民法ゼロから民法#235

危険負担の履行拒絶権と危険の移転

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第5章 契約 #235/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

引渡しの前に家が焼けた。代金は払うのか

冒頭の設例の関係図。A(売主)は中古の一戸建てをB(買主)に3,000万円で売った。引渡し(鍵と書類の受け渡し)は5月10日。代金は引渡しのあとに払う約束。AとBの間にあるのは、家の引渡しと、代金3,000万円。5月9日の夜、もらい火で家が全焼した。 図:冒頭の設例の関係図

  • A(売主)は中古の一戸建てをB(買主)に3,000万円で売った
  • 引渡し(鍵と書類の受け渡し)は5月10日
  • 代金は引渡しのあとに払う約束
  • AとBの間にあるのは、家の引渡しと、代金3,000万円
  • 5月9日の夜、もらい火で家が全焼した

先に、答えの方向を言います。Bは、払わなくてよいです。ただし、払わなくてよい、とは、どういう意味なのか。契約はどうなるのか。もしBが、代金を先に払っていたら、返してもらえるのか。そして、鍵を受け取ったあとに焼けていたら、同じ答えになるのか。今日は、ここまで見ます。隣の家への責任追及は、また別の話です。今日は扱いません。

今日の位置と、3つの話

今日の地図。位置=前の3回は、どちらの債務も果たせるときの、出す順番の話(同時履行の抗弁権)。今日は、一方がもう果たせなくなったとき、もう一方はどうなるか。1=払わなくてよい(536条1項)。2=消えるのではなく、拒める(改正・解除との関係・すでに払っていたら)。3=引渡しの後は買主が負う(567条1項)。根拠の札=条文/学説/こちらの説明。 図:今日の地図

  • 位置=前の3回は、どちらの債務も果たせるときの、出す順番の話(同時履行の抗弁権)
  • 今日は、一方がもう果たせなくなったとき、もう一方はどうなるか
  • 1=払わなくてよい(536条1項)
  • 2=消えるのではなく、拒める(改正・解除との関係・すでに払っていたら)
  • 3=引渡しの後は買主が負う(567条1項)
  • 根拠の札=条文/学説/こちらの説明

位置づけです。前の3回は、同時履行の抗弁権でした。相手が自分の債務を果たすまで、自分の債務の履行を拒める権利です。どれも、2つの債務が、どちらも果たせる状態で、どちらが先に出すか、という話でした。今日は、その前提が崩れます。一方が、もう果たせなくなった。そのとき、もう一方の債務はどうなるのか。これが今日の問いです。話は3つです。1つめ、払わなくてよい。536条1項です。2つめ、払わなくてよい、といっても、代金の債務は消えるのではなく、拒めるだけだ、という話です。改正の前と後の違い、解除との関係、すでに払っていたらどうなるか、までを見ます。3つめ、引渡しのあとに焼けたら、買主が負う。567条1項です。根拠のふだを、貼るように言い分けます。条文は、法律に書いてあること。学説は、学者が説明している考え方です。こちらの説明は、この動画が理解のために整理したことです。もう1つ、改正にかかわる説明は、改正を審議した法制審議会の資料に書かれていることとして、紹介します。

判断のものさし

判断のものさし。向き合っていた2つの債務のうち、片方がもう果たせないとき、残る片方を、誰の負担で、どこまで残すか。札=こちらの説明。 図:判断のものさし

  • 向き合っていた2つの債務のうち、片方がもう果たせないとき、残る片方を、誰の負担で、どこまで残すか
  • 札=こちらの説明

今日も、ものさしを先に1つ渡します。向き合っていた2つの債務のうち、片方がもう果たせないとき、残る片方を、誰の負担で、どこまで残すか。これです。こちらの説明のふだです。前に、牽連関係という言葉を見ました。一方の債務があるから、他方の債務がある、という結び付きです。売買なら、家を渡す債務があるから、代金を払う債務がある。この結び付きが顔を出す場面は、2つありました。1つは、どちらも果たせるときの、出す順番の場面で、これが同時履行です。もう1つが、片方が果たせなくなった場面です。今日は、この後者を開けます。家を渡す債務がなくなったのに、代金を払う債務だけが、そのまま残るのは、おかしい気がします。しかし、全部が自動で消える、というのも、また別の問題を生みます。この、どこまで残すか、という加減を、条文がどう決めているか。それを見ていきます。

家が焼けたとき、買主にできること

整理図。家が焼けて渡せない(履行不能)。買主Bにできること・できないこと。引渡しを請求する=できない(412条の2第1項)。損害賠償を請求する=できない(売主に責めがないので・415条1項ただし書)。契約を解除する=できる(542条1項1号)。代金を払う=?(今日の中心)。 図:整理図

  • 家が焼けて渡せない(履行不能)
  • 買主Bにできること・できないこと
  • 引渡しを請求する=できない(412条の2第1項)
  • 損害賠償を請求する=できない(売主に責めがないので・415条1項ただし書)
  • 契約を解除する=できる(542条1項1号)
  • 代金を払う=?(今日の中心)

まず、家が焼けて渡せない、という状況を整理します。これは、履行不能です。履行不能は、契約その他の債務の発生原因と、取引上の社会通念に照らして、不能かどうかで決まりました。今回は、物理的に全焼していて、疑いなく不能です。このとき、買主のBは、何ができて、何ができないか。1つめ。引渡しを請求することは、できません。不能なものは請求できない、と412条の2第1項に書いてあります。2つめ。損害賠償も、できません。売主のAに責めがないからです。415条1項のただし書です。3つめ。契約の解除は、できます。542条1項1号で、これは、あとで条文を読みます。そこで、残る問いが4つめです。代金は、どうなるのか。焼けた物の保険金などを買主に回す、代償請求の回で、代金をどうするかは第5章で見る、と言いました。その話を、ここから見ます。代金はどうなるのか、というこの問いが、危険負担と呼ばれる問題です。

危険負担の定義。双務契約の一方の債務が、債務者の責めに帰することができない事由で不能になったとき、反対の債務の履行を拒めるか、という問題。危険=不能になる不利益。負担=それを誰が負うか。拒めるなら売主が負う。拒めないなら買主が負う。 図:危険負担の定義

  • 双務契約の一方の債務が、債務者の責めに帰することができない事由で不能になったとき、反対の債務の履行を拒めるか、という問題
  • 危険=不能になる不利益
  • 負担=それを誰が負うか
  • 拒めるなら売主が負う
  • 拒めないなら買主が負う

危険とは、不能になる不利益のことです。負担とは、それを誰が負うか、ということです。定義を言います。危険負担とは、双務契約の一方の債務が、債務者の責めに帰することができない事由で不能になったとき、反対の債務の履行を拒めるか、という問題です。拒めるなら、不利益は売主が負う。拒めないなら、買主が負う。こちらの説明のふだで、そう読んでください。責めに帰することができない事由とは、契約や取引の常識に照らして、売主が引き受けた範囲の外にある出来事のことです。もらい火は、まさにそうです。隣家の火事まで、売主が引き受けて売っているわけではありません。ですから、この設例は、双方の責めに帰することができない事由で、家が不能になった場面です。

536条1項を読む

536条1項の入口。要件=当事者双方の責めに帰することができない事由によって、債務を履行することができなくなった。効果=債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。 図:536条1項の入口

  • 要件=当事者双方の責めに帰することができない事由によって、債務を履行することができなくなった
  • 効果=債権者は、反対給付の履行を拒むことができる

条文を読みます。536条です。受領遅滞の回で、一度読んだ条文です。2項は、債権者に責めがある場合の規定です。あの回で見た、買主が受け取らない間に焼けた場合は、この2項につながる話でした。今日は、1項の本体を開けます。

条文民法536条1項

民法第536条第1項 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

要件は2つです。1つめ、当事者双方の責めに帰することができない事由であること。2つめ、債務を履行することができなくなったこと、つまり不能です。効果は、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる、です。

読み方の図。A(売主)とB(買主)。不能になったのは「家を渡す債務」。この債務の債権者=B(買主)。債務者=A(売主)。反対給付=代金の支払。BがAに対して、代金の支払を拒む。 図:読み方の図

  • A(売主)とB(買主)
  • 不能になったのは「家を渡す債務」
  • この債務の債権者=B(買主)
  • 債務者=A(売主)
  • 反対給付=代金の支払
  • BがAに対して、代金の支払を拒む

536条1項の、債権者という言葉を、誰と読むか。ここが、一番の落とし穴です。この条文の債権者と債務者は、不能になった債務を基準に読みます。代金を受け取る人、と読むと、逆になります。今回、不能になったのは、家を渡す債務です。その債務の債権者は、家を受け取る権利を持つ人、つまり買主のBです。債務者は、家を渡す義務を負う、売主のAです。そして、反対給付とは、その債務と向き合っている相手方の債務で、ここでは、代金の支払です。読み替えると、こうなります。家が双方の落ち度なく焼けて渡せなくなったときは、買主は、代金の支払を拒むことができる。冒頭の答えの方向と、つながりました。名前を確かめます。この、拒む権利を、履行拒絶権と呼びます。受領遅滞の回で、一度出した名前です。415条2項2号にも、履行の拒絶という言葉がありましたが、向きが逆です。あちらは、債務者、つまり売主が、渡さない、とはっきり言う場面で、買主が、渡す代わりの賠償、つまり填補賠償を求められる、という話でした。こちらは、買主が、代金を拒む側です。混ぜないでください。また、危険を債務者、つまり売主が負う、という発想を、債務者主義と呼びます。学説の呼び名です。

同時履行との分け目

前の回の確認。同時履行の抗弁権を主張すると、裁判所はどんな形の判決を出すのか。 図:前の回の確認。同時履行の抗弁権を主張すると、裁判所はどんな形の判決を出すのか。

ここで、前の回の復習を1つ。同時履行の抗弁権を主張すると、裁判所は、どんな形の判決を出すのでしたか?

分け目の表。同時履行の抗弁権(533条)=相手の債務がまだ果たせるのに、果たされていない場面。判決=引換給付判決。536条1項の履行拒絶権=相手の債務がもう果たせなくなった場面。判決=請求棄却。 図:分け目の表

  • 同時履行の抗弁権(533条)=相手の債務がまだ果たせるのに、果たされていない場面
  • 判決=引換給付判決
  • 536条1項の履行拒絶権=相手の債務がもう果たせなくなった場面
  • 判決=請求棄却

引換給付判決です。相手が履行するのと引換えに、こちらも履行しなさい、という判決でした。では、今日の536条1項は、どう違うか。Aが代金を請求してきたら、Bは、家が焼けたので払わない、と言えばよいのです。訴訟になっても、同時履行のように、引換えの判決は出ません。渡すものが、もう無いからです。請求は、棄却されます。審議の資料にも、そう整理されています。分け目は、相手の債務が、まだ果たせるかどうかです。果たせるのに、まだ果たされていないなら、同時履行の抗弁権で、引換え。果たせなくなったなら、536条1項で、請求棄却です。前に見た牽連関係の、果たす場面と、果たせなくなった場面の、2つの現れ方です。こちらの説明のふだです。確認の問いです。焼けて渡せない家について、同時履行の抗弁権ではなく、536条1項が出てくるのは、なぜでしょうか?

同時履行は、相手の債務がまだ果たせる場面の話だからです。もう果たせないなら、536条1項になります。

旧法では、代金は消え、特定物は買主の負担だった

改正前の民法(2020年3月31日まで)その1。旧536条1項=前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。意味=反対の債務が、当然に消える(債務消滅)。 図:改正前の民法

  • 2020年3月31日まで
  • その1。旧536条1項=前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。意味=反対の債務が、当然に消える(債務消滅)。

ここから、2つめの話です。まず、改正の前の法律を見ます。2020年の3月31日までの民法です。現行と取り違える出題があるので、短答では大事です。旧536条1項は、こう書いていました。前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。債務者が、反対給付を受ける権利を持たない。つまり、売主は代金を請求する権利を失う。代金の債務が、当然に消える、という作りでした。債務消滅構成と呼ばれます。冒頭の、前二条に規定する場合を除き、という断りは、すぐあとで効いてきます。

改正前の民法(2020年3月31日まで)その2。旧534条1項=特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。意味=特定物の売買では、契約の時から、買主が危険を負う(債権者主義)。 図:改正前の民法

  • 2020年3月31日まで
  • その2。旧534条1項=特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。意味=特定物の売買では、契約の時から、買主が危険を負う(債権者主義)。

ところが、特定物には、別の条文がありました。旧534条1項です。特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。特定物とは、世界に1つしかない物、中古の一戸建てのような物です。その売買では、契約を結んだ時から、物が焼けた不利益は、債権者、つまり買主の負担とされました。買主は、家が燃えても、代金を全額払わなければならない。危険を債権者が負うので、債権者主義と呼びます。種類物のように、物がまだ決まっていない契約でも、旧534条2項で、特定した時から、同じ扱いになりました。旧法には、ほかに、旧535条という、停止条件のついた契約の特則もありました。旧536条1項が、前二条に規定する場合を除き、と断っていたのは、このためです。

冒頭の設例を旧法に当てはめる。改正前の民法(2020年3月31日まで)。家=中古の一戸建て=特定物。旧534条1項=契約の時から、買主が危険を負う。結論=Bは、3,000万円を払う。 図:冒頭の設例を旧法に当てはめる

  • 改正前の民法(2020年3月31日まで)
  • 家=中古の一戸建て=特定物
  • 旧534条1項=契約の時から、買主が危険を負う
  • 結論=Bは、3,000万円を払う

冒頭の家は、特定物に当たります。契約を結んだ時から危険は買主にあります。ですから、旧法では、Bは、3,000万円の代金を払う、になります。家が焼けて、手元に何も残らないのに、です。現行法は、反対です。ここが、短答の罠です。特定物の売買では、危険は契約の時から買主に移る、という記述は、旧法の記述です。現行法で、そのまま正しいと書かれていたら、誤りの方向です。

改正の理由——なぜ、拒める権利になったのか

現行の民法536条1項。当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。旧534条は削除された。代金債務は消えず、買主が拒める(履行拒絶権構成)。 図:現行の民法536条1項

  • 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる
  • 旧534条は削除された
  • 代金債務は消えず、買主が拒める(履行拒絶権構成)

現行法は、2つの点で変わりました。1つめ、旧534条の債権者主義が、削除されました。2つめ、536条1項が、債務が消える、という作りから、買主が拒める、という作りに変わりました。履行拒絶権構成と呼びます。2017年の改正で、2020年4月に施行されました。理由を、審議の資料の説明で言います。まず、旧534条について。起草者の考え方は、こうでした。値上がりした利益を買主が受けるなら、値下がりや滅失の不利益も、買主が負う。しかし、今の通常の意思は、物の引渡しなど、何かの支配を得る前に滅失したなら、代金は払わない、というものだ。形式的に当てはめると、二重売買などで、売主が代金を二重に受け取るような、不都合も出る。そこで削除された、と説明されています。こちらの説明のふだで補うと、同じ家を2人に売っていた売主は、家が焼けると、2人の買主の両方から、代金を受け取れることになってしまう、ということです。

536条1項を作り替えた理由(審議の資料の説明)。解除の要件が変わった=債務者に落ち度がなくても、債権者は契約を解除できる。旧法のまま=自動で債務が消える危険負担と、意思表示で消す解除が重なる。そこで、危険負担は、債務を消さず、履行を拒める権利に改めた。 図:536条1項を作り替えた理由

  • 審議の資料の説明
  • 解除の要件が変わった=債務者に落ち度がなくても、債権者は契約を解除できる。旧法のまま=自動で債務が消える危険負担と、意思表示で消す解除が重なる。そこで、危険負担は、債務を消さず、履行を拒める権利に改めた。

次に、536条1項の作り替えです。審議の資料には、こう説明されています。改正で、解除の要件が変わった。債務者に落ち度がなくても、債権者は契約を解除できるようになった。旧法のままだと、自動で債務が消える危険負担と、意思表示で債務を消す解除が、重なってしまう。そこで、危険負担は、債務を消すのではなく、履行を拒める権利に改めた。

重なりの図。消える作りのままなら=危険負担(自動で消える)と解除(意思表示で消す)が重なってしまう。現行=危険負担は拒めるだけ。消すなら解除。 図:重なりの図

  • 消える作りのままなら=危険負担(自動で消える)と解除(意思表示で消す)が重なってしまう
  • 現行=危険負担は拒めるだけ
  • 消すなら解除

重なる、とはどういうことか、冒頭の家で言い直します。もし、536条1項が、消える、という作りのままだったら、家が焼けた時点で、代金の債務は自動で消えます。そのうえ、Bは解除もできて、解除しても、代金の債務は消えます。同じ結果にたどり着く道が、2本並んでしまうのです。何が困るのかは、審議の資料が、制度間の不整合、と呼んでいます。2つの制度が重複する、という意味です。買主は、解除の意思表示で代金の債務を消せる、としながら、その代金の債務は、危険負担で、すでに自動的に消えている、という形になるからです。そこで、現行の整理はこうです。代金の債務は、焼けても消えません。買主は、払わない、と言えるだけです。債務を確定的に消したいなら、解除をする。その解除の条文を、読みます。542条1項です。債務の全部が不能のときは、催告をしなくても、直ちに解除できる、と定めています。541条の催告解除と、543条の、債権者に責めがある場合の例外は、別の回で扱います。

条文民法542条1項1号

民法第542条第1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 一 債務の全部の履行が不能であるとき。

1号を読みます。債務の全部の履行が不能であるとき。直ちに解除できます。注意してほしいのは、債務者の落ち度を、要件にしていないことです。売主に責めがなくても、買主は解除できます。2号以下は、別の回で扱います。

拒むか、解除するか——使い分けの3場面

危険負担と解除。不能 → ①払わないと言う(契約は続く・代金債務は残る)。②解除する(契約が終わる・債務が消える・意思表示が要る=540条1項)。 図:危険負担と解除

  • 不能 → ①払わないと言う(契約は続く・代金債務は残る)
  • ②解除する(契約が終わる・債務が消える・意思表示が要る=540条1項)

結論です。代金の債務は、存続します。拒むだけなら、請求されたときに、払わない、と言えばよい。契約は続きます。債務を確定的に消したいなら、解除をします。解除は、相手方に対する意思表示でします。540条1項です。なお、損害賠償は、売主に責めがないので、請求できないままです。415条1項ただし書。先ほど見たとおりです。

使い分けの3場面。1=解除は意思表示が要る。拒絶は請求されたとき払わないと言えばよい。2=毎月1本、1年間。代わりのない古いワイン12本の契約。3か月目の1本だけ渡せない。3=兄弟2人の共同購入。解除は全員で。拒絶は各自で。 図:使い分けの3場面

  • 1=解除は意思表示が要る
  • 拒絶は請求されたとき払わないと言えばよい
  • 2=毎月1本、1年間
  • 代わりのない古いワイン12本の契約
  • 3か月目の1本だけ渡せない
  • 3=兄弟2人の共同購入
  • 解除は全員で
  • 拒絶は各自で

場面を3つ、並べます。1つめ。解除は意思表示が要りますが、拒絶は、請求されたときに、払わない、と言えば足ります。手間が違います。2つめ。ここだけ、AとBの事案を変えます。Aは酒屋、Bは飲食店。Aの店に1本ずつしか残っていない、年代の違う古いワイン12本を、毎月1本ずつ、1年間で引き渡す契約です。どれも、代わりのない1本です。3か月目に渡すはずの1本だけが、蔵の浸水で、だめになりました。Bは、この先の9本は、ほしい。契約全体を解除してしまうと、それも失います。不能になった部分だけを解除する、一部の解除も、542条2項にありますが、これも意思表示が要ります。解除せずに、3か月目の1本分の代金だけ、払わない、と言えます。契約は続けたまま、不能になった分だけを拒めるのが、拒絶権の使い勝手です。

場面3の設例。兄のBと弟のCが、2人で、Aから中古の船を買った。船が、双方の落ち度なく沈んだ。Cは連絡が取れない。解除は全員で(544条)。拒絶は各自で。 図:場面3の設例

  • 兄のBと弟のCが、2人で、Aから中古の船を買った
  • 船が、双方の落ち度なく沈んだ
  • Cは連絡が取れない
  • 解除は全員で(544条)
  • 拒絶は各自で

3つめ。ここでも、設例を変えます。兄のBと弟のCが、2人で、Aから中古の船を買いました。船が、双方の落ち度なく沈みました。Cは連絡が取れません。解除は、買主が複数いるときは、全員でしなければなりません。544条です。しかし、拒絶なら、各自が、自分の払う分を拒めます。Bは、Cを待たずに、自分の分の代金を、払わない、と言えます。この3場面は、いずれも、解除が使えないわけではありません。拒むだけで足りるときは拒み、契約を終わらせたいときは解除する。使い分けられる、ということです。こちらの説明のふだです。

すでに代金を払っていたら

新しい問い。冒頭の設例を少し変える。Bは、契約の日に、代金3,000万円を全額払っていた。引渡しの前の晩に、家が焼けた。問い=536条1項の「拒む」は使えるか。 図:新しい問い

  • 冒頭の設例を少し変える
  • Bは、契約の日に、代金3,000万円を全額払っていた
  • 引渡しの前の晩に、家が焼けた
  • 問い=536条1項の「拒む」は使えるか

新しい問いです。冒頭の設例を、少し変えます。Bは、契約の日に、代金3,000万円を、全額払っていました。そして、引渡しの前の晩に、家が焼けました。Bは、払った3,000万円を、返してもらえるのでしょうか。その前に、確認です。Bが代金を先に払っていた場合、536条1項の、拒む、は使えますか?

既払いの流れ。契約の日に代金を払う → 引渡しの前に焼失 → 536条1項は返還を定めていない → 解除する(542条1項1号)→ 545条1項で原状回復(代金の返還)。 図:既払いの流れ

使えない、と思います。拒むというのは、これから払うものを払わない、ということです。もう払ってしまっているので、拒む相手の債務が、残っていません。536条1項は、拒める、と言うだけで、払った分の返還については、何も定めていません。では、どうするか。条文が用意している道は、解除です。542条1項1号で、直ちに解除できる。そして、解除すると、545条1項で、各当事者は、相手方を原状に復させる義務を負います。

条文民法545条1項

民法第545条第1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

原状に復させる、とは、契約がなかった元の状態に戻すことです。Bは家を受け取っていませんから、Aが、受け取った3,000万円を返す。これが、代金の返還です。しかも、542条1項1号は、売主の落ち度を要件にしません。ですから、もらい火でも、解除して返還を求められます。ただし書や、何をどこまで返すかといった中身は、別の回で扱います。

解除しないまま返還を求められるか。条文=解除(542条1項1号)から545条1項で返還。学説=解除しないまま払った代金の返還を求められるという見解も有力。こちらの説明=答案は解除を軸に書く。 図:解除しないまま返還を求められるか

  • 条文=解除(542条1項1号)から545条1項で返還
  • 学説=解除しないまま払った代金の返還を求められるという見解も有力
  • こちらの説明=答案は解除を軸に書く

条文が定めている道は、解除です。ただ、解除をしないまま、払った代金の返還を求められる、という見解も、有力に唱えられています。解除すれば返還を求められるのに、解除しないと求められないのでは、釣り合いが取れない、という理由です。ただし、これは条文に書かれていない考え方です。学説のふだです。答案の書き方としては、解除を軸に書きます。536条1項で拒めない場面だから、542条1項1号で解除し、545条1項で返還を求める。こちらの説明のふだです。

確かめる——消し忘れの火事

事例。Aが暖房の火を消し忘れ、引渡しの前日に家が燃えた。Bは、536条1項で、払わなくてよいか。 図:事例

  • Aが暖房の火を消し忘れ、引渡しの前日に家が燃えた
  • Bは、536条1項で、払わなくてよいか

事例で確かめます。冒頭と同じ家です。ただし、今度は、Aが暖房の火を消し忘れ、引渡しの前日に、家が燃えました。Bは、536条1項で、払わなくてよいでしょうか?

事例の答え。536条1項は使えない(双方の責めに帰することができない事由ではない)。債務不履行の問題。使える道具=損害賠償(415条)・解除(542条)。分け目=誰の責めに帰すべき事由か。 図:事例の答え

  • 536条1項は使えない(双方の責めに帰することができない事由ではない)
  • 債務不履行の問題
  • 使える道具=損害賠償(415条)・解除(542条)
  • 分け目=誰の責めに帰すべき事由か

536条1項は、使えないと思います。条文は、当事者双方の責めに帰することができない事由、と書いています。今回はAに責めがあるので、要件を満たしません。これは、危険負担ではなく、債務不履行の問題です。Aに責めがあるので、損害賠償も請求できますし、解除もできます。損害賠償と解除の本体は、別の回で扱います。分け目は、誰の責めに帰すべき事由か、でした。双方に責めがないなら、危険負担で、536条1項。売主に責めがあるなら、債務不履行。この軸は、あとの事例でも使います。

引渡しのあとに焼けたら——567条1項

新しい問い。5月10日、Bは鍵と書類を受け取った。その翌日、5月11日の夜、もらい火で家が全焼した。Aにも、Bにも、落ち度はない。問い=Bは、3,000万円を払わなければならないか。 図:新しい問い

  • 5月10日、Bは鍵と書類を受け取った
  • その翌日、5月11日の夜、もらい火で家が全焼した
  • Aにも、Bにも、落ち度はない
  • 問い=Bは、3,000万円を払わなければならないか

3つめの話です。新しい問いを出します。5月10日、Bは予定どおり、鍵と書類を受け取りました。その翌日の、5月11日の夜、もらい火で、家が全焼しました。AにもBにも、落ち度はありません。Bは、3,000万円を払わなければならないでしょうか? 条文を読んでから、答えます。

567条1項の入口。売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る)を引き渡した。引渡しがあった時以後に、当事者双方の責めに帰することができない事由で、滅失・損傷した。 図:567条1項の入口

  • 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る)を引き渡した
  • 引渡しがあった時以後に、当事者双方の責めに帰することができない事由で、滅失・損傷した

売買の条文、567条です。この条文も、受領遅滞の回で一度読みました。あの回の中心は2項でした。引渡しの前でも、売主が渡そうとしたのに、買主が受け取らない間に焼けたなら、引渡しのあとと同じ扱いになる、という部分です。今日は、1項の本体を開けます。

条文民法567条1項

民法第567条第1項 売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。

平易に言い直します。売主が、売買の目的として特定した物を、買主に引き渡した。その引渡しのあとで、双方に責めがない事由で、物が滅失したり、傷ついたりした。このとき、買主は、追完の請求、つまり、直したり、代わりの物を渡したりするよう求めることも、代金の減額の請求も、損害賠償の請求も、解除も、できません。そして、代金の支払も、拒めません。先ほどの問いの答えです。Bは、3,000万円を払わなければなりません。引渡しの前なら、拒める。引渡しのあとなら、拒めない。危険が、売主から買主に、引渡しで移ったのです。受領遅滞の回で、危険の移転と呼んだのと、同じ向きの動きです。

引渡しの前と後。危険は誰が負うか。引渡しの前=536条1項(拒める・危険は売主)。引渡しの後=567条1項(拒めない・危険は買主)。 図:引渡しの前と後

  • 危険は誰が負うか
  • 引渡しの前=536条1項(拒める・危険は売主)
  • 引渡しの後=567条1項(拒めない・危険は買主)

呼び名を添えます。危険を債権者、つまり買主が負うので、債権者主義と呼びます。旧534条の債権者主義と、同じ意味です。ただし、旧法は契約の時からでしたが、現行法は、引渡しの時からです。この違いが、短答で問われます。なお、追完や減額、損害賠償、解除、この4つが「できない」と書かれていますが、契約不適合の救済の本体は、別の回で扱います。ここでは、引渡しのあとの滅失では、それらが使えない、という点だけ押さえてください。引渡しで切る理由を、こちらの説明のふだで言います。物を守れるのは、それを手元に置いている人だからです。鍵を持っている人は、火の用心も、戸締まりも、保険を掛けることもできます。引渡しの前は、それができるのは売主です。ですから、売主が負います。引渡しを受けたあとは、それができるのは買主です。ですから、買主が負います。改正の理由のところで見た、支配を得る前に滅失したなら代金は払わない、という通常の意思とも、同じ線です。まとめると、引渡しの前は売主の負担で、買主は拒めるだけ。引渡しのあとは買主の負担で、拒めません。

特定した物と、所有権の移転との区別

かっこ書の「特定した物」。特定物=初めから特定している(この家)。種類物=特定が要る(同じ型の洗濯機が何台もある)。特定の前=1台が焼けても、売主は別の1台を調達して渡す義務が残る。特定していない種類物には、この条文は働かない。 図:かっこ書の「特定した物」

  • 特定物=初めから特定している(この家)
  • 種類物=特定が要る(同じ型の洗濯機が何台もある)
  • 特定の前=1台が焼けても、売主は別の1台を調達して渡す義務が残る
  • 特定していない種類物には、この条文は働かない

567条1項のかっこ書に、特定したものに限る、とありました。特定は、前に見ました。このかっこ書の理由も、受領遅滞の回で一度見ています。特定物は、この家のように、初めから特定しています。種類物は、同じ型の洗濯機が何台もある、という物で、どれを渡すかを決める特定が要ります。特定の前なら、1台が焼けても、売主は、別の1台を調達して渡す義務が残ります。物が尽きていないからです。ですから、危険が移る話にはなりません。かっこ書は、特定していない種類物には、この条文が働かない、という意味です。

所有権の移転との区別。条文の基準=引き渡したかどうか。所有権が移った時とは別。所有権が先に買主に移っていても、引渡しの前の滅失は536条1項(拒める)。札=条文。 図:所有権の移転との区別

  • 条文の基準=引き渡したかどうか
  • 所有権が移った時とは別
  • 所有権が先に買主に移っていても、引渡しの前の滅失は536条1項(拒める)
  • 札=条文

所有権が移る時と、危険が移る時は、別です。意思主義の回で見たとおり、所有権は、契約を結んだ時に移ることがあります。しかし、567条1項の基準は、引き渡した、という言葉です。所有権がいつ移ったかは、条文の条件に書かれていません。ですから、所有権が先に買主に移っていても、引渡しの前に焼けたなら、536条1項で、拒めます。条文のふだです。旧法は契約の時から買主の負担でしたが、現行は、引渡しで切ります。もう1つ、559条は、この売買の規定を、売買以外の有償契約にも準用する、と定めています。有償契約とは、対価を伴う契約のことです。

確かめる——3つの火事

3つの火事。1=引渡しの前日・もらい火。2=引渡しの翌日・もらい火。3=引渡しの前日・売主の消し忘れ。問い=それぞれ、買主は代金を拒めるか。使える条文は何か。 図:3つの火事

  • 1=引渡しの前日・もらい火
  • 2=引渡しの翌日・もらい火
  • 3=引渡しの前日・売主の消し忘れ
  • 問い=それぞれ、買主は代金を拒めるか
  • 使える条文は何か

3つの火事を並べます。1つめ、引渡しの前日に、もらい火で焼けた。2つめ、引渡しの翌日に、もらい火で焼けた。3つめ、引渡しの前日に、売主の消し忘れで焼けた。それぞれ、買主は代金を拒めるでしょうか。使える条文は、何でしょうか?

3つの火事の答え。引渡しの前日×もらい火=拒める(536条1項)。引渡しの翌日×もらい火=拒めない(567条1項)。引渡しの前日×売主の消し忘れ=危険負担ではなく債務不履行(損害賠償・解除)。2つの軸=誰の責めに帰すべき事由か×引渡しの前か後か。 図:3つの火事の答え

  • 引渡しの前日×もらい火=拒める(536条1項)
  • 引渡しの翌日×もらい火=拒めない(567条1項)
  • 引渡しの前日×売主の消し忘れ=危険負担ではなく債務不履行(損害賠償・解除)
  • 2つの軸=誰の責めに帰すべき事由か×引渡しの前か後か

1つめは、拒めます。536条1項です。2つめは、拒めません。567条1項です。3つめは、危険負担ではなくて、債務不履行になると思います。分け目は、2つの軸です。1つは、誰の責めに帰すべき事由か。もう1つは、引渡しの前か後か。双方に責めがなく、引渡しの前なら、536条1項。双方に責めがなく、引渡しのあとなら、567条1項。売主に責めがあれば、危険負担ではなく、債務不履行です。

もう1つの事例。契約のあと、近くに高速道路ができて、家の値打ちが下がった。問い=Bは、家が不能になったと言って、代金を拒めるか。 図:もう1つの事例

  • 契約のあと、近くに高速道路ができて、家の値打ちが下がった
  • 問い=Bは、家が不能になったと言って、代金を拒めるか

もう1つ、確認します。契約のあと、近くに高速道路ができて、家の値打ちが下がりました。Bは、家が不能になった、と言って、代金を拒めるでしょうか。家は、なくなっていませんし、渡せます。履行はできるので、危険負担は当たらないと思います。不能ではないので、536条1項は使えません。契約の前提が大きく変わったときの、事情変更の法理は、別の道です。ただし、最後の手段です。前に、履行不能と事情変更の分け目を見ました。不能なら536条、できるなら事情変更が検討される、という順番でした。

冒頭の問いに戻る——まとめ

今日のまとめ。1=払わなくてよい(536条1項)=双方の責めに帰することができない事由で不能なら、買主は代金を拒める。2=消えるのではなく拒める=代金債務は残る。消すなら解除(542条1項1号)。払っていたら解除して返還(545条1項)。3=引渡しの後は買主が負う(567条1項)。ものさし=向き合っていた2つの債務のうち、片方がもう果たせないとき、残る片方を、誰の負担で、どこまで残すか。 図:今日のまとめ

  • 1=払わなくてよい(536条1項)=双方の責めに帰することができない事由で不能なら、買主は代金を拒める
  • 2=消えるのではなく拒める=代金債務は残る
  • 消すなら解除(542条1項1号)
  • 払っていたら解除して返還(545条1項)
  • 3=引渡しの後は買主が負う(567条1項)
  • ものさし=向き合っていた2つの債務のうち、片方がもう果たせないとき、残る片方を、誰の負担で、どこまで残すか

3つの話で整理します。1つめ。家が、双方の落ち度なく焼けて渡せなくなったら、買主は、代金を拒めます。536条1項です。2つめ。拒めるだけで、代金の債務は消えません。契約を終わらせて消すなら、解除です。542条1項1号。すでに払っていたら、解除して、545条1項で返還を求めます。そして、3つめ。引渡しのあとなら、買主が負います。567条1項です。ものさしに戻ります。向き合っていた2つの債務のうち、片方がもう果たせないとき、残る片方を、誰の負担で、どこまで残すか。引渡しの前は売主の負担で、買主は拒める。拒めるだけで、債務は残る。引渡しのあとは買主の負担です。

冒頭の答えの言い直し。引渡しの前に焼けた=Bは払わなくてよい(536条1項)。契約は続き、消すなら解除。すでに払っていたら=解除して返還(545条1項)。鍵を受け取ったあとに焼けた=Bは3,000万円を払う(567条1項)。 図:冒頭の答えの言い直し

  • 引渡しの前に焼けた=Bは払わなくてよい(536条1項)
  • 契約は続き、消すなら解除
  • すでに払っていたら=解除して返還(545条1項)
  • 鍵を受け取ったあとに焼けた=Bは3,000万円を払う(567条1項)

冒頭の問いの答えです。引渡しの前の晩に、家が全焼したとき、Bは、3,000万円を払わなくてよいです。536条1項です。契約は続いていて、消したいなら解除します。すでに払っていたら、解除して、545条1項で返還を求めます。鍵を受け取ったあとに焼けたなら、Bは払います。567条1項です。論文で論点になりうるのは、危険負担と解除の使い分け、そして、すでに払った代金の返還です。解除を軸にして、理由まで言えるようにしてください。

参照条文

  • 民法536条1項
  • 民法542条1項1号
  • 民法545条1項
  • 民法567条1項

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