民法ゼロから民法#237

第三者のためにする契約

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第5章 契約 #237/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

契約書にサインしていない人は、請求できるのか

冒頭の設例の関係図。父(契約者)と保険会社が、生命保険の契約を結ぶ。保険金の受取人は、子。子は契約書にサインしていない。のちに父が亡くなった。子は、保険会社に、直接、保険金を請求できるか。 図:冒頭の設例の関係図

  • 父(契約者)と保険会社が、生命保険の契約を結ぶ
  • 保険金の受取人は、子
  • 子は契約書にサインしていない
  • のちに父が亡くなった
  • 子は、保険会社に、直接、保険金を請求できるか

先に、答えの方向を言います。できます。契約の当事者ではない子が、契約から直接、権利を取得しているのです。ここで、疑問が3つ出ます。なぜ、当事者でない人が、権利を持てるのか。その権利は、いつ生まれるのか。生まれたあとで、取り上げられることはないのか。今日は、この3つに、条文で答えます。なお、この保険には、民法の原則とは違う特則があります。どこが違うのかは、権利がいつ生まれるか、の話で見ます。

今日の位置と、3つの話

今日の地図。位置=契約の効力は、原則として、当事者の間にだけ及ぶ。今日は、その例外。1=権利はいつ、誰に生まれるか(537条)。2=生まれた権利は、当事者も勝手に変えられない(538条)。3=諾約者の反論は、受益者にも言える(539条)。 図:今日の地図

  • 位置=契約の効力は、原則として、当事者の間にだけ及ぶ
  • 今日は、その例外
  • 1=権利はいつ、誰に生まれるか(537条)
  • 2=生まれた権利は、当事者も勝手に変えられない(538条)
  • 3=諾約者の反論は、受益者にも言える(539条)

位置づけです。ここまで、契約が当事者の間でどんな効力を持つか、同時履行や危険負担を見てきました。契約の効力は、原則として、当事者の間にだけ及びます。今日は、その例外です。前回の最後に予告した、当事者でない人が権利を手に入れる契約を見ます。話は3つです。1つめ、権利はいつ、誰に生まれるか。537条です。2つめ、生まれた権利は、当事者も勝手に変えられない。538条です。3つめ、契約の相手方、つまり義務を負う側は、契約から生じる反論を、権利を取得した人にも言える。539条です。あわせて、この人が、94条2項などの、第三者に当たるのかも見ます。

根拠の札。条文=法律に書いてあること。判例=最高裁の判決が実際に述べたこと。学説=学者が説明している考え方。こちらの説明=この動画が理解のために整理したこと。改正の理由=法制審議会の資料に書かれた説明として紹介。 図:根拠の札

  • 条文=法律に書いてあること
  • 判例=最高裁の判決が実際に述べたこと
  • 学説=学者が説明している考え方
  • こちらの説明=この動画が理解のために整理したこと
  • 改正の理由=法制審議会の資料に書かれた説明として紹介

今日も、根拠のふだを貼るように言い分けます。条文は、法律に書いてあること。判例は、最高裁の判決が実際に述べたことです。学説は、学者が説明している考え方です。こちらの説明は、この動画が理解のために整理したことです。もう1つ、改正の理由は、改正を審議した法制審議会の資料に書かれた説明として、紹介します。設例は、冒頭の保険のあと、入れ替えます。祖母のAが、家具店のBから、学習用の机を買います。机は、孫のCに引き渡す、とAとBの間で約束しました。Cへの入学祝いです。以後は、このA、B、Cで通します。

判断のものさし

判断のものさし。この権利は、誰の契約から生まれ、誰の同意で、どこまで動くか。原則=契約は当事者だけを縛る。例外=第三者のためにする契約。例外の中の保護=本人の意思・権利の確定・諾約者の反論。札=こちらの説明。 図:判断のものさし

  • この権利は、誰の契約から生まれ、誰の同意で、どこまで動くか
  • 原則=契約は当事者だけを縛る
  • 例外=第三者のためにする契約
  • 例外の中の保護=本人の意思・権利の確定・諾約者の反論
  • 札=こちらの説明

ものさしは、1本です。この権利は、誰の契約から生まれ、誰の同意で、どこまで動くか。こちらの説明のふだです。原則は、契約は当事者だけを縛る、でした。今日の契約は、その例外です。机の設例なら、AとBの契約なのに、Cが、Bに机を請求できます。そして、例外の中にも、保護があります。本人の意思を尊重すること。Cが、受けます、と言うまで、権利は生まれません。生まれた権利を確定させること。そのあとは、AとBだけで、権利を取り上げることはできません。義務を負う人の反論を残すこと。Aが代金を払わなければ、Bは、Cにも、引渡しを拒めます。この3つが、今日の3つの話に、そのまま対応します。

権利はいつ、誰に生まれるか——537条

537条の入口。この条文が書いていること。1項=第三者は、債務者に対して直接に給付を請求する権利を有する。2項=契約の時に第三者が現に存しなくても、特定していなくても、効力は妨げられない。3項=権利は、意思を表示した時に発生する。 図:537条の入口

  • この条文が書いていること
  • 1項=第三者は、債務者に対して直接に給付を請求する権利を有する
  • 2項=契約の時に第三者が現に存しなくても、特定していなくても、効力は妨げられない
  • 3項=権利は、意思を表示した時に発生する

1つめの話です。条文は、537条です。長いので、1項から3項まで、全部を見ます。

条文民法537条

民法第537条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。 2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。 3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

1項が中心です。当事者の一方が、第三者に給付をすると約した。このとき、その第三者は、債務者に直接、給付を請求する権利を持ちます。このように、契約の当事者でない第三者に、直接、権利を取得させる契約を、第三者のためにする契約と呼びます。2項と3項は、あとで読みます。まず、登場人物に名前を付けます。

用語の板。要約者=諾約者に、第三者への給付を約束させた側(A・祖母)。諾約者=第三者に給付する債務を負う側(B・家具店。537条の「債務者」)。受益者=契約から直接、権利を取得する第三者(C・孫。537条の「第三者」)。 図:用語の板

  • 要約者=諾約者に、第三者への給付を約束させた側(A・祖母)
  • 諾約者=第三者に給付する債務を負う側(B・家具店。537条の「債務者」)
  • 受益者=契約から直接、権利を取得する第三者(C・孫。537条の「第三者」)

名前は3つです。要約者は、諾約者に、第三者への給付を約束させた側です。設例の、祖母のAです。諾約者は、第三者に給付する債務を負う側です。537条の、債務者です。設例の、家具店のBです。受益者は、契約から直接、権利を取得する第三者です。537条の、第三者です。設例の、孫のCです。537条の第三者と、94条2項などの第三者は、混ざりやすいので、ここで分けます。537条の第三者は、これから受益者と呼びます。94条2項などの第三者は、契約が無効になったり、取り消されたりしても、守られることのある人でした。受益者は、これとは別のものとして扱います。この点は、3つめの話で扱います。

3者の関係図。A(祖母・要約者)、B(家具店・諾約者)、C(孫・受益者)。AとBの間=補償関係(学習机の売買)。AとCの間=対価関係(入学祝いの贈与)。CからBへ=直接の請求権(537条1項)。 図:3者の関係図

  • A(祖母・要約者)、B(家具店・諾約者)、C(孫・受益者)
  • AとBの間=補償関係(学習机の売買)
  • AとCの間=対価関係(入学祝いの贈与)
  • CからBへ=直接の請求権(537条1項)

3者の関係を、図で見ます。AとBの間には、机の売買があります。これを、補償関係と呼びます。要約者と諾約者の間の関係で、第三者のためにする契約そのものです。学説の呼び方で、学説のふだです。AとCの間には、入学祝いの贈与があります。これを、対価関係と呼びます。要約者と受益者の間の関係で、なぜ、Cに権利を取得させるのか、その理由にあたります。こちらも学説のふだです。そして、CからBに向かう線が、537条1項の直接の請求権です。大事な点は、契約の当事者は、AとBだけ、ということです。Cは、当事者ではありません。当事者でないのに、Bに直接請求できる。これが、この制度の核心です。当事者でない、という整理は、学説のふだです。

当事者でないCが権利を持てるのは、縛られるのが、自分でそう約束したBだけだからです。Bは、Cに渡す、と自分で決めました。Cは、義務を負わされるわけではありません。権利を受けるかどうかも、このあと見るとおり、C自身が決めます。誰も、自分の知らない約束に縛られてはいません。こちらの説明のふだです。どんな契約でも生まれる、というわけではありません。要件は2つです。1つめ、要約者と諾約者の契約があること。2つめ、受益者に直接、権利を取得させる趣旨があること。単に、Cに届けるだけで、Cに請求する権利を与える趣旨がない契約は、これに当たりません。債務引受と並べて見た、履行引受、つまり、債務者に対して代わりに払うと約束するだけで、債権者は引受人に請求できない約束、との区別と同じです。分かれ目は、債権者に直接の権利を取得させる趣旨があるかどうか、です。

昭43の事案。電信送金。送金受取人が、送金を受ける銀行に、直接、支払を求めた。原審は請求を棄却。最高裁は是認して上告を棄却。契約条項上、少なくとも明示的には、受取人のためにする約旨は認められない。銀行間の取引慣行に照らし、特に反対の事情の立証がない限り、黙示的にも、約旨は無かったと解するのが相当。 図:昭43の事案

  • 電信送金
  • 送金受取人が、送金を受ける銀行に、直接、支払を求めた
  • 原審は請求を棄却
  • 最高裁は是認して上告を棄却
  • 契約条項上、少なくとも明示的には、受取人のためにする約旨は認められない
  • 銀行間の取引慣行に照らし、特に反対の事情の立証がない限り、黙示的にも、約旨は無かったと解するのが相当

この趣旨について、判例が1つあります。電信送金の事案です。送金を受け取る人が、送金を受ける銀行に、直接、支払を求めました。問題になった契約は、送金を送り出す銀行と、受ける銀行の間の契約です。原審は、請求を認めず、最高裁も、これを是認しました。最高裁は、この電信送金契約には、契約条項上、少なくとも明示的には、受取人のためにする約旨は認められない、としました。さらに、銀行どうしの取引慣行に照らすと、特に反対の事情の立証がない限り、黙示的にも、約旨はなかったと解するのが相当だ、としました。

判例最高裁判所第一小法廷判決 昭和43年12月5日(民集22巻13号2876頁)

電信送金契約と、第三者のためにする約旨 特定の契約における第三者のためにする約旨の存在は第三者がその契約に基づき直接契約当事者に対して特定の権利を取得するための要件であるから、第三者が特定の契約に基づき直接その契約当事者に対して特定の権利を取得したことを主張する場合には、第三者においてその契約に第三者のためにする約旨の存在したことを立証する責任があると解すべき……

判旨の核は2点です。1つめ、第三者のためにする約旨があるかどうか。つまり、第三者に直接権利を取得させる趣旨があるかどうかが、権利を取得するための要件だ、ということ。2つめ、約旨があったことは、権利を主張する第三者のほうが立証する、ということです。ここは、判例のふだです。ただし、これは電信送金の事案です。最高裁が見たのは、この電信送金契約の条項と、銀行どうしの取引慣行です。契約が違えば、条項も慣行も違います。ですから、判決の結論を、ほかの送金の仕組みにまで、そのまま広げて言うことはできません。位置づけを言います。要件の本体は、537条1項の、約したとき、という読みから出てきます。判例は、その趣旨の有無を、電信送金の場面で当てはめた例です。

1項の効果。権利は、最初から、受益者Cのもとに生まれる。要約者Aのもとで生まれた権利が、Cに移るのではない。設例=机の引渡しを請求する権利は、最初からCのもとにある。札=学説。 図:1項の効果

  • 権利は、最初から、受益者Cのもとに生まれる
  • 要約者Aのもとで生まれた権利が、Cに移るのではない
  • 設例=机の引渡しを請求する権利は、最初からCのもとにある
  • 札=学説

1項の効果を、もう1つ。権利は、最初から、受益者のもとに生まれます。要約者のもとで生まれた権利が、あとで受益者に移るのではありません。1項は、その第三者は、権利を有する、と、Cを主語にして書いています。設例なら、机の引渡しを請求する権利は、最初からCのもとにあります。学説のふだです。

受益の意思表示の前。A、B、Cの3者。AとBの売買は成立している。CからBへの線は、まだ無い。権利は、まだ発生していない。 図:受益の意思表示の前

  • A、B、Cの3者
  • AとBの売買は成立している
  • CからBへの線は、まだ無い
  • 権利は、まだ発生していない

では、権利は、いつ生まれるのか。3項です。受益者が、債務者に対して、契約の利益を享受する意思を表示した時、と書かれています。これを、受益の意思表示と呼びます。その権利を受けます、と、諾約者に示すことです。この言い方は、債務引受の回でも使いました。権利であっても、本人の知らないうちに押し付けることはしない。受けるかどうかは、本人に決めさせる。この考え方を、条文が受け止めているのです。意思表示が要る理由は、審議の資料に、こう説明されています。受益者が権利の取得を望まない場合でも、当然に権利が発生するとするのは、行き過ぎだと考えられたことなどによる。

受益の意思表示の後。A、B、Cの3者。CからBへの線が付く=直接の請求権が発生。意思表示=その権利を受けます、とBに示す。意思表示は、契約の成立要件でも、効力要件でもない。権利の発生要件。札=学説。 図:受益の意思表示の後

  • A、B、Cの3者
  • CからBへの線が付く=直接の請求権が発生
  • 意思表示=その権利を受けます、とBに示す
  • 意思表示は、契約の成立要件でも、効力要件でもない
  • 権利の発生要件
  • 札=学説

位置づけを、1つ押さえます。受益の意思表示は、契約の成立要件でも、効力要件でもありません。権利の発生要件です。学説のふだです。意思表示の前でも、AとBの売買契約は、成立していて、有効です。変わるのは、Cの権利が生まれるのが、意思表示の時だ、という点だけです。冒頭の保険に戻ります。子は、契約書にサインしていませんでした。受益の意思表示も、していません。それでも、請求できるのでしょうか。

保険法42条。保険金受取人が生命保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該生命保険契約の利益を享受する。民法537条3項=受益の意思表示の時に発生。保険=意思表示は要らない。 図:保険法42条

  • 保険金受取人が生命保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該生命保険契約の利益を享受する
  • 民法537条3項=受益の意思表示の時に発生
  • 保険=意思表示は要らない

条文保険法42条

保険法第42条 保険金受取人が生命保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該生命保険契約の利益を享受する。

ここで、冒頭の保険が、特則だと分かります。保険法の42条は、保険金の受取人が、契約の当事者以外の者であるときは、当然に、契約の利益を享受する、と書きます。受益の意思表示は、要りません。ですから、冒頭の子は、受けます、と言わなくても、父の死亡という保険事故が起きれば、保険会社に請求できます。損害保険の8条と、傷害疾病定額保険の71条にも、同じ型の規定があります。審議の資料によると、保険契約では、受取人になることで不利益を被るものではなく、受取人の地位を放棄することも自由だ、という考慮に基づく、と説明されています。言い方に、注意してください。第三者のためにする契約は、受益の意思表示が不要になった、のではありません。民法の原則は、537条3項で、意思表示が要ります。保険は、その特則です。短答で、生命保険の受取人は、受益の意思表示が要る、と誤らないための整理です。こちらの説明のふだです。

2項。契約の成立の時に、第三者が現に存しない場合、特定していない場合でも、効力は妨げられない。例=胎児、設立中の法人。権利が発生するのは、受益者が現れて、意思表示をした時(3項)。2017年の改正で、条文に書かれた。 図:2項

  • 契約の成立の時に、第三者が現に存しない場合、特定していない場合でも、効力は妨げられない
  • 例=胎児、設立中の法人
  • 権利が発生するのは、受益者が現れて、意思表示をした時(3項)
  • 2017年の改正で、条文に書かれた

2項に戻ります。契約を結んだ時に、第三者が、まだ存在しない場合や、特定していない場合でも、契約の効力は妨げられません。例は、胎児や、設立中の法人、つまり、作る手続の途中で、まだ成立していない法人です。契約の時に存在しなくても、将来現れると予期した者なら第三者にできる、という扱いは、改正の前から、最高裁が認めていました。判例のふだです。それが、改正で、条文に書かれました。審議の資料は、胎児や設立中の法人のように、将来現れることが予期された者を受益者にできる点には異論がなく、そうした異論のないルールを、条文に書くことを提案する、と説明しています。権利が発生するのは、受益者が現れて、意思表示をした時です。

対価関係が欠けていても。AとCの入学祝いの約束が、実は無効だった、または無かった。それでも、BはCに机を引き渡す義務を負う。AB間の売買は有効なまま。理由=Bの約束の中身は、AB間の契約で決まる。AC間の事情は、その外にある。札=こちらの説明・学説。 図:対価関係が欠けていても

  • AとCの入学祝いの約束が、実は無効だった、または無かった
  • それでも、BはCに机を引き渡す義務を負う
  • AB間の売買は有効なまま
  • 理由=Bの約束の中身は、AB間の契約で決まる
  • AC間の事情は、その外にある
  • 札=こちらの説明・学説

もう1点。対価関係が欠けていたら、どうなるでしょうか。AとCの、入学祝いの約束が、実は無効だった。あるいは、そもそも無かった。それでも、BがCに机を引き渡す義務は、当然には影響を受けません。AB間の売買も、有効なままです。理由は、Bの約束の中身は、AとBの契約で決まるからです。AとCの間の事情は、その外にあります。こちらの説明と、学説のふだです。

確認。Cはまだ「受けます」と言っていない。このとき、Cは、Bに机を請求できるか。AB間の売買は有効か。 図:確認

  • Cはまだ「受けます」と言っていない
  • このとき、Cは、Bに机を請求できるか
  • AB間の売買は有効か

問いです。AとBが、机をCに引き渡す、と約束しました。Cは、まだ、受けます、と言っていません。このとき、Cは、Bに机を請求できますか? また、AB間の売買は、有効ですか?

答え。Cはまだ請求できない(537条3項)。AB間の売買は有効(意思表示は成立要件でない)。 図:答え

  • Cはまだ請求できない(537条3項)
  • AB間の売買は有効(意思表示は成立要件でない)

請求できません。権利は、意思表示の時に発生するからです。売買は、有効です。意思表示は、成立要件ではないからです。条文は、537条3項です。意思表示は、権利の発生要件でした。

身近な例——併存的債務引受

併存的債務引受の設例。小売チェーンが、卸会社に3000万円の債務を負っている。親会社が、小売チェーンとの契約で、その債務を引き受ける。卸会社が、親会社に承諾をした時に、効力が生じる。 図:併存的債務引受の設例

  • 小売チェーンが、卸会社に3000万円の債務を負っている
  • 親会社が、小売チェーンとの契約で、その債務を引き受ける
  • 卸会社が、親会社に承諾をした時に、効力が生じる

身近な例を、1つ。債務引受の回で見た、併存的債務引受です。債務者が残ったまま、引受人も加わって、2人で同じ債務を負う形でした。小売チェーンが、卸会社に、3000万円の債務を負っていました。親会社が、小売チェーンとの契約で、その債務を引き受ける、とします。

条文民法470条3項と4項

民法第470条 3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。 4 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

4項が、第三者のためにする契約に関する規定に従う、と書きます。今日の言葉に当てはめます。親会社に引き受けさせた小売チェーンが、要約者です。債務を負う親会社が、諾約者にあたります。権利を取得する卸会社が、受益者です。卸会社の承諾が、受益の意思表示にあたります。承諾をした時に、卸会社は、親会社に請求する権利を取得します。卸会社は、小売チェーンと親会社の契約の、当事者ではありません。それでも、権利を取得するのです。債務引受の回で見た仕組みは、今日の、第三者のためにする契約の規定、537条から539条が根拠でした。

生まれた権利は、当事者も勝手に変えられない——538条

538条の入口。1項=第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。2項=発生した後に、債務者が履行しない場合、契約の相手方は、第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。 図:538条の入口

  • 1項=第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない
  • 2項=発生した後に、債務者が履行しない場合、契約の相手方は、第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない

2つめの話です。条文は、538条です。

条文民法538条

民法第538条 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。 2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。

1項です。第三者の権利が発生した後は、当事者は、権利を変更も、消滅もさせられません。権利が発生した後、とは、受益の意思表示の後です。設例なら、Cが、受けます、と言った後は、AとBが、机ではなく本棚にしよう、と合意しても、Cの権利を変更できません。

時間軸。1=AB間の契約が成立。2=Cが諾約者に受益の意思表示。3=権利の発生。以後、変更・消滅は不可(538条1項)。4=Bが不履行。Aが解除するには、Cの承諾が要る(538条2項)。 図:時間軸

  • 1=AB間の契約が成立
  • 2=Cが諾約者に受益の意思表示
  • 3=権利の発生
  • 以後、変更・消滅は不可(538条1項)
  • 4=Bが不履行
  • Aが解除するには、Cの承諾が要る(538条2項)

時間の順に並べます。契約が成立する。Cが意思表示をする。権利が発生する。ここから先、当事者は動かせません。裏から読むと、意思表示の前なら、当事者は、権利を変更したり消滅させたりできます。条文の反対の読みで、こちらの説明のふだです。発生したあとに動かせないのは、権利が受益者のもとに生まれた以上、本人の知らないところで取り上げることは許さない、という考え方だからです。受けるかどうかは、本人に決めさせる、の延長です。こちらの説明のふだです。

保険との切り分け。保険法43条1項=保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。冒頭の保険=受益の意思表示は要らない。ただし、受取人の変更は、事故の前なら契約者ができる。538条1項をそのまま当てはめない。 図:保険との切り分け

  • 保険法43条1項=保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる
  • 冒頭の保険=受益の意思表示は要らない
  • ただし、受取人の変更は、事故の前なら契約者ができる
  • 538条1項をそのまま当てはめない

冒頭の保険との切り分けです。保険法の43条1項は、保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更ができる、と書きます。保険金の受取人を替えられるかどうかは、民法の538条1項ではなく、保険法のこの条文で決まります。ですから、冒頭の保険は、受益の意思表示は要りませんが、受取人の変更は、事故の前なら契約者ができます。意思表示が要らないのだから、権利はもう発生していて、538条1項で替えられない、と読んではいけません。なぜ事故の前なら替えられるのかは、保険法の話です。ここでは、条文がこう書く、というところまでです。

受益者が持たない権利。受益者は、契約の当事者ではない。取消権=ない(持つのは要約者または諾約者)。解除権=ない(持つのは要約者)。受益者が持つのは、履行を請求する権利(537条1項)と、履行されなければ損害賠償を請求する権利(415条)まで。札=学説。 図:受益者が持たない権利

  • 受益者は、契約の当事者ではない
  • 取消権=ない(持つのは要約者または諾約者)
  • 解除権=ない(持つのは要約者)
  • 受益者が持つのは、履行を請求する権利(537条1項)と、履行されなければ損害賠償を請求する権利(415条)まで
  • 札=学説

次は、受益者が持たない権利です。受益者は、契約の当事者ではありません。ですから、契約に取消しの原因があっても、受益者に取消権はありません。持つのは、当事者である、要約者か、諾約者のどちらかです。諾約者が債務を履行しなくても、受益者は、解除権を持ちません。持つのは、要約者です。受益者が持つのは、履行を請求する権利と、履行されなければ損害賠償を請求する権利までです。損害賠償は、債務不履行の一般の道、415条です。学説のふだです。

538条2項の読み方。1=受益者の権利が発生した後。2=諾約者が受益者に対する債務を履行しない。3=契約の相手方(要約者)は、受益者の承諾を得なければ解除できない。なぜ=解除されると、受益者は権利を失う。 図:538条2項の読み方

  • 1=受益者の権利が発生した後
  • 2=諾約者が受益者に対する債務を履行しない
  • 3=契約の相手方(要約者)は、受益者の承諾を得なければ解除できない
  • なぜ=解除されると、受益者は権利を失う

2項です。条文の読みは3つです。受益者の権利が発生した後。諾約者が、受益者に対する債務を履行しない場合。同条第1項の契約の相手方、つまり要約者は、受益者の承諾を得なければ、契約を解除できない。なぜ、承諾が要るのか。解除されると、受益者は、取得した権利を失います。本人に無断で、奪わせないためです。こちらの説明のふだです。設例なら、Cが、受けます、と言った後に、Bが机を渡さない。Aは、1人では解除できません。Cの承諾が要ります。この2項は、改正で条文に書かれました。審議の資料によると、解除について、538条の趣旨から受益者の承諾なしにはできない、とする見解と、同条は当事者が合意で消滅させることを禁じたにすぎず、承諾なしに解除できる、とする見解があった。受益者の履行請求権を無断で奪うことは妥当でないとして、受益者の承諾を得て解除できることとする案が示された、と説明されています。解除の要件や効果は、別の回で見ます。

要約者の履行請求。AはBに、「Cに机を引き渡せ」と請求できるか。条文=書かれていない。学説=通説は肯定。判例=明確でない(審議の資料)。札=学説。 図:要約者の履行請求

  • AはBに、「Cに机を引き渡せ」と請求できるか
  • 条文=書かれていない
  • 学説=通説は肯定
  • 判例=明確でない(審議の資料)
  • 札=学説

もう1点。要約者のAは、諾約者のBに、Cに机を引き渡せ、と求められるのか。条文には、書かれていません。学説の通説は、肯定です。贈与の趣旨を貫くため、Aは、Bに、Cに渡せ、と求められる。判例については、審議の資料が、明確ではない、としています。ここは、条文に書いていない、通説は肯定、というところまでです。

確認。Cが「受けます」と言った後に、AとBが合意で売買を解消しようとした。AとBだけで、できるか。 図:確認

  • Cが「受けます」と言った後に、AとBが合意で売買を解消しようとした
  • AとBだけで、できるか

問いです。Cが、受けます、と言った後に、AとBが、合意で売買を解消しようとしました。AとBだけで、できますか?

答え。AとBだけではできない(538条1項)。ただし、Bの債務不履行を理由にAが解除する場合は、Cの承諾があればできる(538条2項)。 図:答え

  • AとBだけではできない(538条1項)
  • ただし、Bの債務不履行を理由にAが解除する場合は、Cの承諾があればできる(538条2項)

できません。538条1項で、権利が発生した後は、変更も消滅もできないからです。AとBが、2人の合意で権利を消すことは、1項が禁じています。これとは別に、Bが机を渡さないことを理由に、Aが契約を解除する道があります。こちらは2項の話で、Cの承諾があれば、できます。

諾約者の反論は、受益者にも言える——539条

復習の確認。同時履行の抗弁権(533条)は、何を拒める権利か。 図:復習の確認。同時履行の抗弁権(533条)は、何を拒める権利か。

3つめの話の前に、復習を1つ。同時履行の抗弁権は、何を拒める権利でしたか?相手が履行を提供するまで、自分の履行を、いま拒める権利です。債務そのものは、消えません。今日は、これが受益者にも使えるかを見ます。

539条の入口。債務者は、537条1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。 図:539条の入口

条文民法539条

民法第539条 債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。

539条です。債務者、つまり諾約者は、537条1項の契約に基づく抗弁をもって、受益者に対抗できます。抗弁とは、請求を拒む理由になる反論でした。契約に基づく、がポイントです。

契約に基づく抗弁の例。1=同時履行の抗弁権。Aが代金を払わなければ、BはCへの引渡しを拒める(533条)。2=契約の無効・取消し・解除。AB間の契約がBの詐欺で結ばれ、Aが取り消した。BはCの請求を拒める。札=学説。 図:契約に基づく抗弁の例

  • 1=同時履行の抗弁権
  • Aが代金を払わなければ、BはCへの引渡しを拒める(533条)
  • 2=契約の無効・取消し・解除
  • AB間の契約がBの詐欺で結ばれ、Aが取り消した
  • BはCの請求を拒める
  • 札=学説

例を2つ挙げます。1つめ、同時履行の抗弁権です。Aが代金を払わないのに、Cが、机を渡して、と求めてきた。Bは、Aが代金を払うまで、Cへの引渡しを拒めます。533条です。拒めるのは、いま渡すことだけで、債務は消えません。同時履行の回の言い方のままです。2つめ、契約の無効や取消し、解除です。AとBの契約が、Bの詐欺で結ばれ、Aが取り消した。このとき、Bは、Cの請求を拒めます。取り消された契約から生まれた権利は、残らないからです。なお、538条1項は、取消しまで止めるものではありません。取り消せる契約から生まれた権利は、はじめから、その傷を負っているからです。例の整理は、学説のふだです。

なぜ言えるのか。受益者の権利は、AB間の契約から生まれたもの。契約の上に乗っている権利だから、契約の傷もついてくる。債務引受でも同じ=引受けの契約から生じる反論は、引受人が債権者に言える。札=こちらの説明・学説。 図:なぜ言えるのか

  • 受益者の権利は、AB間の契約から生まれたもの
  • 契約の上に乗っている権利だから、契約の傷もついてくる
  • 債務引受でも同じ=引受けの契約から生じる反論は、引受人が債権者に言える
  • 札=こちらの説明・学説

なぜ、言えるのか。受益者の権利は、AとBの契約から生まれたものです。契約の上に乗っている権利ですから、契約の傷も、ついてきます。こちらの説明と、学説のふだです。債務引受の回で、引受けの契約から生じる反論を、引受人は債権者に言える、と見ました。あれは、この仕組みです。

539条の反論の向き。BからCへ。AB間で言えた反論は、Cにも言える(同時履行・取消し)。AC間の事情(入学祝いはやめた)は、AB間の契約から生じたものではない。BはCに言えない。 図:539条の反論の向き

  • BからCへ
  • AB間で言えた反論は、Cにも言える(同時履行・取消し)
  • AC間の事情(入学祝いはやめた)は、AB間の契約から生じたものではない
  • BはCに言えない

どんな反論でも言える、というわけではありません。言えるのは、537条1項の契約に基づく抗弁に限られます。AとCの間の事情は、AとBの契約から生じたものではありません。たとえば、Aが、Cに、入学祝いはやめた、と言った。Bは、これをCに言えません。先ほどの、対価関係が欠けていても、BはCに引き渡す義務を負う、と同じ向きです。条文の読みと、こちらの説明のふだです。

受益者は、保護規定の「第三者」に当たるか。93条2項=善意の第三者に対抗できない。94条2項=善意の第三者に対抗できない。95条4項=善意でかつ過失がない第三者に対抗できない。96条3項=善意でかつ過失がない第三者に対抗できない。 図:受益者は、保護規定の「第三者」に当たるか

  • 93条2項=善意の第三者に対抗できない
  • 94条2項=善意の第三者に対抗できない
  • 95条4項=善意でかつ過失がない第三者に対抗できない
  • 96条3項=善意でかつ過失がない第三者に対抗できない

ここから、先ほどの積み残しです。受益者は、93条2項、94条2項、95条4項、96条3項の、第三者に当たるのでしょうか。これらは、善意の、あるいは善意で過失のない第三者に、無効や取消しを対抗できない、と定める規定です。

結論。受益者は、これらの第三者に当たらない。理由=契約の当事者ではないが、契約そのものから直接、権利を取得する者。新たな独立の法律上の利害関係に入った者ではない。545条1項ただし書の第三者にも、当たらない。札=学説。 図:結論

  • 受益者は、これらの第三者に当たらない
  • 理由=契約の当事者ではないが、契約そのものから直接、権利を取得する者
  • 新たな独立の法律上の利害関係に入った者ではない
  • 545条1項ただし書の第三者にも、当たらない
  • 札=学説

結論は、当たらない、です。理由は、こうです。受益者は、契約の当事者ではありません。しかし、契約そのものから、直接、権利を取得する者です。96条3項の第三者は、当事者でも包括承継人でもなく、新たな独立の法律上の利害関係を持った者でした。94条2項の第三者も、当事者と包括承継人を除いた、利害関係を持つに至った者です。どちらも、すでにある契約を前提にして、あとから、新しく自分の利害関係を持った人です。たとえば、買主から、さらにその物を買った人です。前提にした契約が崩れると、この人たちは、自分の知らない事情で、不意打ちを受けます。それを防ぐのが、これらの規定でした。受益者は、あとから新しく関係を持った人ではありません。もとの契約そのものから、権利を受け取っているだけです。ですから、もとの契約が崩れれば、その権利も一緒に失われます。こちらの説明と、学説のふだです。解除の条文、545条1項ただし書の、第三者にも、受益者は当たりません。同じ筋の理由からです。本体は、別の回で見ます。ここも、学説のふだです。539条とは、表裏の関係です。539条が、契約から生じた抗弁を受益者に言える、と書く。そして、受益者を保護規定の第三者に入れない。これで、契約の無効や取消しも、受益者に主張できるのです。受益者が、善意だから守られる、とは言えません。こちらの説明のふだです。

設例の帰結。AB間の契約がBの詐欺で結ばれ、Aが取り消した。Cは、善意でかつ過失がない。それでも、Cは、96条3項で守られない。Cは第三者ではないから。 図:設例の帰結

  • AB間の契約がBの詐欺で結ばれ、Aが取り消した
  • Cは、善意でかつ過失がない
  • それでも、Cは、96条3項で守られない
  • Cは第三者ではないから

設例で言います。AとBの契約が、Bの詐欺で結ばれ、Aが取り消した。Cは、善意でかつ過失がなかった。それでも、Cは、96条3項では守られません。Cは、第三者ではないからです。

確かめる——場面を変えた4問

確かめるその1。机の設例で通す。1=Cが受けます、と言う前に、AとBが、机ではなく本棚にしよう、と合意した。有効か。2=Cが受けます、と言った後に、Bが机を渡さない。Aは、1人で解除できるか。 図:確かめるその1

  • 机の設例で通す
  • 1=Cが受けます、と言う前に、AとBが、机ではなく本棚にしよう、と合意した
  • 有効か
  • 2=Cが受けます、と言った後に、Bが机を渡さない
  • Aは、1人で解除できるか

事例で確かめます。机の設例で通します。1つめ。Cが、受けます、と言う前に、AとBが、机ではなく本棚にしよう、と合意しました。有効ですか? 2つめ。Cが、受けます、と言った後に、Bが机を渡しません。Aは、1人で解除できますか?

答えその1。1=有効にできる。538条1項が縛るのは、権利が発生した後だけ。意思表示の前は、当事者が変更できる。2=Aは1人では解除できない。Cの承諾が要る(538条2項)。Cも自分では解除できない。 図:答えその1

  • 1=有効にできる
  • 538条1項が縛るのは、権利が発生した後だけ
  • 意思表示の前は、当事者が変更できる
  • 2=Aは1人では解除できない
  • Cの承諾が要る(538条2項)
  • Cも自分では解除できない

1つめは、有効です。538条1項が縛るのは、権利が発生したあとだけだからです。2つめは、できません。Cの承諾が要ります。1つめは、条文を裏から読んだ結論で、こちらの説明のふだです。2つめの条文は、538条2項です。そして、Cも、自分では解除できません。受益者は、解除権を持たないからです。

確かめるその2。3=Aが代金を払っていないのに、Cが机を請求してきた。Bは拒めるか。4=AB間の契約がBの詐欺で結ばれ、Aが取り消した。Cは善意でかつ過失がない。Cは96条3項の第三者として守られるか。 図:確かめるその2

  • 3=Aが代金を払っていないのに、Cが机を請求してきた
  • Bは拒めるか
  • 4=AB間の契約がBの詐欺で結ばれ、Aが取り消した
  • Cは善意でかつ過失がない
  • Cは96条3項の第三者として守られるか

3つめ。Aが代金を払っていないのに、Cが、机を請求してきました。Bは拒めますか? 4つめ。AとBの契約が、Bの詐欺で結ばれ、Aが取り消しました。Cは、善意でかつ過失がありません。Cは、96条3項の第三者として守られますか?

答えその2。3=拒める(539条と533条)。AB間の契約から生じる反論は、Cにも言える。4=守られない。受益者は、第三者に当たらない。539条の、契約に基づく抗弁とも整合。札=学説。 図:答えその2

  • 3=拒める(539条と533条)
  • AB間の契約から生じる反論は、Cにも言える
  • 4=守られない
  • 受益者は、第三者に当たらない
  • 539条の、契約に基づく抗弁とも整合
  • 札=学説

3つめは、拒めます。539条と533条で、AB間の契約から生じる反論は、Cにも言えるからです。4つめは、守られません。受益者は、第三者に当たらないからです。4つめは、Cが善意でかつ過失がなくても、同じです。539条の、契約に基づく抗弁とも、つじつまが合います。学説のふだです。

冒頭の問いに戻る——まとめ

今日のまとめ。1=権利はいつ、誰に生まれるか(537条=直接の請求権・受益の意思表示の時)。2=生まれた権利は、当事者も勝手に変えられない(538条=解除には受益者の承諾)。3=諾約者の反論は、受益者にも言える(539条)。受益者は、保護規定の第三者ではない。 図:今日のまとめ

  • 1=権利はいつ、誰に生まれるか(537条=直接の請求権・受益の意思表示の時)
  • 2=生まれた権利は、当事者も勝手に変えられない(538条=解除には受益者の承諾)
  • 3=諾約者の反論は、受益者にも言える(539条)
  • 受益者は、保護規定の第三者ではない

3つの話で整理します。1つめ。契約の当事者でない人でも、契約から直接、権利を取得できます。権利が生まれるのは、本人が、受けます、と示した時です。537条です。2つめ。生まれた権利は、当事者も、変更も消滅もさせられません。要約者が解除するには、受益者の承諾が要ります。538条です。3つめ。諾約者は、契約から生じる反論を、受益者にも言えます。539条です。そして、受益者は、93条2項などの、第三者には当たりません。ものさしに戻ります。この権利は、誰の契約から生まれ、誰の同意で、どこまで動くか。権利は、AとBの契約から生まれる。動かすには、Cの同意が要る。ただし、契約の傷は、Cにもついてくる。

冒頭の答え合わせ。子は、受益の意思表示なしに(保険法42条)、保険会社に直接請求できる。民法の原則(537条3項)は、意思表示が要る。保険は、その特則。 図:冒頭の答え合わせ

  • 子は、受益の意思表示なしに(保険法42条)、保険会社に直接請求できる
  • 民法の原則(537条3項)は、意思表示が要る
  • 保険は、その特則

冒頭の問いの答えです。子は、受益の意思表示なしに、保険会社に直接、保険金を請求できます。保険法42条です。民法の原則、537条3項は、意思表示が要ります。保険は、その特則でした。論文では、第三者のためにする契約かどうか、受益の意思表示の時期、解除と受益者の承諾が、論点になりえます。

参照条文

  • 民法537条
  • 保険法42条
  • 民法470条3項と4項
  • 民法538条
  • 民法539条

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