ目は、免訴の判決に対して、無罪を求めて上訴できるか、です。1つ目の判旨から読みます。判旨に旧刑訴法とあるのは、終戦前後の事件で、当時の刑事訴訟法が適用されたからです。また、非常救済制度とは、確定した判決を例外的に覆すための制度のことで、再審がその代表です。

判例最判平20・3・14 刑集62巻3号185頁(第二小法廷)

再審の審判手続は、原則として通常の審判手続による 再審制度がいわゆる非常救済制度であり,再審開始決定が確定した後の事件の審判手続(以下「再審の審判手続」という。)が,通常の刑事事件における審判手続(以下「通常の審判手続」という。)と,種々の面で差異があるとしても,同制度は,所定の事由が認められる場合に,当該審級の審判を改めて行うものであって,その審判は再審が開始された理由に拘束されるものではないことなどに照らすと,その審判手続は,原則として,通常の審判手続によるべきものと解されるところ,本件に適用される旧刑訴法等の諸規定が,再審の審判手続において,免訴事由が存する場合に,免訴に関する規定の適用を排除して実体判決をすることを予定しているとは解されない。

平20判決の判旨は2層。判断①=再審の審判は当該審級の審判を改めて行うもので、再審が開始された理由に拘束されない→原則として通常の審判手続による→免訴事由があれば免訴の規定が働く。判断②=通常の審判手続で免訴判決に対し無罪を主張して上訴できないことは確定した判例→再審の審判手続でも同じ(免訴は事件の中身を判断しない判決)。Zの事件=免訴事由はなさそう→無罪か有罪の判断を受ける 図:平20判決の判旨は2層

  • 判断①=再審の審判は当該審級の審判を改めて行うもので、再審が開始された理由に拘束されない→原則として通常の審判手続による→免訴事由があれば免訴の規定が働く
  • 判断②=通常の審判手続で免訴判決に対し無罪を主張して上訴できないことは確定した判例→再審の審判手続でも同じ(免訴は事件の中身を判断しない判決)
  • Zの事件=免訴事由はなさそう→無罪か有罪の判断を受ける

理由づけは、2段です。まず、再審の審判は、当該審級の審判を改めて行うもので、再審が開始された理由に拘束されない、という点です。開始の理由がどうあれ、公判では、通常の手続で、改めて審理します。だから、原則として通常の審判手続による、というのが次の点です。通常の公判で、免訴事由があれば免訴になるのと同じように、再審公判でも、免訴事由があれば、免訴に関する規定が働きます。実体の判決、つまり無罪か有罪かという事件の中身を判断する判決をする、という形は、予定されていません。2つ目の判断、上訴の可否です。免訴の判決を受けた側は、無罪を主張して、上訴できるでしょうか。

判例最判平20・3・14 刑集62巻3号185頁(第二小法廷)

再審の審判手続でも、免訴判決に対し無罪を主張して上訴することはできない 通常の審判手続において,免訴判決に対し被告人が無罪を主張して上訴できないことは,当裁判所の確定した判例であるところ,……再審の審判手続につき,これと別異に解すべき理由はないから,再審の審判手続においても,免訴判決に対し被告人が無罪を主張して上訴することはできないと解するのが相当である。

通常の公判で、免訴判決に対して、被告人が無罪を主張して上訴できないことは、確定した判例です。上訴は、その裁判で不利益を受けた人が、不利益を取り除くために申し立てるものです。免訴は、有罪でも無罪でもなく、手続を打ち切る裁判ですから、被告人に不利益な判決ではありません。中身である無罪かどうかを争う道が、そもそも開かれていないのです。再審の審判手続でも、別に考える理由はない、と判断されました。整理します。開始の理由は、無罪を言い渡すべき新証拠でした。ところが、再審公判の結論は、免訴事由があれば免訴です。実体の判断には進みません。検察官は、再審公判でも、有罪を主張できます。通常の公判と同じ立場だからです。ここは、論文で論点になりうる部分です。再審公判の性格と、免訴判決に対して上訴できないことは、判例が示した考え方です。条文どおりではありません。

Zさんの事件に、免訴事由はなさそうですから、Zさんは、無罪か有罪の判断を受けるということです。そうなります。Zさんの再審公判は、第一審の裁判所で、通常の公判として行われます。結論は、無罪も有罪もありえます。開始決定が、結論を決めるわけではありません。

元の刑より重くならない・無罪なら公示

再審公判の進み方。451条1項=再審開始の決定が確定した事件は、449条の場合を除き、その審級に従い、更に審判をしなければならない(Zは第一審の裁判所でやり直し)。2項〜4項の特則=死亡者・回復の見込みがない心神喪失者のための請求などでは、314条1項本文(心神喪失での公判停止)と339条1項4号(被告人死亡での公訴棄却)を適用しない/被告人の出頭がなくても審判できるが、弁護人が出頭しなければ開廷できない/弁護人を選任しないときは、裁判長が職権で付ける。452条=原判決の刑より重い刑は言い渡せない。453条=無罪の判決は官報と新聞紙に掲載して公示。新しい判決が確定すると原判決は効力を失う 図:再審公判の進み方

  • 451条1項=再審開始の決定が確定した事件は、449条の場合を除き、その審級に従い、更に審判をしなければならない(Zは第一審の裁判所でやり直し)
  • 2項〜4項の特則=死亡者・回復の見込みがない心神喪失者のための請求などでは、314条1項本文(心神喪失での公判停止)と339条1項4号(被告人死亡での公訴棄却)を適用しない/被告人の出頭がなくても審判できるが、弁護人が出頭しなければ開廷できない/弁護人を選任しないときは、裁判長が職権で付ける
  • 452条=原判決の刑より重い刑は言い渡せない
  • 453条=無罪の判決は官報と新聞紙に掲載して公示
  • 新しい判決が確定すると原判決は効力を失う

最初の問いに戻ります。やり直しの裁判で、元の判決より重い刑になることはあるのでしょうか。

条文刑事訴訟法第452条

刑事訴訟法第452条 再審においては、原判決の刑より重い刑を言い渡すことはできない。

重くはなりません。これを、不利益変更の禁止といいます。たとえば、元の判決が拘禁刑7年だったとします。再審公判で、有罪と判断されても、7年を超える刑は言い渡せません。もし重くなりうるのなら、無実を訴える人でも、請求をためらうはずです。この規定があるから、安心して請求できる、と考えると分かりやすいです。軽くすることまでは、第452条は求めていません。禁じているのは、重くすることだけです。同じ刑も、軽い刑も、ありえます。上訴の総論の回で見た不利益変更の禁止とは、射程が違います。第402条は、被告人が控訴し、又は被告人のために控訴した事件に限って働きました。検察官も控訴した事件では、控訴審が刑を重くすることがありえたわけです。第452条には、その限定がありません。誰が再審を請求したかを問わず、原判決の刑より重い刑は言い渡せません。次に、無罪になったときです。

条文刑事訴訟法第453条

刑事訴訟法第453条 再審において無罪の言渡をしたときは、官報及び新聞紙に掲載して、その判決を公示しなければならない。

官報とは、国が法令や公告を載せる公式の広報紙です。第453条は、有罪とされた人の名誉を、世の中に向けて回復するための規定です。亡くなった人のために再審が請求された事件でも、この公示は、名誉の回復につながります。最後に、元の判決の扱いです。再審公判で、新しい判決が確定すると、再審請求の対象となった原判決は、効力を失います。前の回に見たとおり、開始決定が出ただけでは、元の有罪判決は、まだ効力を持ったままです。効力を失うのは、新しい判決が確定したときです。この点を定めた条文はありません。ただ、再審の審判手続の裁判が確定すれば、先の有罪の確定判決は完全にその効力を失う、という点に異論はない、と最高裁判所の裁判官の補足意見も述べています。補足意見とは、結論に賛成する裁判官が、理由を付け加えて述べる意見のことです。第451条とあわせて、再審公判の中身は、ここまでです。

もう1本の道・非常上告

非常上告。再審=事実の誤りを正す/非常上告=法令の適用の誤りを正す。454条=検事総長が、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。被告人側は申し立てられない。期間の定めはない。手続=申立書に理由を記載して最高裁判所へ(455条)/公判期日に検察官が申立書に基づいて陳述(456条)/理由がなければ判決で棄却(457条)/調査は申立書に包含された事項に限る・管轄、公訴の受理、訴訟手続は事実の取調べもできる(460条)。目的=法令の解釈適用の統一。略式命令が対象になった例がある 図:非常上告

  • 再審=事実の誤りを正す/非常上告=法令の適用の誤りを正す
  • 454条=検事総長が、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる
  • 被告人側は申し立てられない
  • 期間の定めはない
  • 手続=申立書に理由を記載して最高裁判所へ(455条)/公判期日に検察官が申立書に基づいて陳述(456条)/理由がなければ判決で棄却(457条)/調査は申立書に包含された事項に限る・管轄、公訴の受理、訴訟手続は事実の取調べもできる(460条)
  • 目的=法令の解釈適用の統一
  • 略式命令が対象になった例がある

2つ目の問いです。再審の理由を見た回で、あとで見ると言った道を、ここで扱います。確定した判決に、法令の誤りだけが見つかったとき、どうするのでしょうか。再審は、事実の誤りを正す道でした。新しい証拠で、有罪の認定が崩れる場合です。ところが、証拠の問題ではなく、法律の使い方そのものが間違っていた、ということがあります。そのための道が、非常上告です。設例を、1つ置きます。ある被告人に、法律が許している上限を超える刑が言い渡され、そのまま確定しました。事実の認定に、争いはありません。誤っているのは、刑の長さだけです。これは、再審の出番ではありません。条文を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第454条

刑事訴訟法第454条 検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。

誰が、どこへ、が条文に書かれています。申し立てるのは検事総長だけで、行き先は最高裁判所です。判決が確定した後に、その事件の審判が、法令に違反していたことを発見したときです。被告人の側は、申し立てられません。期間の定めもありません。被告人が自分で申し立てられないのに、救済になるんですか。そこが、非常上告の性格を決める点です。目的を、判例で確かめます。

判例最大判昭27・4・23 刑集6巻4号685頁

非常上告の目的——法令の解釈適用の統一 非常上告は、法令の適用の誤りを正し、もつて、法令の解釈適用の統一を目的とするものであつて、個々の事件における事実認定の誤りを是正して被告人を救済することを目的とするものではない。

非常上告の目的は、法令の適用の誤りを正して、法令の解釈適用を統一することです。個々の事件の、事実認定の誤りを正して、被告人を救済するためのものではありません。この目的と合っているのが、申し立てる人を検事総長だけに限り、行き先を最高裁判所とする仕組みです。分担を言い直します。事実認定の誤りは再審。法令の適用の誤りは非常上告です。手続です。申立書に理由を記載して、最高裁判所に差し出します。公判期日には、検察官が、申立書に基づいて陳述します。理由がなければ、判決で棄却します。調べる範囲は、申立書に包含された事項に限られます。ただし、裁判所の管轄、公訴の受理、訴訟手続については、事実の取調べもできます。これは、第455条から第457条と、第460条です。細かい手続は、この板で確認してください。

理由があるとき(458条)。1号=原判決が法令に違反したとき。原則は、その違反した部分の破棄/1号ただし書=更に為すべき判決が原判決より利益なことが法律上明白→破棄自判。2号=訴訟手続が法令に違反したとき。その違反した手続を破棄。設例①=法律が許す上限を超える刑→上限の範囲内で更に判決・破棄自判/設例②=適用すべき規定の取り違えで正しい刑が明白でない→違反部分の破棄どまり・被告人の刑は変わらない 図:理由があるとき

  • 458条1号=原判決が法令に違反したとき。原則は、その違反した部分の破棄
  • 1号ただし書=更に為すべき判決が原判決より利益なことが法律上明白→破棄自判
  • 2号=訴訟手続が法令に違反したとき。その違反した手続を破棄
  • 設例①=法律が許す上限を超える刑→上限の範囲内で更に判決・破棄自判
  • 設例②=適用すべき規定の取り違えで正しい刑が明白でない→違反部分の破棄どまり・被告人の刑は変わらない

非常上告の目的は、法令の解釈適用の統一です。条文は、原則を、違反した部分の破棄にとどめています。そのうえで、被告人に不利益な場合にだけ、例外を置いています。その中身を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第458条

刑事訴訟法第458条 非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。 一 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。 二 訴訟手続が法令に違反したときは、その違反した手続を破棄する。

第1号が、原判決そのものの違反です。原則は、その違反した部分を破棄するだけです。ただし書があります。原判決が被告人のため不利益であるときは、破棄したうえで、被告事件について更に判決をします。破棄自判といいます。破棄したうえで、裁判所が自分で判決をすることです。第2号は、訴訟手続の違反で、その違反した手続を破棄します。判例が、その意味を示しています。

判例最判昭26・12・21 刑集5巻13号2607頁

458条1号ただし書の「不利益」——更に為すべき判決が利益なことが法律上明白な場合 「原判決が被告人のために不利益であるとき」とは、事件につき更に為さるべき判決が原判決より利益なことが法律上明白である場合をいうものと解すべきである……

不利益とは、更に為されるべき判決が、原判決より利益であることが、法律上明白である場合です。明白でなければ、違反部分を破棄するだけで、被告人の刑は変わりません。非常上告は、事件の中身の事実認定をやり直す手続ではない、とされています。法令を当てはめるだけで、原判決より軽いと明らかな場合が、自判の対象になります。設例で当てはめます。1つ目。法律が許す上限を超える刑が言い渡されたとき、更に言い渡すべき刑は、上限の範囲内です。原判決より軽いことは、明白です。だから、ただし書で破棄自判です。2つ目。適用すべき規定を取り違えていて、正しい刑がどちらに転ぶのか、明白でないとき。この場合は、違反部分の破棄にとどまり、被告人の刑は変わりません。ここで、問いを1つ出します。非常上告で原判決が破棄されたとき、その判決の効力は被告人に及ぶでしょうか? 自分の答えを言葉にしてから、第459条を読んでください。

条文刑事訴訟法第459条

刑事訴訟法第459条 非常上告の判決は、前条第一号但書の規定によりされたものを除いては、その効力を被告人に及ぼさない。

被告人の刑まで変わるのは、一部の場合だけです。非常上告の判決は、第458条第1号ただし書による判決を除いて、効力を被告人に及ぼしません。つまり、被告人に及ぶのは、破棄自判のときだけです。違反部分を破棄しただけの判決は、法令の解釈を正すものにとどまり、被告人の刑は、元のままです。目的が、法令の解釈適用の統一でしたから、こうなります。

非常上告。再審=事実の誤りを正す/非常上告=法令の適用の誤りを正す。454条=検事総長が、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。被告人側は申し立てられない。期間の定めはない。手続=申立書に理由を記載して最高裁判所へ(455条)/公判期日に検察官が申立書に基づいて陳述(456条)/理由がなければ判決で棄却(457条)/調査は申立書に包含された事項に限る・管轄、公訴の受理、訴訟手続は事実の取調べもできる(460条)。目的=法令の解釈適用の統一。略式命令が対象になった例がある 図:非常上告

  • 再審=事実の誤りを正す/非常上告=法令の適用の誤りを正す
  • 454条=検事総長が、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる
  • 被告人側は申し立てられない
  • 期間の定めはない
  • 手続=申立書に理由を記載して最高裁判所へ(455条)/公判期日に検察官が申立書に基づいて陳述(456条)/理由がなければ判決で棄却(457条)/調査は申立書に包含された事項に限る・管轄、公訴の受理、訴訟手続は事実の取調べもできる(460条)
  • 目的=法令の解釈適用の統一
  • 略式命令が対象になった例がある

使われ方の例も、1つ見ておきます。略式命令とは、簡単な書面の審理で、罰金などを命じる裁判のことです。公訴棄却とは、起訴が不適法なときに、事件の中身に入らず、手続を終える裁判のことです。判決でする場合と、決定でする場合があります。同じ事実について、2つの略式命令が出て、どちらも確定した事案で、後の略式命令を破棄して公訴を棄却した判決があります。確定した略式命令が、非常上告の対象になった例です。少年に対して、法律が許さない刑を言い渡した判決が確定したあとに、非常上告が認められた判決もあります。第454条、第458条、第459条は、条文のとおりの部分です。目的と、不利益の意味は、判例が示した考え方です。

再審と非常上告の違い

再審と非常上告の比較。理由=事実の誤り(新証拠など)/法令の誤り。申し立てる人=439条に定める者/検事総長だけ。行き先=原判決をした裁判所/最高裁判所。対象=有罪の確定判決だけ/有罪も無罪も。期間=制限なし/定めなし。効力=新しい判決の確定で原判決は効力を失う/原則として被告人に及ばない(破棄自判のときだけ及ぶ) 図:再審と非常上告の比較

  • 理由=事実の誤り(新証拠など)/法令の誤り
  • 申し立てる人=439条に定める者/検事総長だけ
  • 行き先=原判決をした裁判所/最高裁判所
  • 対象=有罪の確定判決だけ/有罪も無罪も
  • 期間=制限なし/定めなし
  • 効力=新しい判決の確定で原判決は効力を失う/原則として被告人に及ばない(破棄自判のときだけ及ぶ)

2本の道を、見比べます。理由が、まず違います。再審は事実の誤りで、新しい証拠が典型でした。非常上告は法令の誤りです。申し立てる人は、再審が第439条に定める者で、本人や親族、検察官などです。非常上告は、検事総長だけです。行き先は、再審が原判決をした裁判所、非常上告が最高裁判所です。対象も違います。再審は、有罪の言渡しを受けた者の利益のためにだけ請求できるので、有罪の確定判決だけが対象です。非常上告は、有罪の判決も、無罪の判決も、対象になりえます。法令の解釈を正すのが目的で、結論が有罪か無罪かは問わないからです。期間は、どちらも、制限や定めがありません。効力は、再審が、新しい判決が確定すれば、原判決が効力を失います。非常上告は、原則として被告人に及ばず、破棄自判のときだけ及びます。

要するに、再審は被告人を救うための道で、非常上告は法律の運用を正すための道です。事実の誤りか、法令の誤りか。この分かれ目が、道を決めます。

無罪になったあとの補償

無罪になったあとの補償。2026年10月時点の法律。①刑事補償=身体の拘束に対する補償(憲法40条・刑事補償法)。日額1,000円以上12,500円以下(4条)/請求先=無罪の裁判をした裁判所(6条)/確定から3年以内(7条)/虚偽の自白などで起訴を招いたときは補償しないことができる(3条)/免訴・公訴棄却でも、事由がなければ無罪になるべきだったと認められる充分な事由があれば請求できる(25条)/補償決定の公示(24条)=453条の判決の公示とは別。死刑の執行による補償は3,000万円以内(本人の死亡による財産上の損失額が証明されたときは加算)。②費用補償=裁判に要した費用の補償(刑訴188条の2以下)。旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬(188条の6)/請求先=無罪の判決をした裁判所・確定後6か月以内/決定に即時抗告できる(いずれも188条の3)/手続は刑事補償法の例による(188条の7)。2026年10月20日からの追加=再審の請求の手続に要した費用(旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬) 図:無罪になったあとの補償

  • 2026年10月時点の法律
  • ①刑事補償=身体の拘束に対する補償(憲法40条・刑事補償法)
  • 日額1,000円以上12,500円以下(4条)/請求先=無罪の裁判をした裁判所(6条)/確定から3年以内(7条)/虚偽の自白などで起訴を招いたときは補償しないことができる(3条)/免訴・公訴棄却でも、事由がなければ無罪になるべきだったと認められる充分な事由があれば請求できる(25条)/補償決定の公示(24条)=453条の判決の公示とは別
  • 死刑の執行による補償は3,000万円以内(本人の死亡による財産上の損失額が証明されたときは加算)
  • ②費用補償=裁判に要した費用の補償(刑訴188条の2以下)
  • 旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬(188条の6)/請求先=無罪の判決をした裁判所・確定後6か月以内/決定に即時抗告できる(いずれも188条の3)/手続は刑事補償法の例による(188条の7)
  • 2026年10月20日からの追加=再審の請求の手続に要した費用(旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬)

再審で無罪の言渡しをしたとき、官報と新聞に何が載るのでしたか?無罪の判決の公示です。ただ、名誉が回復されても、失った時間と費用は、戻りません。3つ目の問いです。無罪になったあと、それはどうなるのでしょうか。無罪になったあとの補償は、大きく2種類あります。1つ目は刑事補償で、身体の拘束への補償です。2つ目は費用補償で、裁判に要した費用の補償です。この2つを、区別してください。刑事補償の根拠は、憲法にあります。

条文日本国憲法第40条

日本国憲法第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国に補償を求められます。その法律が、刑事補償法です。抑留とは、逮捕や勾引に伴う、比較的短期の身体の拘束です。拘禁とは、勾留のような、比較的長期の拘束です。

条文刑事補償法第1条第1項・第2項

刑事補償法第1条(第1項・第2項) 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)による通常手続又は再審若しくは非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が同法、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)又は経済調査庁法(昭和二十三年法律第二百六号)によつて未決の抑留又は拘禁を受けた場合には、その者は、国に対して、抑留又は拘禁による補償を請求することができる。 2 上訴権回復による上訴、再審又は非常上告の手続において無罪の裁判を受けた者が原判決によつて既に刑の執行を受け、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第十一条第二項若しくは刑事訴訟法第四百九十四条の五の規定による拘置を受けた場合には、その者は、国に対して、刑の執行又は拘置による補償を請求することができる。

刑事補償法の第1条は、通常の手続だけでなく、再審や非常上告の手続で無罪の裁判を受けた人も、補償を請求できる、と定めています。未決の抑留や拘禁を受けたとき、すでに刑の執行や拘置を受けたときです。Zさんなら、服役した期間が、その対象になります。金額は、第4条です。

条文刑事補償法第4条第1項

刑事補償法第4条(第1項) 抑留又は拘禁による補償においては、前条及び次条第二項に規定する場合を除いては、その日数に応じて、一日千円以上一万二千五百円以下の割合による額の補償金を交付する。拘禁刑若しくは拘留の執行又は拘置による補償においても、同様である。

1日につき、千円以上、1万2500円以下です。その範囲で、拘束の種類や期間の長さ、財産上の損失、精神上の苦痛などを考慮して、額を決めます。請求先は、無罪の裁判をした裁判所です。請求できる期間は、無罪の裁判が確定した日から3年以内です。虚偽の自白などで、自分から起訴を招いたような場合は、裁量で補償をしないことができます。免訴や公訴棄却でも、請求できる場合があります。刑事補償法の第25条の第1項を、全文で読みます。

条文刑事補償法第25条第1項

刑事補償法第25条(第1項) 刑事訴訟法の規定による免訴又は公訴棄却の裁判を受けた者は、もし免訴又は公訴棄却の裁判をすべき事由がなかつたならば無罪の裁判を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは、国に対して、抑留若しくは拘禁による補償又は刑の執行若しくは拘置による補償を請求することができる。

免訴や公訴棄却で終わっても、その事由が無ければ無罪になるはずだったと認められる充分な事由があれば、請求できます。補償を決めたときの公示は別にあり、第453条の無罪判決の公示とは、別の話です。

費用補償=裁判に要した費用の補償(刑訴188条の2以下)。無罪の判決が確定したときは国が補償(188条の2第1項)。旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬(188条の6)/請求先=無罪の判決をした裁判所・確定後6か月以内/決定に即時抗告できる(いずれも188条の3)/手続は刑事補償法の例による(188条の7)。2026年10月20日からの追加=再審の請求の手続に要した費用(旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬)

  • 費用補償=裁判に要した費用の補償(刑訴188条の2以下)
  • 無罪の判決が確定したときは国が補償(188条の2第1項)
  • 旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬(188条の6)/請求先=無罪の判決をした裁判所・確定後6か月以内/決定に即時抗告できる(いずれも188条の3)/手続は刑事補償法の例による(188条の7)
  • 2026年10月20日からの追加=再審の請求の手続に要した費用(旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬)

次に、費用補償です。こちらは、刑事訴訟法に定めがあります。

条文刑事訴訟法第188条の2第1項

刑事訴訟法第188条の2(第1項) 無罪の判決が確定したときは、国は、当該事件の被告人であつた者に対し、その裁判に要した費用の補償をする。ただし、被告人であつた者の責めに帰すべき事由によつて生じた費用については、補償をしないことができる。

補償される費用は、公判の準備や公判期日に出頭するための旅費と日当と宿泊料、それに弁護人への報酬です。根拠は、第188条の6です。請求は、無罪の判決をした裁判所に対して、確定後6か月以内にします。決定に対しては、即時抗告ができます。ここまでが、第188条の3です。手続は、刑事補償法の例によります。第188条の7です。2026年10月20日から、この費用補償に、第188条の2の第2項が加わる改正があります。再審開始の決定が確定した事件で、無罪の判決が確定したとき、再審を請求した者、検察官を除きますが、その人の、再審の請求の手続に要した費用も、旅費や日当、宿泊料、弁護人の報酬といった範囲で、補償の対象になります。

無罪になったあとの補償。2026年10月時点の法律。①刑事補償=身体の拘束に対する補償(憲法40条・刑事補償法)。日額1,000円以上12,500円以下(4条)/請求先=無罪の裁判をした裁判所(6条)/確定から3年以内(7条)/虚偽の自白などで起訴を招いたときは補償しないことができる(3条)/免訴・公訴棄却でも、事由がなければ無罪になるべきだったと認められる充分な事由があれば請求できる(25条)/補償決定の公示(24条)=453条の判決の公示とは別。死刑の執行による補償は3,000万円以内(本人の死亡による財産上の損失額が証明されたときは加算)。②費用補償=裁判に要した費用の補償(刑訴188条の2以下)。旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬(188条の6)/請求先=無罪の判決をした裁判所・確定後6か月以内/決定に即時抗告できる(いずれも188条の3)/手続は刑事補償法の例による(188条の7)。2026年10月20日からの追加=再審の請求の手続に要した費用(旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬) 図:無罪になったあとの補償

  • 2026年10月時点の法律
  • ①刑事補償=身体の拘束に対する補償(憲法40条・刑事補償法)
  • 日額1,000円以上12,500円以下(4条)/請求先=無罪の裁判をした裁判所(6条)/確定から3年以内(7条)/虚偽の自白などで起訴を招いたときは補償しないことができる(3条)/免訴・公訴棄却でも、事由がなければ無罪になるべきだったと認められる充分な事由があれば請求できる(25条)/補償決定の公示(24条)=453条の判決の公示とは別
  • 死刑の執行による補償は3,000万円以内(本人の死亡による財産上の損失額が証明されたときは加算)
  • ②費用補償=裁判に要した費用の補償(刑訴188条の2以下)
  • 旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬(188条の6)/請求先=無罪の判決をした裁判所・確定後6か月以内/決定に即時抗告できる(いずれも188条の3)/手続は刑事補償法の例による(188条の7)
  • 2026年10月20日からの追加=再審の請求の手続に要した費用(旅費・日当・宿泊料と弁護人の報酬)

Zさんの場合を、まとめます。Zさんが再審公判で無罪になったら、服役した期間の刑事補償を、日額で受けられます。公判への出頭の旅費や弁護人の報酬は、費用補償です。そして、判決は、官報と新聞に公示されます。

節目のミニ事例

節目のミニ事例(再審公判・非常上告・補償)。設定を入れ替えて結論を確かめる。問1=再審公判で、元の事件に刑の廃止や大赦があったとわかった。裁判所は、Zが無罪か有罪かを判断できるか/設定替え=免訴事由はないが、新証拠で合理的な疑いが残る→通常の公判のとおり無罪も有罪もありうる。有罪でも原判決の刑より重くはならない(452条)。問2=確定した判決の刑が、法律の許す上限を超えていた。Z側は非常上告を申し立てられるか/設定替え=事実の認定そのものが誤りだった(実は別人)→非常上告の対象ではない(再審の理由)。問3=Zが再審公判で無罪。服役の期間の補償は。出頭の旅費・弁護人の報酬は/設定替え=免訴で終わった→刑事補償は、無罪になるべき充分な事由があれば請求できる(刑補25条)。費用補償の対象は「無罪の判決」(188条の2) 図:節目のミニ事例

  • 再審公判・非常上告・補償。設定を入れ替えて結論を確かめる
  • 問1=再審公判で、元の事件に刑の廃止や大赦があったとわかった。裁判所は、Zが無罪か有罪かを判断できるか
  • 問1の設定替え=免訴事由はないが、新証拠で合理的な疑いが残る→通常の公判のとおり無罪も有罪もありうる。有罪でも原判決の刑より重くはならない(452条)
  • 問2=確定した判決の刑が、法律の許す上限を超えていた。Z側は非常上告を申し立てられるか
  • 問2の設定替え=事実の認定そのものが誤りだった(実は別人)→非常上告の対象ではない(再審の理由)
  • 問3=Zが再審公判で無罪。服役の期間の補償は。出頭の旅費・弁護人の報酬は
  • 問3の設定替え=免訴で終わった→刑事補償は、無罪になるべき充分な事由があれば請求できる(刑補25条)。費用補償の対象は「無罪の判決」(188条の2)

節目のミニ事例です。Zさんの設定を入れ替えて、結論がどう変わるかを確かめます。1つ目。再審公判で、元の事件に、刑の廃止や大赦があったと分かりました。裁判所は、Zさんが無罪か有罪かを判断できるでしょうか。判断しません。免訴です。再審公判は通常の公判で、免訴事由があれば、免訴になります。Zさんは、免訴の判決に対して、無罪を主張して上訴することもできません。設定を替えて、免訴事由はないけれど、新証拠で合理的な疑いが残る場合は、通常の公判のとおり、無罪も有罪もありえます。有罪でも、第452条により、原判決の刑より重くはなりません。2つ目。確定した判決の刑が、法律が許す上限を超えていたと、あとで分かりました。Zさん側は、非常上告を申し立てられるでしょうか。

Zさんの側からは、申し立てられません。非常上告は、検事総長だけが、最高裁判所に申し立てる道です。第454条です。検事総長が申し立てて、更に言い渡すべき刑が明白に軽くなるなら、破棄自判で、効力は被告人に及びます。第458条第1号ただし書と、第459条です。設定を替えて、事実の認定そのものが誤っていた、たとえば実は別人だった、というときは、非常上告の対象ではありません。再審の理由です。3つ目。Zさんが、再審公判で無罪になりました。服役した期間の補償は、どうなるでしょうか。出頭の旅費や、弁護人の報酬は。

全部、同じ補償でまとめてもらえるのではないですか。分かれます。服役した期間は刑事補償です。1日につき千円以上、1万2500円以下で、無罪の裁判をした裁判所に請求します。確定から3年以内です。旅費や弁護人の報酬は、第188条の2の費用補償で、確定後6か月以内に請求します。設定を替えて、免訴で終わった場合です。刑事補償は、無罪になるべき充分な事由があれば、請求できます。刑事補償法の第25条です。ただし、費用補償の第188条の2第1項は、無罪の判決が確定したときと定めています。刑事補償法の第25条のように、免訴の場合に広げる定めは、置かれていません。だから、免訴で終わったときは、第188条の2には当たりません。分かれ目を言い直します。1つ目は、再審公判は通常の公判、という点でした。2つ目は、事実の誤りは再審、法令の誤りは非常上告、という点です。3つ目は、身体の拘束への刑事補償と、裁判の費用への費用補償は、別の制度、という点でした。

今日の地図(保存版)

まとめ。Zの答え=①再審公判はその審級で行われる通常の公判。元の刑より重い刑は言い渡せない(452条)。無罪なら官報と新聞に公示(453条)②法令の誤りだけなら非常上告(検事総長が最高裁判所へ)③無罪になれば刑事補償と費用補償。第8章の一覧=確定する前=上訴(控訴・上告・抗告・準抗告)/確定した後=再審(事実の誤り)・非常上告(法令の誤り)/無罪になったあと=刑事補償・費用補償・判決の公示。再審の流れ=請求手続(決定)→再審公判。2026年10月時点の法律 図:まとめ

  • Zの答え①=再審公判はその審級で行われる通常の公判。元の刑より重い刑は言い渡せない(452条)。無罪なら官報と新聞に公示(453条)
  • Zの答え②=法令の誤りだけなら非常上告(検事総長が最高裁判所へ)
  • Zの答え③=無罪になれば刑事補償と費用補償
  • 第8章の一覧=確定する前=上訴(控訴・上告・抗告・準抗告)/確定した後=再審(事実の誤り)・非常上告(法令の誤り)/無罪になったあと=刑事補償・費用補償・判決の公示
  • 再審の流れ=請求手続(決定)→再審公判
  • 2026年10月時点の法律

Zさんの3つの問いに、順に答えます。1つ目。再審公判は、その審級で行われる通常の公判です。元の刑より重い刑は、言い渡せません。無罪なら、官報と新聞に公示されます。2つ目。法令の誤りだけなら、非常上告です。検事総長が、最高裁判所へ申し立てます。そして3つ目。無罪になれば、刑事補償と費用補償があります。第8章の全体を、一覧にして終えます。判決が確定する前は、上訴です。控訴、上告、抗告、準抗告がありました。確定した後は、事実の誤りなら再審、法令の誤りなら非常上告です。再審は、請求手続で決定をしたあとに、再審公判に進みます。そして、無罪になったあとは、刑事補償と費用補償と、判決の公示です。ここで、第8章は終わりです。

参照条文

  • 刑事訴訟法第451条
  • 刑事訴訟法第451条(続き)
  • 刑事訴訟法第452条
  • 刑事訴訟法第453条
  • 刑事訴訟法第454条
  • 刑事訴訟法第458条
  • 刑事訴訟法第459条
  • 日本国憲法第40条
  • 刑事補償法第1条第1項・第2項
  • 刑事補償法第4条第1項
  • 刑事補償法第25条第1項
  • 刑事訴訟法第188条の2第1項

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