連帯債務と絶対効の縮小(436条〜442条)
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第4章 債権総論 #212/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
1人に請求を続けても、他の2人の時効は止まらない
図:冒頭の設例の関係図
- A 貸主、B・C・D 借りた友人3人(連帯の約束つき)
- AからB・C・Dへ貸した金額=合計300万円
- AはBにだけ請求を続け、C・Dには何もしないまま5年が過ぎた
- 問い=C・Dの債務はどうなっているか
- 辺ラベルの語=請求
先に答えです。Bへの請求は、C・Dには効きません。C・Dの時効は進み続けていて、C・Dが時効を援用すれば、AはC・Dには請求できなくなります。一方でAは、Bには300万円の全額を請求できます。441条本文と436条の結論です。ちぐはぐに見えるのは、2つの別々の話が混ざっているからです。全額を請求できるかどうかは、債権者と債務者の関係の話です。請求の効果が他の人に及ぶかどうかは、1人に起きたことの話です。前の回では、連帯の約束がなければ100万円ずつになる、と見ました。全額を請求できるのは連帯の約束がある場合で、その、債務者が複数いるほうが、今日扱う連帯債務です。前の回に立てた3つの問い、つまり対外的効力、1人に生じた事由の効力、求償関係をそのまま使います。1人に生じた事由が他の人にも及ぶのが絶対効、及ばないのが相対効です。今日は話の根拠が混ざりますので、そのつど何に基づく話かを言います。条文に書かれていることは条文の札です。2017年の改正のとき、なぜそう決めたのか、として説明されていることは立案の過程の説明の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための講義の説明は、こちらの説明の札です。答案では、条文はその言葉を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。
連帯債務の成立と対外的効力——436条・437条
図:3つの問いの板
- 問い1=対外的効力(債権者と債務者の関係で、誰が誰にいくら請求でき、誰がいくら払う義務を負うか)
- 問い2=1人に生じた事由の効力(1人に起きたことが他の人にも及ぶなら絶対効、及ばないなら相対効)
- 問い3=求償関係(1人が払ったとき、他の人に分担を求められるか)
前の回の3つの問いを板に置き直します。問いの1 対外的効力。債権者と債務者の関係で、誰が誰にいくら請求できるか、です。問いの2 1人に生じた事由の効力。他の人にも及べば絶対効、及ばなければ相対効です。問いの3 求償関係。1人が払ったとき、他の人に分担を求められるか、です。
図:連帯債務の関係図
- A 貸主、B・C・D 借りた友人3人
- 各自が負う額=300万円(全額)
- 3人の間で内部で分担する額=各100万円
- 辺ラベルの語=請求(300万円)
1つめの柱です。冒頭の例の連帯の約束に、条文を当てます。連帯債務の土台になる条文を読みます。
条文民法436条
民法第436条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
区切って読みます。まず債務の目的がその性質上可分である場合です。可分とは分けられるという意味で、金銭の支払は分けられます。次に法令の規定または当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するとき、です。連帯して債務を負うとは、各自が全部の給付をする義務を負う、ということです。最後に債権者は連帯債務者の1人に対し、または同時にもしくは順次に全員に対し、全部または一部の履行を請求できます。ここまで条文の札です。連帯債務が成り立つのは、条文のとおり2つの場合です。1つは当事者の意思表示で、冒頭の「3人で連帯して返す」という約束がこれです。もう1つは法令の規定です。たとえば併存的債務引受です。債務引受の回で、引受人が元の債務者と並んで債務を負う型を見ました。470条1項です。併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。引受人と元の債務者は連帯債務者になります。ほかにも法令の規定による例があります。夫が朝食用のパンを買ったとき、その代金を妻も負う、夫婦の日常家事の債務です。761条です。ここまで条文の札です。
数字で見ます。AはBに300万円全部を請求できます。Bに200万円だけ請求してもかまいません。そのあと残りをCに請求することも、B、C、Dの3人に同時に請求することもできます。そしてBが300万円を払えば、C・Dの債務も消えます。連帯の役割は、債権者が誰からでも取り立てられるようにして、弁済の確実性を高めることです。この役割はこちらの説明です。
図:437条の数字図
- Bの借入れの契約が取り消された場合
- Bの債務=初めから無かったことになる
- C・Dの債務=300万円のまま残る
- AからC・Dへの請求=300万円
- 辺ラベルの語=請求
もう1つ大事なのは、連帯債務は債務者の数だけ債務がある、という点です。次の条文を読みます。
条文民法437条
民法第437条 連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない。
区切って読みます。連帯債務者の1人について、法律行為の無効または取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない、です。条文の札です。数字で見ます。Bが未成年者で、Bの借入れの契約を取り消したとします。Bの債務は初めから無かったことになります。それでもC・Dは300万円の全額を負います。同じ300万円に見えても、Bの債務、Cの債務、Dの債務という3つの債務が並んで存在している、という整理です。債務者の数だけ独立した債務がある、とみるのです。この整理は、437条から導ける、こちらの説明です。独立していますから、債務の額や期限が人によって違ってもかまいませんし、1人の債務にだけ保証や担保を付けることもできます。これもこちらの説明です。
図:負担部分の板
- 負担部分=連帯債務者の間で内部で分担する割合(額)
- 設例=B・C・Dとも100万円ずつ
- 債権者に対しては全額(300万円)・内部では100万円
- 決まり方=約束があればそれ/なければ受ける利益の割合/それも分からなければ等しい(こちらの説明)
もう1つ、言葉を置きます。相殺の回でも出た、負担部分です。連帯債務者の間で、内部で分担する割合、額のことです。冒頭の例は3人とも100万円ずつです。債権者に対しては各自が全額、内部では100万円ずつ。外向きと内向きで数が違う、これが連帯債務の姿です。条文には書かれていません。こちらの説明です。まず3人の間の約束があれば、それに従います。なければ、それぞれが借りたお金から受けた利益の割合で、それも分からなければ等しい割合と考えます。冒頭の例は、等しいと置いています。
絶対効になる事由
図:絶対効になる事由の全体像
- 弁済等=債権が満たされるので全員に効く(条文に規定なし)/更改=438条/相殺=439条1項/混同=440条
- 札=条文/こちらの説明
2つめの柱です。2つめの問い、1人に生じた事由が他の人にも効くか、です。先に、絶対効になるものから見ます。いちばん分かりやすいのは弁済です。Bが100万円払えば、残りは200万円です。Bが全額の300万円を払えば、全員の債務が消えます。条文は、弁済が全員に効くとは書いていません。書くまでもないからです。債権が満たされたのですから、債権者が二重に取り立てるわけにはいきません。この理由はこちらの説明です。代物弁済や供託のような、弁済に準ずるものも同じに扱われます。これもこちらの説明です。条文のあるものを順に見ます。まず更改です。今の債務を消して、新しい債務に置き換えるものでした。
条文民法438条
民法第438条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
全ての連帯債務者の利益のために消滅する、とあります。条文の札です。BとAが更改をすると、元の債務は、C・Dの分も含めて消えます。
図:439条の数字図
- DがAに120万円の債権を持つ
- Dが相殺を援用→債権は全員のために消滅(300万円から180万円)
- Dが援用しない間=B・Cは、Dの負担部分100万円の限度で履行を拒める→AがB・Cに請求できるのは200万円まで
- 辺ラベルの語=請求/相殺
次は相殺です。相殺の回では2項だけを読みました。今日は1項から通して、連帯債務の中で読みます。
条文民法439条
民法第439条 1 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。 2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
1項からです。連帯債務者の1人が債権者に債権を持ち、その人が相殺を援用したとき、債権は全員のために消滅する、です。たとえばDがAに120万円の債権を持っていて、相殺を援用したとします。全体で300万円の債務は、120万円分が全員のために消えて、180万円になります。条文の札です。B・Cは、Dの債権で相殺することはできません。2項です。援用しない間は、Dの負担部分の限度で、他の連帯債務者は債権者に履行を拒めます。Dの負担部分は100万円ですから、B・Cは100万円の限度で払わないと言えます。AがB・Cに請求できるのは、200万円までです。ここまで条文の札です。注意点は、他人の債権で相殺できるのではなく、払うのを断れるだけで、債権は消えていないことです。Dの債権はDの財産で、使うかどうかはDが決めることです。B・Cが勝手に相殺すれば、他人の財産を処分することになってしまいます。この理由は立案の過程の説明です。改正の前は、他の連帯債務者がDの負担部分の限度で相殺を援用できました。最後に混同です。債権者と債務者が同じ人になることでした。
条文民法440条
民法第440条 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。
弁済をしたものとみなす、とあります。条文の札です。たとえばAが亡くなって、Bが唯一の相続人だったとします。BがAの債権を引き継ぎ、債権者と債務者のBが同じ人になります。Bは弁済をしたものとみなされ、債権は全員のために消えます。そのあとBがC・Dに分担を求める話は、3つめの柱で使います。ここまでの共通点を1つ置きます。弁済、相殺、混同は、債権が満たされた形になります。相殺は、Dが自分の120万円の債権を差し出して、債務の120万円分と消し合うものです。Aから見れば、120万円を受け取ったのと同じです。混同は、Bが債権者の立場も手に入れて、自分で自分に払ったのと同じ形になるので、条文が弁済とみなしているのです。更改は、債権が新しい債権に置き換わります。Aは元の債権の代わりに新しい債権を受け取ったのですから、元の債権を残しておく理由がありません。だから元の債権が、全員について消えるのです。この軸はこちらの説明です。
相対効が原則——441条と、改正前との違い
図:相対効が原則の板
- 原則=1人に生じた事由は他の連帯債務者に効かない(相対効・441条本文)
- 例外=438条・439条1項・440条(絶対効)
- ただし書=債権者と他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示すれば、その人に対する効力はその意思に従う
- 札=条文
2つめの柱の後半、相対効です。その前に、思い出してください。時効の援用は、誰との関係で効きましたか?援用した人との関係でだけ、でした。その人との関係でだけ効く、相対効でした。連帯債務の原則も同じ向きです。条文を読みます。時効の援用の回で一度読んだ条文です。今日は、冒頭の除外の部分も含めて読みます。
条文民法441条
民法第441条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
本文とただし書に分けて読みます。本文は、438条、439条1項、440条に規定する場合を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に効力を生じない、です。さきほど見た3つ以外は相対効だ、ということです。なぜ3つ以外は他の人に効かないのか。1つめの柱で見たとおり、Bの債務、Cの債務、Dの債務は、独立して並んでいます。ですから、Bの債務に起きたことで、C・Dの債務が勝手に増えたり減ったりはしません。全員に効くのは、債権そのものが満たされるか置き換わる、弁済等と3つの条文の場合だけです。これはこちらの説明です。ただし書は、債権者と他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、その人に対する効力はその意思に従う、です。条文の札です。誰と誰の合意かに注意してください。Bに生じたことをCにも及ぼしたいなら、合意するのは債権者AとCです。
図:冒頭の設例の当てはめ
- AがBに訴えを起こして請求→Bとの間でだけ時効の完成猶予・更新(153条1項)
- C・Dには効かない→C・Dの時効は進む(5年は権利を行使できると知った時から・166条1項1号)
- Bには300万円全額を請求できる(436条)
- 辺ラベルの語=請求
冒頭の設例を解きます。AがBに訴えを起こして請求しました。これは履行の請求で、441条本文により、C・Dには効きません。訴えによる時効の完成猶予は、その事由が生じた当事者とその承継人の間でだけ効きます。153条1項です。つまりAとBの間でだけ猶予や更新が起きます。5年は、債権者が権利を行使できると知った時から5年で、166条1項1号です。C・Dの5年は進み続けて、C・Dが時効を援用すれば、AはC・Dには請求できません。一方、Bには436条で300万円の全額を請求できます。ここまで条文の札です。得をするのはC・Dで、困るのは債権者のAです。ですから債権者は、時効を止めたい人ごとに手を打たなければなりません。これはこちらの説明です。ここで問いです。AがBだけを免除したら、C・Dの債務は300万円のままでしょうか、200万円に減るでしょうか?
免除はBだけの話なので、C・Dは300万円のままだと思います。441条本文で、免除は相対効です。Bは債務を免れますが、C・Dは300万円のままです。時効の完成も同じです。Bの時効が完成しても、C・Dは300万円のままです。
図:免除の数字図
- A 貸主、B・C・D 借りた友人3人、300万円
- AがBだけを免除→Bの債務は消える
- C・Dの債務=300万円のまま(改正前はBの負担部分100万円の限度で他にも効き、C・Dは200万円)
- 辺ラベルの語=免除/請求
ところが2017年の改正の前は、結論が違いました。免除も時効の完成も、Bの負担部分100万円の限度で、他の人にも効いたのです。C・Dの債務は200万円に減りました。さらに履行の請求も、改正前は他の人にも効く絶対効でした。改正でこの3つが相対効になりました。これが絶対効の縮小です。
図:改正前後の比較の一覧表(改正前と現在の違い)。列=事由/改正前/現在/条文(現在)。行=弁済等(絶対効・変わらず・規定なし)/更改(絶対効・変わらず・438条)/相殺(反対の債権を持つ人が援用すれば絶対効・変わらず。他の人は改正前は負担部分の限度で相殺を援用でき、現在は履行の拒絶だけ・439条)/混同(絶対効・変わらず・440条)/履行の請求(絶対効から相対効へ・441条)/免除(負担部分の限度の絶対効から相対効へ・441条)/時効の完成(負担部分の限度の絶対効から相対効へ・441条)。補足=別段の意思表示で絶対効に変えられる(ただし書)。旧条文=旧434条(請求)・旧437条(免除)・旧439条(時効の完成)。
一覧表にまとめます。事由、改正前、現在、条文の順です。弁済等は、改正前も今も絶対効で、条文に規定がありません。更改は変わらず絶対効で438条です。相殺は、反対の債権を持つ人が援用すれば絶対効で、そこは変わりません。ただし他の連帯債務者は、改正前は負担部分の限度で相殺を援用できたのが、今は履行の拒絶だけです。439条です。混同は変わらず絶対効で440条です。そして履行の請求は、絶対効から相対効へ。免除と時効の完成は、負担部分の限度の絶対効から、相対効へ。この3つが441条です。ただし書の別段の意思表示で、絶対効に変えることもできます。表の中身は条文の札で、改正前の内容は当時の条文の札です。表の読み方はこちらの説明です。
図:絶対効を縮小した理由の板
- 履行の請求=請求を受けていない人は知らないまま履行遅滞などの不利益を受けるおそれ(412条3項)
- 免除=他の人に請求できる額が減るのは、免除した債権者の意思に反するおそれ
- 時効の完成=特定の債務者から受けるつもりでも、全員との関係で時効の完成を止める措置が必要になり債権者の負担が大きい
- 札=立案の過程の説明
なぜ縮めたのか。立案の過程の説明の札で言います。理由は3つです。1つめ、履行の請求です。請求を受けていない連帯債務者は、請求があったことを当然には知りません。知らないうちに履行遅滞になるなど、思わぬ損害を受けるおそれがあります。返済の期限が決まっていない債務は、請求を受けた時から遅滞になります。412条3項です。2つめ、免除です。免除をすると、他の連帯債務者に請求できる額が減ります。債権者は通常、1人だけを外すつもりで、請求できる額まで減らすつもりはないでしょう。3つめ、時効の完成です。債権者が特定の債務者から履行を受けるつもりでも、全員との関係で時効の完成を止める措置をとらなければならず、負担が大きい、という説明です。
請求は、連帯債権では絶対効、連帯債務では相対効と、向きが逆に見えますが、不利益を受ける人が違うので、理屈は通っています。こちらの説明です。連帯債権では、請求を受ける債務者は1人です。債権者の1人の請求は、全債権者のためにその債務者へ向けたものですから、請求を知らない人は出ません。432条です。連帯債務では、請求を受けるのは債務者の1人で、他の債務者は、請求があったことを知らないまま、遅滞や時効の不利益を受けることになります。そこで441条は相対効を原則にしました。別段の意思表示の使い道を1つ置きます。債権者Aが前もってCと、Bへの請求はCへの請求にもなると合意しておけば、Bへの請求がCにも効きます。合意が無ければ及びません。条文の札と、使い方はこちらの説明です。ここは論文で論点になりうる所です。相対効が原則で、絶対効になるのは弁済等と、438条、439条1項、440条の場合だけだ、と条文番号を付けて書きます。縮小の理由は、立案の過程の説明として添えます。冒頭で、Bへの請求がC・Dに効かず、それでもBには全額を請求できたのは、この相対効の原則と436条の組み合わせだったのです。
求償の要件と範囲——442条
図:求償の数字図
- 負担部分は各100万円
- Bが60万円だけ弁済→C・Dに各20万円を求償できる(60万円×負担部分の割合3分の1)
- Bが300万円全額を弁済→C・Dに各100万円
- 辺ラベルの語=弁済/求償
3つめの柱、3つめの問い、求償関係です。連帯債務では、1人が払えば全員が免れます。払った人は、他の人に分担を求めたくなります。条文を読みます。
条文民法442条
民法第442条 1 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。 2 前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。
1項を区切って読みます。まず連帯債務者の1人が弁済をし、そのほか自分の財産をもって共同の免責を得たとき。共同の免責とは、債務者全員の債務を消滅させることです。次に、その免責を得た額が自分の負担部分を超えるかどうかにかかわらず。最後に、他の連帯債務者に対し、免責を得るために支出した財産の額のうち、各自の負担部分に応じた額の求償権を有する、です。カッコの中は、支出した額が免責を得た額より大きいときは、免責を得た額が基準になる、という意味です。ここまで条文の札です。ここで問いです。Bが60万円しか払っていなくても、C・Dに求償できるでしょうか?
条文は、超えるかどうかにかかわらず、と書いています。60万円でも求償できます。計算は、支出した60万円に、負担部分の割合の3分の1を掛けて、C・Dに各20万円です。Bが300万円全額を払ったなら、C・Dに各100万円です。条文の札と、計算はこちらの説明です。2つめの柱で見たとおり、弁済は全員に効きます。Bが60万円を払えば、残りは、B・C・Dの誰に対しても、240万円になります。この消えた60万円は、3人がそろって免れた分です。そして負担部分は、3人が内部で3分の1ずつ持つという割合です。ですから、そろって免れた60万円も3分の1ずつ持つのが公平で、Bは自分の分の20万円を残して、C・Dに各20万円を求められます。負担部分を超えるまで待たせると、先に払ったBだけが損をかぶることになります。この理由はこちらの説明です。カッコの中の例を1つ。Bが時価350万円の絵画を、300万円の債務の代物弁済として渡したとします。債務が消えたのは300万円分ですから、求償の基準は350万円ではなく300万円です。C・Dに各100万円です。2項は、求償に含まれる範囲です。弁済のあった日以後の法定利息、避けることができなかった費用、その他の損害の賠償が含まれます。ここまで条文の札です。法定利息は、法律で定められた利率の利息のことです。避けることができなかった費用は、たとえば弁済のための振込手数料です。この例はこちらの説明です。
さきほどの混同の例に戻ります。Bは弁済をしたものとみなされるので、BはC・Dに各100万円を求償できます。ここは論文で論点になりうる所です。求償の要件は条文どおりで、442条1項の文言を使って、共同の免責を得たこと、負担部分に応じた額、と書きます。
冒頭の問いに戻る——今日のまとめ
図:今日のまとめ
- 3つの問いで連帯債務を整理する表
- 行=成立/対外的効力/1人に生じた事由の効力/求償関係
- 成立=法令の規定または当事者の意思表示(436条)
- 対外的効力=各自が全部(同時・順次・一部も可)
- 1人に生じた事由=絶対効は弁済等・更改・相殺・混同だけ、履行の請求・免除・時効の完成は相対効(441条)
- 求償=共同の免責を得たら負担部分の割合で(442条)
- 最下段=答え
- Bへの請求はC・Dに効かず、Bには全額請求できる
冒頭の問いに戻ります。AはBにだけ請求を続け、C・Dには何もしないまま5年が過ぎた。C・Dの債務はどうなっているか、でした。答えです。Bへの請求はC・Dに効きません。441条本文です。C・Dの時効は進み続け、C・Dが時効を援用すれば、AはC・Dには請求できません。ただしBには、436条で300万円の全額を請求できます。3つの問いで連帯債務を整理します。成立は、法令の規定または当事者の意思表示です。対外的効力は、各自が全部を負い、債権者は同時にも順次にも、一部でも請求できます。1人に生じた事由は、絶対効が弁済等、更改、相殺、混同だけです。履行の請求、免除、時効の完成は相対効です。求償関係は、共同の免責を得たら、負担部分の割合で求償できます。札を付けて整理します。条文は436条から442条まで。立案の過程の説明は、絶対効を縮小した3つの理由です。こちらの説明は、たとえば、弁済が絶対効になる理由、負担部分の決まり方、連帯債権との向きの違い、求償が負担部分を超えなくてもできる理由、一覧表の読み方です。この3つの問いは、次の回からもそのまま使います。
参照条文
- 民法436条
- 民法437条
- 民法438条
- 民法439条
- 民法440条
- 民法441条
- 民法442条