受託保証人の事後求償(459条・459条の2)
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第4章 債権総論 #218/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
払った保証人は、本人からいくら取り戻せるか
図:冒頭の設例の関係図
- A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、C 保証人(Bに頼まれて保証)
- AはBに300万円を貸し、弁済期は12月末
- Cが保証した
- 弁済期が来て、CがAに300万円を払った
- 問い=CはBにいくら返せと言えるか
- もし弁済期の前に払っていたら同じか
- 辺ラベルの語=貸金300万円/保証/頼み
先に答えです。弁済期に払ったなら、Cが支出した額、この例では300万円です。それに、払った日以後の法定利息なども付きます。459条です。ただし、支出した額が、消えた債務の額より大きいときは、消えた額が上限です。そして、弁済期の前に払っていたら、同じではありません。求償できるのは、Bがその当時利益を受けた限度で、しかも行使できるのは弁済期以後です。459条の2です。さらに、BとCが事前に約束していれば、求償の範囲は、その約束どおりになります。最高裁の判決があります。今日は、この3つの答えの理由を、順番にほどきます。今日の登場人物です。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人です。前の3回と同じ役です。
保証の最初の回の受けと、根拠の札
図:前の回の受けと根拠の札の板
- 保証の最初の回=委託の有無は保証契約の成立要件ではない→効くのは求償
- 今日=委託を受けた保証人の求償
- 根拠の札3つ=条文/判例(最高裁・大審院の判決が述べたこと)/こちらの説明(理解のための説明)
保証の最初の回で、こう言いました。委託の有無が効くのは、求償です。委託がなければ、求償できる範囲が小さくなります。今日は、その求償のうち、頼まれて保証した人、つまり委託を受けた保証人の側を見ます。今日も話の根拠が混ざるので、そのつど、なにに基づく話かを言います。根拠の札は3つです。条文に書かれていることは、条文の札です。最高裁や、その前の大審院の判決が述べたことは、判例の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための説明は、こちらの説明の札です。答案では、条文は条文番号を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。
柱1——求償の全体像
図:求償の全体像の板
- 求償権=払った人が本人に「立て替えた分を返してください」と言う権利
- 事後求償=払った後に求償する/事前求償=払う前に求償する
- 保証人は、主債務者との関係で負担部分が無い(終局的に負担するのは主債務者)
- 連帯債務の求償=負担部分の割合/保証人の求償=払った額の全部
求償権とは、払った人が本人に「立て替えた分を返してください」と言う権利です。弁済による代位の回で出てきた、あの求償権です。払った後に求償するものを、事後求償と呼びます。払う前に求償するものを、事前求償と呼びます。今日は、この2つの呼び方を使います。連帯債務の回で、求償は負担部分の割合で、と見ました。保証は、そこが違います。保証人には、主債務者との関係で、負担部分がありません。終局的に負担するのは、主債務者だからです。こちらの説明です。ですから、保証人は払った額の全部を求められます。連帯保証人も保証人なので、求償はこの459条以下です。
図:求償の一覧板
- 縦=委託を受けた保証人/委託を受けない保証人/物上保証人
- 横=払った後(事後求償)/弁済期前に払った場合/払う前(事前求償)
- 委託を受けた保証人=459条/459条の2/460条・461条
- 委託を受けない保証人=462条の欄
- 物上保証人=351条(372条で抵当権に準用)・保証債務に関する規定に従う/―/―
一覧板です。縦に、委託を受けた保証人、委託を受けない保証人、物上保証人。横に、払った後、弁済期前に払った場合、払う前を並べます。委託を受けた保証人は、払った後が459条です。弁済期の前に払った場合が459条の2、払う前が460条と461条です。今日は、払ったあとと、弁済期前に払った場合の欄を埋めます。委託を受けない保証人は、462条の欄があるだけで、中身は別の回で扱います。物上保証人の行です。払った後は、抵当権の入り口の回で見た351条です。もう一度読みます。
条文民法351条
民法第351条(物上保証人の求償権) 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有する。
条文は質権の書き方です。ですが372条で、抵当権にも準用されています。ですから、Bの債務のために自分の土地に抵当権を設定した物上保証人が、弁済したり、抵当権を実行されて土地を失ったりしたときは、保証債務に関する規定に従って、Bに求償できます。条文の札です。一方、物上保証人の行は、払う前の欄が空いています。物上保証人に払う前の求償が無いことは、抵当権の入り口の回で一言触れました。払う前の求償と、なぜここが空いているのかを判例で確かめるのが、次の回の主役です。
柱2——委託を受けた保証人の事後求償 459条
図:459条の板
- 要件=1 主たる債務者の委託を受けて保証をした/2 債務の消滅行為(弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為)をした
- 効果=支出した財産の額の求償権(消滅した主たる債務の額が上限)
- 2項=442条2項を準用
- 札=条文/こちらの説明
2つめの柱です。払った後の求償、事後求償です。459条を読みます。
条文民法459条
民法第459条(委託を受けた保証人の求償権) 1 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。 2 第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
1項を区切って読みます。まず、主たる債務者の委託を受けて保証をしたこと。次に、主債務者に代わって、弁済その他自分の財産をもって債務を消滅させる行為をしたこと。この行為を、条文は債務の消滅行為と呼びます。最後に、効果です。そのために支出した財産の額の求償権を有する。カッコの中は、支出した額が、消滅した主債務の額より大きいときは、消滅した額が上限になる、という意味です。条文の札です。答案では、この要件は条文どおりですので、459条1項の文言で書きます。債務の消滅行為は、弁済だけではありません。代物弁済、供託、相殺、更改なども入ります。代物弁済とは、本来の給付に代えて、別の物で債務を消すことです。共通するのは、保証人が自分の財産を出して、主債務を消している点です。これはこちらの説明です。逆に、含まれないものがあります。債権者が保証人の債務をただで免除した場合です。保証人は、自分の財産を何も出していません。支出した財産の額は0円で、求償する額もありません。こちらの説明です。
図:459条の数字板
- 設例=Bの300万円債務
- 1つめ=Cが時価250万円の物で代物弁済(債権者が受領)→支出250万円<消滅300万円→求償250万円
- 2つめ=Cが時価400万円の物で代物弁済→支出400万円>消滅300万円→求償300万円(上限は消滅した額)
- 札=条文/こちらの説明
数字で見ます。Bの300万円の債務です。1つめ。Cが、時価250万円の物で代物弁済をして、Aが受け取りました。債務は300万円分、消えます。ですが、Cが出したのは250万円です。求償できるのは、支出した250万円です。2つめ。Cが、時価400万円の物で代物弁済をして、Aが受け取りました。消えた債務は300万円です。支出は400万円ですが、カッコの上限がかかります。求償できるのは300万円です。支出した額と消滅した額の、小さい方です。Cが失った以上は返させず、Bが免れた以上は負わせない。だから小さい方になります。こちらの説明です。2項です。442条2項を準用します。連帯債務の回で見た条文です。求償には、弁済その他免責があった日以後の法定利息と、避けることができなかった費用その他の損害の賠償が含まれます。言葉は連帯債務のときと同じです。数字にします。300万円を弁済して、法定利率が年利3パーセントなら、その日以後の法定利息は、1年で9万円です。こちらの説明です。位置づけも、一言だけ言います。弁済による代位の回で、求償権の根拠として名前だけ見た話です。頼まれて仕事をした人は、委任の費用償還を求める関係にあります。459条以下は、保証についての特別の定めです。こちらの説明です。
柱3——期限の前に払った場合 459条の2
図:459条の2の板
- 弁済期前に債務の消滅行為をしたとき
- 1項前段=主たる債務者がその当時利益を受けた限度で求償/後段=Bが消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたと主張するとき、Cは債権者に、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できる
- 2項=求償に含まれる法定利息等は弁済期以後の分
- 3項=求償権は弁済期以後でなければ行使できない
- 札=条文/こちらの説明
3つめの柱です。弁済期の前に払った場合です。冒頭の設例で、弁済期は12月末でした。Cが、その前の10月に、Aに払ってしまったとします。この場合は、459条の2です。2017年の改正で入った条文です。読みます。
条文民法459条の2
民法第459条の2(委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権) 1 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、主たる債務者がその当時利益を受けた限度において求償権を有する。この場合において、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。 2 前項の規定による求償は、主たる債務の弁済期以後の法定利息及びその弁済期以後に債務の消滅行為をしたとしても避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。 3 第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない。
1項前段です。弁済期前に債務の消滅行為をしたとき、求償できるのは、主たる債務者がその当時利益を受けた限度です。条文の札です。何が利益になるかは、Bの側の事情で変わります。Bの側に、相殺のような事情が何も無ければ、Bが受けた利益は、消えた300万円の債務そのものです。求償できるのは300万円です。満額にならないのは、Bの側に事情があるときです。その代表が、後段の相殺です。こちらの説明です。後段です。主債務者が、債務の消滅行為の日以前に、相殺の原因を持っていたと主張するときです。例えばBが10月の時点で、Aに対して100万円の貸金債権を持っていたとします。Bはこれと相殺すれば、債務を100万円分、減らせたはずです。この場合、Cが10月に300万円を払っても、Bが受けた利益は、相殺で消せた100万円を引いた200万円です。前段により、CがBに求償できるのは200万円です。そしてBが「相殺できたはずだ」と主張すれば、Cは自分でAに、AがBに負っていた100万円の債務、つまり相殺で消えるはずだった債務の履行を請求できます。条文の札と、数字はこちらの説明です。2項です。求償に含まれる法定利息や損害の賠償は、弁済期以後の分です。10月から12月末までの利息は、含まれません。3項です。この求償権は、弁済期以後でなければ行使できません。ですから、10月に払っても、Cが求償権を行使できるのは、12月末以後です。条文の札です。
10月に払っても、すぐには返してもらえません。理由は、こちらの説明です。Cが頼まれたのは、期限どおりの保証でした。期限の前に払って、Bが期限まで払わなくてよい、という利益を奪うことまでは、頼まれていません。ですから、Bの期限の利益を守る形で、利益を受けた限度、弁済期以後、と絞られています。
求償の範囲を変える特約
図:特約の設例の数字板
- 元本300万円、Aの貸金の遅延損害金は年10パーセント、BとCの間の特約は年14パーセント
- Cが300万円を弁済して1年後=求償権の総額は300万円+42万円=342万円/原債権(Aから移る債権)は300万円+30万円=330万円
- 代位で行使できるのは小さい方の範囲まで
- 札=判例/こちらの説明
459条の求償の範囲は、2項のとおり、元本と法定利息と費用です。では、BとCが事前に「Cが代わりに払ったら、年利14パーセントの遅延損害金を払う」と約束していたら、どうでしょうか。この約束は有効か。ここで、弁済による代位の回を使います。確認です。以前の回で見た、求償権と原債権。この2つは、同じ債権でしたか?求償権と原債権は、別個の債権です。額も、利率も、時効も、ずれることがあります。原債権とは、AがBに持っていた、この300万円の貸金債権です。Cが払えば本来は消えるはずの債権ですが、弁済による代位で、Cに移ります。Cは、この原債権を、付いている担保ごと使えます。今日は、この2つの債権が、特約でずれる場面を見ます。数字です。元本は300万円です。Aの貸金の遅延損害金は、年利10パーセントとします。BとCの特約は、年利14パーセントです。Cが300万円を弁済して、1年たちました。求償権の総額は、300万円に、14パーセント分の42万円を足して、342万円です。一方、Aから移る原債権は、元本300万円に、10パーセント分の30万円を足して、330万円です。ずれました。最高裁は、この特約を有効としました。判決が述べたことは2つです。特約が有効か、と、代位で行使できる原債権の範囲です。まず1つめです。
判例最判昭59・5・29 民集38巻7号885頁
保証人の求償権の内容と、特約 債務者から委託を受けた保証人が債務者に対して取得する求償権の内容については、民法四五九条二項によつて準用される同法四四二条二項は、これを代位弁済額のほかこれに対する弁済の日以後の法定利息等とする旨を定めているが、右の規定は、任意規定であつて、保証人と債務者との間で右の法定利息に代えて法定利率と異なる約定利率による代位弁済の日の翌日以後の遅延損害金を支払う旨の特約をすることを禁ずるものではない。
判旨を読みます。442条2項は、代位弁済額、つまりCが代わりに払った額のほか、弁済の日以後の法定利息等を求償の内容とする、と定めています。けれども右の規定は任意規定で、法定利率と異なる約定利率による遅延損害金を払う特約を、禁じてはいない。ここまでが判例の札です。ですから、求償権の範囲は特約どおりに決まります。決め手は、この規定が任意規定、つまり当事者が別の約束をしてよい規定だ、という点です。2つめです。同じ判決の続きで、弁済による代位の回でも見た部分です。保証人が代位で行使できる原債権の額の上限は、利害関係人に対する関係では、約定利率の遅延損害金を含んだ求償権の総額で画される、と述べています。判例の札です。この数字の例では、原債権は330万円です。小さい方の範囲までしか行使できないので、行使できるのは330万円です。特約で求償権が342万円に膨らんでも、Aから移る原債権が膨らむわけではありません。原債権の額や利率は変わらない。ここが、求償権と原債権が別個、ということです。Bにとっては、自分で約束した利率です。Aが、Bの土地に抵当権を持っていたとします。ほかの債権者、例えば同じBの土地に、Aより後ろの順位で抵当権を持つ債権者は、Aの抵当権が担保する原債権の額が先に取られる、と前提にしています。Cが代位で取れるのは、その原債権の額までです。前提は崩れません。どちらにも不意打ちが無いので、特約を有効としてよいのです。こちらの説明です。
この判決は根抵当権の事案です。一般には、原債権と担保の範囲内で行使できる、と押さえておきます。こちらの説明です。
冒頭の問いに戻る——まとめ
図:まとめ板
- 3つの柱
- 1 求償の全体像=委託の有無×払った後(459条)・弁済期前(459条の2)・払う前、物上保証人は351条/2 事後求償=支出した財産の額、消滅した額が上限、442条2項準用で法定利息など/3 弁済期前の弁済=利益を受けた限度・行使は弁済期以後、求償の範囲は特約で変えられる(求償権と原債権は別個)
冒頭の問いに戻ります。弁済期にCが300万円を払ったなら、Bに求償できるのは、支出した300万円です。それに、払った日以後の法定利息なども付きます。459条です。弁済期の前に払ったなら、Bが受けた利益の限度で、しかも行使は弁済期以後です。459条の2です。まとめです。1つめ、求償は、頼まれたかどうかと、払ったあとか、弁済期の前か、払う前かで、条文を引き分けました。2つめ、事後求償は、支出した財産の額で、消えた債務の額が上限です。3つめ、弁済期の前の弁済は、利益を受けた限度で、弁済期以後です。そして、求償の範囲は特約で変えられますが、代位で行使できる原債権が膨らむわけではありません。求償権と原債権は、別個の債権だからです。
参照条文
- 民法351条
- 民法459条
- 民法459条の2