地上権と永小作権
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第2章 物権 ㉙/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
「借地権」と「地上権」、何が違う
図:冒頭設例の関係図
- Aが「Bの土地を借りて家を建てたい」と不動産屋に相談する場面
- 不動産屋は「借地権」で借りる道と「地上権」を設定してもらう道の2つを示す
- まだ答えの出ていない問い(点線「同じ話なのに、なぜ2つ?」)
Aさんは、Bさんの土地を借りて、自分の家を建てたいと考えています。不動産屋に相談すると、こう言われました。「借地権」で借りる方法と、「地上権」を設定してもらう方法があります、と。どちらも、他人の土地に建物を建てて住む、という点では同じです。でも、なぜ2つの制度があるのか。今日の問いです。先に、答えを言っておきます。「借地権」という言葉は、実は2つの権利をまとめて指す通称です。1つは今日学ぶ地上権。これは物権です。もう1つは、賃貸借契約に基づく土地の賃借権。これは債権です。どちらも、建物を所有する目的で他人の土地を使う点は同じですが、権利の強さが違います。今日は、他人の土地を使う権利、用益物権の地図を一望したうえで、地上権が賃借権とどう違うのかを見ます。そして最後に、地上権の仲間である永小作権も見ていきましょう。
制限物権のもう一方の系統
図:一言板
- 物権の地図の再掲(占有権・所有権・制限物権)
- 制限物権は2系統に分かれる
- 使う面を切り出した用益物権(今日から)と、価値の面を切り出した担保物権(抵当権等・別のブロック)
前に見た物権の地図を思い出してください。所有権の周りにある制限物権は、どんな2つの系統に分かれていたでしょうか?所有権を真ん中に置いて、使う面を切り出したのが用益物権、価値の面を切り出したのが担保物権、というお話でした。前回までで、所有権と共有のブロックが終わりました。今日から入るのが、その用益物権です。他人の物の交換価値を把握する権利で、抵当権などが入ります。担保物権の中身は、また別のブロックでじっくり扱います。今日は、使う権利、用益物権のほうに集中しましょう。
用益物権4種類の地図
図:用益物権4種類の一覧板
- 地上権=工作物・竹木の所有のために使う(265条)
- 永小作権=耕作・牧畜のために使う(270条)
- 地役権=自分の土地の便益のために使う(280条・次回)
- 入会権=一定地域の住民が山林等を共同で利用する慣習上の権利(次々回)
用益物権は、所有権のうち使用と収益の面を切り出して、他人の土地を使わせる物権です。種類は4つあります。1つめ、地上権。工作物または竹木を所有するために、他人の土地を使う権利です。今日の中心です。2つめ、永小作権。耕作または牧畜のために、他人の土地を使う権利です。今日、地上権のあとに見ます。3つめ、地役権。自分の土地の便益のために、他人の土地を使う権利です。例えば、自分の土地から公道に出るために、隣の土地を通らせてもらう権利です。4つめ、入会権。一定地域の住民が、山林などを共同で利用する、慣習上の権利です。こちらは次々回です。
まず、地上権から見ていきましょう。
265条を読む——地上権とは何か
図:265条の全文カードの背景
まず、条文そのものを見てみましょう。265条です。
条文民法265条
民法第265条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
建物が典型ですが、地上と地下の一切の建造物を指します。トンネルや橋も含まれます。「竹木」は、文字どおり、竹や木のことです。植林のために土地を使う場合を想定しています。Aが地上権の設定を受けて、家を建てたとします。この場合、土地についてはBの所有権とAの地上権が、別々に存在します。地上権は、土地の所有権を奪う権利ではなく、他人の土地を使わせてもらう権利にすぎません。そして建物については、Aの所有権が単独で成立します。土地と建物は、別の不動産として扱われるからです。地上権も物権なので、Aは地上権そのものを根拠に、誰かが土地の利用を妨げてくれば、直接、妨害排除を求められます。これが物権的請求権です。
図:A・B関係図
- 土地にはBの所有権とAの地上権が別々に存在する
- 建物にはAの所有権が単独で存在する
地上権は、どうやって成立するのでしょうか。多くは、土地の持ち主との地上権設定契約で生まれます。物権変動は意思表示だけで生じるので、契約が結ばれれば、それだけで地上権は発生します。時効によって取得されることもあります。これらは、当事者の意思に基づいて成立する場合です。あとで名前だけ触れますが、法定地上権という制度があります。当事者の意思表示によらず、法律上当然に成立する地上権です。まずは、契約で成立する地上権を、賃借権と比べてみましょう。
地上権と賃借権、どちらが有利か
図:一言板
- 地上権は物権、土地の賃借権は債権
- この違いから、対抗要件・譲渡に承諾が要るか・地代の要否は、それぞれどちらが有利になるか、答えを明かす前に考える
ここで、1つ考えてみてください。地上権は物権、土地の賃借権は債権です。物権は、物を直接に支配できる権利で、誰に対しても主張できます。債権は、特定の人に、何かをしてもらうよう請求できる権利です。この性質の違いから、対抗要件・譲渡に承諾が要るか・地代の要否は、それぞれどちらが有利になると思いますか。物権のほうが強いはずだから、地上権のほうが全部有利な気がします。1つずつ、確かめていきましょう。
図:地上権と賃借権の比較板
- 原則
- 性質=地上権は物権
- 賃借権は債権。対抗要件=地上権は登記(177条・設定者に登記協力義務あり)
- 賃借権は登記すれば対抗できるが賃貸人に協力義務は原則ない(605条)。譲渡転貸=地上権は自由
- 賃借権は賃貸人の承諾が必要(612条)。地代=地上権は無償も可
- 賃借権は支払が必須(601条)。存続期間=地上権は上限下限なし
- 賃借権は原則50年が上限(604条1項)。妨害排除=地上権は物権的請求権に基づき直接できる
- 賃借権は対抗要件を備えれば妨害排除請求ができる(605条の4等)。
1つめ、権利の性質です。地上権は物権、賃借権は債権。ここは、そのままです。2つめ、対抗要件です。地上権は登記です。177条の対抗要件で、しかも土地の所有者、つまり設定者には、登記に協力する義務があります。一方、賃借権は、登記すれば対抗できますが、賃貸人に登記協力義務は原則ありません。実務では、賃借権の登記はほとんど行われません。3つめ、譲渡と転貸です。地上権は自由です。譲渡禁止特約をつけても、地上権の譲受人には対抗できません。賃借権は、賃貸人の承諾が必要です。612条ですね。例えば、Aさんが家をDさんに売って引っ越すとします。家を使い続けるには、土地を使う権利も一緒にDさんへ移す必要があります。地上権なら、Bさんの承諾なしに、家と一緒に移せます。物権は、持ち主が自分の判断で処分できる権利だからです。特約で縛っても、Dさんには効きません。賃借権だと、Bさんが「Dさんには貸したくない」と言えば承諾が得られず、そのままでは移せません。
4つめ、地代です。地上権は、契約で無償にしても有効です。短答でよく問われる知識です。地代は、地上権の要素ではありません。一方、賃借権は、地代の支払が必須です。601条です。5つめ、存続期間です。地上権は、上限も下限もありません。永久の地上権も、判例上認められてきました。一方、賃借権は、原則50年が上限です。604条1項です。借地借家法が適用される場面は、あとで見ます。6つめ、妨害排除です。地上権は、物権的請求権に基づいて、直接に妨害排除を求められます。賃借権は、対抗要件を備えていれば妨害排除請求ができますが、それは物権的請求権そのものではありません。
冒頭のAさんに戻りましょう。もしAさんが地上権の設定を受けていれば、登記の協力も得られ、譲渡も自由で、期間の縛りもありません。地上権のほうが強いなら、みんな地上権を選びそうに思えますが、そこが、今日いちばん大事なところです。実は、世の中で圧倒的に使われているのは、地上権ではなく賃借権のほうなんです。
図:一言板
- 地上権の重さを、土地の所有者Bの側から見る
- 登記に協力する義務を負う/Aが誰に譲っても止められない(特約も効かない)→ほとんど土地を手放すのに近い→貸す側は主導権を残せる賃貸借を選び、実務では賃借権が主流になった
地上権を設定すると、土地の所有者、つまりBさんの側が、とても重い負担を背負うことになります。登記に協力しなければならず、さっきのDさんのように、Aさんが家ごと誰に売っても止められません。知らない人が、自分の土地を使う人になりうるわけです。だから、土地を貸す側は、主導権を残せる賃貸借を選びたがります。結果として、建物を建てて土地を借りる場面でも、実際に使われるのは、弱いはずの賃借権のほうになりました。
借地借家法で、差が縮む
図:借地借家法による接近の板
- 2条1号=建物所有目的の地上権・土地の賃借権はどちらも「借地権」
- 10条1項=建物の登記があれば、地上権・賃借権いずれも第三者に対抗できる
- 3条=借地権の存続期間は30年
そこで登場するのが、借地借家法です。まず、2条1号を見てみましょう。
条文借地借家法2条1号
借地借家法第2条第1号 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
建物所有目的なら、性質が違っても、同じ「借地権」という枠に入ります。次に、10条1項です。
条文借地借家法10条1項
借地借家法第10条第1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
本来なら、物権である地上権は土地の登記で対抗し、債権である賃借権は登記が得られにくくて対抗できない、という差があったはずです。でも借地借家法は、建物の所有権登記という共通の入口を用意しました。賃借権が、対抗要件の面で、地上権に近づいたわけです。具体的に見てみましょう。Aさんが、Bさんの土地を賃借権で借りて家を建てたあと、BさんがCさんに土地を売ったとします。賃借権は債権なので、約束の相手はBさんだけです。賃借権の登記も無ければ、本来、新しい持ち主のCさんには対抗できません。でも、Aさんが自分の家を自分の名前で登記していれば、10条1項によって、Cさんに借地権を対抗できます。
逆に、家を建てたのにまだ登記していなければ、この条文は使えません。Cさんに対抗できず、出て行くしかなくなります。もう1つ、存続期間も見ておきましょう。
条文借地借家法3条
借地借家法第3条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
上限の50年とは、別の話です。借地借家法が適用される借地権は、期間の下限を30年に固定して、賃借人が短期間で追い出されないようにしています。なぜ、こんなふうに賃借権を物権に近づけたのか。なぜですか。賃借権のほうが圧倒的に使われるからです。使われる側の保護が薄いままでは困ります。だから、借地借家法が賃貸人ではなく賃借人を守る方向に、原則の差を縮めているんです。ただし、賃料の増減請求や更新、定期借地権といった、借地借家法の本体は、別の回でじっくり扱います。今日は、地上権と賃借権の差が、建物登記によって縮む、という骨格までにとどめます。
地上権が消える場面
図:地上権の消滅場面の板
- 268条=期間の定めがなければ地上権者はいつでも放棄できる(地代があれば1年前予告か1年分支払)
- 放棄しないときは裁判所が20年以上50年以下で期間を定める
- 266条=地代は任意で、有償なら賃貸借等の規定を準用
- 269条=消滅時に収去できるが、土地所有者が時価で買い取る旨を通知すれば正当な理由なく拒めない
次は、地上権が、いつどうやって終わるかを見ましょう。まず、存続期間を定めなかった場合です。
条文民法268条
民法第268条 1 設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる。ただし、地代を支払うべきときは、一年前に予告をし、又は期限の到来していない一年分の地代を支払わなければならない。 2 地上権者が前項の規定によりその権利を放棄しないときは、裁判所は、当事者の請求により、二十年以上五十年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して、その存続期間を定める。
ただし、地代を払っていた場合は、1年前に予告するか、まだ来ていない1年分の地代を払う必要があります。地上権者が放棄しないなら、裁判所が請求を受けて、20年から50年の範囲で期間を定めます。上限がないのは、契約で自由に定められる、という意味です。裁判所が後から定める場合には、上限と下限が置かれています。次に、地代です。
条文民法266条
民法第266条 1 第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。 2 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。
この条文は、地代を払うと決めた場合のルールを定めているだけで、地代そのものを義務づけてはいません。だから、さっき見たとおり、無償の地上権設定契約も有効です。最後に、地上権が消えたときの後始末です。
条文民法269条
民法第269条 1 地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる。ただし、土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。 2 前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
建てた家は、原則として、Aが取り壊して持ち帰ることができます。Aの地上権が消滅すれば、Aは家を取り壊して、土地を更地に戻したうえで、返す権利があります。ただし、Bが「時価で買い取ります」と通知すれば、Aは正当な理由がない限り、これに応じなければなりません。Aに収去する権利がある一方、Bにも買い取る権利がある。この2つがセットになっています。
地下や空間だけを使う地上権
図:区分地上権のイメージ図
もう1つ、地上権には特殊な形があります。区分地上権です。
条文民法269条の2
民法第269条の2 1 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。 2 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。
普通の地上権は、土地全体を使う権利ですが、区分地上権は、地下や空間の一部の層だけを目的にできます。例えば、地下鉄のトンネルや、送電線が通る地下・上空の空間などに使われます。1項の後ろ半分は、例えばトンネルの真上に重いビルを建てられては困るので、「地表には重い建物を建てない」といった制限を、設定のときに付けられる、という意味です。2項は、例えば地表をすでに誰かが借りて畑にしている場合です。その人を含めて、土地を使う権利を持つ全員が承諾すれば、地下だけに区分地上権を設定できます。承諾した人は、あとからトンネルの利用を妨げることはできません。
法定地上権への布石
図:一言板
- 土地と建物が同一人の所有で、一方に抵当権が設定され実行で所有者が分かれたときは、法律上当然に地上権が成立したものとみなされる
- 名前と趣旨までにとどめ、本体は別回
ここまでの地上権は、当事者の契約で成立するものでした。最後に、名前だけ触れておく制度があります。法定地上権です。土地と、その上の建物が同一の人の所有だった場合に、その土地か建物のどちらかに抵当権が設定され、実行によって所有者が分かれてしまったときに成立します。なぜ、こんな制度があるのか。建物を取り壊さずに済むようにするためです。建物だけ残して土地の権利がなくなれば、取り壊すしかなくなります。それは社会経済上の大きな損失なので、法律が地上権をみなして成立させます。この制度の要件の細かい成否は、抵当権を学ぶ回で、じっくり扱います。今日は名前と趣旨までにとどめます。
耕作のための物権、永小作権
図:永小作権の板
- 270条=小作料を支払って他人の土地で耕作・牧畜をする権利
- 278条=存続期間20年以上50年以下、更新も50年まで、定めなければ30年
- 272条=譲渡・賃貸は原則自由だが特約で禁止できる
ここからは、用益物権の2つめ、永小作権です。
条文民法270条
民法第270条 永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
地上権とは違い、永小作権は地代の支払が必須です。そこが、いちばん大事な違いです。地上権のような無償の設定契約はできません。例えば、Fさんが、Eさんの畑を借りてお米を作るとします。「小作料はいらないよ」という約束なら、それは永小作権にはなりません。ただで借りる、別の契約の話になります。存続期間も見てみましょう。
条文民法278条
民法第278条 1 永小作権の存続期間は、二十年以上五十年以下とする。設定行為で五十年より長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。 2 永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から五十年を超えることができない。 3 設定行為で永小作権の存続期間を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、三十年とする。
Fさんが60年と定めても、自動的に50年に縮められます。更新はできますが、更新のたびに50年を超えることはできません。なぜ、永小作権だけ、こんなに縛られているんですか。耕作や牧畜のために土地を長期間占有し続けると、土地が使われないまま荒れたり、土地の状況を所有者が把握できなくなったりする不都合があるからです。だから、地代の支払を必須にして所有者との関係を切らさず、期間にも区切りを設けて、定期的に見直せるようにしています。最後に、処分の自由を見ましょう。
条文民法272条
民法第272条 永小作人は、その権利を他人に譲り渡し、又はその権利の存続期間内において耕作若しくは牧畜のため土地を賃貸することができる。ただし、設定行為で禁じたときは、この限りでない。
譲渡や賃貸は、原則として自由にできます。ただし、設定行為で禁止する特約をつけることができます。この点は、地上権とは違います。地上権は、特約をつけても譲受人には対抗できませんでしたね。永小作権の場合、設定行為での禁止特約は、有効な制限として働きます。なお、永小作権は、現代ではほとんど使われていません。今でも民法に残る制度として、名前と仕組みを押さえておきましょう。
地上権と永小作権、並べてみる
図:地上権と永小作権の比較板
- 対象=地上権は工作物・竹木の所有目的/永小作権は耕作・牧畜目的
- 存続期間=地上権は制限なし(永久も可)/永小作権は20年以上50年以下
- 地代=地上権は契約による(無償も可)/永小作権は小作料の支払が必須
- 譲渡性=地上権は自由(特約は譲受人に対抗できない)/永小作権は原則自由だが特約で禁止できる
最後に、地上権と永小作権を並べてみましょう。対象は、地上権が工作物・竹木の所有目的、永小作権が耕作・牧畜目的です。存続期間は、地上権に制限がなく、永小作権は20年以上50年以下です。地代は、地上権が契約次第で無償も可、永小作権は小作料の支払が必須です。譲渡性は、地上権が完全に自由で特約をつけても効きません。永小作権は原則自由ですが、特約で禁止できます。用益物権の中で、この2つの縛りを両方とも必ず持つのは、永小作権だけです。265条を読み直してみてください。地上権の定義には、期間も地代も出てきません。工作物や竹木を所有するために土地を使う権利だ、とだけ定めています。だから期間も地代も当事者の合意に委ねられ、268条も、期間を定めなかったときの後始末を書いているだけです。合意すれば無期限・無償の地上権も成立します。
270条は「小作料を支払って」耕作・牧畜をする権利だ、と定義そのものに有償という縛りを組み込んでいます。そして278条は、期間を定めなかった場合の話ではなく、永小作権の存続期間そのものを、20年以上50年以下と直接定めています。耕作や牧畜に使う土地は、長期間占有されたままだと荒れたり、所有者が状況を把握できなくなったりします。だから条文の設計そのものが、有償と期限で所有者との関係を切らさないようにしているんです。覚えるときの軸にしてください。
今日の骨格を、もう一度
図:まとめ板
- 「借地権」は地上権(物権)と土地の賃借権(債権)の通称
- 地上権は物権として強いが、その強さゆえに土地所有者には使いにくく、実務では賃借権が主流になった
- 借地借家法は、建物登記による対抗を軸に、その差を縮めている
- 用益物権は4種類
- 今日は地上権と永小作権を扱った
今日の骨格を、もう一度お願いします。冒頭のAさんに戻りましょう。「地上権」を設定してもらえば、登記の協力も譲渡の自由も手に入りますが、Bさんにとっては重い負担です。土地の賃借権で借りても、家さえ登記しておけば、借地権として第三者に対抗できます。用益物権は、地上権・永小作権・地役権・入会権の4種類でした。今日は、地上権と永小作権を扱いました。
参照条文
- 民法265条
- 借地借家法2条1号
- 借地借家法10条1項
- 借地借家法3条
- 民法268条
- 民法266条
- 民法269条
- 民法269条の2
- 民法270条
- 民法278条
- 民法272条