2番抵当と法定地上権
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第3章 担保物権 #126/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
前回の続きを、思い出してください
図:冒頭の場面板
- BはEに土地を貸し、Eはそこに家を建てている
- BはAのために土地に抵当権を付けた(1番)
- その後EがBに家を売り、土地も建物もBのものになった
- そこでBは、土地にもう1つ、Fの抵当権を付けた(2番)
- 返済が滞り、土地が競売されCが買い受けた
前回の最後に、宿題を残しました。覚えていますか?抵当権が2つ、1番と2番であって、設定当時の所有関係が違っていたらどうなるか、でした。今日はその場面を見ていきます。例えば、BはEに土地を貸していて、Eはそこに自分の家を建てています。Bは、その土地に銀行Aのための抵当権を付けました。これが1番です。その後、EがBに家を売り、土地も建物もBのものになりました。そこでBは、同じ土地に、さらに抵当権を1つ付けます。Fのための抵当権です。これが2番です。返済が滞り、土地が競売されて、Cが買い受けます。法定地上権は成立するでしょうか。先に答えを言っておきます。土地のこの場面は、成立しません。ところが、同じことが建物で起きると、今度は成立します。今日はこの逆転の理由を、一本の軸で説明します。
抵当権が2つあると、何が問題になるのか
図:順位の復習板
- 同一の不動産に抵当権は何個でも付けられる
- 順位は登記の前後で決まる(373条)
- 先に登記されたものが1番抵当権、後から登記されたものが2番抵当権
- 配当は1番から先に受け取る
- どの順位の抵当権者でも、単独で実行できる
どちらが先に配当を受け取るかは、登記の前後で決まりましたね。先に登記された方が1番抵当権、後から登記された方が2番抵当権で、1番から先に配当を受け取ります。前に条文で確認した順位の話です。今日はこの複数の抵当権が問題になる場面を扱います。1番の抵当権者でも、2番の抵当権者でも、単独で競売を申し立てられます。ここが今日の出発点です。大事なのは、2番のFが実行しても、1番のAの抵当権も一緒に消えて、土地は抵当権の付いていない状態でCに渡ることです。以前見た消除主義の仕組みでしたね。法定地上権の要件②、所有者が同一だったかどうかを判断するとき、Aの設定当時を見るのか、Fの設定当時を見るのか、どちらなんですか。そこです。同じ土地の上で、1番の設定当時は別人所有、2番の設定当時は同一人所有、というように答えが割れることがあります。今日は、この場合にどちらを基準にするかを見ていきます。
図:388条前段の板
- 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす
- 「同一の所有者に属する場合」と「抵当権が設定され」に下線
条文民法388条前段
民法第388条前段 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。
条文をもう一度見ておきます。「同一の所有者に属する場合において」「抵当権が設定され」とあるだけで、抵当権が2つあるとき、どちらの設定を見るのかは書いてありません。
土地の2番抵当は、1番が基準
図:土地2番抵当の場面板
- BがAに1番(土地)を設定した時点では、土地はB、建物はE
- その後EがBに建物を売り、Bが土地・建物を両方持つ
- そこでBがFに2番(土地)を設定
- 土地が競売されCが買い受ける
冒頭の場面をもう一度整理します。Bの土地にAの1番抵当権が付いたとき、土地はB、建物はEの別人所有でした。その後、EがBに建物を売り、Bが土地と建物の両方の持ち主になりました。そこでBは、同じ土地に、Fの2番抵当権を付けます。どちらを基準にするかで、結論が変わってしまいます。この場面について、判例があります。
判例最高裁判所第二小法廷判決 平成2年1月22日
土地の2番抵当権の場合の判例 土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。
判例は、1番抵当権を基準にして、法定地上権の成立を否定しました。今回の場面なら、Aの設定当時を基準にする、ということです。後から同一人所有になって、さらに2番が付いても、答えは変わらない、と言っています。理由を考えましょう。Aは、1番抵当権を設定したとき、この土地を「法定地上権の負担が付かない土地」として値踏みしています。そのときEが持っていたのは、Bと契約した借地権だけです。Aが織り込んだ負担は、その借地権の分までです。法定地上権は、借地権よりも強い権利です。これが付くと、土地の値打ちは、Aが見積もったところより、さらに下がってしまいます。
Aが関与していない、あとから起きた事情によって、Aの評価を崩すわけにはいきません。だから、Aの設定当時、つまり1番を基準にします。成立しないなら、Cは建物を壊さなければならないんじゃないですか。そこは前回と同じです。同じ物の所有権と、その物の上の別の権利が、1人の手にそろうと、別の権利は消えるのが原則です。これを混同と言います。179条1項本文の定めです。
図:179条1項の板
- 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する
- ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない
条文民法179条1項
民法第179条1項 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
ここでは、BがEから建物を買ったとき、建物に従う借地権もBに来て、土地所有権と同じBの手にそろいます。ただ、土地がAの抵当権の目的になっている以上、179条1項のただし書に当たって、借地権は混同で消えません。消してしまうと、Aは、借地権の負担付きで値踏みした土地を、更地として売れてしまい、思わぬ得をするからです。では、残った借地権は、買い受けたCにも通用するのでしょうか。契約の相手ではない第三者にも自分の権利を主張するための条件を、対抗要件と言います。借地権なら、その登記か、借地の上の自分名義の建物の登記です。これを、Aの抵当権の設定登記より前に備えていれば、実行の後もCに対抗できます。「不成立」は「建物を壊す」ことを意味しません。
では、これで話は終わりでしょうか
図:例外の場面板
- 土地2番抵当と同じ場面で、Aの1番抵当権が競売より前に弁済または解除で消滅している
- その後Fの2番抵当権が実行され、土地が競売されCが買い受ける
実は、そこにもう1つ判例があります。Aの1番抵当権が、弁済や設定契約の解除などで、競売より前にすでに消滅していた場合です。
判例最高裁判所第二小法廷判決 平成19年7月6日
1番抵当権が競売より前に消えていた場合の判例 土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立するというべきである。
この判決は、甲、つまり先順位の抵当権が、設定契約の解除によって消滅し、そのあとで、乙、つまり後順位の抵当権が実行された場合を扱っています。判決の理由づけは「抵当権は被担保債権を担保する限度でしか存続しない」という抵当権の性質そのものに向けられています。消える原因が弁済でも、同じ理由がそのまま当てはまります。この場合は、2番を基準にして、法定地上権が成立します。理由は2つあります。1つ目、抵当権は、被担保債権を担保する目的の限度でしか存続しません。1番が弁済や解除でいずれ消えることは、抵当権である以上、当然にありうることです。Fは、2番の抵当権を設定するとき、そのことをあらかじめ織り込んで、値踏みすべき立場にありました。
だから、成立させてもFに不意打ちはありません。2つ目、競売のときにはもうAの1番抵当権は存在しません。守るべきAが、そこにはもういないんです。これで、土地の抵当権についてのルールが、1本にまとまります。競売によって消える抵当権のうち、いちばん順位が上の抵当権の設定当時を基準にする。1番が残っていれば1番、1番が先に消えていれば2番です。
建物の2番抵当は、2番が基準
図:建物2番抵当の場面板
- EがAに1番(建物)を設定した時点では、土地はB、建物はE
- その後BがEに土地を売り、Eが土地・建物を両方持つ
- そこでEがFに2番(建物)を設定
- 建物が競売されCが買い受ける
今度は、同じことが建物で起きた場合です。Eの建物にAの1番抵当権が付いたとき、土地はB、建物はEの別人所有でした。その後、BがEに土地を売り、Eが土地と建物の両方の持ち主になりました。そこでEは、同じ建物に、Fの2番抵当権を付けます。ここで、判例の結論を聞いてください。
図:建物2番抵当の結論の板
- 建物の抵当権は、2番抵当権の設定当時を基準にする=法定地上権は成立する
- 成立しても、2番のFはもちろん、1番のAも害されない
- 借地権より強い地上権が付いた建物は、むしろ高く売れる
判例大判昭和14年7月26日/判旨の要旨
建物の2番抵当権の場合の判例 建物に設定された1番抵当権の設定当時は土地と建物の所有者が異なっていたが、2番抵当権の設定当時には同一の所有者に属していた場合、建物の抵当権が実行されれば、建物の買受人のために法定地上権が成立する。
建物の抵当権については、2番抵当権を基準にして、法定地上権の成立を認めます。判例の立場です。土地の場合とは、正反対の結論です。理由を考えると、逆転する仕組みが見えてきます。建物の抵当権については、2番を基準にして成立させても、2番のFはもちろん、1番のAも困りません。それどころか、借地権よりも強い利用権、つまり地上権が付いた建物のほうが、高く売れます。Aにとっても、むしろありがたい話です。ここで、1つ確認しておきたいことがあります。前回、抵当権が1つの場面で、「設定後に同一人所有になっても不成立」という結論を見ましたね。
今日の建物の場面は、あれと矛盾しているように見えるかもしれません。でも、違います。前回は、抵当権が1つ、Aだけの場面でした。今回は、同一人所有になったあとで、さらにFの2番抵当権が新しく設定された場面です。建物なら成立させても、誰も困らないはずですよね。抵当権が1つのときも、成立させてよいのではありませんか。そこが分かれ目です。388条が求めるのは、抵当権の設定当時に、土地と建物が同じ持ち主のものだったことでした。抵当権がAの1つだけなら、その設定当時は別人所有です。条文の要件を満たす時点が、どこにもありません。だから、誰も困らなくても不成立のままです。2番が付くと、Fの設定当時という、要件を満たす時点が新しく生まれます。そこで初めて、1番と2番のどちらで測るかが問題になります。建物ではAが困らないので、Fの設定当時で測ってよい、となるんです。
土地と建物で、なぜ逆になるのか
図:一本の軸の板
- 土地と建物を比較する
- 法定地上権が成立すると、その抵当権者は損をするか、得をするか
- 土地の抵当権者=土地の価値が下がる=損
- だから損をする1番を守るため1番基準
- 建物の抵当権者=建物の価値が上がる=得
- 誰も損をしないので2番基準で成立させてよい
ここまでの2つの場面を、1本の軸でまとめます。「法定地上権が成立すると、その抵当権者は損をするか、得をするか」です。たとえば、前に見た数字で考えます。更地ならば1億円の土地に地上権が付くと、土地の値打ちは、2千万円から3千万円ほどに下がり、残りの7千万円から8千万円ほどは、建物の側に移ります。土地の抵当権者にとって、法定地上権が成立すると、土地の価値は下がります。損をします。だから、損をする1番の抵当権者を守るために、1番を基準にします。建物の抵当権者にとって、法定地上権が成立すると、建物の価値は上がります。得をします。誰も損をしないので、2番を基準にして、成立させてよいんです。
Fが設定を受けたとき、土地と建物はもうBのもの、同一人所有でした。Fは、法定地上権が付くかもしれない土地として、はじめから値踏みできた立場です。成立しても、Fの見込みは崩れません。崩れるのは、別人所有の土地として値踏みしたAだけです。損か得かは、設定したときの値踏みと比べて測ります。値踏みより下がる人がいれば、その人の設定当時を基準にするんです。害される側、つまり損をする抵当権者の設定当時を基準にする。この一言に尽きます。土地でも建物でも、この軸は変わりません。
設定のあとで、別人所有になったら
図:設定後別人所有の場面板
- 設定当時、Bが土地と建物を両方持っている
- Bは土地にAの抵当権を設定する
- その後Bは建物をEに売り、土地と建物が別人所有になる
- 土地の抵当権が実行されCが買い受ける
もう1つ、逆の順番の場面も見ておきます。設定当時、Bが土地と建物の両方を持っていて、Bが土地にAの抵当権を設定します。設定の時点では、要件②を満たしています。その後、Bが建物をEに売り、土地と建物が別人所有になりました。土地の抵当権が実行され、Cが買い受けます。
図:設定後別人所有の結論の板
- この場合は法定地上権が成立する
- 設定当時に同一人所有であれば、抵当権者は法定地上権が発生しうることをすでに織り込んで評価している
- その後の所有者の変動は、その評価を狂わせない
判例大連判大正12年12月14日/判旨の要旨
設定後に別人所有となった場合の判例 抵当権設定当時に土地と建物が同一の所有者に属していれば、その後に土地と建物が別人の所有となっても、抵当権の実行により法定地上権が成立する。
設定のときは同一人所有だったのに、その後で別々になってしまうんですね。逆に不成立になったりしませんか。成立します。判例の考え方です。理由は、設定当時の評価にさかのぼります。Aが抵当権を設定したとき、土地と建物は同一人所有、Bの持ち物でした。この時点でAは、いずれ所有者が分かれて法定地上権が発生するかもしれないことを、あらかじめ織り込んで評価しています。だから、その後にBが建物を売って所有者が分かれても、Aの評価そのものは、最初から崩れていません。だから成立させても、Aは困らないんです。今日見たすべての場面は、同じ1つの問い、「誰の評価を、あとから崩すことになるか」で説明できます。
今日の判断を、1枚の表に
図:判断表
- 4つの場面を区別する
- 1つの抵当権・別人所有→設定後同一人所有=不成立(抵当権が1つだけの場面)
- 土地・1番別人所有→2番同一人所有=不成立(1番消滅後の実行は成立)
- 建物・1番別人所有→2番同一人所有=成立
- 同一人所有→設定後別人所有=成立
- 共通の問い=法定地上権が成立すると、この抵当権者は損をするか、得をするか
今日見た場面を、1枚の表にまとめます。抵当権が1つで、設定当時は別人所有、あとで同一人所有になった場合は、前回見たとおり不成立です。条文が求める設定当時の同一が、どの時点にもないからです。土地に1番・2番があって、1番は別人所有、2番は同一人所有のときは、1番を基準にして不成立。Aの評価を守るためです。ただし、1番がすでに消えたあとの実行なら、守るべきAがいないので、2番を基準にして成立します。建物に1番・2番があって、同じように1番は別人所有、2番は同一人所有のときは、2番を基準にして成立します。成立させてもAもFも困らないからです。設定当時は同一人所有で、そのあとに別人所有となった場合は、成立します。設定当時のAの評価に、すでに織り込み済みだからです。
表の形は増えても、考え方は1つです。
今日の答えを、もう一度
図:まとめ板
- 冒頭の場面、AはBの土地に別人所有の時点で1番抵当権を設定し、Fは同一人所有になった後で2番抵当権を設定した
- 土地の抵当権なので1番のAを基準にし、法定地上権は成立しない
- Eの借地権が対抗要件を備えていれば、建物は壊されず残る
冒頭の問いに戻ります。Aが1番の抵当権の設定を受けたとき、土地はB、建物はEの別人所有でした。その後、Fが2番の抵当権の設定を受けたときは、すでに土地も建物もBの同一人所有でした。この場面は、土地の抵当権です。だから、1番のAを基準にして、法定地上権は成立しません。今日押さえてほしいのは1点だけです。抵当権が2つあるときは、「法定地上権が成立すると、その抵当権者は損をするか得をするか」を考えて、損をする側の設定当時を基準にします。今日までは、土地や建物の持ち主が、いつも1人でした。
参照条文
- 民法388条前段
- 民法179条1項