民法ゼロから民法#213

連帯債務の求償の制限(443条〜445条)

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第4章 債権総論 #213/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

黙って払ったら、翌日もう1人が全額を払っていた

冒頭の設例の関係図。A 貸主、B・C・D 借りた友人3人(連帯債務300万円・負担部分は各100万円)。Bが期限の日にAへ300万円を弁済(C・Dには通知しない)。翌日、Cも知らずにAへ300万円を弁済。Aは合計600万円を受け取っている。問い=この二重払いの後始末は誰が引き受けるか。辺ラベルの語=弁済/通知。 図:冒頭の設例の関係図

  • A 貸主、B・C・D 借りた友人3人(連帯債務300万円・負担部分は各100万円)
  • Bが期限の日にAへ300万円を弁済(C・Dには通知しない)
  • 翌日、Cも知らずにAへ300万円を弁済
  • Aは合計600万円を受け取っている
  • 問い=この二重払いの後始末は誰が引き受けるか
  • 辺ラベルの語=弁済/通知

先に答えです。Cが払う前に、B・Dへ通知していたかどうかで分かれます。通知していたなら、Cの弁済が有効とみなされ、Bの弁済は有効と認められません。BはAに、払い過ぎた300万円の返還を求めることになります。443条2項の話です。通知していなかったなら、先に払ったBの弁済が有効です。BはCに求償でき、CがAに、払い過ぎた300万円の返還を求めます。最高裁の判例の話です。決め手は、Cが払う前に通知したかどうかです。連帯債務は、誰が払っても全員が免れるはずですよね。通知をしなかったくらいで、有効かどうかが変わるのですか。変わります。誰が払っても全員が免れる仕組みだからこそ、2人が同時に払う事故が起こりえます。その事故を防ぐための連絡が、通知です。通知を怠った人は、求償を減らされたり、自分の弁済が有効にならなかったりします。今日の中心は、この通知のルールです。前の回の3つめの問いは求償関係でした。連帯債務者の1人が共同の免責を得たなら、負担部分の割合で、他の連帯債務者に求償できます。442条です。共同の免責とは、債務者全員の債務を消滅させることで、負担部分とは、連帯債務者の間で内部で分担する割合、額のことです。今日は、その求償が、制限される場合、取れない人がいる場合、免除や時効の完成を受けた人にも求められるのか、という場合を見ます。今日も、話の根拠が混ざりますので、そのつど何に基づく話かを言います。条文に書かれていることは条文の札です。最高裁や、その前の大審院の判決が述べたことは判例の札です。2017年の改正のとき、なぜそう決めたのか、として説明されていることは立案の過程の説明の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための、講義の説明は、こちらの説明の札です。今日は判例の札を1回使います。

事前の通知と事後の通知——443条

事前の通知と事後の通知の区別の板(通知が要る理由)。連帯債務=誰が払っても全員が免れる→2人が同時に払う事故が起こりうる。事前の通知(払う前に知らせる)=他の人が債権者に持つ主張を使う機会を守る。事後の通知(払った後に知らせる)=他の人の二重払いを防ぐ。札=こちらの説明。 図:事前の通知と事後の通知の区別の板

  • 通知が要る理由
  • 連帯債務=誰が払っても全員が免れる→2人が同時に払う事故が起こりうる。事前の通知(払う前に知らせる)=他の人が債権者に持つ主張を使う機会を守る。事後の通知(払った後に知らせる)=他の人の二重払いを防ぐ。札=こちらの説明。

まず、通知がなぜ要るのかを置きます。連帯債務では、誰が払っても全員が免れます。ですから、BとCが、お互いを知らないまま、別々に払ってしまうことがありえます。そこで、払う前の通知と、払った後の通知が出てきます。払う前に知らせれば、他の人は、自分が債権者に対して持っている主張を使う機会を持てます。これが事前の通知です。払った後に知らせれば、他の人が二重に払うのを防げます。これが事後の通知です。この理由はこちらの説明です。ここで問いです。前の回の442条で、Bが60万円しか払っていなくても、C・Dに求償できたでしょうか?

負担部分の100万円を超えていなくても、超えるかどうかにかかわらず、求償できました。60万円なら、C・Dに各20万円です。その求償を、今日は制限します。442条1項を、もう一度カードで確認します。

条文民法442条1項

民法第442条 1 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

443条1項の数字図。CがAに120万円の反対債権を持つ。Bが、Cに通知しないで300万円を弁済。BがCに求償100万円→Cは「相殺できたはず」と対抗して支払を拒む(100万円まで)。BはAに、相殺で消えるはずだった100万円の履行を請求。Cの反対債権の残り20万円は、CからAへ。辺ラベルの語=弁済/求償/対抗/請求。 図:443条1項の数字図

  • CがAに120万円の反対債権を持つ
  • Bが、Cに通知しないで300万円を弁済
  • BがCに求償100万円→Cは「相殺できたはず」と対抗して支払を拒む(100万円まで)
  • BはAに、相殺で消えるはずだった100万円の履行を請求
  • Cの反対債権の残り20万円は、CからAへ
  • 辺ラベルの語=弁済/求償/対抗/請求

この求償権が、通知を怠るとどう制限されるのか。443条です。1項と2項があります。全文を出します。

条文民法443条

民法第443条 1 他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。 2 弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその免責を得たことを他の連帯債務者に通知することを怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済その他自己の財産をもって免責を得るための行為をしたときは、当該他の連帯債務者は、その免責を得るための行為を有効であったものとみなすことができる。

1項から区切って読みます。まず、他の連帯債務者があることを知りながら、共同の免責を得ることを通知しないで、弁済などをして共同の免責を得た場合です。次に、他の連帯債務者が、債権者に対抗できる事由を持っていたときは、その負担部分について、その事由を、免責を得た人に対抗できます。後段は、相殺で対抗したときは、免責を得た人が、債権者に、相殺で消えるはずだった債務の履行を請求できる、です。条文の札です。1項は、払う前の通知、つまり事前の通知を怠った場合の話です。試験で中心になるのは、債権者に対する反対債権による相殺です。ほかに、債権者から期限の猶予を受けている、といったものもありますが、今日は相殺で見ます。数字にします。場面を替えます。CがAに対して、120万円の反対債権を持っていたとします。Bはそれを知らないまま、Cに通知しないで、300万円を払いました。Bは、Cに100万円を求償します。するとCは、自分が120万円の債権で相殺できたはずだと、対抗できます。負担部分である100万円の限度で、Bへの支払を断れます。ここで相殺を持ち出すCは、債権を持っている本人です。前の回の439条2項は、Dの債権をB・Cが使う話で、相殺はできず、払うのを断れるだけでした。そのうえで、Bは、Cが対抗した100万円の範囲について、Aに履行を請求できます。なぜAなのか。払う前に知らせてもらっていれば、Cは、先にAに相殺を主張できました。その機会を、Cは、Bへの支払を断る形で使いました。そこで、AがCに払うはずだった100万円を、代わりにBがAに払ってくれと言えます。相殺で消えるはずだった債務とは、この、AがCに負っている債務のことです。Cの反対債権のうち、対抗に使われなかった20万円は、CがAに請求します。Dは対抗できる事由を持っていませんから、Bは、Dには100万円をそのまま求償できます。これで、Bの最終的な負担は、300万円から、Dからの100万円と、Aからの100万円を引いた、自分の分の100万円になります。数字の組み立てはこちらの説明です。

2項に移ります。弁済などをして共同の免責を得た人が、他の連帯債務者があることを知りながら、免責を得たことを通知するのを怠った。そのため、他の連帯債務者が善意で、弁済などの免責を得るための行為をした。このとき、その人は、自分の行為を有効であったものとみなすことができます。条文の札です。払った後の通知、つまり事後の通知を怠った場合の話です。善意とは、ここでは、すでに払われたことを知らないことです。条文は善意でとだけ書き、過失の有無は書いていません。みなすとは、反対の事実があっても、有効として扱える、という意味です。この効果は、通知を怠った人との関係で働きます。これはこちらの説明です。

事前の通知の制度は、改正のあとも残りました。

443条の文言の変更の板。改正前の1項=通知すべき中身は「債権者から履行の請求を受けたこと」。現行=「共同の免責を得ること」を通知しないで。1項・2項とも「他の連帯債務者があることを知りながら」が加わった。札=条文/立案の過程の説明。 図:443条の文言の変更の板

  • 改正前の1項=通知すべき中身は「債権者から履行の請求を受けたこと」
  • 現行=「共同の免責を得ること」を通知しないで
  • 1項・2項とも「他の連帯債務者があることを知りながら」が加わった
  • 札=条文/立案の過程の説明

2017年の改正で、文言が2か所変わりました。1つめ、通知すべき中身です。改正前は、債権者から履行の請求を受けたことを通知しないで、とされていました。現行は、共同の免責を得ることを通知しないで、です。通知が重要なのは、払おうとしていることだから、という整理です。2つめ、1項に、他の連帯債務者があることを知りながら、が入りました。他の連帯債務者がいることを知らない人もいますから、通知を怠った不利益は、知っていたのに通知しなかった場合に限るべきだ、という検討がありました。立案の過程の説明です。2項にも同じ言葉が入りました。1項と同じ趣旨と考えられます。こちらの説明です。整理します。事前の通知を怠ると、他の連帯債務者に、負担部分について事由を対抗されます。1項です。事後の通知を怠ると、二重に払った他の連帯債務者の弁済が、有効になります。2項です。要件の文言は、条文どおりに書きます。

4つの組合せと、両方が通知を怠った場合

冒頭の設例の整理。第1弁済=Bが300万円をAへ。第2弁済=翌日Cが300万円をAへ。Bは、C・Dがいることを知っている。問い=Bが事後の通知を怠り、Cも事前の通知をしなかったとき、有効になる弁済はどちらか。辺ラベルの語=弁済/通知。 図:冒頭の設例の整理

  • 第1弁済=Bが300万円をAへ
  • 第2弁済=翌日Cが300万円をAへ
  • Bは、C・Dがいることを知っている
  • 問い=Bが事後の通知を怠り、Cも事前の通知をしなかったとき、有効になる弁済はどちらか
  • 辺ラベルの語=弁済/通知

冒頭の設例に戻ります。Bが先に払う、これが第1弁済です。翌日、Cが払う、これが第2弁済です。Bは、C・Dがいることを知っています。見る点は2つです。Bが、払った後に通知をしたか。Cが、払う前に通知をしたか。この2つの組合せは4通りあります。3つの場合に分けて見ます。有効になるのは、Bの弁済か、Cの弁済か、どちらかです。

4つの組合せの板。縦=Bが事後の通知を した/怠った。横=Cが払う前に通知を した/怠った。Bが通知した→Cの事前の通知の有無を問わず、Bの弁済が有効(Cは善意でない)。Bが怠った+Cが事前の通知をした→Cの弁済が有効とみなされる(443条2項)。Bが怠った+Cも事前の通知を怠った→Bの弁済が有効(判例)。札=条文/判例/こちらの説明。 図:4つの組合せの板

  • 縦=Bが事後の通知を した/怠った
  • 横=Cが払う前に通知を した/怠った
  • Bが通知した→Cの事前の通知の有無を問わず、Bの弁済が有効(Cは善意でない)
  • Bが怠った+Cが事前の通知をした→Cの弁済が有効とみなされる(443条2項)
  • Bが怠った+Cも事前の通知を怠った→Bの弁済が有効(判例)
  • 札=条文/判例/こちらの説明

順に見ます。1つめ、Bが払った後に通知をした場合です。通知を受けたCは、すでに払われたことを知っています。善意ではありません。2項は使えず、Bの弁済が有効です。Cが払う前の通知をしたかどうかは、関係ありません。2つめ、Bが通知を怠り、Cが払う前にB・Dへ通知していた場合です。Cは善意で払っています。2項が使えて、Cの弁済が有効とみなされます。Bからの求償を、Cは拒めます。Bは、有効と認められなかった弁済、つまり払い過ぎた300万円を、Aに不当利得として返還請求することになります。条文の札です。不当利得というのは、どういう請求ですか。民法703条です。読みます。法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。Aは、すでに全額を受け取ったあとで、さらに300万円を受け取りました。この300万円は、受け取る理由のない利益ですから、返す義務があります。3つめが、Bが通知を怠り、Cも払う前の通知を怠った場合です。2項は、事後の通知を怠った人から、善意で払った人を守る規定です。ところが、守られるはずのCが、事前の通知を怠っています。この場合に、Cの弁済を有効とみなせるのか。条文には答えが書かれていません。そこで判例を読みます。ここで問いです。Bが事後の通知を怠り、Cも事前の通知をしていなかったとき、有効になるのはBの弁済でしょうか、Cの弁済でしょうか?

2項は、善意で払った人を守る規定でした。Cは善意ですから、Cの弁済が有効になるのではないでしょうか。そこが分かれ目です。判例の結論は、Bの弁済が有効です。理由を、カードで読みます。この判決が扱ったのは、後から払った連帯債務者が、払う前の通知をしていなかった場合です。

判例最判昭57・12・17 民集36巻12号2399頁

事前の通知を怠った連帯債務者と443条2項 連帯債務者の一人が弁済その他の免責の行為をするに先立ち、他の連帯債務者に通知することを怠つた場合は、既に弁済しその他共同の免責を得ていた他の連帯債務者に対し、民法四四三条二項の規定により自己の免責行為を有効であるとみなすことはできないものと解するのが相当である。けだし、同項の規定は、同条一項の規定を前提とするものであつて、同条一項の事前の通知につき過失のある連帯債務者までを保護する趣旨ではないと解すべきであるからである。

区切って読みます。1つ目の文は、払う前に他の連帯債務者へ通知することを怠ったときは、すでに払っていた他の連帯債務者に対し、2項で自分の行為を有効とみなすことはできない、です。2つ目の文が理由です。2項は1項を前提としている。事前の通知につき過失のある連帯債務者までを保護する趣旨ではない、です。判例の札です。

判例の理由づけの板。結論=払う前の通知を怠った者は、2項で自分の免責行為を有効とみなせない(判例)。理由=2項は1項(事前の通知)を前提とする。事前の通知につき過失のある者までを保護する趣旨ではない。こちらの説明=払う前に通知していれば、すでに払われたことを知れたはず。原則は、最初に払った人の弁済で債務が消えている。2番目の弁済を有効にするには、その人の信頼が守られるだけの事情が要る。札=判例/こちらの説明。 図:判例の理由づけの板

  • 結論=払う前の通知を怠った者は、2項で自分の免責行為を有効とみなせない(判例)
  • 理由=2項は1項(事前の通知)を前提とする
  • 事前の通知につき過失のある者までを保護する趣旨ではない
  • こちらの説明=払う前に通知していれば、すでに払われたことを知れたはず
  • 原則は、最初に払った人の弁済で債務が消えている
  • 2番目の弁済を有効にするには、その人の信頼が守られるだけの事情が要る
  • 札=判例/こちらの説明

判例の理由を、数字の場面に引き寄せます。払う前に通知をしていれば、すでに払われていることを知れたはずです。それをしなかった人まで、守る理由はありません。もともと、最初に払った人の弁済で、債務は消えています。2番目の弁済を有効にするには、その人の信頼が守られるだけの事情が必要で、それは、払う前に通知をしていた人です。この読み方はこちらの説明です。判例の結論を条文に書き込むことは、改正のときに検討されました。善意を善意で過失なくに改める案や、ただし書を足す案です。しかし現行の2項は、善意で、のままです。判例の解釈が、今も使われています。立案の過程の説明です。ここは論文で論点になりうる所です。443条の要件は、条文どおりに、共同の免責を得たこと、通知を怠ったこと、善意で免責の行為をしたこと、と書きます。2項は1項を前提とする、という結論は、判例の解釈として、理由を添えて書きます。

冒頭に戻って決めます。Cが払う前にB・Dへ通知していたなら、2項でCの弁済が有効とみなされます。Bは、払い過ぎた300万円をAに返還請求します。Aが返せなくなる危険を負うのは、Bです。Cが何も通知していなかったなら、Bの弁済が有効で、BはC・Dに求償できます。Cは、払い過ぎた300万円をAに返還請求し、Aが返せなくなる危険は、Cが負います。どちらの弁済が有効になるかが決まり、有効にならなかったほうが、受け取り過ぎたAに返還を求める。Bが事後の通知を怠った場面では、Cが払う前に通知したかどうかで決まります。この整理はこちらの説明です。

償還無資力者がいるとき——444条

444条の数字図。場面替え=通知の問題は離れ、Dが無資力。Bが300万円をAへ弁済。C・Dに各100万円を求償するはずが、Dは払えない。Dの100万円はB・Cが負担部分に応じて(1対1)50万円ずつ負担。BがCに求償できる額=100万円+50万円=150万円。辺ラベルの語=弁済/求償。 図:444条の数字図

  • 場面替え=通知の問題は離れ、Dが無資力
  • Bが300万円をAへ弁済
  • C・Dに各100万円を求償するはずが、Dは払えない
  • Dの100万円はB・Cが負担部分に応じて(1対1)50万円ずつ負担
  • BがCに求償できる額=100万円+50万円=150万円
  • 辺ラベルの語=弁済/求償

2つめの柱です。通知の問題はいったん離れて、場面を替えます。Bが期限の日に300万円を払いました。ところが、Dは償還をする資力の無い人でした。償還とは、求償に応じて払うことで、償還する資力の無い人が、償還無資力者です。条文を読みます。

条文民法444条

民法第444条 1 連帯債務者の中に償還をする資力のない者があるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担する。 2 前項に規定する場合において、求償者及び他の資力のある者がいずれも負担部分を有しない者であるときは、その償還をすることができない部分は、求償者及び他の資力のある者の間で、等しい割合で分割して負担する。 3 前二項の規定にかかわらず、償還を受けることができないことについて求償者に過失があるときは、他の連帯債務者に対して分担を請求することができない。

ここで問いです。Dが払えないとき、その分は、Bが全部引き受けるのでしょうか?1項が答えです。償還できない部分は、求償者と、他の資力のある者の間で、各自の負担部分に応じて分割して負担します。条文の札です。数字にします。Bが300万円払い、C・Dに各100万円を求償するはずが、Dの100万円は取れません。この100万円を、求償者のBと、資力のあるCで、負担部分の割合、つまり100万円対100万円の1対1で割ります。50万円ずつです。BがCに求償できるのは、Cの負担部分の100万円に、この50万円を足した、150万円です。Bの最終的な負担も、300万円から150万円を引いた150万円で、自分の負担部分の100万円に、50万円を足した額です。この計算はこちらの説明です。用語を分けます。前の回は、払った人が他の人に分担を求める、と広く言いました。条文では、負担部分の割合で他の人に求めるのが求償です。444条が分担と呼ぶのは、その求償の中で、取れない分を、資力のある人で割って負担することです。求償者1人に、取れない分を全部負わせるのは不公平ですから、資力のある人で分ける、というのが1項の考えです。これもこちらの説明です。

2項は、求償者も資力のある人も、負担部分が無い人ばかりの場合です。たとえば、実際に借りたのはDだけで、BとCは頼まれて名を連ねただけ、という場面です。Dの負担部分が300万円で、Dは無資力、Bが300万円を払ったとします。Dから取れない300万円を、B・Cで等しい割合、つまり、150万円ずつ負担します。BがCに求償できるのは150万円です。2項は、判例の考え方を明文化したもの、と説明されています。立案の過程の説明です。3項は、償還を受けられないことについて、求償者に過失がある場合です。分担を請求できません。たとえば、BがCへの求償を長く放置している間に、Cが無資力になった、という場面です。Cの分は、Bが引き受けるしかなく、Dに分担を求めることはできません。条文の札で、例はこちらの説明です。

免除や時効の完成を受けた人にも求償できる——445条

445条の関係図。場面替え=前の回の冒頭設例の続き。AはBにだけ請求を続け、C・Dの時効が完成、C・Dは時効を援用。C・Dの債務は消えている。その後、BがAに300万円を弁済。BからC・Dへ各100万円を求償できるか。辺ラベルの語=弁済/求償。 図:445条の関係図

  • 場面替え=前の回の冒頭設例の続き
  • AはBにだけ請求を続け、C・Dの時効が完成、C・Dは時効を援用
  • C・Dの債務は消えている
  • その後、BがAに300万円を弁済
  • BからC・Dへ各100万円を求償できるか
  • 辺ラベルの語=弁済/求償

3つめの柱です。場面を替えて、前の回の冒頭の設例に戻ります。AはBにだけ請求を続け、C・Dには何もしないまま5年が過ぎました。C・Dは時効を援用しました。そのあと、BがAに300万円を払いました。BはC・Dに求償できるでしょうか。その前に、前の回の441条を思い出してください。連帯債務で、免除や時効の完成は、他の連帯債務者に効くのでしょうか?441条本文で、相対効でした。Bに免除や時効の完成があっても、C・Dは300万円のままです。その相対効の結果が、求償にどう出るか、です。条文を読みます。

条文民法445条

民法第445条 連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。

読みます。連帯債務者の1人に対して債務の免除がされ、または1人のために時効が完成した場合でも、他の連帯債務者は、その1人に対し、442条1項の求償権を行使できる、です。債務の免除とは、債権者が債務そのものを消すことです。条文の札です。冒頭の設例の答えは、できる、です。C・Dの債務は時効で消えていますが、BのC・Dに対する求償権は、別の権利です。BはC・Dに各100万円を求償できます。Bの側から見てください。免除や時効の完成は相対効ですから、C・Dの債務が消えても、Bの債務は残り、Bは全額を払わなければなりませんでした。それなのにBの求償まで奪えば、Aの請求の仕方の都合で、Bだけが損をします。それは不公平です。この理由はこちらの説明です。免除の場合も数字で見ます。AがBだけを免除したとします。C・Dは300万円のままです。Cが300万円を払えば、Bに100万円を求償できます。Bの債務は免除で消えていますが、求償は別です。改正の前は、免除が負担部分の限度で他の人にも効いたので、この問題は目立ちませんでした。前の回の受けです。

求償に応じたC・Dは、Aに、払った分を返してくれ、と言えないのですか。言えません。Aは、Bに対する債権で払ってもらっただけで、法律上の原因のない利益を受けたわけではないからです。703条の不当利得にはなりません。条文には書かれていない、解釈です。こちらの説明です。ここは、条文どおりに書けます。免除や時効の完成を受けた人にも求償できる、と445条の文言を引いて書きます。

連帯の免除と、旧445条の削除

債務の免除と連帯の免除の区別の板。債務の免除=債務そのものを消す(441条・相対効)。連帯の免除=債務は残すが、連帯をやめて、その人の負担部分に限る。債権者の一方的な意思表示でできる。全員に連帯の免除=分割債務(427条)。札=こちらの説明。 図:債務の免除と連帯の免除の区別の板

  • 債務の免除=債務そのものを消す(441条・相対効)
  • 連帯の免除=債務は残すが、連帯をやめて、その人の負担部分に限る
  • 債権者の一方的な意思表示でできる
  • 全員に連帯の免除=分割債務(427条)
  • 札=こちらの説明

もう1つ、似た言葉を区別します。連帯の免除です。債権者が、連帯債務者の1人について、債務額を、その人の負担部分に限ることです。その人は、自分の分だけを払えばよくなります。債務の免除は、債務そのものを消します。連帯の免除は、債務を残して、連帯をやめます。債権者の一方的な意思表示でできます。定義はこちらの説明です。全員に連帯の免除をすれば、分割債務、つまり427条の姿になります。2017年の改正の前は、445条に、連帯の免除を受けた人について、特別な規定がありました。連帯の免除を受けた人がいて、ほかに払えない人がいるときの規定です。払えない人の分のうち、連帯の免除を受けた人がかぶるはずの分を、その人ではなく、債権者がかぶる、というものです。この旧445条は、改正で削除されました。現行の445条は、さきほど読んだ別の規定です。立案の過程の説明です。

連帯の免除をする債権者は、通常、その人には、その人の負担部分だけを請求する、というつもりです。払えない人が出たときの分担まで、自分が引き受ける意思はありません。そう説明されています。立案の過程の説明です。旧445条のままでは、その意思に反して、債権者が分担を引き受けることになります。だから削除されました。この結びはこちらの説明です。

連帯の免除の数字図。場面替え=AがDに連帯の免除(Dは100万円の限度)。Bが300万円を弁済。C・Dに各100万円を求償するが、Cは無資力。Cの100万円は、B・Dで1対1、50万円ずつ。BがDに求償できる額=100万円+50万円=150万円。辺ラベルの語=弁済/求償。 図:連帯の免除の数字図

  • 場面替え=AがDに連帯の免除(Dは100万円の限度)
  • Bが300万円を弁済
  • C・Dに各100万円を求償するが、Cは無資力
  • Cの100万円は、B・Dで1対1、50万円ずつ
  • BがDに求償できる額=100万円+50万円=150万円
  • 辺ラベルの語=弁済/求償

削除の後は、どう処理するか。場面を替えます。AがDに、連帯の免除をしました。Dは、100万円の限度で責任を負います。Bが300万円を払いました。C・Dに各100万円を求償しますが、Cは無資力で払えません。Cの100万円は、444条の原則どおり、求償者のBと、資力のあるDが、負担部分の1対1で、50万円ずつ負担します。BがDに求償できるのは、Dの負担部分100万円に50万円を足した、150万円です。改正の前は、Dが負担するこの50万円の分を、債権者のAが負担する、という旧445条がありました。今は、444条で処理します。連帯の免除は、AとDの間の話で、BとDの間の求償は、442条と444条で決まります。条文の札と、立案の過程の説明です。

冒頭の問いに戻る——今日のまとめ

今日のまとめ。3つの柱=1 通知を怠ったとき=事前の通知を怠ると、負担部分について対抗される(443条1項)/事後の通知を怠ると、二重に払った人の弁済が有効になる(443条2項)/両方が怠られたら、先に払った人の弁済が有効(判例)。2 無資力者の分は、資力のある者で負担部分に応じて分ける(444条)。3 免除や時効の完成を受けた者にも求償できる(445条)。連帯の免除は、旧445条の削除後は444条で処理。最下段=答え。 図:今日のまとめ

  • 3つの柱=1 通知を怠ったとき=事前の通知を怠ると、負担部分について対抗される(443条1項)/事後の通知を怠ると、二重に払った人の弁済が有効になる(443条2項)/両方が怠られたら、先に払った人の弁済が有効(判例)
  • 2 無資力者の分は、資力のある者で負担部分に応じて分ける(444条)
  • 3 免除や時効の完成を受けた者にも求償できる(445条)
  • 連帯の免除は、旧445条の削除後は444条で処理
  • 最下段=答え

冒頭の問いに戻ります。Bが先に払い、C・Dに通知しなかった。翌日、Cも払ってしまい、Aは600万円を受け取った。この二重払いの後始末は、誰が引き受けるか、でした。答えです。Cが払う前にB・Dへ通知していたなら、Cの弁済が有効とみなされ、Bが、払い過ぎた300万円をAに返還請求します。Cが通知していなかったなら、Bの弁済が有効で、Cが、払い過ぎた300万円をAに返還請求します。決め手は、Cが払う前に通知したかどうかです。3つの柱で整理します。1つめ、通知を怠ったとき。事前の通知を怠ると、負担部分について対抗されます。事後の通知を怠ると、二重に払った人の弁済が有効になります。両方が怠られたら、先に払った人の弁済が有効です。2つめ、無資力者の分は、資力のある人で、負担部分に応じて分けます。3つめ、免除や時効の完成を受けた人にも、求償できます。連帯の免除は、旧445条の削除のあと、444条で処理します。札を付けて整理します。条文は443条から445条まで。判例は、両方が通知を怠った場合の結論です。立案の過程の説明は、443条の文言の変更と、旧445条の削除の理由です。こちらの説明は、通知が要る理由、みなすの効果の及ぶ範囲、免除や時効の完成を受けた人に求償できる理由、連帯の免除の定義です。両方が通知を怠った場合は、論文で論点になりうる所です。

参照条文

  • 民法442条1項
  • 民法443条
  • 民法444条
  • 民法445条

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