共有の持分と使用・管理・変更
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第2章 物権 #110/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
実家を1人で貸していいか
図:冒頭の場面
- 3人姉弟A・B・Cが、亡くなった親から実家を相続した
- 持分はそれぞれ等しい
- Aは、BとCに相談せず、実家を他人に貸す契約を結んだ
3人姉弟A・B・Cが、亡くなった親の実家を相続した場面です。持分は、3人とも等しく分けられています。ところがAが、BとCに一言も相談せず、実家を他人に貸す契約を結んでしまいました。Aは、1人で決めて貸してよかったのでしょうか。先に答えを言います。Aは、1人では決められません。家を貸すには、他の共有者の同意が要ります。期間が短く、終わりのはっきりした貸し方なら、持分の過半数で足ります。そうでない普通の貸し方なら、全員の同意が要ります。Aの持分だけでは、どちらの基準にも届きません。今日は、共有物を守る・使う・変える、それぞれにどれだけの同意が要るのかを見ていきます。
前回の共有を思い出す
図:前回のおさらいの板
- 前回は動産の付合で、持ち主の違う動産が共有になる場面を見た
- 今日はその共有そのものの中身に入る
前回は、持ち主の違う動産どうしがくっついた場面を見ました。主従が分からないときは、どうなるのでしたか?価格の割合で、共有になるんでしたね。244条の共有でした。今日は、その共有そのものの中身に入っていきます。共有とは、複数の人が、1つの物を一定の割合で持ち合う状態のことです。共有は、そのうちの原則の形です。合有は、組合の財産のように、抜けるときに払い戻しを受けるだけの形でした。総有は、権利能力なき社団の財産のように、持分そのものが無い形でした。持分の処分も分割の請求も自由にできる、という点が、合有や総有と違うところでした。今日は、この共有そのもののルールに入ります。
持分は自由に処分できる
図:250条の全文カード(持分の割合の推定)
条文民法250条
民法第二百五十条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
各共有者が持っている割合を、持分と呼びます。持分の割合が分からないときは、この250条で、相等しいと推定されます。そして、持分は各共有者が自由に処分できます。自分の持分だけなら、他の共有者の同意なく、売ったり譲ったりできる、ということです。合有では、脱退のときにしか持分が問題になりませんでした。共有は、そこが大きく違います。
持分が消えたら誰の物になるか
図:255条全文カードの背景
条文民法255条
民法第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
共有者の1人が持分を手放したら、その持分はどこへ行くのでしょうか。国の物になったりは、しないんですか。しません。255条により、他の共有者に帰属します。放棄したときだけでなく、死亡して相続人がいないときも同じです。これは、共有の「弾力性」と呼ばれる性質です。各共有者は、もともと物全部について所有権を持っていて、他の共有者の持分によって制約されているだけ、というイメージです。制約が外れると、残った共有者の持分が、その分だけ伸びるんです。たとえば、Cが持分を放棄したとします。AとBは、2分の1ずつになります。
相続人がいない持分は、まずどこへ行くか
図:弾力性の流れ図
- 共有者が相続人なく死亡すると、相続人の不存在が確定し、清算手続が終わる
- そこで先に958条の2の特別縁故者への財産分与が検討される
- 分与されず残ったときにはじめて、255条により他の共有者に帰属する
255条だけ見るとそう読めますが、実は単純ではありません。相続人がいない人の財産には、別の制度もあります。958条の2の、財産分与という制度です。被相続人と特別な縁故があった人に、家庭裁判所が相続財産を分け与える制度です。では、共有持分ならどうでしょう。255条と958条の2、どちらが先に働くのでしょうか。判例は、まず958条の2の財産分与を検討すべきだ、としました。分与されずに残ったときに、はじめて255条により他の共有者に帰属する、という順番です。なぜ、その順番になるんですか。共有持分だけ財産分与の対象から外してしまうと、同じ相続財産なのに、扱いを分ける理由がなく不合理だからです。
判例最高裁判所第二小法廷判決 平成元年11月24日(民集43巻10号1220頁)
共有持分と特別縁故者への財産分与 共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり、右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には、特別縁故者を保護することが可能となり、被相続人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに、家庭裁判所における相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり、具体的妥当性を図ることができるのである。
「右分与」とは、958条の2の財産分与のことです。分与を先に検討することで、特別縁故者の保護にもつながりますし、家庭裁判所が事情を見て、共有持分をどちらに与えるべきかを判断できる、という利点もあります。だから判例では、まず958条の2の分与を見ます。分与されずに残ったとき、はじめて255条が働きます。持分を放棄したときも、同じ順番になるんですか。違います。財産分与は、相続人がいないときの制度です。放棄なら、255条でそのまま他の共有者に帰属します。
共有物にすることの3段階
図:共有物に対する行為の3段階の板
- 保存は各自単独・管理は持分の過半数・変更は全員の同意
- どれだけ現状を動かすかで重さが変わる
⭐ 論文で書く規範:共有物に対する行為の3段階 保存行為=各自単独でできる/管理行為=持分の過半数で決める/変更行為=全員の同意が要る (252条5項・252条1項・251条1項)
ここから、共有物に対して何かをするときの話に入ります。共有物にすることは、重さによって3段階に分かれます。雨漏りの修理のように、現状を守るだけの保存行為は、各自が単独でできます。人に貸すように、今の枠の中で使い方を決める管理行為は、持分の過半数で決めます。実家を取り壊して駐車場にするように、物の形や使い道を変える変更行為は、全員の同意が要ります。物を大きく動かし、元に戻しにくい行為ほど、必要な同意も重くなる、という発想です。
現状を守るだけなら1人でできる
図:252条5項全文カードの背景。各共有者は保存行為を単独ですることができる。
条文民法252条5項
民法第二百五十二条第五項 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
まず、いちばん軽い保存行為です。実家の屋根が雨漏りしているとします。だから、Aが1人で修理業者を呼んで、直させることができます。他の共有者にとっても不利益にならない行為だからです。不法に占拠している人への引渡し請求や、勝手にされた登記を消す請求も、保存行為の例とされています。どちらも、物を元の状態に戻すだけで、他の共有者を害さないからです。
形や使い道を変えるには全員の同意
図:251条1項の全文カード(変更には全員の同意・軽微変更は除く)
条文民法251条1項
民法第二百五十一条第一項 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
次に、いちばん重い変更行為です。実家を取り壊して、駐車場に建て替えることを考えてください。このような変更には、他の共有者全員の同意が要ります。家の形を作り替えると、簡単には元に戻せません。全員の財産に直接響くので、全員の同意が要るんです。昔は、どんなに小さな変更でも全員の同意が必要でした。そこで令和3年の改正で、線が動きました。形や効用、つまり使い道を、大きく変えないものは、変更行為から外れました。これを軽微変更と呼びます。例えば、屋根全体を葺き替えるような大がかりな修繕でも、家の形や使い道は変わりません。だから、軽微変更にあたります。さっきの、駐車場に建て替える話とは、そこが違います。
次に見る管理行為のほうに入ります。過半数で決められるようになったんです。傷んだところを元に戻すだけなら、保存行為です。屋根全体を新しくするのは、それを超えるので、過半数が要ります。
使い方を決めるのは持分の過半数
図:252条1項前段の全文カード(管理は持分の価格の過半数)
条文民法252条1項
民法第二百五十二条第一項(前段) 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
保存でも変更でもない、真ん中の管理行為です。共有物の管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決めます。頭数の過半数、ではないんですか。そこが誤解しやすいところです。頭数ではありません。持分の価格の過半数です。仮に、Aの持分が2分の1だとします。BとCは、4分の1ずつです。BとCの2人が賛成しても、合わせて2分の1です。ちょうど半分では、過半数に届きません。逆に、実家のように3分の1ずつなら、2人で3分の2になり、決まります。さっきの軽微変更や、共有物を人に貸すことも、管理行為の典型です。貸すのをやめて契約を解除するのも、使い方を決め直すことなので、同じく管理行為です。
実家に住み続けている人は、お金を払うのか
図:249条全文カードの背景
- 1項は各共有者が持分に応じて共有物の全部を使用できるという原則
- 2項は使用する共有者が持分を超える分の使用の対価を償還する義務
- 3項は善良な管理者の注意義務
実家に1人で住み続けている共有者は、他の共有者にお金を払う必要があるんですか。それを決めるのが249条です。見ていきましょう。
条文民法249条
民法第二百四十九条 1 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。 3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
1項は、各共有者は持分に応じて共有物の全部を使える、という原則です。これは、改正の前からある規定です。実家に、Aが1人でBとCの了承を得て住み続けているとします。Aは、家全体に住んでいますが、持分は3分の1しかありません。2項が、令和3年改正で新しく入りました。別段の合意がなければ、持分を超えて使っている分について、対価を払う義務を負います。家の残り3分の2は、BとCの持分にあたる部分です。Aはそこもタダで使っていることになるので、その分の使用料を払う、という仕組みです。別段の合意とは、たとえば「タダで住んでいい」という取り決めです。そういう合意があれば、Aは払わなくて済みます。
合意がなければ、使用料を払います。3項も新設です。共有物を使うときは、善良な管理者としての注意を払わなければなりません。自分の物以上に、丁寧に扱う義務がある、ということです。なお、これは共有者どうしの内部の話です。第三者に貸して得た賃料の分配は、別の回で扱います。
住んでいる人がいても過半数で決められる
図:252条1項後段の全文カードの背景
条文民法252条1項
民法第二百五十二条第一項(後段) 共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
Aが住んでいるとき、Aの同意なしで決められるか。そこも、改正前は不明確でした。今は、この後段で、はっきりしています。共有物を使用する共有者がいても、管理事項は同じく過半数で決められます。BとCの持分を合わせれば過半数になるので、Aの同意がなくても、実家を貸す決定ができます。ただし、住んでいるAの暮らしを大きく変える決定には、歯止めがあります。少しあとで見ます。
連絡が取れない共有者がいたら
図:252条2項の全文カードの背景
条文民法252条2項
民法第二百五十二条第二項 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。 一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。 二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
BかCの連絡先が、長年分からないとします。そこで、この2項が使えます。他の共有者を知ることができない、または所在が分からないときは、裁判所の決定を得て、残りの共有者の過半数で決められます。もう1つの型もあります。連絡はつくけれど、何度催告しても返事がないときも、同じく裁判所の決定を得て決められます。変更のほうにも、似た裁判の手続はあるんですか。あります。251条2項です。
条文民法251条2項
民法第二百五十一条第二項 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
ただし、こちらは、所在等が分からないときだけです。催告しても返事がないときの手続は、ありません。Cの行方が分からないなら、AとBの同意で、裁判を経て建て替えできます。Cが返事をしないだけなら、建て替えはできません。変更は全員の同意が原則なので、黙っている人を賛成と同じには扱わないんです。
⭐ 論文で書く規範:251条2項と252条2項の違い 所在等が分からないとき=どちらの条文にも裁判の手続がある/催告しても返事がないとき=252条2項だけにある (民法251条2項・252条2項)
住んでいる人に重い影響が出る決定には承諾が要る
図:252条3項の全文カードの背景(決定に基づいて使う共有者への特別の影響)。
条文民法252条3項
民法第二百五十二条第三項 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
過半数の決定でも、さっきの裁判の手続でも、なんでも決められるわけではありません。共有者どうしの決定に基づいて共有物を使っている共有者に、特別の影響を及ぼす決定には、その人の承諾が要ります。決定なしに使っているだけの共有者なら、この承諾は要りません。その決定の必要性と、Aが受ける不利益を比べて、我慢すべき限度を超えるなら、Aの承諾が要ります。
短期の貸し方なら過半数で足りる
図:252条4項の全文カードの背景
- 持分の過半数の決定で設定できる短期賃借権等の期間
- 山林10年・その他土地5年・建物3年・動産6か月
条文民法252条4項
民法第二百五十二条第四項 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。 一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等十年 二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等五年 三 建物の賃借権等三年 四 動産の賃借権等六箇月
賃貸も管理行為だと言いましたが、実は上限があります。この4項が、期間の上限を決めています。
⭐ 論文で書く規範:短期賃借権等の期間 山林の賃借権等=10年/土地の賃借権等=5年/建物の賃借権等=3年/動産の賃借権等=6か月 (民法252条4項)
建物なら、3年を超えない期間の賃貸なら、過半数で設定できます。3年を超えて貸したい場合は、全員の同意が要ります。そして、実は3年以内であれば何でもいいわけでもありません。普通の建物賃貸借には、借地借家法という法律が適用されます。この法律の下では、約束した期間で確実に終わるとは限りません。だから、終わりが確保されない普通の貸し方は、実質的に3年を超える拘束と同じで、全員の同意が要ります。一時的な使用が目的の貸し方や、更新のない短期の定期契約なら、過半数で足ります。実家なら、更新のない2年の契約で貸すのは、過半数で足ります。同じ2年でも、普通の借家契約なら、全員の同意が要ります。ここで、冒頭のAさんの場面に戻りましょう。Aの持分は、3分の1でした。
短期の貸し方でも、普通の貸し方でも、Aの持分だけでは足りません。だから、Aは1人で決めて貸すことはできなかったんです。
管理を1人に任せる
図:252条の2の全文カードの背景
- 共有物の管理者は管理行為をできるが、著しい変更には全員の同意が要る
- 共有者の決定に従う義務があり、違反行為は共有者に効力を生じないが善意の第三者には対抗できない
実家の管理を、Aに一任することもできます。この場合、Aは共有物の管理者と呼ばれます。
条文民法252条の2第1項
民法第二百五十二条の二第一項 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
管理者の選任や解任も、管理事項の1つなので、過半数で決められます。管理者は、管理行為はできますが、著しい変更をするには、やはり全員の同意が要ります。
条文民法252条の2第3項・第4項
民法第二百五十二条の二第三項・第四項 3 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。 4 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
管理者は、共有者が決めた事項に従う義務を負います。たとえば、BとCが「貸さない」と決めたのに、管理者のAが実家を貸したとします。従わずにした行為は、共有者に対しては効力を生じません。ただし、事情を知らない借主には、その無効を主張できません。取引の相手方を、不意打ちで害さないための調整です。
費用を払わない共有者がいたら
図:253条・254条の全文カードの背景
- 各共有者は持分に応じて管理の費用を負担する
- 1年不履行なら他の共有者が償金を払ってその持分を取得できる
- 共有物についての債権は特定承継人にも行使できる
条文民法253条
民法第二百五十三条 1 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。 2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
修繕費や固定資産税のような費用も、持分に応じて負担します。Aだけが立て替えているのに、Bが1年間払わないとします。この場合、Aは相当の償金を払って、Bの持分を取得できます。Bの持分がAに移るので、払わないBは、この家の共有から外れます。ただ、タダで取り上げるのではありません。持分に見合うお金を、Aが払います。1年待っても払わないBが残ると、Aはこの先も、Bの分を立て替え続けることになります。持分を買い取れば、その立て替えを終わらせられます。
条文民法254条
民法第二百五十四条 共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
たとえば、修繕費30万円をAが全額立て替えたとします。Bの分の10万円を、AはBに請求できます。この権利は、家という共有物について生まれたものです。だから、Bが持分をDに売った後も、AはDに10万円を請求できます。
相続した家にも同じルールが使える
図:898条2項の全文カードの背景(相続財産の共有持分は相続分で決まる)。
条文民法898条2項
民法第八百九十八条第二項 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
共同相続と登記の回で見たように、相続財産は、遺産分割までは共有になります。そこに今日のルールを使うときは、この898条2項が効きます。各相続人の相続分が、そのまま持分になります。相続分は、ふつうは法定相続分です。遺言で相続分の指定があれば、その指定相続分です。だから、A・B・Cの実家にも、今日見た保存・管理・変更のルールが、そのまま使えます。
今日のルールを振り返る
図:まとめ板
- 共有物への行為は保存・管理・変更の3段階
- 保存は各自単独、管理は持分の過半数、変更は全員の同意
- 軽微変更は管理へ、賃貸には期間の上限、249条2項で使用の対価、253・254条は費用負担
今日の話をまとめます。共有物への行為は、保存・管理・変更の3段階に分かれました。令和3年改正で、軽微な変更は変更から外れ、管理のほうに移りました。249条では、使う共有者に持分を超える分の対価を払う義務が新設されました。賃貸には期間の上限があり、それを超える普通の貸し方には全員の同意が要りました。連絡が取れない共有者がいるときは、裁判所の決定を経て、残りの共有者の過半数で決められました。冒頭のAさんは、どうだったでしょうか。Aの持分は3分の1で、過半数にも全員にも足りませんでした。Aは1人では、実家を貸せませんでした。
参照条文
- 民法250条
- 民法255条
- 民法252条5項
- 民法251条1項
- 民法252条1項
- 民法249条
- 民法252条2項
- 民法251条2項
- 民法252条3項
- 民法252条4項
- 民法252条の2第1項
- 民法252条の2第3項・第4項
- 民法253条
- 民法254条
- 民法898条2項