保証意思宣明公正証書と主債務者の情報提供義務
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第4章 債権総論 #223/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
友人の工務店の借金の保証人に。署名しただけで払うことになるか
図:冒頭の設例の関係図
- A 債権者(銀行)、B 主債務者(個人で工務店を営む人)、C 保証人(Bの学生時代の友人)
- AはBに運転資金2,000万円を貸した
- Cは「迷惑はかけないから」とBに頼まれ、Aとの保証契約書に署名・押印した
- Bは別の銀行に1,500万円の借金があったが、Cには黙っていた
- 問い=Cは2,000万円を払わなければならないか
- 辺ラベルの語=貸付/保証/頼み/黙っていた
先に答えです。書面に署名と押印をしただけでは、足りません。守りが2段あります。1段目、契約の前の1箇月以内に、Cが公証人の前で保証する意思を述べた公正証書が作られていなければ、Cの保証契約は効力を生じません。465条の6の第1項です。2段目、公正証書があっても、Bがほかの借金を黙っていたせいでCが思い違いをして契約し、Bが黙っていたことをAが知っていたか、知ることができたなら、Cは保証契約を取り消せます。465条の10の第2項です。なお、この答えは、2020年4月1日以降に結ばれた保証契約の話です。今日は、なぜこうなるのかを、順にほどきます。今日の登場人物です。Aが債権者で銀行、Bが主債務者で事業をしている人、Cが保証人でBの友人です。前の回までと同じ役です。
前の回の受けと、言葉の整理
図:前の回の受けと言葉の板
- 保証人を守る仕組み=書面(446条2項・保証契約は書面でしなければ効力を生じない)/極度額(465条の2・個人の根保証は極度額を書面で定めなければ効力を生じない)
- 貸金等債務=お金を借りることで負う債務と、手形の割引を受けることで負う債務
- 公正証書=公証人が作る公文書
- 公証人=公正証書を作る公務員
- 根拠の札=条文(法律に書いてあること)/こちらの説明(理解のための説明)
前の回までに、保証人を守る仕組みが出ました。まず書面です。保証契約は、書面でしなければ、効力を生じません。446条の2項でした。今日は、その続きです。言葉を2つ、先に置きます。貸金等債務は、前の回と同じ意味で、お金を借りることで負う債務と、手形の割引を受けることで負う債務です。手形の割引は、前の回で見たとおり、手形という紙を使ったお金の借り入れに近いもの、と考えれば足ります。公正証書は、公証人が作る公文書で、公証人は、公正証書を作る公務員です。ここで、前回の話から1つ思い出してください。個人が根保証人になるとき、契約書に定めがなければ、保証そのものが無効になるものは、何だったでしょう?
個人の根保証は、極度額を書面で定めなければ、効力を生じません。465条の2でした。つまり、契約を結ぶときの守りとして、書面と極度額が出ていました。今日は、事業のための借金を個人が保証する場面に置かれた、さらに2つの仕組みを見ます。今日の話の根拠は、2種類です。条文に書いてあることは、条文の札。条文に書いていない、理解のための説明は、こちらの説明の札です。今日は、判例の札は使いません。答案では、条文は条文番号を引いて書き、それ以外は理由を添えて書きます。
柱1——なぜ事業の借金の保証だけ特別か。対象と効果
図:465条の6第1項の板
- なぜ特別か=1 額が大きくなりやすい/2 頼まれると断りにくい/3 事業の中身が外から見えず、返せるか分からない
- 対象=3つの掛け算
- 事業のために負担した×貸金等債務×保証人が個人
- 公正証書=契約の締結の日前1箇月以内に作成
- 無ければ=効力を生じない(無効)
- 保証人が法人なら適用しない(3項)
- 札=条文/こちらの説明
1つめの柱です。まず、なぜ事業の借金の保証だけが特別扱いなのかを、こちらの説明で確かめます。理由は3つあります。1つめ、額が大きくなりやすいこと。2つめ、頼まれると断りにくく、情で引き受けがちなこと。3つめ、事業の中身は外から見えないので、返せるのかどうかが、保証人には分かりにくいことです。そこで2017年の改正で、2つの仕組みが新しく置かれました。1つが保証意思宣明公正証書、もう1つが、柱2で見る主債務者の情報提供義務です。核心の条文を読みます。条文の札です。
条文民法465条の6
民法第465条の6(公正証書の作成と保証の効力)第1項・第3項 1 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。 2 (略) 3 前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
言葉ごとにほどきます。まず対象です。事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、または、その範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約です。1本の借金の保証も、継続して借りる根保証も、対象です。ここに、3つの掛け算があります。事業のため、かける、貸金等債務、かける、保証人が個人です。3つそろって、初めて公正証書が要ります。3項は、保証人になろうとする者が法人なら、適用しないとしています。掛け算の輪郭を、2組の例で確かめます。1組目は、事業のためかどうかです。例えば、Bが、営んでいる工務店の運転資金として2,000万円を借り入れる。これは事業のためです。同じBが、自宅を買うために住宅ローンを借りる。借りるときの使い道が事業ではないので、事業のためではありません。その保証に、公正証書は要りません。教育ローンの保証も同じです。決め手は、借りるときに、何に使うお金として借りたか、です。2組目は、貸金等債務かどうかです。Bが、材木店から材木を仕入れ、代金を後払いにする。これは事業のための債務ですが、お金を借りる債務ではないので、貸金等債務ではありません。この代金の保証に、公正証書は要りません。決め手は、債務の種類です。お金を借りること、または手形の割引を受けることか、です。
公正証書を作っても、保証契約の書面は、なお要ります。公正証書は、保証契約そのものではなく、契約の前にする準備の手続きです。保証契約は、446条の2項の書面で、別にしなければなりません。公正証書だけでも、書面だけでも、足りません。冒頭のCは、書面に署名しただけでした。ここが欠けています。効果は、効力を生じない、つまり無効です。取消しではありません。公正証書が無いまま結んだ保証契約は、初めから効力が無いものとして扱われます。時期は、契約の締結の日前の1箇月以内です。こちらの説明です。1箇月に限るのは、契約の直前の気持ちを確かめるためです。そして、なぜ公証人の前なのか。公証人が本人と直接会い、リスクを分かったうえで履行する意思があるかを確かめます。
柱1——公正証書の作り方 465条の6第2項・465条の7
図:公正証書を作る流れの板
- 1 保証人になろうとする本人が、公証人に口で述べる(口授)/2 公証人が口述を筆記し、本人に読み聞かせ又は閲覧させる/3 本人が筆記の正確なことを承認して、署名し、印を押す/4 公証人が、方式に従って作った旨を付記して、署名し、印を押す
- 1号の述べる内容=債権者及び債務者・元本・利息や違約金などの定めの有無と内容・主債務者が履行しないときは、その全額について履行する意思
次は作り方です。465条の6の第2項が、方式を4つの号で決めています。流れは、保証人になろうとする本人が、公証人に口で述べる。公証人が筆記して、読み聞かせるか閲覧させる。本人が承認して署名し、印を押す。公証人が、方式に従って作った旨を付記して、署名し、印を押す。この順です。条文の札です。1号は長いので、核心のイだけを読みます。
条文民法465条の6
民法第465条の6 第2項 第1号イ 2 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。 一 保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。 イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。 ロ (略)
ほどきます。口授は、口で直接述べることです。主語は、保証人になろうとする者です。本人が口で述べる形で、他の人が代わりに述べるのでは、この方式になりません。なぜ本人の口なのか。こちらの説明です。誰かが用意した紙に署名するだけなら、中身を分からないままでも済んでしまいます。誰に対する、いくらの借金を、全額払うつもりなのかを、自分の口で述べさせ、公証人が、分かったうえで述べているかを確かめます。述べる内容は、イのとおりです。債権者と債務者、元本、利息や違約金などの定めの有無と内容、そして、主債務者が履行しないときは、その債務の全額について履行する意思です。全額、という点が肝心です。払えるところまで、では足りません。かっこ書きは、連帯保証の場合です。連帯保証人は、催告の抗弁も検索の抗弁も持ちませんでした。このかっこ書きは、まずBに請求してほしい、とも、Bに資力があるはずだ、とも、他に保証人がいるはずだ、とも言わず、全額を履行する意思を述べさせる定めです。ロは根保証の場合で、債権者と債務者、主たる債務の範囲、極度額、元本確定期日の定めの有無と内容を述べ、極度額の限度で全額を履行する意思を述べます。
図:465条の6第2項 第2号から第4号の板
- 2号=公証人が、口述を筆記し、本人に読み聞かせ又は閲覧させる
- 3号=本人が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押す(署名できないときは、公証人がその事由を付記して署名に代える)
- 4号=公証人が、前三号の方式に従って作った旨を付記して、署名し、印を押す
続けて、2号から4号です。条文の札です。
条文民法465条の6
民法第465条の6 第2項 第2号から第4号 2 (略) 一 (略) 二 公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。 三 保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。 四 公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
2号は、公証人が口述を筆記して、本人に読み聞かせるか、閲覧させることです。3号は、本人が筆記の正確なことを承認してから署名し、印を押すことです。自分の口で述べた内容が、そのとおりに書かれたかを、本人が確かめます。署名できない場合は、公証人が事由を付記して、署名に代えられます。4号は、公証人が、この方式に従って作った旨を付記し、署名して印を押すことです。4つの号は、本人が言う、公証人が書く、本人が確かめる、公証人が手順を踏んだと書き残す、という順に並んでいます。順番の読み方は、こちらの説明です。465条の7は、特則です。保証人になろうとする者が口がきけない場合は、通訳人の通訳による申述か、自書で、口で述べることに代えます。耳が聞こえない場合は、公証人が通訳人の通訳で内容を伝え、読み聞かせに代えられます。口で述べる、耳で聞く、という手順を踏めない人にも、同じ確かめを別の手段で通すための規定です。
柱1——求償権の保証にも及ぶ 465条の8
図:465条の8の関係図
- ここだけ場面を取り替える
- A 債権者(銀行)、B 主債務者、保証会社(法人の保証人)、個人(保証会社の求償権の保証人)
- AはBに事業のための貸金を貸した
- 保証会社がその債務を保証した
- 保証会社が払えばBに求償権を持つ
- 個人がその求償権の債務を保証した
- この個人の保証にも、465条の6の公正証書が要る
- 辺ラベルの語=貸付/保証/求償権/保証
ここだけ、場面を取り替えます。Cとは別の話です。AがBに、事業のための貸金を貸し、その債務を、保証会社という法人が保証しました。保証会社は法人なので、自分の保証に公正証書は要りません。ところが保証会社がAに払えば、Bに求償権を持ちます。求償権は、保証人の求償の回で見たとおり、払った人が本人に、立て替えた分を返してください、と言う権利でした。その求償権の債務を、ある個人が保証したとします。個人が事業の借金を背負う点は、変わりません。そこで465条の8の第1項は、この個人の保証にも、465条の6の第1項と第2項、それに465条の7を準用します。根保証も同様です。条文の札です。
条文民法465条の8
民法第465条の8(公正証書の作成と求償権についての保証の効力) 1 第四百六十五条の六第一項及び第二項並びに前条の規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について準用する。主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。 2 前項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
準用の結果、契約の前の1箇月以内の公正証書が無ければ、この個人の保証は効力を生じません。前の回の465条の5は、極度額の無い法人の根保証について、その求償権を個人が保証しても効力を生じない、とする規定でした。それと同じ発想です。間に法人を挟んでも、結局は個人が事業の借金を背負うのだから、保護を外さない、という抜け道ふさぎです。465条の5は、もとの法人の根保証に極度額が無いとき。465条の8は、個人の側に公正証書が無いとき。どちらも、個人の保証は効力を生じません。こちらの説明です。
柱1——経営者などの例外 465条の9
図:465条の9の板
- 前三条(465条の6から465条の8)が適用されない人
- 主債務者が法人=1 理事・取締役・執行役・これらに準ずる者/2 総株主の議決権の過半数を有する者など
- 主債務者が個人=3 共同して事業を行う者/事業に現に従事している主債務者の配偶者
- 理由=事業の状況を自分で分かる立場
- 札=条文/こちらの説明
ここまでは、公正証書が要る場面でした。逆に、個人が事業の借金を保証するのに、公正証書が要らない人たちもいます。これを、経営者などの例外と呼びます。465条の9です。まず、法人が主債務者の場合の1号と2号です。条文の札です。
条文民法465条の9
民法第465条の9 第1号(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外) 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。 一 主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者 二 (略) 三 (略)
主債務者がB社という会社だったとします。1号は、B社の理事、取締役、執行役、そしてこれらに準ずる者です。続けて、2号を読みます。条文の札です。
条文民法465条の9
民法第465条の9 第2号イ(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外) 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。 一 (略) 二 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者 イ 主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者 ロ (略) ハ (略) ニ (略) 三 (略)
2号のイは、B社の総株主の議決権の過半数を持つ人です。続けて、ロです。条文の札です。
条文民法465条の9
民法第465条の9 第2号ロ(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外) 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。 一 (略) 二 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者 イ (略) ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者 ハ (略) ニ (略) 三 (略)
ロは、B社の議決権の過半数を持つ別の株式会社があって、その会社の議決権の過半数を持つ人です。B社を、ひとつ上から支配している人、と言えます。残りは、ハとニです。条文の札です。
条文民法465条の9
民法第465条の9 第2号ハ・ニ(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外) 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。 一 (略) 二 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者 イ (略) ロ (略) ハ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者 ニ 株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ又はハに掲げる者に準ずる者 三 (略)
ハは、別の会社と、その会社の議決権の過半数を持つ人とが、合わせてB社の議決権の過半数を持つ場合の、その人です。ロと同じく、会社を挟んでB社を支配している人を捕まえる形です。ニは、株式会社でない法人について、イからハに準ずる人です。
図:465条の9第3号の板
- 主債務者が個人(法人を除く)の場合
- 例外=共同して事業を行う者/主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者
- 注意=配偶者の例外は、主債務者が個人のときだけ
- 法人の社長の妻は、それだけでは例外に当たらない
続いて3号です。主債務者が会社ではなく、個人の場合を定めています。条文の札です。
条文民法465条の9
民法第465条の9 第3号(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外) 前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。 一 (略) 二 (略) 三 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
3号の主債務者は、法人であるものを除きます。つまり個人です。その個人と共同して事業を行う者と、その個人の事業に現に従事している配偶者が、例外です。なぜ例外なのか。こちらの説明です。これらの人は、事業の中身を、日々の仕事の中で自分で知りうる立場です。そのため、公証人の前で改めて意思を確かめさせなくてもよい、と考えられます。
図:仕分けの表
- 縦=保証人候補5人
- 横=公正証書が要るか、理由の号
- 社長本人(B社の代表取締役)=要らない・1号/社長の学生時代の友人=要る・どの号にも当たらない/B社の社長の妻で、取締役でも株主でもなく事業にも関わっていない=要る・法人の主債務者の配偶者は3号に当たらない/個人事業主の妻で、店の経理を毎日手伝っている=要らない・3号/個人事業主と共同して事業を行っている仲間=要らない・3号
仕分けをします。主債務者がB社の場合の保証人候補から。社長本人は、取締役ですから、公正証書は要りません。1号です。社長の学生時代の友人は、どの号にも当たらないので、要ります。B社の社長の妻で、取締役でも株主でもなく、事業にも関わっていない人は、要ります。次に、主債務者が個人事業主の場合です。その妻で、店の経理を毎日手伝っている人は、要りません。3号です。個人事業主と共同して事業を行っている仲間も、要りません。3号の前段です。同じ妻でも、会社の場合と個人事業の場合で結論が分かれるのは、条文の作りのためです。配偶者の例外は、3号にだけ書かれています。そして3号の主債務者は、法人を除いた者、つまり個人です。会社の社長の妻は、取締役でも大株主でもなければ、1号にも2号にも当たりません。3号の配偶者でもありません。ですから、妻であることだけでは、例外になりません。冒頭に戻ります。Cは友人で、どの号にも当たりません。公正証書が無ければ、効力を生じません。1段目の答えは、これで出ました。
柱2——主債務者の情報提供義務 465条の10
図:465条の10第1項・第3項の板
- 誰が=主たる債務者(債権者ではない)
- いつ=事業のために負担する債務の保証(又はその範囲に含まれる根保証)を委託するとき
- 誰に=委託を受ける者
- 何を=1 財産及び収支の状況/2 主たる債務以外に負担している債務の有無とその額・履行状況/3 担保として他に提供し又は提供しようとするものがあるときは、その旨と内容
- 保証をする者が法人なら適用しない(3項)
- 札=条文
2つめの柱です。主債務者の情報提供義務とは、保証を頼むBが、頼む相手に、自分の財産や借金の状況を知らせなければならない、という義務です。保証人の抗弁を見た回に、458条の2と458条の3がありました。契約の後に、債権者が、主債務の状況を保証人に知らせる義務でした。それとは、義務を負う人が違います。今日の義務を負うのは、債権者ではなく、主債務者です。柱1が、保証人の意思を確かめる仕組みなら、柱2は、判断の材料を、Bから保証人に渡させる仕組みです。条文を読みます。条文の札です。
条文民法465条の10
民法第465条の10 第1項(契約締結時の情報の提供義務) 1 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。 一 財産及び収支の状況 二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況 三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容 2 (略) 3 (略)
まず1項をほどきます。義務を負うのは主たる債務者です。時は、保証の委託をするとき、つまり、保証人が契約を結ぶ前です。相手は、委託を受ける者です。知らせる事項は3つです。1号、財産及び収支の状況。具体的には、工務店のBなら、自宅や工具などの財産、年間の売上と支出です。2号、主たる債務以外に負担している債務の有無と、その額、履行状況。Bなら、別の銀行の1,500万円と、返済が遅れていないかです。3号、担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあれば、その旨と内容。Bの自宅を、すでに別の借入れの抵当にしているか、といったことです。範囲に注意してください。この義務が生じるのは、主債務者が保証を委託するときです。頼まれずに保証人になった人は、この条文の場面ではありません。そして3項で、保証をする者が法人なら、適用されません。
図:柱1と柱2の比較表
- 縦=対象の債務/保証人/保証の経緯/例外/だれが何をするか/欠けたときの効果
- 横=柱1 公正証書(465条の6)/柱2 主債務者の情報提供(465条の10)
- 対象の債務=事業のために負担した貸金等債務/事業のために負担する債務(貸金等に限らない)
- 保証人=個人(法人は不要)/個人(法人は不要)
- 保証の経緯=委託の有無を問わない/委託をするときだけ
- 例外=あり(465条の9)/なし
- だれが何をするか=保証人になろうとする者が公証人の前で意思を述べる/主債務者が保証を頼むときに情報を知らせる
- 欠けたときの効果=保証契約は無効/保証人が取り消せる(要件あり)
- 札=条文/こちらの説明
柱1と柱2を、1枚に並べます。山場の1枚です。対象の債務は、柱1が、事業のために負担した貸金等債務だけです。柱2は、事業のために負担する債務で、貸金等に限りません。さきほどの材木の仕入れ代金の保証も、入ります。事務所の賃料の保証も入ります。保証人は、どちらも個人で、法人は適用外です。保証の経緯は、柱1が、委託の有無を問いません。柱2は、委託をするときだけです。例外は、柱1に、経営者などの例外があります。柱2には、ありません。3項は法人を除くだけです。だれが何をするかは、柱1が、保証人になろうとする者が、公証人の前で意思を述べます。柱2は、主債務者が、保証を頼むときに情報を知らせます。欠けたときの効果は、柱1が、無効です。柱2が、取り消せる、です。
柱1と柱2が、同じ保証に両方当たることもあります。冒頭のCの保証は、両方に当たります。事業のための貸金の保証で、個人で、Bに頼まれているからです。片方だけ当たる例もあります。具体的には、材木の仕入れ代金の保証を、Bに頼まれて友人が引き受けるなら、貸金等債務ではないので、公正証書は要りませんが、情報提供は要ります。もう1つ。社長本人が保証する場合、柱1は例外で要らないのに、柱2には例外の条文がありません。ただし、社長自身は事業を分かっているので、実際に問題になるのは、主に第三者の保証人でしょう。こちらの説明です。次の山場に入る前に、2項と3項の条文を読みます。条文の札です。
条文民法465条の10
民法第465条の10 第2項・第3項(契約締結時の情報の提供義務) 1 (略) 2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。 3 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。
2項は、次の板で、要件に分けて読みます。
柱2——取消しの要件を条文から読む
図:取消しの要件の板
- 山場
- 要件1 主債務者Bが1項各号の事項について情報を提供しない、又は事実と異なる情報を提供した→そのために→要件2 委託を受けた者Cがその事項について誤認をした→それによって→要件3 Cが保証契約の申込み又は承諾の意思表示をした。これに加えて要件4 債権者Aが、Bの不提供・不実の情報提供を知り又は知ることができた。結論=Cは保証契約を取り消すことができる。要件1から要件3は保証人側の事実・要件4は債権者の事情。
ここから、今日の山場です。2項を、要件に分けて読みます。その前に問いです。保証人が取り消せるには、債権者の側にどんな事情が要るでしょう?要るのは、債権者の落ち度そのものではなく、債権者が事実を知っていたか、知ることができたか、です。順に積み上げます。要件1、主債務者が、1項各号の事項について、情報を提供しない、または、事実と異なる情報を提供した。要件2、そのために、委託を受けた者がその事項について誤認をした。誤認は、思い違いのことです。要件3、それによって、保証契約の申込みか承諾の意思表示をした。要件1から要件2、要件2から要件3は、そのために、それによって、という2段のつながりです。ここまでは、保証人とBの間の事実です。要件4、主債務者が情報を提供しなかったこと、または事実と異なる情報を提供したことを、債権者が知り、または知ることができた。以上の4つの要件がそろえば、保証人は、保証契約を取り消せます。条文の札です。要件1から要件3がそろっても、要件4が欠ければ、取り消せません。ここが、取り違えやすい所です。論文でも問われうる所ですが、解釈で立てる規範ではありません。答案では、465条の10の第2項を引き、4つを順に当てはめます。
債権者の事情まで要る理由は、契約の当事者にあります。保証契約の当事者は、債権者のAと、保証人のCです。Bは、契約の外にいる人です。情報を出さなかったのは、Aではありません。Aに落ち度が無いのに契約を消されると、Aが困ります。そこで、Aが事情を知り、または知ることができた場合に限って、取消しを認めます。こちらの説明です。形は、詐欺の回で見た、第三者詐欺とよく似ています。契約の外の第三者の行為で意思表示をした場合に、相手方が知り、または知ることができたときに限って取り消せる、という形です。違いも1つあります。96条の2項は、第三者が詐欺を行った場合です。465条の10の第2項の文言は、情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供した、であって、だます意図を求める言葉がありません。うっかり話し忘れただけ、思い込みで違う内容を伝えただけでも、要件に当たりうると読めます。こちらの説明です。なお、別に錯誤や詐欺の要件を満たすなら、その条文を使うこともできます。効果は、取消しです。無効ではありません。取り消すまでは有効で、取り消すかどうかを決めるのは、保証人です。債権者の側から見ると、Bがきちんと説明したかを確かめておかないと、保証を失うかもしれません。こちらの説明です。
図:冒頭の設例の当てはめ
- 要件1 BがCに他の借金1,500万円を黙っていた(1項2号の事項の不提供)→そのために→要件2 Cは、Bに他の借金は無いと誤認した→それによって→要件3 Cは保証契約を結んだ
- 分かれ目=要件4 A銀行が、Bの他の借金の不提供を知り又は知ることができたか
- 知っていた・知ることができた=Cは取り消せる
- 知りようがなかった=取り消せない
冒頭のCに当てはめます。Bがほかの借金1,500万円を黙っていたのは、1項2号の事項の不提供です。要件1です。Cは、他に大きな借金は無いと思い込みました。要件2です。そのうえで保証契約を結びました。要件3です。分かれ目は、要件4です。Aが知るべきなのは、Bのほかの借金そのものではなく、BがそれをCに伝えていないことです。A銀行がそれを知っていたか、知ることができたなら、Cは取り消せます。例えば、BがCに保証を頼む席にA銀行の担当者もいて、Bがほかの借金に触れないのを見ていたなら、知っていた場合です。知りようがなかったなら、取り消せません。例は、こちらの説明です。2段目の答えも出ました。
柱2——3つの情報提供義務を1枚にする
図:3つの情報提供義務の表
- 縦=465条の10/458条の2/458条の3
- 横=誰が・誰に・いつ・保証人は個人だけか・怠ると
- 465条の10=主債務者が・委託を受ける者に・保証を委託するとき(契約の前)・個人だけ・保証人が取り消せる(要件あり)
- 458条の2=債権者が・委託を受けた保証人に・保証の後で請求があったとき・個人でも法人でも・効果は条文に無い
- 458条の3=債権者が・保証人に・主債務者が期限の利益を失ったとき(知った時から2箇月以内)・個人だけ・喪失時から通知までの遅延損害金を請求できない
- 札=条文
3つの情報提供義務を、1枚にします。465条の10は、主債務者が、委託を受ける者に、保証を委託するときに果たします。契約の前です。守られるのは個人だけで、怠ると、保証人が取り消せます。残りの2つは、保証人の抗弁を見た回の条文です。458条の2は、債権者が、委託を受けた保証人から請求があったときに、主債務の不履行の有無、残額、弁済期が来ている額を答える義務です。個人でも法人でも構いません。違反の効果は、条文にありません。458条の3は、主債務者が期限の利益を失ったときの義務です。期限の利益は、期限まで払わなくてよいという利益で、失うと、残りの全額をすぐ払う義務が生じ、遅延損害金が付き始めます。債権者は、それを知った時から2箇月以内に、保証人に知らせます。個人の保証人だけで、怠れば、喪失した時から通知までの遅延損害金を請求できません。458条の2は聞かれたら答える義務、458条の3は聞かれなくても知らせる義務、と言えます。並べると、契約の前は主債務者のBが、契約の後は債権者のAが、義務を負います。どちらも、保証人が自分では状況を知りにくいために置かれた義務です。こちらの説明です。
柱3——保証人を守る仕組みの総まとめ
図:保証人を守る仕組みの表。縦=書面/極度額/公正証書/主債務者の情報提供/債権者の情報提供。列=条文・どの保証に効くか・欠けたとき。書面=446条2項・すべての保証契約・効力を生じない。極度額=465条の2・個人の根保証・効力を生じない。公正証書=465条の6から465条の9・事業のために負担した貸金等債務の個人保証(経営者などは除く)・効力を生じない。主債務者の情報提供=465条の10・事業のための債務の保証を頼まれた個人・誤認して契約し、債権者が知り又は知ることができたとき取り消せる。債権者の情報提供=458条の2・458条の3・契約の後・458条の3は通知までの遅延損害金を請求できない。
3つめの柱です。保証人を守る仕組みを、1枚に並べます。書面は、446条の2項で、すべての保証契約に効き、欠ければ効力を生じません。極度額は、465条の2で、個人の根保証に効き、欠ければ効力を生じません。公正証書は、465条の6から465条の9で、事業のために負担した貸金等債務の個人保証に効き、経営者などは除かれます。欠ければ効力を生じません。主債務者の側からの情報提供は、465条の10により、事業のための債務の保証を頼まれた個人に効き、誤認して契約した場合で、債権者が知り、または知ることができたときに、取り消せます。債権者の情報提供は、458条の2と458条の3で、契約の後に効きます。読み方のコツです。時の順に見ます。契約の前に、公正証書と主債務者の情報提供。契約のときに、書面と極度額。契約の後に、債権者の情報提供。これは、こちらの説明です。誰の、どんな保証に効くかが、全部違います。ですから事例では、まず、その保証が、事業のためか、貸金等か、根保証か、個人か、を順に確かめます。
柱3——どの仕組みが当たるか。弁別の事例
図:弁別の事例の板
- Q1 B社の運転資金の借入れを、社長の友人の個人CがB社に頼まれて上限を決めず継続して保証
- Q2 同じ保証を保証会社(法人)がする
- Q3 個人事業主Bが借りる事務所の賃貸借の賃料を、友人CがBに頼まれて上限なしで保証
- Q4 Cが保証債務を全額払った
- AがBの家に持っていた抵当権は
- Q5 事業が傾いたBが、借金を残したまま自宅を親族に譲った
- Aは
事例で、使い分けを確かめます。答えは、そのつど言います。Q1です。B社が事業の運転資金を継続して借り入れます。社長の友人の個人Cが、B社に頼まれて、上限を決めず、その全体を保証します。どの仕組みが要るでしょうか?Q1で要るのは、極度額と公正証書の両方です。そして、もう1つあります。極度額は、個人の根保証だからです。公正証書は、事業のための貸金等債務を含み、保証人が個人で、友人は例外に当たらないからです。さらに、Cは頼まれて保証するので、B社の情報提供義務もあります。3つとも当たります。Q2です。同じ保証を、保証会社という法人がする場合は、極度額も、公正証書も、情報提供も、要りません。公正証書と情報提供は、保証人が法人なら適用しない、という規定があるからです。極度額は、個人の根保証だけが対象だからです。Q3です。個人事業主のBが借りる事務所の賃貸借の賃料を、友人CがBに頼まれて、上限なしで保証します。極度額、公正証書、主債務者の情報提供のうち、要るのはどれでしょうか?
極度額が要るのは、個人の根保証だからです。公正証書が要らないのは、賃料が貸金等債務でないからです。主債務者の情報提供が要るのは、事務所の賃料が事業のために負担する債務で、Cは頼まれているからです。柱1と柱2の射程の違いが、ここに出ます。ここから2問は、ほかのブロックと混ぜます。Q4です。Cが、保証債務を全額払いました。Aは、Bの家に抵当権を持っていました。Cが、払ったお金をBから取り戻すために使える仕組みは、何でしょうか?弁済による代位です。その回で見たとおり、Aの債権と抵当権は、弁済で消えずに、払ったCへ移ります。Cは、Bの家の抵当権を実行し、売れた代金から、立て替えた分を回収できます。払った人が本当に欲しいのは、立て替えたお金を取り戻すことです。債権者の債権と担保は、それを確実にするための道具として、移ってきます。ですから、使えるのは、取り戻す額の範囲までです。Q5です。事業が傾いたBが、借金を残したまま、自宅を親族に譲りました。保証人のCがいる場合でも、Aは、この譲渡に対して何かできるでしょうか?
Aは、要件を満たせば、詐害行為取消権を使えます。債務者が財産を減らす行為をしたとき、債権者は、裁判所にその取消しを請求できる、という権利でした。保証人がいることと、Bの財産を守る手段は、別です。保証人がいても、借りたのはBで、Bの財産がAの回収の元手であることは変わりません。Bの責任財産、つまり債権者が強制執行できるBの財産が減るのを防ぐ手段は、保証とは別に、取消権として用意されています。
柱3——債権総論の地図を引き直す
図:第4章の地図の引き直し
- 目的=債権の中身と種類が言える/効力=履行されないとき何ができるかが言える/移転=債権債務を他人に渡せるかが言える/消滅=債権がどうやって終わるかが言える/保全=債務者が財産を減らしたとき債権者に何ができるかが言える/多数当事者と保証=当事者が複数いるとき、保証人がいるときの扱いが言える
- 保証ブロックは、この最後の段で、保証人を守る仕組みまで届いた
第4章の最終回なので、地図を引き直します。第4章の地図は、6つの言葉でした。目的、効力、移転、消滅、保全、多数当事者と保証です。目的で、債権の中身と種類を学びました。何を請求できる権利なのかが、言えます。効力で、債務者が履行しないとき、債権者に何ができるかを学びました。履行の強制や損害賠償です。移転で、債権や債務を、他人に渡せるかを学びました。消滅で、弁済をはじめ、債権がどうやって終わるかを学びました。保全で、債務者が財産を減らすとき、債権者が使える、代位権や取消権を学びました。そして多数当事者と保証で、当事者が複数いる場合と、保証人がいる場合を学び、最後に、今日の保証人を守る仕組みまで来ました。債権は、人に対する権利で、その回収を、あの手この手で確かにする。この章は、そういう章でした。
冒頭の問いに戻る——まとめ
図:冒頭の設例の関係図
- 答え
- A 債権者(銀行)、B 主債務者(個人で工務店を営む人)、C 保証人(Bの友人)。1段目=契約の前1箇月以内にCが公証人の前で意思を述べた公正証書が無ければ、保証契約は効力を生じない(465条の6)。2段目=公正証書があっても、Bが他の借金を黙っていたため、Cが誤認して契約し、Bが黙っていたことをAが知り又は知ることができたなら、Cは取り消せる(465条の10第2項)。
冒頭の問いに戻ります。Cは、2,000万円を払わなければならないか。1段目、公正証書が無ければ、Cの保証契約は効力を生じません。友人のCは、経営者などの例外に当たらないからです。2段目、公正証書があっても、Bがほかの借金を黙っていたため、Cが思い違いをして契約し、Bが黙っていたことをAが知り、または知ることができたなら、Cは取り消せます。守りは、別々に、2段あります。
図:今日のまとめ
- 3つの柱=1 事業のために負担した貸金等債務を個人が保証するときは、契約の前1箇月以内の公正証書が無ければ無効(経営者などは例外)/2 主債務者は保証を頼むとき情報を提供する
- 怠ったために保証人が誤認して契約し、債権者が知り又は知ることができたなら、保証人は取り消せる/3 保証人を守る仕組みは、契約の前・時・後に重なっている
3つの柱で整理します。1つめ、事業のために負担した貸金等債務を個人が保証するときは、契約の前の1箇月以内に作った公正証書が無ければ無効です。経営者などは例外です。2つめ、主債務者は、保証を頼むとき、財産やほかの借金の状況を知らせます。怠ったために保証人が誤認して契約し、主債務者が知らせなかったことを債権者が知り、または知ることができたなら、保証人は取り消せます。3つめ、保証人を守る仕組みは、契約の前、契約のとき、契約の後に、重なっています。
参照条文
- 民法465条の6
- 民法465条の8
- 民法465条の9
- 民法465条の10