民法ゼロから民法#249

契約不適合責任の意義と要件

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第5章 契約 #249/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

200平方メートルのはずの土地

冒頭の設例の関係図。左が売主A、右が買主B。AはBに土地を売る。契約書は面積200㎡、1㎡あたり20万円。代金はその計算で決めた。引渡しを受けて測ると190㎡だった。 図:冒頭の設例の関係図

  • 左が売主A、右が買主B
  • AはBに土地を売る
  • 契約書は面積200㎡、1㎡あたり20万円
  • 代金はその計算で決めた
  • 引渡しを受けて測ると190㎡だった

冒頭の問いの答えの方向。言える。面積を基礎に代金を決めた売買(数量指示売買)なので、10㎡分は数量の契約不適合。何ができるかは次の回。 図:冒頭の問いの答えの方向

  • 言える
  • 面積を基礎に代金を決めた売買(数量指示売買)なので、10㎡分は数量の契約不適合
  • 何ができるかは次の回

先に、答えの方向を言います。買主は、売主に責任を問えます。面積を基礎にして代金を決めた売買なので、足りない10平方メートル分は、契約で決めた数量に合わない、数量の契約不適合にあたります。何ができるかは、次の回に見ます。今日は、どんなときに責任が生じるのか、という入口を扱います。前回、売主の義務の中に、契約の内容に合った物を渡す義務も含まれる、と言いました。その中身が、今日です。

契約不適合責任とは何か

1つめの柱の入口。壊れた置き時計を渡した売主は、債務不履行になるのか。 図:1つめの柱の入口。壊れた置き時計を渡した売主は、債務不履行になるのか。

1つめの柱です。まず、前に見た考え方を1つ思い出してください。特定物ドグマとは、どんな考え方だったでしょうか?

設例の関係図。左が売主A、右が買主B。Aは、特定の1台の中古置き時計を30万円でBに売った。引渡しを受けると、契約の前から内部が壊れていて動かなかった。 図:設例の関係図

  • 左が売主A、右が買主B
  • Aは、特定の1台の中古置き時計を30万円でBに売った
  • 引渡しを受けると、契約の前から内部が壊れていて動かなかった

特定物は、その物をそのまま渡せば、履行になる、という考え方でした。性質は、約束の中身にならないのでした。その考え方を、置き時計で試します。売主のAが、特定の1台の中古の置き時計を、30万円で、買主のBに売りました。引渡しを受けると、契約の前から内部が壊れていて、動きませんでした。特定物ドグマで考えると、Aは、その1台を渡したので、債務は果たしたことになります。壊れていても、債務不履行にはなりません。Bは何も言えない、となってしまいます。おかしいので、旧法は、別の道を用意しました。債務不履行とは別に、欠陥の穴埋めとして、法が特別に責任を置いたのです。改正前の570条の、瑕疵担保責任です。瑕疵とは、物の欠陥のことです。買主が契約のときに欠陥を知らず、知らないことに過失もなかった、つまり、隠れた瑕疵があるときに限って、解除や損害賠償ができました。この見方を、法定責任説といいます。現行の考え方は、出発点が違います。時計を買った人は、動く時計を受け取る約束をしています。動くという性質も、約束の中身です。ですから、動かない時計を渡すことは、約束どおりの履行ではありません。特定物か、そうでないかにかかわらず、売主は、契約の内容に合った物を渡す義務を負います。これを果たさなければ、債務不履行です。この責任を、契約不適合責任といいます。

旧法と現行法の比較表。行=責任の性質(法定責任/債務不履行の特則)・特定物の扱い(その物を渡せば履行完了/合った物を渡す義務がある)・要件(隠れた瑕疵=買主の善意無過失/契約の内容に適合しない・隠れたは不要)・救済(解除・損害賠償/追完・代金減額・損害賠償・解除)・損害賠償の範囲(信頼利益/債務不履行の一般則で履行利益まで)。 図:旧法と現行法の比較表

比較します。責任の性質は、旧法が法定責任、現行は債務不履行責任の特則です。特定物の扱いは、旧法がその物を渡せば履行完了、現行は合った物を渡す義務があります。要件は、旧法が隠れた瑕疵、現行は契約の内容に適合しないこと、で、隠れたは要りません。救済は、旧法が解除と損害賠償だけでしたが、現行は、これに加えて、履行の追完と代金の減額が使えます。損害賠償の範囲も、旧法は信頼利益に限られるとされましたが、現行は債務不履行の一般則で、履行利益にまで及びます。改正の大きな理由は3つあります。1つめ、特定物かどうかで、買主の保護がぶれるのは不合理だからです。2つめ、瑕疵があるかを、その契約で予定されていた品質があるかで決める、という理解が、判例で定着していたからです。条文を、その理解に合わせたのです。最後に、欠陥のある商品は、代金の減額で片づく場面が多いので、買主に代金減額を求める権利を認めるのが、実態に合うからです。時計で言うと、同じ型の新品を、店に注文して買ったなら、動く別の1台を渡せばよいので、動かない物を渡すのは債務不履行です。ところが、中古のこの1台を買うと、ドグマのせいで債務不履行になりません。物の買い方ひとつで、Bの守られ方が変わっていたのです。3つめの代金減額も、動きはするけれど遅れがちな時計なら、その分だけ代金を下げてもらえば片づく、という場面です。この責任は、前に見た不完全履行のうち、売買で渡された物の種類、品質、数量が、契約の内容に合わない場合を受け持つ規定です。条文の見出しには、担保責任という言葉も出てきます。これは、渡した物の不適合と、移した権利の不適合を、まとめて呼ぶ言葉です。移した権利のほうが契約に合わない場合は、別に扱います。今日は、物の不適合です。

契約不適合責任の関係図。左が売主A、右が買主B。Aは、契約の内容に合った物を渡す義務を負う。渡した物が契約の内容と違うとき、その線が、債務不履行に切り替わる。 図:契約不適合責任の関係図

  • 左が売主A、右が買主B
  • Aは、契約の内容に合った物を渡す義務を負う
  • 渡した物が契約の内容と違うとき、その線が、債務不履行に切り替わる

図にします。AからBへ、契約の内容に合った物を渡す義務の線が引かれています。Aが渡した物が契約の内容と違うとき、この線は、債務不履行に切り替わります。ここが、契約不適合責任です。この規定は、売買の節の中にあります。まず、条文を出します。

条文民法562条1項

民法第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

562条1項の読み方。3つの語。1=引き渡された目的物が(要件1)。2=種類、品質又は数量に関して(要件2)。3=契約の内容に適合しないものであるとき(基準)。後半の追完の請求は次の回。 図:562条1項の読み方

  • 3つの語
  • 1=引き渡された目的物が(要件1)
  • 2=種類、品質又は数量に関して(要件2)
  • 3=契約の内容に適合しないものであるとき(基準)
  • 後半の追完の請求は次の回

今日は、前半を読みます。後半の、追完の請求は、次の回です。3つの言葉に注目してください。引き渡された目的物が、種類、品質又は数量に関して、契約の内容に適合しないものであるとき。この3つで、要件が決まります。1つめの言葉が要件の1つめ、2つめの言葉が要件の2つめです。3つめの言葉が、不適合かどうかを決める物差しです。最後に、この規定の及ぶ範囲です。売買の節の規定は、売買以外の有償契約にも、準用されます。前に見た条文です。

条文民法559条

民法第559条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ですから、今日の規定は、請負や賃貸借のような、対価を取る契約にも及びます。その細部は、別の回で見ます。

要件1 目的物の引渡し

2つめの柱の入口。引渡しの前に、買った物が壊れていると分かった。契約不適合責任になるのか。 図:2つめの柱の入口

  • 引渡しの前に、買った物が壊れていると分かった
  • 契約不適合責任になるのか

2つめの柱です。ここで立ち止まって、1つ聞きます。引渡しの日が来ても約束の物を渡さない売主に、買主は何を求められるでしょうか?債務不履行です。履行を求めたり、解除したり、損害賠償を求めたりできます。ここが、2つめの柱と結びつきます。562条1項は、引き渡された目的物が、と書いています。引き渡されたことが、要件の1つめです。

要件の樹形図。引渡しの前=一般の債務不履行(履行遅滞・履行不能。412条・415条・541条・542条)。引渡しの後=種類・品質の不適合、または数量の不適合を、契約の内容に照らして判断する(契約不適合責任)。 図:要件の樹形図

  • 引渡しの前=一般の債務不履行(履行遅滞・履行不能。412条・415条・541条・542条)
  • 引渡しの後=種類・品質の不適合、または数量の不適合を、契約の内容に照らして判断する(契約不適合責任)

さっきの置き時計で、引渡しの前に、Bが店で動かないことに気づいたとします。この場合は、契約不適合責任ではなく、債務不履行の一般原則で処理します。履行期までに、契約の内容に合った物を渡せば、売主は債務を果たせます。履行期が来ても渡さなければ、前に見た履行遅滞、渡せなければ履行不能です。引渡しの前は、売主はまだ履行をする途中にあるので、特別の規定は要りません。引渡しによって、いったん履行がされたあとの不適合を扱うのが、562条以下だ、と整理できます。

要件2の前半 種類・品質

3つめの柱の入口。種類と品質の不適合とは何か。物の欠陥だけか。 図:3つめの柱の入口。種類と品質の不適合とは何か。物の欠陥だけか。

3つめの柱です。要件の2つめのうち、種類と品質を見ます。種類の不適合とは、頼んだ物とは別の物が届くことです。品質の不適合とは、届いた物が壊れている、性能が足りない、といったことです。種類と品質の区別には、微妙なところがあります。ただ、区別の実益は小さいです。種類の不適合でも、品質の不適合でも、条文上は、同じ扱いだからです。迷ったら、種類又は品質の不適合、と言えば足ります。品質は、物の欠陥に限りません。日当たりや騒音のような、環境の問題も、含まれると考えられています。過去にその部屋で事件があった、という心理的な欠陥も、同じです。見た目が壊れていなくても、買主が、その物に期待した価値を損なうからです。

設例の関係図。左が売主A、右が買主B。Bは、自宅を建てる目的であることをAに伝えて、土地を買った。後で、その土地の大部分が都市計画で道路になる予定の区域に入っていて、建物を建てても早晩取り壊すことになると分かった。 図:設例の関係図

  • 左が売主A、右が買主B
  • Bは、自宅を建てる目的であることをAに伝えて、土地を買った
  • 後で、その土地の大部分が都市計画で道路になる予定の区域に入っていて、建物を建てても早晩取り壊すことになると分かった

次に、法令上の制限です。買主のBが、自宅を建てる目的であることを売主のAに伝えて、土地を買いました。ところが、その土地の大部分が、都市計画で道路になる予定の区域に入っていて、建物を建てても、いずれ取り壊すことになると分かりました。建物は、物の傷みではなく、法令の網のせいで使えません。これも、契約不適合責任になるのでしょうか。

法令上の制限の判例。1=居宅の敷地に使う目的を表示して買った土地の約8割が都市計画街路の境域内にあった事案で、売主の責任(瑕疵)を認めた。出典=最判昭41・4・14 民集20巻4号649頁。2=宅地造成を目的とする買主が買った山林に保安林指定があった事案で、売主の責任(瑕疵担保責任)を認めた。出典=最判昭56・9・8 集民133号401頁。 図:法令上の制限の判例

  • 1=居宅の敷地に使う目的を表示して買った土地の約8割が都市計画街路の境域内にあった事案で、売主の責任(瑕疵)を認めた
  • 出典=最判昭41・4・14 民集20巻4号649頁
  • 2=宅地造成を目的とする買主が買った山林に保安林指定があった事案で、売主の責任(瑕疵担保責任)を認めた
  • 出典=最判昭56・9・8 集民133号401頁

旧法の下で、最高裁は、似た事案で、いずれも売主の責任を認めました。居宅の敷地にする目的を表示して買った土地の約8割が、都市計画の街路の区域に入っていた事案と、宅地造成の目的で買った山林が、保安林、つまり、木を切ったり造成したりが法律で制限される林に指定されていた事案です。当時の言葉でいう、瑕疵があるとされました。決め手は、Bが、自宅を建てる目的をAに伝えて買ったことです。住み続ける家を建てられる土地であることが、契約の内容になっていました。建てても、いずれ取り壊すことになる土地は、契約の内容に合いません。旧法の判例に沿えば、現行法でも、物の品質の不適合と考えるのが素直です。ただし、権利の不適合とみる余地もあります。権利の不適合とは、物そのものではなく、売主が移した所有権などの権利の側に、欠けがある場合です。この土地は、土そのものが傷んでいるわけではなく、法令が、その土地の使い方を縛っています。その縛りを、土地の性質と見るか、所有権に付いた欠けと見るかで、見方が分かれうるのです。答案では、判例の流れに沿って、品質の不適合として書けば足ります。どちらに当たるかで後の扱いが変わるところは、別の回で見ます。もう1つ、区別しておきます。買った土地に、他人の抵当権が付いている場合です。土地そのものは、傷んでいません。ただ、その抵当権が実行されると、Bは、手にした所有権を失うおそれがあります。欠けているのは、物ではなく、Bが手にした権利の側です。ですから、物の種類や品質の不適合ではなく、権利の不適合として、別に扱います。使うために必要な権利が欠けている場合も、同じです。

要件2の後半 数量と、判断の基準

4つめの柱の入口。数が足りないと、いつでも数量の不適合になるのか。 図:4つめの柱の入口。数が足りないと、いつでも数量の不適合になるのか。

4つめの柱です。冒頭の土地に戻ります。数量の不適合は、単に数が足りない、という意味ではありません。当事者が数量に特別の意味を与え、その数量を基礎に売買をした場合に、数が足りなかったときをいいます。この売買を、数量指示売買といいます。面積が足りなくても、数量の不適合とは言えない場面があります。分かれ目は、数量指示売買にあたるかです。その定義を、判例で確認します。ただし、この判例は、改正前の条文の言葉で述べられています。改正前の条文は、数量を指示して売買をした場合に、数量が足りなければ、特別の責任を認めていました。その、数量を指示して売買、という言葉の意味を述べたものです。現行の数量の不適合でも、この定義が使われます。

判例最判昭43・8・20 民集22巻8号1692頁

数量指示売買の意味 民法五六五条にいう「数量ヲ指示シテ売買」とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するものである。 ……売買契約において目的たる土地を登記簿記載の坪数をもつて表示したとしても、これでもつて直ちに売主がその坪数のあることを表示したものというべきではない。

数量指示売買の3つの要素。1=数量を確保する意思(当事者が実際の数量を確保したい)。2=売主が契約で数量を表示する。3=その数量を基礎に代金額を定める。典型は、単位数量×単価で代金を出す売買。 図:数量指示売買の3つの要素

  • 1=数量を確保する意思(当事者が実際の数量を確保したい)
  • 2=売主が契約で数量を表示する
  • 3=その数量を基礎に代金額を定める
  • 典型は、単位数量×単価で代金を出す売買

3つの要素に分けて読みます。まず1つめ、当事者が実際の数量を確保したいと考えていること。2つめ、その数量を、売主が契約で表示していること。3つめ、その数量を基礎にして、代金額が決まっていること。典型は、単価に面積を掛けて代金を出す売買です。次に、登記簿の面積です。土地は、登記簿の面積で特定して売るのが通例ですが、登記簿の面積は、実測と合わないことがあります。ですから、登記簿の面積で表示しても、それだけで、売主がその面積を表示したことにはなりません。この事案は、領収書に、登記簿どおりの面積が書かれ、代金は総額で決められていた土地の売買です。最高裁は、数量指示売買にあたると認めた原審を破棄して、差し戻しました。冒頭の土地に当てはめます。契約を3通りに変えて、実測は、どれも190平方メートルのままにします。まず1つめ、200平方メートル、1平方メートルあたり20万円で、代金を計算した場合。2つめ、代金は総額3800万円で、面積は、登記簿どおりの約200平方メートルと、土地を特定するために書いただけの場合。3つめ、面積200平方メートルを契約書に表示したが、代金は総額3800万円で決めた場合。それぞれ、数量の不適合になるか、考えてみてください。

当てはめの問い。実測はどれも190㎡。1=200㎡・1㎡あたり20万円で代金を計算。2=代金は総額3800万円、面積は登記簿どおり約200㎡と特定のために書いただけ。3=面積200㎡を契約書に表示、代金は総額3800万円で決めた。 図:当てはめの問い

  • 実測はどれも190㎡
  • 1=200㎡・1㎡あたり20万円で代金を計算
  • 2=代金は総額3800万円、面積は登記簿どおり約200㎡と特定のために書いただけ
  • 3=面積200㎡を契約書に表示、代金は総額3800万円で決めた

当てはめの答え。1=あたる。数量確保の意思・契約での表示・数量を基礎にした代金の3つがそろう。190㎡なら数量の契約不適合。2=あたらない。登記簿の面積で表示しても、直ちに売主がその面積を表示したとはいえない。190㎡でも数量の契約不適合にならない。3=分かれ目。総額でも、200㎡に単価を掛けて3800万円を出していたなら面積が代金の基礎=あたる。面積と関係なく総額で決めたなら3つめの要素を欠き、あたらない。 図:当てはめの答え

  • 1=あたる
  • 数量確保の意思・契約での表示・数量を基礎にした代金の3つがそろう
  • 190㎡なら数量の契約不適合
  • 2=あたらない
  • 登記簿の面積で表示しても、直ちに売主がその面積を表示したとはいえない
  • 190㎡でも数量の契約不適合にならない
  • 3=分かれ目
  • 総額でも、200㎡に単価を掛けて3800万円を出していたなら面積が代金の基礎=あたる
  • 面積と関係なく総額で決めたなら3つめの要素を欠き、あたらない

1つめは、あたります。数量を確保する意思、契約での表示、数量を基礎にした代金の3つがそろっているので、190平方メートルなら、数量の契約不適合です。2つめは、あたりません。登記簿の面積で表示しても、直ちに売主がその面積を表示したことにはなりません。190平方メートルでも、数量の契約不適合にはなりません。3つめは、分かれ目です。表示された面積が、代金額の基礎になっているかどうかで決まります。代金は総額3800万円でも、交渉のときに、200平方メートルに単価を掛けて、その3800万円を出していたなら、面積が代金の基礎です。3つの要素がそろうので、あたります。反対に、面積とは関係なく、この土地を3800万円で、と決めていたなら、3つめの要素を欠くので、あたりません。総額で書いてあるかではなく、総額をどう決めたかを見るのです。3通りを分けたのは、契約が数量にどんな意味を与えたか、でした。これは数量だけの話ではなく、種類も品質も共通です。契約不適合かどうかの基準は、契約の内容です。当事者が、契約で、種類、品質、数量に、どんな意味を与えたのかを明らかにする。注文書と、届いた品を突き合わせて、ずれていれば不履行、というのと同じです。それが出発点です。

設例の関係図。左が売主A、右が買主B。Bは中古の自転車を買った。契約のとき、Aは、前輪にキズがある、その分2割引き、と伝え、Bは承知して買った。 図:設例の関係図

  • 左が売主A、右が買主B
  • Bは中古の自転車を買った
  • 契約のとき、Aは、前輪にキズがある、その分2割引き、と伝え、Bは承知して買った

例で考えます。買主のBが、売主のAから、中古の自転車を買いました。契約のとき、Aは、前輪にキズがある、そのぶん2割引き、と伝え、Bは承知して買いました。引き渡された自転車の前輪にはキズがあります。キズは、契約の内容に織り込まれています。自転車は、契約の内容どおりなので、契約不適合ではありません。

隠れたの消滅。旧法=買主の善意・無過失が要件。現行=要件ではない。買主が知っていた事情は、契約の内容がどうだったかの認定の中で考慮される。 図:隠れたの消滅

  • 旧法=買主の善意・無過失が要件
  • 現行=要件ではない
  • 買主が知っていた事情は、契約の内容がどうだったかの認定の中で考慮される

旧法では、隠れた、つまり、買主の善意無過失が要件でした。そのため、買主が知っていれば、責任は生じませんでした。現行法では、これは要件ではなくなりました。買主が知っていた事情は、独立の要件としてではなく、契約の内容がどうだったか、という認定の中で考慮されます。キズを承知で、値引きを受けて買ったなら、そのキズは、契約の内容です。ただし、買主が知っていれば、常に責任がなくなるわけではありません。知っていても、契約の内容に取り込まれていなければ、不適合になりえます。たとえば、Bがキズに気づいていても、Aが、引渡しまでに直します、と約束していたなら、キズのない自転車が、契約の内容です。キズが残っていれば、不適合です。冒頭のBの土地も、同じ物差しです。200平方メートルという面積が、代金の基礎として契約の内容に入っていたから、10平方メートルの不足が、数量の契約不適合になるのです。

確かめる

確かめるその1。引渡しの前に、買った置き時計が壊れていると分かった。契約不適合責任か。 図:確かめるその1

  • 引渡しの前に、買った置き時計が壊れていると分かった
  • 契約不適合責任か

事例で確かめます。1つめ。引渡しの前に、買った置き時計が壊れていると分かりました。契約不適合責任でしょうか?

答えその1。いいえ。引渡しの前は一般の債務不履行(履行期に合った物を渡す義務)。 図:答えその1。いいえ。引渡しの前は一般の債務不履行(履行期に合った物を渡す義務)。

違います。引き渡されていないので、債務不履行の一般原則で処理します。562条1項は、引き渡された目的物と書いていました。引渡しの前は、売主はまだ、合った物を渡す義務の途中にいます。

確かめるその2。中古のノートパソコンの型番が、注文と違っていた。種類の不適合か、品質の不適合か。 図:確かめるその2

  • 中古のノートパソコンの型番が、注文と違っていた
  • 種類の不適合か、品質の不適合か

2つめ。中古のノートパソコンの型番が、注文と違っていました。種類の不適合ですか、品質の不適合ですか?

答えその2。どちらとも言えるが、条文上の扱いは同じ。種類又は品質の不適合でよい。 図:答えその2。どちらとも言えるが、条文上の扱いは同じ。種類又は品質の不適合でよい。

どちらとも言えます。ただ、条文上は同じ扱いなので、区別する意味は小さいです。種類又は品質の不適合、と言えば足ります。

確かめるその3。登記簿どおり約200㎡・総額3800万円。面積から代金を出した事情はない。実測190㎡だった。数量の不適合か。 図:確かめるその3

  • 登記簿どおり約200㎡・総額3800万円
  • 面積から代金を出した事情はない
  • 実測190㎡だった
  • 数量の不適合か

3つめ。登記簿どおり約200平方メートル、代金は総額3800万円とだけ書いてあり、面積から代金を計算した事情は何もない土地が、測ると190平方メートルでした。数量の不適合ですか?

答えその3。数量の不適合にならない。面積を基礎に代金を決めた事情がなく、数量指示売買にあたらない。 図:答えその3

  • 数量の不適合にならない
  • 面積を基礎に代金を決めた事情がなく、数量指示売買にあたらない

登記簿の面積の表示にとどまるなら、面積を基礎に代金を決めたとはいえません。数量指示売買にあたらないので、数量の不適合にならないと思います。数が足りないだけでは、数量の不適合にはなりません。

確かめるその4。買った土地に、他人の抵当権の登記が付いていた。物の不適合か。 図:確かめるその4。買った土地に、他人の抵当権の登記が付いていた。物の不適合か。

4つめ。買った土地に、他人の抵当権の登記が付いていました。物の不適合ですか?

答えその4。物の不適合ではなく、権利の不適合(別に扱う)。 図:答えその4。物の不適合ではなく、権利の不適合(別に扱う)。

物の種類や品質の不適合ではなく、権利の不適合として別に扱います。今日の規定が扱うのは、物の側の不適合です。

4つの柱のまとめと、冒頭の問い

今日の4つの柱。1=売主は契約の内容に合った物を渡す義務を負い、合わなければ債務不履行(契約不適合責任)。旧法の法定責任・隠れたは要らなくなった。2=要件1は引渡し。引渡し前は一般の債務不履行。3=要件2の前半は種類・品質(環境・心理・法令上の制限も)。4=要件2の後半は数量。数量指示売買に限る。判断の基準は契約の内容。 図:今日の4つの柱

  • 1=売主は契約の内容に合った物を渡す義務を負い、合わなければ債務不履行(契約不適合責任)
  • 旧法の法定責任・隠れたは要らなくなった
  • 2=要件1は引渡し
  • 引渡し前は一般の債務不履行
  • 3=要件2の前半は種類・品質(環境・心理・法令上の制限も)
  • 4=要件2の後半は数量
  • 数量指示売買に限る
  • 判断の基準は契約の内容

今日の話を整理します。1つめ、売主は、契約の内容に合った物を渡す義務を負います。合わなければ債務不履行で、それが契約不適合責任です。旧法の法定責任とは違い、隠れた、は要りません。2つめ、要件の1つめは引渡しです。引渡しの前は、一般の債務不履行です。3つめ、要件の2つめの前半は、種類と品質です。環境や心理的な欠陥、法令上の制限も含まれます。4つめ、後半は数量で、数量指示売買に限ります。判断の基準は、どれも契約の内容です。

冒頭の答え合わせ。言える。200㎡・1㎡あたり20万円で代金を計算した売買は数量指示売買。190㎡なら10㎡分は数量の契約不適合。何ができるかは次の回。 図:冒頭の答え合わせ

  • 言える
  • 200㎡・1㎡あたり20万円で代金を計算した売買は数量指示売買
  • 190㎡なら10㎡分は数量の契約不適合
  • 何ができるかは次の回

冒頭の問いの答えです。言えます。200平方メートル、1平方メートルあたり20万円で代金を計算したのですから、面積を基礎に代金を決めた数量指示売買です。足りない10平方メートル分は、数量の契約不適合にあたります。契約不適合の有無と、数量指示売買の当てはめは、論文で論点になりうるところです。

参照条文

  • 民法562条1項
  • 民法559条

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