債権譲渡・転付命令と物上代位
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第3章 担保物権 #122/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
先に売られていたら、もう負けなのか
図:前回の続きの確認板
- 前回末尾で「差押えの前に保険金請求権そのものが別の人に譲り渡されていたら」という問いを残した
- 実際にこの問題が最高裁まで争われたのは、保険金ではなく家賃の場面だった
前回の最後に、1つ問いを残しました。Aさんが差し押さえる前に、保険金請求権そのものが別の人に譲り渡されていたら、Aさんはまだ間に合うのか、という問いです。覚えていますか?実は、この問題が実際に最高裁まで争われたのは、保険金ではありません。前々回に見た、Bさんのもう一棟のアパートの家賃でした。Aさんが差し押さえる前に、Bさんはこの先の家賃をまとめてFさんに売ってしまいました。そしてCさんにも、確定日付のある通知が届いています。Aさんは、もう負けなのでしょうか。先に言っておきます。売られていても、Aさんは負けません。ところが、これとよく似た場面で、今度はAさんが負けてしまう場合もあります。この違いがどこから来るのかが、今日の中心です。
304条ただし書、もう一度
図:304条の再確認板
- 372条で「先取特権者」を抵当権者に、「債務者」を所有者に読み替える
- 前回・前々回で確認済み
- 今日の主役は「払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」の”いつまでに”の部分
条文民法304条
民法第304条 1 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。 2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
これまで何度も見てきた条文ですね。372条の読み替えによって、抵当権にもこのただし書がそのまま働きます。典型は、Cさんが実際にBさんへ家賃を払ってしまう場面です。その払渡しより前に、Aさんは差し押さえておかなければなりません。Bさんが家賃をFさんに売ってしまうことが、「払渡し又は引渡し」に入るのかどうか。そこが今日の1つめの論点です。
債権譲渡は「払渡し又は引渡し」にあたるか
図:債権譲渡と物上代位の事案図
- A(抵当権者・銀行、抵当権設定登記あり)がBのアパートに抵当権
- B(所有者)はC(入居者)に賃貸
- BがこのCへの家賃債権をまとめてFへ譲渡し、BがCに確定日付のある通知をして、Fは第三者対抗要件を備えた
- Cはまだ実際には払っていない
- Aはまだ差し押さえていない
Bさんはこの先Cさんから受け取るはずの家賃債権を、まとめてFさんに売りました。そしてBさんからCさんに確定日付のある通知がされて、Fさんは467条2項の対抗要件を備えています。日付を公的に証明してもらった通知のことです。たとえば、Bさんが内容証明郵便で、Cさんに『この家賃債権はFさんに譲りました』と知らせると、これにあたります。理屈はまた別の回で見ますが、要は「Fさんがこの家賃債権の持ち主だ」と、対外的にきちんと主張できる状態になった、ということです。ここでAさんが差し押さえていないまま、Cさんが実際にFさんへ家賃を払ってしまったら、もうAさんは間に合いません。問題は、Cさんが実際に払う前なら、Aさんはまだ差し押さえられるのか、それとも、Fさんが対抗要件を備えた時点でもうアウトなのか、という点です。
図:債権譲渡と物上代位の結論1と理由の板
- 結論1=債権譲渡は「払渡し又は引渡し」にあたらない
- 理由①第三債務者保護説(前回)=弁済前なら物上代位を認めてもCは二重弁済の危険を負わない②文言=「払渡し又は引渡し」は当然には債権譲渡を含まない③抵当権の効力が家賃債権に及ぶことは抵当権設定登記で公示されておりFは不測の損害を受けない
判例の結論は2つあります。結論1は、債権譲渡は「払渡し又は引渡し」にあたらない、ということ。結論2は、それが成り立つための条件です。まず結論1です。Fさんが対抗要件を備えた後でも、Cさんが実際にFさんへ弁済する前なら、Aさんは差し押さえて物上代位できます。たとえば、家賃が月10万円だとしましょう。8月分をCさんがもうFさんに払ってしまっていたら、Aさんはその8月分の10万円はもう取れません。ですが、9月分をCさんがまだ払っていなければ、Aさんはその9月分の10万円を差し押さえて物上代位できます。境目は、あくまでCさんが実際に払ったかどうかです。
理由は3つあります。1つめは、前回確立した第三債務者保護説です。差押えは、誰に払えばよいか分からず二重弁済を強いられかねない第三債務者を守るための対抗要件でした。Cさんの視点で見ると、Cさんが実際に払う前であれば、そのあとでAさんの差押えが割り込んできても、Cさんはまだ何も払っていないのですから、二重に払わされる危険を負いません。2つめは、条文の文言です。「払渡し又は引渡し」という言葉は、お金や物を実際に相手の手に渡すことを指しています。債権を譲渡するという契約行為それ自体は、Cさんの財布からお金が出ていく話ではありません。当然には債権譲渡を含む言葉ではないんです。
そして3つめが、抵当権ならではの理由です。抵当権の効力が、この家賃債権にまで及ぶことは、抵当権設定登記によって、あらかじめ外から分かる形になっています。Fさんは、この家賃債権を買う前に、登記を確認しようと思えば確認できたはずです。だから、Aさんの差押えを後から認めても、Fさんは不測の損害を受けません。もう1つ付け加えると、もし債権譲渡だけで確定的にAさんが負けるとすると、Bさんは家賃債権を誰かに売ってしまうだけで、簡単にAさんの抵当権を振り切れることになってしまいます。それでは、せっかく登記まで備えたAさんの立場が、あまりにも弱くなりすぎます。
図:債権譲渡と物上代位の結論2の板
- 結論2=Fが対抗要件を備えるより前に、Aの抵当権設定登記が済んでいることが条件
- 理由=物上代位できることは登記で初めて公示されるから
- 登記が後なら、Fは気づきようが無い
そこで結論2の条件です。Fさんが対抗要件を備えるより先に、抵当権の設定登記が済んでいる必要があります。さっきの3つめの理由を思い出してください。Fさんが不測の損害を受けないのは、あらかじめ登記を見れば分かる状態だったからでした。もし登記がFさんの対抗要件具備よりも遅かったら、Fさんが家賃債権を買った時点では、まだ抵当権の効力が及ぶことは公示されていません。そのFさんに、後から差押えで割り込むのでは、Fさんは気づきようがない不意打ちになってしまいます。今日の設例では、Aさんの登記は、Bさんの融資の当初からずっと先にありますから、この条件は満たされています。Cさんが実際にFさんへ払う前なら、Aさんは差し押さえて物上代位できます。
判例最高裁判所第二小法廷判決 平成10年1月30日(民集52巻1号1頁)
債権譲渡と物上代位 「民法三〇四条一項の趣旨目的に照らすと、同項の「払渡又ハ引渡」には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。」
Aさん、Fさん、Cさんに置き換えると、さっきまで話してきた内容とそのまま重なります。
⭐ 論文で書く規範:債権譲渡と物上代位(規範) 「払渡し又は引渡し」の前に差し押さえなければならないところ、債権譲渡は「払渡し又は引渡し」にあたらない。第三債務者保護の見地からは弁済前であれば物上代位を認めても支障はなく、「払渡し又は引渡し」の文言も当然には債権譲渡を含まない。ただし、この物上代位ができることは、抵当権設定登記があって初めて外部に公示される。したがって、Fの対抗要件具備よりも先に登記が済んでいなければならない。 (出どころ=判例(最高裁判決))
ここは論文で論点になりうる場面です。結論1と結論2、そして理由の中身を押さえておいてください。
対比、動産売買先取特権ならもう負ける
図:対比板
- 同じ304条の場面でも、動産売買先取特権者は、目的債権が譲渡され対抗要件が備わった後はもう差し押さえて物上代位できない
- 理由の軸=抵当権には登記という公示があるが、動産売買先取特権には公示が無い
- 公示が無いぶん、304条の「差押え」に、第三債務者保護だけでなく譲受人など第三者の利益の保護の趣旨まで読み込む必要がある
ここで、あえて対比を1つ挟みます。同じ304条が使われる場面に、動産売買先取特権という担保物権があります。たとえば、メーカーが販売店に機械を売ったのに、まだ代金をもらっていないとき、メーカーには法律上当然に、その代金について優先権が与えられます。販売店がその機械をお客さんに転売すれば、メーカーは304条で、お客さんが払う転売代金にも手を伸ばせます。ところがこちらでは、結論がまるごと逆になります。販売店が、お客さんに対する転売代金の債権を別の人に譲渡して、譲受人が対抗要件まで備えてしまうと、メーカーはもう差し押さえて物上代位できません。さっきのAさんの場合、締め切りはCさんが実際に払う時でしたが、こちらは、譲渡の対抗要件が備わった時点で、もう締め切りが来てしまうんです。
軸は1つです。抵当権には登記という公示がありますが、動産売買先取特権には、そもそも公示の制度がありません。公示が無いので、譲受人は、この目的物に先取特権の効力が及んでいることを、事前に知りようがありません。そこで304条の「差押え」という要件には、第三債務者を守る趣旨だけでなく、譲受人のような第三者の利益を守る趣旨まで読み込む必要が出てきます。その結果、締め切りが早まり、対抗要件が備わった時点でアウトになるんです。ここは論文で比較として問われやすい場面なので、この1軸だけは持ち帰ってください。動産売買先取特権そのものの細かい要件は、また別の回で扱います。
判例最高裁判所第三小法廷判決 平成17年2月22日(民集59巻2号314頁)
動産売買先取特権と債権譲渡 「民法304条1項ただし書は,先取特権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要する旨を規定しているところ,この規定は,抵当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべきである。そうすると,動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできないものと解するのが相当である。」
メーカーの視点で見ると、譲受人が対抗要件を備えた時点で、もう差し押さえる余地が無くなる、という結論です。
Eさんの差押えと転付命令
図:一般債権者Eの登場と語の説明の板
- BのCに対する家賃債権を、Bの別の債権者Eが差し押さえた
- 差押え=裁判所が債務者の財産の処分を禁じる強制執行の入口(詳しくは別の回)
- 転付命令=差し押さえた債権を差押債権者に強制的に移す、いわば強制的な債権譲渡
ここでもう1つ場面を加えます。前回登場した、Bさんの別の債権者Eさんを覚えていますか。今回は、Eさんが、この家賃債権を差し押さえます。ここで2つの言葉を確認しておきます。差押えとは、裁判所が債務者の財産の処分を禁じる強制執行の入口です。詳しい手続は、また別の回に譲ります。そしてEさんは、差し押さえたこの家賃債権について、転付命令というものを得ました。転付命令とは、差し押さえた債権そのものを、差押債権者に強制的に移してしまう命令です。いわば、裁判所による、強制的な債権譲渡だと考えてください。この転付命令は、Cさんに送達されました。送達とは、裁判所の書類が、法律の決めた方式で正式に届けられることです。
転付命令も債権譲渡の一種と見れば、Cさんが払う前ならまだ間に合う、という同じ結論になりそうにも思えます。実際、そう考える見解も有力です。ところが、判例はここで違う結論を採りました。
図:転付命令の結論板
- 判例=転付命令が第三債務者Cに送達される時までに、抵当権者Aが差し押さえなかったときは、転付命令の効力は妨げられない
- つまり送達されたらAはもう物上代位できない
- 債権譲渡の場合と結論が異なる
判例の結論はこうです。転付命令がCさんに送達される時までに、Aさんが差し押さえていなければ、転付命令はそのまま効力を持ちます。つまり、送達された時点で、Aさんはもう物上代位できません。債権譲渡のときよりも、締め切りがはっきりと早まります。なぜこう違うのか、条文で確認しましょう。
判例最高裁判所第三小法廷判決 平成14年3月12日(民集56巻3号555頁)
転付命令と物上代位 「転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても,転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは,転付命令の効力を妨げることはできず,差押命令及び転付命令が確定したときには,転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ,抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。」
Aさんが送達までに差し押さえていなければ、Eさんの転付命令がそのまま効力を持つ、という言い方をしています。
条文民事執行法159条3項
民事執行法第159条3項 転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。
この条文が、転付命令の締め切りをそのまま定めています。送達の時までに、他の債権者が差押えなどをしていなければ、転付命令は効力を生じます。では、Aさんはなぜこの条文の「他の債権者」に入るのでしょうか。前回見たとおり、Aさんが物上代位するには、Eさんの事件に配当要求をするだけでは足りず、自分でこの家賃債権を差し押さえるしかありませんでした。つまりAさんも、Eさんとは別に、同じ家賃債権を差し押さえる債権者の1人です。判例も、Aさんの物上代位のための差押えにこの条文をそのまま当てはめました。送達の時までに自分で差し押さえておかなければ、そのあとは、もう割り込めません。
債権譲渡の場面には、締め切りを直接定める条文がありませんでした。だから304条ただし書の趣旨に戻って考えるしかなかったんです。ところが転付命令の場面には、民事執行法という別の法律が、締め切りをそのまま条文で用意しています。趣旨解釈をするまでもなく、条文が答えを出しているんです。
条文民事執行法160条
民事執行法第160条 転付命令が効力を生じた場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。
転付命令が効力を生じた場合には、Eさんの債権は、送達の時に、券面額、つまり転付命令で移った家賃債権の額面どおりの金額で、弁済されたものとみなされます。たとえば、EさんがBさんに30万円を貸していて、家賃3か月分、30万円に転付命令を得たとします。送達の瞬間に、Eさんの30万円の貸金は、もう返してもらったのと同じ扱いになり、法律上消えてしまうんです。任意の債権譲渡は、家賃債権の持ち主がBさんからFさんに変わるだけで、誰かの取立てが終わったわけではありません。ですが転付命令は、強制執行の手続として、送達の瞬間にEさんの取立てを終わらせ、Eさんだけに満足を与えてしまいます。お金の取り合いは、送達の時点でもう決着しているんです。ここが、転付命令が単なる債権譲渡と同視できない理由です。
Eさんの差押えだけなら、どうなるか
図:一般債権者の差押えのみの板
- 転付命令が付いていない場合、Eの差押えの処分禁止効は、差押命令がCに送達された時に生じる
- 他方、Aが抵当権を対抗するには登記が必要
- 優劣は差押命令のCへの送達と、抵当権設定登記の先後で決まる(送達が先なら抵当権者は配当を受けられない)
転付命令がなければ、160条の弁済とみなす効果は働きません。この場合は、Aさんの物上代位とEさんの差押えが、対抗要件同士の優劣という同じ土俵で争われます。まず前提として、ここでもAさんは、前回見たとおり、自分でこの家賃債権を差し押さえて物上代位します。Eさんの事件に乗っかるだけでは足りません。そのうえで、Eさんの差押えが効力を持つのは、差押命令がCさんに送達された時です。一方、Aさんが抵当権を対抗するには、抵当権設定登記が必要です。優劣は、この差押命令の送達と、抵当権設定登記の先後で決まります。送達の方が先なら、Aさんは配当を受けられません。登記の方が先なら、Aさんが勝ちます。
登記が先にあるかどうかで、公示されていたかどうかを見る、という軸は共通しています。ただし、転付命令が付いた場合とは違って、160条の弁済擬制が働かない分、締め切りが「時点」ではなく「先後」という形になる点だけ、注意してください。
判例最高裁判所第一小法廷判決 平成10年3月26日(民集52巻2号483頁)
一般債権者との差押え競合 「債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられ、右の差押命令の第三債務者への送達が抵当権者の抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は配当を受けることができないと解すべきである。」
Eさんの差押命令の送達と、Aさんの登記、この2つの先後だけで優劣が決まる、という言い方をしています。
いつまでに差し押さえれば勝てるか
図:比較板
- 相手ごとの締め切り
- 債権譲渡(F)=Cの弁済時まで(ただし登記が譲渡の対抗要件具備より先であることが前提)
- 転付命令(E)=転付命令のCへの送達時まで
- 一般債権者の差押えのみ(E)=差押命令のCへの送達と抵当権設定登記の先後
- 動産売買先取特権と債権譲渡=譲受人の対抗要件具備まで(公示が無いため基準が早い)
ここまでの4つの場面を、1枚の板にまとめます。相手ごとに、担保を持つ側が動くべき締め切りが違うことが、この表で一目で分かります。債権譲渡なら、Cさんの弁済の時までです。次に、転付命令のEさんが相手なら、転付命令がCさんへ送達される時までです。ここは民事執行法159条3項という条文がそのまま決めていました。転付命令の付かない差押えだけの場面は、他の3つと違って、「いつまで」という時点の話ではなく、「どちらが先か」という先後の話になっています。そして最後に、動産売買先取特権の場合は、転売代金の債権を譲り受けた人が、対抗要件を備えた時までです。公示が無いぶん、抵当権のときよりも締め切りが早いんでしたね。
今日の答えを、もう一度
図:まとめ板
- 冒頭の答え=賃料債権を先にFへ売られていても、Cが実際に払う前ならAは負けない(結論1・結論2の条件付き)
- ところが転付命令だと、送達されたらもう負ける
- 締め切りの根拠が場面ごとに違う(304条の趣旨解釈か、民執法の明文か、公示の有無か)
- 物上代位3回の流れ=物上代位がどこまで及ぶか→なぜ差押えが要るか→いつまでに差し押さえるか
今日の骨格を振り返ります。冒頭の問いに戻ると、賃料債権を先にFさんに売られていても、Cさんが実際に払う前なら、Aさんは負けません。ただし、抵当権設定登記がFさんの対抗要件具備より先であることが条件でした。似た場面に見えても、締め切りの根拠がまるで違いました。債権譲渡には締め切りを定める条文が無いので、304条ただし書の趣旨、つまり前回確立した第三債務者保護説に戻って考えました。転付命令には、159条3項という民事執行法の条文が、締め切りをそのまま用意していました。そして動産売買先取特権は、公示があるかどうかという、もう1つの軸で結論が分かれていましたね。
これで、物上代位の話が一区切りつきました。前々回では、物上代位がどこまで及ぶかを、売却代金、賃料、保険金という場面で見ました。前回では、なぜ差押えが必要なのか、3つの説の中身を見ました。そして今日は、その差押えを、いつまでにすればよいのかを見ました。この債権譲渡と物上代位の場面は、論文でも問われうる場面です。
参照条文
- 民法304条
- 民事執行法159条3項
- 民事執行法160条