無委託保証人の求償と通知義務(462条・463条)
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第4章 債権総論 #220/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
頼まれずに保証して払った人は、いくら取り戻せるか
図:冒頭の設例の関係図
- A 債権者(貸主)、B 主債務者(借主)、C 保証人(Bに頼まれずに保証)
- AはBに300万円を貸し、弁済期は12月末
- Cが保証した
- 弁済期が来て、CがAに300万円を払い、Bに返せと言った
- Bは「頼んでいない」と言う
- 問い=CはBにいくら返せと言えるか
- Bが断っていたらどう変わるか
- 辺ラベルの語=貸金300万円/保証/弁済/求償
先に答えです。頼まれていなくても、求償はできます。ただし、範囲が狭くなります。Bの意思に反していないなら、Cが払った当時、Bが利益を受けた限度です。462条1項です。Bの意思に反していたなら、Cが返せと言った日に、Bが現に利益を受けている限度です。462条2項です。そのうえで、意思に反しない保証人が、払った後の通知を怠ると、463条3項で、さらに求償が制限されることがあります。今日は、この3つを順にほどきます。今日の登場人物です。Aが債権者、Bが主債務者、Cが保証人です。前の回までと同じ役です。
前の回の受けと、根拠の札
図:前の回の受けと根拠の札の板
- 前の2回=委託を受けた保証人の求償(事後求償・事前求償)
- 今日=委託を受けない保証人の求償と通知
- 委託の有無=保証契約の成立ではなく求償の範囲で効く
- 根拠の札=条文/判例(最高裁・大審院の判決が述べたこと)/こちらの説明(理解のための説明)/立案の過程の説明
前の2回は、頼まれて保証した人、つまり委託を受けた保証人の求償でした。求償の一覧板で、委託を受けない保証人の欄は、462条とだけ書いて、空けてありました。今日は、その空欄を埋める回です。保証の最初の回の言葉も、思い出します。委託は、保証契約の成立要件ではありません。Bの意思に反していても、保証契約は成立します。462条2項が、意思に反して保証をした者を前提に書かれているのは、そのためです。委託の有無が効くのは、保証契約が成立するかではなく、求償の範囲です。払う前に求償する事前求償権も、前の回で見ました。460条のとおり、委託を受けた保証人だけのものです。委託を受けない保証人には、ありません。言葉を2つ決めます。1つめは、462条1項の言い方で、委託を受けない保証人です。短く、無委託保証人とも呼びます。2つめは、主たる債務者の意思に反して保証をした者です。短く、意思に反する保証人と呼びます。無委託保証人のうち、Bが断っていたのに保証した人が、意思に反する保証人です。今日も、話の根拠が混ざるので、そのつど、なにに基づく話かを言います。条文に書かれていることは、条文の札です。最高裁や、その前の大審院の判決が述べたことは、判例の札です。条文にも判例にも書かれていない、理解のための説明は、こちらの説明の札です。今日は、4つめも使います。改正を準備した審議会の資料で確認できる説明は、立案の過程の説明の札です。答案では、条文は条文番号を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。
ここで、前の回の確認です。委託を受けた保証人が、弁済期の前に払ったとき、求償できる範囲は、どう決まりましたか?主たる債務者がその当時利益を受けた限度で、しかも、行使できるのは弁済期以後でした。今日の1つめの柱は、この考え方をそのまま借ります。
柱1——委託を受けない保証人の求償 462条1項・3項
図:462条の導入板
- 無委託保証人の求償=頼まれた保証人の求償(459条)より範囲が狭い
- 1項=459条の2第1項を準用(払った当時に主たる債務者が利益を受けた限度)
- 3項=弁済期前に払ったら行使は弁済期以後
- 札=条文/こちらの説明
1つめの柱です。462条を、1項から3項まで通して出します。
条文民法462条
民法第462条(委託を受けない保証人の求償権) 1 第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する。 2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。 3 第四百五十九条の二第三項の規定は、前二項に規定する保証人が主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をした場合における求償権の行使について準用する。
まず1項です。459条の2第1項を準用しています。準用とは、別の場面に、同じ規定を当てはめることです。前の回で読んだ459条の2第1項は、委託を受けた保証人が弁済期の前に払った場合の条文でした。それを、委託を受けない保証人が債務の消滅行為、つまり前の回で見た、弁済など自分の財産で債務を消す行為をした場合に当てはめます。ここで大事な点があります。462条1項は、弁済期の前でも後でも、同じです。求償できるのは、債務の消滅行為をした当時、主たる債務者が利益を受けた限度です。条文の札です。
図:462条1項の数字図
- Bの300万円債務
- ケース1=Bに相殺の事情が無い→Cが300万円を払う→求償300万円
- ケース2=Bが払った日以前からAに対して100万円の債権を持つ→Bが受けた利益は200万円→CのBへの求償は200万円、CからAへ100万円の履行を請求
- 辺ラベルの語=弁済/求償/請求
数字にします。Bに、相殺の事情が何も無ければ、Bが受けた利益は、消えた債務の300万円そのものです。Cは、300万円を求償できます。前の回の言葉で言えば、459条の2第1項前段と同じ型です。次に、Bが、Cが払った日より前から、Aに対して100万円の債権を持っていたとします。Bはこれと相殺すれば、債務を100万円分、減らせたはずです。Bが受けた利益は、200万円になります。CがBに求償できるのは、200万円です。そしてBが「相殺できたはずだ」と主張すれば、Cは自分でAに、相殺によって消滅すべきであった債務、つまり、AがBに負っていた、100万円の債務の履行を請求できます。後段の準用です。条文の札と、数字の組み立てはこちらの説明です。
頼まれた保証人と比べると、元本は同じです。違いは2つあります。1つめは、足されるものです。頼まれた保証人の459条は、2項で442条2項を準用して、法定利息や、避けることができなかった費用その他の損害の賠償を含めました。300万円で年3パーセントなら、1年で9万円の法定利息です。462条1項が準用するのは、459条の2第1項だけです。459条2項の法定利息や損害の賠償は、準用されていません。ですから、払った日以後の法定利息などは、付きません。条文の札です。2つめは、基準です。459条は、支出した財産の額が基準です。462条1項は、Bが利益を受けた限度が基準です。今回の例は、たまたま相殺の事情が無いので、数字が同じになっただけです。なぜ、範囲を狭くしたのか。Cは、頼まれていません。頼まれていない人が自分の判断で出したお金を、全部Bに負わせると、Bは、自分で選んでいない利息や費用まで背負わされます。そこで、Bが実際に助かった額、つまり払った当時にBが得をした分までに絞ります。こちらの説明です。事務管理という制度でも、頼まれずに他人のために有益な費用を出した人は、償還を求められます。そして、本人の意思に反していたときは、本人が現に利益を受けている限度に絞られます。702条です。それと同じ発想だと思えば足ります。3項です。弁済期の前に債務の消滅行為をしたときは、求償権を行使できるのは、弁済期以後です。459条の2第3項の準用で、1項の人にも、これから見る2項の人にも及びます。前の回の理由のとおり、Bが弁済期まで払わなくてよいという利益を、奪わないためです。条文の札です。
柱2——意思に反する保証人の求償 462条2項
図:基準時のずれの時系列板
- 4月=CがAに300万円を弁済
- 6月=Bがそれを知らずにAに300万円を弁済(二重弁済)
- 8月=CがBに返せと言う(求償の日)
- 2つの基準時=意思に反しない場合は4月の払った当時(Bは300万円の利益を受けた)/意思に反する場合は8月の求償の日(Bの手元に残る利益は無い)
- 札=条文/こちらの説明
2つめの柱です。462条2項の前段は、こう言っています。意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ、求償権を有する。条文の札です。1項の人との違いは、基準になる日です。1項は、払った当時でした。2項の、現に利益を受けている限度は、求償の日、つまりCが「返してください」と言った日が基準です。時間の順に並べた設例で見ます。Cが、4月に、Aに300万円を払いました。その後、6月に、Bが、Cが払ったことを知らずに、Aに300万円を払いました。二重に払ったわけです。そして8月に、CがBに返せと言いました。ここで問いです。Cが意思に反しない保証人だったとき、基準になる日は、いつでしょうか。Bは、その日に、いくらの利益を受けたことになるでしょうか?
基準は払った当時の4月です。その時点では、Bはまだ払っていないので、Cの弁済で300万円の債務が消えて、300万円の利益を受けたことになると思います。1項の型では、4月の時点でBは300万円の利益を受けているので、原則として、Cは300万円を求償できます。ただし、Cが払った後の通知を怠ると、Bの善意の二重弁済が有効とみなされることがあります。これは柱3の3項で詳しく見ます。では、Cが意思に反する保証人だったらどうでしょう。基準は、8月の求償の日です。その日、Bは6月に自分で払っていて、Cの弁済のおかげでBの手元に残っている利益は、ありません。ですから、462条2項前段により、Cは求償できません。条文の札です。Cは払い過ぎた300万円を、二重に受け取ったAに、不当利得として返還請求することになります。こちらの説明です。結論が変わるのは、払った日と求償の日の間に、事情が動いたときです。両者に差が無ければ、1項と2項で数字は変わりません。決め手は、Bの意思を無視した度合いです。意思に反しないなら、払った当時のBの利益で足ります。意思に反するなら、Bの手元に今も残っている利益、つまり現に利益を受けている限度まで絞ります。最低限の求償だけは認める、という趣旨です。こちらの説明です。
Bが断っていても、条文は、求償権を有すると書いています。保証契約は成立していて、Cが払えばBの債務は消えます。Bは、その分だけ得をしています。ですから、得をした分は返させる、ただし最低限だけ、という整理です。条文の札と、こちらの説明です。論文で論点になりうる所は、基準時の違いです。答案では、その当時と、現に利益を受けている限度、求償の日という文言から出します。
3列の比較表
図:求償の範囲の3列比較表
- 縦=求償の範囲/基準時/法定利息・費用・損害賠償/弁済期前の弁済/事前求償
- 横=委託を受けた保証人(459条)/委託を受けない保証人・意思に反しない(462条1項)/意思に反する保証人(462条2項)
- 範囲=支出した財産の額(上限は消滅した主たる債務の額)/その当時利益を受けた限度/現に利益を受けている限度
- 基準時=―/債務の消滅行為をした当時/求償の日
- 法定利息等=含む(459条2項)/含まない/含まない
- 弁済期前の弁済=459条の2(その当時の利益・行使は弁済期以後)/462条3項(行使は弁済期以後)/同左
- 事前求償=あり(460条)/なし/なし
- 札=条文/こちらの説明
1つめと2つめを、表にまとめます。縦に5つの欄、横に3人です。委託を受けた保証人、委託を受けない保証人で意思に反しない人、意思に反する保証人です。求償の範囲です。委託を受けた保証人は、支出した財産の額で、上限は消滅した主たる債務の額です。意思に反しない人は、その当時利益を受けた限度です。意思に反する人は、現に利益を受けている限度です。基準時です。委託を受けた保証人は、利益を基準にしないので、ありません。意思に反しない人は、債務の消滅行為をした当時です。意思に反する人は、求償の日です。法定利息などです。委託を受けた保証人は含みます。459条2項です。あとの2人は、含みません。弁済期前の弁済です。委託を受けた保証人は459条の2で、その当時の利益、行使は弁済期以後です。あとの2人は、462条3項で、行使は弁済期以後です。事前求償です。委託を受けた保証人には、460条であります。あとの2人には、ありません。条文の札です。表の組み立てはこちらの説明です。例えば、友人の代わりにお金を立て替えた場面に置き換えます。頼まれて立て替えたなら、領収書どおり全額です。頼まれずに立て替えたなら、友人が助かった分までです。断られていたのに立て替えたなら、いま友人の手元に残っている得までです。こちらの説明です。頼まれた度合いが下がるほど、Bに負わせる範囲が絞られます。頼まれた人は払った額、頼まれていない人は払った当時の利益、断られていた人は求償の日に残っている利益です。この3段を、言えるようにしてください。
柱3——通知を怠ったときの求償の制限 463条
図:通知の受けの板
- 事前の通知=払う前に知らせる(他の人が債権者に持つ主張を使う機会を守る)
- 事後の通知=払った後に知らせる(二重払いを防ぐ)
- 連帯債務の443条=全員が互いに通知
- 保証の463条=誰が誰にいつ通知するかが決まっている
- 札=条文/こちらの説明
3つめの柱です。通知です。連帯債務の回で、事前の通知と事後の通知を見ました。払う前に知らせるのが事前の通知、払った後に知らせるのが事後の通知です。理由も、同じです。事前の通知は、他の人が債権者に持つ主張を使う機会を守ります。例えば、Bが債権者に相殺できる債権を持っていれば、払う前に知らされたBは、Cに「払わなくてよい、相殺で消せる」と伝えられます。事後の通知は、二重に払うのを防ぎます。保証にも、同じ骨格の条文があります。違うのは、誰が誰に通知するかが、決まっていることです。ここでの通知は、保証人と主たる債務者の間のものです。保証の3回目で見た、債権者から保証人への情報の提供や通知とは、別のものです。463条は、1項と、2項・3項に分けて出します。まず1項です。
条文民法463条1項
民法第463条第1項(通知を怠った保証人の求償の制限等) 1 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
図:463条1項の数字図
- 委託を受けたCが、Bに通知しないで300万円をAに払う
- BはAに対して100万円の債権を持っていた
- BがCに「相殺できたはず」と対抗→CのBへの求償は200万円→CはAに、相殺で消えるはずだった100万円の履行を請求
- 辺ラベルの語=弁済/求償/対抗/請求
1項から区切って読みます。対象は、委託を受けた保証人です。その保証人が、主たる債務者にあらかじめ通知しないで、債務の消滅行為をしました。事前の通知を怠った場合です。このとき、Bは、Aに対抗できた事由を、Cに対抗できます。後段は、相殺で対抗したとき、Cは、Aに、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できる、です。条文の札です。数字にします。頼まれて保証したCが、Bに通知しないで、300万円をAに払いました。BはAに対して、100万円の債権を持っていました。CがBに求償すると、Bは「その債権で相殺できたはずだ」と対抗できます。Cが求償できるのは、200万円になります。Cは、その100万円について、Aに履行を請求します。連帯債務の443条1項と、同じ型です。数字の組み立てはこちらの説明です。
条文民法463条2項・3項
民法第463条第2項・第3項(通知を怠った保証人の求償の制限等) 2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。 3 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
2項です。こちらは、主たる債務者の側が通知を怠った場合です。Bが先に債務の消滅行為をしたのに、委託を受けた保証人であるCに、通知を怠りました。そのため、Cが、Bが払ったことを知らずに、つまり善意で、債務の消滅行為をしました。このとき、Cは、自分の行為を、有効であったものとみなすことができます。みなすとは、事実と違っても、そう扱うことです。本当はBの弁済で債務が消えていても、Cの弁済のほうを、債務を消した弁済として扱えます。善意、みなす、という言葉は、連帯債務の443条2項と同じです。条文の札です。数字にします。Bが、先にAに300万円を払い、Cに通知を怠りました。Cは、それを知らないまま、Aに300万円を払いました。Cの弁済が有効とみなされるので、Cは459条で、Bに300万円を求償できます。Bは、有効と認められなかった弁済、つまり払い過ぎた300万円を、Aに不当利得として返還請求することになります。連帯債務と同じ型です。条文の札です。ここで問いです。Cが先に払って、Bに通知を怠りました。そのあと、Bが、それを知らずに、善意で、二重に払いました。有効になるのは、CとBの、どちらの弁済でしょうか?
保証人が先に払って通知を怠り、主たる債務者が知らずに二重に払ったときは、主たる債務者の弁済が有効になります。3項です。保証人が債務の消滅行為をした後に、主たる債務者が債務の消滅行為をした場合です。2つの場合に、Bは、自分の行為を有効であったものとみなすことができます。1つめは、Cが、Bの意思に反して保証をしたとき。2つめは、Cが、通知を怠ったため、Bが善意で債務の消滅行為をしたときです。
図:463条3項の数字図
- Cが4月にAに300万円を払い、Bに通知しない
- Bが5月に、それを知らずに善意でAに300万円を払う
- Bの弁済が有効とみなされる→Cは求償できない→Cは払い過ぎた300万円をAに不当利得として返還請求
- 別の場合=Cが意思に反する保証人のときは、通知をしていてもBの弁済を有効とみなせる
- 辺ラベルの語=弁済/通知/返還請求
数字にします。Cが、4月にAに300万円を払い、通知を怠りました。Bが、5月に、それを知らずに、善意でAに300万円を払いました。Bの弁済が、有効とみなされます。Cは、Bに求償できません。払い過ぎた300万円は、Aに不当利得として返還請求します。条文の札です。注意点は、前半の、意思に反して保証をしたときです。この場合は、通知の有無を問いません。Cが、払ったあとにきちんと通知していても、Bは、自分の弁済を有効とみなせます。意思に反する保証人は、通知をしても守られません。条文の札です。誰が、誰に、いつ通知するかを、表にします。
図:463条の通知の表
- 縦=1項/2項/3項
- 横=誰が/誰に/いつ/怠ると
- 1項=委託を受けた保証人が/主たる債務者に/払う前(事前の通知)/Bは債権者に対抗できた事由を保証人に対抗できる
- 2項=主たる債務者が/委託を受けた保証人に/払った後(事後の通知)/保証人が善意で払えばその弁済を有効とみなせる
- 3項=保証人が(委託の有無を問わない)/主たる債務者に/払った後(事後の通知)/Bが善意で払えばその弁済を有効とみなせる
- 意思に反する保証人は通知しても守られない
- 札=条文
1項は、委託を受けた保証人が、主たる債務者に、払う前に通知します。怠ると、Bは、Aに対抗できた事由を、Cに対抗できます。2項は、主たる債務者が、委託を受けた保証人に、払った後に通知します。怠って、Cが善意で払えば、Cの弁済が有効とみなされます。3項は、保証人が、主たる債務者に、払った後に通知します。委託の有無は問いません。怠って、Bが善意で払えば、Bの弁済が有効とみなされます。ただし、意思に反する保証人は、通知しても守られません。条文の札です。
443条との比較——なぜ向きが偏るか
図:443条と463条の比較板
- 連帯債務(443条)=全員が互いに事前の通知・事後の通知
- 保証(463条)=事前の通知は委託を受けた保証人だけ(1項)/主たる債務者の事後の通知は委託を受けた保証人に対してだけ(2項)/保証人の事後の通知は委託の有無を問わない(3項・意思に反する保証人は通知しても守られない)
- 札=条文
連帯債務の443条と、並べます。連帯債務は、誰が払っても全員が免れる、対等な立場でした。ですから、全員が、互いに事前の通知も事後の通知も負います。保証は、向きが決まっています。事前の通知を負うのは、委託を受けた保証人だけです。主たる債務者が、保証人に事前の通知をする制度は、ありません。主たる債務者の事後の通知は、委託を受けた保証人に対してだけです。保証人の事後の通知は、委託の有無を問いません。ただし、意思に反する保証人は、通知しても守られません。条文の札です。根拠の札を分けて言います。まず、委託を受けない保証人に、1項の事前の通知が無い理由です。求償の範囲が、もともと、その当時の利益、意思に反する場合は現に受けている利益に、絞られています。Bが債権者に対抗できる事由を持っていれば、事前に通知してもしなくても、求償の額に反映されます。柱1の数字で比べます。BがAに100万円の債権を持っていたとき、頼まれた保証人は、通知して払えば300万円、通知を怠れば200万円です。頼まれていない保証人は、通知してもしなくても、はじめから200万円です。数字はこちらの説明です。通知を義務づける意味が乏しい、という説明です。立案の過程の説明です。次に、意思に反する保証人が、通知しても守られない理由です。求償の日までにBが自分で払っていれば、Bは自分の財布から払っています。求償の日に、Cの弁済のおかげでBの手元に残っている得は、ありません。もともと現に利益を受けている限度でしか求償できないので、通知の有無で守る余地が無い、という説明です。立案の過程の説明です。
3つめ、主たる債務者が事前に通知する制度が無い理由です。主たる債務者から保証人への求償は、ありえません。ですから、事前の通知を怠った効果として、抗弁を対抗されるという場面が、生じようがありません。こちらの説明です。4つめ、主たる債務者の事後の通知が、委託を受けた保証人に対してだけの理由です。Bが先に払ったのに、委託を受けた保証人が知らずに二重に払うと、その不利益を、通知で守る必要があります。一方、頼まれていない保証人の存在を、主たる債務者が知らないことは、よくあります。存在すら知らない相手に、通知を求めるのは難しいのです。こちらの説明です。なお、頼まれていない保証人は、Bが通知を怠っても、自分の弁済を有効とみなすことはできません。463条2項は、委託を受けた保証人だけの規定だからです。条文の札です。
図:両方が通知を怠った場合の板
- 連帯債務(443条)=最判昭57・12・17:事前の通知を怠った人は2項の保護を受けられない(理由=2項は1項の事前の通知を前提にしている)
- 札=判例
- 保証(463条1項・2項)=同じ考えが及ぶかは条文に書かれていない→判例の考え方を当てはめて考える余地がある
- 札=こちらの説明
- 論文の論点=通知を怠ったとき、誰の弁済が有効になるか
最後に、両方が通知を怠った場合です。連帯債務の回で見た最高裁の判決は、事前の通知を怠った人は、443条2項の保護を受けられない、としました。理由は、443条2項は1項の事前の通知があることを前提にしていて、事前の通知を怠った人まで守る趣旨ではない、というものです。判例の札です。払う前に通知していれば、すでに払われていたことを知れたはず、という言い方もできます。こちらの説明です。保証では、463条の1項と2項に、同じ考えが及ぶかは、条文には書かれていません。連帯債務の判例の考え方を当てはめて考える余地がある、という程度に押さえてください。こちらの説明です。論文で論点になりうる所は、通知を怠ったときに、誰の弁済が有効になるかです。
冒頭の問いに戻る——まとめ
図:冒頭の設例の関係図
- 答え
- A 債権者、B 主債務者、C 保証人(Bに頼まれずに保証)。Bの意思に反しない→Cが払った当時Bが利益を受けた限度(相殺の事情が無ければ300万円・法定利息は付かない)。Bの意思に反する→Cが返せと言った日にBが現に利益を受けている限度。意思に反しない保証人が払った後の通知を怠ると463条3項でさらに制限されうる(意思に反する保証人は通知しても守られない)。
冒頭の問いに戻ります。Cは、Bにいくら返せと言えるか。Bの意思に反していないなら、Cが払った当時、Bが利益を受けた限度です。相殺できる事情が無ければ、300万円で、法定利息は付きません。Bが断っていたなら、Cが返せと言った日に、Bが現に利益を受けている限度です。そして、Bの意思に反しない保証人が、払った後の通知を怠ると、463条3項で、さらに制限されることがあります。意思に反する保証人は、2つの面で不利です。求償の範囲が、現に利益を受けている限度に絞られます。そして、払った後に通知をしても、主たる債務者の後の弁済が、有効とみなされることがあります。ただし、言い過ぎないでください。不利なのは、この2点です。
図:今日のまとめ
3つの柱で整理します。1つめ、委託を受けない保証人の求償です。払った当時、Bが利益を受けた限度で、法定利息などは付かず、弁済期の前に払ったなら、行使は弁済期以後です。2つめ、意思に反する保証人の求償です。求償の日に、Bが現に利益を受けている限度です。3つめ、通知を怠ったときの求償の制限です。463条は、誰が誰にいつ通知するかが決まっていて、そこが443条との違いです。根拠の札を付けて整理します。条文は、462条と463条、それに準用される459条の2です。判例は、連帯債務の回で見た、事前の通知を怠った人は443条2項の保護を受けられないという判決だけです。立案の過程の説明は、無委託保証人に事前の通知が無い理由と、意思に反する保証人が守られない理由です。こちらの説明は、主なものとして、範囲が狭い理由、数字の例、事務管理との結びつき、通知の向きが偏る理由です。
参照条文
- 民法462条
- 民法463条1項
- 民法463条2項・3項