民法ゼロから民法#99

動産の対抗要件と明認方法

印刷用PDFを開く

第2章 物権 #99/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

カメラは一歩も動いていない

冒頭の場面。AがカメラをBに売った。荷物が多いBは、しばらくAに預けたままにしておくことにした。カメラは一歩も動いておらず、外から見ても誰が持ち主か分からない。それでも法律上はAからBへの引渡しが済んだことになる。 図:冒頭の場面

  • AがカメラをBに売った
  • 荷物が多いBは、しばらくAに預けたままにしておくことにした
  • カメラは一歩も動いておらず、外から見ても誰が持ち主か分からない
  • それでも法律上はAからBへの引渡しが済んだことになる

Aが持っているカメラを、Bに売りました。ところが荷物が多いBは、しばらくAに預けたままにしておくことにします。外から見ても、誰が持ち主なのか分かりません。それでも法律上は、AからBへの引渡しが、もう済んだことになります。渡していないのに、渡したことになる。今日は、この理屈を確かめます。いいですよ。これは占有改定という、引渡しの一種です。動産の対抗要件である引渡しには、実は四つの種類があります。物を実際に手渡す方法だけでなく、今日のように見た目が何も変わらない方法まで含まれるんです。

動産版の公示の原則——178条の意義

178条の位置づけの板。公示の原則=物権変動を外から見える形にする。不動産は登記(177条)、動産は引渡し(178条)。動産の物権変動そのものは176条(意思表示のみ)で起きるが、第三者に対抗するには引渡しが要る。 図:178条の位置づけの板

  • 公示の原則=物権変動を外から見える形にする
  • 不動産は登記(177条)、動産は引渡し(178条)
  • 動産の物権変動そのものは176条(意思表示のみ)で起きるが、第三者に対抗するには引渡しが要る

以前、公示の原則という考え方を確認しました。物権の変動を、外から見える形にする考え方です。不動産は登記、動産は引渡し、でしたね。動産の物権変動そのものは、176条どおり、当事者の意思表示だけで起きます。カメラの売買契約が成立した瞬間、所有権はもうAからBに移っています。ただし、この移転を第三者に対抗するには、別に対抗要件が要ります。それが引渡しです。

条文民法178条

民法 第178条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

動産に関する物権の譲渡は、引渡しがなければ、第三者に対抗できない。177条の動産版だと考えてください。ところが、この引渡しには、四つの態様があります。物理的に物を動かす方法だけではありません。ここからが、今日の中心です。

引渡しの4態様——外から見て分かるか

引渡しの四つの態様のうち、①現実の引渡し(182条1項)と②簡易の引渡し(182条2項)。どちらも、占有者の交代という事実が外から見える。

178条の引渡しは、182条から184条までの四つの条文で決まります。もともとは占有権という別の権利について定めた条文ですが、動産の対抗要件を考えるときも、この四つをそのまま使います。引渡しの正体は、占有——その物を事実上支配している状態を、誰に帰属させるかを決める行為です。占有は観念的な概念なので、必ずしも物を物理的に動かさなくても移せます。引渡しの前後で、物が誰の手元にあるかによって、四つの型に分かれます。順番に確かめましょう。

条文民法182条1項

民法 第182条第1項 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってする。

一つ目は現実の引渡しです。占有物を実際に手渡す、いちばん素直な方法です。Aの手からBの手へ、カメラを渡す場面です。

条文民法182条2項

民法 第182条第2項 譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、占有権の譲渡は、当事者の意思表示のみによってすることができる。

二つ目は簡易の引渡しです。譲り受ける側が、すでにその物を持っている場合、意思表示だけで引渡しが完了します。たとえば、AがBに貸していたカメラを、BがAから買い取る場面です。カメラはもうBの手元にあるので、わざわざ一度Aに戻してから渡し直す必要はありません。

③占有改定(183条)。持っている人が、以後は相手のために持つと意思表示するだけで占有権が移る、観念的な引渡し。 図:③占有改定

  • 183条
  • 持っている人が、以後は相手のために持つと意思表示するだけで占有権が移る、観念的な引渡し。

ここまでの二つは、誰がその物を持っているかという事実が、実際に変わっています。ここからの二つは違います。

条文民法183条

民法 第183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

三つ目が、冒頭で見た占有改定です。物を持っている人が、以後は相手のために持つ、と意思表示するだけで、占有権が移ります。条文の「代理人」は物を持ち続けるA、「本人」は買ったBのことです。ここでいう代理人は、以前の代理の回で見た、本人に代わって契約を結ぶ人のことではありません。本人のために、物を手元で持っている人、という意味です。Aは、以後Bのためにこのカメラを持つ、と意思表示しただけで、占有権がAからBに移ります。外から見た限り、カメラの置き場所は何も変わりません。それでも、判例・通説は、これを178条の引渡しにあたると認めています。

判例最判昭30・6・2民集9巻7号855頁

占有改定と178条の引渡し 債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。

判例は、占有改定でも、契約の成立と同時に占有権が移り、その所有権取得を第三者に対抗できる、としています。売渡担保とは、お金を借りた人が、担保のために物を貸主に売ったことにして、自分はそのまま使い続ける取引です。178条は、引渡しの種類を限っていません。しかも、売ったあとも売主の手元に物を置いておきたい取引は、現にあります。この事案のように、担保に入れた物を使い続けたい場面です。占有改定を引渡しと認めないと、買った側は、物を取り上げない限り、いつまでも対抗要件を備えられなくなります。試験対策上、この占有改定がいちばん重要です。

物が動かないのに対抗できるのは怖い、という感覚は正しいです。外から見て分からない、という弱さは残ります。その弱さが問題になる場面は、即時取得の回で扱います。今日は、占有改定も178条の引渡しにあたる、というところまで押さえてください。

条文民法184条

民法 第184条 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

④指図による占有移転(184条)。Aが預けているCに、以後Bのために占有するよう命じ、Bが承諾すれば引渡しが完了する。 図:④指図による占有移転

  • 184条
  • Aが預けているCに、以後Bのために占有するよう命じ、Bが承諾すれば引渡しが完了する。

四つ目は指図による占有移転です。Aが、カメラをCに預けているとします。そのカメラをBに売却するとき、Aが、Cに対して、以後Bのためにカメラを占有するよう命じ、Bがこれを承諾すれば、AからBへの引渡しが完了します。条文では、Aが「本人」、預かっているCが「代理人」、買ったBが「第三者」と呼ばれています。178条の第三者とは別の意味の言葉なので、混ぜないでください。承諾するのは、預かっているCじゃないんですか。そこが、間違えやすいところです。承諾が要るのは、譲り受けるB側です。預かっているCの承諾は要りません。Cは、Aの指図どおり、以後Bのために持つだけです。

4態様の総括板。①現実の引渡しと②簡易の引渡しは占有者の交代が外から見える。③占有改定と④指図による占有移転は物の所在が動かず、意思表示だけで完結する観念的な引渡し。公示力は①②が強く、③④は弱い。 図:4態様の総括板

  • ①現実の引渡しと②簡易の引渡しは占有者の交代が外から見える
  • ③占有改定と④指図による占有移転は物の所在が動かず、意思表示だけで完結する観念的な引渡し
  • 公示力は①②が強く、③④は弱い

四つをまとめます。現実の引渡しと簡易の引渡しは、誰が持っているかという事実が、外から見て変わります。占有改定と指図による占有移転は、物の所在が動かず、意思表示だけで完結します。外から見た公示力という点では、前の二つが強く、後ろの二つは弱いんです。見分け方は、物が誰の手元にあるかです。Aの手元からBへ動くのが現実の引渡し、もともとBの手元にあるのが簡易の引渡し、Aの手元に残るのが占有改定、預け先のCの手元に残るのが指図による占有移転です。

178条の「第三者」——177条と同じ枠組み

178条の第三者の定義板。178条の第三者=物権変動の当事者もしくはその包括承継人以外の者であって、引渡しの欠缺を主張するについて正当の利益を有する者。177条の第三者と同じ二段階フィルター。 図:178条の第三者の定義板

  • 178条の第三者=物権変動の当事者もしくはその包括承継人以外の者であって、引渡しの欠缺を主張するについて正当の利益を有する者
  • 177条の第三者と同じ二段階フィルター

178条にも「第三者」という言葉があります。以前、177条の回で見た第三者の定義を覚えていますか。当事者や包括承継人以外の者であって、登記が無いことを主張する正当な利益を持つ者、でしたね。178条の第三者も、まったく同じ枠組みで考えます。物権変動の当事者もしくはその包括承継人以外の者であって、引渡しが無いことを主張するについて正当な利益を有する者、と解されています。登記が引渡しに置き換わるだけです。公示の原則の回で見たとおり、177条と178条は、対抗要件と公示の役目を兼ねた、同じ作りの条文でした。守る相手が同じなので、ふるいも同じになります。

AがBに売ったカメラを、引渡しを済ませる前に、Dにも売ったとします。Dは、先に引渡しを受ければ自分が持ち主だと言える立場なので、第三者にあたります。反対に、Aの家に遊びに来てカメラを落として壊した人は、Bに引渡しが無いことを持ち出しても、得るものがありません。正当な利益が無いので、第三者にあたらず、Bは引渡しが無くても、この人に損害の賠償を求められます。今日は、177条と同じ枠組みだ、ということを押さえてください。

178条の枠外——自動車のように登録される動産

178条の枠外の板。自動車・船舶・航空機・建設機械等は特別法上の登録が対抗要件になる(道路運送車両法5条1項)。未登録の自動車は普通の動産として178条の対象。動産譲渡登記(動産債権譲渡特例法3条1項)も178条の引渡しとみなされる制度として存在する。 図:178条の枠外の板

  • 自動車・船舶・航空機・建設機械等は特別法上の登録が対抗要件になる(道路運送車両法5条1項)
  • 未登録の自動車は普通の動産として178条の対象
  • 動産譲渡登記(動産債権譲渡特例法3条1項)も178条の引渡しとみなされる制度として存在する

動産の中には、178条の枠外に置かれるものがあります。自動車や船舶、航空機、建設機械などです。これらは特別な法律で登記や登録の制度が用意されていて、その登録が対抗要件になります。ただ、自動車は道路運送車両法という法律で、登録が対抗要件と定められています。登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ第三者に対抗できません。未登録の自動車は、この枠外なので、普通の動産として178条がそのまま適用されます。自動車は、貸したり預けたりして、乗っている人と持ち主が違うことがよくあります。誰が乗っているかを見ても、持ち主は分かりません。登録という帳簿があれば、そちらのほうが、外から確かめる手段として確実です。だから、帳簿がある物は帳簿で、帳簿の無い物は引渡しで、という分け方になります。もう一つ、動産・債権譲渡特例法という法律で、動産譲渡登記という制度もあります。会社などが動産を譲渡したとき、この登記をすれば、178条の引渡しがあったものとみなされます。中身は、担保の文脈で扱う回に譲ります。

立木は土地の一部——明認方法の登場

立木の位置づけの板。原則=立木は土地の一部(86条1項)。例外=意思表示により土地から分離し、別個の所有権の対象にできる。分離を第三者に対抗する手段=①立木法による登記②明認方法(慣習法上の公示・木の皮を削って名前を書く等)。 図:立木の位置づけの板

  • 原則=立木は土地の一部(86条1項)
  • 例外=意思表示により土地から分離し、別個の所有権の対象にできる
  • 分離を第三者に対抗する手段=①立木法による登記②明認方法(慣習法上の公示・木の皮を削って名前を書く等)

土地に生えている樹木の集まりを、立木と呼びます。以前、土地の定着物の回で確認したとおり、立木は原則として土地の一部です。ただ、意思表示によって、立木だけを土地から切り離し、別個の所有権の対象にすることができます。あのとき、この切り離し方は「また別の回で」と予告していました。今日が、その本編です。立木だけを取引の対象にした以上、その事実を外から確認できるようにしなければなりません。その手段が二つあります。一つは、立木法という法律による登記です。もう一つが、明認方法です。木の皮を削って持ち主の名前を書く、立札を立てる、といった昔ながらのやり方で、登記をしなくても、慣習法上、同じように公示の効果が認められています。

明認方法の弱点——存続要件

存続要件の図。明認方法は登記(帳簿に残り続ける)と違い、木に彫っただけ・立札を立てただけの物理的な目印。風雨で消えれば公示が機能しなくなる。第三者が利害関係を取得する時点で明認方法が存在していなければ、対抗できない。 図:存続要件の図

  • 明認方法は登記(帳簿に残り続ける)と違い、木に彫っただけ・立札を立てただけの物理的な目印
  • 風雨で消えれば公示が機能しなくなる
  • 第三者が利害関係を取得する時点で明認方法が存在していなければ、対抗できない

明認方法には、登記には無い弱点があります。ここが、今日いちばん注意が要るところです。登記は、法務局の帳簿に記録が残ります。誰かが見に行った瞬間に、記録が消えていることはありません。ところが、明認方法は違います。木に彫っただけ、立札を立てただけの、物理的な目印です。風雨にさらされれば、消えてしまうことがあります。

判例最判昭36・5・4民集15巻5号1253頁

明認方法の存続要件 明認方法は、立木に関する法律の適用を受けない立木の物権変動の公示方法として是認されているものであるから、それは、登記に代るものとして第三者が容易に所有権を認識することができる手段で、しかも、第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもつて存在するものでなければならず、従つて、たとい権利の変動の際一旦明認方法が行われたとしても問題の生じた当時消失その他の事由で右にいう公示として働きをなさなくなつているとすれば明認方法ありとして当該第三者に対抗できないものといわなければならない

判例は、明認方法は、第三者が利害関係を取得する時点でも存在していなければならない、としています。一度は明認方法を施していても、その後に消えてしまえば、公示としての役目を果たさなくなり、その第三者には対抗できません。登記という石碑は消えませんが、明認方法という目印は消えます。今、その目印が立っているかどうかが、そのまま効力の有無に直結すると考えてください。たとえば、Bが立木を譲り受けて皮を削り名前を書いたのに、それが風雨で消えたあとにAがさらにCに譲渡したとします。この場合、Bは自分の取得をCに対抗できません。

目印が消えたのがCが現れたあとなら、BはCに対抗できます。Cが利害関係を取得した時点では、目印がまだ立っていて、公示として働いていたからです。問われるのは、第三者が現れたその時点で、目印があったかどうかです。

立木の二重譲渡——優劣は何で決まるか

二重譲渡の優劣板。場面①立木のみを二重譲渡(AからB、AからCへ立木だけ)=優劣は明認方法の先後で決まる。場面②土地ごと二重譲渡(AからB、AからCへ土地ごと)=優劣は土地の所有権移転登記の先後で決まる。立木は原則土地の一部という前提に立ち返る。 図:二重譲渡の優劣板

  • 場面①立木のみを二重譲渡(AからB、AからCへ立木だけ)=優劣は明認方法の先後で決まる
  • 場面②土地ごと二重譲渡(AからB、AからCへ土地ごと)=優劣は土地の所有権移転登記の先後で決まる
  • 立木は原則土地の一部という前提に立ち返る

以前、二重譲渡の回で、AがBとCに同じ土地を売ってしまった場面を見ました。思い出してください。あのとき、BとCの優劣は何で決まりましたか?177条どおり、登記の先後です。先に登記を備えたほうが勝ちました。立木の場合も、同じ考え方でいいんですか。そこが、今日の場合分けの見せ場です。二つの場面に分けて考える必要があります。一つ目は、立木だけが二重に譲渡された場面です。Aが、Bにも、Cにも、立木だけを売ってしまったとします。この場合、立木法の登記をしていない立木なら、立木だけの取引を外に示す手段は明認方法です。だから、優劣は明認方法の先後で決まります。先に明認方法を備えたほうが勝ちます。

二つ目は、土地ごと二重に譲渡された場面です。Aが、Bにも、Cにも、立木をつけたまま土地ごと売ってしまったとします。この場合、立木は原則として土地の一部でしたね。だから、立木の運命は土地の運命に従います。土地について働く公示手段は登記です。優劣は土地の所有権移転登記の先後で決まります。その場合、Bは土地はもちろん、立木についても、Cに対抗できません。土地ごと譲渡された以上、立木だけの明認方法では足りないんです。立木は原則土地の一部、という一つの前提に立ち返れば、暗記ではなく導けます。立木だけの取引なら立木の公示手段、土地ごとの取引なら土地の公示手段、と考えれば筋が通ります。

立木の所有権を手元に残す——所有権留保

所有権留保の図。Aが立木だけ自分に残して土地をBに売り、Bが立木ごと土地をCに売ってしまった場面。Aは立木の所有権をCに対抗できるか。留保も例外的な扱いなので明認方法が要る。 図:所有権留保の図

  • Aが立木だけ自分に残して土地をBに売り、Bが立木ごと土地をCに売ってしまった場面
  • Aは立木の所有権をCに対抗できるか
  • 留保も例外的な扱いなので明認方法が要る

もう一つ、場合分けを加えます。土地の所有者Aが、立木の所有権だけは自分の手元に残し、土地だけをBに譲渡したとします。ところがBは、立木ごと土地をCに売ってしまいました。Aは、立木の所有権をCに対抗できるでしょうか。立木は原則、土地の一部ですよね。だったら、黙っていれば土地といっしょに動いてしまう気がします。何もしなければ、立木も土地といっしょにCへ移ってしまいます。所有権の留保は、その原則から外れる例外的な扱いです。例外だからこそ、取引の安全を守るために、公示が必要になります。

判例最判昭34・8・7民集13巻10号1223頁

立木の所有権留保 留保もまた物権変動の一場合と解すべきであるから、この場合には立木につき立木法による登記をするかまたは該留保を公示するに足る明認方法を講じない以上、第三者は全然立木についての所有権留保の事実を知るに由ないものであるから、右登記または明認方法を施さない限り、立木所有権の留保をもつてその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗し得ないものと解するを相当とする。

判例は、所有権の留保も物権変動の一場合だとして、立木法の登記か明認方法を講じない限り、その留保をCのような第三者に対抗できない、としました。Aは、Bへの譲渡の時点で明認方法を備え、Cが利害関係を取得するまでその状態を保っていなければ、立木の所有権をCに対抗できません。この立木の所有権留保は、論文で論点になりうる骨格です。

今日の物差し、もう一度

まとめの板。動産の対抗要件=178条の引渡し。4態様=①現実の引渡し②簡易の引渡し③占有改定④指図による占有移転(①②は外から見える、③④は観念的)。立木の公示=明認方法(存続要件・消えたら失効)。優劣=立木のみなら明認方法の先後、土地ごとなら登記の先後。 図:まとめの板

  • 動産の対抗要件=178条の引渡し
  • 4態様=①現実の引渡し②簡易の引渡し③占有改定④指図による占有移転(①②は外から見える、③④は観念的)
  • 立木の公示=明認方法(存続要件・消えたら失効)
  • 優劣=立木のみなら明認方法の先後、土地ごとなら登記の先後

今日の話を、一枚にまとめます。動産の物権変動を第三者に対抗するには、178条どおり引渡しが要ります。その引渡しには四つの態様があり、現実の引渡しと簡易の引渡しは外から見て変化が分かりますが、占有改定と指図による占有移転は物が動かない観念的な引渡しでした。判例・通説は、占有改定も178条の引渡しにあたるとしています。後半は、立木の話でした。立木は原則、土地の一部ですが、明認方法という慣習法上の公示手段によって、土地から切り離して扱うことができます。消えたら効力を失う。そこが、登記との決定的な違いです。第三者が利害関係を取得する時点で、明認方法が存在していなければ対抗できません。優劣ルールも、立木だけの取引なら明認方法の先後、土地ごとの取引なら登記の先後、と場合分けされていましたね。

即時取得の回では、今日見た引渡しの各態様が、無権利者から動産を取得した場合の保護にどう関わってくるかを見ていきます。

参照条文

  • 民法178条
  • 民法182条1項
  • 民法182条2項
  • 民法183条
  • 民法184条

民法 全体ロードマップへ →