債権者代位権の転用と登記請求権の代位
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第4章 債権総論 #195/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
資産家のBが動かないとき、Cは自分の名義にたどり着けるか
図:冒頭の関係図
- 土地をAがBに売り、BがCに売った
- 登記はまだA名義のまま
- Bは資産家でお金には困っていないが、Aに登記を求めようとしない
- 問い=Cは、どうすれば自分の名義にたどり着けるか
- 呼び名=売られた順にA・B・C
- 代位するのはC
ある土地を、AがBに売りました。そのあと、BがCに売りました。ところが、登記は、まだA名義のままです。Bは資産家で、お金には何も困っていません。ただ、Aに登記を求めようとしません。面倒なのかもしれませんし、忘れているのかもしれません。Cは、どうすれば自分の名義にたどり着けるのでしょうか。登場人物を整理します。最初の売主がA、中間の買主がB、最後の買主がCです。売られた順に、A、B、Cです。そして、代位するのはCです。前の3回では、代位するのはAでしたが、今日の設例では、Cです。代位して請求を受ける相手も入れ替わり、前の3回のCから、今日はAになります。間に立つBが債務者であることは、変わりません。
Cが、Aに直接、自分の名義への変更を求める道は、原則として使えません。その理由は、あとで見ます。先に、Cが使える道を言います。Cは、Bに代わって、Aに登記を求められます。根拠は、423条の7です。ところが、ここに引っかかりがあります。債権者代位権には、債務者が無資力であるという要件がありました。無資力とは、債務者が、自分の財産では債務を払いきれない状態のことでした。今日のBは、資産家です。それでも、代位できるのです。今日の中心は、2つです。1つめは、なぜBが資産家でも代位できるのか。2つめは、そのとき代位のしくみのどこが変わるのか、です。
前回までの振り返りと、今日の4つの問い
図:今日の地図
- 前の3回=お金の債権を守るための代位(要件の1つが債務者の無資力)
- 今日の4つの問い=①転用とは何か②なぜ無資力が要らないのか③423条の7の要件④後段の準用はどこからどこまでか
- 右端に根拠の種類
- 条文どおり=423条の7の要件・準用される範囲
- 解釈=無資力が要らない理由・準用されない理由の説明
前の3回は、お金を取りっぱぐれないための代位でした。債務者の財産を保っておいて、貸したお金を回収できるようにする制度で、要件の1つが、債務者の無資力でした。今日から、使い方が変わります。この使い方を転用と呼びます。代位の最初の回で、名前だけ出しておいた使い方です。あのときは、債務者の資力と関係がない、と一言で済ませました。今日は、その理由を確かめます。転用の中でも、条文になっている場面を見ます。今日の問いは、4つです。1つめは、転用とは何か。2つめは、なぜ無資力が要らないのか。3つめは、423条の7の要件。4つめは、後ろの段の、前三条の規定を準用する、がどこからどこまでか、です。
今回も分けます。条文どおりなのは、423条の7の要件と、準用される範囲です。解釈なのは、無資力が要らない理由と、準用されない条文について、なぜ準用されないのかという説明です。答案では、前者は条文を引いて確認し、後者は理由づけを書きます。
転用とは何か——守るものが違う
図:本来の使い方と転用の対比
- 行=守るもの/被保全債権の種類/無資力の要否/行使の範囲を自己の債権の額に限る規律(423条の2)
- 本来=債務者の責任財産/金銭債権/要る/ある
- 転用=その債権そのものの実現/金銭債権でない債権/要らない/当てはまらない
- 右端に根拠の種類
- 無資力が要らないこと=解釈
1つめの問いです。転用とは何か。債権者代位権の本来の使い方は、お金の債権、つまり金銭債権を守るために、債務者の財産を保つことでした。守るのは、債務者の財産全体です。これに対して、お金の債権ではない債権、つまり特定の給付を求める債権を実現するために、代位のしくみを借りる使い方があります。これが転用です。守るのは、財産全体ではなく、その債権そのものです。今日の設例で確かめます。Cが持っているのは、Bに登記を移してもらう権利です。お金の債権ではありません。Cが欲しいのは、お金ではなく、この土地の登記です。ですから、今日の使い方は、転用にあたります。
表のとおり、4つの違いが出ます。守るものが財産全体かその債権そのものか。被保全債権が金銭債権かそうでないか。無資力が要るか要らないか。そして、行使の範囲を自分の債権の額までに限る、423条の2の規律が当てはまるか。この4つです。このうち、無資力が要らないことは、解釈で説明されます。条文に書かれているのは、あとで読む423条の7の要件です。表の最後の項目は、準用の話で、あとで理由を見ます。
なぜ無資力が要らないのか——Bを資産家にしても結論は変わらない
図:無資力が要らない理由の比較
- 左=本来の使い方(CがBに貸金100万円。Bの財産のどれから回収してもよい。Bに財産が十分なら口出しは不要。だから無資力が要る)
- 右=今日の設例(Cが欲しいのは「この土地の登記」。A名義からB名義に移らない限り、B名義からC名義にはできない。Bに現金が1億円あっても同じ。Bの資力はCの債権の実現と関係がない)
2つめの問いです。これが、今日の中心です。なぜ、Bが資産家でも代位できるのか。まず、本来の使い方で、なぜ無資力が要ったのかを思い出します。お金を貸した人が欲しいのは、お金そのものです。お金は、債務者の財産のどれから回収しても、同じ価値です。債務者に財産が十分あるなら、債権者が債務者の財産管理に口を出す必要はありません。債権者が口を出してよいのは、財産が足りなくなって、回収が危うくなったときだけです。だから、無資力が要りました。では、今日の設例はどうでしょうか。Cが欲しいのは、お金ではありません。この土地の登記です。登記請求権の回で見たとおり、登記は、権利が移った過程を、そのまま記録に映すものです。AからBへ、BからCへ、と順に移った以上、A名義からB名義へ移さない限り、B名義からC名義にはできません。ここで、Bに現金が1億円あったとします。その1億円は、Cの助けになるでしょうか。なりません。いくらお金を持っていても、A名義からB名義への登記が済まなければ、Cは登記を受けられないからです。つまり、Bの資力は、Cの債権が実現できるかどうかと、関係がありません。Bを無資力にしても、資産家にしても、結論は変わりません。ここが、今日の軸です。守るのはお金ではなく、登記そのもの。だから、Bの資力は、問題にならないのです。ここで、立ち止まって考えてみてください。Bが資産家なら、Cは代位できないのでしょうか?
できます。Bが資産家でも、Cは代位できます。無資力は、この場面の要件ではありません。境目も確かめます。Cの権利が、Bに貸した100万円を返してもらう権利で、ふつうの代位として使うなら、Bが資産家である限り、CはBの財産から回収できるので、代位はできません。同じBとCでも、典型的には、守るものがお金か登記かで、結論が分かれます。資産家であるBの財産管理に、Cが口を出してよい理由は、解釈として、次のように説明できます。Bが権利を使わないことそのものが、Cの債権の実現を止めています。しかも、Cが求めるのは、Bが本来受けるはずの、A名義からB名義への登記です。Bの財産を減らす行為ではありません。さらに、Bは、Cに対して登記を移す義務を負う立場でもあります。だから、この場面では、口出しが許される、と説明できます。根拠の種類は、解釈です。条文は、無資力を要件に書いていません。それは、次に条文を読んで確かめます。
423条の7の前段——要件を当てはめる
図:要件の当てはめ
- C=譲り受けた者、B=譲渡人、A=第三者
- Bが持つ「AにB名義へ登記手続をすべきことを請求する権利」を、Cが行使する
- 要件3つ=①登記又は登録をしなければ対抗できない財産(土地は登記・177条)②それを譲り受けた者(C)③譲渡人(B)が権利を行使しないとき
- 無資力の文字は条文にない
3つめの問いです。条文を読みます。
条文民法423条の7
民法第423条の7 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。 この場合においては、前三条の規定を準用する。
条文の呼び名を、今日の呼び方につなぎます。譲り受けた者がCです。譲渡人がBです。第三者は、条文に2回出てきます。1回めの、対抗することができない相手としての第三者は、登記や登録がないことを主張する正当な利益を持つ人を指します。たとえば、同じ土地をBから二重に買った人です。2回めの、譲渡人が権利を持つ相手としての第三者が、登記を持っているAです。そして、その権利とは、BがAに対して持つ、登記手続を求める権利のことです。前段は、こういう意味です。Bが、Aに登記を求める権利を使わないときは、Cが、その権利を使える、ということです。後段は、前の3つの条文の規定を、準用するという意味です。これは、あとで見ます。前段の要件は、3つです。1つめ、登記か登録を済ませないと、権利を得たことを第三者に対抗できない財産であること。土地は、177条で、登記がなければ対抗できません。2つめ、その財産を譲り受けた者であること。Cです。3つめ、譲渡人のBが、登記を求める権利を行使しないことです。気づいてほしいのは、条文のどこにも、無資力と書いていないことです。先ほどの理由は、解釈でしたが、それが条文の姿にも表れています。条文どおりに確かめられる要件は、この3つです。
登録は、登記の仲間です。財産の種類によって、登記と呼んだり登録と呼んだりします。たとえば自動車は、道路運送車両法の5条1項で、登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない、と定められています。
図:登録の例
- 自動車は、道路運送車両法5条1項により、登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ第三者に対抗できない
- 例=自動車がA→B→Cと転売されたのに、登録がA名義のまま
- 土地と同じく、CがBに代わってAに登録手続を求める
自動車を転売したのに、登録が前の持ち主の名義のまま、という場面でも、同じように使えます。最後に、この条文の成り立ちです。2017年の改正で置かれましたが、以前から判例が認めてきた扱いを、条文にしたものです。
登記は2段階でそろう——代位できるのはAからBまで

- 1枚目=構図
- A→B(売買)、B→C(売買)、登記はA名義
- 被保全債権=CのBに対する登記請求権(B名義からC名義へ)
- 被代位権利=BのAに対する登記請求権(A名義からB名義へ)
- Bの資力=関係なし
4つめの問いの前に、登記がそろう流れを、図で整理します。CがBに対して持つ、登記を移してもらう権利が、被保全債権です。守りたい自分の債権のことです。BがAに対して持つ、登記を移してもらう権利が、被代位権利です。Cが代わりに使う権利のことです。この2つは、どちらも売買から生まれる、登記を求める権利です。登記請求権の回で見た、3つの登記請求権のうちの、契約から生まれる債権的登記請求権です。Bは、Cに売って所有権を手放していますが、この請求権は、所有権を失っても持ち続けられるのでした。A名義からC名義に直接してもらうことは、できません。Cが代位して求められるのは、A名義からB名義への登記までです。被代位権利は、BのAに対する権利だからです。権利の中身は、Bに登記を移すこと、です。

- 2枚目=代位後
- ①CがBに代わって、Aに「Bに登記を移せ」と請求する(代位)
- ②登記がA名義からB名義に移る
- ③CがBに「Cに登記を移せ」と請求する(Cの自分の請求)
- ④登記がB名義からC名義に移る
- 登記は、A→B、B→Cと、2段階でそろう
- 登録でも同じ
2枚目です。Cは、Bに代わってAに、Bに登記を移すよう求めます。登記がA名義からB名義に移ります。次に、CがBに、Cに登記を移すよう求めます。ここは、代位ではなく、Cが自分の権利として、Bに求めるものです。登記がB名義からC名義に移ります。こうして、登記が2段階でそろいます。自動車の登録でも、同じです。Bが、Cの求めにも応じないときは、判決による登記があります。登記請求権の回で見たとおり、登記手続を命じる判決が確定すれば、相手の協力がなくても、単独で申請できる、というものです。この点は、あとで手続の流れとして見ます。ここで、疑問がわくと思います。Cは、Aに、最初から自分の名義にせよ、と言えないのでしょうか。次の項目で見ます。
「Aから直接Cへ」と言えない理由
図:中間省略登記との表裏
- 登記請求権の回の結論=すでにされた登記は原則有効/これから請求するのは原則不可(変動の過程を飛ばすため)
- 今日=代位は、その制約の中で登記を実現する道
- 423条の3は準用されない
- 条文から言える=423条の3は金銭の支払又は動産の引渡しの規定
- 前三条に入っていない
- 解釈として説明できる=①登記はBが何もしなくてもB名義にできる②準用すると過程を飛ばす登記を認めることになる
先に、登記請求権の回を思い出してください。Bを通さずに、AからCへ直接移す登記を、中間省略登記と呼びました。この中間省略登記は、これから請求する場面では、原則としてどうでしたか?認められない、でした。変動の過程を飛ばすことになるからです。すでにされた登記は原則有効ですが、これから請求するのは、原則として認められません。名目を変えても同じでした。今日の道は、その制約の中で登記を実現する道です。A名義からB名義へ、次にB名義からC名義へと、過程を飛ばさずにそろえます。ここで、前の回の423条の3とつながります。423条の3は、金銭の支払や動産の引渡しについて、相手方に、自分に払え、自分に引き渡せ、と求められる規定でした。相手方とは、第三債務者のことで、今日はAです。もし、登記の請求にこれが使えたら、Cは、A名義からC名義にせよ、と言えることになります。それは、過程を飛ばした登記を認めることです。整理します。登記の側から見れば、中間を飛ばす登記は請求できません。代位の側から見れば、423条の3は準用されません。この2つは、同じ結論を、別の面から言ったものと説明できます。この423条の3が準用されないことは、条文から言えます。423条の3は、被代位権利が金銭の支払か動産の引渡しを目的とするときの規定です。登記手続は、そのどちらでもありません。しかも、423条の7が準用するのは、前三条、つまり423条の4から423条の6までです。423条の3は、入っていません。
理由は、解釈として、2つ説明できます。1つめ、前の回で見たとおり、登記は、Bが何もしなくても、B名義にできます。Cが、Bに代わって、B名義への登記を申請できるからです。これに対して、金銭や動産は、受け取るという行為が要ります。債務者が受け取らないと言い張れば、相手は渡しようがなく、代位した意味が無くなります。だから、金銭と動産には、自分に、と求める道が要りました。登記には、その心配がないので、自分に、と求める必要がありません。2つめ、準用すると、中間を飛ばす登記を認めてしまい、登記請求権の回の結論と食い違います。ただし、これは、そう説明できる、という話です。条文に理由が書いてあるわけではありません。
後段「前三条の規定を準用する」——どこからどこまでか
図:準用の対比表
- 準用される3=423条の4(相手方の抗弁)・423条の5(債務者の取立てその他の処分の権限等)・423条の6(被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知)
- 準用されない2=423条の2(代位行使の範囲)・423条の3(債権者への支払又は引渡し)
- 準用の範囲=条文どおり
4つめの問いです。条文の後段には、前三条の規定を準用する、とありました。準用とは、別の場面の規定を、事情に合わせて読み替えて当てはめることでした。前三条とは、423条の7の直前の3つの条文です。423条の4、423条の5、423条の6です。423条の2と423条の3は入っていません。準用される3つが準用される理由は、債務者の財産を保つための代位でなくても、同じように当てはまる規律だからです。3つとも、他人の権利を代わりに使う、というしくみそのものから出てくる規律で、守るものがお金か登記かに左右されない、と説明できます。準用されない2つは、登記の請求にはなじまないと説明できます。順に見ます。まず、423条の4です。相手方の抗弁でした。条文の相手方は、第三債務者、つまりAのことです。AがBに言えることは、Cにも言える、という規定です。設例に当てはめます。BがAに代金を払っていなかったとします。すると、Aは、代金と引換えでなければ登記しない、とCにも言えます。同時履行の抗弁で、533条です。理由は、前の回と同じです。Cが行使しているのは、Bの権利そのものだからです。ここで、立ち止まって考えてみてください。Aは、Bが代金を払っていないことを、Cに対しても言えるのでしょうか?
言えます。423条の4が準用されるからです。Aは、Bに言えることを、Cにも言えます。もう1つの例は、AB間の売買が取り消されていた場合です。Bの登記請求権が、そもそも無い、とAは言えます。次に、423条の5です。債務者の処分権限でした。Cが代位を始めたあとでも、Bは、自分でAに登記を求めてよい、という規定です。Aも、Bに応じて登記に協力してよいことになります。そうなれば、A名義からB名義の登記が済み、Cは次の段に進めます。代位は、Bの手を縛りません。裁判所が関わらないのに、Bが自分の権利を使えなくなるのでは、Bの立場が不安定すぎるからです。前の回で見た理由の1つで、守るものが登記に変わっても、そのまま当てはまります。3つめは、423条の6です。訴えで代位するなら、遅滞なく、債務者のBに訴訟告知をします。訴訟告知とは、訴訟をしていることを、手続に関わる人に知らせる手続です。趣旨は、債権者代位権の行使方法の回で見たとおりです。Cが訴訟で争うのは、自分の権利ではなく、Bの権利です。そのため、判決の効力は、当事者でないBにも及びえます。自分で争っていないのに効力が及ぶのでは不公平なので、Bに、訴訟に関わる機会を与えます。登記を求める訴えでも、この事情は同じです。
図:準用されない2つの理由
- 423条の2(行使の範囲)=自己の債権の額を上限にするのは、目的が可分なときの規定
- 登記の請求は土地の登記を全部求めるもので、金額で区切れない
- 区切る基準になる額がない、と説明できる
- 423条の3(直接請求)=前のセクションのとおり
- 条文から言えること=前三条に入っていない
- 理由=解釈(説明)
準用されない2つに移ります。423条の2は、行使の範囲を、自分の債権の額までに限る規定でした。自分の債権の額で区切るのは、被代位権利の目的が可分、つまり、分けても価値が減らないときの規定です。たとえば、200万円の債権なら、100万円と100万円に分けても価値は減りません。登記の請求は、通常は、土地の登記を全部求めるもので、金額で区切る基準になるものがありません。また、転用では、債務者の資力と関係がないので、債務者の財産を保つために、債権の額で請求の範囲を絞る意味もありません。そのため、準用する必要がない、と説明できます。423条の3は、さきほどの項目のとおりです。条文から言えるのは、前三条に入っていないことまでです。2つとも、条文が理由を書いているわけではありません。答案では、準用の範囲は条文を引き、準用されない理由は、自分の言葉で説明を添えてください。
実際の流れ——Aが応じるとき、応じないとき
図:手続の流れ
- Aが応じるとき(裁判外)=CがBに代わって代位者として、A→Bの登記を申請する
- 登記は共同申請が原則
- Aが応じないとき=CがAを相手に訴えを起こし、「AはBに登記手続をせよ」という判決を得る
- 確定すれば、Cが単独で申請できる(不動産登記法63条1項)
- Bには訴訟告知(423条の6)
- 注=代位者の氏名と代位原因が登記事項になる(同法59条7号)
手続の流れを見ます。Aが応じるときは、Cが、代位者として、Bに代わってA名義からB名義への登記を申請します。登記は、共同で申請するのが原則でした。登記を移す側のAと、Bに代わって登記を受ける側に立つCが、共同で申請する形です。Aが応じないときは、CがAを相手に訴えを起こします。求めるのは、AはBに登記手続をせよ、という判決です。確定すれば、判決による登記として、Bに代わってCが単独で申請できます。共同で申請するのが原則のままでは、協力しない相手には、打つ手がなくなります。そこで、登記手続を命じる判決が確定したときは、相手の協力がなくても申請できる、と定められています。不動産登記法の63条1項で、登記請求権の回で見た規定です。このとき、Bには、423条の6により、訴訟告知をします。
代位した人のことは、登記の記録に残ります。不動産登記法59条7号は、他人に代わって登記を申請した人、つまり代位者がいるときは、その代位者の氏名と住所、そして代位原因、つまり、どの権利を守るために代位したのかを、登記事項としています。最後に、Bが、Cへの登記に応じないときです。道は同じで、CがBを相手に訴えて、BはCに登記手続をせよ、という判決を得れば、Cが単独で申請できます。こちらは代位ではなく、Cの自分の請求です。
423条の7は、転用のすべてではない
図:423条の7の位置づけ
- 条文になったのは、登記・登録の請求権を代位する場面だけ
- 2017年の改正は、転用の一般的な要件を条文にすることを見送った
- ほかの場面が認められなくなったわけではない
最後に、位置づけです。条文になった転用は、登記や登録の請求権を代位する場面だけです。2017年の改正は、転用の一般的な要件を条文にすることを見送りました。ほかの場面が認められなくなったわけではありません。条文にない転用も、否定されていません。その中身は、次の回で扱います。
冒頭の問いに戻る——今日のまとめ
図:まとめの表。行=転用の意義/無資力が要らない理由/423条の7の要件/準用される3つ・されない2つ。列=中身/根拠の種類(条文どおり・解釈)。
冒頭の問いに戻ります。Bが動かないとき、Cは、どうすれば自分の名義にたどり着けるのか、でした。答えです。CはBに代わって、Aに登記を求められます。423条の7です。Bが資産家かどうかは、関係がありません。登記は、A名義からB名義、B名義からC名義と、2段階でそろいます。Cが、最初から自分名義にせよ、と言うことはできません。423条の3は、準用されないからです。今日の軸を、もう一度つなぎます。守るのはお金ではなく、その債権そのものです。だから、Bの資力は関係がなく、登記は、A名義、B名義、C名義と順にそろえます。内容を整理します。転用とは、典型的には、金銭債権でない債権を実現するために、代位のしくみを借りることです。無資力が要らない理由は、Bの資力が、Cの債権の実現と関係がないからで、解釈です。423条の7の要件は、対抗要件が登記又は登録の財産を譲り受けた者が、譲渡人が権利を行使しないときに行使できる、ことで、条文どおりです。準用されるのは、423条の4、423条の5、423条の6の3つで、条文どおりです。準用されないのは、423条の2と423条の3の2つで、その理由は、解釈による説明です。転用の可否と、無資力不要の理由づけは、論文で論点になりうる部分です。
参照条文
- 民法423条の7