契約不適合責任と買主の4つの救済
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第5章 契約 #250/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
動かない洗濯機、交換か修理か
図:冒頭の設例の関係図
- 左が売主A、右が買主B
- AはBに新品の洗濯機を12万円で売った
- 引渡しを受けて使うと、電源が入らず動かない
- Bは「新しいのと交換して」、Aは「修理で済ませたい」
図:冒頭の問いの答えの方向
- 選ぶのは買主
- ただし売主は、買主に不相当な負担を課さないなら、別の方法で追完できる
先に、答えの方向を言います。方法を選ぶのは、買主です。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課さないのなら、別の方法、ここでは修理で、直してもよいことになっています。条文では、562条1項のただし書です。前回は、どんなときに契約不適合責任が生じるのか、という要件を見ました。今日は、生じたら、買主は何を言えるのか、という効果です。前に危険の移転のところで、追完や減額、損害賠償、解除の4つが、できなくなる場面が出てきました。その4つが、今日の主役です。
柱1 追完請求
図:1つめの柱の入口。追完とは何か。方法は3つ。誰が選ぶのか。
1つめの柱です。追完とは、契約に合わない物を渡されたときに、契約どおりの形にしてもらうことです。直し方を誰が決めるのか、先に考え方を言います。困っているのは買主なので、まず買主に選ばせます。ただ、売主が別のやり方でも買主を同じように満足させられるなら、それを許しても買主は困りません。条文は、この2段で作られています。条文を出します。
条文民法562条
民法第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。 2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
図:追完の3つの方法
- 修補=壊れた所を直す(動かない洗濯機を修理)
- 代替物の引渡し=別の同種の物を渡す(同型の別の1台)
- 不足分の引渡し=足りない分を渡す(数が足りないとき)
方法は3つです。修補は、壊れた所を直すことです。代替物の引渡しは、別の同種の物を渡すことです。不足分の引渡しは、足りない分を渡すことです。洗濯機が動かないなら、修補か、同型の別の1台を渡す代替物の引渡しです。注文した12個のうち10個しか届かなかったなら、不足分の引渡しです。不適合の型に応じて、使い分けます。買主が交換と言えば、売主は必ず交換するしかないのか。そこを決めるのが、ただし書です。売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で追完できます。Bは交換を求めましたが、Aが修理をして、動く洗濯機をBに戻せるなら、Bに余計な負担は生じません。修理で十分なら、Aは修理でよいのです。反対に、不相当な負担になる例を挙げます。修理に何週間もかかり、そのあいだ、Bは洗濯ができないとします。小さな子どもがいて、毎日洗濯機を使う家庭なら、修理はBに重い負担です。この場合、Aは修理を押し通せず、Bの求める交換に応じることになります。決め手は、買主に不相当な負担を課すかどうか、という1点です。
図:追完の方法の選択
- 原則=買主が選ぶ
- 例外=売主は、買主に不相当な負担を課さないなら、別の方法で追完できる
整理します。方法を選ぶのは買主。ただし、買主に不相当な負担を課さないなら、売主は別の方法で追完できる。これが、冒頭の答えです。2項も読みます。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、追完を請求できません。たとえば、説明書に、水を入れたまま運ぶな、と書いてあったのに、Bがそのまま運んで壊したなら、Bは、直せとは言えません。壊した原因はBにあるのに、その後始末を相手に負わせるのは、公平ではないからです。
柱2 代金減額請求
図:2つめの柱の入口。代金減額を言うには、なぜ先に追完の催告が要るのか。
2つめの柱です。代金減額請求とは、不適合の程度に応じて、代金を下げてもらうことです。形成権です。形成権とは、相手の承諾なしに、一方的な意思表示だけで、法律関係を変えられる権利のことです。買主が、減額する、と言えば、それだけで、代金が下がります。ここで、1つ思い出してください。解除は、まず何をするのが原則だったでしょうか?相当の期間を定めて催告をして、その期間内に履行がなければ解除できる、でした。この復習が、そのまま答えの鍵になります。条文を出します。
条文民法563条1項
民法第563条第1項 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
1項の骨格です。買主がまず、相当の期間を定めて、追完をしてください、と催告します。その期間内に追完がなければ、そこで初めて、減額を請求できます。いきなり、値引きしろ、とは言えません。
図:563条1項の骨格
- 追完の催告(相当の期間を定める)→期間内に追完がない→不適合の程度に応じて減額を請求できる
- いきなり減額は言えない
流れにすると、催告、期間の経過、減額、の順です。
図:減額が先に催告を要する理由
- 減額=契約の一部解除の性質
- 解除はまず債務者に履行のチャンスを与える(541条)
- 同じ発想で、売主に、先に直す機会を与える
理由は、代金減額の性質にあります。減額は、契約の一部を解除する性質を持っています。その部分に当たる代金の債務を、消すのです。たとえば、12個を注文して10個しか届かず、2個分の代金を下げるなら、2個分だけ、売り買いをやめたのと同じ結果になります。契約を、一部だけ、なかったことにする。それなら、解除と同じ仕組みになります。解除は、まず相手に履行のチャンスを与えます。そこで、減額も、まず売主に、直すチャンスを与えるのです。最初のレストランに戻ります。注文と違う料理が出てきたとき、いきなり「半額にして」と言うより、「作り直してください」と先に頼むのが筋でしょう。作り直す気がなかったり、もう間に合わなかったりしたら、そこで初めて、値引きの話に進みます。その、値引きの話に進んでよい場面が、2項です。
条文民法563条2項
民法第563条第2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。 一 履行の追完が不能であるとき。 二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。 四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
2項は、催告なしで減額できる場面を、4つ挙げています。
条文民法542条1項
民法第542条第1項 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 一 債務の全部の履行が不能であるとき。 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
解除のほうの、催告なしで解除できる場面です。前に見た条文です。催告が要るのは、相手に、直すチャンスを与えるためでした。チャンスを与えても無駄な場面なら、催告は省けます。542条1項は、その無駄な場面を並べています。減額の2項は、その号の、履行、を、追完、に置き換えて、並べ直したものです。
図:563条2項と542条1項の対照表
- 減額の2項1号=追完不能←解除の1項1号=全部不能
- 2号=追完拒絶←2号=全部拒絶
- 3号=定期行為←4号=定期行為
- 4号=見込みなし←5号=見込みなし
- 解除の1項3号(一部不能・拒絶で残部では目的不達)に当たる号は、減額側にない
2項の4つの場面と、解除の542条1項を並べます。減額の1号、追完が不能なとき。解除の1号に、当たります。減額の2号、売主が追完を拒絶する意思を明確に示したとき。解除の2号に、当たります。減額の3号、特定の日時までに追完しないと目的を達せない、いわゆる定期行為の場合。解除の4号に、当たります。減額の4号、催告しても追完を受ける見込みがないことが明らかなとき。解除の5号に、当たります。解除の3号、つまり、一部の不能や拒絶で、残りでは目的を達せないとき、には、減額側に当たる号がありません。それは、全部の解除に進む場面です。もっとも、その場面は追完不能か追完拒絶でもあるので、1号や2号で、催告なしに減額もできます。残りを持ったまま値引きを受けるか、全部をやめるかは、買主が選びます。作りが解除と同じ、と覚えれば、4つを丸暗記せずに済みます。
図:設例の関係図
- 左が売主A、右が買主B
- AはBに土地を売った
- 面積200㎡、1㎡あたり20万円、実測は190㎡だった
前回の土地に戻ります。売主のAと、買主のBの売買です。面積200平方メートル、1平方メートルあたり20万円で代金を決めたのに、測ると190平方メートルでした。数量指示売買の、数量の契約不適合です。不足の10平方メートルについて、Bは、不足分の引渡し、つまり追完を求められます。Aが追完を拒絶する意思を明確に示したなら、2号に当たり、催告なしで、減額を請求できます。減らせる額は、10平方メートル掛ける20万円で、200万円です。隣の土地を足して渡すなど、そもそもできないなら、1号に当たり、催告なしです。
図:当てはめの問い
- Aが「足りない分は渡さない。値引きもしない」と、はっきり言った
- Bは、追完の催告をしてから減額を請求する必要があるか
確かめます。Aが「足りない10平方メートルは渡さない」と、はっきり言いました。Bは、あらためて追完の催告をしてから、減額を請求する必要があるでしょうか?
図:当てはめの答え。要らない。563条2項2号。催告なしで直ちに減額を請求できる。
要りません。2号の、拒絶の意思の明確な表示にあたるので、催告なしで、直ちに減額を請求できると思います。拒絶されているのに、催告しても意味がありません。3項も、読みます。
条文民法563条3項
民法第563条第3項 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、1項でも2項でも、減額できません。追完の2項と同じ発想です。解除の543条とも、同じです。
図:代金増額請求。売主が多く渡したとき、売主は買主に、増額を請求できるか。できない。
逆の場面も、考えます。契約より多く渡してしまった売主は、買主に、増額を請求できるでしょうか? 答えは、できない、と考えられています。追完も減額も、不適合に苦しむ買主を守る規定で、売主を守る規定ではないからです。売主は、渡し過ぎた分を、不当利得として返してもらう道で、救済を受けます。
柱3 損害賠償と解除
図:3つめの柱の入口。契約不適合は債務不履行。だから、一般のルールがそのまま使える。
3つめの柱です。冒頭に言った筋に戻ります。契約不適合は、債務不履行そのものです。その筋を、条文にしたのが、564条です。
条文民法564条
民法第564条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
追完と減額の条文は、415条の損害賠償と、541条、542条の解除を、妨げない。つまり、買主は、特別な2つに加えて、一般の道具もそのまま使えます。損害賠償から見ます。ここで、この回の核になる区別が出ます。条文を出します。
条文民法415条1項
民法第415条第1項 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
ただし書です。債務者の責めに帰することができない事由、つまり、帰責事由がないときは、損害賠償は認められません。帰責事由は、単なる落ち度の有無ではなく、契約と取引上の社会通念に照らして判断されます。賠償の範囲は、一般ルールどおりで、前に見た、契約どおりに履行されていれば得られた利益、履行利益にまで及びます。追完に代わる損害賠償、つまり、直してもらう代わりに払わせるお金も、この賠償の1つの形です。前に、同時履行の抗弁権のところで、買主は、この賠償を受けるまで、代金の支払を拒める、と見ました。その賠償が、ここに当たります。洗濯機で境目を見ます。Aが倉庫で箱を落とし、壊れたと気づかないまま渡したなら、Aに帰責事由があるので、Bは、修理が終わるまでのコインランドリー代も、損害賠償として求められます。反対に、Aがふつうに保管していたのに、引渡しの前の大地震で、外からは分からない傷を受けていた場合でも、新品なら、Aは別の動く1台を渡せたので、直ちに免責とはいえません。契約と取引上の社会通念に照らして、Aに負わせるべきでない原因と評価されたときに、はじめて損害賠償は求められません。
図:帰責事由の対比
- 損害賠償=売主の帰責事由が必要(415条1項ただし書)
- 追完請求・代金減額請求・解除=売主の帰責事由は不要
対比します。損害賠償は、売主の帰責事由が要ります。追完、代金減額、解除は、売主の帰責事由が要りません。解除は、前に見たとおり、債務者の帰責事由を要件にしません。追完は、約束どおりに直してください、という履行の請求です。減額は、一部の解除です。売主の帰責事由があるかを問わず、直す、値引き、やめる、は言えるのです。立ち止まって、考えてください。売主に帰責事由がない不適合のとき、4つのうち、どれが残るでしょうか?損害賠償だけが使えなくて、追完請求と代金減額と解除は残ります。1つ聞きます。契約を解除するのに、債務者の帰責事由は要るでしょうか?
要りません。ただ、債権者に帰責事由があると、解除できません。解除の場面に移ります。解除は、541条の催告解除と、542条の無催告解除が、そのまま使えます。ここで求める催告は、直してください、という追完の催告です。
条文民法541条
民法第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
ただし書が、ここで効きます。たとえば、洗濯機の外装に小さな傷があるだけで、動作に問題がないなら、期間を経過した時の不履行は軽微と評価される余地があります。軽微かどうかは、事案ごとに判断します。そういうときは、まず追完か、減額を使うことになります。
図:設例の関係図
- 左が売主A、右が買主B
- Bは説明書に反して洗濯機を使い、自分で壊した
- Bは、修理、減額、解除、損害賠償を求められるか
買主に落ち度がある場合も、見ます。Bが説明書に反した使い方をして、洗濯機を自分で壊したとします。追完は562条2項、減額は563条3項で、できません。解除も、543条で、できません。
条文民法543条
民法第543条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
損害賠償も、同じです。買主の責めに帰すべき事由が原因の不適合は、売主の責めに帰すべき事由がないので、認められません。なお、買主にも落ち度が一部あるにとどまるときは、過失相殺で、責任の有無と額に反映されます。結論として、買主のせいで不適合が生じたなら、4つとも使えません。
図:救済どうしの関係
- 代金減額を選ぶと、追完請求・追完に代わる損害賠償・解除とは両立しない
- 減額は一部解除で、契約の残りを維持する選択だから
最後に、救済どうしの関係です。代金減額を選ぶと、追完の請求も、追完に代わる損害賠償も、解除も、同時には使えません。減額は、契約の一部を解除して、残りを維持する選択だからです。欠けた分は、値引きで、もう清算されています。同じ欠けについて、さらに直させたり、直す代わりのお金を取ったりすれば、二重に取ることになります。残りを維持すると決めたのに、やめたい、と言うのも、選んだことと食い違います。3つめの柱を締めます。契約不適合は、債務不履行そのものです。だから、一般の道具の損害賠償と解除が、そのまま使えます。そして、売主の帰責事由が要るのは、損害賠償だけです。
柱4 4つの救済の一覧表
図:4つめの柱の入口
- 4つの救済を、3つの観点で並べる
- 売主の帰責事由・買主の帰責事由・催告
4つめの柱です。ここまでの内容を、表にします。観点は3つです。売主の帰責事由が要るか。買主の帰責事由で不適合が生じたらどうなるか。催告が要るか。表を埋める前に、1つ聞きます。買主のせいで不適合が生じたら、4つのうち、どれが使えないでしょうか?
図:4つの救済の一覧表(帰責事由)。行=追完請求(562条)・代金減額請求(563条)・損害賠償(415条・564条)・解除(541条・542条・564条)。列=売主の帰責事由・買主の帰責事由で不適合。追完=不要/不可(562条2項)。減額=不要/不可(563条3項)。損害賠償=必要/不可(一部の落ち度は過失相殺)。解除=不要/不可(543条)。
全部使えません。追完は562条2項、減額は563条3項、解除は543条、損害賠償も認められません。帰責事由の表です。追完は、売主の帰責事由が不要で、買主のせいなら不可です。減額も、不要で、不可です。損害賠償は、売主の帰責事由が必要で、買主のせいなら不可です。一部の落ち度は、過失相殺で調整します。解除は、不要で、不可です。まとめると、売主の帰責事由が要るのは損害賠償だけ。買主のせいなら、全部できない。
図:4つの救済の一覧表
- 催告
- 追完請求=不要(請求そのもの)。代金減額請求=原則必要(追完の催告)、4場合は不要。損害賠償=不要。解除=原則必要(541条)、5場合は不要(542条1項)。
催告の表です。追完は、請求そのものなので、催告は要りません。減額は、原則として追完の催告が要り、4つの場合は不要です。損害賠償は、催告が要りません。解除は、原則として催告が要り、5つの場合は不要です。催告が絡むのは、減額と解除です。どちらも、解除の作りだから、と覚えます。
確かめる
図:確かめるその1
- 売主に帰責事由がない欠陥のある物を、買主が受け取った
- 損害賠償を請求できるか
事例で確かめます。1つめ。売主に帰責事由のない欠陥でも、買主は、損害賠償を請求できるでしょうか?
図:答えその1。できない。追完・減額・解除は、売主に帰責事由がなくても言える。
できません。損害賠償だけは、売主の帰責事由が要るからです。追完、減額、解除は、売主に帰責事由がなくても言えます。
図:確かめるその2。買主が説明書に反して使って壊した洗濯機。修理を求められるか。
2つめ。買主が、説明書に反して使って壊した洗濯機の修理を、売主に求められるでしょうか?
図:答えその2
- 求められない
- 562条2項
- 減額(563条3項)・解除(543条)も不可
求められません。562条2項で、買主の責めに帰すべき事由による不適合は、追完を請求できないからです。減額も解除も、同じ理由でできません。
図:確かめるその3。追完の催告なしに、代金減額を請求できるのは、どんな場面か。
3つめ。追完の催告をしないで、代金減額を請求できるのは、どんな場面でしょうか?
図:答えその3。563条2項の4場合。不能・拒絶・定期行為・見込みなし。
563条2項の4つの場合です。追完が不能なとき、売主がはっきり断ったとき、定期行為で時期を過ぎたとき、催告しても見込みがないことが明らかなときです。直せない、直さないと言われた、間に合わない、見込みがない、という場面です。
図:確かめるその4
- 契約より多く渡した売主は、増額を請求できるか
- 減額を選んだ後に、解除できるか
4つめ。契約より多く渡した売主は、増額を請求できるでしょうか?できません。買主を守る規定ですから、売主は不当利得で返してもらいます。もう1問です。買主が代金減額を選んだあとで、さらに解除を求められるでしょうか?
図:答えその4
- 増額請求はできない(売主は不当利得)
- 減額を選ぶと、追完・追完に代わる損害賠償・解除とは両立しない
求められません。減額は一部解除で、契約を維持する選択だからです。どちらも、今日の筋から答えられます。
4つの柱のまとめと、冒頭の問い
図:今日の4つの柱
- 1=追完請求(562条)
- 方法は買主が選ぶ
- 買主に不相当な負担を課さないなら売主は別の方法でもよい
- 2=代金減額請求(563条)
- 一部解除の性質だから、原則は追完の催告が先
- 無催告は4場合
- 3=損害賠償と解除(564条)
- 一般ルールへ戻る
- 売主の帰責事由が要るのは損害賠償だけ
- 4=一覧表
- 買主のせいなら4つとも不可
今日の話を整理します。1つめ、追完請求です。方法は買主が選び、買主に不相当な負担を課さないなら、売主は別の方法でもよい。2つめ、代金減額請求です。一部解除の性質だから、原則は追完の催告が先で、無催告は4つの場合です。3つめ、損害賠償と解除です。一般ルールがそのまま使え、売主の帰責事由が要るのは、損害賠償だけです。4つめ、買主のせいで生じた不適合は、4つとも使えません。
図:冒頭の答え合わせ
- 方法を選ぶのは買主
- ただし売主は、買主に不相当な負担を課さないなら、修理で追完できる
- 562条1項ただし書
冒頭の問いの答えです。交換か修理かを選ぶのは、買主のBです。ただし、売主のAが、修理で足りて、Bに不相当な負担を課さないのなら、Aは修理で追完できます。救済の選び方と、要件の当てはめは、論文で論点になりうるところです。
参照条文
- 民法562条
- 民法563条1項
- 民法563条2項
- 民法542条1項
- 民法563条3項
- 民法564条
- 民法415条1項
- 民法541条
- 民法543条