民法ゼロから民法#180

弁済による代位

印刷用PDFを開く

第4章 債権総論 #180/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

保証人が全額払ったら、銀行の抵当権はどうなる

冒頭の関係図。借主は銀行から住宅ローンの残り1000万円を借りていて、借主の家には銀行の抵当権が付いている。友人が保証人になっていた。借主が払えなくなり、保証人が銀行へ1000万円を全額払った。問い=銀行の債権は消えるはず。では、家に付いていた抵当権はどうなるのか。 図:冒頭の関係図

  • 借主は銀行から住宅ローンの残り1000万円を借りていて、借主の家には銀行の抵当権が付いている
  • 友人が保証人になっていた
  • 借主が払えなくなり、保証人が銀行へ1000万円を全額払った
  • 問い=銀行の債権は消えるはず
  • では、家に付いていた抵当権はどうなるのか

今日は、その問いです。借主の家に、銀行の抵当権が付いている。保証人が、銀行へ1000万円を全額払った。払った瞬間に、銀行の債権は消えるはずです。債権が消えれば、付従性で、抵当権も消える。家は、ただの家に戻る。そう考えるのが、自然です。先に答えを言います。この抵当権は、消えません。払った保証人が、使えるようになります。ただし、使えるのは、保証人が借主へ請求できる額の範囲までです。なぜ、消えるはずの債権が、払った人へ移るのか。移ったものを、どこまで使えるのか。これが弁済による代位です。前回までで、払うことの周辺を片づけました。今日は、払った人が、そのあと何を手にするのか、という話です。

なぜ代位が要るのか

代位の意義。保証人が1000万円を払う→借主に求償権(立て替えた分を返せという権利)を持つ。だが求償権は担保のない普通の債権。数値例=借主の財産は家だけ(競売で1200万円)。別の貸主の無担保債権が1000万円。求償権だけ=1200万円を2人で按分→保証人600万円・別の貸主600万円。代位で銀行の抵当権を使う=保証人1000万円・別の貸主200万円。 図:代位の意義

  • 保証人が1000万円を払う→借主に求償権(立て替えた分を返せという権利)を持つ
  • だが求償権は担保のない普通の債権
  • 数値例=借主の財産は家だけ(競売で1200万円)
  • 別の貸主の無担保債権が1000万円
  • 求償権だけ=1200万円を2人で按分→保証人600万円・別の貸主600万円
  • 代位で銀行の抵当権を使う=保証人1000万円・別の貸主200万円

第三者が弁済をすると、債権は消えます。ここまでは、第三者弁済の回で見ました。そして払った人は、債務者に対して、求償権を持ちます。求償権とは、立て替えた分を返せという、払った人自身の権利です。保証人なら、ここに保証の規定が働きます。頼まれずに払った人なら、事務管理の費用の償還です。この中身は、別の回に回します。今日は、求償権がある、という前提で使います。では、求償権があるなら、それで足りるのでは。数字で見ます。借主の財産は、家だけです。競売にかけると、1200万円になります。ところが、借主には、銀行のほかにも、別の貸主がいて、担保の付いていない債権が1000万円あります。保証人の求償権は、担保の付いていない、普通の債権です。別の貸主の債権と、同じ並びになります。家の1200万円を、1000万円と1000万円で、割ります。600万円ずつです。保証人は、1000万円を払って、600万円しか戻りません。

抵当権のある債権は、家の代金から先に取れます。保証人が銀行の抵当権を使えれば、1200万円のうち、まず1000万円を取れます。残りの200万円が、別の貸主です。600万円と1000万円。この差が、代位の意味です。

条文民法499条

民法第499条 債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。

条文は、これだけです。債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。代位するとは、債権者の地位に、代わって立つことです。債権者が持っていた債権と、その債権に付いていた担保を、弁済した人が手にします。ここで、言葉を1つ決めます。弁済で、本来は消えるはずだった、債権者の債務者に対する債権。これを、以後、原債権と呼びます。今日の例なら、銀行の借主に対する1000万円の貸金債権が、原債権です。判例は、こう整理します。弁済による代位は、求償権を確保するために、原債権と担保権を、消さずに、その全部または一部を、払った人へ当然に移すものだ、と。消えて新しく生まれるのではなく、消さずに移すのです。共同抵当の2回めで、代位が2つ出てきました。後順位の抵当権者が、配当のところで使う392条の代位と、抵当権を実行された物上保証人が使う、この弁済による代位です。あのときは骨組みだけでした。今日は、払った人が使う、この代位の中身をほどきます。

求償権と原債権は別個の債権

払った人の手元の3層。求償権(主・払った人が債務者に対して自分の権利として持つ)/原債権(債権者から移ってきた債権・求償権を確保する道具)/抵当権(原債権の担保)。保証人Dは借主Bに求償権。Dが持つ原債権に抵当権が付き、抵当権は借主の家に付いたまま。 図:払った人の手元の3層

  • 求償権(主・払った人が債務者に対して自分の権利として持つ)/原債権(債権者から移ってきた債権・求償権を確保する道具)/抵当権(原債権の担保)
  • 保証人Dは借主Bに求償権
  • Dが持つ原債権に抵当権が付き、抵当権は借主の家に付いたまま

ここが、今日の山場です。払った人の手元には、債権が2つあります。1つめは、求償権。払った人が、自分の権利として、債務者に持つ債権です。2つめは、原債権。債権者から移ってきた債権で、抵当権などの担保が付いています。この2つは、別個の債権です。額も、利率も、時効も、ずれることがあります。そして、抵当権が担保しているのは、原債権のほうです。求償権ではありません。抵当権は、もともと銀行の貸金のために付けられ、その額で登記されています。後ろの債権者も、その額が先に取られることを前提にしています。払った人へ移っても、担保されるのが原債権のままなのは、そのためです。判例も、そう言っています。

判例最判昭59・5・29 民集38巻7号885頁

弁済による代位と、被担保債権 弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定により弁済によつて消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり、したがつて、代位弁済者が弁済による代位によつて取得した担保権を実行する場合において、その被担保債権として扱うべきものは、原債権であつて、保証人の債務者に対する求償権でないことはいうまでもない。

判旨の前半は、さっきの話です。求償権を確保するために、原債権と担保権を移す。そして、代位できるのは、求償権の範囲内、と書いてあります。後半は、実行するときの被担保債権は、原債権であって、求償権ではない、という確認です。この判例は、求償権が主で、原債権と担保は、それを確保する道具だ、という位置づけを、はっきりさせています。範囲内という条文を、読みます。

条文民法501条2項

民法第501条第2項 前項の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。

かっこの中は、保証人どうしの話です。今日は、読み飛ばします。本文の骨格は、権利の行使は、自己の権利に基づいて求償できる範囲内に限る、です。範囲内という限りが効くのは、原債権と求償権で、額がずれる場面です。数字で見ます。

上限の2ケース。設例=A卸会社の代金債権3000万円・B小売チェーンの倉庫にAの抵当権・社長Dが保証人。DがAに3000万円を払い、1年後に倉庫が競売された(競売代金は4000万円)。ケース1=原債権3300万円(3000万円+年10%の遅延損害金1年分300万円)/求償権3090万円(3000万円+弁済後の法定利息年3%1年分90万円)→Dが受け取れるのは3090万円(差額210万円は後順位の債権者へ)。ケース2=求償権に年15%の特約(3000万円+450万円=3450万円)/原債権3300万円→Dが受け取れるのは3300万円。小さい方が上限。 図:上限の2ケース

  • 設例=A卸会社の代金債権3000万円・B小売チェーンの倉庫にAの抵当権・社長Dが保証人
  • DがAに3000万円を払い、1年後に倉庫が競売された(競売代金は4000万円)
  • ケース1=原債権3300万円(3000万円+年10%の遅延損害金1年分300万円)/求償権3090万円(3000万円+弁済後の法定利息年3%1年分90万円)→Dが受け取れるのは3090万円(差額210万円は後順位の債権者へ)
  • ケース2=求償権に年15%の特約(3000万円+450万円=3450万円)/原債権3300万円→Dが受け取れるのは3300万円
  • 小さい方が上限

A卸会社の代金債権が3000万円。B小売チェーンの倉庫に、Aの抵当権が付いています。Bの社長Dが保証人で、Aへ3000万円を払いました。ここから1年、Bは、Dにも、Aから移った債権の分にも、払わないまま、倉庫が競売にかかります。代金は、4000万円とします。1つめのケース。原債権は、元本3000万円に、年10%の遅延損害金が1年分の300万円で、3300万円です。求償権は、3000万円に、弁済のあとの法定利息、年3%で1年分の90万円が付いて、3090万円です。率が違うのは、原債権の利率はAとBの契約で決めたもの、求償権の利息は払った日から法律が付けるもの、と出どころが違うからです。倉庫の代金から、Dが受け取れるのは、3090万円までです。原債権は3300万円ありますが、求償権の範囲内、という上限がかかります。差額の210万円は、後ろの債権者に回ります。2つめのケース。保証の契約で、求償権に年15%という利率の特約があったとします。1年分で450万円。求償権は、3450万円です。ところが、原債権は、3300万円のままです。Dが受け取れるのは、3300万円までです。求償権が大きくても、原債権の額を超えては、取れません。抵当権が担保しているのは、原債権だからです。特約で、原債権の利率が上がるわけではありません。結論は、小さい方が上限、です。求償権の範囲内で、かつ、原債権の範囲内。この2つの上限の、小さい方です。1つめの上限は、さっきの判例が、カードに載せなかった後半で、原債権を使える額は、求償権の総額までだ、と述べているものです。特約の中身は、別の回で扱います。

二重取りはできません。1つめのケースで、競売の前に、BがDへ1000万円を返したとします。求償権も、原債権も、その分減って、倉庫から取れる額も、その分、減ります。逆に、原債権の側で払われても、求償権が、その分、減ります。そして、払ったあとに、債務者から一部だけ返ってきたときは、求償権と原債権の、それぞれに、前回見た、充当の規定に従って充てる、というのが判例です。時効も、別々に進みます。ここは、そういうものがある、というところまでで、先へ進みます。軸に戻ります。求償権を確保する道具だから、求償権の範囲でしか使えない。ここは、論文で論点になりうるところです。

代位の要件

要件。①弁済(代物弁済・供託・相殺・混同・物上保証人が担保権の実行で所有権を失う場合も、通説は含める)②求償権の存在(贈与のつもりで払えば求償権がないので代位もない)。求償権の根拠=委託あり(委任の費用償還)・委託なし(事務管理の費用償還)・保証人・物上保証人。改正=正当な利益のない者の代位には債権者の承諾が要ったが、今は不要。 図:要件

  • ①弁済(代物弁済・供託・相殺・混同・物上保証人が担保権の実行で所有権を失う場合も、通説は含める)②求償権の存在(贈与のつもりで払えば求償権がないので代位もない)
  • 求償権の根拠=委託あり(委任の費用償還)・委託なし(事務管理の費用償還)・保証人・物上保証人
  • 改正=正当な利益のない者の代位には債権者の承諾が要ったが、今は不要

要件は、2つです。1つめは、弁済です。条文は弁済と書いていますが、債務を消滅させて、債務者に求償できる形になる行為なら、広く含める、というのが通説です。たとえば、代物弁済、供託、相殺、混同があります。物上保証人が、担保権を実行されて、所有権を失った場合も、含まれます。2つめは、求償権があることです。ここは、代位の入口です。求償権の生じない弁済も、あります。たとえば、友人に、贈与のつもりで、代わりに払ってあげたとします。返してもらう気は無かった。そうすると、そもそも求償権が生じません。求償権が無ければ、確保すべき対象が無いので、代位も生じません。道具は、目的があってのものだからです。求償権の根拠は、場面で違います。債務者に頼まれて払ったなら、委任の費用の償還です。頼まれずに払ったなら、事務管理の費用の償還です。保証人には、保証の規定があり、物上保証人には、保証の規定が準用されます。ここは名前で受けるだけです。そして、改正の話です。改正前は、正当な利益のない人が代位するには、弁済と同時に、債権者の承諾が必要でした。改正で、この承諾は不要になりました。弁済した人は、承諾なしに、債権者に代位します。債権者は、払ってもらって、もう満足しています。それなのに、代位だけは認めない、と拒めるのは、筋が通らないからです。

任意代位と法定代位は対抗要件だけが違う

500条。第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。法定代位=正当な利益を有する者の代位=対抗要件は不要。任意代位=それ以外の第三者の弁済による代位=債権譲渡と同じ対抗要件(債務者への通知または債務者の承諾)。設例=社長D(保証人)は不要・親会社C(保証も担保もしていない)は通知か承諾が要る。 図:500条

  • 第467条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する
  • 法定代位=正当な利益を有する者の代位=対抗要件は不要
  • 任意代位=それ以外の第三者の弁済による代位=債権譲渡と同じ対抗要件(債務者への通知または債務者の承諾)
  • 設例=社長D(保証人)は不要・親会社C(保証も担保もしていない)は通知か承諾が要る

立ち止まって、第三者弁済の回を思い出します。借地の上に建つ建物を借りている人が、借地人の代わりに、地代を払ってよいのは、なぜだったでしょうか?地代が払われないと、借地権が消えて、建物から出なければならなくなるので、払うことに法律上の利害関係があるからです。法律上の利害関係があるのが、正当な利益です。今日の条文の、正当な利益を有する者も、前に見た、第三者弁済の正当な利益と、同じ物差しです。その正当な利益を有する者が、弁済して代位するのが、法定代位です。それ以外の第三者が弁済して代位するのが、任意代位です。改正で承諾が要らなくなった結果、2つの違いは、対抗要件だけに残りました。対抗要件とは、債権譲渡の対抗要件の回で見たとおり、自分が権利者だと、債務者やほかの人に主張するための条件です。

条文民法500条

民法第500条 第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。

467条は、債権譲渡の対抗要件の条文です。債務者への通知、または債務者の承諾で、債務者に対抗できる。確定日付のある証書による通知か承諾で、第三者に対抗できる。ここでは、その準用先だけ、押さえます。かっこ書きで、正当な利益を有する者が代位する場合は、除かれています。つまり、法定代位には、対抗要件は不要です。任意代位だけが、債権譲渡と同じ通知か承諾を求められます。なぜ任意代位だけなのか。保証人や物上保証人は、債務者から見て、払うかもしれない人として、最初から見えています。見ず知らずの人が払って、債権者の立場に立ったことは、知らされなければ分かりません。思わぬ人から請求されたり、ほかの人と取り合いになったりしないように、債権譲渡と同じ通知か承諾を求めるのです。

さっきの会社の設例に当てはめます。保証人の社長Dが払えば、そのまま、Aの抵当権を使えます。Dには、正当な利益があるからです。保証人は、第三者弁済の回で見たとおり、自分の保証債務として払うので、474条の第三者ではありません。それでも、499条の、弁済をした者には入ります。払わなければ自分の財産から取られる立場ですから、500条の、正当な利益を有する者に当たります。一方、Bの親会社のCが、Bのために3000万円を払ったとします。Cは、保証も、担保の提供も、していません。ですから、正当な利益は無い。それでも、Bの意思に反しておらず、Aが受け取れば、弁済は有効で、代位も生じます。ただし、Bへの通知か、Bの承諾が無ければ、倉庫の抵当権を、Bに対して主張できません。流れにします。弁済して、求償権がある。そうすれば、代位が生じます。正当な利益があれば、そのまま、債務者にも対抗できる。なければ、467条の通知か承諾が要る。差は、ここだけです。ここは、論文で論点になりうる部分です。

代位の効果(501条1項・2項)

501条1項・2項。代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できる(1項)。ただし求償権の範囲内(2項)。債権の効力=履行請求・損害賠償請求など。担保=物的担保(抵当権)・人的担保(保証)。冒頭の設例=保証人が1000万円を全額払う→原債権1000万円と抵当権を取得→家の競売代金から1000万円まで回収できる。 図:501条1項・2項

  • 代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できる(1項)
  • ただし求償権の範囲内(2項)
  • 債権の効力=履行請求・損害賠償請求など
  • 担保=物的担保(抵当権)・人的担保(保証)
  • 冒頭の設例=保証人が1000万円を全額払う→原債権1000万円と抵当権を取得→家の競売代金から1000万円まで回収できる

効果です。

条文民法501条1項

民法第501条第1項 前二条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。

一切の権利、が核心です。債権の効力というのは、履行を請求する、損害賠償を請求する、といった、債権そのものの力です。担保というのは、抵当権のような物的担保、保証のような人的担保です。債権者が持っていたものは、全部、移ります。ただし、2項の、求償権の範囲内、という限界がかかります。冒頭の設例に、当てはめます。保証人が、銀行へ1000万円を全額払いました。保証人は、銀行の借主に対する、1000万円の原債権と、家の抵当権を取得します。借主が払わなければ、家を競売にかけて、銀行に代わって、1000万円まで回収できます。さっきの数字なら、無担保なら600万円、代位なら1000万円でした。

判例は、代位によって、抵当権などを取得することについて、後ろの抵当権者などと、物権の対抗問題を生じない、と言っています。抵当権の登記は、もともと銀行の名前で入っていて、後ろの抵当権者は、その分が先に取られることを覚悟しています。持ち主が保証人に代わっても、後ろの人の取り分は変わりません。だから、登記を移していなくても、代位弁済者は、抵当権を主張できます。改正前の条文には、保証人が、担保不動産の第三取得者に対して代位するには、付記登記、つまり、抵当権の登記に代位したことを書き足す登記が要る、という規定がありました。この規定は、改正で、削られました。保証人と第三取得者の関係の話は、別の回で扱います。

一部だけ払ったとき(502条)

502条。債権の一部について代位弁済があったとき=1項 代位者は債権者の同意を得て、弁済した価額に応じて、債権者とともに権利を行使できる。2項 債権者は単独でも行使できる。3項 債権者が行使する権利は、担保目的財産の売却代金などについて、代位者に優先する。4項 契約の解除は債権者だけ・代位者に弁済額と利息を償還する。 図:502条

  • 債権の一部について代位弁済があったとき=1項 代位者は債権者の同意を得て、弁済した価額に応じて、債権者とともに権利を行使できる
  • 2項 債権者は単独でも行使できる
  • 3項 債権者が行使する権利は、担保目的財産の売却代金などについて、代位者に優先する
  • 4項 契約の解除は債権者だけ・代位者に弁済額と利息を償還する

ここまでは、全部払った場合でした。最後に、債権の一部だけ払った場合です。問いです。保証人が、3000万円の債権のうち、1000万円だけ払いました。残りの2000万円は、銀行、ここでは卸会社が持ったままです。同じ倉庫の抵当権が、競売されました。その代金は、銀行の取り分と、保証人の取り分で、どう分けるのか。払った額に応じた比例か、債権者が先か。条文を読みます。

条文民法502条

民法第502条 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて、債権者とともにその権利を行使することができる。 2 前項の場合であっても、債権者は、単独でその権利を行使することができる。 3 前二項の場合に債権者が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者が行使する権利に優先する。 4 第一項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者のみがすることができる。この場合においては、代位者に対し、その弁済をした価額及びその利息を償還しなければならない。

4つの項目です。1項は、代位者は、債権者の同意を得て、債権者と一緒に、権利を行使できる。2項は、債権者は、単独でも行使できる。3項は、債権者が行使する権利は、売却代金などについて、代位者より優先する。4項は、契約の解除は、債権者だけができる。その場合、代位者に、払った額と利息を返す。改正の点も、押さえます。改正前は、判例が、一部を代位弁済した人が、単独で抵当権を実行できる、としていました。今は、債権者の同意を得て、債権者と一緒に、でなければ行使できません。実行で得た金銭は債権者が先、という3項は、もともと判例だったものが、条文になりました。

一部代位の配当。設例=A卸会社の債権3000万円・B所有の倉庫にAの抵当権・社長Dが保証人で1000万円だけ払った(残りAの債権2000万円)。倉庫が2400万円で競売された場合=Aが先に2000万円・Dが400万円(比例ならD800万円・A1600万円だが、3項により債権者が優先)。倉庫が1800万円なら全額Aの取り分(Dは0円)。 図:一部代位の配当

  • 設例=A卸会社の債権3000万円・B所有の倉庫にAの抵当権・社長Dが保証人で1000万円だけ払った(残りAの債権2000万円)
  • 倉庫が2400万円で競売された場合=Aが先に2000万円・Dが400万円(比例ならD800万円・A1600万円だが、3項により債権者が優先)
  • 倉庫が1800万円なら全額Aの取り分(Dは0円)

数字で解きます。A卸会社の債権3000万円。B所有の倉庫に、Aの抵当権があります。保証人の社長Dが、1000万円だけ払いました。Aの残りの債権は、2000万円です。倉庫が、2400万円で競売されたとします。比例なら、Dは、1000万円分の3000万円分で、800万円。Aは、1600万円です。しかし、3項で、債権者が優先します。Aの残りの債権2000万円が、先に満たされます。Aが2000万円、Dが400万円です。足すと、2400万円で、合っています。倉庫が、1800万円だったらどうなるか。Aの残りの債権は2000万円なので、1800万円は、全部Aの取り分です。Dは、0円です。1000万円払って、配当がゼロ。取れなかった分は、求償権として、借主から取るしかありません。この求償権は、担保の無い債権です。

保証人が競売を申し立てるには、Aの同意が要ります。そして、Aと一緒に行う場合に限られます。Aが自分で申し立てるのは、2項により、自由です。その場合、Dは配当で、後ろになります。

判例最判昭60・5・23 民集39巻4号940頁

一部弁済と、配当の優先 債権者が物上保証人の設定にかかる抵当権の実行によつて債権の一部の満足を得た場合、物上保証人は、民法五〇二条一項の規定により、債権者と共に債権者の有する抵当権を行使することができるが、この抵当権が実行されたときには、その代金の配当については債権者に優先されると解するのが相当である。けだし、弁済による代位は代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するための制度であり、そのために債権者が不利益を被ることを予定するものではなく、この担保権が実行された場合における競落代金の配当について債権者の利益を害するいわれはないからである。

判例も、同じ結論です。後半の、けだし、以下が、理由です。弁済による代位は、求償権を確保するための制度であって、そのために債権者が不利益を被ることを予定していない。一部だけ払われた債権者は、残りの債権を、担保の換価の時期などで、害されないようにしたい。そこで、債権者が先、という結論になります。今日の軸の、道具は、債権者を押しのけてまでは使えない、というところです。4項の解除権は、1文だけです。契約を解除するかどうかは、契約当事者の地位に付いてくる権利です。だから、代位者には移りません。全部の弁済でも、代位者は解除権を行使できないと解されています。一部の場合は、債権者が解除したら、代位者に、払った額と利息を返します。

冒頭の答えとまとめ

冒頭の答え。保証人が1000万円を全額払う→銀行の原債権1000万円と抵当権を取得→家の競売代金から求償権の範囲(1000万円まで)で回収できる。一部だけ払ったなら→銀行の同意を得て、銀行とともに行使・競売代金は銀行が先。まとめ=①代位は求償権を確保するため原債権と担保が移る(499条)②求償権と原債権は別個・小さい方が上限(501条2項)③要件は弁済と求償権・承諾は不要④任意代位と法定代位の差は対抗要件だけ(500条)⑤効果は債権者の一切の権利(501条1項)⑥一部代位は同意・債権者とともに・債権者が優先(502条)。 図:冒頭の答え

  • 保証人が1000万円を全額払う→銀行の原債権1000万円と抵当権を取得→家の競売代金から求償権の範囲(1000万円まで)で回収できる
  • 一部だけ払ったなら→銀行の同意を得て、銀行とともに行使・競売代金は銀行が先
  • まとめ=①代位は求償権を確保するため原債権と担保が移る(499条)②求償権と原債権は別個・小さい方が上限(501条2項)③要件は弁済と求償権・承諾は不要④任意代位と法定代位の差は対抗要件だけ(500条)⑤効果は債権者の一切の権利(501条1項)⑥一部代位は同意・債権者とともに・債権者が優先(502条)

冒頭の答えです。保証人が、銀行へ1000万円を全額払えば、銀行の1000万円の債権と、家の抵当権を、保証人が手にします。使える範囲は、求償権の範囲内です。家の競売代金から、1000万円まで、回収できます。一部だけ払ったなら、銀行の同意を得て、銀行とともにしか使えず、競売代金は銀行が先です。整理します。1つめ。弁済による代位は、求償権を確保するために、原債権と担保が、消えずに、払った人へ移る制度です。2つめ。求償権と原債権は、別個の債権で、行使できるのは、小さい方の範囲までです。3つめ。要件は、弁済と、求償権があることです。改正で、債権者の承諾は不要になりました。4つめ。任意代位と法定代位の違いは、対抗要件だけです。法定代位には、通知も承諾も要りません。5つめ。効果は、債権者が持っていた、債権の効力と担保の、一切の権利を行使できることです。6つめ。一部だけ払ったときは、債権者の同意を得て、債権者とともに行使し、売却代金は債権者が先です。

代位する人が複数いるときの順序は、別の回で扱います。

参照条文

  • 民法499条
  • 民法501条2項
  • 民法500条
  • 民法501条1項
  • 民法502条

民法 全体ロードマップへ →