民法ゼロから民法#176

弁済と弁済の提供

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第4章 債権総論 #176/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

家賃を持って行ったのに、受け取ってもらえない

冒頭の関係図。借主が、月末の家賃を持って、大家の家へ行った。大家は「値上げに応じないなら、受け取らない」と言う。借主は家賃を持ち帰り、払わないまま翌月になった。問い=遅れの責任を負うのか。 図:冒頭の関係図

  • 借主が、月末の家賃を持って、大家の家へ行った
  • 大家は「値上げに応じないなら、受け取らない」と言う
  • 借主は家賃を持ち帰り、払わないまま翌月になった
  • 問い=遅れの責任を負うのか

ここまでは、債権が生まれて、動いて、人から人へ渡る話でした。今日から、債権が終わる話に入ります。入口は、身近な場面です。借主が、月末の家賃を持って、大家さんの家へ行きました。すると、大家さんが言います。値上げに応じないなら、受け取りません。借主は、家賃を持ち帰りました。そして、払わないまま、翌月になりました。拒んだのは大家さんの側ですから、借主が守られる部分は、確かにあります。持って行った、という事実には、法律上の意味があります。一方で、払わないまま放っておいてよいのかは、別の問題です。借主は、遅れの責任を負うのでしょうか。それとも、負わないのでしょうか。答えは、最後に出します。

債権はどうやって消えるのか

債権の消滅原因の地図。第3編第1章第6節=①弁済(473条)②代物弁済(482条)③供託(494条)④相殺(505条)⑤更改(513条)⑥免除(519条)⑦混同(520条)。分類=目的が達成されて消える(弁済・代物弁済・供託)/目的が達成されないまま消える(相殺・更改・免除・混同)。第6節の外=消滅時効・取消し・解除・解除条件の成就。×=履行不能は消滅原因ではない(412条の2)。 図:債権の消滅原因の地図

  • 第3編第1章第6節=①弁済(473条)②代物弁済(482条)③供託(494条)④相殺(505条)⑤更改(513条)⑥免除(519条)⑦混同(520条)
  • 分類=目的が達成されて消える(弁済・代物弁済・供託)/目的が達成されないまま消える(相殺・更改・免除・混同)
  • 第6節の外=消滅時効・取消し・解除・解除条件の成就
  • ×=履行不能は消滅原因ではない(412条の2)

まず、地図です。債権は、いつか消えます。物権は、持ち続けるのが本来の姿ですが、債権は、いつか終わるためにあります。民法は、第3編第1章の第6節に、消滅原因を、7つ並べています。弁済、代物弁済、供託、相殺、更改、免除、混同です。2つの群に分けると、見通しが立ちます。1つめの群は、債権の目的が達成されて消えるものです。弁済は、約束どおりに払うこと。代物弁済は、債権者と合意して、約束の物の代わりに、別の物で払うこと。供託は、受け取ってもらえないお金などを、供託所に預けることです。2つめの群は、目的が達成されないまま消えるものです。相殺は、お互いに持っている債権を、差し引きで消すこと。更改は、古い債務を、新しい債務に入れ替えること。免除は、債権者が、債務を帳消しにすること。混同は、親からお金を借りていた子が、その親を相続したときのように、債権者と債務者が、同一人物になることです。今日は、弁済から入ります。実務でも試験でも、中心になるのは、弁済と相殺です。ほかの制度の中身は、順に、別の回で見ます。もう1点。この7つは、第6節に書かれた消滅原因です。債権が消える場面は、第6節の外にもあります。消滅時効、取消し、解除、解除条件の成就です。時間が経って消える、契約が取り消されたり解除されたりして消える、条件がかなって効力を失う、という形です。これらは、別の場所で学ぶ制度で、今日は名前だけにとどめます。

債務が果たせなくなったとき、つまり履行不能は、消滅原因に入らないんですか。大事な点です。入りません。ここは、2017年の改正で変わりました。条文を、板で見てください。412条の2の第1項です。債務の履行が、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない、とあります。

履行不能の扱い。412条の2第1項=債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。→消えるのは「請求できること」だけ。債権そのものは消滅しない。反対給付(代金を払う側の義務)は当然には消えない→契約を解除して免れる(双方に責めがない不能なら、解除前でも536条1項で支払を拒める)。損害賠償への転化は別の回で見た。 図:履行不能の扱い

  • 412条の2第1項=債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない
  • →消えるのは「請求できること」だけ
  • 債権そのものは消滅しない
  • 反対給付(代金を払う側の義務)は当然には消えない→契約を解除して免れる(双方に責めがない不能なら、解除前でも536条1項で支払を拒める)
  • 損害賠償への転化は別の回で見た

条文が言っているのは、債権者が、履行を請求できなくなる、ということだけです。債権が消えた、とは書いていません。代金を払う側の義務も、当然には消えません。払う義務を免れたいなら、契約を解除します。ただ、どちらにも責任がない不能なら、解除する前でも、536条の1項で、代金の支払は拒めます。受領遅滞と危険の移転の回で見たとおりで、消えてはいないけれど、拒める、という形です。履行不能で、損害賠償に切り替わる話は、履行不能の回で見たとおりです。今日は、消滅原因の一覧に、履行不能は入らない、とだけ持ち帰ってください。

弁済とは何か

弁済(473条)。債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は消滅する。弁済=債務者が、債権の内容である給付を実現すること。履行・支払はほぼ同じ意味(履行=給付行為の動き/支払=金銭債務)。弁済意思は不要=債務の内容に適した給付が客観的に行われれば弁済(準法律行為説=通説)。 図:弁済

  • 473条
  • 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は消滅する。弁済=債務者が、債権の内容である給付を実現すること。履行・支払はほぼ同じ意味(履行=給付行為の動き/支払=金銭債務)。弁済意思は不要=債務の内容に適した給付が客観的に行われれば弁済(準法律行為説=通説)。

中心の、弁済です。条文を出します。

条文民法473条

民法第473条 債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。

短い条文です。弁済とは、債務者が、債権の内容である給付を実現することです。代金債権なら、代金を払うこと。引渡債権なら、物を引き渡すことです。履行や支払という言葉も、ほぼ同じ意味で使います。履行は、給付する行為に着目した言い方で、支払は、金銭債務の場合の言い方です。この条文は、2017年の改正で入りました。以前は、弁済で債権が消える、ということが、あたりまえとして、条文には書かれていませんでした。今は、消滅原因だと、明文になっています。弁済って、「これを弁済します」という気持ちが要るんですか。要りません。たとえば、小売チェーンが、卸会社に、代金480万円を払いました。このとき、これは弁済のつもりだ、という内心が無くても、客観的に、債務の内容どおりの給付が行われていれば、弁済になります。この考え方は、通説で、弁済を、意思表示ではなく、準法律行為と見ます。準法律行為は、法律行為の解釈の回で見た、効果が、望んだからではなく、法律が付けたから出る行為です。名前は、準法律行為説です。事実行為と見る説もありますが、答案での帰結は、変わりません。説の名前は、一言覚えておけば足ります。弁済は、段階を経て完成します。まず、債務者が、準備します。次に、債務者が、提供します。最後に、債権者が、受け取ります。この真ん中の、提供が、今日の本題です。

弁済の提供とは何か。弁済とは別物

弁済までの3段階。①準備(債務者)→②提供(債務者)=ここまでが債務者の仕事→③受領(債権者)=弁済の完成。提供=債務者としてやるべきことは全部やり、あとは債権者の受け取りを待つだけの状態。提供しても債権は消えない=消えるのは弁済のとき。履行の提供=弁済の提供(同じ出来事)。 図:弁済までの3段階

  • ①準備(債務者)→②提供(債務者)=ここまでが債務者の仕事→③受領(債権者)=弁済の完成
  • 提供=債務者としてやるべきことは全部やり、あとは債権者の受け取りを待つだけの状態
  • 提供しても債権は消えない=消えるのは弁済のとき
  • 履行の提供=弁済の提供(同じ出来事)

弁済の提供とは、債務者として、やるべきことを全部やって、あとは債権者が受け取るだけ、という状態にすることです。以前、受領遅滞の回で、履行の提供、という言葉が出てきました。弁済の提供と、同じ出来事です。条文によって、呼び方が違うだけです。提供すれば、債権は消えるんですか。消えません。ここが、最初の重要点です。提供は、弁済ではありません。債権が消えるのは、債権者が受け取って、弁済が完成したときです。提供の段階では、まだ、債権は残っています。では、提供に、何の意味があるのか。条文です。

条文民法492条

民法第492条 債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。

提供をすれば、その時から、債務を履行しないことによって生じる責任を、免れます。債務は残るけれど、遅れの責任は負わない。この、ずれが、提供の本質です。次に、提供は、どうすればできたことになるのか。それを定めるのが、493条です。

現実の提供:原則

493条。本文=弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし書=債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。 図:493条

  • 本文=弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない
  • ただし書=債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる

条文民法493条

民法第493条 弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。

まず、本文です。原則は、現実の提供です。債務の本旨に従って、現実にしなければなりません。債務の本旨とは、債務の本来の内容、つまり、約束した中身のことです。今日は、小売チェーンと卸会社の設例で見ます。小売チェーンが、卸会社から仕入れた商品の代金480万円を、月末に、卸会社の本社へ持参して払う約束です。持参して払う債務を、持参債務と言います。

現実の提供の関係図。A小売チェーン(債務者)の経理担当が、480万円を持って、B卸会社の本社へ行く。受付に差し出し、受け取れる状態にした。担当者が不在でも、受付に差し出せば提供になる。持って行く先は債権者の現在の住所(484条1項が原則)。 図:現実の提供の関係図

  • A小売チェーン(債務者)の経理担当が、480万円を持って、B卸会社の本社へ行く
  • 受付に差し出し、受け取れる状態にした
  • 担当者が不在でも、受付に差し出せば提供になる
  • 持って行く先は債権者の現在の住所(484条1項が原則)

現実の提供とは、債務の中身を、約束の場所に持って行って、債権者が受け取るだけの状態にすることです。小売チェーンの経理担当が、480万円を持って、卸会社の本社へ行きます。受付に差し出して、いつでも受け取れる状態にした。これが、現実の提供です。卸会社の担当者が不在でも、約束の場所まで持って行って、受け取れる状態にしたなら、提供になります。債権者の都合で会えなかっただけで、債務者のやるべきことは、全部やっているからです。持って行く先は、特に決めがなければ、債権者の現在の住所です。弁済の場所を定めた484条の1項が、そう言っています。本旨に含まれる、給付の場所、時間、費用などの細かい話は、別の回で見ます。今日は、持参債務の原則までです。さて、債務の本旨に従う、とは、具体的にどういうことか。3つ見ます。1つめ。約束と違う物を持って行っても、提供になりません。約束と違う物は、約束した中身、つまり債務の本旨に従っていないので、債権者は、受け取りを拒んで構いません。2つめ。一部だけの提供は、原則として、債務の本旨に従いません。たとえば、480万円のところ、400万円しか持って行かなかった。これは、提供になりません。ただし、ごくわずかな不足なら、提供と認められることが多いです。

一部の提供。原則=一部だけの提供は債務の本旨に従わず、提供にならない(例=480万円のところ400万円)。例外=ごくわずかな不足(例=3千円だけ足りない)は提供と認められることが多い。判例(最判昭35・12・15 民集14巻14号3060頁)=不足は元利約15万円余りに対して約1,300円→提供・供託の効果を否定できない。一部弁済は承認として時効が更新される(別論点)。 図:一部の提供

  • 原則=一部だけの提供は債務の本旨に従わず、提供にならない(例=480万円のところ400万円)
  • 例外=ごくわずかな不足(例=3千円だけ足りない)は提供と認められることが多い
  • 判例(最判昭35・12・15 民集14巻14号3060頁)=不足は元利約15万円余りに対して約1,300円→提供・供託の効果を否定できない
  • 一部弁済は承認として時効が更新される(別論点)

たとえば、480万円のところ、端数の計算を間違えて、3千円足りないまま持って行った。これは、金額の1%にも満たない不足です。判例は、こういう、ごくわずかな不足なら、提供の効果を否定できない、と判断しました。債権者が、その程度の不足を理由に受け取りを断るのは、認められにくい、という方向の判断です。ただし、大きく足りなければ、提供になりません。400万円は、駄目です。なお、一部の弁済をしたこと自体は、債務者が、債務の存在を認めたことになります。これを、承認と言います。時効の更新の回で見たとおり、承認があれば、時効は更新します。提供になるか、とは別の話です。3つめ。金銭債務では、何を持って行けばよいか。現金が、基本です。そのほか、銀行が自分あてに振り出した小切手、自己宛小切手は、取引の世界で、現金と同じように扱われています。そのため、特段の事情がなければ、債務の本旨に従った提供になる、と判例も言っています。代理人による提供でも、構いません。提供をするのは、債務者本人に限られません。

口頭の提供で足りる2場面

口頭の提供(493条ただし書)=弁済の準備をしたことを通知して、その受領を催告する(準備+通知+催告)。足りる場面=①債権者があらかじめ受領を拒んだとき②債務の履行について債権者の行為を要するとき。判例の言葉では「言語上の提供」。 図:口頭の提供

  • 493条ただし書
  • =弁済の準備をしたことを通知して、その受領を催告する(準備+通知+催告)。足りる場面=①債権者があらかじめ受領を拒んだとき②債務の履行について債権者の行為を要するとき。判例の言葉では「言語上の提供」。

ここから、ただし書です。画面の条文の後半を、もう一度見てください。債権者があらかじめ受領を拒み、または、債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知して、受領の催告をすれば足りる、とあります。これが、口頭の提供です。判例の言葉では、言語上の提供とも言います。同じものです。口頭で足りるとされる理由は、現実の提供が、無駄になる場面があるからです。受け取らないと言っている相手に、わざわざ現金を持って行っても、受け取ってもらえません。また、債権者の協力が、そもそも要る債務では、債務者だけでは、現実の提供が完成しません。こういう場面で、債務者に、現実の提供まで求めるのは、酷です。だから、口頭の提供を、足りることにしました。今日の軸は、債権者が協力してくれないぶんだけ、債務者の仕事が軽くなる、ということです。口頭の提供の中身は、3つです。準備をする。そのことを通知する。受け取ってほしいと催告する。準備とは、すぐに弁済できる状態にしておくことです。金銭なら、手元に現金があることまでは要りません。調達できる確実な方法を、講じてあれば足ります。通知と催告は、同時にされることが多いです。場面は、2つです。1つめは、債権者が、あらかじめ受領を拒んだとき。卸会社が、品質に不満があるから、今後その代金は受け取らない、と通告してきた。小売チェーンは、480万円を用意して、用意したから受け取ってほしい、と伝えれば足ります。

口頭の提供の2場面。①あらかじめ受領を拒んだ=卸会社「品質に不満だ、今後その代金は受け取らない」→小売チェーンは「480万円を用意した。受け取ってほしい」と通知・催告。②債権者の行為を要する=取立債務(卸会社の担当者が店舗へ集金に来る約束)・登記債務(登記に債権者の協力が要る)・履行の場所や時期を債権者が指定する債務。→小売チェーンは集金日に用意して「用意できた、取りに来てほしい」と通知。 図:口頭の提供の2場面

  • ①あらかじめ受領を拒んだ=卸会社「品質に不満だ、今後その代金は受け取らない」→小売チェーンは「480万円を用意した。受け取ってほしい」と通知・催告
  • ②債権者の行為を要する=取立債務(卸会社の担当者が店舗へ集金に来る約束)・登記債務(登記に債権者の協力が要る)・履行の場所や時期を債権者が指定する債務
  • →小売チェーンは集金日に用意して「用意できた、取りに来てほしい」と通知

2つめは、債務の履行について、債権者の行為を要するとき。代表が、取立債務です。たとえば、代金は、卸会社の担当者が、小売チェーンの店舗へ、集金に来る約束だった。取りに来るのは、卸会社です。小売チェーンは、集金日に、用意をして、用意できたから、取りに来てほしい、と通知すれば足ります。ほかにも、登記を移す債務です。登記は、債権者の協力が無ければ、できません。履行の場所や時期を、債権者が指定する債務も、同じです。引渡場所の指定が足りなくても、問い合わせれば、直ちに分かる程度なら、通知として足りる、とされています。細かい形式より、準備があって、受け取りを求めた、という実質を見ます。

取立債務の注意。遅れの責任を免れるだけなら、取立債務は口頭の提供も不要(取りに来ないこと自体が遅れの違法性を消す)。同時履行の抗弁権の存在効果を奪うには、取立債務でも提供が必要で、方法は口頭の提供で足りる。試験では「取立債務=口頭の提供の典型」と覚えてよい。 図:取立債務の注意

  • 遅れの責任を免れるだけなら、取立債務は口頭の提供も不要(取りに来ないこと自体が遅れの違法性を消す)
  • 同時履行の抗弁権の存在効果を奪うには、取立債務でも提供が必要で、方法は口頭の提供で足りる
  • 試験では「取立債務=口頭の提供の典型」と覚えてよい

取立債務について、1つ注意です。いま、通知すれば足りる、と言いました。ただ、何のための提供かで、答えが2つに分かれます。画面を見てください。遅れの責任を免れるだけを見るなら、取立債務は、口頭の提供も要らない、と整理されます。取りに来ない債権者がいる、そのこと自体が、遅れの違法性を消すからです。ただ、相手の同時履行の抗弁権を封じるには、取立債務でも、提供が必要で、方法は、口頭の提供で足ります。試験では、取立債務は、口頭の提供で足りる場面の典型、と覚えて構いません。この板は、免責だけを見る場面では、さらに軽い、という補足です。

口頭の提供すら要らない場合

3段目の入口。口頭の提供のさらに先。債権者が「契約そのものがない。代金は一切受け取らない」と言っている場合、債務者は、口頭の提供も必要か。設例=卸会社「あの売買はなかったことになっている」→小売チェーンは口頭の提供すらしていない。 図:3段目の入口

  • 口頭の提供のさらに先
  • 債権者が「契約そのものがない。代金は一切受け取らない」と言っている場合、債務者は、口頭の提供も必要か
  • 設例=卸会社「あの売買はなかったことになっている」→小売チェーンは口頭の提供すらしていない

さらに先があります。卸会社が、こう言い切っているとします。あの売買は、なかったことになっている。代金は、一切受け取らない。このとき、小売チェーンが、口頭の提供すらしていなかったら、遅れの責任を負うのでしょうか。最高裁の大法廷が、判断しました。事案は、賃貸借です。賃貸人が、賃貸借の解除を主張し続けて、賃貸借契約の存在そのものを争っていました。その間の賃料について、賃借人は、口頭の提供をしなかったのです。判旨です。

判例最大判昭32・6・5 民集11巻6号915頁

口頭の提供も要らない場合 債権者が予め弁済の受領を拒んだときは、債務者をして現実の提供をなさしめることは無益に帰する場合があるから、これを緩和して民法四九三条但書において、債務者は、いわゆる言語上の提供、すなわち弁済の準備をなしその旨を通知してその受領を催告するを以て足りると規定したのである。そして、債権者において予め受領拒絶の意思を表示した場合においても、その後意思を翻して弁済を受領するに至る可能性があるから、債権者にかかる機会を与えるために債務者をして言語上の提供をなさしめることを要するものとしているのである。……しかし、債務者が言語上の提供をしても、債権者が契約そのものの存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確と認められる場合においては、債務者が形式的に弁済の準備をし且つその旨を通知することを必要とするがごときは全く無意義であつて、法はかかる無意義を要求しているものと解することはできない。それ故、かかる場合には、債務者は言語上の提供をしないからといつて、債務不履行の責に任ずるものということはできない。

前半と後半に分けて読みます。前半は、ただし書の趣旨です。債権者が、あらかじめ受領を拒んだときは、現実の提供は、無益だから、口頭の提供で足りる。そして、債権者が、あらかじめ拒んでも、あとで意思を翻して受け取る可能性がある。だから、その機会を与えるために、口頭の提供をさせる。これが、ただし書の理由だと言っています。後半が、結論です。しかし、債権者が、契約そのものの存在を否定するなど、受け取らない意思が明確なら、口頭の提供をさせるのは、全く無意義だ。だから、口頭の提供をしなくても、債務不履行の責任は負わない、と判断しました。

2つの拒み方を分けるのは、債権者が考えを変える余地、つまり翻意の余地があるかどうかです。受領を拒んだ、というだけなら、条件次第で気が変わるかもしれません。品質を直したら受け取る、という拒み方なら、口頭の提供で、機会を与える意味があります。一方、契約そのものを否定していて、何を言っても受け取らないことが明らかなら、口頭の提供をしても、意味がありません。

2つの拒絶の差。あらかじめ受領を拒む(条件次第で翻意の余地あり)→口頭の提供が必要(準備+通知+催告)。契約の存在そのものを否定するなど、受領しない意思が明確(何を言っても受け取らない)→口頭の提供も不要=準備だけでよい(遅れの責任について)。理由=形式的に準備して通知させるのは全く無意義。 図:2つの拒絶の差

  • あらかじめ受領を拒む(条件次第で翻意の余地あり)→口頭の提供が必要(準備+通知+催告)
  • 契約の存在そのものを否定するなど、受領しない意思が明確(何を言っても受け取らない)→口頭の提供も不要=準備だけでよい(遅れの責任について)
  • 理由=形式的に準備して通知させるのは全く無意義

設例で整理します。卸会社が、品質に不満があるから受け取らない、と言うなら、直せば受け取るかもしれません。小売チェーンは、口頭の提供をします。卸会社が、売買はなかったと言い切るなら、小売チェーンは、口頭の提供をしなくても、遅れの責任を負いません。債権者が協力しないぶんだけ債務者の仕事が軽くなる、という軸のとおり、債権者が、協力する気を、全く見せないぶん、債務者の手間が、さらに軽くなったのです。

ただし、準備ができない債務者は別

受領拒絶が明確な場合のさらに先。債権者が受領しない意思を明確にしている。しかし債務者の側に、弁済の準備がない。設例=小売チェーンは経営難で480万円を用意する資力も当ても無い。卸会社は「受け取らない」と明言している。→責任を免れるか。対比=資金は手元(または確実な調達の当て)にあるが、卸会社が受け取らない小売チェーン。 図:受領拒絶が明確な場合のさらに先

  • 債権者が受領しない意思を明確にしている
  • しかし債務者の側に、弁済の準備がない
  • 設例=小売チェーンは経営難で480万円を用意する資力も当ても無い
  • 卸会社は「受け取らない」と明言している
  • →責任を免れるか
  • 対比=資金は手元(または確実な調達の当て)にあるが、卸会社が受け取らない小売チェーン

今の判例には、続きがあります。卸会社は、受け取らないと明言しています。ところが、小売チェーンは、経営が苦しく、480万円を用意する資力も、当ても無い。この小売チェーンも、遅れの責任を免れるのでしょうか。免れません。最高裁は、そう判断しました。事案は、賃貸借です。賃貸人が、期間が満了したと主張して、賃料を受け取りませんでした。ところが、賃借人の会社は、債務超過で、倒産し、清算に入っていて、賃料を払う余力も無く、準備すらしていませんでした。賃料を払わなかったことを理由にした、解除が、有効とされました。判旨は、前提、結論、理由の3つに分かれます。まず、前提と結論です。

判例最判昭44・5・1 民集23巻6号935頁

弁済の準備ができない債務者:前提と結論 賃貸借契約に基づく賃料債務の支払について、債権者たる賃貸人が当該賃貸借契約の存在を否定するなどして、賃料債務の弁済を受領しない意思が明確であると認められるときは、債務者たる賃借人は言語上の提供をしなくても債務不履行の責を免かれるものと解すべきではあるが(略)、このことは、賃借人において言語上の提供をすることが可能なことを前提としているものであつて、経済状態不良のため弁済の準備ができない状態にある賃借人についてまでも債務不履行の責を免かれるとするものではない。……すなわち、弁済の準備ができない経済状態にあるため言語上の提供もできない債務者は、債権者が弁済を受領しない意思が明確と認められるときでも、弁済の提供をしないことによつて債務不履行の責を免かれないものと解すべきである。

1つめは、前提です。債権者が受け取らない意思を明確にしているとき、債務者は、口頭の提供をしなくても免れる。ただし、この結論は、債務者が、口頭の提供をすることが可能なことを前提にしている。つまり、準備ができている債務者の話です。2つめは、結論です。準備ができない経済状態にある債務者は、債権者が受け取らない意思が明確でも、弁済の提供をしないかぎり、責任を免れません。続けて、理由の部分です。

判例最判昭44・5・1 民集23巻6号935頁

弁済の準備ができない債務者:理由 けだし、弁済に関して債務者のなすべき準備の程度と債権者のなすべき協力の程度とは、信義則に従つて相関的に決せられるべきものであるところ、債権者が弁済を受領しない意思が明確であると認められるときには、債務者において言語上の提供をすることを必要としないのは、債権者により現実になされた協力の程度に応じて、信義則上、債務者のなすべき弁済の準備の程度の軽減を計つているものであつて、逆に、債務者が経済状態の不良のため弁済の準備ができない状態にあるときは、そもそも債権者に協力を要求すべきものではないから、現実になされた債権者の協力の程度とはかかわりなく、信義則上このような債務者に前記のような弁済の準備の程度についての軽減を計るべきいわれはないのである。

3つめは、理由です。ここが、いちばん大事です。弁済に関して、債務者がすべき準備の程度と、債権者がすべき協力の程度は、信義則上、相関的に決まります。債権者が、受け取らない意思を明確にしているなら、その非協力に応じて、債務者の準備の程度を軽くする。これが、口頭の提供も要らない、という、先ほどの大法廷の結論です。ところが、債務者が、そもそも準備ができない状態なら、債権者に協力を求めるべき前提を、欠きます。準備を軽くするのは、払える状態で待っている債務者に、相手が受け取らないせいで、無駄な手間をかけさせないためです。準備のない債務者は、相手が受け取らないから払えなかった、のではなく、もともと払えなかったのです。債権者の態度とは関わりなく、準備を軽くしてやるいわれは、ありません。

玄関のチャイムを押して待っている配達員と、荷物を持たずに玄関前に立っている人を、比べてください。相手が出てこなくても、配達員は、届けようとした、と言えます。荷物が無ければ、出てこない相手のせいにはできません。債権者が受け取らないのは、準備のある債務者を救う理由で、準備の無い債務者を救う理由ではない、ということです。まとめます。債権者が、受け取らない意思を明確にしているなら、債務者は、口頭の提供をしなくても、準備ができていさえすれば、その後の遅れの責任は生じません。準備のできない債務者は、そうはいきません。この対比が、答案の核になります。

3段の要件を1枚で

弁済の提供の要件(3段)。①現実の提供(原則)=債務の本旨に従って、給付場所に持参し、債権者が受け取るだけの状態にする。②口頭の提供=あらかじめ受領を拒む/債権者の行為を要する→準備+通知+催告。③不要=契約の存在を否定するなど受領しない意思が明確→準備だけでよい(遅れの責任について)。ただし弁済の準備ができない債務者は不可(提供しないと責任を免れない)。 図:弁済の提供の要件

  • 3段
  • ①現実の提供(原則)=債務の本旨に従って、給付場所に持参し、債権者が受け取るだけの状態にする。②口頭の提供=あらかじめ受領を拒む
  • 債権者の行為を要する→準備+通知+催告。③不要=契約の存在を否定するなど受領しない意思が明確→準備だけでよい(遅れの責任について)。ただし弁済の準備ができない債務者は不可(提供しないと責任を免れない)。

ここで、3段を、1枚にまとめます。画面の図を見てください。1段目は、現実の提供です。債権者が、普通に受け取れる場面で、債務の本旨に従って、約束の場所に持って行き、債権者が受け取るだけの状態にします。2段目は、口頭の提供です。債権者が、あらかじめ受領を拒んだとき、または、債権者の行為が要るとき、準備をして、通知して、催告します。3段目は、提供が不要の場合です。受け取らない意思が明確なら、遅れの責任については、準備だけで足ります。ただし、準備ができない債務者は、ここに入れません。判断の順番は、3つです。まず、債権者は、受け取れる状態か、受け取らない意思を示しているか。次に、その段階に応じた提供を、したか。最後に、そもそも、準備はあったか。この順で見ると、迷いません。

提供の効果:492条の中身

提供の効果(492条)。①債務を履行しないことによる責任を免れる=履行遅滞を理由とする解除を受けない/遅延損害金・損害賠償を請求されない/違約金を請求されない/担保権を実行されない。②同時履行の抗弁権(や留置権)の存在効果を奪う→以後、反対債務の不履行が違法になる。③約定利息が止まる。注意=債務は消えない。 図:提供の効果

  • 492条
  • ①債務を履行しないことによる責任を免れる=履行遅滞を理由とする解除を受けない
  • 遅延損害金・損害賠償を請求されない
  • 違約金を請求されない
  • 担保権を実行されない。②同時履行の抗弁権(や留置権)の存在効果を奪う→以後、反対債務の不履行が違法になる。③約定利息が止まる。注意=債務は消えない。

提供をすると、どうなるのか。492条の中身を、3つに分けて見ます。1つめ。債務を履行しないことによって生じる責任を、免れます。具体的に、4つあります。履行遅滞を理由にした、契約の解除を受けません。遅延損害金や損害賠償を、請求されません。約束した違約金を、請求されません。担保権も、実行されません。たとえば、小売チェーンが、480万円を提供したあとで、卸会社が、遅れたことを理由に、約束の遅延損害金を請求したり、売買契約を解除したりすることは、できません。2つめ。債務者が自分の債務の履行を提供すると、相手方は、同時履行の抗弁権の存在効果を、奪われます。履行遅滞の要件の回で見た話です。たとえば、品物の引渡しと代金の支払が、同時の約束だったとします。代金をもらうまで渡さない、と言える間は、卸会社は、品物を渡さなくても、遅れの責任を問われません。ところが、小売チェーンが、480万円を持って行って提供すると、この言い分は、遅れを正当にする力を失い、以後、卸会社が品物を渡さなければ、卸会社の遅れが、違法になります。一方、卸会社が、引換えでなければ渡さない、と主張して、引渡しそのものを拒めるかどうか、つまり行使上の効果と、提供を続ける必要があるかどうかは、同時履行の抗弁権の本体の話で、後の章で見ます。留置権も、同じ働きがあります。3つめ。約定の利息が、止まります。たとえば、小売チェーンが、残りの代金300万円を分割で払う約束で、年利6%の利息が付く取引だったとします。1か月分の利息は、1万5千円です。元本と、その月の利息を、持参して提供した。以後は、利息が増えません。

提供をしても、債務は消えません。これが、いちばん大事な注意です。提供は、債務者を、遅れの責任から解放するだけです。債権は残っています。消すには、債権者に受け取ってもらって、弁済を完成させます。受け取らない債権者に対しては、債務を消す手段として、供託があります。供託の中身は、別の回で見ます。今日は、提供と弁済が、別物だという点だけで、足ります。

提供の効果・受領遅滞の効果・特定を区別する

3列の区別板。似た場面で問題になる、3つの別々の効果を並べる。左=弁済の提供の効果(債務者の側)=責任を免れる・同時履行の存在効果が止まる・約定利息が止まる(492条)。中=受領遅滞の効果(債権者の側)=保存の注意の軽減・増加費用の債権者負担(413条)・危険の移転(名前だけ)。右=特定の効果=種類物の債務で、給付に必要な行為を完了すると目的物が決まり、債務者は調達義務を負わなくなる(401条2項)。 図:3列の区別板

  • 似た場面で問題になる、3つの別々の効果を並べる
  • 左=弁済の提供の効果(債務者の側)=責任を免れる・同時履行の存在効果が止まる・約定利息が止まる(492条)
  • 中=受領遅滞の効果(債権者の側)=保存の注意の軽減・増加費用の債権者負担(413条)・危険の移転(名前だけ)
  • 右=特定の効果=種類物の債務で、給付に必要な行為を完了すると目的物が決まり、債務者は調達義務を負わなくなる(401条2項)

思い出してみましょう。受領遅滞の回で、提供の効果を、左右に切り分けました。右側、受け取らない債権者の側には、どんな効果が付いたでしょうか?物を保存する注意が軽くなることと、増えた費用を、債権者が負担することです。それが右側、受領遅滞の効果です。左側は、提供そのものの効果で、債務者の側でした。今日は、その左側を、埋めました。ここで、もう一度、3列で並べ直します。左は、弁済の提供の効果です。責任を免れる、同時履行の存在効果が止まる、約定利息が止まる。債務者の側に付く効果です。中は、受領遅滞の効果です。保存の注意が軽くなる、増えた費用は債権者の負担、危険の移転です。危険の移転は、受領遅滞と危険の移転の回で見た、誰のせいでもない事故の不利益が、受け取らなかった債権者の側に回ることです。債権者が、受け取らない、という事実に付く効果です。右は、特定の効果です。種類債権の特定の回で見た、同じ型のどれか1台、という債務が、この1台、の債務に絞られる話です。種類物の債務で、債務者が、給付に必要な行為を完了すると、その物が目的物になり、債務者は、同じ型の別の1台を仕入れて届ける、調達義務を負わなくなります。

提供の要件と特定の要件は、一部が重なります。持参債務なら、現実の提供と、特定の要件は、近い内容です。取立債務なら、特定は、物を分離して、準備して、通知すれば足ります。提供は、準備して、通知して、催告します。ただし、効果は、全く違います。特定は、調達義務が終わる。提供は、遅れの責任を免れる。特定は、どの物を渡すかが決まる話で、提供は、遅れの責任を負うかどうかの話だからです。別の出来事として、持ってください。また、特定物、つまり、最初からこの1台と決まっている物の債権でも、提供は問題になりますが、特定は問題になりません。

冒頭の答えと、まとめ

冒頭の答え。①持って行った分=現実の提供ができている(家賃は大家の住所へ持参する債務=484条1項が原則)→以後の遅れの責任なし(解除されない・遅延損害金なし)(492条)。②翌月以降=大家があらかじめ受領を拒んでいる→口頭の提供で足りる。拒絶が揺るがず明確なら準備だけでよい(遅れの責任について)(値上げに応じれば受け取る、と翻意の余地があるなら口頭の提供まで)。③払う用意は切らさない。④債務は消えていない=払う義務は残る。 図:冒頭の答え

  • ①持って行った分=現実の提供ができている(家賃は大家の住所へ持参する債務=484条1項が原則)→以後の遅れの責任なし(解除されない・遅延損害金なし)(492条)
  • ②翌月以降=大家があらかじめ受領を拒んでいる→口頭の提供で足りる
  • 拒絶が揺るがず明確なら準備だけでよい(遅れの責任について)(値上げに応じれば受け取る、と翻意の余地があるなら口頭の提供まで)
  • ③払う用意は切らさない
  • ④債務は消えていない=払う義務は残る

冒頭の家賃の答えです。借主は、月末に、大家さんの家へ、家賃を持って行きました。家賃は、大家さんの住所へ持参するのが原則ですから、これは、現実の提供です。大家さんが断っても、持って行った時点で、提供は、できています。その分については、以後の遅れの責任を、負いません。解除もされず、遅延損害金も、請求されません。翌月以降は、どうか。大家さんが前月の態度を変えていないなら、大家さんは、あらかじめ受領を拒んでいます。だから、口頭の提供で足ります。用意したので受け取ってほしい、と伝えるのです。さらに、大家さんの拒絶が、揺るがず、明確なら、準備だけで足ります。ただし、値上げに応じれば受け取る、という拒み方なら、翻意の余地があります。口頭の提供は、しておくのが安全です。注意が2つあります。1つめ。家賃を払う用意は、切らさないでください。準備ができていなければ、準備ができない債務者の例外にあたり、責任を免れません。2つめ。債務は、消えていません。家賃を払う義務は残ります。消すのは、受け取ってもらうか、あるいは供託です。

まとめ板。①弁済(473条)=債権の消滅原因。弁済意思は不要②弁済の提供=債務者のやるべきことを全部やり受け取りを待つ状態。提供≠弁済(債権は消えない)③3段=現実の提供(原則)/口頭の提供(準備+通知+催告・2場面)/不要(受領拒絶が明確→遅れの責任について準備だけ)④準備ができない債務者は不可(信義則上、準備の程度と協力の程度は相関)⑤効果(492条)=責任を免れる・同時履行の存在効果を奪う・約定利息が止まる⑥提供の効果・受領遅滞の効果・特定は別物。 図:まとめ板

  • ①弁済(473条)=債権の消滅原因
  • 弁済意思は不要②弁済の提供=債務者のやるべきことを全部やり受け取りを待つ状態
  • 提供≠弁済(債権は消えない)③3段=現実の提供(原則)/口頭の提供(準備+通知+催告・2場面)/不要(受領拒絶が明確→遅れの責任について準備だけ)④準備ができない債務者は不可(信義則上、準備の程度と協力の程度は相関)⑤効果(492条)=責任を免れる・同時履行の存在効果を奪う・約定利息が止まる⑥提供の効果・受領遅滞の効果・特定は別物

整理します。1つめ、弁済は、債権の消滅原因です。弁済意思は、要りません。履行不能は、消滅原因ではなく、請求ができなくなるだけです。2つめ、弁済の提供は、債務者がやるべきことを全部やって、受け取りを待つ状態です。提供は弁済ではなく、債権は消えません。3つめ、提供は3段です。現実の提供が原則です。あらかじめ受領を拒まれたとき、または、債権者の行為が要るときは、口頭の提供で足ります。受領しない意思が明確なら、遅れの責任については、準備だけで足ります。4つめ、払える用意の無い債務者は、債権者の拒絶が明確でも、責任を免れません。理由は、準備の程度と協力の程度が、信義則上、相関するからです。そして5つめは、効果です。責任を免れる、同時履行の存在効果を奪う、約定利息が止まる。そして、提供の効果と、受領遅滞の効果と、特定は、別物です。試験で聞かれたら、提供したか、どの段階の提供か、準備はあったか、の順に確認してください。口頭の提供すら要らない場合と、その例外の2つの判例は、論文でも論点になりうる分野です。誰が弁済できるのか、誰に弁済すればよいのかは、別の回で見ます。

参照条文

  • 民法473条
  • 民法492条
  • 民法493条

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