借家の法定更新と正当事由
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第5章 契約 #268/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
2年契約なのに「更新しません」
図:冒頭の設例の関係図
- Aは建物の持ち主で貸している大家、Bは2年の約束でその部屋を借りている
- 期間の満了まで3か月、AからBへ「更新しません」の手紙
- BからAへ「2年で出なければならない?」の矢印に「?」
登場人物に記号を付けます。Aが、建物を貸している大家です。Bが、借りている人です。先に答えの方向を言います。Bは、2年で出なくてかまいません。契約は、同じ条件で更新されます。理由は2つあります。1つめは、手紙を出した時期が遅いことです。法律が手紙の時期を決めていて、3か月前では間に合いません。2つめは、仮に時期が合っていても、大家が出てもらうには、正当な理由が要ることです。今日は、この2つの関所を順番に見ます。最後に、冒頭の問いにもう一度答えます。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図
- 1=借家のルールの置き場と存続期間(29条)
- 2=期間の定めがある借家の更新(26条)
- 3=期間の定めがない借家の解約申入れ(27条・民617条)
- 4=正当事由(28条・判例)
- 5=更新後の姿・特約・まとめ表
順番は5つです。1つめ、借家の存続期間。2つめ、期間の定めがある借家の更新。そして3つめ、期間の定めがない借家の解約申入れ。4つめ、大家に要る正当事由。5つめ、更新したあとの姿と、民法・借地との比較表です。軸は1本です。借りている人にとって、建物は住まいや店そのものです。出されたら、行き場を失います。だから、借家は、何もしなければ続くのが原則です。終わらせたい大家の側にだけ、越えるべき関所が2つ置かれています。時期の関所と、理由の関所です。借地で見た道具を、建物の貸し借りに並べ直す回です。用語を置きます。建物を貸している人を賃貸人、借りている人を賃借人と呼びます。
借家のルールと存続期間
図:借家のルールの置き場
- 建物の賃貸借には、民法の賃貸借の規定に加えて、特別法の借地借家法の借家の規定が重なる
- 対象は賃貸借
- タダで貸す使用貸借は対象外
まず、置き場です。建物を貸し借りする契約には、民法の賃貸借の規定が、そのまま当てはまります。その上に、借地借家法の借家の規定が重なります。民法は一般法で、借地借家法は、借りる人を厚く守る特別法です。借地と同じ作りです。対象は、賃貸借です。タダで貸す使用貸借には、借家の規定は当てはまりません。お金を払って借りているから、守る必要が生まれるのです。なお、選挙の期間だけ借りる事務所のように、一時的な使用のためと明らかな賃貸借は、適用が外れます。これは別の回で扱います。始める前に、民法のおさらいを1問です。民法604条は、賃貸借の存続期間の上限を、何年としていましたか?
50年です。それより長く約束しても、50年になります。条文を出します。
条文民法604条
民法第604条 賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。 2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五十年を超えることができない。
民法は、上限だけを決めていました。借家では、どうなるでしょうか。
条文借地借家法29条
借地借家法第29条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。 2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。
読み方です。1項は、期間を1年未満とした契約は、期間の定めがない契約として扱う、という意味です。2項は、民法604条の50年の上限を、借家には使わない、という意味です。無効にはなりません。期間の定めがない契約として扱われます。ここが肝心です。期間の定めがない借家は、大家の側から終わらせるには、解約の申入れと正当な理由が要ります。正当な理由とは、出てもらうだけの事情が大家の側にあることで、中身は4つめの節で見ます。つまり、6か月と書いても、6か月が来たから出ていく義務は、借りる人にはありません。短い約束をすると、借りる人にとって有利になるのです。なお、ちょうど1年は、1年未満ではないので、期間の定めがある契約のままです。なぜ、こう扱うのでしょうか。短い期間を書くことで、借りる人を守る仕組みが働きにくくなるのを防ぐためです。期間の定めがない契約として扱えば、大家が終わらせるには、必ず、解約の申入れと正当な理由という関所を通ることになります。上限も、外れています。50年を超える借家の約束も有効です。
図:存続期間の比較表
- 民法=最短の制限なし・最長50年(604条1項)
- 借地権=最短30年(借3)・最長の制限なし
- 借家=最短は「1年未満は期間の定めなしとみなす」(29条1項)・最長の制限なし(29条2項)
3つを並べます。民法は、最短の制限がなく、最長が50年です。借地権は、最短が30年で、最長に制限はありません。借家は、最短の制限の代わりに、1年未満の約束を期間の定めなしにする扱いがあり、最長の制限はありません。年数の1年未満と、上限なしは、覚えてください。
期間の定めがある借家の更新
図:法定更新の入口
- 民法619条=更新したものと推定
- 借家=一定の場合に更新したものとみなす
- 推定は覆せる、みなすは覆せない
ここからが本題です。2年などの期間を決めた借家が、期間の満了を迎える場面です。民法のおさらいを1問です。期間が満了した後も借りた人が使い続け、貸主が知りながら異議を述べないとき、民法619条は、更新を推定するのでしたか、みなすのでしたか?推定でした。反対の事情があれば、覆せます。条文を出します。
条文民法619条1項
民法第619条第1項 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。
民法では、期間が来たら、それで終わりが出発点です。使い続けて貸主が黙っていたときに限り、更新を推定します。借家は、一歩進みます。一定の場合に、更新したものと、みなします。借地で見たとおり、推定は、はがせる付箋、みなすは、押したら覆せない判子です。条文を読みます。
条文借地借家法26条
借地借家法第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 2 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。 3 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。
図:更新の道は2つ
- 26条
- 1項=満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨の通知をしなかったとき、更新したものとみなす。2項=通知をしても、満了後に賃借人が使用を継続し、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったとき、同じく更新したものとみなす。
読み方です。更新の道は2つあります。1つめは、1項です。期間の満了の1年前から6か月前までの間に、相手方に、更新をしない旨の通知をしなかったときは、同じ条件で更新したものとみなします。通知の時期は、満了の1年前から6か月前まで、と覚えてください。
図:更新をしない旨の通知ができる時期
- 満了の1年前から、満了の6か月前まで
- この時期の外に出した通知は、受け付けられなかったのと同じ
終わりが6か月前ですから、更新しないと告げられた借りている人にも、満了までには、少なくとも半年が残ります。直前になって更新しないと言われても、すぐには引っ越せません。例えると、受付窓口の営業時間です。更新をしない旨の通知は、この時期にしか受け付けてもらえません。営業時間の外に出した手紙は、受け付けられなかったのと同じです。2つめは、2項です。通知の時期を守って通知をしても、期間が満了した後に、借りている人が使い続け、貸している人が遅滞なく異議を述べなかったときは、1項と同じく、更新したものとみなします。通知をしたから安心、とはなりません。満了後の異議を言い忘れても、更新です。借地の法定更新で見た、使用の継続と遅滞なく異議、という形と同じです。違いもあります。借地のような、借りる側からの更新の請求の道は、借家にはありません。その代わりに、通知の時期の関所が置かれています。補足を3つ言います。1つめ、通知ができるのは、当事者のどちらもです。貸す側だけではなく、借りる側も、更新をしない旨を通知できます。2つめ、条件を変更しなければ更新をしない旨の通知も、同じ扱いです。たとえば、賃料を上げなければ更新しない、という通知です。3つめ、転貸借がある場合の3項は、転借人の使用の継続を、借りている人の使用の継続とみなす規定です。ここで、1問です。満了の3か月前に、更新をしない旨の手紙が来ました。通知の時期の内でしょうか、外でしょうか?
図:満了の3か月前の通知は期間の外
外です。通知は、満了の1年前から6か月前までにしなければならないからです。3か月前というのは、6か月前よりも後ですから、外です。外であれば、通知をしなかったのと同じなので、1項により、更新したものとみなされます。
図:26条による更新のあと
- 従前の契約と同一の条件(賃料・敷金など)
- 期間は定めがない(26条1項ただし書)
- 2年に戻らない=法定更新は当事者が新しい期間を約束したものではない
- 合意による更新は新しい期間を自由に定められる
更新したあとの契約は、従前の契約と同一の条件です。賃料や敷金などの条件は、そのままです。ただし、1項のただし書があります。期間は、定めがないものとなります。2年でもう一度、というふうには、なりません。なぜ、2年に戻らないのでしょうか。法定更新は、当事者が新しい期間を約束したものではありません。法律も、更新後の期間を定めていません。ですから、次に終わらせたいときは、そのつど解約の申入れと正当な理由で決めることになります。借地の回で見たとおり、借地では、更新後の期間が、最初は20年、その後は10年でした。借家は、そうではありません。
期間を決め直す更新も、あります。当事者の合意による更新です。合意なら、新しい期間を自由に定められます。期間の定めがなくなるのは、26条による法定更新の場合です。
期間の定めがない借家の解約申入れ
図:期間の定めがない借家の入口
- 民法617条=各当事者がいつでも解約の申入れ
- 建物は3か月で終了
- 借地借家法27条=賃貸人からの申入れは6か月で終了
次は、期間の定めがない借家です。1年未満の約束がそうなりましたし、更新したあとの借家もそうなります。賃貸借の終わり方の回で、民法617条を読み、土地や建物では借地借家法が貸す側の申入れを強く制限する、とだけ言っておきました。その中身が、ここです。617条から確認します。
条文民法617条
民法第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。 一 土地の賃貸借 一年 二 建物の賃貸借 三箇月 三 動産及び貸席の賃貸借 一日 2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
民法では、期間の定めがないとき、どちらからでも、いつでも解約の申入れができます。建物なら、申入れから3か月で終わります。借地借家法は、この3か月を、貸す側について延ばしました。
条文借地借家法27条
借地借家法第27条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。 2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
読み方です。1項は、賃貸人が解約の申入れをしたとき、申入れの日から6か月たつと、借家が終わる、という意味です。しかも、この申入れには、正当事由が要ります。それを定めるのは27条ではなく、次の節で読む28条です。2項は、準用の規定です。26条の2項と3項を、準用しています。6か月が過ぎたあとも、借りている人が使い続け、貸している人が遅滞なく異議を述べなかったときは、やはり更新です。
図:解約申入れの非対称
- A(賃貸人)からB(賃借人)へ=解約の申入れ
- 6か月で終了+正当事由が要る
- BからA=解約の申入れ
- 民法617条により3か月で終了
- 正当事由は要らない
向きで比べます。大家のAから借りているBへの申入れは、6か月かかり、正当事由が要ります。借りているBから大家のAへの申入れは、民法617条のとおりで、3か月で終わり、正当事由は要りません。借地借家法には、借りる側からの申入れを定めた条文がないからです。ですから、民法が、そのまま当てはまります。たとえば、期間の定めのない借家で、借りている人が、引っ越したいと申し入れたとします。理由は要りません。3か月たてば終わります。逆に、大家が、建て替えたいと申し入れたとします。6か月待つだけでは足りません。建て替えたい事情が、正当事由にあたると認められる必要があります。数字は、貸す側から6か月、借りる側から3か月です。理由が要るのは、貸す側だけです。
正当事由
図:正当事由の入口
- 更新をしない旨の通知と、解約の申入れ
- どちらも賃貸人からするときは、正当の事由が要る
- 賃借人からするときは要らない
2つめの関所、理由の関所です。その前に、借地を思い出してください。借地では、地主が更新に異議を述べるとき、何が必要でしたか?正当事由です。借地借家法6条でした。借家にも、同じ考え方の条文があります。
条文借地借家法28条
借地借家法第28条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
読み方です。誰に要るのかを、まず見ます。条文の主語は、賃貸人による通知と、賃貸借の解約の申入れです。ですから、正当事由が要るのは、賃貸人の側だけです。借りている人が、更新しない旨を通知したり、解約を申し入れたりするのに、正当事由は要りません。借りている人は、自由に出ていけます。何を考慮するのかも、条文に並んでいます。
図:正当事由の比べ方
- 主=賃貸人と賃借人(転借人を含む)の、建物の使用を必要とする事情
- 補完=従前の経過・建物の利用状況と現況・財産上の給付をする旨の申出(立退料)
- 先に主を比べ、足りなければ補完で補う
4つあります。1つめは、貸す側と借りる側の双方が、建物を使う必要です。これが主です。2つめは、従前の経過です。契約の期間、賃料を払ってきたか、信頼関係、更新のときに借りる人が払う、更新料をめぐる経緯などです。3つめは、建物の利用状況と現況です。使い方や、老朽化の程度、建て替えの必要です。4つめは、立退料のように、財産上の給付をする旨の申出です。例えると、天秤です。皿に、双方の使う必要が載ります。それだけで傾きが決まらないとき、残りの3つが、おもりとして足されます。立退料は、そのうちの小さなおもりです。中心は、あくまで、使う必要です。境目のペアです。大家が、自分の家族が住むために、その部屋が要り、借りている人には、近くに別の住まいがあるとします。大家の必要が大きく、正当事由が認められる方向です。一方、大家が、売って現金にしたいだけで、借りている人は高齢で、他に行き場がないとします。借りている人の必要が上回ります。立退料を積んでも、傾きは、簡単には戻りません。決め手は、どちらが、その建物を使わなければ困るのか、です。
立退料を、解約の申入れのあとから申し出たり、増やしたりしてもよいのか。その点を扱った判例があります。事案から見ます。
図:立退料の判例の事案
- 賃貸人が解約を申し入れ、同時に立退料100万円の支払を申し出た
- 裁判の途中で、相当と認める範囲で増額する用意があると述べ、最後の口頭弁論で300万円に増額する旨を申し出た
- 争点=申入れの後の申出や増額を、当初の申入れの正当事由の判断で考慮できるか
事案です。賃貸人が、賃貸借の解約を申し入れ、同時に、立退料100万円の支払を申し出ました。裁判が進む中で、賃貸人は、裁判所が相当と認める範囲で、立退料を増やす用意があると述べました。そして、2段目の裁判である控訴審の、審理を締めくくる最後の口頭弁論で、立退料を300万円に増やす旨を申し出ました。争点は、解約の申入れのあとに増やした立退料を、正当な理由の判断で考慮してよいか、でした。当時は、借家法の規定の事件でしたが、今の28条に引き継がれています。判旨を読みます。
判例最判平3・3・22 民集45巻3号293頁
申入れの後の立退料の申出も考慮できる 建物の賃貸人が解約の申入れをした場合において、その申入時に借家法一条ノ二に規定する正当事由が存するときは、申入後六か月を経過することにより当該建物の賃貸借契約は終了するところ、賃貸人が解約申入後に立退料等の金員の提供を申し出た場合又は解約申入時に申し出ていた右金員の増額を申し出た場合においても、右の提供又は増額に係る金員を参酌して当初の解約申入れの正当事由を判断することができると解するのが相当である。
読み方です。借家法1条ノ2とは、今の28条の前身にあたる条文です。申入れのあとに、立退料を申し出たり、増額を申し出たりした場合も、その金員を考慮して、最初の解約申入れの正当事由を判断できる、という判断です。理由の骨格は、こうです。立退料は、解約申入れのときの双方の事情を比べた結果、明渡しに伴う損得を調整するために払われるものです。そして、相当な額が具体的に分かるのは、明渡しを求める裁判の審理を通じてです。申入れの時点で額を決め切れ、と求めるのは、現実的ではありません。結論です。この事件では、増やした300万円によって、解約の申入れは、正当事由を備えると認められました。借家は、最初の解約申入れから6か月後に終了しました。増額を申し出たときから6か月ではありません。判断の基準は、あくまで、最初の申入れの時点だからです。一つ、釘を刺します。この判例は、立退料の申出を考慮できる、と言っているだけです。立退料を払えば、必ず明渡しが認められる、とは言っていません。立退料は、補う要素です。ここは、論文で論点になりうるところです。答案では、こう書きます。正当事由は、双方の建物の使用の必要性を主として、従前の経過、利用状況と現況を考慮し、立退料の申出は補完的に考慮して判断します。立退料の申出は、解約申入れの後でも考慮でき、判断は申入れの時点を基準にします。転借人がいる場合の条文も、名前だけ出します。
条文借地借家法34条
借地借家法第34条 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。 2 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から六月を経過することによって終了する。
読み方です。賃貸借が終わるとき、賃貸人は、転借人に通知をしなければ、終了を転借人に対抗できません。又貸しの回で、元の賃貸借が期間満了で終わると、大家は原則として転借人に終了を言える、と見ました。建物では、その前に、転借人への通知が要るのです。立ち止まって考えてみましょう。賃貸人から6か月、賃借人から3か月でした。正当事由が要るのは、どちらの申入れでしょうか?賃貸人の側だけです。賃借人が出ていくときには、要りません。もう1問。立退料の申出だけで、正当事由は足りるでしょうか?足りません。中心は、双方の建物を使う必要で、立退料は補う要素だからです。これで、関所が2つそろいました。時期の関所と、理由の関所です。どちらも、終わらせたい大家の側にだけ置かれていて、出ていく側には置かれていません。
更新後の姿と特約、まとめ表
図:更新後の姿
- 従前の契約と同一の条件(賃料・敷金など)で続く
- ただし期間の定めはない
- 次に終わらせるときは、27条の解約申入れ(6か月+正当事由)
ここで、更新したあとの姿を整理します。法定更新のあとの契約は、賃料や敷金などは従前と同じ条件で続きます。ただし、期間の定めはありません。次に終わらせるときは、27条の、解約の申入れです。6か月前の申入れと、正当事由が要ります。最後に、特約です。
条文借地借家法30条
借地借家法第30条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
読み方です。この節は、これまで見た存続期間と更新、解約の申入れ、正当事由の規定を含む節です。その規定に反する特約で、借りている人に不利なものは、無効です。借地の9条と同じ作りです。例で確かめます。「期間が満了したら、当然に契約は終了する」という特約は、更新の仕組みに反して借りている人に不利なので、無効です。「正当事由がなくても更新しない」という特約も、無効です。「貸主からの解約申入れは、6か月ではなく3か月でよい」という特約も、借りている人に不利なので、無効です。逆に、借りている人に有利な特約は、有効です。たとえば、「貸主からの解約申入れは、1年前にしなければならない」という特約です。借りている人だけが守られる。これを、借地と同じく、片面的な強行規定と呼びます。
最初から更新のない借家も、作れます。ただし、専用の仕組みを使う必要があります。定期建物賃貸借です。普通の借家の特約では、作れません。方式なども厳しいので、次の回で扱います。
図:賃貸借の更新等のまとめ表
- 民法=使用継続+知りながら異議なし→更新を推定(619)・期間の定めなし・正当事由なし
- 借地権=更新請求+遅滞なく異議なし(5条1項)または使用継続+遅滞なく異議なし(5条2項)→更新とみなす・異議に正当事由(6条)
- 借家(期間の定めあり)=満了の1年前〜6か月前に更新拒絶の通知なし(26条1項)、または通知したが使用継続+遅滞なく異議なし(26条2項)→更新とみなす・期間の定めなし・賃貸人の通知に正当事由(28条)
- 借家(期間の定めなし)=賃貸人の解約申入れから6か月で終了(27条1項)・6か月経過後も使用継続+遅滞なく異議なし→更新・期間の定めなし(27条2項)・いずれも賃貸人の解約申入れに正当事由(28条)
今日の中身を、民法と借地に並べて、表にします。民法は、使い続けて貸主が知りながら黙っていれば、更新を推定します。正当事由は要りません。借地は、更新を請求するか、使い続けて、地主が遅滞なく異議を述べなければ、更新したものとみなし、異議には正当事由が要ります。借家で期間の定めがあるときは、満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨の通知がなければ更新とみなし、通知をしても、満了後に使用を継続して遅滞なく異議がなければ更新とみなします。更新後は期間の定めがなく、賃貸人の通知に正当事由が要ります。期間の定めがないときは、賃貸人の解約申入れから6か月で終了し、6か月が過ぎたあとも使い続けて異議がなければ更新です。いずれも、賃貸人の解約申入れに、正当事由が要ります。
確かめる
図:確かめるその1
- 期間を6か月と書いた建物の賃貸借
- 6か月が来たら、借りている人は出ていく義務があるか
事例で確かめます。1つめ。期間を6か月とした建物の賃貸借があります。6か月が来たとき、借りている人は、出ていく義務があるでしょうか?
図:答えその1
- 1年未満の期間は、期間の定めがないものとみなす(29条1項)
- 出ていく義務はない
- 貸主が終わらせるには、6か月前の解約申入れ+正当事由
ありません。1年未満の期間は、期間の定めがないものとみなされるので、大家が終わらせるには、正当事由のある解約の申入れが要ります。
図:確かめるその2
- 期間2年の借家
- 満了の10か月前に、大家が更新をしない旨を通知した
- 正当事由はない
- 借りている人は出なければならないか
2つめ。期間2年の借家で、満了の10か月前に、大家が、更新をしない旨を通知しました。ただし、正当事由はありません。借りている人は、出なければならないでしょうか?
図:答えその2
- 10か月前は通知期間の内
- ただし、賃貸人の通知には正当事由が要る(28条)
- 正当事由がなければ通知は認められず、更新される
出なくてかまいません。10か月前は、通知の時期の内ですが、賃貸人による通知は、正当事由がなければ、することができないからです。時期の関所を越えても、理由の関所が残っています。
図:確かめるその3
- 期間の定めがない借家
- 借りている人が引っ越したいと申し入れた
- いつ終わるか
- 理由は要るか
3つめ。期間の定めがない借家で、借りている人が、引っ越したいと申し入れました。いつ終わるでしょうか? 理由は、要るでしょうか?
図:答えその3
- 借りている人からの申入れは、民法617条により3か月で終了
- 正当事由は不要
申入れから3か月で終わります。理由は要りません。民法617条が、そのまま当てはまるからです。
図:確かめるその4
- 期間2年の借家
- 満了の8か月前に、正当事由のある更新拒絶の通知があった
- 満了後も借りている人が住み続け、大家は何も言わなかった
- どうなるか
4つめ。期間2年の借家で、満了の8か月前に、正当事由のある更新拒絶の通知がされました。満了後も、借りている人が住み続け、大家は何も言いませんでした。どうなるでしょうか?
図:答えその4
- 通知をしても、満了後の使用継続に遅滞なく異議を述べなければ、更新とみなされる(26条2項)
- 更新後は期間の定めなし
更新したものとみなされます。通知をしても、満了後の使用の継続に、遅滞なく異議を述べなければ、26条2項により、1項と同じ扱いになるからです。更新後の期間は、定めがありません。通知は、したら終わりではありません。
冒頭の問いの答え合わせ
図:今日のまとめ
- 1=借家は1年未満の期間は期間の定めなし・上限なし
- 2=期間の定めがある借家は、満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の通知がなければ更新(26条1項)、通知しても満了後に使用継続+遅滞なく異議なしなら更新(26条2項)
- 3=期間の定めなしは、賃貸人から6か月・借りる側から3か月
- 4=正当事由は賃貸人側だけ
- 5=更新後は期間の定めなし
- 借りる側に不利な特約は無効
今日の話を整理します。借家は、1年未満の期間を定めても、期間の定めがないものとみなされます。上限はありません。期間の定めがある借家は、満了の1年前から6か月前までに更新をしない旨の通知がなければ、更新とみなされます。通知をしても、満了後に使い続け、遅滞なく異議がなければ、やはり更新です。期間の定めがない借家は、貸す側から申し入れるなら6か月、借りる側からの申入れなら3か月で終わります。正当事由が要るのは、貸す側だけです。比べるのは、双方の使う必要が主で、従前の経過、利用状況と現況、立退料の申出が補いです。更新したあとは、期間の定めがない借家になります。借りる側に不利な特約は、無効です。
図:冒頭の答え合わせ
- 期間満了の3か月前の手紙は、通知期間(1年前〜6か月前)の外
- 通知をしなかったのと同じで、26条1項により更新される
- 時期が合っていても、賃貸人の通知には正当事由が要る
- 更新後は期間の定めなし
- 出ていく側は民法617条で3か月・理由不要
冒頭の問いの答えです。2年契約の満了3か月前に届いた、更新しないという手紙は、通知の時期の外です。通知をしなかったのと同じ扱いで、契約は同じ条件で更新されます。更新後は、期間の定めのない借家です。仮に時期が合っていても、大家が出てもらうには、正当事由が要ります。借りている人が、自分から出ていくときは、理由は要らず、3か月で終わります。出ていけと迫る側にだけ、関所が2つ置かれているのでした。
参照条文
- 民法604条
- 借地借家法29条
- 民法619条1項
- 借地借家法26条
- 民法617条
- 借地借家法27条
- 借地借家法28条
- 借地借家法34条
- 借地借家法30条