民法ゼロから民法#258

賃借人の義務と賃貸借の終了・信頼関係破壊の法理

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第5章 契約 #258/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

家賃を1回忘れただけで

冒頭の設例の関係図。左が大家A、右が借り手B。AはBに部屋を貸し、Bは毎月家賃を払っている。契約書には「家賃を1か月分でも滞納したときは、催告なしに解除できる」という条項がある。ある月、Bは振込みを忘れた。AはBに「契約は解除した。出て行ってください」と通知した。 図:冒頭の設例の関係図

  • 左が大家A、右が借り手B
  • AはBに部屋を貸し、Bは毎月家賃を払っている
  • 契約書には「家賃を1か月分でも滞納したときは、催告なしに解除できる」という条項がある
  • ある月、Bは振込みを忘れた
  • AはBに「契約は解除した。出て行ってください」と通知した

冒頭の問いの答えの方向。1回忘れただけなら、出て行かなくてよい。特約の文字どおりには使えない。まとまった滞納が続いて信頼関係が壊れたなら、催告をしたうえで解除できる。 図:冒頭の問いの答えの方向

  • 1回忘れただけなら、出て行かなくてよい
  • 特約の文字どおりには使えない
  • まとまった滞納が続いて信頼関係が壊れたなら、催告をしたうえで解除できる

先に、答えの方向を言います。1回忘れただけなら、Bは出て行かなくてかまいません。契約書に特約が書いてあっても、文字どおりには使えません。賃貸借は、信頼関係を土台に、長く続く契約です。だから、信頼関係を壊すに足りない不履行では、解除は認められません。ただし、3か月分をまとめて滞納して、催告にも応じないなら、信頼関係は壊れたと言えて、解除が認められやすくなります。前に、この特約を扱った判決を、1つ読みました。今日は、その理由づけになっている考え方を、中心に据えます。

柱1 借りている間の義務

1つめの柱の入口。借りている間の義務=賃料を払う(614条)・決まった使い方を守る(616条・594条1項)・保管して知らせる(400条・615条)・貸す側の保存行為を受け入れる(606条2項)。 図:1つめの柱の入口

1つめの柱です。まず、賃借人の中心の義務、賃料を払う義務です。前回見た601条で、賃料を支払うことを約束するのが賃貸借でした。では、いつ払うのか。614条です。

条文民法614条

民法第614条 賃料は、動産、建物及び宅地については毎月末に、その他の土地については毎年末に、支払わなければならない。ただし、収穫の季節があるものについては、その季節の後に遅滞なく支払わなければならない。

動産、建物、宅地は毎月末、それ以外の土地は毎年末の払いです。つまり、後払いです。ただし、実際の契約書には、前の月の末までに翌月分を払う、といった特約が書かれるのが通常で、その特約が優先します。この条文は、特約が無いときの、いわば保険です。賃料は、物を使わせた対価として受け取る法定果実です。期間に応じて、日割りで、受け取る権利が配分されると、果実の回で見ました。家賃が日割りで積み上がるから、月末に払うと、その月の分をまとめて清算する形になります。次は、借りた物の一部が使えなくなったときです。台風で、借りている部屋の浴室が、半月使えなくなったとします。Bは、家賃を全額払うのでしょうか。611条です。

条文民法611条

民法第611条 1 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。 2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

1項です。一部が使えなくなって、それがBの帰責事由によらないなら、賃料は、使えなくなった部分の割合に応じて、減額されます。ここで大事なのは、減額される、という書き方です。Bが「減らしてください」と請求しなくても、当然に減ります。2017年の改正で、この形になりました。改正前は、減額を請求できる、という書き方でした。2項です。残った部分だけでは、借りた目的を達成できないときは、Bは契約を解除できます。たとえば、店舗として借りたのに、店の中心の部屋が使えなくなった場合です。1項の減額と違って、2項の解除には、帰責事由の話が条文に書かれていません。

対比板。536条1項=債権者は、反対給付の履行を拒むことができる(債権者が主張する)。611条1項=賃料は、使えなくなった部分の割合に応じて、減額される(請求が無くても減る)。 図:対比板

  • 536条1項=債権者は、反対給付の履行を拒むことができる(債権者が主張する)
  • 611条1項=賃料は、使えなくなった部分の割合に応じて、減額される(請求が無くても減る)

536条1項と611条1項は、書き方が違います。536条1項は、拒むことができる、でした。債権者が、払うのを拒むと主張して、初めて働く権利です。611条1項は、減額される、です。請求も主張も要らず、条文だけで減ります。一部が使えない賃貸借では、611条が、危険負担の一般の規定より、強く借り手を守っています。賃料は、使わせてもらうことの対価なので、使えない部分には、そもそも払う理由がないからです。全部が使えなくなったときの扱いは、3つめの柱で見ます。

決まった使い方を守る義務(用法遵守義務)。616条→594条1項を準用=契約や物の性質で定まった用法に従って使用・収益する。594条3項(違反したら貸主は解除できる)は準用しない。違反したら=損害賠償(415条1項)・請求は返還から1年(622条→600条)。解除は柱4の話。 図:決まった使い方を守る義務

  • 用法遵守義務
  • 616条→594条1項を準用=契約や物の性質で定まった用法に従って使用・収益する。594条3項(違反したら貸主は解除できる)は準用しない。違反したら=損害賠償(415条1項)・請求は返還から1年(622条→600条)。解除は柱4の話。

次は、使い方の義務です。借りた物は、契約や物の性質で決まった使い方に従って使います。住むために借りた家を、勝手に店にしてはいけません。これを用法遵守義務といいます。使用貸借で見た594条1項と、同じ内容です。

条文民法616条

民法第616条 第五百九十四条第一項の規定は、賃貸借について準用する。

616条は、594条1項だけを準用しています。ここが、使用貸借との、1つめの違いです。使用貸借の594条3項は、用法に違反したら、貸主が催告なしで解除できる、と定めていました。616条は、1項しか準用しないので、賃貸借には、この3項の解除は来ません。用法に違反したときの解除は、あとの4つめの柱で見る、通常の解除の話になります。用法に違反したら、貸す側は、解除しかできないのですか?違います。損害賠償も請求できます。債務不履行ですから、415条1項です。その請求には、期間があります。ここで、前回の費用の請求と並べます。

条文民法622条

民法第622条 第五百九十七条第一項、第五百九十九条第一項及び第二項並びに第六百条の規定は、賃貸借について準用する。

622条です。使用貸借の597条1項、599条1項2項、600条を、賃貸借に準用します。600条の1年が、ここで効いてきます。用法違反の損害賠償は、賃貸人が物の返還を受けた時から、1年以内に請求しなければなりません。前回は、借り手の費用の請求がこの1年でした。今回は、貸す側の損害賠償の請求が、この1年です。どちらも、返還から1年です。この1年は、前回と同じく、除斥期間です。1年がたてば、当然に権利が消えます。これとは別に、その請求権の時効は、返還を受けた時から1年を経過するまでは、完成しません。

どうして、返還から数えるのですか?貸している間は、貸す側は、物がどう使われているか、分かりにくいからです。傷みや用法違反は、返ってきて初めて見えます。だから、返ってきてから1年の間に、請求の機会を残しています。ところが、損害賠償の請求権の時効は、貸している間にも進むことがあります。長い賃貸借なら、返ってくる前に時効が完成してしまうおそれがあります。それでは、せっかくの1年が意味を失います。だから、返還から1年がたつまでは、時効も完成しないことにしています。どちらも返還から数えるのは、返ってきて初めて傷みが見える、という同じ理由からです。

保管と知らせる義務。保管=返す物を、善良な管理者の注意で保管する(善管注意義務・400条)。知らせる=修繕が必要なとき・権利を主張する者がいるとき、遅滞なく賃貸人に通知する(615条)。ただし賃貸人が既に知っているときは不要。 図:保管と知らせる義務

  • 保管=返す物を、善良な管理者の注意で保管する(善管注意義務・400条)
  • 知らせる=修繕が必要なとき・権利を主張する者がいるとき、遅滞なく賃貸人に通知する(615条)
  • ただし賃貸人が既に知っているときは不要

次は、善良な管理者の注意、略して善管注意です。賃借人は、返す物を、返すまで大切に保管します。400条で見ました。その立場の標準的な人が払うべき注意で保管する、という意味です。借りた物をぞんざいに扱ってはいけません。それに関連して、知らせる義務があります。615条です。

条文民法615条

民法第615条 賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。

骨格は3つです。修繕が必要なとき、または、その物について権利を主張する人が現れたとき、遅滞なく大家に知らせます。ただし、大家がすでに知っているときは、知らせなくてかまいません。雨漏りに気づいたら知らせる。隣の人が「その土地は私の物だ」と言ってきたら知らせる。大家が対応できるようにするための義務です。前回見た、借り手が自分で直せる場面の通知も、この考え方につながっています。最後に、貸す側の修繕を受け入れる義務です。606条2項と607条です。

条文民法606条2項

民法第606条第2項 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。

条文民法607条

民法第607条 賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

大家が、物を保つために必要な行為をするときは、借り手は拒めません。たとえば、修繕のために、一時的に部屋を空けてほしいと言われたら、応じます。前回見た、大家の修繕義務の裏側です。ただし、借り手の意思に反する保存行為で、借りた目的を達せなくなるときは、借り手が解除できます。

借りている間の義務の一覧板(主役)。行=賃料/使い方/保管・知らせる/保存行為を受け入れる/一部が使えない。列=中身・条文・違反したら。賃料=毎月末払いが原則・特約が優先・614条。使い方=決まった用法に従う・616条→594条1項・損害賠償は返還から1年(622条)。保管・知らせる=善管注意・遅滞なく通知・400条・615条。受け入れる=拒めない・606条2項・目的を達せないなら借り手が解除(607条)。一部が使えない=帰責事由が無ければ当然に減額(611条1項)。 図:借りている間の義務の一覧板(主役)。行=賃料/使い方/保管・知らせる/保存行為を受け入れる/一部が使えない。列=中身・条文・違反したら。賃料=毎月末払いが原則・特約が優先・614条。使い方=決まった用法に従う・616条→594条1項・損害賠償は返還から1年(622条)。保管・知らせる=善管注意・遅滞なく通知・400条・615条。受け入れる=拒めない・606条2項・目的を達せないなら借り手が解除(607条)。一部が使えない=帰責事由が無ければ当然に減額(611条1項)。

1つめの柱をまとめます。借りている間の義務は、払う、守って使う、保管して知らせる、受け入れる、の4つです。払う義務は、特約が無ければ毎月末払い。一部が使えなくなって、帰責事由が無ければ、請求が無くても当然に減ります。使い方を守る義務は、使用貸借と同じ条文を借りますが、違反しても催告なしの解除は来ません。違反の損害賠償は、返還から1年です。

柱2 返すときの義務

2つめの柱の入口。返すときの義務=返還する(601条)・付け足した物を収去する(622条→599条1項2項)・傷んだ所を原状に復する(621条)。 図:2つめの柱の入口

2つめの柱です。賃貸借が終わったら、借り手は、借りた物を返します。601条で、返還する約束が、賃貸借の成立の内容になっていました。ここでは、返すときに、あわせて問題になる2つを見ます。付け足した物と、傷んだ所です。1つめ、付け足した物です。Bが、借りた部屋に、棚を取り付けたとします。終了したときは、その棚を取り外して持ち出す義務があります。これを収去といいます。622条が準用する、使用貸借の599条1項です。ただし書があって、分離できない物や、分離に過分の費用がかかる物は、収去しなくてかまいません。壁に埋め込んだ配管のようなものです。

大家が「その棚は置いていってほしい」と言ったら、置いていかないといけませんか?違います。599条2項で、借り手は、付け足した物を収去する権利も持ちます。大家に頼まれても、取り外して持ち帰れます。収去する義務と権利、両方あります。なお、付け足した物を収去する話と、前回の有益費の償還は別の条文の話です。有益費は、物の価値を高めた費用を、終了の時に償還してもらう、という形で、持ち出すかどうかとは別の問題です。2つめ、傷んだ所です。621条です。使用貸借の599条3項に当たる条文ですが、中身に違いがあります。

条文民法621条

民法第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

受け取った後に生じた損傷を、元に戻す義務です。ただし、かっこ書で、2つが除かれています。通常の使用や収益によって生じた損耗、これを通常損耗といいます。そして、時間がたつことによる変化、経年変化です。さらにただし書で、借り手の帰責事由によらない損傷も、除かれます。

原状回復の範囲(主役)。戻す対象=受け取った後に生じた損傷(壁に大きな穴を開けた・床を傷つけた)。戻さない=通常損耗(家具を置いた跡)・経年変化(壁紙の日焼け)・帰責事由によらない損傷。理由=賃料を払って使うので、普通に使えば減る分は賃料に含まれている。使用貸借の599条3項=かっこ書の除外なし。 図:原状回復の範囲

  • 主役
  • 戻す対象=受け取った後に生じた損傷(壁に大きな穴を開けた・床を傷つけた)。戻さない=通常損耗(家具を置いた跡)・経年変化(壁紙の日焼け)・帰責事由によらない損傷。理由=賃料を払って使うので、普通に使えば減る分は賃料に含まれている。使用貸借の599条3項=かっこ書の除外なし。

入居した時の状態に戻す、と覚えると誤ります。普通に住んで生じる傷みや、日焼けは、戻さなくてかまいません。理由は、賃料を払って使っているからです。普通に使えば、物は多少減ります。その分は、賃料に含まれていると考えるのです。壁紙が日焼けした、家具を置いた跡が残った、というのは、戻さなくてよい例です。壁に大きな穴を開けた、というのは、戻す例です。ここが、使用貸借との違いです。使用貸借の599条3項には、この、通常損耗と経年変化を除く、かっこ書がありません。賃貸借では、賃料を払う分、普通の傷みは貸す側が引き受ける、と条文にはっきり書かれている点が違います。なお、敷金との関係は、次の回で扱います。2つめの柱をまとめます。返すときは、まず物を返す。付け足した物は、収去する義務があり、収去する権利もある。そして、傷んだ所を元に戻す義務があるが、普通の使用による傷みと経年変化は含まない。

柱3 賃貸借の終わり方

3つめの柱の入口。賃貸借の終わり方=期間の満了・全部が使えなくなる・解約の申入れ・解除。死亡では終わらない。 図:3つめの柱の入口

  • 賃貸借の終わり方=期間の満了・全部が使えなくなる・解約の申入れ・解除
  • 死亡では終わらない

3つめの柱です。賃貸借がどう終わるか、順に並べます。1つめは、存続期間の満了です。期間を定めた賃貸借は、期間が満了すると終了します。622条が、使用貸借の597条1項を準用しているからです。ただし、更新ができます。2つめは、賃借物の全部が使えなくなったときです。借りていた建物が、火事で全部焼けた場合です。616条の2です。

条文民法616条の2

民法第616条の2 賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。

全部が使えなくなったら、賃貸借は、これによって終了します。解除も、解約の申入れも要りません。意思表示がなくても、そのまま終わります。これを当然終了といいます。2017年の改正で入りました。

一部と全部の対比(主役)。一部が使えなくなった=賃料は当然に減額(611条1項)・残りだけでは目的を達せないなら解除(同2項)。全部が使えなくなった=賃貸借は当然に終了(616条の2)。 図:一部と全部の対比

  • 主役
  • 一部が使えなくなった=賃料は当然に減額(611条1項)・残りだけでは目的を達せないなら解除(同2項)。全部が使えなくなった=賃貸借は当然に終了(616条の2)。

柱1で見た611条とセットで覚えてください。一部が使えないなら、賃料が減る。残りだけでは目的を達せないなら、解除できる。全部が使えないなら、当然に終了する。部分か全部かで、効果が分かれます。3つめは、期間の定めのない賃貸借の解約申入れです。617条です。

条文民法617条1項

民法第617条第1項 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。 一 土地の賃貸借 一年 二 建物の賃貸借 三箇月 三 動産及び貸席の賃貸借 一日

期間を定めなかったときは、各当事者が、いつでも解約の申入れをできます。申入れの日から、土地は1年、建物は3か月、動産と貸席は1日で終了します。貸席は、貸し座敷のことで、条文に出てくる言葉です。そこまで気にしなくてかまいません。期間を定めても、途中でやめたいときはどうなりますか?618条です。期間を定めても、一方または双方が、その期間内に解約する権利を留保したときは、617条を準用します。つまり、契約で「途中で解約できる」と決めておけば、617条の期間で終わらせられます。土地や建物の賃貸借では、借地借家法が、貸す側からの解約申入れを、強く制限します。民法のこの617条だけでは決まらない、とだけ頭に置いてください。中身は、別の回で見ます。4つめは、解除です。次の柱で、詳しく見ます。

賃借人が死亡しても賃貸借は続き、賃借権は相続人が引き継ぎます。使用貸借の597条3項、借主の死亡で終了する、という規定を、622条は準用していません。準用するのは、1項だけです。ここが、使用貸借との2つめの違いです。タダの貸し借りは、その人への好意なので終わります。お金を払う賃貸借は、その人個人への好意ではなく、使う権利そのものが財産なので、相続されます。

終わり方の板(主役)。満了=終了(622条→597条1項)。全部が使えなくなる=当然終了(616条の2)。解約の申入れ=土地1年・建物3か月・動産及び貸席1日(617条)。解除=次の柱。賃借人の死亡=終わらない(相続される)。使用貸借は借主の死亡で終了(597条3項)。 図:終わり方の板

  • 主役
  • 満了=終了(622条→597条1項)。全部が使えなくなる=当然終了(616条の2)。解約の申入れ=土地1年・建物3か月・動産及び貸席1日(617条)。解除=次の柱。賃借人の死亡=終わらない(相続される)。使用貸借は借主の死亡で終了(597条3項)。

終わり方を、1枚に並べます。期間の満了、全部が使えなくなる、解約の申入れ、そして解除です。死亡は、終わりの原因ではありません。使用貸借と違い、賃貸借は、借り手が亡くなっても続きます。

柱4 債務不履行による解除と信頼関係破壊の法理

4つめの柱の入口。冒頭の設例に戻る。1回の振込み忘れ。特約=1か月でも滞納したら催告なしで解除。Aは解除できるか。 図:4つめの柱の入口

  • 冒頭の設例に戻る
  • 1回の振込み忘れ
  • 特約=1か月でも滞納したら催告なしで解除
  • Aは解除できるか

4つめの柱です。冒頭に戻ります。1回の振込み忘れで、特約があるから、Aは解除できるのか。これが、今日の主役です。先に、手がかりを思い出します。思い出してください。前に見た催告による解除で、期間が過ぎても解除できない場合がありました。何という例外でしたか?軽微なとき、です。541条のただし書で、期間を経過した時の債務不履行が、契約や取引上の社会通念に照らして軽微なときは、解除できません。不履行が軽ければ、催告のあとでも、解除はできません。賃貸借には、それとは別に、もう1つ壁があります。まず、土台からです。541条と542条は、賃貸借にも適用されます。賃料を払わないのは、債務不履行ですから、催告して解除する541条の道も、催告しても払われる見込みがないことが明らかなら催告なしで解除できる、542条1項5号の道も、特約がなくても使えます。ただし、使用貸借の594条3項は準用されません。賃貸借の解除は、541条以下の一般則で考えます。

賃貸借と信頼関係。賃貸借=信頼関係を基礎に、長く続く契約。1回の不履行で関係ごと断ち切るのは性質に合わない。例=長い付き合いの友人との貸し借りは、一度の遅れで絶交しない。何か月も連絡なしに約束を破り続ければ、切られても仕方がない。 図:賃貸借と信頼関係

  • 賃貸借=信頼関係を基礎に、長く続く契約
  • 1回の不履行で関係ごと断ち切るのは性質に合わない
  • 例=長い付き合いの友人との貸し借りは、一度の遅れで絶交しない
  • 何か月も連絡なしに約束を破り続ければ、切られても仕方がない

売買は、代金を払って品物を渡せば、それで関係が終わります。賃貸借は違います。毎月、顔を合わせるように、長く続きます。長い付き合いの友人との貸し借りで考えてください。1回、返すのが遅れたくらいで、絶交はしません。ところが、何か月も連絡なしに、約束を破り続ければ、付き合いを切られても仕方がない。賃貸借も、同じ筋です。

規範(最判昭39・7・28)。賃貸借は信頼関係を基礎とする継続的契約。債務不履行があっても、信頼関係を破壊するに足りない場合は、解除は認められない。信頼関係が壊れたと言えるときに、はじめて解除が認められる。札=判例の考え方を整理した、こちらの言い方。 図:規範

  • 最判昭39・7・28
  • 賃貸借は信頼関係を基礎とする継続的契約。債務不履行があっても、信頼関係を破壊するに足りない場合は、解除は認められない。信頼関係が壊れたと言えるときに、はじめて解除が認められる。札=判例の考え方を整理した、こちらの言い方。

これを、信頼関係破壊の法理といいます。賃貸借は、信頼関係を基礎とする継続的な契約です。そこで、債務不履行があっても、信頼関係を破壊するに足りない場合は、解除は認められません。逆に、信頼関係が壊れたと言えるときに、はじめて解除が認められます。これは、条文を読んでも出てこない考え方で、判例が立てた基準です。さっきの541条の軽微と、不履行の重さを見る点では近い考え方です。ただ、賃貸借では、信頼関係という言葉で判断し、滞納の額だけでなく、長く遅れずに住んできたか、貸す側に事情はないか、まで材料になります。判決を見ます。家賃の滞納で、催告をして解除した事案です。ここで、1つ考えてください。Bが家賃を滞納した。催告もした。それでも、Aは解除できないことがあるとすれば、どんな場合でしょうか?

判決で確かめます。事案を先に言います。賃貸人は、延滞した家賃について催告をして、解除の意思表示をしました。ところが、催告された額の半分は、すでに供託されていて、残りの延滞も少額でした。借り手は、18年あまり住み続けていて、この延滞のほかに、遅れたことはありませんでした。台風で家が壊れたとき、貸す側が修繕をしなかったので、借り手が自費で屋根をふき替えたのに、その修繕費の償還を、ずっと求めていなかった、という事情もありました。屋根の修繕費は、前回見た必要費で、借り手は、すぐに大家に請求できるものでした。それを請求せずに、黙って住み続けていたのです。カードの言葉を断ります。判決文の上告人は、賃貸人です。同被上告人は、借り手です。そして、ここは、原審、つまり下級審が認定した事実を引いて、最高裁が「その判断は正当だ」と是認した部分です。

判例最判昭39・7・28 民集18巻6号1220頁

賃料不払いによる解除と信頼関係 同被上告人は昭和一六年三月上告人先代から本件家屋賃借以来これに居住しているもので、前記催告に至るまで前記延滞額を除いて賃料延滞の事実がなかったこと、昭和二五年の台風で本件家屋が破損した際同被上告人の修繕要求にも拘らず上告人側で修繕をしなかったので昭和二九年頃二万九〇〇〇円を支出して屋根のふきかえをしたが、右修繕費について本訴が提起されるまで償還を求めなかったこと、……右事実関係に照らせば、同被上告人にはいまだ本件賃貸借の基調である相互の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意があると断定することはできないとして、上告人の本件解除権の行使を信義則に反し許されないと判断しているのであって、右判断は正当として是認するに足りる。

読み方です。借り手は、長く住んでいて、この延滞のほかに遅れがなく、貸す側が修繕をしなかったので自費で屋根を直したのに、その費用も請求していませんでした。それなら、賃貸借の土台である、相互の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意があるとは言えない。だから、貸す側が解除権を使うのは、信義則に反して許されない。この原審の判断を、最高裁は正当だと認めました。判例のふだです。この判決は、何か月滞納したら解除できる、という線を引いたのですか?違います。この判決は、事案ごとの総合判断をしています。延滞の額と期間、居住の長さ、遅れの経緯、貸す側の事情などをあわせて見ています。何か月、という線は、引いていません。実務では、3か月分程度のまとまった不払いなら、破壊が認められやすい、と言われますが、これは目安です。判例が決めた基準ではありません。

3つの入り口の整理板(主役)。(a)催告して待つ=541条・信頼関係が破壊されていること。(b)無催告解除特約=催告しなくても不合理でない事情があるとき。(c)破壊が著しいとき=542条1項5号に当たりうる。右に、破壊に足りない=解除は認められない(信義則)。 図:3つの入り口の整理板

  • 主役
  • (a)催告して待つ=541条・信頼関係が破壊されていること。(b)無催告解除特約=催告しなくても不合理でない事情があるとき。(c)破壊が著しいとき=542条1項5号に当たりうる。右に、破壊に足りない=解除は認められない(信義則)。

滞納された大家が解除に行く道は、3つあります。(a)と(c)は、条文が用意した道です。(b)は、契約で作った特約の道で、その特約がどこまで効くか、という話です。まず(a)、催告をして待つ道です。541条の催告解除です。ただし、賃貸借では、そのうえで、信頼関係が破壊されていることが必要です。これが、いま見た法理です。次に(b)、冒頭の、無催告解除特約です。特約の文字どおりなら、1か月でも滞納したら、催告なしで解除できるはずです。判決を見ます。前に読んだ判決です。

判例最判昭43・11・21 民集22巻12号2741頁

無催告解除の特約 家屋の賃貸借契約において、一般に、賃借人が賃料を一箇月分でも滞納したときは催告を要せず契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とする継続的債権関係であることにかんがみれば、賃料が約定の期日に支払われず、これがため契約を解除するに当たり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合には、無催告で解除権を行使することが許される旨を定めた約定であると解するのが相当である。

読み方です。1か月分でも滞納したら催告なしで解除できる、という特約は、その文字どおりには使えません。催告をしなくても不合理とは認められない事情がある場合に、無催告で解除できる、という趣旨の約束だと、特約の意味を限定して読みます。理由は、賃貸借が信頼関係を基礎とする継続的な関係だからです。この判決の事案は、5か月分の滞納があって、解除が認められました。判例のふだです。冒頭に当てはめます。1回、振込みを忘れただけのBは、催告をしなくても不合理でない事情には、当たりません。だから、特約があっても、無催告では解除できません。そして、催告をしても、1回の遅れだけでは信頼関係を破壊するに足りないので、解除は認められません。最後に(c)です。特約が無くても、滞納が重なって、催告をしても払われる見込みがないことが明らかなら、542条1項5号で、催告なしに解除できる場合に当たりえます。催告は、もう一度チャンスを与える手続でした。信頼関係が著しく壊れていれば、チャンスを与えても関係は戻らないので、催告をしても意味がありません。そこで、賃貸借では、信頼関係の破壊が著しい場合は、5号に当たると考えることができます。ただし、実際に5号に当たるかは、事案ごとに判断されます。この、信頼関係の考え方は、借地で、無断の増改築を禁じる特約に基づいて、催告なしに解除した事案の判決でも、使われています。最高裁は、信頼関係を破壊するおそれがない場合は、特約に基づく解除も、信義則上、許されない、としました。以前、無催告解除の特約の回で、理由づけが少し違う、と言ったのは、特約の意味を限定して読むのではなく、解除権を使うこと自体を、信義則で止めている点です。用法を守らない場面でも、信頼関係を壊すおそれがあるかどうかで判断される、という方向は同じです。

賃貸借の借り手の債務の保証については、前に、極度額の話と一緒に見ました。改正前の事案ですが、更新されたあとの滞納にも、反対の趣旨をうかがわせる特段の事情が無いかぎり、保証が及ぶ、というのが判決の結論でした。今は、保証人が個人なら、極度額の範囲内で、という枠がかかります。最後に、解除したあとの効果です。620条です。

条文民法620条

民法第620条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

賃貸借の解除は、将来に向かってのみ効力を生じます。前に、解除の効果の回で、545条1項は、原状に復させる、つまり契約をさかのぼって消す形で働くと見ました。賃貸借の解除は、違います。すでに住んだ期間をなかったことにしません。

545条1項と620条の対比(主役)。545条1項=各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う(さかのぼって元に戻す)。620条=賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生ずる(すでに使った期間はそのまま)・損害賠償の請求を妨げない。例=1年住んだあとに解除しても、その1年分の賃貸借はなかったことにならない。 図:545条1項と620条の対比

  • 主役
  • 545条1項=各当事者は相手方を原状に復させる義務を負う(さかのぼって元に戻す)。620条=賃貸借の解除は将来に向かってのみ効力を生ずる(すでに使った期間はそのまま)・損害賠償の請求を妨げない。例=1年住んだあとに解除しても、その1年分の賃貸借はなかったことにならない。

例で言います。Bが1年住んで、そのあとで解除されたとします。さかのぼって契約を消すと、その1年に住んだ事実と、払った家賃が、宙に浮いてしまいます。住んだ事実は、消せません。そこで、解除より前の期間の賃貸借は、そのまま有効として、解除のときから先だけを終わらせます。賃料の債務も、解除までの分は残ります。後段です。損害賠償の請求を妨げません。滞納された賃料や、損傷の損害賠償は、解除したあとも請求できます。545条4項と同じ方向です。解除したあとは、大家は、返還、つまり明渡しを求められます。4つめの柱をまとめます。賃貸借の解除は、通常の解除の条文が使えますが、信頼関係を破壊するに足りない不履行では、認められません。無催告解除特約は、催告しなくても不合理でない事情があるときに限って有効です。そして、解除は将来に向かってのみ効力を生じます。

確かめる

確かめるその1。台風で、借りている部屋の浴室が半月使えなかった。借り手に帰責事由は無い。賃料はどうなるか。 図:確かめるその1

  • 台風で、借りている部屋の浴室が半月使えなかった
  • 借り手に帰責事由は無い
  • 賃料はどうなるか

事例で確かめます。1つめ。台風で、Bが借りている部屋の浴室が、半月使えなくなりました。Bに帰責事由はありません。賃料は、どうなるでしょうか?

答えその1。一部が使えなくなり、借り手に帰責事由が無い=賃料は使えない部分の割合で当然に減額(611条1項)。請求は要らない。 図:答えその1

  • 一部が使えなくなり、借り手に帰責事由が無い=賃料は使えない部分の割合で当然に減額(611条1項)
  • 請求は要らない

Bが請求しなくても、使えない部分の割合で、賃料は当然に減ります。536条の、拒むことができる、と違って、減額される、でした。

確かめるその2。契約書に「1か月でも滞納したら催告なしで解除」とある。Bは初めて1か月分だけ遅れた。Aは特約どおり解除できるか。 図:確かめるその2

  • 契約書に「1か月でも滞納したら催告なしで解除」とある
  • Bは初めて1か月分だけ遅れた
  • Aは特約どおり解除できるか

2つめ。契約書には、1か月でも滞納したら催告なしで解除、とあります。Bは、初めて1か月分だけ遅れました。Aは、特約どおり解除できるでしょうか?

答えその2。特約は、催告しなくても不合理とは認められない事情がある場合に限り有効。1か月だけの遅れでは信頼関係を破壊するに足りない=解除できない。 図:答えその2

  • 特約は、催告しなくても不合理とは認められない事情がある場合に限り有効
  • 1か月だけの遅れでは信頼関係を破壊するに足りない=解除できない

できません。催告しなくても不合理でない事情が無く、信頼関係を破壊するに足りないからです。特約の意味は、限定して読まれます。

確かめるその3。Bは3か月分をまとめて滞納し、催告にも応じない。Aは解除できるか。 図:確かめるその3

  • Bは3か月分をまとめて滞納し、催告にも応じない
  • Aは解除できるか

3つめ。Bは、3か月分をまとめて滞納し、催告にも応じません。Aは、解除できるでしょうか?

答えその3。まとまった滞納+催告にも応じない=信頼関係の破壊が認められやすく、催告による解除も認められやすい(3か月は実務の目安)。 図:答えその3

催告をしたうえでなら、解除が認められやすいです。信頼関係の破壊が認められやすいからです。3か月は目安で、判例の基準ではありません。事案ごとの総合判断です。

確かめるその4。退去のとき、壁紙が日焼けし、家具の跡が残っていた。Bは原状回復義務を負うか。壁に大きな穴を開けていたら、どうか。 図:確かめるその4

  • 退去のとき、壁紙が日焼けし、家具の跡が残っていた
  • Bは原状回復義務を負うか
  • 壁に大きな穴を開けていたら、どうか

4つめ。Bの退去のとき、壁紙は日焼けして、家具の跡が残っていました。Bは、原状回復義務を負うでしょうか? もし壁に大きな穴を開けていたら、どうでしょうか?

答えその4。日焼け=経年変化・家具の跡=通常損耗=原状回復義務に含まれない。壁の大きな穴=受け取った後に生じた損傷=原状回復の対象(621条)。 図:答えその4

  • 日焼け=経年変化・家具の跡=通常損耗=原状回復義務に含まれない
  • 壁の大きな穴=受け取った後に生じた損傷=原状回復の対象(621条)

日焼けと家具の跡は、経年変化と通常損耗なので、戻す義務はありません。穴は、受け取った後に生じた損傷なので、戻す義務があります。入居した時の状態に戻す、ではありません。

確かめるその5。期間の定めのない建物の賃貸借で、解約の申入れをした。いつ終わるか。Bが死亡したらどうなるか。 図:確かめるその5

  • 期間の定めのない建物の賃貸借で、解約の申入れをした
  • いつ終わるか
  • Bが死亡したらどうなるか

5つめ。期間の定めのない建物の賃貸借で、解約の申入れをしました。いつ終わるでしょうか? また、Bが死亡したら、賃貸借はどうなるでしょうか?

答えその5。建物の賃貸借=解約申入れの日から3か月で終了(617条1項2号)。賃借人の死亡=終了せず、相続される。 図:答えその5

  • 建物の賃貸借=解約申入れの日から3か月で終了(617条1項2号)
  • 賃借人の死亡=終了せず、相続される

申入れの日から3か月で終わります。Bが死亡しても終わらず、相続人に相続されます。使用貸借は、借主の死亡で終わりました。そこが違います。

4つの柱のまとめと、冒頭の問い

今日のまとめ。1=借りている間の義務は、払う(特約が無ければ毎月末・一部が使えないなら当然に減額)・守って使う・保管して知らせる・受け入れる。2=返すときは、返還・収去(義務も権利もある)・原状回復(通常損耗と経年変化は含まない)。3=終わり方は、満了・全部が使えなくなる(当然終了)・解約申入れ(土地1年・建物3か月・動産及び貸席1日)・解除。死亡では終わらない。4=解除は、信頼関係を破壊するに足りないなら認められない。解除は将来に向かってのみ。 図:今日のまとめ

  • 1=借りている間の義務は、払う(特約が無ければ毎月末・一部が使えないなら当然に減額)・守って使う・保管して知らせる・受け入れる
  • 2=返すときは、返還・収去(義務も権利もある)・原状回復(通常損耗と経年変化は含まない)
  • 3=終わり方は、満了・全部が使えなくなる(当然終了)・解約申入れ(土地1年・建物3か月・動産及び貸席1日)・解除
  • 死亡では終わらない
  • 4=解除は、信頼関係を破壊するに足りないなら認められない
  • 解除は将来に向かってのみ

今日の話を整理します。1つめ、借りている間の義務は、賃料を払う、決まった使い方を守る、保管して知らせる、保存行為を受け入れる、の4つです。一部が使えなくなって帰責事由が無ければ、賃料は当然に減額されます。2つめ、返すときは、物を返し、付け足した物を収去し、傷んだ所を原状に復します。通常損耗と経年変化は含みません。3つめ、終わり方は、満了、全部が使えなくなることによる当然終了、解約の申入れ、解除です。死亡では終わりません。4つめ、解除は、信頼関係を破壊するに足りない不履行では認められません。無催告解除特約は、催告しなくても不合理でない事情があるときに限って有効です。解除は、将来に向かってのみ効力を生じます。

冒頭の答え合わせ。1回忘れただけ=信頼関係を破壊するに足りない=特約があっても解除は認められず、出て行かなくてよい。3か月分まとめて滞納し、催告にも応じない=信頼関係の破壊が認められやすく、催告のうえの解除が認められやすい(3か月は目安)。 図:冒頭の答え合わせ

  • 1回忘れただけ=信頼関係を破壊するに足りない=特約があっても解除は認められず、出て行かなくてよい
  • 3か月分まとめて滞納し、催告にも応じない=信頼関係の破壊が認められやすく、催告のうえの解除が認められやすい(3か月は目安)

冒頭の問いの答えです。1回、振込みを忘れただけのBは、出て行かなくてかまいません。特約は、催告しなくても不合理でない事情があるときに限って使えて、1回の遅れは、それに当たらず、信頼関係を破壊するにも足りないからです。ただし、3か月分をまとめて滞納して、催告にも応じないなら、信頼関係の破壊が認められやすく、Aの催告のうえの解除も認められやすくなります。解除は、将来に向かってのみ効力を生じます。信頼関係破壊の法理は、論文で論点になりうるところです。

参照条文

  • 民法614条
  • 民法611条
  • 民法616条
  • 民法622条
  • 民法615条
  • 民法606条2項
  • 民法607条
  • 民法621条
  • 民法616条の2
  • 民法617条1項
  • 民法620条

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