帰責事由と履行補助者
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第4章 債権総論 #158/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
運送業者が壊したら、誰の責任か
図:冒頭の関係図
- 買主A・売主B(中古カメラ店)・運送業者F
- AはBから中古カメラ「この1台」を10万円で買い、代金も払った
- Bは「約束の日にお宅までお届けします」と約束し、配送をFに頼んだ
- Fの運転手がわき見運転で事故を起こし、荷物のカメラが壊れ、約束の日にAの手元に届かなかった
- AとFの間に線は無い(契約が無い)
- 問い=Aに対して責任を負うのはBかFか
Aさんが、Bさんの中古カメラ店で、この1台を10万円で買いました。代金も払い済みです。Bさんは、約束の日にお宅までお届けします、と約束して、配送を運送業者のFに頼みました。ところが、Fの運転手がわき見運転で事故を起こし、荷物のカメラが壊れました。約束の日に、カメラはAさんの手元に届きませんでした。実際に壊した側が責任を負う、という感覚は、日常では自然です。ただ、答案でそう書くと、外れます。今日の問いは、Aさんに対して責任を負うのは、BさんかFか、です。答えは最後に出します。手がかりは、Aさんと契約を結んだのは誰か、という一点です。
履行遅滞の要件6つ、今日は6つめ
図:履行遅滞の要件6つの板
- ①履行期に履行が可能②履行期を経過した(①②で履行遅滞といえる)③損害が発生した④遅滞と損害に因果関係がある⑤遅滞が違法である(正当化する事由がない。同時履行の抗弁権・留置権があれば違法でない)⑥免責事由(債務者の責めに帰することができない事由)によるのではない(415条1項ただし書・立証は債務者)
- 今日の対象=⑥に印
履行遅滞の要件を、もう一度並べます。1つめ、履行期に履行が可能なこと。2つめ、履行期を過ぎたこと。この2つで、履行遅滞と言えます。3つめは損害、4つめは因果関係、5つめは、遅れを正当にする事情が無いこと。ここまでが、前の2回でした。今日は、6つめ、債務者の責めに帰することができない事由によるのではないこと、です。債務者が、免れる事由を示せないこと、と言い換えられます。前に、免れる主張と立証は債務者の側、と言いました。今日は、その事由の中身を見ます。
415条1項ただし書の物差し
図:物差しの分解板
- 415条1項ただし書を3つに分ける
- 「契約その他の債務の発生原因」(契約なら契約の内容・性質・目的・締結の経緯など)+「取引上の社会通念」→「照らして」→「債務者の責めに帰することができない事由」
- 判断の軸=債務者が契約で何を引き受けたか
まず、条文をもう一度、全文で見ます。
条文民法415条1項
民法第415条第1項 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
注目するのは、ただし書の、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして、という部分です。これが、免れるかどうかを決める物差しです。契約その他の債務の発生原因、というのは、債務が生まれた原因、という意味です。今日の設例のように契約から生まれた債務なら、その契約の内容、有償か無償か、目的、契約に至る経緯など、一切の事情を見ます。そこに、取引の世界の常識、取引上の社会通念を合わせて判断します。まとめると、債務者は、その契約で何を引き受けたのか、という問いです。3つの場面で見ます。AさんとBさんの、この1台です。
図:3つの場面の比較板
- ①約束の日の朝、想定外の大地震でBの店が崩れ、この1台が壊れた→Bが引き受けた範囲の外→通常は免責
- ②Bの不注意で店から火が出て、この1台が焼けた→Bが引き受けた店の管理の範囲の出来事→責任あり
- ③配送の途中でFの運転手のわき見運転の事故で壊れた(冒頭)→配送はBが引き受けた履行の一部→責任あり(後半で扱う)
- 対比行=「約束の日にこの1台を必ずお渡しします」(結果を約束)/「この型の中古カメラを探して、見つかったらお知らせします」(探すことを約束)
1つめ。約束の日の朝、想定外の大地震で、Bさんの店が崩れて、この1台が壊れました。Bさんが引き受けたのは、通常の注意で店を守り、約束の日に渡すことです。想定外の大地震の危険まで、Bさんに負わせる契約とは言えません。この場合は、通常、責めに帰することができない事由と言えて、免れます。2つめ。Bさんの不注意で、店から火が出て、この1台が焼けました。店の管理は、Bさんが引き受けた範囲の中の話です。責めに帰することができない事由とは言えず、責任を負います。3つめが、冒頭の運送事故です。これは、あとで扱います。
「過失があったかどうか」で決めるんじゃないんですか。そこが大事なところです。条文の言葉は、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念、でした。過失の有無だけで決めるのではありません。反対に、結果が出なかったから、一律に責任を負わせる、というのでもありません。契約で何を引き受けたか、を軸に決めます。引き受けの中身で結論が変わる例を、もう1つ。Bさんが、約束の日にこの1台を必ずお渡しします、と約束した場合と、この型の中古カメラを探して、見つかったらお知らせします、と約束した場合です。同じ渡せなかったでも、引き受けた中身が違います。たとえば、手を尽くして探したのに見つからなかった場合。探す約束なら、Bさんは責任を問われにくい。必ず渡す約束なら、手を尽くした、というだけでは免れません。だから、責めに帰することができない事由と言えるかも、変わりえます。
必ず渡す約束をしたからといって、いつでも責任を負う、というわけではありません。大地震のような事情は、その約束でも、別に検討されます。約束の中身は、判断の出発点です。結論を自動で決めるものではありません。
改正前の考え方との違い
図:改正前後の比較板
- 左=改正前(条文ではなく当時の通説の解釈)/右=現行(条文)
- 行①責任の根拠:過失責任主義/契約で引き受けたこと(契約の拘束力)
- 行②帰責事由:債務者の故意・過失、または信義則上これと同視すべき事由/契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断
- 行③履行補助者:補助者の故意・過失を債務者のものと同視できるか/契約の趣旨から判断する中の一要素
次に、2017年の民法改正の前の考え方と比べます。改正の前は、債務者に責任を負わせる根拠を、過失責任主義、つまり、落ち度がなければ責任を負わない、という原則に置くのが、通説でした。帰責事由、つまり責めに帰すべき事由は、債務者の故意、過失、または、信義則上これと同視すべき事由、と考えられていました。信義則上同視する、というのは、他人の落ち度を、債務者自身の落ち度とみなす、という意味です。ここで注意が要ります。この故意、過失、という言い回しは、条文の文言ではなく、当時の通説の解釈です。改正前の415条を、そのまま見ます。
図:改正前の415条の小板
- 平成29年改正前・令和2年3月31日まで
- 前段「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」
- 後段「債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
前段は、債務者が本旨に従った履行をしないときは、債権者は損害の賠償を請求できる、というだけです。責めに帰すべき事由という言葉が出てくるのは、後段、履行ができなくなったとき、の部分だけでした。遅れや不完全履行にも、同じ理屈が当てはまる、と解釈されていたのです。現行法は、これをただし書に置いて、どの類型にも通じる免れる要件にしました。そして、判断の物差しを、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念、と条文に明記しました。責任の根拠は、契約したことに拘束される、という契約の拘束力です。さっきの場面で比べます。大地震のときは、改正前なら、Bさんに落ち度が無いから免れる、と説明しました。今は、大地震の危険は、Bさんが引き受けた範囲の外だから免れる、と説明します。不注意の火事は、改正前は落ち度があるから責任、今は引き受けた店の管理の中だから責任、です。前に金銭債務の回で、落ち度なく焼けたなら賠償を負わない、と短く言いました。今日の物差しで言い直すと、引き受けた範囲の外で焼けたなら、です。
実務が根本から変わった、と言うほどではありません。実務は、もともと契約や社会通念を見て判断してきた面があります。それを条文に書いた面が大きい、とされます。答案の書き方は、はっきりしています。故意、過失の有無ではなく、契約の趣旨と社会通念で判断する、と書くことです。
立証責任は債務者
図:立証責任の対比板
- 債権者が示す=債務の本旨に従った履行がなかったこと(と損害・因果関係)/債務者が示す=不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして責めに帰することができない事由によること
- 参考=不法行為(709条)は被害者が故意・過失を立証
- 例外=金銭債務は不可抗力を抗弁にできない(419条3項)
次は、立証責任です。ただし書は、免れる事由です。責めに帰することができない事由による、と、主張して立証するのは、債務者です。債権者のAさんは、本旨に従った履行が無かったこと、そして損害と因果関係を示せば、入口に立てます。前に見た不法行為では、709条の故意、過失を、被害者が立証するのでした。ここは、逆です。契約で何を引き受けたか、どんな社会通念があったか、そして事故がどう起きたか。これは、債務者の側の事情に近いからです。Fの運転手がどんな運転をしたか、Aさんには知りようがありません。債務者に示させるほうが、公平です。例外が1つあります。前に見た、金銭債務です。お金を払う債務の遅れは、不可抗力があっても、抗弁にできません。419条3項です。ただし書の免れる事由が、金銭債務では働かない、ということです。
履行補助者の行為による不履行
図:冒頭の関係図
- 再掲
- 買主A・売主B・運送業者F。AとBは売買と配送の約束、BとFは運送の契約、Fが荷物のカメラを壊す。AとFの間に線は無い。履行補助者=債務者が自分の債務を履行するために使う第三者(冒頭では運送業者F)。
いよいよ、冒頭の設例です。Bさんが、自分の債務、つまりカメラの引渡しを果たすために使った第三者を、履行補助者と言います。冒頭では、運送業者のFです。改正の前は、こう考えられていました。履行補助者の故意、過失は、信義則上、債務者自身の故意、過失と同視される。つまり、Fの落ち度を、Bさんの落ち度とみなして、Bさんに責任を負わせる、という筋です。現行では、同視という別枠の理論には頼りません。一般の場合と同じく、ただし書の物差しで判断します。契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして、Bさんの責めに帰することができない事由と言えるか。Fの行為は、その判断の中の、1つの事情です。ここで、立ち止まって、考えてください。Bさんは、配送はFに頼んだ、Fがやったことだ、と言いました。これで、Bさんは免れますか?
免れないと思います。Fのせい、というだけでは、Bさんの責めに帰することができない事由とは言えないからです。当てはめます。Bさんは、約束の日にお届けします、と約束し、代金も受け取っています。運送の手配は、Bさんが引き受けた履行の一部です。誰に運ばせるかを決めたのはBさんで、Aさんは口を出せません。Fは、Bさんが約束を果たすための手足です。運送中のFの事故は、通常、Bさんの責めに帰することができない事由とは言えません。Bさんは、責任を負います。Aさんは、代用機代2万円を、Bさんに請求できます。損害と因果関係は、前の回で見た要件です。
Aさん自身は、Fと契約を結んでいません。Aさんと契約したのは、Bさんだけです。FはAさんに、契約上の約束をしていません。民法の中で、AさんがFに直接責任を問うなら、不法行為の筋です。それは、不法行為の章で扱います。なお、運送については、商法に、届け先の人が、運送の契約上の権利を取得する、という特別の規定もあります。BさんがFに責任を問うのは、BさんとFの契約の話で、Aさんとの関係とは別です。もう1つ、変形です。Aさんが、運送は必ずこの業者Fで、と指定して、Bさんがその指示どおりFに任せたとします。この場合は、誰に運ばせるかを決めたのは、Aさんの側です。Bさんが運ぶ業者を選んだ、という点が弱まるので、契約の趣旨次第で、Bさんが免れるかの判断が変わりえます。結論は、一律ではありません。なお、論文では、履行補助者の過失の論点として、ただし書の当てはめの中で処理する筋が、論点になりえます。
履行遅滞の要件まとめ表
図:履行遅滞の要件まとめ表
- ①履行期に履行が可能=履行不能との区別
- ②履行期を経過=412条・期限の定めなしの消費貸借と不法行為は例外
- ③損害の発生=差額説・金銭債務では不問(419条2項)
- ④因果関係=あれなければこれなし・範囲は416条
- ⑤違法である(正当化する事由がない)=同時履行の抗弁権・留置権があれば違法でない・取立債務で債権者が取りに来ない場合も
- ⑥免責事由(責めに帰することができない事由)によるのではない=契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして判断・履行補助者の行為も同じ・立証責任は債務者・金銭債務では不問(419条3項)
- ①②で遅滞と言える
- ③〜⑥で賠償請求権が発生
要件のまとめ表を作る前に、前の回の問いを1問。Aさんが代金を払っていません。Bさんが、代金と引換えでなければ渡さない、と、口にしなくても、遅れの責任を負わないのは、なぜでしょうか?同時履行の抗弁権が付いているだけで、遅れが違法でなくなるからです。行使しなくても、存在効果があります。権利が付いているだけで生じる効果、でした。では、6つを、1枚にまとめます。1つめ、履行期に履行が可能なこと。もう履行できなくなった、履行不能とは、ここで区別します。2つめ、履行期を過ぎたこと。412条で見ました。この2つで、遅滞と言えます。3つめ、損害の発生。差額説、つまり、遅れが無ければあったはずの財産と、今の財産との差です。金銭債務では、損害の証明は要りません。4つめ、因果関係。遅れが無ければ、その損害も無かったか。あれなければこれなし、の関係で、どこまで払わせるかの範囲は、別の問いでした。5つめ、遅れが違法であること。同時履行の抗弁権や留置権があれば、遅れは違法になりません。取立債務、つまり債権者が取りに行く約束なのに、取りに来ないときも、賠償は認められません。Bさんが準備して待っているのに、遅れだとは言えないからです。6つめ、責めに帰することができない事由によるのではないこと。物差しは、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念です。履行補助者の行為による場合も同じです。立証責任は債務者で、金銭債務では、不可抗力も抗弁になりません。
1つめと2つめで遅滞となり、3つめから6つめで、賠償請求権が生まれる、という整理ですね。この表が、履行遅滞の答案の骨格になります。
賠償の種類、遅延賠償と填補賠償
図:賠償の種類の対比板
- 遅延賠償=履行が遅れたことによって生じた損害の賠償(例=代わりのカメラを借りた費用2万円)
- 本来の給付(この1台の引渡し)とあわせて請求できる(414条2項)
- 填補賠償=債務の履行に代わる損害賠償(415条2項)(例=この1台を渡してもらう代わりに10万円相当を払わせる)
- 履行遅滞による賠償は原則として遅延賠償にとどまる
- 填補賠償ができる場面は次の回
要件がそろうと、債権者に、損害賠償請求権が発生します。その賠償には、遅延賠償と、填補賠償があります。遅延賠償は、履行が遅れたことによって生じた損害の賠償です。Bさんが、この1台を、1か月渡さなかったとします。Aさんが代わりのカメラを借りた費用2万円が、遅延賠償です。遅延賠償は、本来の給付、つまり、この1台を渡せ、という請求と、あわせて言えます。414条2項です。
条文民法414条2項
民法第414条第2項 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。
前項とは、前に見た、履行の強制のことです。無理にでも渡させることと、遅れた分の賠償を求めることは、両立します。もう1つが、填補賠償です。債務の履行に代わる損害賠償です。この1台を渡してもらう代わりに、10万円相当を払え、という請求が、これにあたります。これは、条文で、415条2項に置かれています。
条文民法415条2項
民法第415条第2項 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。 一 債務の履行が不能であるとき。 二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
履行遅滞による賠償は、原則として、遅延賠償にとどまります。遅れているだけなら、この1台は、まだ渡せます。Aさんの一言で、いきなり10万円の支払いに切り替わると、Bさんが遅れを取り戻して渡す機会がなくなります。だから、切り替えられる場面を、条文が絞っています。履行に代わる賠償を請求できるのは、この条文が挙げる場面です。その3つの場面の中身は、次の回で扱います。今日は、遅れの賠償は、本来の給付とあわせて請求できる、履行に代わる賠償は、原則できない、と押さえてください。混同しないでください。お金を払う債務の遅れの賠償、遅延損害金は、419条という特則が、額を決めます。実際の損害を示さなくても、法定利率などで計算した額になる、という特則でした。ここで言う遅延賠償は、債務不履行一般の話です。
金銭賠償の原則
図:417条の板
- 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める
- 壊れたカメラを元に戻せ(原状回復)は不便
- 当事者の合意があれば別の方法も可
- 設例の2万円・10万円相当はすべて金銭で算定する
最後に、賠償の方法です。417条です。
条文民法417条
民法第417条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
損害賠償は、金銭で額を決めるのが原則です。壊れたカメラを元に戻せ、という賠償は、不便です。そのため、原則を金銭にしています。別段の意思表示とは、金銭以外の方法にする、という当事者の合意です。壊れたら、同じ型の別の1台で返す、と約束しておくような場合です。それがあれば、別の方法も可能です。今日のAさんの2万円も、10万円相当も、すべて金銭で算定します。
冒頭の答えと、まとめ
図:まとめ板
- 冒頭の答え=責任を負うのはB
- 理由=①ただし書の物差しは契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念②履行補助者の行為は同視ではなく契約の趣旨から判断③免れる立証は債務者
- 改正前後=過失の有無→契約で引き受けたこと
- 賠償の種類=遅延賠償(本来の給付とあわせて請求可)/填補賠償(原則不可・次の回)
- 金銭賠償が原則(417条)
冒頭の答えを、言い切ります。Aさんに対して責任を負うのは、Bさんです。Aさんと契約したのは、Bさんだけで、FはAさんに契約上の約束をしていません。Bさんは、配送をFに頼んだ、と言うだけでは免れません。Fの行為を含めて、契約の趣旨に照らして、Bさんの責めに帰することができない事由と言えるかを判断します。配送を約束して、代金も受け取ったBさんが、運送業者のわき見運転で届けられなかった場合は、通常、これにあたりません。免れると言える事情の立証は、Bさんの側です。整理します。6つめの要件は、責めに帰することができない事由によるのではないこと。物差しは、契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念で、債務者が契約で何を引き受けたかを軸にします。改正前の、故意、過失の有無から、契約の趣旨へ、という違いでした。
補助者の過失を債務者の過失とみなす、という筋ではなく、契約の趣旨から判断します。賠償には、遅れの損害の遅延賠償と、履行に代わる填補賠償があり、遅延賠償は、本来の給付とあわせて請求できます。賠償は、金銭で額を定めるのが原則です。次の回は、填補賠償ができる場面、履行不能を見ます。
参照条文
- 民法415条1項
- 民法414条2項
- 民法415条2項
- 民法417条