民法ゼロから民法#147

譲渡担保と第三者

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第3章 担保物権 #147/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

土地を勝手に売られたら

冒頭の場面図。1000万円の土地を担保にAから100万円を借りているB。Bの吹き出し「返済の期限より前に、Aさんが土地を勝手に売ってしまった」。土地からDへ向かう矢印(transfer)。 図:冒頭の場面図

  • 1000万円の土地を担保にAから100万円を借りているB
  • 土地からDへ向かう矢印(transfer)

前回、1000万円の土地を担保に取っていたAさんから、100万円を借りたBさんが、返済すれば土地を取り戻せるという話を聞きました。もし、その返済の期限より前に、Aさんが土地を勝手に売ってしまっていたら、どうなるんですか。それが今日のテーマです。担保に取っていた人が、期限より前に目的物を第三者へ売ってしまうことがあります。逆に、担保に出したはずのBさんのほうが、勝手に第三者へ売ってしまうこともあります。誰が売ったかによって、結論は変わるんですか。変わります。さらに、いつ売ったか、つまり弁済期の前か後かによっても、結論が変わります。今日は、この「誰が」と「いつ」を組み合わせた場面を、順番に整理していきます。

4マスの地図

4マスの枠組みだけの表。縦軸=処分したのがAかBか。横軸=弁済期の前か後か。中身はまだ空欄。 図:4マスの枠組みだけの表

  • 縦軸=処分したのがAかBか
  • 横軸=弁済期の前か後か
  • 中身はまだ空欄

まず、枠組みを確認します。縦の軸は、処分したのがAさんかBさんか。横の軸は、それが弁済期の前か後かです。先に鍵を言っておくと、担保の実行がもう終わっているかどうかで、答えの決め方そのものが切り替わります。今日はこの4つのマスを、1つずつ埋めていきます。まずは、弁済期の前に、Aさんが土地を処分した場面からです。

弁済期前にAが処分した場合

①のマス。所有権的構成なら自己物売買として有効(善意悪意を問わない)。担保的構成なら他人物売買として原則無効(動産なら即時取得の余地)。根拠は古い大審院の判例。 図:①のマス

  • 所有権的構成なら自己物売買として有効(善意悪意を問わない)
  • 担保的構成なら他人物売買として原則無効(動産なら即時取得の余地)
  • 根拠は古い大審院の判例

Aさんが、弁済期より前に、土地を第三者Dさんに売ってしまいました。所有権的構成に立てば、契約書のうえで既にAさんが所有者ですから、Aさんが土地を売ることは、自分の物を売る自己物売買にあたります。この場合、Dさんは、Bさんが担保に入れていた事情を知っていたかどうかにかかわらず、有効に所有権を取得します。自己物売買である以上、そもそも他人の権利を害していません。この結論を支えているのが、古い時期の大審院の判例です。担保的構成に立てば、所有権は実質どおりBさんに残っています。Aさんが売ったのは、自分の物ではなく、他人のものになります。他人物売買は、それだけでは所有権を移す効力を持ちません。原則として、Dさんは所有権を取得できないことになります。

土地ではなく、前々回の機械のような動産だったとします。担保的構成のもとでも、Dさんが平穏かつ公然と占有を始め、Aさんの権利を疑うべき事情もなく信じていたのであれば、即時取得によって救済される余地があります。要件の細かい内容は、即時取得を扱った回で確認したとおりです。即時取得は動産に限られた制度なので、不動産では使えません。土地の場合、担保的構成に立つと、Dさんを救う道はかなり狭くなります。

弁済期後にAが処分した場合

②のマス。構成を問わず、譲受人が確定的に取得しBは受戻権を失う。譲受人の善意悪意・背信的悪意者かは問わない。理由=受戻権は実行完了まで、処分清算型は第三者への処分が実行完了時点にあたる。 図:②のマス

  • 構成を問わず、譲受人が確定的に取得しBは受戻権を失う
  • 譲受人の善意悪意・背信的悪意者かは問わない
  • 理由=受戻権は実行完了まで、処分清算型は第三者への処分が実行完了時点にあたる

前回見た受戻権、つまり、実行が終わるまでは借金の全額を払えば土地を取り戻せるBさんの権利が、消える2つのタイミング、覚えていますか?帰属清算型なら清算金の支払か提供、あるいは清算金が無いという通知まで。処分清算型なら、第三者に処分されるまで、でした。今日はその続きです。弁済期を過ぎたあとに、Aさんが土地を第三者Dさんに売ってしまった場合を考えます。これは、さっきの①とは何が違うんですか。大きく違います。①では、所有権的構成か担保的構成かで、結論が正反対に分かれていました。ところが弁済期後のこの場面では、どちらの構成に立っても、結論は同じです。Dさんは確定的に土地の所有権を取得し、Bさんは受戻権を失います。

前回確認したとおり、受戻権は、実行が終わるまでしか存在しない権利です。処分清算型では、第三者への処分こそが、実行が終わる瞬間にあたります。約束が帰属清算型だった場合も同じで、前回の判例のただし書きのとおり、Aさんが第三者に売った時点で、Bさんは受戻権を失います。受戻権が消えれば、Bさんにはもう、お金を払って土地を取り戻す道が残っていません。だから、この時点でDさんの取得が確定します。ここでもし、Dさんが事情を知っていたかどうかで結論を変えてしまうと、実行がいつ終わったのかが、後から人の内心しだいでひっくり返ることになります。

担保という制度は、いつかは必ず関係を終わらせる制度です。その終わらせ方を、譲受人の主観のような、外からは分からない事情に左右させるわけにはいきません。だから判例は、弁済期後にAさんが処分した場合、譲受人が善意か悪意か、さらにはいわゆる背信的悪意者にあたるかどうかさえ、問わないとしています。

⭐ 論文で書く規範:弁済期後の譲渡担保権者による処分の効力(規範) 弁済期の経過後に譲渡担保権者が目的物を第三者に譲渡した場合、譲受人が善意であるか悪意であるか、いわゆる背信的悪意者に当たるかどうかを問わず、譲受人は確定的に所有権を取得し、設定者は受戻権を失う。 (出どころ=判例型(最判平成6年2月22日))

弁済期を過ぎてからAさんに売ってもらった以上、たとえDさんがBさんを困らせる目的で買ったのだとしても、土地は確定的にDさんのものになります。背信的悪意者は、177条の回で見た、嫌がらせなどの目的で入り、信義則上、相手の登記の無さを言い立てられない人です。ただ、ここでの話は177条の対抗問題とは別物です。177条の場面は、権利変動そのものは成立していて、あとは誰が先に登記を備えたかを競う話でした。今日のこの場面は、担保の実行が完了したかどうかという、もっと手前の話です。実行が完了した以上、対抗問題を持ち出すまでもなく、Dさんの取得は確定します。

受戻し後にAが処分した場合

4マスの外側の場面。Bが弁済して実質的な所有権は戻っているが、登記名義はまだAに残っている。その間にAが第三者Dへ譲渡すると、177条の対抗問題として扱われる。背信的悪意者なら例外的にBが対抗できる。 図:4マスの外側の場面

  • Bが弁済して実質的な所有権は戻っているが、登記名義はまだAに残っている
  • その間にAが第三者Dへ譲渡すると、177条の対抗問題として扱われる
  • 背信的悪意者なら例外的にBが対抗できる

弁済が終われば、実質的には土地の所有権は、もうBさんに戻っています。ただ、登記の名義は、まだAさんに残っていることがあります。この状態で、Aさんが土地を第三者Dさんに売ってしまうと、また別の場面になります。さっきの①や②とは、違う場面なんですか。違います。①と②は、まだ担保の関係が続いている場面でした。この場面は、担保の関係がもう終わったあとの、いわば二重譲渡に似た対抗問題です。前々回、判例は場面ごとに使い分けているという例として、この判例に軽く触れました。今日はその中身を見ます。

判例最判昭62・11・12

受戻し後の譲渡と対抗要件 不動産が譲渡担保の目的とされ、設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記が経由された場合において、被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは、右第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合は格別、そうでない限り、譲渡担保設定者は、登記がなければ、その所有権を右第三者に対抗することができない

登記が無い以上、177条の対抗問題として扱われます。ただし、Dさんがいわゆる背信的悪意者にあたる場合は別です。その場合は、Bさんは登記が無くても、自分の所有権をDさんに対抗できます。

⭐ 論文で書く規範:受戻し後の譲渡と対抗要件(規範) 被担保債務の弁済等によって譲渡担保権が消滅した後に、譲渡担保権者が目的不動産を第三者に譲渡した場合、譲受人が背信的悪意者に当たらない限り、設定者は登記がなければその所有権を譲受人に対抗することができない。 (出どころ=判例型(最判昭和62年11月12日))

②は、まだ担保が実行されている最中の場面で、実行を画一的に終わらせる要請が優先されました。この場面は、担保の関係が既に終わったあとの、普通の対抗問題です。177条の枠組みがそのまま働くので、背信的悪意者の法理もまた生きています。今度はBさんが勝ちます。担保の関係はもう終わっていて、普通の対抗問題になるので、Bさんを困らせる目的で買ったようなDさんは、背信的悪意者として、Bさんの登記が無いことを言い立てられません。ここで少し振り返ります。①では、Aさんが弁済期前に処分した場合を見ました。所有権的構成では、Aさんの処分は自己物売買として有効でした。①とこれから見る③、Bさんが弁済期前に処分した場合、所有権的構成での結論はどちらが逆になるでしょうか?

考えてみます。Aさんが所有者だとすると、逆にBさんは無権利者になりますよね。だとすると、③ではBさんの処分は他人物売買になって、原則、第三者は取得できなくなりそうです。それでは、実際に③を見ていきましょう。

弁済期前にBが処分した場合

③のマス。所有権的構成なら他人物売買として原則無効(不動産未登記=二重譲渡類似の対抗問題・既登記=94条2項類推の余地、動産占有改定前=二重譲渡類似の対抗問題・改定後=即時取得の余地)。担保的構成なら自己物売買として有効(担保付きのまま譲受人が取得)。 図:③のマス

  • 所有権的構成なら他人物売買として原則無効(不動産未登記=二重譲渡類似の対抗問題・既登記=94条2項類推の余地、動産占有改定前=二重譲渡類似の対抗問題・改定後=即時取得の余地)
  • 担保的構成なら自己物売買として有効(担保付きのまま譲受人が取得)

弁済期の前に、Bさんが土地を、第三者Fさんに売ってしまった場合です。所有権はAさんに移っているので、Bさんが売ったのは他人のものになります。ただし、不動産の場合、Aさんへの所有権移転の登記が済んでいるかどうかで、扱いが変わります。譲渡担保の登記がまだ済んでいなければ、AさんとFさんは、実質、同じ土地について二重に権利を主張し合う関係になります。

条文民法177条

民法第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

不動産の物権変動は、登記をしなければ第三者に対抗できません。Aさんも、Fさんも、まだ登記を備えていない段階であれば、先に登記を備えたほうが優先します。Aさんが既に登記を備えていたなら、対抗の勝負にはなりません。Bさんの処分は、はっきりと他人物売買になります。原則として、Fさんは所有権を取得できません。ただし、94条2項は、以前の回で見たとおり、本当の持ち主が嘘の外観に責められるだけの関わりを持っていれば、それを信じた第三者を守る規定です。Aさんの登記そのものは、Bさんが所有者だという外観にはなりません。ここで外観になりうるのは、Aさんの登記のあと、Bさんが無断でB名義に登記を戻すなどして虚偽の外観を作り、Aさんがそれを知りながら放置していた場合です。Fさんが、そのB名義の登記を信じていたのなら、94条2項を類推して、Fさんが保護される余地があります。

動産の場合、177条ではなく178条の話になります。Bさんが機械を工場で使い続けたまま、以後はAさんのために持つことにする、この占有改定によってAさんが対抗要件を備える前なら、AさんとFさんは、やはり二重譲渡に似た対抗関係に立ちます。占有改定が既に済んでいれば、Bさんの処分ははっきり他人物売買になりますが、Fさんが実際に機械の引渡しを受けていれば、即時取得によって救済される余地があります。担保的構成なら、Bさんはまだ自分の権利、担保の負担が付いた所有権を持っています。だから、Bさんの処分は、自分の物を売る自己物売買として、そのまま有効です。ただし、Fさんが手に入れるのは、Aさんの譲渡担保が付いたままの土地です。Bさんが弁済しなければ、Aさんは変わらず担保を実行できます。

一般債権者の差押え

④のマス。設定者Bの一般債権者Gが機械を差し押さえた場合、Aは第三者異議の訴え(民事執行法38条)を提起できる。譲渡担保権者Aの一般債権者が差し押さえた場合、弁済期前ならBは受け戻して排除できる/弁済期後は差押え後に弁済しても排除できない(最判平18・10・20)。 図:④のマス

  • 設定者Bの一般債権者Gが機械を差し押さえた場合、Aは第三者異議の訴え(民事執行法38条)を提起できる
  • 譲渡担保権者Aの一般債権者が差し押さえた場合、弁済期前ならBは受け戻して排除できる/弁済期後は差押え後に弁済しても排除できない(最判平18・10・20)

一般債権者が差し押さえてくる場合は、どうなるんですか。ここは2つの場面があります。まずは、Bさんの一般債権者Gさんが、機械をBさんの財産として差し押さえてきた場合です。判例の所有権的構成では、実質はAさんに所有権が移っていますから、Aさんは、譲渡担保権者という立場に基づいて、この差押えを排除できます。使う手段は、第三者異議の訴えです。差押えの対象が、実は債務者の物ではないと主張して、その強制執行を排除してもらう訴えです。Aさんが譲渡担保権者という立場に基づいて、この訴えを起こせる、という結論を、今日は押さえておいてください。

もう1つは、逆にAさんの一般債権者が、土地をAさんの財産として差し押さえてくる場合です。前々回、弁済期の前なら、Bさんが受け戻せば差押えを退けられる、というところまで見ました。弁済期を過ぎてから差し押さえられた場合は、判例は、Bさんがそのあと全額を返しても、第三者異議の訴えで差押えを退けることはできない、としています。弁済期を過ぎれば、Aさんは土地を処分できる立場にあるので、②と同じく、受け戻せる時間はもう終わっている、と見るわけです。

4つの場面をまとめて見る

完成版の対比表。縦軸=A処分/B処分、横軸=弁済期前/弁済期後。①弁済期前・A処分=所有権的構成なら自己物売買・有効/担保的構成なら他人物売買・原則無効。②弁済期後・A処分=構成を問わず確定的にD取得・B受戻権喪失。③弁済期前・B処分=所有権的構成なら他人物売買・原則無効/担保的構成なら自己物売買・有効。右下(弁済期後・B処分)は成立しないため空欄。 図:完成版の対比表

  • 縦軸=A処分/B処分、横軸=弁済期前/弁済期後
  • ①弁済期前・A処分=所有権的構成なら自己物売買・有効/担保的構成なら他人物売買・原則無効
  • ②弁済期後・A処分=構成を問わず確定的にD取得・B受戻権喪失
  • ③弁済期前・B処分=所有権的構成なら他人物売買・原則無効/担保的構成なら自己物売買・有効
  • 右下(弁済期後・B処分)は成立しないため空欄

ここまでの結論を、4マスの表にまとめます。左上、弁済期前にAさんが処分した場合は、所有権的構成なら自己物売買で有効、担保的構成なら他人物売買で原則無効でした。右うえ、弁済期後にAさんが処分した場合は、どちらの構成でも、確定的にDさんが取得します。左下、弁済期前にBさんが処分した場合は、所有権的構成なら他人物売買で原則無効、担保的構成なら自己物売買で有効でした。弁済期を過ぎて実行が終わってしまえば、Bさんはもう土地に対する権利を失っています。だから、右下のマスは、そもそも成り立ちません。Bさんが処分できるのは、弁済期前に限られます。

2025年、動産だけがズレる

新法対比の板。不動産の譲渡担保は新法の対象外(2条1号イ)で判例法理のまま。動産の場合、①=5条(実行手続によらない処分の禁止)で判例とズレる方向。③=6条(設定者の処分権限)で担保的構成に近づく方向。④=73条(動産譲渡担保権者による第三者異議の訴え)で明文化。施行前契約にも原則適用(附則2条)。 図:新法対比の板

  • 不動産の譲渡担保は新法の対象外(2条1号イ)で判例法理のまま
  • 動産の場合、①=5条(実行手続によらない処分の禁止)で判例とズレる方向
  • ③=6条(設定者の処分権限)で担保的構成に近づく方向
  • ④=73条(動産譲渡担保権者による第三者異議の訴え)で明文化
  • 施行前契約にも原則適用(附則2条)

前々回確認した新しい法律は、今日の話にも関係するんですか。関係します。ただし、前々回と前回で確認したとおり、不動産の譲渡担保は新法の対象外です。今日ずっと使ってきた土地の場面は、これからも判例法理のままです。新法が関係するのは、前々回登場した機械のような動産です。ここからは、動産の場合に置き換えて、新法がどう書いたかを見ていきます。

条文譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律5条

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律第5条 譲渡担保権者は、次節の規定による実行手続によらなければ、譲渡担保財産を譲渡することができない。

ここで効いてくるのは、まさに①の場面です。新法のもとでは、Aさんは、決められた実行手続を踏まないかぎり、機械を勝手に処分できません。①で、所有権的構成をとれば当然に有効だった、Aさんの処分の自由が、条文で縛られることになります。新法は、譲渡担保をAさんの所有権ではなく、担保権として組み立てたからです。担保である以上、Aさんに許されるのは、決められた手続で売って回収することだけ、という考え方です。①の場面だけは、判例法理と新法とで、方向性がはっきり分かれます。今日の4マスの中でも、ここは注意しておくべき箇所です。

条文譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律6条

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律第6条 譲渡担保権設定者は、その有する譲渡担保財産についての権利を第三者に譲渡することができる。

6条は、Bさんが自分の持つ権利を第三者に譲渡できることを、条文でそのまま認めています。③で担保的構成が示していた結論を、動産について明文化した形です。たとえばBさんが機械をFさんに売っても、それは有効で、Fさんは、Aさんの担保が付いたままの機械を手に入れることになります。

条文譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律73条

譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律第73条 動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権設定者を債務者又は動産の所有者として、譲渡担保動産に対する強制執行又は当該動産譲渡担保権者が有する動産譲渡担保権に劣後する先取特権、質権若しくは動産譲渡担保権に基づく担保権の実行としての競売による差押えがあったときは、民事執行法第三十八条第一項(同法第百九十四条において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する第三者異議の訴えを提起することができる。ただし、その売得金の額が執行費用のうち共益費用であるもの、被担保債権及びこれに優先する債権のうち配当要求があったものの額の合計額以上となる見込みがあるときは、同項に規定する第三者異議の訴えを提起することができない。

④の場面には、何か条文はあるんですか。あります。73条は、④の機械の場面が、そのまま条文になったものです。動産の譲渡担保権者は、設定者を債務者または所有者とする差押えがあったときに、第三者異議の訴えを提起できると定められています。ただし書きは、売った代金で、手続の費用のうち共益費用と、Aさんの債権、それより優先する債権の合計がまかなえる見込みがあるときは、この訴えを起こせないというものです。それだけの代金が見込めるなら、差押えを止めなくても、Aさんは配当で回収できるので困らないからです。

今日の骨格を振り返る

まとめ板。4マス(①弁済期前・A処分=構成で結論が正反対/②弁済期後・A処分=構成を問わず確定的取得・受戻権喪失/③弁済期前・B処分=①と鏡合わせ/④一般債権者の差押え=B側はAの第三者異議、A側は弁済期前ならBが受け戻して排除・弁済期後は排除できない)→受戻し後の処分は177条の対抗問題として別枠→2025年新法は動産のみ対象で①だけ判例とズレる。 図:まとめ板

今日の内容を振り返ります。4マスの軸は、誰が処分したかと、弁済期の前か後かでした。①弁済期前にAさんが処分した場合は、所有権的構成と担保的構成で、結論が正反対に分かれました。②弁済期後にAさんが処分した場合は、どちらの構成でも、Dさんが確定的に取得し、Bさんは受戻権を失いました。③弁済期前にBさんが処分した場合は、①とちょうど逆の結論になりました。不動産なら177条、動産なら178条の対抗問題や、94条2項、即時取得が、それぞれの場面で顔を出しました。④一般債権者の差押えは、Bさん側ならAさんが第三者異議の訴えで排除でき、Aさん側の場合は、弁済期の前ならBさんが受け戻して退けられ、弁済期を過ぎたあとは退けられませんでした。

受戻し後にAさんが処分してしまう場面は、担保の関係が終わったあとの、普通の対抗問題でした。そして最後に、2025年の新法は、動産についてだけこの話を条文にし、①の場面だけ、判例とは違う方向を示しました。冒頭のBさんの土地は、①のマスにあたります。古い判例が支えてきた所有権的構成に立てば、Dさんが土地を手に入れ、Bさんは土地そのものは取り戻せません。担保的構成に立てば、Dさんは所有権を取得できず、Bさんは返済すれば取り戻せます。

参照条文

  • 民法177条
  • 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律5条
  • 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律6条
  • 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律73条

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