民法ゼロから民法#118

抵当権の効力が及ぶ範囲と付加一体物・従物

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第3章 担保物権 #118/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

エアコンと庭石は、誰の物か

冒頭設例の関係図。A(抵当権者・銀行)がB(債務者・土地建物の所有者)に融資し抵当権を設定。返済できず競売、C(買受人)が家を買い受ける。家の中にエアコン、庭に庭石、屋根裏に増築した子ども部屋を配置。庭石は抵当権設定前から、エアコンは設定後に取り付けた物。 図:冒頭設例の関係図

  • A(抵当権者・銀行)がB(債務者・土地建物の所有者)に融資し抵当権を設定
  • 返済できず競売、C(買受人)が家を買い受ける
  • 家の中にエアコン、庭に庭石、屋根裏に増築した子ども部屋を配置
  • 庭石は抵当権設定前から、エアコンは設定後に取り付けた物

Bさんは、自宅の土地と建物に、銀行Aのために抵当権を設定して、お金を借りました。返済できないまま、家は競売にかけられて、Cさんが買い受けました。庭の大きな庭石は、抵当権を付ける前から、ずっと庭に置いてあった物です。リビングのエアコンは、抵当権を付けた後で、Bさんが新しく買って取り付けた物でした。ところが、引っ越しの日に、Bさんがこう言いました。「リビングのエアコンと、庭の大きな庭石は、自分の物だから持っていく」と。Cさんは「家と一緒に買ったはずだ」と言い返しました。どちらが正しいんでしょうか。先に答えを言っておきます。抵当権の効力が及んでいれば、エアコンも庭石も、競売でそのままCさんの物になります。

ポイントは2つです。1つは、それが家の「一部」になった物か、独立したまま家に仕える「従物」か。もう1つは、抵当権を付けた前からあったのか、後から足したのかです。今日は、この2つの軸を、370条という条文から組み立てます。

前回は「どの債権を」、今日は「どの物に」

前回の確認板。前回=抵当権が担保する債権の範囲(375条・利息と遅延損害金は最後の2年分)。今日=抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲(370条)。問いの軸が「債権」から「物」に変わる。 図:前回の確認板

  • 前回=抵当権が担保する債権の範囲(375条・利息と遅延損害金は最後の2年分)
  • 今日=抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲(370条)
  • 問いの軸が「債権」から「物」に変わる

前回、抵当権が担保する「債権」の範囲を見ました。利息と遅延損害金は、いつからいつまでの分しか先取りできない、と言ったか、覚えていますか?最後の2年分でした。375条で制限されるんでしたね。今日は、問いの向きを変えます。「どの物に、抵当権の効力が及ぶか」です。土地と建物に抵当権を付けたとき、その上に置いてある物、取り付けた物にまで、効力は及ぶんでしょうか。

370条を読む

370条全文カードの背景。「抵当地の上に存する建物を除き」と「付加して一体となっている物」の2箇所に下線。 図:370条全文カードの背景

条文を読みましょう。

条文民法370条

民法第370条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

この物のことを、付加一体物と呼びます。今日一日、この言葉が繰り返し出てきます。まず、条文の骨格だけ確認しておきましょう。本文で「原則、及ぶ」と定め、ただし書で2つの場合に「及ばない」と定める。この構造です。まずは本文の「及ぶ」の中身から詰めていきます。

土地の抵当権は、建物に及ばない

一言板。「抵当地の上に存する建物を除き」=日本法では土地と建物は別個独立の不動産。土地の抵当権は、その上の建物には及ばない。土地と建物を別の人が持てることの伏線として、法定地上権という論点が後の回で出てくる。 図:一言板

  • 「抵当地の上に存する建物を除き」=日本法では土地と建物は別個独立の不動産
  • 土地の抵当権は、その上の建物には及ばない
  • 土地と建物を別の人が持てることの伏線として、法定地上権という論点が後の回で出てくる

まず、370条本文の冒頭にある「建物を除き」です。これは、もう理由まで知っている話ですね。土地と建物が別々の不動産だから、Bさんの土地に付けた抵当権は、その上に建つ建物には、そもそも及びません。「不動産」という言葉自体が、土地と建物で別々に数えられるからです。冒頭の設例では、土地と建物、両方に抵当権を設定していたので、この例外は問題になりません。ただ、実際には、土地にしか抵当権を付けていなかった、という場面もあります。すると、土地は競売で他人のものになるのに、建物だけがBさんの手元に残る、というねじれが起こります。

土地と建物を別々の人が持つことになると、建物を使う法的な根拠がなくなってしまいます。この問題を解決する仕組みが、後の回で扱う法定地上権です。今日は、「土地と建物が別だから、後でこういう問題が起きる」という伏線だけ張っておきます。

付合物には、設定の前後を問わず及ぶ

付合物の受け板。壁紙・増築部分などの付合物(242条で不動産の一部になった物)は、370条本文の付加一体物に含まれ、設定の前後を問わず抵当権の効力が及ぶ。理由=法律上すでに不動産そのものだから。 図:付合物の受け板

  • 壁紙・増築部分などの付合物(242条で不動産の一部になった物)は、370条本文の付加一体物に含まれ、設定の前後を問わず抵当権の効力が及ぶ
  • 理由=法律上すでに不動産そのものだから

次に、付合物です。壁紙や、冒頭の設例にあった増築した子ども部屋のように、不動産にくっついて、法律上その一部になってしまった物ですね。付合物は、すでに法律上「不動産そのもの」の一部です。だから、370条本文の付加一体物に、当然含まれます。抵当権を設定した前に付合していても、後に付合していても、関係ありません。なぜ、前後を問わないんですか。付合してしまった以上、それはもう独立した別の物ではなく、抵当不動産という1つの物の一部になっているからです。不動産を1個の物として押さえている以上、その一部であるかぎり、いつ付いたかは問題になりません。冒頭のBさんの家なら、増築した子ども部屋は、この付合物にあたります。設定の前後を問わず、Cさんの物です。

従物とは、独立したまま主物に仕える物

従物の受け板。従物とは、常用に供する・附属させた・独立の物・同一所有者という4条件(87条1項)を満たし、独立の物のまま主物に仕える物。付合物と違い、物としては主物と別のまま。エアコンが典型例。 図:従物の受け板

  • 従物とは、常用に供する・附属させた・独立の物・同一所有者という4条件(87条1項)を満たし、独立の物のまま主物に仕える物
  • 付合物と違い、物としては主物と別のまま
  • エアコンが典型例

ここまでは、付合物、つまり「不動産そのものの一部になった物」の話でした。ここからは、様子が違う物が出てきます。従物です。土地の上に置かれた石灯籠や、取り外せる庭石を、土地の従物と認めた判例で、その4条件を確認しました。冒頭のエアコンに当てはめてみましょう。家を快適に住める状態に保つために、継続して使う物です。壁に取り付けてあります。取り外せば別の部屋にも付け替えられる、独立した物です。そして、Bさん自身が買った物です。4つとも満たすので、エアコンは家の従物です。庭石も、埋め込まれて動かせないのではなく、置いてあって動かせるなら、判例のとおり土地の従物です。

ここで、今日はじめて扱う問いが出てきます。付合物と違って、独立した物のままの従物にも、抵当権の効力は及ぶんでしょうか。

付加一体物に、従物は含まれるか

学説対立の対比板。A説=物理的一体性説(判例)。従物は独立の物なので370条本文には含まれないが、87条2項の「処分」を設定行為と捉え、設定当時の従物には効力が及ぶとする。B説=経済的一体性説(通説)。抵当権は交換価値を把握する権利であり、一体性を物理的なくっつき方だけで測るのは妥当でない。従物は経済的価値的一体性を有するので、370条本文の付加一体物に含まれる。 図:学説対立の対比板

  • A説=物理的一体性説(判例)
  • 従物は独立の物なので370条本文には含まれないが、87条2項の「処分」を設定行為と捉え、設定当時の従物には効力が及ぶとする
  • B説=経済的一体性説(通説)
  • 抵当権は交換価値を把握する権利であり、一体性を物理的なくっつき方だけで測るのは妥当でない
  • 従物は経済的価値的一体性を有するので、370条本文の付加一体物に含まれる

ここが、今日いちばんの山場です。370条本文の「付加一体物」に、従物は含まれるでしょうか。答えは、学説が分かれます。出発点に戻りましょう。抵当権の設定を学んだ回で見た、抵当権の本質です。抵当権は、どういう権利でしたか。占有には手を付けず、「売ったらいくらになるか」という交換価値だけを押さえる権利です。この1点から、2つの説が生まれます。まず、A説、物理的一体性説です。これは、判例が伝統的に採ってきた立場です。370条の「付加して一体となっている物」とは、物理的にくっついて一体化した物に限る、と考えます。条文の「付加して一体となっている」という言葉を、文字どおり、くっついて1つになった状態と読むからです。

だから、A説からは、従物は370条本文には含まれません。そこで、A説は別の条文を持ち出します。87条です。

条文民法87条

民法第87条 物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに附属させたときは、その附属させた物を従物とする。 2 従物は、主物の処分に従う。

「処分」の読み方板。87条2項「従物は、主物の処分に従う」。A1=処分を抵当権の設定と読む→設定当時にあった従物に及ぶ。A2=処分を抵当権の実行と読む→実行時にある従物に及ぶ(設定後に付けた物も)。 図:「処分」の読み方板

  • 87条2項「従物は、主物の処分に従う」
  • A1=処分を抵当権の設定と読む→設定当時にあった従物に及ぶ
  • A2=処分を抵当権の実行と読む→実行時にある従物に及ぶ(設定後に付けた物も)

1項は、従物とは何かの定義でした。今日の鍵になるのは2項です。「従物は、主物の処分に従う」。この「処分」という言葉を、どの時点の行為と読むかで、説明が変わってきます。読み方が、複数あるんですか。あります。1つは、「処分」を、抵当権の設定行為そのものと読む考え方です。これをA1と呼びましょう。物の分類の回で、処分とは、売買のように、権利関係を動かす行為だと見ました。抵当権を設定することも、家の交換価値を銀行に押さえさせるという形で、権利関係を動かす処分です。この読み方に立つと、設定という処分によって、その時点に存在した従物にも、抵当権の効力が及ぶ、と説明できます。実際の判例も、抵当権を設定した当時に存在した従物については、この87条2項の適用で効力が及ぶとしています。

もう1つは、「処分」を、もっと広く、抵当権を実行して売り払う段階の行為と読む考え方です。これをA2と呼びましょう。競売で家の持ち主がCさんに移るのは、売買と同じく、まさに持ち主を変える処分だからです。この読み方なら、設定より後に付け加えた従物でも、実行の時点で存在してさえいれば、処分の対象に含めて説明できそうです。理屈のうえでは、A2の読み方なら設定後のエアコンにも及ぶ、と言えます。ただ、判例が実際にA2の読み方まで踏み込んだかどうかは、確定していません。だから、A説に立つ限り、設定後に付けた従物については、はっきりした結論が出せない、という状態が残ります。

これが、A説の条文操作です。

B説の板。B説=経済的一体性説(通説)。抵当権は占有を設定者に残して交換価値を押さえる権利→一体性は物理的なくっつき方ではなく経済的な価値のまとまりで測る→従物も370条本文の付加一体物に含まれる(設定の前後を問わない)。 図:B説の板

  • B説=経済的一体性説(通説)
  • 抵当権は占有を設定者に残して交換価値を押さえる権利→一体性は物理的なくっつき方ではなく経済的な価値のまとまりで測る→従物も370条本文の付加一体物に含まれる(設定の前後を問わない)

一方、B説、経済的一体性説は、通説の立場です。抵当権は、占有ではなく交換価値を押さえる権利です。だとすれば、一体性を物理的なくっつき方だけで測るのは、おかしいのではないか。B説はそう考えます。従物は、主物の経済的な効用を助け、主物と経済的に一体をなす物です。だから、物理的にくっついていなくても、370条本文の付加一体物に、最初から含まれる、と説明します。同じ「及ぶ」という結論にたどり着くための、通り道が違います。

⭐ 論文で書く規範:付加一体物に従物を含むか(規範・B説=経済的一体性説=通説) 抵当権は、目的物の占有を設定者に残したまま交換価値を把握する担保物権であるから、付加一体物とは物理的一体性を有する物に限られず、経済的価値的一体性を有する物をいうと解する。そして、主物の経済的な働きを支える従物も、主物と経済的価値的一体性を有する以上、付加一体物に当たる。 (出どころ=抵当権の本質(交換価値把握権)からの解釈(通説))

この規範自体は、論文でも問われうる骨格です。規範の境界を、冒頭の設例で確認しましょう。例えば、エアコンは、家を住まいとして使うために取り付けられ、家の経済的な効用を助けています。だから、経済的価値的一体性があり、付加一体物に含まれます。これに対して、Bさんがリビングに置いていたテレビやソファはどうでしょう。これは、Bさん個人の暮らしのための家財で、家そのものの効用を助ける物ではありません。従物にあたらず、付加一体物にも含まれないので、Bさんが持っていけます。では、この規範は、設定の前後で結論を変えるのか。次の板で確かめます。

設定前の従物と設定後の従物

設定前後の従物を比べる表。行=付合物/設定前の従物/設定後の従物。列=A説(物理的一体性説・判例)/B説(経済的一体性説・通説)。付合物=両説とも370条本文で及ぶ。設定前の従物=A説87条2項(処分=設定)で及ぶ/B説370条本文で及ぶ。設定後の従物=A説は判例の到達点が不確定/B説370条本文で及ぶ(前後を問わない)。 図:設定前後の従物を比べる表。行=付合物/設定前の従物/設定後の従物。列=A説(物理的一体性説・判例)/B説(経済的一体性説・通説)。付合物=両説とも370条本文で及ぶ。設定前の従物=A説87条2項(処分=設定)で及ぶ/B説370条本文で及ぶ。設定後の従物=A説は判例の到達点が不確定/B説370条本文で及ぶ(前後を問わない)。

この対立を、一枚の板に整理します。その前に、1つ考えてみてください。冒頭のエアコンは、抵当権を設定した後で、Bさんが買って取り付けた物でした。設定前からあった庭石と、同じ結論になるでしょうか。うーん、考えてみます。設定前の物と、後から付けた物とでは、何か違いそうな気がします。では、板で確認しましょう。まず付合物は、A説でもB説でも、370条本文で及びます。ここは争いがありません。設定前からあった従物、つまり庭石のような物です。A説は、87条2項の「処分」を設定行為と見て、設定当時に存在した従物には及ぶとします。B説は、370条本文で及ぶとします。どちらの説でも、結論は「及ぶ」で一致します。

設定後に付けたエアコンのような従物で、結論が分かれます。B説だと、370条本文に「設定の前後を問わない」という縛りがそもそもないので、設定後に付けたエアコンでも、経済的な一体性さえあれば、及びます。A説は、87条2項の「処分」を設定行為だと理解している以上、設定の時点でまだ存在していないエアコンは、その処分の対象になりません。実行の段階を「処分」と捉え直せば救える、という理屈も学説上はありますが、判例がそこまで踏み込んだかどうかは、確定していません。付合物と、設定前の従物は、どちらの説でも結論は同じ。違いが出るのは、設定後の従物、この一点だけです。冒頭のBさんの家で言えば、庭石は設定前からあったので、庭石は争いなくCさんの物。エアコンは設定後に付けた物なので、通説に立てば迷わずCさんの物ですが、判例の立場だと、読み方で結論が割れます。A1の読み方なら、設定のときに無かったエアコンには及ばず、Bさんが持っていけます。A2の読み方なら、競売のときにあるので及び、Cさんの物です。

効力が及ばない3つの場合

効力が及ばない3類型の対比板。①権原に基づいて付属させた独立性のある物(242条ただし書・弱い付合)②設定行為で別段の定めをした場合(370条ただし書前段・登記で対抗)③詐害行為となる付加(424条3項・370条ただし書後段)。 図:効力が及ばない3類型の対比板

ここまでは「及ぶ」場面でした。最後に、効力が及ばない場合を見ておきます。242条ただし書の場合と、370条ただし書の2つで、合わせて3つです。1つ目は、242条ただし書のケースです。借りている人が、権原に基づいて取り付けた、独立性のある物です。例えば、Bさんから庭の一部を借りた人が、Bさんの承諾を得て果樹を植えた場合、それは他人のもののままで、抵当不動産の所有者の物にはなりません。このように、くっついても独立性を保ったまま、他人のもののまま残る場合を、弱い付合と呼びます。当然、抵当権の効力も及びません。ここで2つ目、370条ただし書前段です。設定行為に別段の定めがある場合を指します。

特約で、一部の物を効力の範囲から外すことはできます。もっとも、買受人など第三者にこの特約を対抗したいなら、登記しておかなければなりません。そして3つ目、370条ただし書後段です。債務者の行為が、詐害行為取消請求の対象になる場合を指します。債権者を害すると知りながらした行為を、あとから取り消せる仕組みです。中身は別の回で扱いますが、今日は「債権者を害すると知りながら物を付け加えても、抵当権の効力の拡張という利益は与えない」という最小限の理解にとどめてください。例えば、競売を前に、通謀して高価な物をわざと建物に埋め込んでも、その部分には抵当権の効力は及びません。

従物にも、抵当権の登記で対抗できる

対抗の板。抵当権の効力が従物に及ぶ場合、抵当不動産の登記(対抗要件)で、従物についても第三者に対抗できる。石灯籠・庭石の判例を、抵当権の場面で回収する。 図:対抗の板

  • 抵当権の効力が従物に及ぶ場合、抵当不動産の登記(対抗要件)で、従物についても第三者に対抗できる
  • 石灯籠・庭石の判例を、抵当権の場面で回収する

最後に、対抗の問題です。物の分類を学んだ回で、主物の登記が従物のぶんまで働く、という話をしましたね。この考え方は、抵当権の場面でもそのまま働きます。なぜかというと、設定前からある従物には、A説なら87条2項で、B説なら370条本文で、どちらの説でも抵当権の効力が及ぶからです。効力が及ぶ以上、抵当不動産の登記を見た人は、「この不動産には、付加一体物として従物も含まれているかもしれない」と、登記から読み取れるはずです。従物だけを別に公示する手段は、そもそもありません。だから、抵当不動産についての登記1つで、従物についても第三者に対抗できるんです。

冒頭のBさんの例で考えましょう。もし、Bさんが競売にかけられる前に、庭石だけを、こっそり第三者Dさんに売っていたとします。Dさんは「自分が買ったのだから、庭石は自分の物だ」と言いたくなりますよね。抵当権者Aは、土地建物の登記によって、この庭石についても対抗要件をすでに備えています。だから、Dさんが後から庭石だけを買い受けても、Aの抵当権には対抗できません。抵当権が実行されれば、庭石ごとCさんの物になります。新しく覚えることはありません。抵当不動産の登記1つで、従物のぶんまでカバーされる、と押さえておいてください。

冒頭の答えを、もう一度

まとめ板。370条本文(建物を除き・付加一体物に及ぶ)→建物は別個不動産で及ばない→付合物は設定前後問わず及ぶ→従物は学説対立(A説=物理的一体性説・87条2項/B説=経済的一体性説・370条本文)→設定前の従物はどちらの説でも及ぶ・設定後の従物はB説なら及ぶがA説は不確定→効力が及ばない3類型→従物への対抗も登記でカバー。 図:まとめ板

今日の骨格を振り返りましょう。抵当権の効力は、370条本文により、抵当不動産に付加して一体となっている物に及びます。ただし、建物は別個独立の不動産なので、そもそも及びません。問題は従物でした。物理的一体性説は、従物を370条本文には含めず、条文でいう87条2項の「処分」を設定行為と捉えて、設定当時の従物に及ぼす。経済的一体性説は、抵当権が交換価値を押さえる権利であることから、従物も370条本文に含めて、設定の前後を問わず及ぼす。冒頭に戻りましょう。増築した子ども部屋は付合物です。設定の前後を問わず、Cさんの物です。庭石は設定前からあったので、どちらの説でも、争いなくCさんの物です。

設定後に取り付けたエアコンは、通説に立てば、Cさんの物です。判例の立場では、処分の読み方次第で、答えが割れる場面です。これが、Bさんの「エアコンと庭石は自分の物だ」という言い分への答えです。権原に基づく付属物、別段の定め、詐害行為の3つは効力が及ばず、逆に効力が及ぶ従物には、抵当不動産の登記でそのまま対抗できます。

参照条文

  • 民法370条
  • 民法87条

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