保証債務の性質と保証契約(446条〜448条)
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第4章 債権総論 #215/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
頼まれて保証人欄に署名したら、何を背負うのか
図:冒頭の設例の関係図
- A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主・Cの大学時代の友人)、C 保証人
- AはBに200万円を貸した
- Cは借用書の保証人欄に署名した
- 問い=Bが期日に返さなかったら、Cは明日からAに払わなければならないのか
- 辺ラベルの語=貸金/保証契約
先に答えです。払う義務を負います。これを保証債務と呼びます。ただし、条件が3つ付きます。1つめ、払うのは、Bの債務の範囲までで、Bの債務が消えれば、Cの債務も消えます。2つめ、保証契約が書面でされていることです。書面でしなければ、効力を生じません。3つめ、原則として、まずBに請求してくれ、と言える順番の性質があります。ただし、この順番の性質は、主債務者と連帯して負う重い種類の保証、連帯保証だと無くなります。今日の登場人物を決めます。前の回までのA・B・Cとは役が違います。今日は、Aが貸主で債権者、Bが借主で主たる債務者、Cが保証人です。この3人で通します。比較のためだけに、もう1人、Dを出します。Dは、別の場面で、自分の土地に抵当権を設定した人で、物上保証人です。今日も、話の根拠が混ざります。そのつど、何に基づく話かを言います。条文に書かれていることは、条文の札です。最高裁や、その前の大審院の判決が述べたことは、判例の札です。2004年・2017年の改正のとき、なぜそう決めたのか、として説明されていることは、立案の過程の説明の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための、講義の説明は、こちらの説明の札です。答案は、条文は条文番号を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。
保証債務とは何か——446条1項
図:446条1項の条文板
- 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う
- 用語=主たる債務(保証によって担保される債務)/主債務者=B/保証人=C/保証債務=CがAに対して負う債務
- 札=条文
1つめの柱、保証債務とは何か、です。場面は冒頭のままです。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人です。まず条文を読みます。
条文民法446条1項
民法第446条(保証人の責任等) 1 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
用語を一つずつ決めます。主たる債務とは、保証によって担保される債務です。冒頭では、BがAに負う200万円の貸金の債務です。以下、主債務と略します。その債務者が主債務者で、Bです。保証人はCです。そして、CがAに対して負う債務が、保証債務です。条文の札と、用語の整理はこちらの説明です。債務は2つあります。ただし、Aが受け取れるのは、全部で200万円です。Bが払えばCの債務も消えますし、Cが払えばBの債務も消えます。債権者は、主債務者の財産に加えて、保証人の財産全体も、当てにできます。責任を負う財産が、1人分から2人分に増えるわけです。これが人的担保の典型です。ただし、担保力は、保証人の資力しだいです。Cが無資力なら、保証は効きません。ここで、前の回の要点を1つ思い出してください。物上保証人は、債権者から「払え」と言われる立場だったでしょうか?
物上保証人は、債務を負っていません。だから「払え」とは言われず、差し出した土地の限度で、責任だけを負いました。その比較を、保証の側から、板にします。
図:比較板
- 保証人Cと物上保証人Dの比較
- 観点=債務を負うか:Cは負う(保証債務)/Dは負わない(債務なき責任)
- 責任の範囲:Cは全財産/Dは担保に入れた特定の物の限度
- 債権者の請求:CにはAは「払え」と請求できる/DにはAは「払え」とは言えず、抵当権を実行するしかない
- 札=こちらの説明
Cは保証人です。Dは、別の場面で、自分の土地に抵当権を設定した物上保証人です。観点は3つです。1つめ、債務を負うか。Cは保証債務を負います。Dは債務を負いません。債務なき責任です。2つめ、責任の範囲。Cは全財産、Dは差し出した土地の限度です。3つめ、債権者の請求。AはCには「払え」と請求できます。Dには、払えとは言えず、土地について抵当権を実行するしかありません。例えば、Dが担保した借金が200万円で、土地が150万円でしか売れなければ、AがDから回収できるのは、150万円までです。Dの預金や給料から、残りの50万円を取ることはできません。これが、債務なき責任です。担保物権の回では、Dの側を見ました。今日は、Cの側から比べ直しました。こちらの説明です。
債権者にとって、保証人と物上保証人のどちらが安心かは、一概には言えません。Cは、全財産が引き当てになりますが、資力が尽きたら効きません。Dは、土地という特定の物ですが、その価値から優先的に回収できます。担保の仕組みの違いです。保証人が何を背負うのかは、この板のとおりで、債務を負い、責任は全財産に及ぶ、です。
独立債務性——保証債務は別個の債務
図:独立債務性の板
- 保証債務=保証契約(A・C間)から生まれる、主債務とは別個の債務
- 現れ方=1 成立の原因が別(保証契約が要る)/2 保証債務についてだけ違約金・損害賠償の額を約定できる(447条2項)/3 保証債務だけを免除すれば主債務は残る
- 札=条文(447条2項は名前だけ)/こちらの説明
2つめの柱です。保証債務には、4つの性質があります。独立債務性、付従性、随伴性、補充性です。この順に見て、最後に1枚の板にします。付従性と随伴性は、担保物権の回で聞いた言葉です。同じ意味の軸かどうかは、最後に答えます。1つめは独立債務性です。保証債務は、保証契約によって成立する、主債務とは別個の債務です。主債務は、AとBの貸付けの契約から生まれました。保証債務は、AとCの保証契約から生まれます。別の契約から、別の債務が生まれるわけです。現れ方は3つです。1つめ、成立の原因が別で、保証契約が要ります。これは3つめの柱で詳しく見ます。2つめ、保証債務についてだけ、違約金や損害賠償の額を、約束できます。447条2項です。3つめ、Aが保証債務だけを免除すれば、主債務は残ります。Cの債務だけが消えて、Bの債務は残ります。条文の札は447条2項の名前だけで、あとはこちらの説明です。
別個の債務なのに、主債務に従うのですか。矛盾しませんか。矛盾しません。軸を分けてください。独立なのは、生まれ方と、Cの債務だけを動かせることです。生まれ方は、さっきの1つめで、AとCの保証契約から生まれます。Cの債務だけを動かせるのは、2つめと3つめで、Cの債務にだけ違約金を付けられ、Cの債務だけを免除できます。これに対して、保証債務があるかないか、どこまで重いかは、主債務が決めます。それが、次の付従性です。こちらの説明です。
付従性——成立・内容・消滅
図:付従性の3場面の板
- 保証債務は主債務に従う
- 1 成立=主債務がなければ保証債務も成立しない(取り消されて初めから無かったことになった場合も同じ)/2 内容=448条1項 契約の時点で保証が重ければ主債務の限度に減縮・448条2項 契約の後に主債務が加重されても保証は加重されない/3 消滅=主債務が消えれば保証債務も消える
- 札=条文/こちらの説明
2つめは付従性です。保証債務は、主債務の履行を担保する手段で、主債務と主従の関係にあります。3つの場面で現れます。担保物権の回では、成立と消滅の2つの場面を見ました。保証と弁済の回では、保証にも同じ2つがある、と見ました。保証には、3つ目の内容が加わります。1つめ、成立における付従性です。主債務がなければ、保証債務も成立しません。例えば、Bの借入れの契約が成立していなかったとします。あるいは取り消されて、初めから無かったことになったとします。その場合は、Cの保証債務も成立しません。ただし、449条に例外があります。未成年であることのような、行為能力の制限が取消しの原因で、保証人がそれを知って保証したときです。この場合は、主債務の不履行のときも、取消しのときも、同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定する、とされています。中身は別の回で扱います。条文の札です。2つめ、内容における付従性です。ここで問いです。主債務は200万円です。Cが「300万円まで保証する」と書いたら、AがCに請求できるのは、何万円まででしょうか?
200万円までだと思います。主債務より多くは、払わせられない気がします。200万円までです。条文を読みます。
条文民法448条
民法第448条(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様) 1 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。 2 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。
図:448条の読み方の板
- 1項=契約の時点で保証のほうが重い→主債務の限度に減縮(目的=300万円→200万円/態様=弁済期 半年後→1年後/利息 年10%→年3%)
- 2項=契約の後に主債務が重くなっても保証人の負担は加重されない
- 時点で分ける
- 札=条文/こちらの説明
1項から読みます。保証人の負担が、債務の目的または態様において、主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮する、です。条文の札です。減縮、と言います。全部がなくなるのではありません。重い部分が、主債務の限度まで縮むのです。数字で見ます。主債務は200万円で、弁済期は、1年後です。Cが「300万円まで払う」と書いたなら、200万円に減縮します。目的の話です。Cが「半年後に払う」と書いたなら、弁済期は、主債務の1年後に減縮します。態様、つまり期限の話です。利息でも同じです。主債務が年3%で、Cが年10%と書いたなら、年3%に減縮します。こちらの説明です。2項です。主たる債務の目的または態様が、保証契約の締結後に加重されたときでも、保証人の負担は加重されない、です。2017年の改正で入りました。それまで条文はなく、付従性から解釈で導かれていたことを、明文にした、と説明されています。立案の過程の説明の札です。数字で見ます。Cが保証したあとで、AとBが、利息を年3%から年10%に上げる合意をしました。Bは、年10%を負います。主債務者の債務は、合意のとおりです。しかしCの負担は、年3%のままです。理由はこちらの説明です。Cが同意していない約束で、Cの負担だけが重くなるのは、筋が通らないからです。Cが引き受けたのは、契約の時点の中身までです。言葉を整理します。1項は、契約を結んだ時点で、保証のほうが重いときです。2項は、契約を結んだあとに、主債務のほうが重くなったときです。時点で分けてください。なお、先ほどの447条2項は、内容における付従性と矛盾しません。違約金を決めても、Cが払う本来の額は、主債務の限度のままです。変わるのは、払わなかったときの制裁の部分だけです。付従性が縛るのは本来の額で、447条2項が動かすのは不履行の制裁です。別の場所の話なのです。こちらの説明です。
図:消滅における付従性の板
- 主債務が消えれば保証債務も消える
- 例=Bが全額を返す(弁済)/Aが主債務を免除する
- 保証人は主債務の消滅時効を援用できる
- 成立・内容・消滅の3場面のうち、内容が保証に特徴的
- 札=条文(145条)/こちらの説明
3つめ、消滅における付従性です。主債務が消えれば、保証債務も消えます。Bが全額を返せば、Cの保証債務も消えます。弁済です。Aが主債務を免除した場合も同じです。なお、保証人は、主債務の消滅時効を援用できます。時効の援用の回で、援用できる人の一人として見ました。
随伴性・補充性
図:随伴性・補充性の板
- 随伴性=主債権が譲渡されれば保証債権も一緒に移る(AがBに対する200万円の貸金債権を別の人に譲渡→譲り受けた人がCに履行を請求できる)
- 補充性=主債務者が履行しないときに初めて保証人が履行する(446条1項の文言)
- 保証人は催告の抗弁(452条)・検索の抗弁(453条)を持つ
- 連帯保証には無い(454条)
- 札=条文/こちらの説明
3つめは随伴性です。主債務の債権が譲渡されると、保証債権も一緒に移ります。AがBに対する200万円の貸金債権を、別の人に譲渡したとします。譲り受けた人がCに、保証債務の履行を請求できます。Cは「Aとの約束だった」とは言えません。なぜか。保証債権は、主債権を回収するための手段だからです。主債権が譲り受けた人に移ったのに、保証債権だけがAの手元に残っても、Aには、もう回収する債権がありません。譲り受けた人のほうは、保証の付いていない債権をつかまされます。だから、手段は、回収する債権と一緒に移ります。債権譲渡の回で、保証人付きの債権の譲渡の通知は、主たる債務者にすれば足り、保証人にしても効かない、と見ました。その根っこが、この随伴性と付従性です。主債権と保証債権を、別々に譲渡することもできません。担保は債権あってこそ、という軸です。こちらの説明です。4つめは補充性です。補充性とは、請求の順番が、主債務者、そして保証人、となることです。保証人が責任を負うのは、主債務者の不履行があってからです。446条1項の文言そのものです。主たる債務者がその債務を履行しないときに、とあります。具体化として、保証人には2つの抗弁があります。保証と弁済の回で見た2つです。1つは催告の抗弁で、債権者が保証人に請求したとき、まず主債務者に請求するよう求められるものです。もう1つは検索の抗弁で、主債務者の財産に執行するよう求められるものです。452条と453条です。要件と効果は、別の回です。条文の札です。
ただの保証人なら、Aに請求されたとき、まずBに請求してくれ、と言えます。ただし、連帯して債務を負担した保証人には、これらの抗弁がありません。454条です。連帯保証には補充性が無いわけです。454条は条文の札です。なお、実際の取引では連帯保証の形が多く、本体は別の回です。取引の実際についての一言は、こちらの説明です。
4つの性質を1枚にする
図:4つの性質の一覧板
- 独立債務性=別個の債務/447条2項(名前)/保証債務だけの約定・免除
- 付従性=主債務に従う/448条(成立・内容・消滅)/主債務が無い・軽い・消えるとき
- 随伴性=債権譲渡についていく/条文なし/債権譲渡
- 補充性=主債務者が先/452条・453条(名前)/請求を受けたとき(連帯保証には無い)
4つの性質を、1枚にします。独立債務性は、別個の債務です。条文は447条2項の名前で、効いてくる場面は、保証債務だけの約束や免除です。付従性は、主債務に従うことです。条文は448条で、主債務が無いとき、軽いとき、消えるときに効きます。随伴性は、債権譲渡についていくことです。条文はなく、債権が譲渡されるときに効きます。補充性は、主債務者が先、という順番です。条文は452条と453条の名前で、債権者から請求を受けたときに効きます。連帯保証には無い、と添えます。こちらの説明です。先ほどの問いに答えます。付従性と随伴性は、担保物権の回で見たものと、同じ、担保は債権あってこそ、という軸です。保証にだけあるのは、内容における付従性、つまり448条と、補充性です。こちらの説明です。もう1つ、連帯債務との差分を、1文で言います。連帯債務は、債務者の数だけ債務が並び、主従がありません。各自が全部を、自分の債務として負います。保証債務は、主債務の後ろにつく側で、運命は主債務に従います。こちらの説明です。ここで、冒頭の答えに戻して、ひとつにまとめます。保証債務は、Cが自分で負う、別個の債務です。けれども、あるかないか、どこまで重いか、誰についていくかは、主債務が決めます。請求の順番も、主債務者が先です。だから冒頭のCは、払う義務を負いますが、Bの債務の範囲までで、原則として、まずBへ、と言えるのです。こちらの説明です。
保証契約の当事者——債権者と保証人
図:場面②の関係図
- A 債権者、B 主債務者、C 保証人
- 契約の当事者=AとC(保証契約)
- Bは保証契約の当事者ではない
- Bの頼み=委託は成立要件でない
- Bが反対していても保証契約は成立する
- 辺ラベルの語=貸金/保証契約/頼み=委託
3つめの柱です。場面を替えます。今度は、保証契約が結ばれる場面です。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人で、役は変わりません。保証契約の当事者は、Aと、Cです。Bは、保証契約の当事者ではありません。保証と弁済の回で、保証契約の当事者は債権者と保証人だ、と言ったのを、ここで本格的に見ます。冒頭のCには、Bの頼み、つまり委託がありました。しかし、Bの頼みは、保証契約の成立の要件ではありません。Bに頼まれていなくても、Aとの間で保証契約を結べば、保証人になれます。Bの意思に反していても、保証契約は成立します。462条2項は、主たる債務者の意思に反して保証をした者の求償を定めていて、そういう保証が前提にされていることの裏付けになります。条文の札は名前だけで、成立の話はこちらの説明です。委託の有無が効くのは、求償です。委託がなければ、求償できる範囲が小さくなります。保証契約は、合意で成立する諾成契約で、さらに要式行為です。次に見ます。
要式行為——書面でしなければ効力を生じない
図:446条2項・3項の条文板
- 2項=保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない
- 3項=保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する
- 要式行為=一定の方式でしなければ効力を生じない行為
- 札=条文
冒頭の先出しの2つめの条件です。もう一度条文を読みます。
条文民法446条2項・3項
民法第446条(保証人の責任等)(抜粋) 2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
2項は、保証契約は、書面でしなければ、効力を生じない、です。3項は、保証契約が、その内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなす、です。条文の札です。要式行為とは、一定の方式、ここでは書面でしなければ、効力を生じない行為のことです。電磁的記録とは、電子メールなどのように、コンピュータの情報処理に使われる記録のことです。問いです。Cが電話で「保証するよ」と言っただけなら、AはCに保証債務を請求できるでしょうか?書面がないので、効力を生じず、請求できないと思います。請求できません。口約束だけでは、Cは「いいよ」と言っても、保証人になりません。冒頭のCは、借用書の保証人欄に署名したので、書面があります。先出しの答えの2つめ、書面がある、を満たします。
趣旨を説明します。保証人は、対価を得ないまま、主債務者の代わりに、自分の全財産で責任を負います。頼まれて、軽い気持ちで引き受けやすい契約です。そこで、書面という手続を一度かませて、引き受ける重さを、立ち止まって考えさせるのです。こちらの説明です。いつ入ったのかも、押さえてください。2004年の改正で、保証契約は、書面でしなければ、効力を生じないとされました。それ以前は、書面のいらない合意だけの契約でした。この改正は、個人の保証人を保護する見直しの一つだった、と説明されています。立案の過程の説明の札です。2017年の改正ではありません。書面に何が要るかの細部は、答案では、446条2項の文言を引けば足ります。
主債務の存在
図:主債務の存在の板
- 保証契約が有効になるには主債務が存在していること(成立における付従性)
- ただし契約の時に発生している必要はない=将来発生する債務を主債務とする保証も有効(これから貸す200万円を貸す前に保証)
- 特定物の引渡債務のように保証人が代わって履行できない給付を主債務とする保証も有効=保証するのは主債務者が履行しないときの損害賠償債務
- 札=こちらの説明
保証契約が有効になるには、主債務が存在していることが要ります。付従性の成立の場面の、再確認です。ただし、契約のときに、すでに主債務が発生している必要はありません。将来発生する債務についての保証も、有効です。例えば、これから貸す200万円を、貸す前に保証する場合です。もう1つ。特定物の引渡債務のように、保証人が代わって履行できない給付が主債務である場合の保証契約も、有効です。その場合の保証債務の中身は、主債務者が履行しなかったときに負う、損害賠償債務の保証です。例えば、Bが車をAに引き渡す債務をCが保証するなら、Bが引き渡さないときの損害賠償を、Cが保証します。こちらの説明です。
保証契約と錯誤——論文で論点になりうる
図:場面③の関係図
- A 債権者、B 主債務者、C 保証人
- Cは「Bには十分な資力がある」「ほかにも保証人がいる」と思って署名した
- 実はBは無資力・他の保証人はいなかった
- 問い=Cは保証を取り消せるか
- 辺ラベルの語=貸金/保証契約
場面を替えます。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人です。Cは「Bには十分な資力がある」「ほかにも保証人がいる」と思って署名しました。実は、Bは無資力で、ほかに保証人はいませんでした。Cは、保証を取り消せるでしょうか。ここは論文で論点になりうる所です。使う道具は、基礎事情の錯誤です。法律行為の基礎とした事情、つまり契約の前提にした事情についての認識が、真実に反する錯誤です。95条1項2号です。要件は3つで、認識が真実に反すること、重要であること、基礎とした事情が表示されていたことでした。表示について、近時の判例は、その事情が法律行為の内容になっていたかまで求める立場でした。今日は、要件のやり直しはしません。保証に当てはめるだけです。読み分けを3つに分けます。1つめ、主債務者が誰か、です。保証契約は、主債務者が履行しないときに、保証人が履行することを内容とする契約です。だから、主債務者が誰であるかは、契約の内容である保証債務の一要素です。このあと読む2枚目の判決が、そう述べています。判例の札です。主債務者を別の人と取り違えて署名したような場合が、取消しに結びつきうる、という当てはめは、こちらの説明です。2つめ、他にも保証人がいると思った場合です。判決を読みます。判決は、改正前の言葉で書かれています。改正前は、要素の錯誤、と言いました。縁由とは、判決の言葉で、動機のことです。
判例最判昭32・12・19 民集11巻13号2299頁
他に連帯保証人があると誤信した保証 保証契約は、保証人と債権者との間に成立する契約であつて、他に連帯保証人があるかどうかは、通常は保証契約をなす単なる縁由にすぎず、当然にはその保証契約の内容となるものではない。
図:判例の読み方の板
- 改正前の言葉=要素の錯誤(現行は基礎事情の錯誤)
- 縁由=動機
- 結論=他に連帯保証人があるかどうかは、通常は保証契約をなす単なる縁由(動機)にすぎず、当然には保証契約の内容とならない
- 「当然には」=特に契約の内容とした事情があれば別、の余地が残る
- 札=判例/こちらの説明
読みます。保証契約は、保証人と債権者との間に成立する契約です。他に連帯保証人があるかどうかは、通常は、保証契約をなす単なる縁由、つまり動機にすぎません。そして、当然には、その保証契約の内容となるものではない、です。判例の札です。なぜか。保証契約でCが約束するのは、Bが払わないときにCが払う、ということです。ほかに誰が保証するかは、Cが自分の側で当てにした事情にとどまり、Aとの約束の中身ではないからです。こちらの説明です。ここで、当然には、を落とさないでください。特に契約の内容とした事情があれば、別の余地が残ります。現行の言葉で言えば、基礎事情の錯誤の、表示、つまり契約の内容になっていたか、という関門で、同じ結論が読めます。こちらの説明です。3つめ、主債務者の資力や、主債務者が反社会的勢力でないことです。もう1枚、判決を読みます。これも改正前の言葉です。
判例最判平28・1・12 民集70巻1号1頁
保証契約と動機の錯誤 動機は、たとえそれが表示されても、当事者の意思解釈上、それが法律行為の内容とされたものと認められない限り、表意者の意思表示に要素の錯誤はないと解するのが相当である。 ……保証契約は、主債務者がその債務を履行しない場合に保証人が保証債務を履行することを内容とするものであり、主債務者が誰であるかは同契約の内容である保証債務の一要素となるものであるが、主債務者が反社会的勢力でないことはその主債務者に関する事情の一つであって、これが当然に同契約の内容となっているということはできない。
図:判例の読み方の板
- 改正前の言葉=要素の錯誤
- 規範=動機は、表示されても、当事者の意思解釈上、法律行為の内容とされたものと認められない限り、錯誤はない
- 保証契約について=主債務者が誰かは契約の内容の一要素/主債務者が反社会的勢力でないことは主債務者に関する事情の一つで、当然には契約の内容にならない
- 札=判例
2つの文に区切って読みます。まず、1つ目の文は、動機は、たとえ表示されても、当事者の意思解釈上、つまり、当事者が何を約束したと読めるかから見て、それが法律行為の内容とされたものと認められない限り、要素の錯誤はない、です。2つ目の文は、保証契約は、主債務者が履行しない場合に保証人が履行することを内容とするものだから、主債務者が誰かは契約の内容の一要素になる、しかし、主債務者が反社会的勢力でないことは、主債務者に関する事情の一つで、当然に契約の内容となっているとはいえない、です。判例の札です。この判決の場面に注意してください。融資するのも、それを業とする金融機関で、保証するのも、信用保証を業とする法人でした。判決は、そうした当事者なら、主債務者が反社会的勢力だと後で分かる場合を想定でき、それを契約にあらかじめ定めておくこともできたのに、定めがない、という点を理由に挙げています。判例の札です。ですから、個人が友人のために保証した場面に、そのまま当てはまる、とは言えません。そのうえで、同じ読み方をすれば、資力の誤信も、主債務者に関する事情の一つで、当然には契約の内容にならない、と読めます。こちらの説明です。
図:誤信の対象の読み分け表
- 行=Cの思い違いの対象
- 主債務者が誰か=契約の内容の一要素(判例)・取消しに結びつきうる(こちらの説明)/他に保証人がいること=当然には契約の内容にならない(判例)/主債務者の資力=主債務者に関する事情の一つ・同様に読める(こちらの説明)/主債務者が反社会的勢力でないこと=当然には契約の内容にならない(判例)
- どの行も、契約の内容として表示・共有されていれば別=取消しに結びつくのは契約の内容にまで入っていたとき
表にします。主債務者が誰か。契約の内容である保証債務の一要素です。判例の札です。取り違えが取消しに結びつきうるのは、こちらの説明です。他に保証人がいること。当然には契約の内容になりません。判例の札です。主債務者の資力。主債務者に関する事情の一つで、同様に読めます。こちらの説明です。主債務者が反社会的勢力でないこと。当然には契約の内容になりません。判例の札です。どの項目も、契約の内容として表示され、共有されていれば別です。取消しに結びつくのは、契約の内容にまで入っていたときです。この場面のCに当てはめます。Bの資力も、ほかに保証人がいることも、Aとの契約の内容にしていなければ、Cは、錯誤を理由に保証を取り消すことは、原則としてできません。こちらの説明です。
Cが資力を気にしていたなら、取るべき手は、その事情を契約の内容にすることです。契約書に書く。口頭でも、Aに明示して、了解を得て、合意の内容にする。こうすれば、契約の内容になっていた、と言いやすくなります。こちらの説明です。なお、錯誤の効果は、取消しです。無効ではありません。論文では、保証と錯誤は、主債務者に関する事情を動機と見て、契約の内容になっていたか、で線を引きます。
冒頭の問いに戻る——まとめ
図:冒頭の設例の関係図
- 答え
- A 債権者、B 主債務者、C 保証人。Cは払う義務を負う=保証債務。ただし1 主債務の限度で(448条・減縮)・主債務が消えれば消える(付従性)
- 2 書面に署名しているから効力がある(446条2項・要式行為)
- 3 連帯保証でなければ、まずBに請求してくれと言える(補充性)。Bの頼みがなくても保証人にはなれた。辺ラベルの語=貸金
- 保証契約。
冒頭の問いに戻ります。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人でした。Bが期日に返さなかったら、Cは明日からAに払わなければならないのか。答えは、払う義務を負います。保証債務です。ただし3つ付きます。1つめ、主債務の限度までで、448条で減縮します。主債務が消えれば消えます。2つめ、借用書の保証人欄に署名したので、書面があり、446条2項を満たします。3つめ、連帯保証でなければ、まずBに請求してくれと言える順番があります。補充性です。なお、Bの頼みがなくても、保証人にはなれます。
図:今日のまとめ
3つの柱で整理します。1つめ、保証債務は、主たる債務者が履行しないときに履行する責任です。物上保証人と違い、債務を負い、責任は全財産に及びます。2つめ、4つの性質です。独立債務性、付従性、随伴性、補充性です。付従性は、成立、内容、消滅の3場面で、内容が448条です。3つめ、保証契約です。債権者と保証人の契約で、Bの頼みは要件ではありません。書面でしなければ、効力を生じません。446条2項と3項です。錯誤は、契約の内容になっていたか、で読みます。根拠の札を付けて整理します。条文は、446条1項から3項、448条1項・2項です。判例は、他に連帯保証人がいると誤信した場合と、主債務者が反社会的勢力でないことの判断です。立案の過程の説明は、書面を要求した改正の背景と、448条2項を明文にしたことです。こちらの説明は、用語の整理、保証人と物上保証人の比較、性質の読み方、書面の趣旨、資力の誤信の読み方です。
参照条文
- 民法446条1項
- 民法448条
- 民法446条2項・3項