民法ゼロから民法#127

共有と法定地上権・一括競売

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第3章 担保物権 #127/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

前回の続きを、思い出してください

冒頭の場面板。土地はBとGの共有。その土地の上にBが1人で家を建てている。Bは土地の自分の持分にAの抵当権を付けた(Gには相談していない)。返済が滞り、Bの持分が競売されCが買い受けた。 図:冒頭の場面板

  • 土地はBとGの共有
  • その土地の上にBが1人で家を建てている
  • Bは土地の自分の持分にAの抵当権を付けた(Gには相談していない)
  • 返済が滞り、Bの持分が競売されCが買い受けた

前回の最後に、1つ宿題を残しました。覚えていますか。今日までの話は、土地や建物の持ち主が、いつも1人でした。もし共有だったら、法定地上権はどうなるか、でした。今日はその場面を見ていきます。土地は、BとGの2人が共有しています。その土地の上に、Bが1人で自分のお金だけで家を建てました。Bはお金を借りるため、土地の自分の持分に、銀行Aの抵当権を付けます。Gには一言も相談していません。理由はこのあと確かめます。返済が滞り、Bの持分が競売されて、Cが買い受けました。Bの家のために、法定地上権は成立するでしょうか。先に答えを言っておきます。土地が共有のこの場面は、成立しません。ところが、共有なのが建物のほうなら、今度は成立します。分かれ目は、抵当権の設定に関わっていないGが、損をするかどうかです。

持分は自分だけで動かせる、だから起きること

共有の復習板。持分は各共有者が単独で自由に処分できる(249条以下)。土地全体に地上権・抵当権などの負担を付けると、他の共有者の持分にも負担が及ぶので、共有者全員の同意が要る。持分への抵当権設定は「処分」に当たるので、その持分の持ち主が1人でできる。 図:共有の復習板

  • 持分は各共有者が単独で自由に処分できる(249条以下)
  • 土地全体に地上権・抵当権などの負担を付けると、他の共有者の持分にも負担が及ぶので、共有者全員の同意が要る
  • 持分への抵当権設定は「処分」に当たるので、その持分の持ち主が1人でできる

大いに関係があります。持分は、各共有者が単独で自由に処分できましたね。一方で、土地全体に地上権や抵当権のような負担を付けるとなると、他の共有者の持分にまで負担が及びます。だから、共有者全員の同意が要ります。自分の持分に抵当権を付けるのは、持分の「処分」に当たります。だから、その持分の持ち主が1人でできてしまいます。他の共有者の持分には、何の負担も付けていないからです。ここに、今日のテーマが生まれます。持分への抵当権設定は1人でできてしまう。だから、抵当権の設定に、まったく関わっていない共有者が必ず生まれます。冒頭の場面なら、Gです。

もう一人の共有者を、これからGと呼びます。このGを、法定地上権の成否でどう扱うか。これが今日いちばんの問いです。

土地が共有だと、なぜ成立しないのか

土地共有の場面板。土地はBとGの共有、建物はBの単独所有。Bが土地のB持分にAの抵当権を設定し、実行されてCが買い受ける。結論=法定地上権は成立しない。 図:土地共有の場面板

  • 土地はBとGの共有、建物はBの単独所有
  • Bが土地のB持分にAの抵当権を設定し、実行されてCが買い受ける
  • 結論=法定地上権は成立しない

冒頭の場面を、もう一度整理します。土地はBとGの共有、建物はBの単独所有です。Bが、土地の自分の持分にAの抵当権を付け、実行されてCが買い受けました。この場面については、判例があります。

判例最判昭29・12・23 民集8巻12号2235頁

土地が共有の場合の判例 共有地全体に対する地上権は共有者全員の負担となるのであるから、共有地全体に対する地上権の設定には共有者全員の同意を必要とする……この理は民法三八八条のいわゆる法定地上権についても同様であり……当該共有土地については地上権を設定したと看做すべきでないものといわなければならない。

判例は、法定地上権の成立を否定しました。理由を、庭にたとえて考えてみます。BとGが半分ずつ持っている庭があり、その隅にBが自分のお金だけで物置を建てたと考えてください。Bは、庭の自分の持分だけを担保に借金をしました。ここまでは、Gの財布に何の影響もありません。ところが、法定地上権が成立すると、物置のために庭を使い続ける強い権利が、庭全体に乗っかります。この権利が付いた庭は、更地の庭より安くしか売れません。Gは、Bが自分の判断でした借金の尻拭いを、自分の財産が目減りするという形で、同意もなく押し付けられることになります。だから、成立させません。判例の言葉で言えば、地上権は共有地全体の負担になります。共有物全体に負担を付けるには、さっき確認したとおり、共有者全員の同意が要ります。Gの同意が無い以上、法律がみなして付けることもできない、ということです。Bが土地ではなく建物に抵当権を付けた場合も、同じ理由で成立しないと解されています。庭の値打ちが下がってGが損をする、という構造は変わらないからです。

建物が共有だと、どうなると思いますか

予告板。土地が共有なら不成立でした。では建物のほうが共有だったら、結論はどうなるでしょうか。 図:予告板

  • 土地が共有なら不成立でした
  • では建物のほうが共有だったら、結論はどうなるでしょうか

ここで、少し考えてみてください。土地が共有なら、不成立でした。では、共有なのが建物のほうだったら、結論はどうなると思いますか。損をするのは土地の側で、建物の共有者は損をしない。その読みが当たっているか、結論を見てみましょう。

建物が共有だと、なぜ成立するのか

建物共有の場面板。土地はBの単独所有、建物はBとGの共有。Bが土地にAの抵当権を設定し、実行されてCが土地を買い受ける(判例の事案)。建物のB持分に抵当権を設定した場合も、同じ理由で成立すると解されている。結論=法定地上権は成立する。 図:建物共有の場面板

  • 土地はBの単独所有、建物はBとGの共有
  • Bが土地にAの抵当権を設定し、実行されてCが土地を買い受ける(判例の事案)
  • 建物のB持分に抵当権を設定した場合も、同じ理由で成立すると解されている
  • 結論=法定地上権は成立する

今度は逆に、土地はBの単独所有、建物はBとGの共有です。判例の事案では、Bは土地のほうにAの抵当権を付け、実行されてCが土地を買い受けました。この場面について、判例があります。

判例最判昭46・12・21 民集25巻9号1610頁

建物が共有の場合の判例 建物の共有者の一人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合においては、同人は、自己のみならず他の建物共有者のためにも右土地の利用を認めているものというべきであるから、同人が右土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が右土地を競落したときは、民法三八八条の趣旨により、抵当権設定当時に同人が土地および建物を単独で所有していた場合と同様、右土地に法定地上権が成立するものと解するのが相当である。

判例は、成立を認めました。「右土地」はその土地、「競落」は競売で買い受けること、という意味です。理由は、さっきの庭のたとえで言い直せます。今度は、物置のほうをBとGが共同で建てていた場合です。土地を1人で持っているBは、自分だけでなく、物置の共有者Gのためにも、その庭を使わせているのと同じだ、と判例は見ています。成立すると、庭の値打ちは下がります。でも、その庭を持っているのはB本人で、B自身が抵当権を付けたのですから、その不利益は自分で引き受けたものです。庭を買い受けたCも、物置の建っている庭だと分かって値踏みして買っているので、覚悟のうえです。Gは物置の共有者として、庭を使い続けられる強い権利を手に入れる側です。

成立しても、思わぬ損を押し付けられる人が、どこにもいないんです。建物のBの持分に抵当権を設定した場合も、同じ理由で成立すると解されています。

土地も建物も共有だと、どうなるのか

両方共有の場面板(人数を減らした設例)。土地はBとGの共有(GはBの家族)、建物はBとBのきょうだいたちの共有。土地の共有者B・Gが、Bの借金の担保として、共同でそれぞれの持分にAの抵当権を設定し、実行されてCが土地全体を買い受ける。結論=法定地上権は原則不成立。 図:両方共有の場面板

  • 人数を減らした設例
  • 土地はBとGの共有(GはBの家族)、建物はBとBのきょうだいたちの共有。土地の共有者B・Gが、Bの借金の担保として、共同でそれぞれの持分にAの抵当権を設定し、実行されてCが土地全体を買い受ける。結論=法定地上権は原則不成立。

最後に、土地も建物も共有の場面です。実際の判例の事案は人数がもっと多いので、骨格を残して人数を減らした設例で説明します。土地はBとGの共有です。GはBの家族です。建物のほうは、Bと、Bのきょうだいたちの共有です。今度は、Bの借金の担保として、BだけでなくGも、自分の持分にAの抵当権を設定しました。BとGが共同で設定したわけです。実行されて、Cが土地全体を買い受けました。Gも設定に加わっている、というところが、この場面の1番のポイントです。判例を見てみましょう。

判例最判平6・12・20 民集48巻8号1470頁

土地・建物とも共有の場合の判例 土地共有者の一人だけについて民法三八八条本文により地上権を設定したものとみなすべき事由が生じたとしても、他の共有者らがその持分に基づく土地に対する使用収益権を事実上放棄し、右土地共有者の処分にゆだねていたことなどにより法定地上権の発生をあらかじめ容認していたとみることができるような特段の事情がある場合でない限り、共有土地について法定地上権は成立しないといわなければならない

判例は、原則として成立を否定しました。ただし、「特段の事情がある場合でない限り」という限定が付いています。Gも抵当権の設定に加わっているのに、それでも成立しないんですか。そこが今日いちばん深いところです。Gが同意したのは、庭の自分の持分を担保に差し出すことです。でも、それは「担保に入れた庭に、あとから物置のための強い権利が生えて、庭がさらに安くなること」まで同意したことにはなりません。担保にする話と、地上権という負担を背負う話は、別の話です。判決の言葉も確かめます。「使用収益権」は、土地を自分で使ったり、貸して収入を得たりする権利です。判例が例に挙げるのは、Gがその権利を事実上手放し、土地の扱いをBに任せきっていた、というような場合です。そこまでの事情があって初めて、Gは地上権が付くことまで受け入れていた、と見られます。

理由はもう1つあります。「Gが実は容認していた」というような家族関係や内輪の事情は、登記簿を見ても外からは分かりません。もしそれで成否が変わってしまうと、買受人や後順位の抵当権者、一般の債権者の予測を裏切ることになり、競売の手続そのものが不安定になります。だから、「特段の事情」は、外から見て分かる客観的な事実がある場合に限られます。土地が共有である以上、Gが損をするという土地共有の側面は消えません。建物も共有であることは、この結論を変えないんです。

3つをつなぐ一本の軸

一本の軸の板。法定地上権が成立すると、抵当権の設定に関わっていない共有者Gは損をするか、得をするか。土地が共有=Gの持分の値打ちが下がる=損=不成立。建物が共有=Gは土地を使い続ける権利を得る側=得=成立。両方共有=土地共有の側面が残る限りGは損=原則不成立。前回の軸「その抵当権者は損か得か」と同じ形の問い。 図:一本の軸の板

  • 法定地上権が成立すると、抵当権の設定に関わっていない共有者Gは損をするか、得をするか
  • 土地が共有=Gの持分の値打ちが下がる=損=不成立
  • 建物が共有=Gは土地を使い続ける権利を得る側=得=成立
  • 両方共有=土地共有の側面が残る限りGは損=原則不成立
  • 前回の軸「その抵当権者は損か得か」と同じ形の問い

3つの場面を、1本の軸でまとめます。「法定地上権が成立すると、抵当権の設定に関わっていない共有者Gは、損をするか、得をするか」です。土地が共有なら、Gの持分の値打ちが下がる。損をするから、不成立。建物が共有なら、Gは庭を使い続ける権利を得る側。得をするだけだから、成立。両方共有なら、土地共有の側面が残る限り、Gは損をする。だから原則不成立です。前回は、「法定地上権が成立すると、その抵当権者は損をするか得をするか」を基準に、損をする抵当権者の設定当時を選びました。今回は、主語が抵当権者から、抵当権の設定に関わっていない共有者に変わっただけです。

丸暗記ではなく、いつも「損をするのは誰か」を考え直すこと。これが2回にわたって見てきた軸です。前回、2番抵当でも、条件がそろえば法定地上権が成立し得ることを見ましたね。今回、土地と建物の両方に抵当権が設定されていたら、結論はどうなるでしょうか?

要件③、抵当権は土地と建物の両方でもよい

要件③の場面板。Bが所有する土地と建物の双方にAの抵当権を設定し、実行されて土地はC、建物は別の買受人が買い受けた。建物の買受人のために法定地上権が成立する。(最判昭37・9・4) 図:要件③の場面板

  • Bが所有する土地と建物の双方にAの抵当権を設定し、実行されて土地はC、建物は別の買受人が買い受けた
  • 建物の買受人のために法定地上権が成立する
  • (最判昭37・9・4)

要件③は、土地か建物の少なくとも一方に抵当権が付いていること、でした。土地だけ、建物だけに付いた場合に加えて、土地と建物の両方に抵当権が付いた場合、つまり共同抵当の場合でも、この要件を満たします。Bが持つ土地と建物の両方にAの抵当権を設定し、実行されて、土地はC、建物は別の買受人が買い受けたとします。この場合、建物の買受人のために法定地上権が成立します。法定地上権の趣旨は、建物を取り壊さずに済ませることでした。両方に抵当権が付いていても、土地と建物を別々の人が買い受ければ、建物の持ち主には土地を使う権利がありません。建物が取り壊されるおそれは、片方だけに付いた場合と同じです。だから、この趣旨がそのまま当てはまります。

前回の、1番か2番かという話は、ここでは関係しないんですか。関係しません。要件③が問うのは、土地か建物に抵当権が付いたかどうか、それだけです。先に登記された1番か、後から登記された2番かという順位は、前回見たとおり、要件②の「設定当時」を、どの抵当権で見るかの話でした。要件③の段階では、順位は問題になりません。

要件④、競売は強制競売でもよい

要件④の板。要件④「競売の結果、所有者が異なるに至ったこと」は、抵当権の実行としての競売だけでなく、他の債権者の申立てによる強制競売でも満たす。(大判大3・4・14)。当事者どうしの任意売却では要件④を満たさない。 図:要件④の板

  • 要件④「競売の結果、所有者が異なるに至ったこと」は、抵当権の実行としての競売だけでなく、他の債権者の申立てによる強制競売でも満たす
  • (大判大3・4・14)
  • 当事者どうしの任意売却では要件④を満たさない

要件④は、競売が行われて、土地と建物の持ち主が別々の人になること、でした。この競売には、抵当権の実行としての競売だけでなく、抵当権者ではない他の債権者が申し立てた強制競売も含まれます。強制競売でも、売却されれば、土地に付いていたAの抵当権は消えます。抵当権の実行の回で見た仕組みです。抵当権が実行されたのと同じ結果になるので、要件④を満たします。逆に、当事者が普通に土地や建物を売買する任意売却では、要件④を満たしません。388条は「その実行により」所有者が異なるに至ったときと定めているからです。競売という手続を経ることが条文上求められています。

法定地上権の中身、有償で、対抗要件が要る

388条後段の板。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。地代はまず当事者の協議で決め、調わなければ裁判所が定める。法定地上権は無償ではなく有償。 図:388条後段の板

  • この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める
  • 地代はまず当事者の協議で決め、調わなければ裁判所が定める
  • 法定地上権は無償ではなく有償

条文民法388条後段

民法第388条後段 この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

ここまでで、法定地上権が成立するかどうかを見てきました。ここからは、成立した法定地上権の中身です。388条の後段を見てください。地代は、当事者の請求によって裁判所が定める、とあります。法定地上権は、無償ではなく有償です。まず当事者どうしの協議で地代を決め、それが調わなければ、当事者の請求で裁判所が定めます。

存続期間の板。法定地上権も「建物の所有を目的とする地上権」であり、借地借家法上の借地権に当たるので、借地借家法3条がそのまま適用される。協議で存続期間を決めなければ30年。 図:存続期間の板

  • 法定地上権も「建物の所有を目的とする地上権」であり、借地借家法上の借地権に当たるので、借地借家法3条がそのまま適用される
  • 協議で存続期間を決めなければ30年

条文借地借家法3条

借地借家法第3条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

存続期間はどうでしょうか。法定地上権も、建物を持つための地上権である以上、借地借家法上の借地権に当たります。だから、借地借家法3条がそのまま適用されます。協議で存続期間を決めなければ、30年です。契約でこれより長い期間を定めれば、その期間になります。

対抗要件の板。法定地上権も物権であり、第三者に対抗するには対抗要件が要る。地上権の登記(177条)、または借地借家法10条1項による建物の登記のどちらかがあればよい。 図:対抗要件の板

  • 法定地上権も物権であり、第三者に対抗するには対抗要件が要る
  • 地上権の登記(177条)、または借地借家法10条1項による建物の登記のどちらかがあればよい

法定地上権も、契約で生まれる地上権と同じ物権です。第三者に対抗するには、対抗要件が要ります。地上権の登記のほかに、もう1つ道があります。借地借家法10条1項です。

条文借地借家法10条1項

借地借家法第10条第1項 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

土地の上に、自分名義で登記した建物を持っていれば、地上権自体の登記がなくても対抗できます。具体例で確認します。Bの土地に抵当権が実行されて、Cが土地の買受人になり、建物の持ち主Bのために法定地上権が成立したとします。その後、Cがこの土地を、さらに別の人に売ったとします。地上権の登記か、建物の登記のどちらかを、あらかじめ備えていれば対抗できます。どちらも備えていなければ、新しい持ち主には対抗できません。

389条、一括競売で建物を守る

一括競売の場面板。Bの更地にBがAの抵当権を設定した後、その土地に建物が建てられた(Bまたは土地を借りたEが建てる)。要件①を欠くため法定地上権は成立しない。Aは土地と一緒に建物も競売できるが、優先弁済は土地の代金からだけ。 図:一括競売の場面板

  • Bの更地にBがAの抵当権を設定した後、その土地に建物が建てられた(Bまたは土地を借りたEが建てる)
  • 要件①を欠くため法定地上権は成立しない
  • Aは土地と一緒に建物も競売できるが、優先弁済は土地の代金からだけ

最後に、成立しない場合の後始末を見ておきます。以前、更地に抵当権を設定した後で建物が建てられた場合、法定地上権は成立しない、という結論を見ましたね。法定地上権が成立しなければ、建物の所有者は、土地の買受人に建物を取り壊して土地を明け渡さなければなりません。でも、建物の取り壊しは、社会経済上の大きな損失です。

条文民法389条1項

民法第389条第1項 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

そこで389条1項は、抵当権者に、土地と一緒にその建物も競売できる道を用意しています。これを一括競売と呼びます。土地だけを競売すると、土地の買受人と建物の所有者が別々になり、また取り壊しの問題が起きかねません。一括競売なら、1人の買受人が土地と建物の両方を買い受けるので、取り壊さずに済みます。ただし、ただし書に注意してください。抵当権者が優先して弁済を受けられるのは、土地の代金からだけです。抵当権は、もともと土地にしか付いていないからです。建物の代金にまでは及びません。

条文民法389条2項

民法第389条第2項 前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

一括競売には要件もあります。建物の所有者が、抵当地の占有について、抵当権者に対抗できる権利を持っていないことです。建物は、抵当権を設定したB自身が建ててもいいですし、Bの土地を借りたEのような第三者が建てても構いません。どちらの場合も、対抗できる権利さえなければ、Aは土地と建物を一括で競売できます。

今日の判断を、1枚の地図に

まとめ板。冒頭の場面、土地はBとGの共有、建物はBの単独所有。土地の共有者Gは、法定地上権が成立すると損をするので、成立しない。要件①=建物の存在。要件②=設定当時に土地と建物が同一人所有(共有の場面は、設定に関わっていない共有者が損をするかで判断)。要件③=土地・建物いずれかまたは双方。要件④=競売(強制競売も含む)。成立後=有償・存続期間30年・対抗要件2類型。不成立の後始末=389条一括競売。 図:まとめ板

  • 冒頭の場面、土地はBとGの共有、建物はBの単独所有
  • 土地の共有者Gは、法定地上権が成立すると損をするので、成立しない
  • 要件①=建物の存在
  • 要件②=設定当時に土地と建物が同一人所有(共有の場面は、設定に関わっていない共有者が損をするかで判断)
  • 要件③=土地・建物いずれかまたは双方
  • 要件④=競売(強制競売も含む)
  • 成立後=有償・存続期間30年・対抗要件2類型
  • 不成立の後始末=389条一括競売

冒頭の問いに戻ります。土地はBとGの共有、建物はBの単独所有でした。Bが土地の自分の持分にAの抵当権を付け、実行されてCが買い受けました。抵当権の設定に関わっていないGは、成立すれば損をします。だから、法定地上権は成立しません。ここで、法定地上権の話全体を、1枚の地図にまとめます。要件①は、設定当時に建物が存在すること。要件②は、設定当時に土地と建物が同一人所有であること。今日見た共有は、この要件②の広がりでした。要件③は、抵当権が設定されたこと。土地だけ、建物だけでも、両方でも構いません。要件④は、競売の結果、所有者が異なるに至ったこと。抵当権の実行としての競売だけでなく、強制競売でも構いません。この4つが揃えば、法定地上権が成立します。成立すると、有償で、存続期間は30年、対抗要件は地上権の登記か建物の登記のどちらかです。要件①が欠けて成立しないときの後始末が、389条の一括競売でした。

丸暗記するのではなく、いつも、前回見た「誰の評価を、あとから崩すことになるか」と、今日の「誰が損をするか」を考え直す。これが、抵当権の実行と法定地上権の話、全体を貫く考え方です。

参照条文

  • 民法388条後段
  • 借地借家法3条
  • 借地借家法10条1項
  • 民法389条1項
  • 民法389条2項

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