民法ゼロから民法#115

担保物権総論と4つの通有性

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第3章 担保物権 #115/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

Dさんに300万円ずつ貸していた3人

冒頭設例の関係図。DさんはA・B・Cの3人からそれぞれ300万円ずつ借りていた(合計900万円)。Dさんの財産は事業失敗で300万円しか残っていない。3人はいくら回収できるかという問い。 図:冒頭設例の関係図

  • DさんはA・B・Cの3人からそれぞれ300万円ずつ借りていた(合計900万円)
  • Dさんの財産は事業失敗で300万円しか残っていない
  • 3人はいくら回収できるかという問い

Dさんという人に、A・B・Cという3人が、それぞれ300万円ずつお金を貸していました。ところが、Dさんは事業に失敗してしまい、財産を全部お金に換えても、残ったのは300万円だけです。もう1つ、条件を足します。もし、Aさんだけが、お金を貸すときにDさんの土地に「担保」を付けてもらっていたら。結果はどう変わるでしょうか。先に答えを言っておきます。担保が無ければ、3人は平等に100万円ずつしか回収できません。でも、担保を付けていたAさんは、土地の価値から先に、満額の300万円を回収できます。この「先に取れる」という力を、法律がどう作っているのか。今日から始まる、担保物権という世界のいちばん最初の話です。

平等に分け合う原則と、それを破る仕組み

一言板。債権には優先的効力も排他性も無く、同じ債務者に対する複数の債権は発生の先後を問わず平等に扱われる(債権者平等の原則)。900万円の債権に対し財産300万円を1:1:1で按分し各自100万円。 図:一言板

  • 債権には優先的効力も排他性も無く、同じ債務者に対する複数の債権は発生の先後を問わず平等に扱われる(債権者平等の原則)
  • 900万円の債権に対し財産300万円を1:1:1で按分し各自100万円

まず、担保が無い場合、どうなるかを見ましょう。債権には、優先的効力も、排他性もありません。同じ債務者に対する複数の債権は、発生した順番に関係なく、全部平等に扱われる、ということです。これを債権者平等の原則と呼びます。もう1つの排他性は、同じ物の上に同じ物権は1つしか成り立たない、という物権の性質でした。債権にはそれが無いので、Dさん1人に対して、A・B・Cの3本の債権が、並んで成立できます。A・B・Cの3人が、合わせて900万円の債権を持っているのに、Dさんの財産は300万円しかありません。この場合、財産は債権額の割合で按分されます。

3人とも同じ300万円ずつ貸していたから、300万円を3人で均等に分けて、1人あたり100万円です。誰も、満額の300万円は回収できません。なぜ、こんな扱いになるのでしょうか。債権は、「払え」と言えるだけの権利で、Dさんの財産のどこかを直接つかんでいる権利ではないからです。この平等を破るには、特定の物を直接つかむ権利、つまり物権を作るしかありません。物権には優先的効力があって、同じ物の上では、物権を持つ人が、ただの債権者より先に取れるからです。土地に担保を付けていたAさんだけが、物権の優先的効力によって先に取れました。その担保が、今日からの担保物権です。

人を当てにするか、物を当てにするか

対比板。人的担保(保証)=相手の資力全体(責任財産)をあてにする、保証人も無資力なら回収できない。物的担保(担保物権)=特定の物の価値をあてにする、債務者が倒産しても物の価値から優先回収できる。 図:対比板

  • 人的担保(保証)=相手の資力全体(責任財産)をあてにする、保証人も無資力なら回収できない
  • 物的担保(担保物権)=特定の物の価値をあてにする、債務者が倒産しても物の価値から優先回収できる

担保の取り方には、大きく2つの方向があります。1つは、以前見た保証です。保証は、保証人という「人」の資力、つまりその人の財産全体を当てにする方法でした。これを人的担保と呼びます。保証も担保物権も、目的は同じ、債権の履行確保です。保証人自身が無資力になれば、当てにしていた人の財産が無くなるので、保証も一緒に効かなくなります。保証の中身は、また別の回でたっぷり扱います。もう1つの方向が、今日からの担保物権です。人ではなく、特定の「物」の価値を当てにします。これを物的担保と呼びます。物権のカタログの回で、所有権の3つの力のうち、処分の裏にある価値だけを取り出したのが担保物権だ、と見ましたね。

物的担保なら、Dさんが事業に失敗して無資力になっても、担保に取った物の価値そのものから、優先して回収できます。人の懐具合に左右されません。

担保物権は4つ、分かれ目は「合意が要るか」

切り分け板。合意が要るかを軸に左(法定担保物権=留置権・先取特権)と右(約定担保物権=質権・抵当権)に分岐。物権の種類は175条(物権法定主義)により法律で決まっている。判例・慣習が育てた非典型担保(譲渡担保など)は別枠で存在。 図:切り分け板

  • 合意が要るかを軸に左(法定担保物権=留置権・先取特権)と右(約定担保物権=質権・抵当権)に分岐
  • 物権の種類は175条(物権法定主義)により法律で決まっている
  • 判例・慣習が育てた非典型担保(譲渡担保など)は別枠で存在

担保物権には、全部で4種類あります。留置権、先取特権、質権、抵当権です。丸暗記の前に、分かれ目を1つだけ、押さえ直しましょう。合意が要るかどうか、これだけです。以前、物権の種類は法律だけが決められる、という話をしました。何という原則だったか、思い出せますか?あっ、覚えています。物権法定主義、175条でしたね。担保物権も同じで、種類は法律が決めています。そのうち、留置権と先取特権は、法律の要件さえ満たせば、当事者の合意が無くても発生します。物権のカタログの回で見た、修理代を払ってもらうまで自動車を返さない整備士。あれが留置権でした。客との間に、担保の約束はありませんでしたね。これを法定担保物権と呼びます。一方、質権と抵当権は、当事者の合意が無ければ発生しません。これを約定担保物権と呼びます。

土地に付ける担保なので、抵当権です。Dさんとの合意があって、初めて成立します。なお、この4つ以外にも、判例や慣習が育てた担保のやり方があります。譲渡担保などです。これは非典型担保と呼ばれ、本体は第3章の後半で扱います。今日は、存在だけ知っておいてください。

2つの効力——優先弁済的効力と留置的効力

一言板。優先弁済的効力=目的物を競売にかけ現金化し他の債権者に先立って弁済を受ける力(先取特権・質権・抵当権にあり留置権には無い)。留置的効力=弁済を受けるまで目的物を手元に留め心理的に弁済を促す力(留置権・質権にあり先取特権・抵当権〔非占有担保〕には無い)。 図:一言板

  • 優先弁済的効力=目的物を競売にかけ現金化し他の債権者に先立って弁済を受ける力(先取特権・質権・抵当権にあり留置権には無い)
  • 留置的効力=弁済を受けるまで目的物を手元に留め心理的に弁済を促す力(留置権・質権にあり先取特権・抵当権〔非占有担保〕には無い)

担保物権が持つ、一般的な効力を2つ、先に押さえておきましょう。1つめは優先弁済的効力。目的物を競売にかけて現金化し、他の債権者に先立って、自分の債権に充てる力です。もう1つが留置的効力。弁済を受けるまで、目的物を手元に留めておく力です。相手にとって「その物が無いと困る」という状態を作って、心理的に弁済を促します。修理代を払うまで車を返さない整備士が、まさにこれです。どちらの効力を持つかは、担保物権ごとに違います。先取特権と抵当権は、物を預からない非占有担保なので、留置的効力はありません。質権は、物を預かるので、優先弁済的効力と留置的効力の両方を持ちます。

留置権は、名前のとおり留置的効力しか持ちません。ここは、あとの節でじっくり見ます。

留置権には無い……はずなのに、事実上効く

留置権の事実上の優先弁済的効力を示す板。留置権には法律上の優先弁済的効力は無いが、不動産の競売で目的物を買い受けた買受人にも留置権を主張できる(民事執行法59条4項)。買受人は留置権で担保される債権を弁済しなければ物を受け取れない=事実上、優先して回収できる。 図:留置権の事実上の優先弁済的効力を示す板

  • 留置権には法律上の優先弁済的効力は無いが、不動産の競売で目的物を買い受けた買受人にも留置権を主張できる(民事執行法59条4項)
  • 買受人は留置権で担保される債権を弁済しなければ物を受け取れない=事実上、優先して回収できる

留置権には優先弁済的効力が無い、と言いました。でも、実際には、似たようなことが起きます。今度は、建物で考えます。工務店がDさんの建物の大規模な修繕を請け負ったのに、代金を払ってもらえず、工事を終えた建物を引き渡さずにいるとします。この建物が、他の債権者の申立てで競売にかけられ、別の人が買い受けたとしましょう。留置権者は、この新しい持ち主、つまり買受人に対しても、留置権を主張できます。条文で確認しましょう。

条文民事執行法59条4項

民事執行法第59条4項 不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で第二項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによつて担保される債権を弁済する責めに任ずる。

条文の前半には質権の話も入っていますが、今日見るのは、留置権の部分です。買受人は、留置権で担保されている修繕代金を払わなければ、その建物を受け取れない、という意味です。だから買い手は、競売で値段を付けるとき、この修繕代金の分を差し引いた額しか出しません。安くなった代金を、他の債権者たちで分け合います。工務店は、その列に並ばずに、修繕代金の全額を、買受人から受け取れるわけです。これを事実上の優先弁済的効力と呼びます。法律上の優先順位は無いのに、結果としては、払ってもらえないと物が回らないので、先に回収できるのと同じ効果が生まれます。

留置権が「効力が無い」で終わる権利ではない、ということを、まず押さえておいてください。この理由は、あとの物上代位性の節で、もう一度つながってきます。

担保は債権の影——付従性

一言板。成立における付従性=被担保債権が発生しなければ担保物権も発生しない。消滅における付従性=被担保債権が消滅すれば担保物権も消滅する。担保物権は被担保債権のための道具であり単独では存在できない。 図:一言板

  • 成立における付従性=被担保債権が発生しなければ担保物権も発生しない
  • 消滅における付従性=被担保債権が消滅すれば担保物権も消滅する
  • 担保物権は被担保債権のための道具であり単独では存在できない

ここから、4つの担保物権すべてに共通する性質、通有性を見ていきます。1つめは、以前も名前だけ見た付従性です。まず、もとになる債権が発生していなければ、担保物権も発生しません。これを成立における付従性と呼びます。そして、もとの債権が消えれば、担保物権も一緒に消えます。これを消滅における付従性と呼びます。担保物権が押さえているのは、「特定の債権のための」価値です。その債権が無ければ、押さえる理由がそもそもありません。影は、本体が無ければ存在できません。この発想が、これから見る残りの3つの性質にも、全部つながっていきます。

影は本体について歩く——随伴性

一言板。随伴性=被担保債権が第三者に譲渡されれば担保物権もそれに伴って移転する。押さえている対象は債権そのものではなく債権のための価値であるため、債権が移転すればついていく。 図:一言板

  • 随伴性=被担保債権が第三者に譲渡されれば担保物権もそれに伴って移転する
  • 押さえている対象は債権そのものではなく債権のための価値であるため、債権が移転すればついていく

2つめは随伴性です。被担保債権が、Aさんから別の人に譲渡されたとします。お金を貸している立場が誰かに移る、つまり被担保債権が譲渡されると、そのとき、担保物権も一緒に、その譲受人に移転します。担保だけが元の場所に取り残される、ということは起きません。さっきの「影」の話でいうと、本体である債権が動けば、影である担保も一緒に動きます。押さえているのは、債権そのものではなく、「その債権のための」価値だからです。債権が移れば、価値を押さえる理由も一緒に移ります。例えば、AさんがDさんに対する300万円の債権を、Eさんに売ったとします。抵当権も一緒に移るので、Eさんは、Dさんの土地から先に回収できます。

担保付きだと思って買った債権が、ただの債権になってしまいます。

全部の弁済を受けるまで——不可分性

296条の全文カードの背景。留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで留置物の全部について権利を行使できる(不可分性)。一部弁済があっても目的物を按分して縮めることはできない。305条(先取特権)・350条(質権)・372条(抵当権)が296条を準用する。 図:296条の全文カードの背景

  • 留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで留置物の全部について権利を行使できる(不可分性)
  • 一部弁済があっても目的物を按分して縮めることはできない
  • 305条(先取特権)・350条(質権)・372条(抵当権)が296条を準用する

3つめは不可分性です。条文で確認しましょう。留置権の条文、296条です。

条文民法296条

民法第296条 留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。

例えば、300万円の債権のうち、100万円だけ弁済されたとします。それでも、担保物権は、残りの200万円のために、目的物の全部について、権利を行使できます。押さえているのは「債権全部が満足されるまで」の価値なので、一部弁済があっても、担保は縮みません。これも、担保物権の存在理由そのものから出てくる性質です。この296条は、留置権の条文ですが、他の3つの担保物権にも準用されています。

準用の板。305条(先取特権)=「第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。」。350条(質権)=「第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。」。372条(抵当権)=「第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。」。いずれも296条(不可分性)を準用する構造。 図:準用の板

  • 305条(先取特権)=「第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。」
  • 350条(質権)=「第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。」
  • 372条(抵当権)=「第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。」
  • いずれも296条(不可分性)を準用する構造

305条は先取特権に、350条は質権に、372条は抵当権に、それぞれ296条を準用する、と定めています。留置権を土台にして、他の3つが同じ発想を借りている、という条文の作りになっています。

物が形を変えても価値は生きている——物上代位性

304条の全文カードの背景。先取特権はその目的物の売却・賃貸・滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できる(物上代位性)。ただし先取特権者はその払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない。350条・372条が準用する。 図:304条の全文カードの背景

  • 先取特権はその目的物の売却・賃貸・滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できる(物上代位性)
  • ただし先取特権者はその払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない
  • 350条・372条が準用する

4つめは物上代位性です。以前、混同の回で、抵当権の付いた倉庫が落雷で全焼しても、抵当権は消えずに、火災保険金を受け取る権利へ乗り移る、という話をしたのを覚えていますか。あっ、覚えています。物上代位、という名前だけ出てきましたね。今日は、あの仕組みを条文で確かめます。条文は先取特権のところにある、304条ですが、質権の350条と、抵当権の372条で準用されています。準用の構造は、さっきの296条と同じです。だから、抵当権の話にも、この条文がそのまま使えます。

条文民法304条

民法第304条 1 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。 2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

「売却、賃貸、滅失又は損傷」というのは、目的物が、売られて代金に変わったり、貸されて賃料に変わったり、壊れて保険金や損害賠償金に変わったりする場面です。そのどれについても、担保物権の効力が及びます。2項は、目的物に地上権などを設定して受け取る対価のことです。担保物権が押さえているのは、物そのものではなく、物が持つ価値だからです。物という器が変わっても、その中身の価値が同じなら、押さえている対象は変わりません。冒頭のDさんで考えてみましょう。今度は、Aさんの抵当権が、土地ではなくDさんの建物に付いていたとします。その建物が燃えて、Dさんに火災保険金が入ることになりました。

保険金は、Dさんのただの財産になって、BさんやCさんと平等に按分されてしまいます。物上代位があるから、Aさんは、その保険金から先に回収できるんです。ただし条文には、ただし書があります。払渡しまたは引渡しの前に、差押えをしなければなりません。この差押えが具体的に何を意味するか、判例をめぐってどんな議論があるかは、抵当権の物上代位を扱う回で、じっくり見ます。今日は、条文にこの一文があることだけ、押さえておいてください。

なぜ留置権だけ、物上代位性が無いのか

留置権の例外を示す対比板。留置権には物上代位性が無い。理由=物上代位性は「先取りする価値」が形を変えて出てきたときそれを追いかける性質だが、留置権にはそもそも「先取りする価値」=優先弁済的効力が無いため追いかける対象が無い。優先弁済的効力が無い理由と物上代位性が無い理由は同じ一つの根っこ。 図:留置権の例外を示す対比板

  • 留置権には物上代位性が無い
  • 理由=物上代位性は「先取りする価値」が形を変えて出てきたときそれを追いかける性質だが、留置権にはそもそも「先取りする価値」=優先弁済的効力が無いため追いかける対象が無い
  • 優先弁済的効力が無い理由と物上代位性が無い理由は同じ一つの根っこ

では、通有性4つ、留置権にはこの4つ、全部そろっているでしょうか?留置権には、物上代位性がありません。物上代位性は、「先に取れる価値」が形を変えて出てきたとき、その変わった後ろまで追いかけていく性質でした。例えば、さっきの工務店が引き渡さずにいた建物が、火事で燃えてしまったとします。Dさんには火災保険金が入りますが、工務店は、その保険金から先に取ることはできません。留置権は、物の価値を先取りする権利ではなく、物を留め置いて心理的な圧力をかける権利でした。価値を先取りしていないのだから、その価値が形を変えても、追いかけようがありません。

さっき見た、事実上の優先弁済的効力とは、話が別なんですか。別です。あれは、競売の買受人に対して留置権を主張できる、という民事執行法の効果でした。今日の物上代位性は、目的物が金銭などに形を変えたときに、その金銭自体に担保の効力が及ぶかという話です。留置権には、後者は認められません。

4担保×6項目、総まとめ表

4担保×6項目の総まとめ表。行=留置権・先取特権・質権・抵当権。列=付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力。留置権列=付従性○随伴性○不可分性○物上代位性×優先弁済的効力×(事実上の優先弁済的効力あり)留置的効力○。先取特権列=付従性○随伴性○不可分性○物上代位性○優先弁済的効力○留置的効力×。質権列=全部○。抵当権列=付従性○随伴性○不可分性○物上代位性○優先弁済的効力○留置的効力×(非占有担保)。 図:4担保×6項目の総まとめ表。行=留置権・先取特権・質権・抵当権。列=付従性・随伴性・不可分性・物上代位性・優先弁済的効力・留置的効力。留置権列=付従性○随伴性○不可分性○物上代位性×優先弁済的効力×(事実上の優先弁済的効力あり)留置的効力○。先取特権列=付従性○随伴性○不可分性○物上代位性○優先弁済的効力○留置的効力×。質権列=全部○。抵当権列=付従性○随伴性○不可分性○物上代位性○優先弁済的効力○留置的効力×(非占有担保)。

では、今日いちばんの核、4つの担保物権と6つの項目を、1枚の表に並べましょう。付従性・随伴性・不可分性は、4つの担保物権すべてに共通して○が付きます。ここまでは、全部の担保物権に共通する土台です。影の話や、全部の弁済を受けるまでという話が、どれにも当てはまるからですね。ここから先、3つの項目で違いが出ます。物上代位性は、先取特権・質権・抵当権には○ですが、留置権だけ×。優先弁済的効力も、先取特権・質権・抵当権には○ですが、留置権だけ×です。ただし、留置権には事実上の優先弁済的効力があるので、そこは括弧書きで添えておきます。

留置的効力は、物を預かる担保物権にしかありません。留置権と質権には○ですが、先取特権と抵当権は非占有担保なので×です。表にすると、留置権だけ他の3つと形が違う列になっていますね。この表が、今日の到達点です。留置権は「価値を先取りしない代わりに、物を留めて圧力をかける」という、他の3つとは違う攻め方をする担保物権だ、ということを、この表1枚で持ち帰ってください。担保物権は、特定の物の価値を、特定の債権のために、先に押さえておく権利です。冒頭でAさんが先に取れたのも、この表の○と×も、全部この一点から出てきます。

今日の地図(保存版)

第3章の解説順の地図。総論(本回)→抵当権→根抵当権→質権→留置権→先取特権→非典型担保、の順で進む。今日の4担保×6項目の表が、各回で「この担保物権はどの列が○/×だったか」を思い出す土台になる。 図:第3章の解説順の地図

  • 総論(本回)→抵当権→根抵当権→質権→留置権→先取特権→非典型担保、の順で進む
  • 今日の4担保×6項目の表が、各回で「この担保物権はどの列が○/×だったか」を思い出す土台になる

最後に、これから第3章がどう進むかを、1枚の地図で見ておきましょう。今日の総論のあと、まず抵当権を、設定から実行まで詳しく見ていきます。続いて、抵当権によく似た根抵当権。そのあと、質権、留置権、先取特権の順で、それぞれの中身を詳しく見ます。最後に、判例や慣習が育てた非典型担保も扱います。そして、これから各回で「この担保物権は、今日の表のどの列が○だったか、×だったか」と振り返ることになります。今日渡した表が、第3章全体の道具箱です。

冒頭の答えを、もう一度

まとめ板。債権者平等の原則(優先的効力・排他性なし)→物的担保(担保物権)vs人的担保(保証)→4つの担保物権(法定=留置権・先取特権/約定=質権・抵当権)→2つの効力(優先弁済的効力・留置的効力)→4つの通有性(付従性・随伴性・不可分性・物上代位性)→留置権だけ物上代位性・優先弁済的効力が無い(事実上の優先弁済的効力はある)。 図:まとめ板

今日の骨格を振り返りましょう。人を当てにする人的担保と、物を当てにする物的担保の対比、法定・約定の2分類、4つの担保物権の名前も見ました。では、冒頭のDさんの話に戻りましょう。A・B・Cの3人は、担保が無ければ、財産300万円を平等に按分して、100万円ずつしか回収できません。Aさんは、その土地の価値から、他の2人に先立って、300万円全額を回収できます。これが、優先弁済的効力です。この「先に取れる」仕組みを、法律がどう作っているか。今日は、その土台となる考え方と、4つの担保物権の地図を渡しました。

参照条文

  • 民事執行法59条4項
  • 民法296条
  • 民法304条

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