民法ゼロから民法#265

借地権の存続期間と法定更新・定期借地権

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第5章 契約 #265/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

30年で貸した土地が返ってこない

冒頭の設例の関係図。Aは土地の持ち主で、30年の約束でBに土地を貸している。Bはその土地に建物を建てて住んでいる。30年が過ぎたので、AからBへ「返してください」の矢印に「?」。BからAへ「建物があるので出ません」。 図:冒頭の設例の関係図

  • Aは土地の持ち主で、30年の約束でBに土地を貸している
  • Bはその土地に建物を建てて住んでいる
  • 30年が過ぎたので、AからBへ「返してください」の矢印に「?」
  • BからAへ「建物があるので出ません」

今日は、Aが土地の持ち主で、先ほどの祖父にあたります。Bが借りた人です。Bは、借りた土地の上に家を建てています。先に答えの方向を言います。Bは約束違反ではありません。民法の賃貸借なら、地主が返してほしいと言えば、期限で終わります。しかし、家を建てるために土地を借りた場合は、別の法律が民法を上書きします。借地借家法です。期限が来ても、家があるかぎり、更新されるのが原則になります。今日は、その仕組みを順番に見ます。地主が土地を取り戻すには、何が要るのか。そして、そもそも更新されない借地は作れないのか。ここまで答えます。

借地権とは何か

借地借家法の位置。民法の賃貸借の特別法。上書きされるのは借地権だけ。借地権=建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権。建物を建てる借り方=借地借家法、駐車場や資材置場=民法のまま。 図:借地借家法の位置

  • 民法の賃貸借の特別法
  • 上書きされるのは借地権だけ
  • 借地権=建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権
  • 建物を建てる借り方=借地借家法、駐車場や資材置場=民法のまま

借地借家法は、民法の賃貸借の特別法です。特別法とは、ある場面に限って、一般法である民法より先に使われる法律のことです。どの場面に限るのか。その入口が、借地権の定義です。条文を読みます。

条文借地借家法2条1号

借地借家法第2条第1号 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

読み方です。借地権とは、建物の所有を目的とする、地上権か土地の賃借権です。地上権の回で、借地権は2つの権利をまとめた呼び名だと見ました。その中身が、この定義です。目的が、建物を持つことかどうかが、境目です。境目のペアを置きます。住宅を建てるために土地を借りたなら、借地権です。同じ土地でも、車を止めるために借りたなら、借地権ではありません。駐車場にはプレハブの管理小屋が付いていることもありますが、借りた目的は、車を止めることです。建物を持つことが目的ではないので、借地借家法ではなく、民法の賃貸借のままです。資材置場も同じです。

駐車場にも、民法619条の黙示の更新はあります。ただ、地主が異議を述べれば、それで終わります。違いの理由は、投資の大きさです。家を建てた人は、期限が来て更地にして出ていくと、家という財産と、住まいを同時に失います。駐車場の借り手は、別の駐車場に移れば済みます。守る必要の重さが違うので、扱いも違います。もう一つ、上書きの向きを押さえます。借地借家法の存続期間と更新の節には、次の条文があります。

条文借地借家法9条

借地借家法第9条 この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。

読み方です。この節は、これから見る存続期間と更新を定めた節です。その規定に反する特約で、借地権者に不利なものは、無効です。逆に言えば、借地権者に有利な特約は、有効です。守られているのは、借りている側だけです。これを、片面的な強行規定と呼びます。用語を二つ置きます。借地権を持つ借り手を、借地権者と呼びます。借地権を設定して貸している地主を、借地権設定者と呼びます。

存続期間は30年、上限はなし

存続期間の入口。民法604条は上限50年・下限なし。借地権は下限30年・上限なし。 図:存続期間の入口

  • 民法604条は上限50年・下限なし
  • 借地権は下限30年・上限なし

始める前に、民法の賃貸借で見た期間を、思い出してください。民法604条は、賃貸借の存続期間の上限を、何年としていましたか?50年です。それより長く約束しても、50年になります。条文を、もう一度出します。

条文民法604条

民法第604条 1 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。 2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。

民法は、上限だけを決めて、下限を決めていませんでした。借地は、その向きが逆です。条文を読みます。

条文借地借家法3条

借地借家法第3条 借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

読み方です。借地権の存続期間は30年です。これより長く決めたなら、その期間になります。上限は書かれていません。60年でも、100年でも、約束どおりです。民法の50年とは、ここが違います。20年と決めても、30年になります。先ほどの9条で、借地権者に不利な特約は無効だからです。20年と決めると、借り手に不利なので、その部分が無効になります。期間の約束が無いのと同じになるので、3条の30年が当てはまります。借地は、短い約束ができない仕組みです。ただし、あとで見る事業用の定期借地権などは例外です。更新のあとの期間も、条文があります。

条文借地借家法4条

借地借家法第4条 当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

読み方です。更新したあとの期間は、更新の日から10年です。ただし、設定してから最初の更新だけは、20年です。長い約束をすれば、その期間になります。

存続期間の比較表。民法の賃貸借=上限50年(604条1項)・下限なし・更新後は更新の時から50年まで(604条2項)・更新は619条の推定。借地権=下限30年(借3)・上限なし・更新後は最初20年、以後10年(借4)・更新は借5の擬制。 図:存続期間の比較表

  • 民法の賃貸借=上限50年(604条1項)・下限なし・更新後は更新の時から50年まで(604条2項)・更新は619条の推定
  • 借地権=下限30年(借3)・上限なし・更新後は最初20年、以後10年(借4)・更新は借5の擬制

民法と並べます。民法の賃貸借は、上限が50年で、下限はありません。更新後も、更新の時から50年まで。借地権は、下限が30年で、上限はありません。更新後は、最初が20年、その後は10年です。なぜ、民法と逆に、下限を作って上限を外したのですか?借り手に、建物を建てて元を取る時間を保証するためです。家を建てる費用は、短い期間では取り戻しにくいものです。短い約束で借りたら、建てた直後に出ていかなければならなくなります。だから、最低でも30年を保証しました。上限を外したのは、長く貸したい人がいるなら、長くする自由を妨げないからです。

期間が過ぎても更新される

法定更新の入口。民法619条は更新を推定、借地借家法5条は更新したものとみなす。違い=推定は反証で覆せる、みなすは覆せない。 図:法定更新の入口

  • 民法619条は更新を推定、借地借家法5条は更新したものとみなす
  • 違い=推定は反証で覆せる、みなすは覆せない

ここで、民法のおさらいを1問です。民法619条の、黙示の更新は、推定でしたか、みなしでしたか?推定でした。反対の事情があれば、覆せます。条文を出します。

条文民法619条1項

民法第619条第1項 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。

民法は、推定でした。黙示の更新を見たとき、建物と土地には、借り手をより強く守る法定更新が別にある、と触れました。その中身が、これです。借地借家法は、更新を、もっと強く扱います。条文を読みます。

条文借地借家法5条1項・2項

借地借家法第5条 1 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。 2 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。

法定更新の2つの経路。経路1=存続期間が満了する場合に、借地権者が更新を請求する(5条1項)。経路2=満了した後に、借地権者が土地の使用を継続する(5条2項)。共通=建物がある場合に限る。例外=借地権設定者が遅滞なく異議を述べたとき。更新後の期間は4条(20年・10年)。 図:法定更新の2つの経路

  • 経路1=存続期間が満了する場合に、借地権者が更新を請求する(5条1項)
  • 経路2=満了した後に、借地権者が土地の使用を継続する(5条2項)
  • 共通=建物がある場合に限る
  • 例外=借地権設定者が遅滞なく異議を述べたとき
  • 更新後の期間は4条(20年・10年)

読み方です。更新される道は2つあります。1つめは、満了する場合に、借地権者が更新を請求したときです。2つめは、満了した後、借地権者が土地を使い続けたときです。どちらも、建物がある場合に限ります。更新されると、従前の契約と同一の条件で、契約を更新したものとみなされます。更新後の期間は、先ほどの4条です。最初の更新なら20年です。例外が、ただし書です。借地権設定者、つまり地主が、遅滞なく異議を述べたときは、更新されません。遅滞なく、とは、請求や使用の継続を知ったあと、すぐに、という意味です。推定とみなすの違いです。推定は、はがせる付箋のようなものです。反対の事情を示せば、はがせます。みなすは、判子です。押したら、そう扱うと決まります。借地借家法は、条件がそろえば更新の判子を押します。地主が覆せるのは、異議を述べるという、決まった一つの道だけです。

建物が無い場合は、この条文では更新されません。建物のある借地だけが、法定更新で守られます。土地を借りて、建物を建てずにそのままにしている人までは、守りません。守る理由は、建物という投資があるからです。冒頭の設例に戻ります。Bは、借りた土地に家を建てて、住んでいます。30年が終わり、Bが住み続けているなら、使用の継続という経路に当たります。建物はあります。Aが何も言わなければ、更新されます。Aは「返してください」と言いました。これが異議にあたります。では、異議を述べれば、もう終わりなのでしょうか?次の条文が、ここに答えます。

地主の異議には正当事由が要る

正当事由の入口。異議は述べるだけでは足りない。正当の事由があると認められるときに限る。比べるのは、主=双方が土地を必要とする事情、補完=従前の経過・土地の利用状況・立退料の申出。 図:正当事由の入口

  • 異議は述べるだけでは足りない
  • 正当の事由があると認められるときに限る
  • 比べるのは、主=双方が土地を必要とする事情、補完=従前の経過・土地の利用状況・立退料の申出

条文借地借家法6条

借地借家法第6条 前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

読み方です。異議は、述べるだけでは足りません。正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができません。何を比べて判断するのかが、条文に並んでいます。

正当事由の比べ方。主=借地権設定者と借地権者の、土地の使用を必要とする事情。補完=借地に関する従前の経過、土地の利用状況、財産上の給付をする旨の申出(立退料)。先に主を比べ、足りなければ補完で補う。 図:正当事由の比べ方

  • 主=借地権設定者と借地権者の、土地の使用を必要とする事情
  • 補完=借地に関する従前の経過、土地の利用状況、財産上の給付をする旨の申出(立退料)
  • 先に主を比べ、足りなければ補完で補う

4つあります。1つめは、地主と借り手の双方が、土地を使う必要です。これが主です。2つめは、従前の経過です。借地の期間の長さ、賃料を払ってきたか、地主の態度、更新のときに借り手が地主に払う更新料などです。3つめは、土地の利用状況です。建物の大きさや、造り、使い方です。4つめは、地主が、立退料のように、財産上の給付をする旨の申出をしたかです。答案では、順番が大事です。まず、1つめの双方の必要を比べます。それだけで結論が出なければ、2つめから4つめで補います。補完の3つは、天秤の皿に足す、小さなおもりのようなものです。

立退料は、申出がある場合に考慮される、補う要素です。中心は、使う必要です。たとえば、地主が土地を売ってお金にしたいだけで、借り手が、その家に住み続けなければ暮らせないとします。必要の重さが、借り手のほうに大きく傾いています。そこに立退料を積んでも、傾きは、なかなか戻りません。前に、立退料と引換えの明渡しを見ました。借地では、6条が、その位置づけを条文にしています。境目のペアです。地主が、年老いた親を引き取るために、その土地に家を建てる必要があり、借り手には他に住める家がある。この場合は、地主の必要が大きく、正当事由が認められる方向です。一方、地主が売却して利益を出したいだけで、借り手は長年その家に住み、他に行き場がない。この場合は、借り手の必要が上回り、正当事由は認められない方向です。決め手は、どちらが、その土地を使わなければ困るのか、です。冒頭の設例に当てはめます。Aが孫のために家を建てたい、Bは他に住む所がある、という事情なら、Aの必要が上回ります。Aが売りたいだけで、Bがここ以外に住めないなら、Bの必要が上回ります。後者なら、Aの異議には正当事由が無く、更新されます。答案の骨格は、3段です。更新は、条件がそろうとみなされる。地主の異議には、正当事由が要る。正当事由は、双方の使用の必要を主として、従前の経過、利用状況、立退料の申出で補う。論文では、この順で書きます。ここは、論文で論点になりうるところです。

立ち止まって考えてみましょう。期間が満了した後も、借り手が、建物に住み続けています。地主は、何も言いませんでした。更新に必要な事実は、何でしょうか?建物があることと、借り手が使用を続けていることです。地主が遅滞なく異議を述べなければ、更新されます。もう1問。立退料の申出だけで、正当事由は足りるでしょうか?足りません。中心は、双方の土地を使う必要で、立退料は補う要素だからです。

更新されない借地、定期借地権

定期借地権の入口。なぜ作られたか=更新が原則だと、一度貸すと戻らないと考えて、地主が貸し渋る。更新が無いと決める借地を認めれば、地主が貸しやすくなる。更新が無い代わりに、方式が厳しい。 図:定期借地権の入口

  • なぜ作られたか=更新が原則だと、一度貸すと戻らないと考えて、地主が貸し渋る
  • 更新が無いと決める借地を認めれば、地主が貸しやすくなる
  • 更新が無い代わりに、方式が厳しい

ここまでは、更新が原則でした。この仕組みには、逆の面もあります。地主の立場に立ってみてください。借り手を守りすぎると、土地を貸す人が減ります。そこで、最初から更新しないと決めておく借地が、認められました。定期借地権です。更新が無いと分かっていれば、地主は貸しやすくなります。借り手も、期間が終われば出ていくことを、承知しています。ただし、更新が無いという借り手に不利な約束なので、方式が厳しくなっています。3種類を、順に見ます。1つめは、一般定期借地権です。

条文借地借家法22条

借地借家法第22条 1 存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。 2 前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十八条第二項及び第三十九条第三項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する。

読み方です。存続期間を50年以上にして設定するなら、更新が無い、期間の途中で建物を建て直しても期間は延びない、期間が終わったときに建物を地主に時価で買い取らせる請求をしない、という特約を定められます。普通の借地なら、地主の承諾を得て建て直すと、期間が延びることがあります。それも無くすわけです。用途の制限はありません。方式は、公正証書による等の書面です。今は、電磁的記録でも、書面でしたものとみなされます。9条などの、借り手に有利な規定を、この場合に限って外せるのが、この条文の中身です。

一般定期借地権(22条)。50年以上。用途の制限なし。更新なし等の特約。方式=書面(公正証書による等、電磁的記録も可)。 図:一般定期借地権

  • 22条
  • 50年以上。用途の制限なし。更新なし等の特約。方式=書面(公正証書による等、電磁的記録も可)。

たとえば、50年の約束で土地を借りて家を建てて住み、50年たったら、家を取り壊して、更地にして返します。一般定期借地権は、こうした使われ方をします。50年あれば、建てた家の元を取り、使い切るだけの時間があります。だから、更新が無くても、建物という投資は守られます。2つめは、事業用の定期借地権です。

条文借地借家法23条

借地借家法第23条 1 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。 2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。 3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

読み方です。専ら事業の用の建物で、居住用は含みません。住まいを、短い期間で失わせないためです。コンビニやロードサイドの店舗がイメージです。事業の建物は、住まいと違い、事業の計画に合わせて、短い期間で元を取る前提で建てられます。だから、50年より短い期間が認められます。30年以上50年未満なら、更新が無い等の特約を定められます。10年以上30年未満なら、存続期間や法定更新の規定が、そもそも適用されません。方式は、どちらも公正証書です。期間が短く、借り手を守る規定を大きく外すので、公証人の前で、事業用であることを確かめさせるためです。書面や電磁的記録では足りません。

事業用定期借地権(23条)。専ら事業の用(居住用を除く)。30年以上50年未満=更新なし等の特約。10年以上30年未満=存続期間等の規定を適用しない。方式=公正証書。 図:事業用定期借地権

  • 23条
  • 専ら事業の用(居住用を除く)。30年以上50年未満=更新なし等の特約。10年以上30年未満=存続期間等の規定を適用しない。方式=公正証書。

3つめは、建物譲渡特約付の借地権です。

条文借地借家法24条1項

借地借家法第24条第1項 借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。

読み方です。設定してから30年以上たった日に、建物を、地主に相当の対価で譲る。この特約をすると、借地権が消滅します。借り手は、建物の代金を受け取って、借地を終えます。建物の代金が手に入るので、建物という投資は戻ります。だから、更新が無くてもよいのです。たとえば、地主が、30年たったら建物を買い取って、自分で賃貸ビルとして貸すつもりで、土地を貸す場合です。この特約には、方式の定めがありません。借地権が消滅したあとも、その建物を使い続けている人がいます。元の借地権者や、借地権者から建物を借りて住んでいる人です。この人が請求すれば、その建物について、地主との間で、期間の定めのない賃貸借がされたものとみなされます。元の借地権者が請求し、借地権の残りの期間があるときは、その残りの期間を存続期間とする賃貸借です。建物の賃料は、当事者が請求すれば、裁判所が定めます。建物が地主のものになっても、住んでいる人が、すぐに追い出されないためです。

定期借地権3種の一覧。一般(22条)=50年以上・用途の制限なし・更新なし等の特約・書面(公正証書による等、電磁的記録も可)。事業用(23条)=専ら事業の用(居住用を除く)・30年以上50年未満は更新なし等の特約、10年以上30年未満は存続期間等の規定を適用しない・公正証書。建物譲渡特約付(24条)=設定後30年以上を経過した日に建物を地主に相当の対価で譲渡・方式の定め無し。 図:定期借地権3種の一覧

  • 一般(22条)=50年以上・用途の制限なし・更新なし等の特約・書面(公正証書による等、電磁的記録も可)
  • 事業用(23条)=専ら事業の用(居住用を除く)・30年以上50年未満は更新なし等の特約、10年以上30年未満は存続期間等の規定を適用しない・公正証書
  • 建物譲渡特約付(24条)=設定後30年以上を経過した日に建物を地主に相当の対価で譲渡・方式の定め無し

3つを並べます。一般は、50年以上で、用途の制限がなく、書面。事業用は、事業用に限り、30年以上50年未満と、10年以上30年未満の2段階で、公正証書。建物譲渡特約付は、30年以上たった日に建物を地主に譲り、方式の定めがありません。数字の並びで言います。一般は50年以上、事業用は10年以上50年未満、建物譲渡は30年以上です。事業用の内側の、30年が境目です。30年以上の側は、特約を定める形、30年未満の側は、規定が適用されない形です。30年は、普通の借地の最低の期間でした。30年以上なら、普通の借地の形のまま、更新しない特約を足せば済みます。30年未満は、3条の30年にすら届かないので、存続期間や更新の規定ごと外すのです。

確かめる

確かめるその1。20年と決めて土地を貸した。建物を建てて住む目的。存続期間は何年か。 図:確かめるその1

  • 20年と決めて土地を貸した
  • 建物を建てて住む目的
  • 存続期間は何年か

事例で確かめます。1つめ。家を建てる目的で、20年と決めて土地を貸しました。存続期間は何年でしょうか?

答えその1。借地権の存続期間は30年(借3)。短い約定は9条で無効。 図:答えその1。借地権の存続期間は30年(借3)。短い約定は9条で無効。

30年です。借地権者に不利な短い約束は無効になるからです。

確かめるその2。車を止めるために30年と決めて土地を借りた。期間が終わったとき、借り手は更新を求められるか。 図:確かめるその2

  • 車を止めるために30年と決めて土地を借りた
  • 期間が終わったとき、借り手は更新を求められるか

2つめ。駐車場にする目的で、期間を30年と決めて、土地を借りました。期間が終わったとき、借地借家法の更新を求められるでしょうか?

答えその2。駐車場は借地権でない。借地借家法の更新の規定は使えない。民法の賃貸借のまま。 図:答えその2

  • 駐車場は借地権でない
  • 借地借家法の更新の規定は使えない
  • 民法の賃貸借のまま

求められません。建物の所有が目的ではないので、借地権ではなく、民法の賃貸借のままです。目的が決め手でした。

確かめるその3。更新後の期間は何年か。 図:確かめるその3。更新後の期間は何年か。

3つめ。借地が最初に更新されたとき、更新後の期間は、何年でしょうか? 2回目の更新では、何年でしょうか?

答えその3。設定後の最初の更新は20年、以後は10年(借4)。長い約定はその期間。 図:答えその3

  • 設定後の最初の更新は20年、以後は10年(借4)
  • 長い約定はその期間

最初の更新は20年です。2回目以降は10年です。当事者が長く決めたなら、その期間です。

確かめるその4。居住用のアパートを建てる目的で、40年の事業用定期借地権を作れるか。 図:確かめるその4

4つめ。居住用の建物を建てる目的で、40年の事業用定期借地権は、作れるでしょうか?

答えその4。居住用の建物は事業用定期借地権の対象外(23条1項の括弧書)。居住用で更新が無い借地は、一般定期借地権(22条・50年以上)。 図:答えその4

  • 居住用の建物は事業用定期借地権の対象外(23条1項の括弧書)
  • 居住用で更新が無い借地は、一般定期借地権(22条・50年以上)

作れません。事業用は、専ら事業の用に供する建物で、居住の用に供するものは除かれているからです。更新が無い借地を作るなら、一般定期借地権で、50年以上にします。

冒頭の問いの答え合わせ

今日のまとめ。1=借地権は建物の所有を目的とする地上権・賃借権。借り手に不利な特約は無効。2=存続期間30年・長い約定は上限なし・更新後は最初20年、以後10年。3=法定更新は請求または使用の継続、建物があること。更新は擬制。4=地主の異議には正当事由。主=双方の使用の必要、補完=経過・利用状況・立退料の申出。5=定期借地権3種。 図:今日のまとめ

  • 1=借地権は建物の所有を目的とする地上権・賃借権
  • 借り手に不利な特約は無効
  • 2=存続期間30年・長い約定は上限なし・更新後は最初20年、以後10年
  • 3=法定更新は請求または使用の継続、建物があること
  • 更新は擬制
  • 4=地主の異議には正当事由
  • 主=双方の使用の必要、補完=経過・利用状況・立退料の申出
  • 5=定期借地権3種

今日の話を整理します。借地借家法が民法を上書きするのは、建物の所有を目的とする借地権のときだけです。借り手に不利な特約は、無効です。存続期間は30年で、長い約束はその期間になり、上限はありません。更新後は、最初が20年、以後が10年です。期間が過ぎても、建物があり、借り手が更新を請求するか使い続ければ、更新したものとみなされます。地主は、遅滞なく異議を述べるだけでなく、正当事由が必要です。比べるのは、双方の土地を使う必要が主で、従前の経過、利用状況、立退料の申出が補いです。更新が無い借地を作るなら、定期借地権で、3種類あります。

冒頭の答え合わせ。30年の約束で貸した土地は、建物があり借り手が使い続けているため、地主が返してほしいと言っても、更新される。取り戻すには、遅滞なく異議を述べ、正当事由が要る。 図:冒頭の答え合わせ

  • 30年の約束で貸した土地は、建物があり借り手が使い続けているため、地主が返してほしいと言っても、更新される
  • 取り戻すには、遅滞なく異議を述べ、正当事由が要る

冒頭の問いの答えです。祖父が30年の約束で貸した土地は、借りた人が家を建てて住み続けているかぎり、期限が来ても、返ってきません。借り手は約束違反ではなく、法律が更新を認めています。取り戻すには、遅滞なく異議を述べ、その異議に正当事由が要ります。家という大きな投資を守るために、借地は、更新が原則になっているのでした。

参照条文

  • 借地借家法2条1号
  • 借地借家法9条
  • 民法604条
  • 借地借家法3条
  • 借地借家法4条
  • 民法619条1項
  • 借地借家法5条1項・2項
  • 借地借家法6条
  • 借地借家法22条
  • 借地借家法23条
  • 借地借家法24条1項

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