民法ゼロから民法#229

承諾の効力と懸賞広告

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第5章 契約 #229/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

「90万円なら買う」は、承諾か

冒頭の設例の時系列。A(申込みをした人・売る側)、B(申込みを受けた人)。1 AはBにメールで「今月末までに返事をくれれば、100万円で売ります」と送る。品物は中古の業務用コーヒー焙煎機。2 Bが「90万円なら買います」と返す。3 問い=これは承諾か。契約は90万円か、100万円か、どちらでもないか。Aが黙っていたらどうなるか。そのあとBが「やっぱり100万円で買います」と言ったら? 図:冒頭の設例の時系列

  • A(申込みをした人・売る側)、B(申込みを受けた人)
  • 1 AはBにメールで「今月末までに返事をくれれば、100万円で売ります」と送る
  • 品物は中古の業務用コーヒー焙煎機
  • 2 Bが「90万円なら買います」と返す
  • 3 問い=これは承諾か
  • 契約は90万円か、100万円か、どちらでもないか
  • Aが黙っていたらどうなるか
  • そのあとBが「やっぱり100万円で買います」と言ったら?

先に、答えの方向を言います。どちらでもありません。契約は、成立していません。Bの返事は、Aの申込みを断ったうえで、「90万円で買う」という新しい申込みをしたものとして扱われます。条文は528条です。理由は、本編で積み上げます。人物は、申込みの回から続けて使います。申込みをしたAが申込者、返事をしたBが承諾をする側です。そして、条件を1つずつ変えます。返事が期限を過ぎて届いたら。返事は要らないと書いてあったら。最後の懸賞広告だけは、別の設例を使います。

今日の位置と、3つの柱

今日の地図。位置=申込みの側→承諾の側。背骨=契約は、申込みに承諾が届いた時に成る。では、承諾が遅れたら・中身を変えたら・通知が要らないと言われていたら・そもそも広告に応じただけなら、契約はどうなるのか。3つの柱=1 承諾は、いつ・どんな中身なら契約を成立させるか/2 承諾の通知が無くても成立する場合/3 懸賞広告。弁別の練習は柱の外。 図:今日の地図

  • 位置=申込みの側→承諾の側
  • 背骨=契約は、申込みに承諾が届いた時に成る。では、承諾が遅れたら・中身を変えたら・通知が要らないと言われていたら・そもそも広告に応じただけなら、契約はどうなるのか
  • 3つの柱=1 承諾は、いつ・どんな中身なら契約を成立させるか/2 承諾の通知が無くても成立する場合/3 懸賞広告
  • そのあとに、似た事例の分け目を練習する

位置づけです。契約は、申込みと承諾でできています。これまでは申込みの側を見てきました。今日は、承諾の側です。

今日の背骨は、この一文です。契約は、申込みに承諾が届いた時に成る。では、承諾が遅れたら。中身を変えたら。通知は要らないと言われていたら。そもそも、広告に応じただけだったら。条文は、場面ごとに答えを置いています。

柱は3つです。1つめ、承諾は、いつ、どんな中身なら、契約を成立させるのか。2つめ、承諾の通知が無くても契約が成立する場合。3つめ、懸賞広告です。似た事例の練習は、柱の外に置きます。

今日も、言えることを、根拠の札を貼るように言い分けます。根拠の札の意味は、使う場面の直前で、一言ずつ確認します。今日は、条文が主役です。判例は、今日は出てきません。

申込みの撤回と効力を、4つの場面で思い出す

申込みの撤回と効力の4場面。1 承諾期間あり=撤回できない(留保したときを除く)/期間内に承諾の通知を受けなかったとき効力を失う/523条1項・2項。2 承諾期間なし(対話者でない・返事が届くまで時間がかかる)=相当な期間が過ぎるまで撤回できない(留保を除く)/効力を失う時期は条文に無い(学説の整理)/525条1項。3 承諾期間なし(対話者)=対話が継続している間はいつでも撤回できる/継続中に承諾の通知を受けなかったとき効力を失う(終了後も有効と表示したときを除く)/525条2項・3項。4 申込みの通知を発したあとに申込者が死亡等=原則は効力を妨げられない(97条3項)/例外は効力を有しない(あらかじめ表示していたとき・相手方が承諾の通知を発するまでに知ったとき)/526条。 図:申込みの撤回と効力の4場面

  • 1 承諾期間あり=撤回できない(留保したときを除く)/期間内に承諾の通知を受けなかったとき効力を失う/523条1項・2項
  • 2 承諾期間なし(対話者でない・返事が届くまで時間がかかる)=相当な期間が過ぎるまで撤回できない(留保を除く)/効力を失う時期は条文に無い(学説の整理)/525条1項
  • 3 承諾期間なし(対話者)=対話が継続している間はいつでも撤回できる/継続中に承諾の通知を受けなかったとき効力を失う(終了後も有効と表示したときを除く)/525条2項・3項
  • 4 申込みの通知を発したあとに申込者が死亡等=原則は効力を妨げられない(97条3項)/例外は効力を有しない(あらかじめ表示していたとき・相手方が承諾の通知を発するまでに知ったとき)/526条

承諾の話に入る前に、前回の申込みの側を、4つの場面の一覧で確認します。前回の3場面に、申込者が亡くなった場面を足した4つです。撤回とは、届いた申込みを引っ込めることでした。条文は読み直さず、結論と、前回この動画が整理した理由を、一言ずつ言います。1つめ、承諾期間のある申込みです。撤回できません。相手は、期限まで考えてよいと信じて、準備を始めるからです。ただし、撤回をする権利を留保したときは別です。期間内に承諾の通知を受けなければ、申込みは効力を失います。523条です。2つめ、承諾期間がなく、相手が対話者でない場合です。メールや手紙のように、返事が届くまで時間がかかる場合です。相当な期間が過ぎるまでは、撤回できません。返事が届くまでの間は、相手が同じように準備するからです。効力を失う時期は、民法の条文に書かれていません。学説の整理です。525条1項です。3つめ、承諾期間がなく、相手が対話者の場合です。電話のように、すぐ返事ができる相手です。対話が継続している間は、いつでも撤回できます。相手はまだ準備を始めておらず、守るべき信頼が育っていないからです。継続している間に承諾の通知を受けなければ、効力を失います。525条の2項と3項です。4つめ、申込者が申込みの通知を発したあとに、亡くなった場合などです。原則は、効力を妨げられません。例外として、そうなったら効力を失うと、あらかじめ表示していたとき、または、相手方が承諾の通知を発するまでに事実を知ったときは、申込みは効力を有しません。あとのほうは、知ったうえで承諾する相手に、守るものが無いからです。97条3項と526条です。

さて、前回の復習です。契約は、承諾がどうなった時に成立するのでしたか?承諾の通知が、申込者に届いた時でした。承諾も意思表示なので、届いた時から効力を生ずる、という97条1項が及びます。この結論を出発点に、承諾の側を掘り下げます。

柱1——承諾は届いた時に成立する

承諾の効力の比較。現在=承諾も意思表示なので97条1項が及ぶ→承諾の通知が申込者に届いた時に契約が成立する(522条1項)。改正前=離れた相手との契約は、承諾の通知を発した時に成立する(旧526条1項・発信主義)→2017年の改正で削除(2020年4月施行)。成立の時=改正前は発した時/現在は届いた時。 図:承諾の効力の比較

  • 現在=承諾も意思表示なので97条1項が及ぶ→承諾の通知が申込者に届いた時に契約が成立する(522条1項)
  • 改正前=離れた相手との契約は、承諾の通知を発した時に成立する(旧526条1項・発信主義)→2017年の改正で削除(2020年4月施行)
  • 成立の時=改正前は発した時/現在は届いた時

1つめの柱です。まず、根拠の札の1枚めを確認します。条文とは、法律に書いてあることです。今日の結論は、ほとんどが、条文の札で言えます。現在の規律です。承諾の通知が申込者に届いた時に、契約は成立します。522条1項と、97条1項を合わせた結論です。設例で言うと、Bが月末に「買います」とメールを送信しても、その送信の時には、まだ契約は成立しません。Aにメールが届いた時に成立します。途中でメールが消えてAに届かなければ、契約は成立しません。

昔は、違いました。改正の前は、離れた相手との契約は、承諾の通知を発した時に成立する、とされていました。このように、意思表示が発せられた時に効力を生じる考え方を発信主義、届いた時に効力を生じる考え方を到達主義と呼びます。意思表示は届いた時に効力を生ずるのが原則ですが、契約の成立の場面は、その例外だったのです。条文は、旧526条1項です。2017年の民法改正で、この項は削除されました。施行は2020年4月です。あわせて、通知が遅れて届いたことを相手に知らせる義務を定めていた旧522条と旧527条も、削除されました。削除された結果、承諾にも97条1項が、そのまま及びます。

なぜ変えたのか。札=改正の説明(2017年の改正のときに法務省・法制審議会が出した資料に書かれている理由)。1 承諾の発信時に成立するとすると、申込者が知らない間に、債務の履行が遅れた扱いになるなど、不測の損害を受けるおそれがある。2 早く成立させたいなら、メールなど速い手段を選べばよい。通信手段が発達した今日では、承諾だけ特別に扱う必要が乏しい。 図:なぜ変えたのか

  • 札=改正の説明(2017年の改正のときに法務省・法制審議会が出した資料に書かれている理由)
  • 1 承諾の発信時に成立するとすると、申込者が知らない間に、債務の履行が遅れた扱いになるなど、不測の損害を受けるおそれがある
  • 2 早く成立させたいなら、メールなど速い手段を選べばよい
  • 通信手段が発達した今日では、承諾だけ特別に扱う必要が乏しい

ここで、根拠の札を、もう1枚確認します。改正の説明とは、2017年の改正のときに、法務省や法制審議会が出した資料に書かれている、改正の理由のことです。なぜ発信主義をやめたのか。改正の説明は、2つ挙げています。1つめ、承諾を発した時に成立するとしてしまうと、申込者は、知らない間に契約が成立したことになります。その結果、債務の履行が遅れた扱いになるなど、不測の損害を受けるおそれがあります。2つめ、早く契約を成立させたいなら、承諾する側が、メールなど速い手段を選べばよいことです。通信手段が発達した今は、承諾だけを特別に扱う必要が乏しいのです。

改正前のルールにも、利点はありました。改正前の例外の趣旨は、取引を迅速にして、承諾をする側が、早く履行の準備を始められるようにすることでした。ただ、今の取引では、速い手段を選べば足りる。その分、申込者に不測の損害を負わせる理由が弱くなった、という整理です。もう一つの根拠の札も、確認します。こちらの説明とは、この動画が理解のために整理したことです。承諾が届かなかったときは、契約は成立しません。つまり、承諾が届かない危険は、承諾をする側が負う、ということになります。これは条文が書いているのではなく、97条1項の読みから出てくる整理です。なお、当事者があらかじめ「承諾を発した時に成立する」と合意しておくことは、妨げられません。

柱1——遅れて届いた承諾

遅れて届いた承諾。設例の変種1=Bの「買います」が、期限を過ぎて、翌月のついたちに届いた。期限が過ぎているので、Aの申込みは効力を失っている(523条2項)→契約は成立しない。それでも、申込者は、遅れて届いた承諾を、新たな申込みとみなすことができる(524条)。条文の見出し=遅延した承諾の効力。 図:遅れて届いた承諾

  • 設例の変種1=Bの「買います」が、期限を過ぎて、翌月のついたちに届いた
  • 期限が過ぎているので、Aの申込みは効力を失っている(523条2項)→契約は成立しない
  • それでも、申込者は、遅れて届いた承諾を、新たな申込みとみなすことができる(524条)
  • 条文の見出し=遅延した承諾の効力

設例を変えます。変種1、Bの「買います」というメールが、期限を過ぎて、翌月のついたちに届いたとします。期限が過ぎているので、Aの申込みは、すでに効力を失っています。523条2項です。ですから、契約は成立しません。それでも、条文は、この遅れた承諾に、もう一つの働きを与えています。条文の見出しは、遅延した承諾の効力です。この動画では、遅れて届いた承諾と呼びます。

条文民法524条

民法第524条(遅延した承諾の効力) 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

読みます。申込者は、遅延した承諾を、新たな申込みとみなすことができる。注目するのは、できる、という言葉です。みなすかどうかは、申込者が選べます。設例に当てます。ついたちに届いたBのメールを、Aは、Bからの申込みとして扱えます。Aが、まだ売りたければ、「では売ります」と返します。その返事がBに届いた時に、契約が成立します。Aが、もう売りたくなければ、何もしなくて構いません。みなさずに放っておけば、何も起きません。契約は成立せず、Aに義務も生じません。選ぶ権利だけが、Aに与えられています。なぜ、こういう規定があるのか。ここは、こちらの説明の札です。承諾期間は、もともと申込者が決めたものです。申込者が、期限のあともなお契約を望むなら、簡単な方法で成立させられるようにして、取引を速くする。それが趣旨です。なお、この規定は、改正で新しく作られたものではなく、改正の前から続いている規定です。もう一つ、承諾期間のない申込みにも及ぶか、という点です。524条は、承諾期間の定めがあることを、要件にしていません。ですから、承諾期間のない申込みが効力を失ったあとに届いた承諾にも、同じ扱いになると解されています。

柱1——変更を加えた承諾

変更を加えた承諾(528条)。冒頭の問いの答え。Bの返事「90万円なら買います」は、申込みに条件を付し、その他変更を加えた承諾。→その申込みの拒絶とともに、新たな申込みをしたものとみなす。帰結=(a) 90万円でも100万円でも契約は成立していない。 図:変更を加えた承諾

  • 528条
  • 冒頭の問いの答え。Bの返事「90万円なら買います」は、申込みに条件を付し、その他変更を加えた承諾。→その申込みの拒絶とともに、新たな申込みをしたものとみなす。帰結=(a) 90万円でも100万円でも契約は成立していない。

冒頭の問いに戻ります。Bの返事は「90万円なら買います」でした。条文は、こう書いています。

条文民法528条

民法第528条(申込みに変更を加えた承諾) 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。

読みます。承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えて承諾したときは、その申込みの拒絶とともに、新たな申込みをしたものとみなす。524条と違って、ここには、できる、がありません。みなす、です。みなすとは、本人のつもりがどうでも、法律がそう扱うことです。選べません。当然に、そうなります。結論を、3つに割って見ます。(a)、90万円でも100万円でも、契約は成立していません。申込みと承諾が、合致していないからです。Bの返事は、承諾として働かず、新たな申込みになります。

帰結(b)と(c)。(b) Aの元の申込みは、拒絶されて効力を失う。Bがあとから「やっぱり100万円で買います」と言っても、Aの元の申込みは残っていない。Aが応じれば成立するが、それはBの新しい申込みへのAの承諾。(c) Aが「では90万円で売ります」と返せば、それがBの新しい申込みへの承諾。その承諾がBに届いた時に90万円で成立する。

問いです。Bが「90万円なら買います」と返し、Aが何も返さないでいるうちに、Bが「やっぱり100万円で買います」と言いました。Aは、まだ元の申込みを撤回していません。契約は成立するでしょうか?成立しない、と思います。Aさんの元の申込みは、もう残っていないからです。成立しません。(b)です。Bの90万円の返事は、元の申込みの拒絶でした。拒絶された申込みは、効力を失います。ですから、Bがあとで「100万円で買います」と言っても、応じる相手の申込みが、もう残っていません。Aがそれに応じて、承諾を返せば、契約は成立します。ただし、それは、Bの新しい申込みへの、Aの承諾です。(c)です。Aが「では、90万円で売ります」と返せば、それが、Bの新しい申込みに対する承諾です。その承諾がBに届いた時に、90万円で成立します。

なぜ拒絶とまでみなすのか。ここは、こちらの説明の札です。承諾は、申込みをそのまま受け入れる意思表示です。中身を変えた返事は、申込みと合致していないので、本来は承諾として働きません。ただ、取引の現場では、条件を言い合うことが多い。それなら、元の申込みの拒絶と、こちらからの新しい申込みだと位置づけたほうが、実態に合い、取引が円滑に進みます。条文の読み方の注意が、一つあります。条文は、条件を付し、その他変更を加えて、としか書いていません。変更の程度では、区別していないのです。軽微な付随的な変更なら、有効な承諾と見る見解もあります。学説の一つです。ただ、条文にはなりませんでした。冒頭の設例に戻すと、「90万円なら買います」は承諾ではなく、契約は成立していません。528条が、拒絶と新たな申込みとみなすからです。

柱1——遅れた承諾と変更を加えた承諾、違いを一枚で

524条と528条の対比。状況=524条は期間を過ぎて届いた(中身は申込みどおり)/528条は期間内でも条件を付けた・中身を変えた。元の申込み=524条は期間経過で効力を失っている(523条2項)/528条は拒絶されて効力を失う。新たな申込みと=524条は、みなすことができる(申込者が選ぶ・何もしなければ何も起きない)/528条は、みなす(選べない・当然に新たな申込みになる)。契約が成立するのは=どちらも、申込者が新たな申込みに承諾を返し、それが届いた時。 図:524条と528条の対比

  • 状況=524条は期間を過ぎて届いた(中身は申込みどおり)/528条は期間内でも条件を付けた・中身を変えた
  • 元の申込み=524条は期間経過で効力を失っている(523条2項)/528条は拒絶されて効力を失う
  • 新たな申込みと=524条は、みなすことができる(申込者が選ぶ・何もしなければ何も起きない)/528条は、みなす(選べない・当然に新たな申込みになる)
  • 契約が成立するのは=どちらも、申込者が新たな申込みに承諾を返し、それが届いた時

2つの条文を、並べます。状況が違います。524条は、期間を過ぎて届いた承諾で、中身は申込みどおりです。528条は、期間内でも、条件を付けたり、中身を変えたりした承諾です。元の申込みの扱いも違います。524条では、期間が過ぎて、申込みはすでに効力を失っています。528条では、拒絶されて、効力を失います。そして、新たな申込みとの関係が、決定的に違います。524条は、みなすことができる。申込者が選び、何もしなければ何も起きません。528条は、みなす。選べず、当然に、新たな申込みになります。どちらも、契約が成立するのは、申込者が、新たな申込みに承諾を返し、それが届いた時です。

柱2——承諾の通知が要らない場合、意思実現

承諾の通知が要らない場合(527条)。原則=契約は申込みと承諾の合致で成立し(522条1項)、承諾は届いて初めて効力を生ずる。その例外が2つ=意思実現(527条)と交叉申込み。意思実現は条文に出てこない呼び名(学説)。 図:承諾の通知が要らない場合

  • 527条
  • 原則=契約は申込みと承諾の合致で成立し(522条1項)、承諾は届いて初めて効力を生ずる。その例外が2つ=意思実現(527条)と交叉申込み。意思実現は条文に出てこない呼び名(学説)。

2つめの柱です。原則は、ここまで見てきたとおりです。契約は、申込みと承諾の合致で成立し、承諾は、届いて初めて効力を生じます。その例外が2つあります。1つめが、527条です。ここで、根拠の札を、もう1枚確認します。学説とは、学者の整理のことです。その中で、多くの支持を集めるものを、通説と呼びます。条文に書かれていないことは、学説の札で話します。

条文民法527条

民法第527条(承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期) 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

読みます。申込者の意思表示または取引上の慣習により、承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

527条を2つに割って読む。1 どんなときに承諾の通知が要らないか=申込者の意思表示、または取引上の慣習があるとき(条文)。2 いつ成立するか=承諾の意思表示と認めるべき事実があった時(条文)。届く・届かないは問題にしない。この規律を意思実現と呼ぶのは学説の呼び名で、条文には出てこない。設例の変種2=Aが「返事は要りません。買うなら、月末までに代金を振り込んでください」と書いていた→Bが振り込んだ時に成立(こちらの説明)。 図:527条を2つに割って読む

  • 1 どんなときに承諾の通知が要らないか=申込者の意思表示、または取引上の慣習があるとき(条文)
  • 2 いつ成立するか=承諾の意思表示と認めるべき事実があった時(条文)
  • 届く・届かないは問題にしない
  • この規律を意思実現と呼ぶのは学説の呼び名で、条文には出てこない
  • 設例の変種2=Aが「返事は要りません。買うなら、月末までに代金を振り込んでください」と書いていた→Bが振り込んだ時に成立(こちらの説明)

2つに割って読みます。1つめ、どんなときに承諾の通知が要らないのか。申込者の意思表示があるときか、取引上の慣習があるときです。2つめ、いつ成立するのか。承諾の意思表示と認めるべき事実があった時です。承諾が届いたかどうかは、問題にしません。この規律を、意思実現と呼びます。これは学説の呼び名で、条文には出てこない言葉です。設例の変種2です。Aが、メールに「返事は要りません。買うなら、今月末までに代金を振り込んでください」と書いていました。Bが代金を振り込んだ時に、契約が成立します。申込者の意思表示で、承諾の通知が要らないとされ、振込が、承諾の意思表示と認めるべき事実に当たるからです。この例は、こちらの説明の札です。何が承諾と認めるべき事実になるかは、場面ごとに、申込みの中身から読みます。なぜ、届かなくても成立してよいのか。こちらの説明の札です。承諾が届いた時に成立するのは、申込者が、知らないうちに契約を結んだことにされないためでした。その申込者が、自分から通知は要らないと言ったのなら、届くのを待つ理由がありません。

Bが黙っていただけでは、原則として、承諾にはならない、と考えます。527条が求めているのは、承諾の通知の代わりになる、事実です。申込者が一方的に「返事がなければ承諾したものとみなします」と書いても、それだけで、相手方は縛られません。527条が働くのは、申込者の意思表示や慣習で通知が要らないとされ、そのうえで、承諾と認めるべき事実があったときです。ここは、こちらの説明の札で、条文の読みです。

柱2——交叉申込み

交叉申込み(読みはコウサモウシコミ・学説の呼び名)。事案=Aが「焙煎機を100万円で売ります」と出し、同じ頃Bが「100万円で買います」と出した。お互い、相手の申込みを知らないまま。申込みが2つあるだけで承諾は無い→522条1項の形には当たらない。それでも、中身が合っているので、契約は成立すると整理される(学説・通説)。成立の時=2つの申込みのうち、あとに届いたほうが届いた時(学説・通説)。 図:交叉申込み

  • 読みはコウサモウシコミ・学説の呼び名
  • 事案=Aが「焙煎機を100万円で売ります」と出し、同じ頃Bが「100万円で買います」と出した。お互い、相手の申込みを知らないまま。申込みが2つあるだけで承諾は無い→522条1項の形には当たらない。それでも、中身が合っているので、契約は成立すると整理される(学説・通説)。成立の時=2つの申込みのうち、あとに届いたほうが届いた時(学説・通説)。

もう一つの例外が、交叉申込みです。条文には出てこない呼び名で、学説が名づけたものです。事案を作ります。Aが「焙煎機を100万円で売ります」とメールを出しました。同じ頃、Bが「焙煎機を100万円で買います」とメールを出しました。お互い、相手の申込みを知らないまま出しています。ここには、申込みが2つあるだけで、承諾がありません。どちらも、相手の申込みに応じて出したものではないからです。522条1項の、申込みに対して相手方が承諾をした、という形には当たりません。これは、条文の読みです。それでも、中身が合っているので、契約は成立すると整理されます。学説の札で、通説です。理由は、2つの意思表示が、客観的に同じ内容で、両方とも、相手とその内容で契約するつもりがあるからです。なお、成立を否定する見解もあります。学説は分かれうる、とだけ押さえてください。

成立の時は、条文に書いていません。ここも学説の札で、通説です。一般原則の97条1項から、2つの申込みのうち、あとに届いたほうが届いた時に、成立すると整理されます。どちらの申込みも、片道の意思表示のまま行き違っています。あとに届いたほうが届いた時に、両方が相手に届き終わるので、そこで成立する、ということです。たとえば、Aの申込みが先にBに届き、Bの申込みがあとでAに届いたなら、成立は、Bの申込みがAに届いた時です。交叉申込みの成立と、成立の時は、論文で論点になりうる所です。

承諾の側の練習——2問

練習問題1。期限を付けたAのメール(今月末まで)。Bの「買います」は、期限の2日あとに届いた。Aは何も返さなかった。問い=契約は成立するか。 図:練習問題1

  • 期限を付けたAのメール(今月末まで)
  • Bの「買います」は、期限の2日あとに届いた
  • Aは何も返さなかった
  • 問い=契約は成立するか

ここからは、承諾の側の練習です。問1です。Aは、「今月末まで」と期限を付けてBに申し込みました。Bの「買います」は、期限の2日あとに、Aに届きました。Aは、何も返しませんでした。契約は成立するでしょうか?遅れて届いた承諾では、契約は成立しません。順に言います。期間内に届いていないので、申込みは効力を失っています。523条2項です。524条は、遅れて届いた承諾を新たな申込みと、みなすことができる、でした。Aがみなして、承諾を返さなければ、何も起きません。決め手は、できる、という言葉で、選ぶのは申込者だということです。

練習問題2。Aのメールに、Bが返した。「100万円で買います。ただし、動作を保証してくれることが条件です。」問い=契約は成立するか。 図:練習問題2

  • Aのメールに、Bが返した
  • 「100万円で買います。ただし、動作を保証してくれることが条件です。」問い=契約は成立するか

問2です。Aの申込みに、Bが「100万円で買います。ただし、動作を保証してくれることが条件です」と返しました。契約は成立するでしょうか?この返事では、契約は成立しません。条文は528条です。条件を付した承諾なので、Aの申込みの拒絶とともに、新たな申込みをしたものとみなされます。値段が合っていても、条件を付けた時点で、承諾としては働きません。Aが「保証します」と返し、それがBに届いた時に、契約が成立します。

柱3——懸賞広告とは、そして529条

懸賞広告の条文の地図。設例=「逃げたインコを見つけて届けてくれた人に、3万円を差し上げます」という貼り紙。懸賞広告=ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告すること。529条=報酬を与える義務/529条の2・529条の3・530条=撤回/531条=誰が受け取るか/532条=優等懸賞広告。 図:懸賞広告の条文の地図

  • 設例=「逃げたインコを見つけて届けてくれた人に、3万円を差し上げます」という貼り紙
  • 懸賞広告=ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告すること
  • 529条=報酬を与える義務/529条の2・529条の3・530条=撤回/531条=誰が受け取るか/532条=優等懸賞広告

3つめの柱は、懸賞広告です。ここまでは、決まった相手への申込みに、承諾が返る話でした。今度は、相手を決めずに、広告で指定した行為をやり遂げた人に報酬を払う、と約束する場合です。設例は、新しく作ります。飼っていたインコが逃げてしまった人が、「逃げたインコを見つけて届けてくれた人に、3万円を差し上げます」という貼り紙を出しました。この人を、広告をした人と呼びます。見つけて届けた人を、見つけた人と呼びます。このように、ある行為をした人に、一定の報酬を与えると広告することを、懸賞広告といいます。広告で指定した行為を、条文は、指定した行為と呼びます。条文の並びを地図にします。529条が、報酬を与える義務です。続く3つ、529条の2 と、529条の3 と、530条が、広告の撤回です。531条が、誰が報酬を受け取るか。532条が、優等懸賞広告です。

529条。ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(懸賞広告者)は、その行為をした者が広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負う。貼り紙を見ないままインコを届けた人も、3万円を請求できる(2017年の改正で明文に)。 図:529条

  • ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(懸賞広告者)は、その行為をした者が広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負う
  • 貼り紙を見ないままインコを届けた人も、3万円を請求できる(2017年の改正で明文に)

529条を読みます。

条文民法529条

民法第529条(懸賞広告) ある行為をした者に一定の報酬を与える旨を広告した者(以下「懸賞広告者」という。)は、その行為をした者がその広告を知っていたかどうかにかかわらず、その者に対してその報酬を与える義務を負う。

懸賞広告者は、その行為をした者が、その広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負う。貼り紙を見ないまま、迷いインコを届けた人も、3万円を請求できます。この点は、2017年の改正で明文になりました。改正の前の条文は、その行為をした者に対して報酬を与える義務を負う、と書くだけで、広告を知らなかった人の扱いは、争いがありました。貼り紙を見ていない人にも報酬を払う理由は、改正の説明の札で言えます。広告をした人の目的は、指定した行為が行われることです。広告を知っている人が行為をしたときだけ払い、知らない人が同じ行為をしたときは払わない、と分ける合理的な理由がない、という説明です。

懸賞広告の法的性質(学説)。契約説=広告が申込み・指定した行為をすることが承諾にあたる。単独行為説=広告をした人の一方的な意思表示で義務が生じる。条文は性質を決めず、学説に委ねている。改正の説明=知らない者にも報酬義務があるという結論は単独行為説と親和的とされるが、契約説でも特殊な契約と見れば同じ結論を導けるとの指摘もあり、決定的な要因ではない。 図:懸賞広告の法的性質

  • 学説
  • 契約説=広告が申込み・指定した行為をすることが承諾にあたる。単独行為説=広告をした人の一方的な意思表示で義務が生じる。条文は性質を決めず、学説に委ねている。改正の説明=知らない者にも報酬義務があるという結論は単独行為説と親和的とされるが、契約説でも特殊な契約と見れば同じ結論を導けるとの指摘もあり、決定的な要因ではない。

ここで、法的性質を、一点だけ押さえます。学説の札です。懸賞広告は、契約なのか、それとも、広告をした人の一方的な意思表示で義務が生じるのか。契約とみる見方は、広告が申込み、指定した行為をすることが承諾に当たる、と考えます。もう一つは、広告をした人の単独行為とみる見方です。広告を知らない人にも報酬を認める529条の結論は、単独行為説と親和的とされます。ただ、契約説でも、特殊な契約と見れば、同じ結論を導けるという指摘もあります。法的性質は、結論を決める決定的な要因ではない、という説明です。条文は、性質を決めていません。学説に委ねています。ここは、論文で論点になりうる所です。

柱3——懸賞広告の撤回、3つの条文

撤回の3条。529条の2=指定した行為をする期間を定めた広告は、撤回できない(撤回をする権利を留保したときを除く)。期間内に指定した行為を完了する者がないときは、効力を失う。529条の3=期間を定めない広告は、指定した行為を完了する者がない間は、撤回できる(撤回しない旨を表示したときを除く)。530条=撤回の方法。 図:撤回の3条

  • 529条の2=指定した行為をする期間を定めた広告は、撤回できない(撤回をする権利を留保したときを除く)
  • 期間内に指定した行為を完了する者がないときは、効力を失う
  • 529条の3=期間を定めない広告は、指定した行為を完了する者がない間は、撤回できる(撤回しない旨を表示したときを除く)
  • 530条=撤回の方法

撤回の3つの条文を、順に読みます。広告の撤回も、出した広告を引っ込めることです。最初は、期間を定めた広告です。

条文民法529条の2

民法第529条の2(指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告) 1 懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めてした広告を撤回することができない。ただし、その広告において撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。 2 前項の広告は、その期間内に指定した行為を完了する者がないときは、その効力を失う。

1項、期間を定めてした広告は、撤回することができません。ただし、広告で撤回をする権利を留保したときは別です。2項、その期間内に、指定した行為を完了する者がいなければ、広告は効力を失います。趣旨は、改正の説明の札です。期間を定めた広告なら、応じようとする人は、期間内にやり遂げれば報酬をもらえる、と信頼します。その信頼を守るためです。改正の前は、期間を定めたら撤回する権利を放棄したと、推定する書き方でした。それでは、撤回できるかどうかが、広告をした人の反証しだいで不安定でした。そこで、留保が表示されていなければ撤回できない、と明確にしました。

529条の3 期間を定めない広告。指定した行為を完了する者がない間は撤回できる(撤回をしない旨を表示したときを除く)。 図:529条の3 期間を定めない広告

条文民法529条の3

民法第529条の3(指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告) 懸賞広告者は、その指定した行為を完了する者がない間は、その指定した行為をする期間を定めないでした広告を撤回することができる。ただし、その広告中に撤回をしない旨を表示したときは、この限りでない。

次は、期間を定めない広告です。完了する者がない間は、撤回することができます。ただし、広告中に撤回をしない旨を表示したときは、撤回できません。期間を定めない広告を撤回できる理由は、改正の説明の札で言えます。指定した行為に、着手しただけでは、完了できるかも、先に他の人が完了しないかも、分かりません。報酬への正当な期待は、まだ生じていません。だから、完了する者が現れるまでは、撤回できます。従来の規律を維持したものです。

530条 撤回の方法。広告と同じ方法=知らない者に対しても効力を有する。異なる方法=知った者に対してのみ効力を有する。 図:530条 撤回の方法

  • 広告と同じ方法=知らない者に対しても効力を有する
  • 異なる方法=知った者に対してのみ効力を有する

条文民法530条

民法第530条(懸賞広告の撤回の方法) 1 前の広告と同一の方法による広告の撤回は、これを知らない者に対しても、その効力を有する。 2 広告の撤回は、前の広告と異なる方法によっても、することができる。ただし、その撤回は、これを知った者に対してのみ、その効力を有する。

530条は、撤回の方法です。1項、前の広告と同じ方法で撤回すれば、これを知らない人に対しても効力があります。2項、異なる方法でも撤回できますが、その撤回を知った人に対してだけ効力があります。貼り紙で広告したなら、貼り紙で撤回を貼り出せば、見ていない人にも効きます。SNSで撤回を流しただけなら、それを知った人に対してだけ効きます。なぜ、方法で分けるのか。こちらの説明の札です。広告を誰が見たかは、広告をした人にも分かりません。だから、同じ方法で撤回すれば足りる、とします。違う方法では、広告を見た人の目に入るとは限らないので、知った人にだけ効きます。

申込みの撤回と、懸賞広告の撤回を並べる。期間の定めあり=申込みは撤回できない(523条1項・留保を除く)/懸賞広告も撤回できない(529条の2第1項・留保を除く)。期間の定めなし=申込み(相手が対話者でないとき)は相当な期間は撤回できない(525条1項)/懸賞広告は完了する者がない間は撤回できる(529条の3)。向きが逆になる。理由=申込みを受けた人は検討や準備を始めて契約の成立を期待する。懸賞広告に応じようとする人は、着手しても先を越されるかもしれず、同じ期待ではない(改正の説明)。 図:申込みの撤回と、懸賞広告の撤回を並べる

  • 期間の定めあり=申込みは撤回できない(523条1項・留保を除く)/懸賞広告も撤回できない(529条の2第1項・留保を除く)
  • 期間の定めなし=申込み(相手が対話者でないとき)は相当な期間は撤回できない(525条1項)/懸賞広告は完了する者がない間は撤回できる(529条の3)
  • 向きが逆になる
  • 理由=申込みを受けた人は検討や準備を始めて契約の成立を期待する
  • 懸賞広告に応じようとする人は、着手しても先を越されるかもしれず、同じ期待ではない(改正の説明)

申込みの撤回と、並べます。期間は、申込みでは承諾の期間、懸賞広告では行為をする期間です。期間の定めがある場合は、どちらも、撤回できません。ここは同じです。期間の定めがない場合が、逆です。相手が対話者でない申込みは、相当な期間が過ぎるまで撤回できません。525条1項です。懸賞広告は、完了する者がない間は、撤回できます。529条の3 です。逆になる理由は、改正の説明の札です。申込みを受けた人は、検討や準備を始めて、契約が成立することを期待します。懸賞広告に応じようとする人は、着手しても、先を越されるかもしれません。同じ期待ではないからです。

柱3——誰が報酬を受けるか、優等懸賞広告

531条(懸賞広告の報酬を受ける権利)。1項=広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみ。2項=同時なら各自が等しい割合。ただし、報酬が分割に適しないとき、または一人のみと広告に書いたときは抽選。3項=広告中に異なる意思を表示したときは適用しない。設例=インコを最初に届けた人だけが3万円。2人が同時なら1万5千円ずつ。「お一人のみ」と書いてあれば抽選。 図:531条

  • 懸賞広告の報酬を受ける権利
  • 1項=広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみ。2項=同時なら各自が等しい割合。ただし、報酬が分割に適しないとき、または一人のみと広告に書いたときは抽選。3項=広告中に異なる意思を表示したときは適用しない。設例=インコを最初に届けた人だけが3万円。2人が同時なら1万5千円ずつ。「お一人のみ」と書いてあれば抽選。

次は、誰が報酬を受け取るか、531条です。項で分けて読みます。

条文民法531条1項・2項

民法第531条第1項・第2項(懸賞広告の報酬を受ける権利) 1 広告に定めた行為をした者が数人あるときは、最初にその行為をした者のみが報酬を受ける権利を有する。 2 数人が同時に前項の行為をした場合には、各自が等しい割合で報酬を受ける権利を有する。ただし、報酬がその性質上分割に適しないとき、又は広告において一人のみがこれを受けるものとしたときは、抽選でこれを受ける者を定める。

1項、行為をした人が数人いるときは、最初にした人だけが報酬を受けます。インコを最初に届けた人だけが、3万円を受け取ります。こちらの説明の札です。最初の人がやり遂げた時に、広告をした人の目的は果たされ、あとの人に払う理由が残らないからです。2項、数人が同時にしたなら、各自が等しい割合で受けます。2人が同時なら、1万5千円ずつです。ただし、報酬が分けられないとき、または、広告で一人のみと書いたときは、抽選で決めます。

条文民法531条3項

民法第531条第3項(懸賞広告の報酬を受ける権利) 3 前二項の規定は、広告中にこれと異なる意思を表示したときは、適用しない。

3項です。広告の中に、1項、2項と違う意思を表示したときは、1項、2項は適用されません。広告をした人が、別の決め方を書いておけば、そちらが先になります。

優等懸賞広告(532条)。1項=優等者のみに報酬を与えるときは、応募の期間を定めたときに限り効力を有する。2項=優等かどうかは広告中に定めた者が判定し、定めなければ懸賞広告者が判定する。3項=応募者は判定に異議を述べられない。4項=同等と判定されたら531条2項を準用する。普通の懸賞広告=最初にやり遂げた人(先着)。優等懸賞広告=優れた人を選ぶ(小説の新人賞・デザインコンペの型)。 図:優等懸賞広告

  • 532条
  • 1項=優等者のみに報酬を与えるときは、応募の期間を定めたときに限り効力を有する。2項=優等かどうかは広告中に定めた者が判定し、定めなければ懸賞広告者が判定する。3項=応募者は判定に異議を述べられない。4項=同等と判定されたら531条2項を準用する。普通の懸賞広告=最初にやり遂げた人(先着)。優等懸賞広告=優れた人を選ぶ(小説の新人賞・デザインコンペの型)。

最後が、優等懸賞広告、532条です。小説の新人賞や、デザインのコンペを思い浮かべてください。数人の応募者のうち、優れた人だけに報酬を与えるタイプです。最初にやり遂げた人が受け取る普通の懸賞広告とは、先着か、選ぶか、が違います。

条文民法532条1項・2項

民法第532条第1項・第2項(優等懸賞広告) 1 広告に定めた行為をした者が数人ある場合において、その優等者のみに報酬を与えるべきときは、その広告は、応募の期間を定めたときに限り、その効力を有する。 2 前項の場合において、応募者中いずれの者の行為が優等であるかは、広告中に定めた者が判定し、広告中に判定をする者を定めなかったときは懸賞広告者が判定する。

1項、優等者だけに報酬を与えるときは、応募の期間を定めたときに限り、広告は効力を有します。期間のない新人賞の公募は、広告として効力を持たない、ということです。ここは、こちらの説明の札です。締切が無いと、応募がいつまでも続きうるので、誰が一番優れているかを決められないからです。2項、優等かどうかは、広告中に定めた者が判定します。定めていなければ、懸賞広告者が判定します。

532条3項・4項。3項=応募者は判定に異議を述べることができない。4項=数人の行為が同等と判定されたら531条2項を準用する(等しい割合・分けられないとき又は一人のみのときは抽選)。 図:532条3項・4項

  • 3項=応募者は判定に異議を述べることができない
  • 4項=数人の行為が同等と判定されたら531条2項を準用する(等しい割合・分けられないとき又は一人のみのときは抽選)

条文民法532条3項・4項

民法第532条第3項・第4項(優等懸賞広告) 3 応募者は、前項の判定に対して異議を述べることができない。 4 前条第二項の規定は、数人の行為が同等と判定された場合について準用する。

3項、応募者は、判定に異議を述べることができません。落選した応募者も、です。なぜ異議を許さないのか。こちらの説明の札です。誰が優れているかは評価の問題で、応募者は、その判定に任せると承知して応募しているからです。4項、数人の行為が同等と判定されたら、531条2項を準用します。つまり、等しい割合で受けます。報酬が分けられないとき、または広告で一人のみと書いてあるときは、抽選です。準用とは、別の場面の規定を、必要なところを読み替えて当てはめる、ということです。条件が多くても、まず見分け方を持てば大丈夫です。細かい条件は、その下に整理していけます。普通の懸賞広告は先着、531条。優れた人を選ぶなら、応募期間が要り、判定者が決め、異議は言えない、532条。この見分け方さえあれば、条文を開いて確かめられます。

懸賞広告の練習——1問

練習問題3。逃げたインコを見つけて届けてくれた人に3万円を、という貼り紙。貼り紙を見ないまま、迷いインコを届けた人がいた。問い=この人は3万円を請求できるか。 図:練習問題3

  • 逃げたインコを見つけて届けてくれた人に3万円を、という貼り紙
  • 貼り紙を見ないまま、迷いインコを届けた人がいた
  • 問い=この人は3万円を請求できるか

問3です。インコの貼り紙を、見ないままでした。通りすがりに迷いインコを見つけて、届けてくれた人がいます。この人は、3万円を請求できるでしょうか?請求できます。条文は529条で、広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負う、と書いています。決め手は、この、かかわらず、という部分です。法的性質をどう説明しても、条文が、知らない人にも義務を認めています。

冒頭の問いに戻る——まとめ

今日のまとめ。3つの柱=1 承諾は届いた時に成立する(発信主義は廃止)。遅れて届いた承諾=新たな申込みとみなすことができる(524条)。変更を加えた承諾=拒絶とともに新たな申込みとみなす(528条)。2 通知が要らないのは、申込者の意思表示か取引上の慣習があるとき=承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立(527条)。交叉申込みは学説で成立し、成立の時はあとに届いた申込みが届いた時。 図:今日のまとめ

  • 3つの柱=1 承諾は届いた時に成立する(発信主義は廃止)
  • 遅れて届いた承諾=新たな申込みとみなすことができる(524条)
  • 変更を加えた承諾=拒絶とともに新たな申込みとみなす(528条)
  • 2 通知が要らないのは、申込者の意思表示か取引上の慣習があるとき=承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立(527条)
  • 交叉申込みは学説で成立し、成立の時はあとに届いた申込みが届いた時

3つの柱で整理します。1つめ、承諾は届いた時に成立します。改正前の発信主義は、削除されました。遅れて届いた承諾は、申込者が、新たな申込みとみなすことができます。524条です。変更を加えた承諾は、申込みの拒絶とともに、新たな申込みとみなされます。528条です。2つめ、承諾の通知が要らない場合です。申込者の意思表示か、取引上の慣習があるときは、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に、契約が成立します。527条です。交叉申込みは、学説で、契約が成立すると整理され、成立の時は、あとに届いた申込みが届いた時です。

今日のまとめ。3つの柱=3 懸賞広告=広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負う(529条)。撤回=期間ありなら不可(529条の2)、期間なしなら完了する者がない間は可(529条の3)。方法は530条、受け取る人は531条、優等懸賞広告は532条。冒頭の問いの答え=「90万円なら買います」は承諾ではない(528条)。契約は成立していない。Aが「では売ります」と返せば、成立する。 図:今日のまとめ

  • 3つの柱=3 懸賞広告=広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負う(529条)
  • 撤回=期間ありなら不可(529条の2)、期間なしなら完了する者がない間は可(529条の3)
  • 方法は530条、受け取る人は531条、優等懸賞広告は532条
  • 冒頭の問いの答え=「90万円なら買います」は承諾ではない(528条)
  • 契約は成立していない
  • Aが「では売ります」と返せば、成立する

3つめ、懸賞広告です。広告を知っていたかどうかにかかわらず、報酬を与える義務を負います。529条です。撤回は、期間を定めたなら、できません。529条の2 です。期間を定めないなら、完了する者がない間は、できます。529条の3 です。方法は530条、受け取る人は531条、優等懸賞広告は532条でした。冒頭の問いに戻ります。Bの「90万円なら買います」は、承諾ではありません。中身を変えた返事なので、Aの申込みの拒絶とともに、新たな申込みとみなされます。528条です。契約は、成立していません。Aが「では、90万円で売ります」と返し、それがBに届けば、そこで成立します。Aが黙っていれば、何も起きません。論文で論点になりうるのは、交叉申込みの成立と、懸賞広告の法的性質です。ここは解釈の問題です。524条、527条、528条、529条以下は、条文どおりの要件で、条文番号で言えます。

参照条文

  • 民法524条
  • 民法528条
  • 民法527条
  • 民法529条
  • 民法529条の2
  • 民法529条の3
  • 民法530条
  • 民法531条1項・2項
  • 民法531条3項
  • 民法532条1項・2項
  • 民法532条3項・4項

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