民法ゼロから民法#255

準消費貸借と貸主の担保責任

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第5章 契約 #255/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

ツケを借金に書き換えたら

冒頭の設例の関係図。左が貸主A、右が借主B、上に保証人C。AはBに、たまった商品代金のツケ50万円を持っている。この代金債務にはCが保証人として付いている。AとBは「50万円を借りたことにして、毎月5万円ずつ返す」約束に切り替えた。 図:冒頭の設例の関係図

  • 左が貸主A、右が借主B、上に保証人C
  • AはBに、たまった商品代金のツケ50万円を持っている
  • この代金債務にはCが保証人として付いている
  • AとBは「50万円を借りたことにして、毎月5万円ずつ返す」約束に切り替えた

冒頭の問いの答えの方向。切り替えの後も、Cの保証は残る。当事者が「古い債務を消して別の債務にする」とはっきり決めていなければ、同じ債務が形を変えて続く。 図:冒頭の問いの答えの方向

  • 切り替えの後も、Cの保証は残る
  • 当事者が「古い債務を消して別の債務にする」とはっきり決めていなければ、同じ債務が形を変えて続く

先に、答えの方向を言います。Cの保証は残ります。古い債務を消して、まったく別の債務にする、とはっきり決めていないかぎり、債務は同じものとして続くと考えるからです。決め手は、当事者の意思です。理由は、最後の柱で、判例を読みながら確かめます。前回、書面でする消費貸借の、受け取る前の解除と破産は別に見る、と言いました。今日はそれを回収します。あわせて、渡した物が悪かったときの貸主の責任と、いま出てきた、ツケを借金に書き換える契約を見ます。

柱1 貸主の担保責任

1つめの柱の入口。貸主の担保責任=貸主が渡した物が、約束した種類・品質・数量に合っていなかったときの責任。利息付きの消費貸借=借主が利息を払う(有償)。無利息の消費貸借=タダで貸す(無償)。 図:1つめの柱の入口

  • 貸主の担保責任=貸主が渡した物が、約束した種類・品質・数量に合っていなかったときの責任
  • 利息付きの消費貸借=借主が利息を払う(有償)
  • 無利息の消費貸借=タダで貸す(無償)

1つめの柱です。消費貸借では、お金のほかに、おこめやワインのような代替物も借りられます。借りたおこめが、約束と違う品質だったとき、貸主はどんな責任を負うのか。これが、貸主の担保責任です。条文を出します。590条です。

条文民法590条

民法第590条 1 第五百五十一条の規定は、前条第一項の特約のない消費貸借について準用する。 2 前条第一項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。

1項の、前条第一項の特約とは、利息の特約のことです。つまり、利息の特約のない消費貸借、無利息の消費貸借には、551条を準用する、と言っています。では、利息付きの消費貸借はどうなるのか。ここが、条文に書かれていない部分です。利息付きの消費貸借は、借主が利息を払うので、対価のある有償契約です。前にも出てきた559条は、売買以外の有償契約に、売買の規定を準用すると定めています。

条文民法559条

民法第559条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

利息付きの消費貸借。有償契約なので、売買の規定を準用(559条)。借主が使える道具=追完請求・利息の減額請求・損害賠償・解除。売買の代金減額請求は、消費貸借では利息の減額請求に読み替わる。数量の不適合も同じ。 図:利息付きの消費貸借

  • 有償契約なので、売買の規定を準用(559条)
  • 借主が使える道具=追完請求・利息の減額請求・損害賠償・解除
  • 売買の代金減額請求は、消費貸借では利息の減額請求に読み替わる
  • 数量の不適合も同じ

利息付きなら、売買の買主と同じ道具を、借主が使えます。追完請求、代金減額請求、損害賠償、解除の4つです。要件は、契約不適合責任の回で見たとおりです。ただ、消費貸借には代金がありません。代金減額請求は、利息の減額請求に読み替わります。数量が足りないときも、同じ道具が使えます。設例です。利息を払う約束で、米を10キロ借りました。届いたおこめは、半分が傷んでいました。借主は、傷んでいない米を渡すよう求められます。追完です。それが無理なら、その分、利息を減らすよう求められます。利息を払う代わりに、きちんとした物を受ける。有償契約ですから、売買と同じ筋になります。

無利息の消費貸借。タダで貸す=無償契約。551条1項を準用。貸主は、目的物を特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定される。渡した時の状態でよく、細かい不具合まで責任を負わない。 図:無利息の消費貸借

  • タダで貸す=無償契約
  • 551条1項を準用
  • 貸主は、目的物を特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定される
  • 渡した時の状態でよく、細かい不具合まで責任を負わない

一方、無利息の消費貸借は、タダで貸す契約です。贈与に近いので、贈与の551条を準用します。贈与の回で見た条文です。1項を出します。

条文民法551条1項

民法第551条 1 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。

無利息の消費貸借なら、貸主は、貸す物を特定した時の状態で渡す約束をした、と推定されます。ですから、知人から米をタダで借りて、それが古米だった場合、貸主は、特定した時の状態で渡したのですから、責任は問われにくくなります。タダで貸してくれた人に、品質まで保証させるのは重すぎるからです。贈与の、タダだから責任が軽いという筋と、同じです。ただし、どちらの場合にも使える共通の定めが、590条2項にあります。

価額の返還(590条2項)。利息の有無を問わない。渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき、借主はその物の価額を返還できる。理由=借りた物は使ってしまっており、同じ不適合な物を調達して返すのは難しい。 図:価額の返還

  • 590条2項
  • 利息の有無を問わない。渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき、借主はその物の価額を返還できる。理由=借りた物は使ってしまっており、同じ不適合な物を調達して返すのは難しい。

2項は、利息の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が、種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときは、借主はその物の価額を返還できる、と言っています。価額の返還です。理由は、消費貸借の性質にあります。借りた物は、使ってしまっています。悪い米を借りたなら、返すときも、同じ悪い米を探して返さなければなりません。それは、とても難しい。そこで、その米の価額を返せば足りる、としたのです。ここは、種類又は品質だけです。数量は、2項には書かれていません。利息付きの場合に、売買の規定で数量の不適合を扱えることとは、分けて覚えてください。

柱1の比較板(主役)。列=利息付きの消費貸借/無利息の消費貸借。行=性質(有償/無償)/準用される規定(売買の規定=559条/贈与の551条1項=590条1項)/借主が言えること(追完・利息の減額・損害賠償・解除/特定した時の状態でよい)/価額の返還(どちらも可=590条2項)。 図:柱1の比較板(主役)。列=利息付きの消費貸借/無利息の消費貸借。行=性質(有償/無償)/準用される規定(売買の規定=559条/贈与の551条1項=590条1項)/借主が言えること(追完・利息の減額・損害賠償・解除/特定した時の状態でよい)/価額の返還(どちらも可=590条2項)。

柱1を、1枚に並べます。列は、利息付きと無利息です。性質は、有償と無償。準用される規定は、売買の規定と、贈与の551条1項。借主が言えることは、追完、利息の減額、損害賠償、解除と、特定した時の状態でよい、です。そして価額の返還は、どちらでも使えます。

柱2 受け取る前の解除と破産

2つめの柱の入口。書面でする消費貸借で、お金が渡る前に、借主が「やっぱり要らない」となった場合。 図:2つめの柱の入口

2つめの柱です。ここで、前回の話を1つ思い出します。書面でする消費貸借は、いつ成立するのでしたか?書面で、貸す約束と返す約束を合意した時です。お金を受け取る前でも成立します。つまり、お金が渡る前に、貸主には貸す債務が生じています。そこで設例です。AとBは、書面で、来月100万円を貸す約束をしました。ところが、Bは別の当てが見つかって、お金が要らなくなりました。お金は、まだ渡っていません。Bは、やめられるでしょうか。587条の2の2項と3項を出します。

条文民法587条の2第2項・3項

民法第587条の2 2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。 3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。

2項の前段です。借主は、お金を受け取るまで、契約を解除できます。Bはやめられます。理由は、借りる義務は負わせない、という考えです。書面でする消費貸借では、貸主には貸す債務が生じます。しかし、借主に、借りなければならない義務までは負わせません。要らなくなったお金を無理に借りさせても、Bは使わないお金を返す債務を負うだけです。貸主が困る分は、後段の、損害の賠償で埋めます。後段です。ただし、その解除で貸主が損害を受けたときは、借主に賠償を請求できます。たとえば、Aが貸すために、別の資金を借りて用意していたとします。その調達にかかった費用は、損害になりえます。解除はできるが、貸主の損害の分は賠償する。この2つは両立します。3項は、破産です。お金が渡る前に、AかBのどちらかが破産手続開始の決定を受けたら、書面でする消費貸借は、効力を失います。Bが破産したなら、返してもらえる見込みの薄い相手に、貸させることになります。Aが破産したなら、もう約束どおり貸せる状態ではありません。どちらでも、貸す約束を残しておく意味がないのです。

使用貸借の、受け取る前の解除と、似ていますが、逆です。ここは、取り違えやすいところなので、並べます。

弁別板(主役)。受け取る前に解除できる人。書面でする消費貸借=借主(587条の2第2項)。書面によらない使用貸借=貸主(593条の2・書面があればできない)。書面の効き方。消費貸借=書面があって初めて受け取る前に契約が成立する→その契約を借主がやめられる。使用貸借=書面が無いときだけ貸主がやめられる。 図:弁別板

  • 主役
  • 受け取る前に解除できる人。書面でする消費貸借=借主(587条の2第2項)。書面によらない使用貸借=貸主(593条の2・書面があればできない)。書面の効き方。消費貸借=書面があって初めて受け取る前に契約が成立する→その契約を借主がやめられる。使用貸借=書面が無いときだけ貸主がやめられる。

解除できる人が違います。書面でする消費貸借は、受け取る前に、借主が解除できます。書面によらない使用貸借は、借主が物を受け取るまで、貸主が解除できます。書面の効き方も逆です。消費貸借は、書面があって初めて、受け取る前に契約が成立します。その契約を、借主がやめられるのです。使用貸借は、書面が無いときだけ、貸主がやめられます。書面があれば、やめられません。理由も、筋が違います。消費貸借は、借りる義務を負わせないためです。使用貸借は、約束だけのタダの貸し借りで、貸主を縛りすぎないためです。今日は、解除できる側が逆、というところまで押さえてください。

柱3 準消費貸借

3つめの柱の入口。ツケの代金債務50万円を、「50万円を借りたことにして、毎月5万円ずつ返す」に切り替える。物は新たに渡っていない。 図:3つめの柱の入口

  • ツケの代金債務50万円を、「50万円を借りたことにして、毎月5万円ずつ返す」に切り替える
  • 物は新たに渡っていない

3つめの柱です。冒頭の、ツケを借金に書き換える契約に戻ります。これが準消費貸借です。以前、詐害行為取消権の回で、一度出てきました。すでにある債務を、消費貸借の契約の目的に切り替えることです。条文を出します。588条です。

条文民法588条

民法第588条 金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。

読みどころは2つです。ひとつは、金銭その他の物を給付する義務を負う者がある、というところです。すでに、払う義務があることが前提です。もうひとつは、消費貸借の目的とすることを約したとき、というところです。合意だけで、消費貸借が成立したとみなされます。587条のように、物を受け取る必要はありません。すでに相手の手元にある物を、借りた形にするからです。使われ方は、複数の債務を1本にまとめることです。売買の代金、損害賠償、貸したお金など、バラバラの債務を、1つの貸金にまとめて、返し方も決め直す。冒頭のように、毎月5万円ずつ返す、と整える場面です。

準消費貸借の成立の前提。旧債務が存在しなければ、準消費貸借は効力を生じない。旧債務が無いと争う側が、その事実を立証する。 図:準消費貸借の成立の前提

  • 旧債務が存在しなければ、準消費貸借は効力を生じない
  • 旧債務が無いと争う側が、その事実を立証する

前提が1つあります。切り替える元の債務、つまり旧債務が無ければ、準消費貸借も効力を生じません。それを判例が確かめています。

判例最判昭43・2・16 民集22巻2号217頁

旧債務が無い準消費貸借 準消費貸借契約は目的とされた旧債務が存在しない以上その効力を有しないものではあるが、右旧債務の存否については、準消費貸借契約の効力を主張する者が旧債務の存在について立証責任を負うものではなく、旧債務の不存在を事由に準消費貸借契約の効力を争う者においてその事実の立証責任を負うものと解するを相当とする

読み方です。旧債務が存在しなければ、準消費貸借は効力を持ちません。ただし、旧債務の存在を立証するのは、効力を主張する側ではありません。旧債務が無い、と争う側が、その事実を立証します。冒頭の例なら、Bが後から、ツケはもう払い終えていた、と言って争うなら、それを示すのはBです。更改でも、旧債務が存在することが前提でした。同じ筋です。ここから、本題の効力です。旧債務は、準消費貸借で、どうなるのでしょうか。消えて、新債務が生まれるのか。それとも、同じ債務が続くのか。ここで考えてください。古い債務を消す、とはっきり決めていなかったとき、旧債務と新債務は、別物でしょうか、同じ債務でしょうか?

効力の軸。旧債務と新債務が別物か同一かは、まず当事者の意思で決まる。意思が明らかでないときは、同一性を保つと推定される。 図:効力の軸

  • 旧債務と新債務が別物か同一かは、まず当事者の意思で決まる
  • 意思が明らかでないときは、同一性を保つと推定される

答えは、同じ債務が続く、です。まず当事者の意思で決まり、意思が明らかでないときは、同一性を保つ、と推定されます。保証の判例で、読みます。

判例最判昭33・6・24 集民32号437頁

準消費貸借と保証 準消費貸借が成立した場合に、既存債務は消滅して新債務が発生するのか、又は債務は同一性を維持し単に消費貸借の規定に従うこととなるのかは、先ず当事者の意思によるべく、当事者の意思が明らかでない場合には、後の場合に属するものと推定すべき……通常は、準消費貸借の成立により、旧債務は爾後債務の同一性を維持しつつ、消費貸借という形をとつて存続するにいたるものと解するのが相当

冒頭の答えの板。切り替えの後も、Cの保証は残る。当事者の意思が明らかでなければ、旧債務は同一性を保って存続すると推定される。 図:冒頭の答えの板

  • 切り替えの後も、Cの保証は残る
  • 当事者の意思が明らかでなければ、旧債務は同一性を保って存続すると推定される

読み方です。既存債務が消えて新債務が生まれるのか、同じ債務が消費貸借の規定に従うだけなのかは、先ず当事者の意思で決まります。意思が明らかでなければ、後の場合、つまり同じ債務が続くと推定されます。冒頭に戻ります。AとBは、古い債務を消す、とはっきり決めていません。ですから、ツケの代金債務は、同一性を保ったまま続きます。保証は、主たる債務に従う付従性がありますから、Cの保証も残ります。冒頭の答えは、残る、です。なぜ、同じ債務と推定するのか。AとBが切り替えたのは、返し方を毎月5万円に整えるためです。そのために、Cの保証まで手放すつもりだった、とは普通は考えられません。形を変えただけなら、中身も、付いているものも続く、と読むのが当事者の意思に合うのです。

逆に、AとBが、ツケの代金債務はここで消して、まったく別の借金にする、とはっきり決めていたら、Cが保証していた債務が消えるので、Cの保証も消えます。では、更改との違いを一言で言います。更改は、古い債務を消して、新しい債務に入れ替える契約でした。ただし、その意思が明らかでなければ成立しません。準消費貸借も、消す意思が明らかでなければ、同じ債務が続きます。向きは同じです。違いは、更改が、給付の内容の重要な変更か、債務者や債権者の交替で、新しい債務を生み出す契約だ、というところです。準消費貸借は、当事者はそのままで、債務を消費貸借の形に切り替えるだけです。同じ筋で、残るものがあと2つあります。1つめは、同時履行の抗弁権です。

判例最判昭62・2・13 集民150号175頁

準消費貸借と同時履行の抗弁権 土地の売買代金債務を目的とする準消費貸借契約が締結された場合であつても、右契約が、従来明確でなかつた残代金の支払時期とこれに付すべき利息の利率を定めるとともに連帯保証人を付すことを目的としてされたなど原判示の事情(原判決理由参照)があるときは、売主は、買主に対する所有権移転登記手続債務につき、売買契約に基づいて有していた同時履行の抗弁権を失わず、右準消費貸借契約上の債務の履行の提供があるまで、自己の債務の履行を拒むことができる

読み方です。土地の売買代金を準消費貸借にした場合でも、一定の事情があれば、売主は、売買で持っていた同時履行の抗弁権を失いません。買主が準消費貸借上の債務の履行を提供するまで、登記の手続を拒めます。設例です。Aが買主Bに土地を売り、残りの代金を準消費貸借にしました。BがAに、先に登記を移せと言ってきても、Aは、代金の履行の提供があるまで拒めます。ただし、判例は、事情があるときに残る、という言い方です。いつも必ず残る、とまでは言えません。2つめは、詐害行為取消権で守られる債権、つまり被保全債権です。

判例最判昭50・7・17 民集29巻6号1119頁

準消費貸借と詐害行為取消権 準消費貸借契約に基づく債務は、当事者の反対の意思が明らかでないかぎり、既存債務と同一性を維持しつつ、単に消費貸借の規定に従うこととされるにすぎないものと推定されるのであるから、既存債務成立後に特定債権者のためになされた債務者の行為は、詐害行為の要件を具備するかぎり、準消費貸借契約成立前のものであつても、詐害行為としてこれを取り消すことができるものと解するのが相当である

読み方です。準消費貸借の債務は、反対の意思が明らかでなければ、既存債務と同一性を保つと推定されます。だから、既存債務ができた後に、債務者が特定の債権者のためにした行為は、準消費貸借の成立より前のものでも、詐害行為として取り消せます。詐害行為取消権の回で見たとおり、守られるのは、行為の前の原因に基づく債権でした。準消費貸借が行為の後でも、債務は同じなので、元になった債務は、行為の前からあります。だから、守られる債権に当たるのです。

柱3の板(主役)。引き継がれるもの=保証・担保/同時履行の抗弁権(事情があるとき)/旧債務を被保全債権とする詐害行為取消権。切れるもの=消滅時効は新債務を基準に数える。 図:柱3の板

  • 主役
  • 引き継がれるもの=保証・担保
  • 同時履行の抗弁権(事情があるとき)
  • 旧債務を被保全債権とする詐害行為取消権。切れるもの=消滅時効は新債務を基準に数える。

3つを、1枚にまとめます。引き継がれるものは、保証と担保、同時履行の抗弁権、旧債務を被保全債権とする詐害行為取消権です。同一性が保たれるからです。一方、切れるものもあります。消滅時効です。時効は、旧債務ではなく、新債務を基準に考えます。同じ債務なのに、と思うかもしれません。判例の言葉を思い出してください。同じ債務のまま、消費貸借の規定に従う、でした。続くのは、債務そのものと、それに付いているものです。保証も、抗弁権も、元になった出来事も、こちらに入ります。一方、どの規定で扱うかは、消費貸借に切り替わります。時効は、この、どの規定で扱うか、の側に入ります。冒頭の例で見ます。毎月5万円ずつ返す、と返す時期を決め直しました。まだ来ていない月の分は、Aも請求できません。請求できる時から数える時効も、決め直した後の債務で数えることになります。準消費貸借の効力は、論文で論点になりうるところです。

確かめる

確かめるその1。知人から利息なしで米を借りた。届いた米は古米だった。 図:確かめるその1。知人から利息なしで米を借りた。届いた米は古米だった。

事例で確かめます。1つめ。知人から、利息なしで米を借りました。届いたおこめは、古米でした。貸主は、どんな責任を負うでしょうか?

答えその1。無利息=特定した時の状態でよいと推定(551条1項の準用)。種類・品質の不適合なら、価額の返還ができる(590条2項)。 図:答えその1

  • 無利息=特定した時の状態でよいと推定(551条1項の準用)
  • 種類・品質の不適合なら、価額の返還ができる(590条2項)

無利息なので、551条1項が準用されて、特定した時の状態でよいと推定されます。ただ、品質が合わないときは、価額を返すこともできます。

確かめるその2。書面で100万円を借りる約束をした。お金を受け取る前に、借りる必要がなくなった。 図:確かめるその2

  • 書面で100万円を借りる約束をした
  • お金を受け取る前に、借りる必要がなくなった

2つめ。書面で、100万円を借りる約束をしました。お金を受け取る前に、借りる必要がなくなりました。借主は、どうできるでしょうか?

答えその2。受け取る前は借主が解除できる(587条の2第2項)。貸主に損害があれば賠償。 図:答えその2

  • 受け取る前は借主が解除できる(587条の2第2項)
  • 貸主に損害があれば賠償

受け取る前なので、借主は解除できます。貸主に損害があれば、賠償します。

確かめるその3。土地を売り、残りの代金を準消費貸借にした。買主が代金を払わないまま、登記を移すよう求めた。 図:確かめるその3

  • 土地を売り、残りの代金を準消費貸借にした
  • 買主が代金を払わないまま、登記を移すよう求めた

3つめ。土地を売り、残りの代金を準消費貸借にしました。買主が、代金を払わないまま、登記を移すよう求めてきました。売主は、拒めるでしょうか?

答えその3。同時履行の抗弁権は残る(判例は事情があるとき)。履行の提供があるまで拒める。 図:答えその3

  • 同時履行の抗弁権は残る(判例は事情があるとき)
  • 履行の提供があるまで拒める

同時履行の抗弁権が残るので、準消費貸借上の債務の履行の提供があるまで、拒めます。事情があるとき、という条件も覚えておいてください。

確かめるその4。ツケの代金債務を準消費貸借に切り替えた。消滅時効は、旧債務と新債務のどちらを基準に数えるか。 図:確かめるその4

  • ツケの代金債務を準消費貸借に切り替えた
  • 消滅時効は、旧債務と新債務のどちらを基準に数えるか

4つめ。ツケの代金債務を、準消費貸借に切り替えました。消滅時効は、旧債務と新債務の、どちらを基準に数えるでしょうか?

答えその4。消滅時効は新債務を基準に数える。 図:答えその4。消滅時効は新債務を基準に数える。

新債務を基準に数えます。

3つの柱のまとめと、冒頭の問い

今日のまとめ。1=貸主の担保責任は利息の有無で分かれる(利息付き=売買の規定・無利息=551条1項)、どちらでも価額の返還(590条2項)。2=受け取る前の解除は借主、損害があれば貸主が賠償、受け取る前の破産で失効(587条の2第2項・3項)。3=準消費貸借は既存の債務を消費貸借の債務に書き換える。保証・担保・抗弁権・被保全債権は残り、時効は新債務基準(588条)。 図:今日のまとめ

  • 1=貸主の担保責任は利息の有無で分かれる(利息付き=売買の規定・無利息=551条1項)、どちらでも価額の返還(590条2項)
  • 2=受け取る前の解除は借主、損害があれば貸主が賠償、受け取る前の破産で失効(587条の2第2項・3項)
  • 3=準消費貸借は既存の債務を消費貸借の債務に書き換える
  • 保証・担保・抗弁権・被保全債権は残り、時効は新債務基準(588条)

今日の話を整理します。1つめ、貸主の担保責任は、利息の有無で分かれます。利息付きは売買の規定、無利息は贈与の551条1項です。どちらの場合も、種類又は品質の不適合なら、価額を返せます。2つめ、書面でする消費貸借は、受け取る前なら借主が解除できます。損害があれば、貸主に賠償します。受け取る前に当事者の一方が破産したら、効力を失います。使用貸借とは、解除できる側が逆です。3つめ、準消費貸借は、すでにある債務を消費貸借の債務に書き換える契約です。意思が明らかでなければ、同一性が保たれるので、保証、担保、同時履行の抗弁権、被保全債権は残ります。時効は新債務を基準に数えます。

冒頭の答え合わせ。ツケを借金に書き換えても、Cの保証は残る。当事者の意思が明らかでなければ、旧債務は同一性を保って存続する(最判)。 図:冒頭の答え合わせ

  • ツケを借金に書き換えても、Cの保証は残る
  • 当事者の意思が明らかでなければ、旧債務は同一性を保って存続する(最判)

冒頭の問いの答えです。Cの保証は、切り替えの後も残ります。古い債務を消す、とはっきり決めていなければ、債務は同じものとして続くからです。準消費貸借の効力は、論文で論点になりうるところです。

参照条文

  • 民法590条
  • 民法559条
  • 民法551条1項
  • 民法587条の2第2項・3項
  • 民法588条

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