民法ゼロから民法#217

保証人の抗弁・情報提供義務・生じた事由の効力(452条〜458条の3)

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第4章 債権総論 #217/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

本人に預金があるのに、保証人に請求が来た

冒頭の設例の関係図。A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主・口座に預金150万円)、C 保証人。AはBに200万円を貸し、Cが保証した。弁済期が過ぎ、AはBには何も言わず、いきなりCに請求した。問い=Cは「まずBから取ってくれ」と言えるか。辺ラベルの語=貸金200万円/保証/請求。 図:冒頭の設例の関係図

  • A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主・口座に預金150万円)、C 保証人
  • AはBに200万円を貸し、Cが保証した
  • 弁済期が過ぎ、AはBには何も言わず、いきなりCに請求した
  • 問い=Cは「まずBから取ってくれ」と言えるか
  • 辺ラベルの語=貸金200万円/保証/請求

先に答えです。言えます。ただし、言葉は2段です。1段目、「まずBに請求してください」。これは催告の抗弁で、Aが一度Bに請求すれば、使い切ります。2段目、「Bにはお金があって、取りやすいです」。これをC自身が証明すれば、AはまずBの財産に執行しなければなりません。検索の抗弁です。本当に効くのは、こちらです。なお、連帯保証人なら、どちらも言えません。今日の登場人物です。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人です。前の2回と同じ役です。

保証の最初の回から——保証人の言い分は2系統

前の回の受けと根拠の札の板。補充性=請求の順番は主債務者、そして保証人(保証の最初の回)。催告の抗弁・検索の抗弁=保証の最初の回は名前だけ→今日は要件と効果。根拠の札4つ=条文/判例(最高裁・大審院の判決)/立案の過程の説明(2017年改正のときの理由)/こちらの説明(理解のための説明)。 図:前の回の受けと根拠の札の板

  • 補充性=請求の順番は主債務者、そして保証人(保証の最初の回)
  • 催告の抗弁・検索の抗弁=保証の最初の回は名前だけ→今日は要件と効果
  • 根拠の札4つ=条文/判例(最高裁・大審院の判決)/立案の過程の説明(2017年改正のときの理由)/こちらの説明(理解のための説明)

保証の最初の回を受けます。保証債務の補充性とは、請求の順番が、主債務者、そして保証人となることでした。そして、催告の抗弁と検索の抗弁を、名前と一言だけ出して、要件と効果は別の回、としました。今日が、その回です。今日も話の根拠が混ざるので、そのつど、なにに基づく話かを言います。根拠の札は4つです。条文に書かれていることは、条文の札です。最高裁や、その前の大審院の判決が述べたことは、判例の札です。2017年の改正のとき、なぜそう決めたのか、として説明されていることは、立案の過程の説明の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための説明は、こちらの説明の札です。答案では、条文は条文番号を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。

保証人が債権者に言えることの2系統の板。補充性から(請求の順番)=452条 催告の抗弁・453条 検索の抗弁・455条 怠った場合。付従性から(主債務に付き従う)=457条2項 主債務者の抗弁を対抗できる・457条3項 履行を拒む。連帯保証には補充性から出る2つが無い(454条)。 図:保証人が債権者に言えることの2系統の板

  • 補充性から(請求の順番)=452条 催告の抗弁・453条 検索の抗弁・455条 怠った場合
  • 付従性から(主債務に付き従う)=457条2項 主債務者の抗弁を対抗できる・457条3項 履行を拒む
  • 連帯保証には補充性から出る2つが無い(454条)

保証人の言い分は、出どころで2系統に分かれます。補充性から出るものは、請求の順番の話です。催告の抗弁、検索の抗弁、そして、債権者が怠ったときの455条です。付従性から出るものは、主債務者の持っている言い分を、保証人も使える、という話です。457条の2項と3項です。まず、順番の話から見ます。

催告の抗弁——「まず本人に請求して」

452条の板。要件=債権者が保証人に履行を請求した。効果=保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求できる。ただし書=主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき/その行方が知れないときは、この限りでない。札=条文/こちらの説明。 図:452条の板

  • 要件=債権者が保証人に履行を請求した
  • 効果=保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求できる
  • ただし書=主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき/その行方が知れないときは、この限りでない
  • 札=条文/こちらの説明

今日の3つの柱の1つめ、保証人の抗弁の前半です。保証人が、債権者に「まず主債務者に請求してください」と言える。それが催告の抗弁です。452条を読みます。

条文民法452条

民法第452条(催告の抗弁) 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

本文です。債権者が保証人に請求したとき、保証人は、まず主たる債務者に催告をするよう、請求できます。催告とは、払ってくださいと、債権者が相手に請求することです。条文の札です。ただし書です。主債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、または行方が知れないときは、言えません。理由は、こちらの説明です。破産している人や、行方の分からない人に催告しても、意味が薄い、あるいはできないからです。「まず本人に」と言えるなら、Bが払うまでAは待つのですか。違います。ここが、この抗弁の弱いところです。保証人が言えるのは、「まず請求してください」というところまでです。AがBに、一度、電話や書面で請求すれば、この抗弁は使い切ります。Bが払わなくても、Aはそのあとで、改めてCに請求できます。催告は、裁判の外の請求で足ります。こちらの説明です。次の453条が「催告をした後であっても」で始まっているのも、催告をして先へ進む前提だからです。条文の札です。設例で確かめます。AがCに請求し、Cが「まずBに」と言いました。AはBに書面で請求しましたが、Bは動きません。するとAは、改めてCに請求できます。Cは、もう催告の抗弁を使えません。だから、本当に効くのは、次の検索の抗弁です。

検索の抗弁——「本人の財産から先に取って」

453条の板。要件=1 主たる債務者に弁済をする資力がある/2 執行が容易である。この2つを保証人が証明する(証明するのは保証人)。効果=債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。資力は一部で足りる(大判昭8・6・13)。札=条文/判例/こちらの説明。 図:453条の板

  • 要件=1 主たる債務者に弁済をする資力がある/2 執行が容易である
  • この2つを保証人が証明する(証明するのは保証人)
  • 効果=債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない
  • 資力は一部で足りる(大判昭8・6・13)
  • 札=条文/判例/こちらの説明

453条です。債権者が催告をした後であっても、使える抗弁です。読みます。

条文民法453条

民法第453条(検索の抗弁) 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

要件は2つです。1つめ、主債務者に、弁済をする資力があること。2つめ、執行が容易であること。そして、この2つを証明するのは、保証人です。債権者の側が、資力が無いと証明するのではありません。条文の札です。効果は、債権者が、まず主債務者の財産について執行をしなければならない、です。執行とは、裁判所の手続で、財産から強制的に回収することです。Bの預金は150万円で、200万円には足りません。それでも、資力があると言えるのですか。言えます。大審院の判決は、主債務者が、執行しやすい財産を若干持っていると証明すれば足り、債務の全額が取れると証明しなくてよい、としました。判例の札です。理由は、こちらの説明です。検索の抗弁の狙いは、まず主債務者の財産から取らせて、取れた分だけ保証人の負担を軽くすることです。一部でも取れれば、そのぶん、保証人の負担は減ります。ですから、冒頭のBの150万円でも、Cは検索の抗弁を出せます。もう1つの要件、執行が容易であることです。これは、取り立てや換価が簡単な財産、という意味です。預金や現金は典型です。外国にある財産は、日本の執行の手続では取りにくいので、容易とは言いにくいです。不動産は、担保の付き方や売りにくさで事情が分かれるので、一律には言えません。こちらの説明です。検索の抗弁を使えるのは、保証人です。物上保証人、つまり他人の債務のために自分の物に担保を付けた人には、類推されません。責任が目的物に限られることなどが理由で、こちらの説明です。

2つの抗弁の違いを整理します。催告の抗弁は、請求の順番を、一度だけ回します。証明は要りません。検索の抗弁は、証明が要りますが、通れば、取り立ての順番が、主債務者の財産から先に決まります。証明の責任を負うのは、検索の抗弁だけです。

455条——債権者が放置したらどうなるか

455条の板。要件=1 保証人が452条の請求又は453条の証明をした/2 債権者が催告又は執行を怠った/3 そのために主たる債務者から全部の弁済を得られなかった。効果=債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度で、保証人は義務を免れる。札=条文。 図:455条の板

  • 要件=1 保証人が452条の請求又は453条の証明をした/2 債権者が催告又は執行を怠った/3 そのために主たる債務者から全部の弁済を得られなかった
  • 効果=債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度で、保証人は義務を免れる
  • 札=条文

抗弁を出しても、債権者が放置したら、意味がありません。そこで、放置の不利益を債権者に負わせるのが、455条です。抗弁の実効性を支える条文だ、というのが、こちらの説明です。読みます。

条文民法455条

民法第455条(催告の抗弁及び検索の抗弁の効果) 第四百五十二条又は第四百五十三条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。

要件は3つです。1つめ、保証人が請求または証明をしたこと。2つめ、債権者が怠ったこと。最後に3つめ、そのせいで、全部の弁済を得られなかったことです。効果は、直ちに執行すれば得られた限度で、保証人が義務を免れる、です。全額の免責ではありません。条文の札です。

455条の計算板。冒頭の設例(A 債権者・B 主債務者・C 保証人)。時系列=Cが検索の抗弁を出し、Bの預金150万円を証明→Aは執行せず放置→数か月後、Bの預金は0円に→AはBから1円も取れなかった。計算=200万円-150万円(直ちに執行すれば取れた額)=Cが払うのは50万円。札=条文/こちらの説明。 図:455条の計算板

  • 冒頭の設例(A 債権者・B 主債務者・C 保証人)
  • 時系列=Cが検索の抗弁を出し、Bの預金150万円を証明→Aは執行せず放置→数か月後、Bの預金は0円に→AはBから1円も取れなかった
  • 計算=200万円-150万円(直ちに執行すれば取れた額)=Cが払うのは50万円
  • 札=条文/こちらの説明

冒頭の設例で計算します。Cが検索の抗弁を出し、Bに預金が150万円あることを証明しました。ところがAは執行せず、放置しました。数か月後、Bの預金は引き出されて、0円になりました。AはBから、1円も取れませんでした。直ちに執行していれば、150万円取れたはずです。Cは、その150万円の限度で、義務を免れます。Cが払うのは、200万円ひく150万円で、50万円です。単純化した数字です。こちらの説明です。抗弁を出さず、証明もしなかった保証人は、455条の入口に立てません。条文は「保証人の請求又は証明があったにもかかわらず」で始まっています。抗弁を出していない保証人は、この条文で守られません。条文の札です。

付従性から出る抗弁——457条2項と3項

系統が変わる板。ここまで=補充性から出る言い分(請求の順番)。ここから=付従性から出る言い分(主債務者が持っている言い分を保証人が使う)。457条2項=主債務者の抗弁を保証人が援用する/3項=主債務者の相殺権・取消権・解除権は保証人が行使できず、履行を拒むだけ。 図:系統が変わる板

  • ここまで=補充性から出る言い分(請求の順番)
  • ここから=付従性から出る言い分(主債務者が持っている言い分を保証人が使う)
  • 457条2項=主債務者の抗弁を保証人が援用する/3項=主債務者の相殺権・取消権・解除権は保証人が行使できず、履行を拒むだけ

ここで系統が変わります。ここまでは、補充性、つまり請求の順番から出る言い分でした。次は、付従性から出る言い分です。保証債務は、主債務に付き従います。ですから、主債務者が債権者に言える言い分を、保証人も使えます。457条を読みます。1項は、あとの柱で使います。今は2項と3項を見ます。

条文民法457条

民法第457条(主たる債務者について生じた事由の効力) 1 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。 2 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。 3 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

2項です。保証人は、主債務者が主張できる抗弁をもって、債権者に対抗できます。条文の札です。抗弁とは、相手の請求を退ける言い分のことです。例を3つ挙げます。こちらの説明です。

457条2項の設例の板。A 債権者(売主)・B 主債務者(買主)・C 保証人。AはBに車を200万円で売り、Cが代金債務を保証した。例1 同時履行の抗弁=Aが車を渡さないなら、Bは「引渡しと引換えでなければ払わない」と言え、Cも同じことが言える。例2 弁済期が来ていない=Bの弁済期がまだならCも払わなくてよい。例3 主債務が存在しない・すでに消えている=Bが弁済済みならCも払わない。札=条文/こちらの説明。 図:457条2項の設例の板

  • A 債権者(売主)・B 主債務者(買主)・C 保証人
  • AはBに車を200万円で売り、Cが代金債務を保証した
  • 例1 同時履行の抗弁=Aが車を渡さないなら、Bは「引渡しと引換えでなければ払わない」と言え、Cも同じことが言える
  • 例2 弁済期が来ていない=Bの弁済期がまだならCも払わなくてよい
  • 例3 主債務が存在しない・すでに消えている=Bが弁済済みならCも払わない
  • 札=条文/こちらの説明

場面を替えます。Aが売主、Bが買主、保証人はCです。役はそのままで、Aが売主になります。AはBに車を200万円で売り、Cが代金債務を保証しました。1つめ、同時履行の抗弁です。Aが車を渡さないなら、Bは「引渡しと引換えでなければ払わない」と言えます。Cも同じことを、Aに言えます。2つめ、弁済期が来ていないことです。Bの弁済期がまだなら、Cも払わなくてよいです。3つめ、主債務が存在しない、あるいは、すでに消えていることです。Bが弁済済みなら、Cも払う必要がありません。保証の最初の回で見た、消滅における付従性を、Cの言い分として出す形です。3項は、受けだけにします。主債務者が、相殺権、取消権、解除権を持つとき、保証人は、それらの権利の行使でBが免れるはずの限度で、履行を拒めます。保証人が相殺や取消しをできるのではありません。他人の権利を処分できないから、履行を拒めるだけです。この理由は、取消権の回と、相殺の機能の回で見ました。条文の札です。解除権なら、Bが売買を解除できる場合、解除すればBが免れる限度で、Cも拒めます。

2項は、Bの抗弁を、Cが自分で使います。言い分を出しても、Bの権利関係は何も変わりません。だから、Cが借りて使っても、Bの権利を処分したことにはなりません。3項は、Bの相殺、取消し、解除を、Cは行使できず、履行を拒めるだけです。相殺権、取消権、解除権は、形成権、つまり一方的な意思表示だけで権利関係を変えられる権利です。Cが使えば、Bの債権が消えたり、Bの契約がなくなったりします。それが、他人の権利の処分です。抗弁は借りて使える、形成権は拒むだけ、と覚えてください。こちらの説明です。

条文民法454条

民法第454条(連帯保証の場合の特則) 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

最後に、連帯保証との線です。454条です。保証人が主債務者と連帯して債務を負担したときは、催告の抗弁と検索の抗弁を持ちません。冒頭の「連帯保証人なら言えない」の根拠です。本体は、別の回です。条文の札です。

柱1のまとめ板。保証人が債権者に言えること。補充性から=452条 催告の抗弁(一度の請求で使い切り)・453条 検索の抗弁(資力と執行の容易さを保証人が証明)・455条 怠った場合(直ちに執行すれば得られた限度で免責)。付従性から=457条2項 主債務者の抗弁・457条3項 履行拒絶。連帯保証=補充性から出る2つが無い(454条)。 図:柱1のまとめ板

  • 保証人が債権者に言えること
  • 補充性から=452条 催告の抗弁(一度の請求で使い切り)・453条 検索の抗弁(資力と執行の容易さを保証人が証明)・455条 怠った場合(直ちに執行すれば得られた限度で免責)
  • 付従性から=457条2項 主債務者の抗弁・457条3項 履行拒絶
  • 連帯保証=補充性から出る2つが無い(454条)

1つめの柱を、1枚にします。補充性から、催告の抗弁と検索の抗弁と、怠ったときの455条です。付従性から、主債務者の抗弁を使う457条2項と、履行を拒む同3項です。連帯保証には、補充性から出る2つが無い。これが、保証人が債権者に言えることの全体です。

債権者の情報提供義務①——458条の2

458条の2の板。誰が=委託を受けて保証をした保証人(個人・法人を問わない)が請求したとき/債権者は=遅滞なく/何を=主債務の元本と、利息・違約金・損害賠償その他従たる全てのものについての不履行の有無・残額・弁済期が到来しているものの額。委託のない保証人には請求権がない。札=条文/立案の過程の説明/こちらの説明。 図:458条の2の板

  • 誰が=委託を受けて保証をした保証人(個人・法人を問わない)が請求したとき/債権者は=遅滞なく/何を=主債務の元本と、利息・違約金・損害賠償その他従たる全てのものについての不履行の有無・残額・弁済期が到来しているものの額
  • 委託のない保証人には請求権がない
  • 札=条文/立案の過程の説明/こちらの説明

2つめの柱です。保証人は、主債務者がちゃんと払っているかを、知らないままのことがあります。その間に、遅延損害金が積み上がります。2017年の改正で、債権者に、情報を出す義務が入りました。まず458条の2です。その前に、前回の要点を1つ思い出してください。447条1項で、保証人が払う範囲に入るのは、元本のほかに何でしたか?利息、違約金、損害賠償、その他、主債務に従たるもの、でした。その言葉が、そのまま、情報提供の対象になります。読みます。

条文民法458条の2

民法第458条の2(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務) 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

型は3つです。1つめ、請求するのは、主債務者の委託を受けた保証人です。個人でも、法人でも構いません。2つめ、債権者は、請求を受けて、遅滞なく応じます。3つめ、中身は、不履行の有無、残額、そのうち弁済期が到来しているものの額です。条文の札です。委託を受けていない保証人は、この情報を請求できません。458条の2が、請求できる人を、委託を受けた保証人に限っているからです。理由は、立案の過程の説明の札です。不履行の有無や残額は、主債務者の信用に関わる情報です。主債務者の許可なく、債権者に出させることには問題がある、と考えられました。委託を受けた保証人なら、主債務者の了解の範囲内だと言えます。ここは、こちらの説明です。もう1つ、取り違えやすい点です。債権者が情報を出さなかったときの効果は、458条の2には書かれていません。一般の債務不履行、つまり損害賠償などの問題として処理される、と審議の場で説明されました。立案の過程の説明の札です。次に見る458条の3のような、「遅延損害金を請求できない」という効果は、ここにはありません。設例です。Cは、Bに頼まれて保証人になりました。半年前にBが返済を止めたことを、Cは知りません。CがAに「Bの返済状況を教えてください」と請求しました。するとAは、遅滞なく、元本200万円は未払いであること、遅延損害金がいくらであること、そのうち弁済期が来ているのがいくらであること、を答える義務があります。こちらの説明です。

債権者の情報提供義務②——458条の3

458条の3の板。期限の利益の喪失=期限まで払わなくてよいという利益を失い、残りの全額をすぐ払う義務が生じること。1項=債権者は、喪失を知った時から2箇月以内に保証人へ通知する。2項=通知しなければ、喪失した時から通知を現にするまでの遅延損害金は保証人に請求できない(喪失しなくても生ずべきものを除く)。3項=保証人が法人のときは適用しない。札=条文。 図:458条の3の板

  • 期限の利益の喪失=期限まで払わなくてよいという利益を失い、残りの全額をすぐ払う義務が生じること
  • 1項=債権者は、喪失を知った時から2箇月以内に保証人へ通知する
  • 2項=通知しなければ、喪失した時から通知を現にするまでの遅延損害金は保証人に請求できない(喪失しなくても生ずべきものを除く)
  • 3項=保証人が法人のときは適用しない
  • 札=条文

次は458条の3です。分割払いの約束だったBが滞納すると、期限の利益を失うことがあります。期限の利益とは、期限まで払わなくてよいという利益です。これを失うと、残りの全額を、すぐ払う義務が生じます。そして、残りの全額に、遅延損害金が付き始めます。Cが知らないうちに、膨らみます。そこで、この条文です。読みます。

条文民法458条の3

民法第458条の3(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務) 1 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。 2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。 3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。

1項です。債権者は、利益の喪失を知った時から2箇月以内に、保証人に通知しなければなりません。保証人の請求は要りません。債権者が自分から通知します。委託の有無も、条文に要件がありません。委託を受けていない保証人にも、適用されます。2項です。期間内に通知しなかったときは、喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金に係る保証債務の履行を、請求できません。3項です。保証人が法人なら、適用しません。つまり、守られるのは、個人の保証人だけです。条文の札です。

458条の3の数字板。残りの元本200万円・年3パーセント。Bが分割払いを滞納し期限の利益を喪失→Aは喪失を知ったが、Cへの通知は5か月後。遅延損害金=200万円×3パーセント×5/12=2万5,000円。これはCに請求できない。すでに弁済期が来ていた分の遅延損害金は、喪失しなくても生ずるので別。Bには請求できる。札=条文/こちらの説明。 図:458条の3の数字板

  • 残りの元本200万円・年3パーセント
  • Bが分割払いを滞納し期限の利益を喪失→Aは喪失を知ったが、Cへの通知は5か月後
  • 遅延損害金=200万円×3パーセント×5/12=2万5,000円
  • これはCに請求できない
  • すでに弁済期が来ていた分の遅延損害金は、喪失しなくても生ずるので別
  • Bには請求できる
  • 札=条文/こちらの説明

数字で見ます。残りの元本は200万円で、遅延損害金は年3パーセントとします。Bが分割払いを滞納して、期限の利益を喪失しました。Aは、それを知ったのに、Cへの通知を、5か月後までしませんでした。この5か月の遅延損害金は、200万円かける3パーセントかける12分の5で、2万5,000円です。AはこれをCに請求できません。ただし、すでに弁済期が来ていた滞納分の遅延損害金は、期限の利益を喪失しなくても生じるので、条文のかっこ書で除かれます。そちらはCに請求できます。そして、この2万5,000円も、Bには、なお請求できます。制限されるのは、Cへの請求だけです。こちらの説明です。

2箇月を過ぎたら、超えた分だけが請求できなくなるのですか。違います。喪失した時から通知するまでの全部です。2箇月は、通知の期限です。過ぎたときの効果は、喪失の時までさかのぼって、遅延損害金の請求が止まります。条文の札です。趣旨は、個人の保証人を、気づかないうちに遅延損害金が膨らむ危険から守ることです。こちらの説明です。

2つの情報提供義務を1枚にする

458条の2と458条の3の比較表。縦=項目、横=458条の2/458条の3。請求の要否=請求が要る/請求は不要(債権者が自分から通知)。誰に=委託を受けた保証人(個人・法人を問わない)/委託の有無を問わないが個人の保証人だけ。何を=不履行の有無・残額・弁済期到来分の額/期限の利益の喪失の通知(知った時から2箇月以内)。違反の効果=条文に無い(一般の債務不履行)/通知までの遅延損害金を請求できない。一言=聞かれたら答える/聞かれなくても知らせる。札=条文/こちらの説明。 図:458条の2と458条の3の比較表

  • 縦=項目、横=458条の2/458条の3
  • 請求の要否=請求が要る/請求は不要(債権者が自分から通知)
  • 誰に=委託を受けた保証人(個人・法人を問わない)/委託の有無を問わないが個人の保証人だけ
  • 何を=不履行の有無・残額・弁済期到来分の額/期限の利益の喪失の通知(知った時から2箇月以内)
  • 違反の効果=条文に無い(一般の債務不履行)/通知までの遅延損害金を請求できない
  • 一言=聞かれたら答える/聞かれなくても知らせる
  • 札=条文/こちらの説明

2つを1枚にします。458条の2は、請求が要ります。請求するのは、委託を受けた保証人で、個人でも法人でも構いません。中身は、不履行の有無、残額、弁済期が来ている額です。違反の効果は、条文にありません。458条の3は、請求が要りません。委託の有無を問いませんが、守られるのは個人の保証人だけです。中身は、期限の利益を喪失したことの通知で、知った時から2箇月以内です。違反すれば、通知までの遅延損害金を、保証人に請求できません。一言で言うと、458条の2は聞かれたら答える義務、458条の3は聞かれなくても知らせる義務です。こちらの説明です。

1人に生じた事由——主債務者から保証人へ

3つめの柱の問いの板。保証で見る「1人に生じた事由」=主債務者(B)に生じた事由は保証人(C)に及ぶか/保証人(C)に生じた事由は主債務者(B)に及ぶか。連帯債務では相対効が原則だった。保証では向きが非対称になる。理由は一つ=保証が主債務に付き従うから。 図:3つめの柱の問いの板

  • 保証で見る「1人に生じた事由」=主債務者(B)に生じた事由は保証人(C)に及ぶか/保証人(C)に生じた事由は主債務者(B)に及ぶか
  • 連帯債務では相対効が原則だった
  • 保証では向きが非対称になる
  • 理由は一つ=保証が主債務に付き従うから

3つめの柱です。連帯債務の回で、1人に生じた事由が他の人にも及べば絶対効、及ばなければ相対効、と見ました。その見方を、保証に当てます。主債務者に起きたことは、保証人に及ぶか。保証人に起きたことは、主債務者に及ぶか。連帯債務では、相対効が原則でした。保証では、向きによって答えが違います。この非対称が、今日の要点です。まず、主債務者から保証人へです。原則は、主債務者に生じた事由は、すべて保証人に及びます。付従性だからです。こちらの説明です。例を挙げます。Bが弁済すれば、主債務が消えて、保証債務も消えます。AがBを免除しても、同じです。Bが相殺しても、同じです。主債務の消滅時効が完成して援用されれば、保証債務も消えます。保証人自身も、その時効を援用できます。援用できる人の一人として、時効の援用の回で見ました。

457条1項の板。主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。例=AがBに請求→Bの主債務の時効の完成が猶予→Cの保証債務の時効も猶予。Bが時効の完成前に承認→主債務の時効が更新→Cの保証債務の時効も更新。連帯債務(請求は相対効)とは向きが違う。札=条文/こちらの説明。 図:457条1項の板

  • 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる
  • 例=AがBに請求→Bの主債務の時効の完成が猶予→Cの保証債務の時効も猶予
  • Bが時効の完成前に承認→主債務の時効が更新→Cの保証債務の時効も更新
  • 連帯債務(請求は相対効)とは向きが違う
  • 札=条文/こちらの説明

時効の場面が、457条1項です。さきほどのカードの1項を、もう一度見ます。主債務者に対する履行の請求その他の事由による、時効の完成猶予と更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる、です。条文の札です。AがBに請求すれば、Bの主債務の時効の完成が猶予されます。Cの保証債務の時効も、同じく猶予されます。Bが時効の完成前に債務を承認して、主債務の時効が更新されれば、Cの保証債務の時効も更新されます。連帯債務では、請求は相対効でした。保証では、主債務者への請求が保証人に及ぶのですか。及びます。連帯債務では請求は相対効でしたが、保証では逆に、主債務者への請求は保証人にも及びます。理由は、こちらの説明です。主債務の時効が進み直しているのに、保証債務だけが先に時効で消えてしまっては、保証が主債務を支えられません。付従性のとおり、保証債務は主債務に付いていくのです。なお、主債務の債権が譲渡されれば、保証債権も一緒に移ります。随伴性で見たとおりです。

唯一の例外——主債務者の時効の利益の放棄

例外の板。主債務者Bが時効の利益を放棄しても、保証人Cには及ばない。Cはなお主債務の消滅時効を援用できる。理由=放棄の効果は放棄した者との関係でのみ生じる(相対効)。援用は主債務を消す行為だから付従性で連鎖するが、放棄は主債務を消さない行為だから連鎖しない。出典=大判昭6・6・4。札=判例/こちらの説明。 図:例外の板

  • 主債務者Bが時効の利益を放棄しても、保証人Cには及ばない
  • Cはなお主債務の消滅時効を援用できる
  • 理由=放棄の効果は放棄した者との関係でのみ生じる(相対効)
  • 援用は主債務を消す行為だから付従性で連鎖するが、放棄は主債務を消さない行為だから連鎖しない
  • 出典=大判昭6・6・4
  • 札=判例/こちらの説明

原則に、唯一の例外があります。その前に、時効の回の要点を1つ思い出してください。時効の利益の放棄の効果は、誰との関係で生じるんでしたか?放棄した者との関係でのみ生じます。相対効でした。例外は、主債務者の時効の利益の放棄です。Bが放棄しても、それはAとBの間だけの話です。AとCの間の線は、何も変わりません。ですから、Cはなお、主債務の消滅時効を援用できます。大審院の判決も、主債務者の時効の利益の放棄は保証人に及ばない、としています。判例の札です。理由を、時効の回の言葉で言い直します。援用は、主債務そのものを消す行為です。だから付従性で、保証債務にも連鎖します。放棄は、主債務を消さない行為です。だから、連鎖する先が、そもそもありません。こちらの説明です。一番典型的な場面で確かめます。弁済期から5年以上たち、主債務の消滅時効が完成していました。そこでBがAに「やはり返しますので、待ってください」と承認しました。時効の回で見たとおり、完成を知って承認すれば時効の利益の放棄で、知らずに承認しても、信義則で援用できなくなります。どちらでも、B自身は、以後、援用できません。判例の札です。それでも、後からCが請求されたときは、Cは「主債務は時効で消えています」と援用できます。AはBの承認を理由に、Cの援用を封じられません。こちらの説明です。主債務者の時効の利益の放棄と、保証人の援用は、論文で論点になりうる所です。

保証人から主債務者へ——満足を与えるものだけ

保証人に生じた事由の板。原則=主債務者には及ばない(保証債務は主債務を支える手段で、本体は主債務)。例外=債権を満足させるもの(弁済・代物弁済・供託・保証人が自分の債権でする相殺)は、その限度で主債務も消える。及ばない例=AがCに請求しても主債務の時効は止まらない/Cが保証債務を承認しても主債務の時効は更新されない(Cの保証債務の時効だけ更新)/Cが免除されてもBの債務は残る。札=こちらの説明。 図:保証人に生じた事由の板

  • 原則=主債務者には及ばない(保証債務は主債務を支える手段で、本体は主債務)
  • 例外=債権を満足させるもの(弁済・代物弁済・供託・保証人が自分の債権でする相殺)は、その限度で主債務も消える
  • 及ばない例=AがCに請求しても主債務の時効は止まらない/Cが保証債務を承認しても主債務の時効は更新されない(Cの保証債務の時効だけ更新)/Cが免除されてもBの債務は残る
  • 札=こちらの説明

逆向きです。保証人に生じた事由は、主債務者に及ぶでしょうか。原則は、及びません。保証債務は、主債務を支える手段にすぎません。本体は主債務です。保証人の側の事情で、本体を動かさない。こちらの説明です。保証人に生じた事由の効力を定める条文は、ありません。例外は、債権を満足させるものです。Cが弁済すれば、その限度で、主債務も消えます。代物弁済、供託も同じです。Cが自分の債権でする相殺も同じです。債権者が満足を得たのですから、当然です。こちらの説明です。及ばない例を、時効まわりで見ます。AがCに請求しても、Bの主債務の時効は止まりません。完成猶予されないのです。Cが保証債務を承認しても、Bの主債務の時効は更新されません。更新されるのは、Cの保証債務の時効だけです。CがAから免除されても、Bの債務は残ります。保証人にだけ債権譲渡を通知しても、主債務者への通知にはなりません。こちらの説明です。

弁済期から4年半がたっていたとします。AはBには何もせず、Cにだけ請求を重ねました。主債務の時効は進み続けて、5年で完成しえます。時効の回で見たとおり、債権の時効は、権利を行使できると知った時から5年です。Aは弁済期を知っていますから、弁済期から5年です。完成すれば、Cはその時効を援用して、保証債務も免れます。Aが主債務の時効を止めたいなら、Bに請求するか、Bの承認を得る必要があります。なお、連帯保証には、更改・相殺・混同などで別のルールがあります。ただ、連帯保証人に請求しても、原則として主債務者には及びません。本体は別の回です。

一覧表——生じた事由の効力

1人に生じた事由の一覧表。縦=事由(弁済・免除・履行の請求・承認・時効の完成・時効の利益の放棄)、横=主債務者に生じたら保証人は/保証人に生じたら主債務者は。弁済=保証債務も消える/主債務もその限度で消える。免除=保証債務も消える/及ばない。履行の請求=保証人にも及ぶ(時効の完成猶予・457条1項)/及ばない。承認=保証人にも及ぶ(時効の更新・457条1項)/及ばない(保証債務の時効だけ更新)。時効の完成=援用されれば保証債務も消える(保証人自身も援用できる)/保証債務の時効が完成しても主債務は消えない。時効の利益の放棄=及ばない(唯一の例外)/及ばない。 図:1人に生じた事由の一覧表

  • 縦=事由(弁済・免除・履行の請求・承認・時効の完成・時効の利益の放棄)、横=主債務者に生じたら保証人は/保証人に生じたら主債務者は
  • 弁済=保証債務も消える/主債務もその限度で消える
  • 免除=保証債務も消える/及ばない
  • 履行の請求=保証人にも及ぶ(時効の完成猶予・457条1項)/及ばない
  • 承認=保証人にも及ぶ(時効の更新・457条1項)/及ばない(保証債務の時効だけ更新)
  • 時効の完成=援用されれば保証債務も消える(保証人自身も援用できる)/保証債務の時効が完成しても主債務は消えない
  • 時効の利益の放棄=及ばない(唯一の例外)/及ばない

一覧表にします。左の列は、主債務者に生じたら、保証人はどうなるか。右の列は、保証人に生じたら、主債務者はどうなるか、です。弁済です。左は保証債務も消え、右は主債務もその限度で消えます。免除です。左は消え、右は及びません。履行の請求です。左は、時効の完成猶予が保証人にも及びます。右は及びません。承認です。左は、時効の更新が保証人にも及びます。右は及びません。保証債務の時効だけが更新されます。時効の完成です。左は、援用されれば、保証債務も消えます。右は、保証債務の時効が完成しても、主債務は消えません。時効の利益の放棄です。左は、及びません。唯一の例外です。右も、及びません。読み方です。左の列は、原則すべて及び、例外は1つです。右の列は、債権を満足させるもの以外は及びません。向きが非対称になる理由は、ただ一つです。主債務が本体で、保証債務はそれに付き従うからです。本体に起きたことは付き従う側に及び、付き従う側に起きたことは本体を動かしません。連帯債務の表では、相対効が原則でした。連帯債務の回で見たとおり、連帯債務者それぞれの債務が、独立して横に並んでいるからです。並んでいるだけなら、1人に起きたことは、他の人の債務を動かしません。保証は横に並ぶのではなく、主債務に付き従う。だから向きが生まれます。こちらの説明です。

冒頭の問いに戻る——まとめ

冒頭の設例の関係図(答え)。A 債権者、B 主債務者(預金150万円)、C 保証人。Cは催告の抗弁で「まずBに」と言える。ただしAが一度Bに請求すれば足りる。本当に効くのは検索の抗弁=Bの預金150万円と執行の容易さをC自身が証明すれば、AはまずBの預金に執行しなければならない。放置して取れなくなれば、その150万円はCの責任から外れる(455条)。連帯保証人なら、どちらも言えない。 図:冒頭の設例の関係図

  • 答え
  • A 債権者、B 主債務者(預金150万円)、C 保証人。Cは催告の抗弁で「まずBに」と言える。ただしAが一度Bに請求すれば足りる。本当に効くのは検索の抗弁=Bの預金150万円と執行の容易さをC自身が証明すれば、AはまずBの預金に執行しなければならない。放置して取れなくなれば、その150万円はCの責任から外れる(455条)。連帯保証人なら、どちらも言えない。

冒頭の問いに戻ります。Cは、「まずBから取ってください」と言えるか。言えます。ただし、催告の抗弁は、Aが一度Bに請求すれば足ります。本当に効くのは、検索の抗弁です。Bに、預金が150万円あり、執行が容易であると、C自身が証明すれば、AはまずBの預金に執行しなければなりません。Aが放置して、取れなくなったなら、預金の150万円の分は、Cの責任から外れます。Cが払うのは、50万円です。455条です。連帯保証人なら、どちらも言えません。

今日のまとめ。3つの柱=1 保証人の抗弁(補充性から=催告・検索・455条/付従性から=457条2項 主債務者の抗弁・3項 履行を拒む)/2 情報提供義務(458条の2=請求で・委託を受けた保証人/458条の3=債権者が通知・個人の保証人)/3 1人に生じた事由(主債務者から保証人へ=原則すべて・例外は時効の利益の放棄/保証人から主債務者へ=債権を満足させるものだけ)。 図:今日のまとめ

3つの柱で整理します。1つめ、保証人の抗弁です。補充性から、催告の抗弁と検索の抗弁と、怠ったときの455条です。付従性から、主債務者の抗弁を使う457条2項と、履行を拒む同3項です。2つめ、情報提供義務です。458条の2は、請求があったときに、委託を受けた保証人へ答える義務です。458条の3は、債権者が自分から通知する義務で、守られるのは個人の保証人です。3つめ、1人に生じた事由です。主債務者から保証人へは、原則すべて及び、例外は時効の利益の放棄だけです。保証人から主債務者へは、債権を満足させるものだけが及びます。論文で論点になりうる所を、一言ずつ挙げます。主債務者の時効の利益の放棄と、保証人の援用です。もう1つ、検索の抗弁を、物上保証人に類推するかです。根拠の札を付けて整理します。条文は、452条、453条、454条、455条、457条、458条の2、458条の3です。判例は、大審院の2つで、資力は一部で足りるという判決と、主債務者の時効の利益の放棄は保証人に及ばないという判決です。立案の過程の説明は、458条の2が委託を受けた保証人に限られる理由です。こちらの説明は、主なものとして、執行が容易の具体例、催告の抗弁の効果の弱さ、数字の例、生じた事由の向きが非対称になる理由です。

参照条文

  • 民法452条
  • 民法453条
  • 民法455条
  • 民法457条
  • 民法454条
  • 民法458条の2
  • 民法458条の3

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