民法ゼロから民法#281

終身定期金・和解と錯誤・契約の総まとめ

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第5章 契約 #281/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

塀の位置で手を打ったあとで

冒頭の設例 隣り合う土地の所有者AとBが境界で争った。Aは「境は塀の1メートル向こう」、Bは「境は塀の1メートル手前」。互いに譲り「今の塀の位置を境にする」と合意した。後日、古い測量図が出て、本当の境は塀の1メートル向こうだった。 図:冒頭の設例 隣り合う土地の所有者AとBが境界で争った

  • Aは「境は塀の1メートル向こう」、Bは「境は塀の1メートル手前」
  • 互いに譲り「今の塀の位置を境にする」と合意した
  • 後日、古い測量図が出て、本当の境は塀の1メートル向こうだった

今日は、予告どおり、終身定期金と和解を見ます。そして、第5章の契約が、今日で終わります。設例から入ります。隣り合う土地の所有者を、AとBとします。2人は、境界をめぐって争っていました。Aは、Aの側から見て、境は塀の1メートル向こうだと言います。Bは、境は塀の1メートル手前、つまりAの側に1メートル入った所だと言います。話がつかず、2人は互いに譲って、今のブロック塀の位置を境にしよう、と手を打ちました。ところが後日、古い測量図が出てきました。本当の境は、塀の1メートル向こうでした。Aの言い分が、正しかったのです。

Aは、あの合意は思い違いでした、と言い出しました。合意を取り消して、1メートルを返してほしい、と言います。ただ、争いをやめるための合意になると、事情が変わります。この問いの答えは、今日の後半で出します。分かれ目は、争って譲り合った部分か、そうでない部分か、です。

今日の地図。1 終身定期金契約(689条〜694条)2 和解とは(695条)3 和解の確定力(696条)4 和解と錯誤(原則と例外)5 第5章の全体地図と、混ざった場面の選び分け。軸=和解が確定させるのは、争って譲り合った部分だけ。 図:今日の地図

  • 1 終身定期金契約(689条〜694条)2 和解とは(695条)3 和解の確定力(696条)4 和解と錯誤(原則と例外)5 第5章の全体地図と、混ざった場面の選び分け
  • 軸=和解が確定させるのは、争って譲り合った部分だけ

今日の道筋です。まず、終身定期金契約を見ます。数分で終わる、短い契約です。次に、和解とは何かを見ます。そして、和解の確定力、続けて、和解と錯誤の原則と例外です。ここで、冒頭の問いに答えます。最後に、第5章の全体を地図に戻して、混ざった場面で、どの制度が当たるかを選ぶ練習をします。

終身定期金契約 死亡に至るまで定期に給付する

終身定期金の例。Cが、Dに、毎月8万円を給付する。終わりの合図は、Dの祖母の死亡。基準になる人は3通り=給付する側自身/相手方/第三者。 図:終身定期金の例

  • Cが、Dに、毎月8万円を給付する
  • 終わりの合図は、Dの祖母の死亡
  • 基準になる人は3通り=給付する側自身/相手方/第三者

1つめは、終身定期金契約です。名前は堅いですが、中身は単純です。例です。Cが、Dに、毎月8万円を払うと約束します。いつまでか。Dの祖母が亡くなるまで、です。終わりが、日付ではなくて、人の死なんです。そこが、この契約の特徴です。条文です。

条文民法689条

民法第689条 終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。

読み方です。給付する側は、誰かの死亡に至るまで、定期に、金銭その他の物を、相手方か第三者に給付することを約します。死亡の基準になる人は、3通りです。給付する側自身か、相手方か、第三者です。例では、第三者のDの祖母が基準で、受け取るのは相手方のDです。条文の言葉は、そうなっています。受け取る人も、相手方でも第三者でも構いません。境界の例です。毎月8万円を、Dの祖母が亡くなるまで払う約束は、終身定期金です。毎月8万円を、10年間払う約束は、期間は決まっていますが、誰かの死亡に至るまで、ではありません。689条の言葉を満たしません。100万円を1回だけ払う約束も、定期に、ではありません。当たりません。

「約することによって、その効力を生ずる」とあります。合意だけで成立しますから、諾成です。契約を仕分けたときと同じ読み方です。給付する側が、見返りを受け取るのかどうかは、条文だけでは決まりません。例のCが、Dから先にまとまったお金を受け取って、その代わりに払い続ける形もあれば、何も受け取らずに払うと約束するだけの形もあります。どちらも、689条の言葉に当てはまります。ですから、双務か、有償かは、言い切れません。

690条〜694条の地図。690条=日割りで計算。691条=元本を受領した債務者が給付を怠るなどしたとき、相手方は元本の返還を請求でき、既に受け取った終身定期金から元本の利息を引いた残額を返す。692条=691条の場合に533条を準用。693条=債務者の責めに帰すべき事由による死亡のとき、裁判所が債権の存続を宣告できる。694条=遺贈に準用。 図:690条〜694条の地図

  • 690条=日割りで計算
  • 691条=元本を受領した債務者が給付を怠るなどしたとき、相手方は元本の返還を請求でき、既に受け取った終身定期金から元本の利息を引いた残額を返す
  • 692条=691条の場合に533条を準用
  • 693条=債務者の責めに帰すべき事由による死亡のとき、裁判所が債権の存続を宣告できる
  • 694条=遺贈に準用

続く690条から694条は、条文の地図として、位置を押さえてください。690条です。終身定期金は、日割りで計算します。691条です。いま言った、先に受け取るまとまったお金を、元本と言います。元本を受け取って、その代わりに給付を続ける形の終身定期金で、給付する側が、約束を守らないときの条文です。

条文民法691条1項

民法第691条第1項 終身定期金債務者が終身定期金の元本を受領した場合において、その終身定期金の給付を怠り、又はその他の義務を履行しないときは、相手方は、元本の返還を請求することができる。この場合において、相手方は、既に受け取った終身定期金の中からその元本の利息を控除した残額を終身定期金債務者に返還しなければならない。

読み方です。給付する側が、元本を受け取ったのに、給付を怠るなどしたとき、相手方は、元本の返還を請求できます。その場合、相手方は、すでに受け取った定期金から、元本の利息を引いた残額を、給付する側に返します。2項で、損害賠償の請求は妨げられません。692条です。この元本の返還と、残額の返還には、533条が準用されます。2つの返還が向き合い、同時履行になります。533条を広げて使う場面の1つとして、終身定期金契約が解除された場合、と紹介しました。692条の見出しも、解除と同時履行です。693条です。給付する側の責めに帰すべき事由で、基準になる人の死亡が生じたとき、裁判所は、債権者かその相続人の請求により、債権が相当の期間存続することを宣告できます。2項で、691条の権利の行使は妨げません。694条です。この節の規定は、終身定期金の遺贈にも準用されます。終身定期金は、ここまでです。次は、今日の主役、和解です。

和解とは何か 互いに譲る約束

和解の条文(695条)の要素。1 当事者の間に争いがある 2 互いに譲歩する(互譲) 3 争いをやめることを約する。冒頭の例=AもBも自分の主張を1メートル引いた→和解。Bだけが全面的に折れた→和解ではない。

次は、和解です。冒頭の2人がしたことです。条文です。

条文民法695条

民法第695条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

要素は3つです。1つめ、当事者の間に争いがあること。2つめ、互いに譲歩すること。3つめ、争いをやめることを約すること。互いに譲歩することを、互譲と呼びます。冒頭の例に当てはめます。Aは、境は塀の1メートル向こう、Bは、1メートル手前と言いました。それぞれが、自分の主張を引いて、塀の位置で手を打っています。互いに譲歩しているので、和解です。譲ったのが片方だけなら、和解ではありません。たとえば、Bが全面的に折れて、Aの言い分をそのまま飲んだとします。譲ったのはBだけです。互いに譲歩、という要素が欠けます。日常では、こうした話し合いの決着も、示談と呼びます。ただ、示談は日常の言葉で、条文の言葉は和解です。条文の和解になるかどうかは、互譲があるかどうかで見ます。性質です。「約することによって、その効力を生ずる」とあるので、合意だけで成立します。諾成です。互いに譲歩する形なので、双務、有償と読み取れます。冒頭の例では、Aも、Bも、自分の主張から1メートル分を手放しました。それぞれの譲歩が、相手の譲歩の見返りになっています。契約を仕分けたときにも、そう見ました。

区別しておきます。前に見たとおり、更改は、従前の債務に代えて、新しい債務を発生させる契約です。合意だけで、新しい債務ができた時に、古い債務が消えます。別の債務を作る制度でした。和解は、争いをやめる契約です。互いに譲歩した結果として、権利関係が確定します。確定する、という部分が、次の696条です。

和解の確定力 確証が出ても覆らない

696条の読み方。和解で「一方が権利を有する/他方は有しない」と認められた→あとで逆の確証が出た→それでも権利は和解によって移転し、または消滅したものとする。この効果を確定力と呼ぶ。 図:696条の読み方

  • 和解で「一方が権利を有する/他方は有しない」と認められた→あとで逆の確証が出た→それでも権利は和解によって移転し、または消滅したものとする
  • この効果を確定力と呼ぶ

古い測量図が出ても、塀の位置が境のまま。その根拠になる条文です。696条です。

条文民法696条

民法第696条 当事者の一方が和解によって争いの目的である権利を有するものと認められ、又は相手方がこれを有しないものと認められた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によってその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとする。

読み方です。争いの目的になった権利について、和解で、一方が持つ、他方は持たない、と認められました。ところがあとで、本当は一方は持っていなかった、あるいは他方が持っていた、という確証が得られました。確証とは、確かな証拠のことです。その場合でも、権利は、和解によって、一方に移り、または消えたものとする。つまり、和解で決めた内容で、権利が確定します。この効力を、確定力と呼びます。冒頭の例です。塀から向こう1メートルの帯は、AもBも、自分の土地だと主張していた部分でした。これが、争いの目的である権利です。和解で、境は塀の位置と決まり、塀の向こうの帯は、Bの側に入りました。あとで、古い測量図という確証が出ました。それでも、帯は、和解によってBに移ったものとして扱われます。Aは、取り戻せません。

定着の問い(確定力)。和解のあとに、反対の確証が出ても覆らないことにしたのは、なぜか。 図:定着の問い

  • 確定力
  • 和解のあとに、反対の確証が出ても覆らないことにしたのは、なぜか。

立ち止まって、考えてみましょう。和解のあとに、反対の確証が出ても覆らないことにした。それは、なぜだと思いますか?あとから出てきた確証で和解が覆るなら、争いを終わらせるために譲り合った意味が残りません。争いが、蒸し返されてしまいます。和解は、争いを終わらせるための契約です。終わったはずの争いを、確証が出るたびに持ち出せるなら、争いは終わりません。もう1点、条文の言葉に注意してください。確定するのは、争いの目的である権利です。争いになっていないことまで確定させる、とは書いていません。ここが、次の錯誤の話につながります。冒頭の問いの、確定力からの答えを、先に言います。境は、塀の位置で確定します。Aは、1メートルを取り戻せません。ただ、Aは、思い違いも理由にしています。そちらは、次に見ます。

和解と錯誤 原則は取り消せない

和解と錯誤の原則。和解に錯誤があったとき、錯誤取消し(95条)を主張できるか。原則=できない。理由=争いの対象にして互譲で決めた事項は、和解で終わらせた争いそのもの(696条の確定力)。 図:和解と錯誤の原則

  • 和解に錯誤があったとき、錯誤取消し(95条)を主張できるか
  • 原則=できない
  • 理由=争いの対象にして互譲で決めた事項は、和解で終わらせた争いそのもの(696条の確定力)

次の問いです。和解に錯誤があったとき、95条の錯誤取消しを主張できるでしょうか。原則は、主張できません。前に、錯誤を見たときに触れました。和解契約でも、錯誤を理由に取り消すことは、原則として認められません。和解は、争いを終わらせるための契約です。あとから錯誤を持ち出せてしまうと、争いが蒸し返されてしまいます。今日は、この理由を、696条の確定力として押さえます。争いの対象にして、互譲によって決めた事項は、和解で終わらせた争いそのものです。だから、錯誤取消しは主張できません。争った点について、思い違いでした、と言うのは、反対の確証が出ました、と言うのと同じです。696条は、それでも覆らないとしています。

判例の事案。土地と建物の所有権が代物弁済で会社に移ったのかをめぐる争い。一方が、所有権は相手にあると認め、相手は明渡しを猶予する和解をした。のちに、認めた側が錯誤を主張した。 図:判例の事案

  • 土地と建物の所有権が代物弁済で会社に移ったのかをめぐる争い
  • 一方が、所有権は相手にあると認め、相手は明渡しを猶予する和解をした
  • のちに、認めた側が錯誤を主張した

判例を見ます。事案です。ある土地と建物の所有権が、誰にあるかをめぐって、争いがありました。代物弁済によって、所有権が会社に移ったのかどうか、が中心です。代物弁済とは、お金の代わりに、別の物で払う契約です。争いをやめるため、一方が、所有権は相手にあると認めました。相手は、明渡しを猶予しました。そういう和解です。のちに、所有権を認めた側が、錯誤を主張しました。

判例最判昭43・7・9

和解の対象事項と錯誤 本件代物弁済契約の効力自体が争いの目的たる事項に該当するといえるから、この点について和解当事者は錯誤を理由としてその無効を主張しえないものと解するのが相当であり

読み方です。代物弁済契約の効力そのものが、争いの目的たる事項に当たる。だから、この点について、和解した当事者は、錯誤を理由に無効を主張できない、と言っています。時制に注意してください。この判決は、旧法のときのものです。昔の条文では、錯誤による意思表示は無効でした。ですから、無効を主張できない、と書きます。いまの条文では、取消しです。現行法に置き換えると、錯誤取消しを主張できない、という意味になります。冒頭の例では、境が、塀から何メートルの位置にあるか、です。2人がまさに争って、互譲で決めた点です。この点では、AもBも、錯誤を主張できません。古い測量図が出ても、同じです。では、和解には、錯誤取消しが一切使えないのか。そうではありません。次に、例外を見ます。

和解と錯誤 例外は前提として争わなかった事項

定着の問い(基礎事情の錯誤)。基礎事情の錯誤で取り消せるのは、土台の思い込みが真実に反していて、重要で、そしてもう1つ、何が必要か。 図:定着の問い

  • 基礎事情の錯誤
  • 基礎事情の錯誤で取り消せるのは、土台の思い込みが真実に反していて、重要で、そしてもう1つ、何が必要か。

例外の前に、錯誤の要件を、1問で思い出します。基礎事情の錯誤で取り消せるのは、土台の思い込みが真実に反していて、重要で、そして、もう1つ。何が必要でしたか?その事情が、法律行為の基礎とされていることが、表示されていたこと、です。95条2項でした。条文を出します。

条文民法95条1項・2項

民法第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

例外の規範です。和解の確定力は、争いがあって、互譲の対象になった部分についてだけ生じます。ですから、前提として争わなかった事項に思い違いがあれば、錯誤取消しを主張できます。理由は、1本の線で言えます。その部分は、争いの対象ではなく、互譲もしていません。当事者が確定しようとした部分にしか、確定力は及ばない、ということです。同じ理由を、当事者の意思の側から言うと、こうなります。それ以外の法律関係は、真実と異なっても、法律関係を確定しようとする意思が認められないから、です。

争った事項と、前提として争わなかった事項。左=争った事項(互譲で決めた)=確定力が及ぶ・錯誤取消しは原則できない。右=前提として争わなかった事項=確定力は及ばない・錯誤取消しは95条の要件を満たせばできる。例=境が塀から何メートルの位置か/境が塀の位置だと双方が疑わず、争ったのは費用の負担だけ。 図:争った事項と、前提として争わなかった事項

  • 左=争った事項(互譲で決めた)=確定力が及ぶ・錯誤取消しは原則できない
  • 右=前提として争わなかった事項=確定力は及ばない・錯誤取消しは95条の要件を満たせばできる
  • 例=境が塀から何メートルの位置か/境が塀の位置だと双方が疑わず、争ったのは費用の負担だけ

喩えで確かめます。友人2人が、旅行の宿代の割り勘で揉めたとします。宿代の総額は、2人とも疑っていません。争ったのは、割り方だけです。そこで、半々で手を打ちました。あとで、総額が思っていた額と違うと分かりました。割り方の半々は、争って決めたので、決着しています。総額は、争っていない前提です。別に考えます。

例の1。貸金の存在は両者とも認めていた。争いは弁済の方法だけで、方法を和解で決めた。のちに、貸金が無かったと分かった→貸金の存在は争っていない前提→錯誤取消しを主張できる。 図:例の1

  • 貸金の存在は両者とも認めていた
  • 争いは弁済の方法だけで、方法を和解で決めた
  • のちに、貸金が無かったと分かった→貸金の存在は争っていない前提→錯誤取消しを主張できる

例の1です。貸主と借主がいます。借金があること自体は、2人とも認めていました。争いは、返し方だけです。そこで、返し方を和解で決めました。ところが、あとになって、借金そのものが無かったと分かりました。借金の存在は、争っていません。前提です。ですから、借主とされた側は、錯誤取消しを主張できます。例の2は、判例です。事案です。

判例の事案(ジャム)。62万円あまりの支払義務があるかをめぐる争い。互いに譲って争いをやめるため、仮差押えにかかるジャムを、特選D印苺ジャムであることを前提に、1箱3000円と見込み、代物弁済として渡すと約束。ジャムは粗悪品だった。受け取る側の意思表示に錯誤があった。 図:判例の事案

  • ジャム
  • 62万円あまりの支払義務があるかをめぐる争い。互いに譲って争いをやめるため、仮差押えにかかるジャムを、特選D印苺ジャムであることを前提に、1箱3000円と見込み、代物弁済として渡すと約束。ジャムは粗悪品だった。受け取る側の意思表示に錯誤があった。

請求された62万円あまりの支払義務があるかどうかが、争いでした。互いに譲って争いをやめるために、仮差押えにかかっていたジャムを、代物弁済として渡す、と約束しました。そのジャムは、市場で一般に通用している、特選D印苺ジャムであることが前提で、1箱3000円と見込まれていました。ところが、粗悪品でした。次の文は、原審の認定と判断を引いた部分です。最高裁は、この判断を、そのまま認めました。ジャムを渡す側が控訴人、受け取る側が被控訴会社です。

判例最判昭33・6・14 民集12巻9号1492頁

和解の前提の錯誤 仮差押にかかる本件ジヤムを市場で一般に通用している特選D印苺ジヤムであることを前提とし、これを一箱当り三千円(一罐平均六二円五〇銭相当)と見込んで控訴人から被控訴人に代物弁済として引渡すことを約したものであるところ、本件ジヤムは、原判示のごとき粗悪品であつたから、本件和解に関与した被控訴会社の訴訟代理人の意思表示にはその重要な部分に錯誤があつた

読み方です。ジャムが、特選D印苺ジャムであることを前提に、代物弁済として渡す約束をしました。ところが粗悪品だったので、受け取る側の訴訟代理人の意思表示には、重要な部分に錯誤があった、という判断です。争いと前提を、分けます。争いは、62万円あまりの支払義務があるか、でした。ジャムの品質は、争っていません。渡す約束の前提でした。さきほどの土地の判決と比べてください。あちらは、代物弁済契約の効力そのものが、争いの中心でした。こちらは、渡すジャムの品質が、争いの外でした。ここが、分かれ目です。判決が言ったのは、前提とし、というところまでです。品質は、争いの対象にも、互譲の対象にもなっていなかった、という説明は、学説の整理です。錯誤の言葉で整理します。ジャムの品質は、当事者が和解の土台にした事情です。錯誤の言葉で言うなら、基礎事情の錯誤、つまり95条1項2号にあたる、と考える見方があります。判決は旧法のときのもので、要素の錯誤、と言っています。同じジャムの判決は、売買と錯誤の関係を見たときにも出てきました。そのとき見たとおり、旧法の言葉で、契約の大事な部分についての勘違いのことです。しかも、この事情は、前提として、渡す約束の内容に書き込まれていました。その思い込みが契約の土台になっていることが、相手にも示されていた、ということです。表示されていた、と評価できる余地がある場面です。

重要かどうか、そして、勘違いした本人に重大な過失、つまりひどい不注意がないかは、別に見ます。ひどい不注意があれば、原則として取り消せません。95条3項です。前提の錯誤であれば、必ず取り消せるのではありません。取り消す道が、開かれる、ということです。ここは、論文で論点になりうるところです。和解と錯誤の、原則と例外の線引きです。

冒頭の設例に答える

冒頭の答え。境が塀から何メートルの位置か=争って互譲で決めた事項→696条で確定・古い測量図が出ても覆らない・錯誤取消しも主張できない。変形=境が塀の位置だと疑わず、争ったのは費用の負担だけ→境は前提→錯誤取消しの道が開かれる(95条の要件を満たせば)。 図:冒頭の答え

  • 境が塀から何メートルの位置か=争って互譲で決めた事項→696条で確定・古い測量図が出ても覆らない・錯誤取消しも主張できない
  • 変形=境が塀の位置だと疑わず、争ったのは費用の負担だけ→境は前提→錯誤取消しの道が開かれる(95条の要件を満たせば)

冒頭に戻ります。Aは、合意を取り消して、1メートルを返してほしい、と言いました。答えです。境が、塀から何メートルの位置にあるか。これは、2人が争って、互譲で決めた事項です。争いの目的たる事項です。ですから、696条で確定します。古い測量図が出ても、覆りません。錯誤取消しも、主張できません。Aは、1メートルを取り戻せません。変えてみます。AとBは、境が塀の位置であることを、疑っていませんでした。争ったのは、塀を作り直す費用の負担だけです。費用を半分ずつ出すと決めて、和解しました。ところが、古い測量図で、境は塀の位置ではないと分かりました。

塀が境だという点は、争いの対象でも、互譲の対象でもありません。この前提に錯誤があるので、錯誤取消しの道が開かれます。ただし、95条の要件を見ます。合意の中身に、塀が境だという前提が書き込まれていたか、つまり表示です。重要かどうかも、重大な過失がないかも、見ます。対照は、1枚の表です。争った事項は、確定する。前提として争わなかった事項は、確定しない。この線が、全部をつなぎます。2点、名前だけ出しておきます。交通事故の示談のあとに、思わぬ後遺症が出た場合は、示談の対象に入っていたのか、が問われます。これは、第6章の不法行為の効果で見ます。もう1点。ジャムの判決の和解は、裁判の中で結んだ、訴訟上の和解でした。訴訟上の和解そのものは、民事訴訟法の回で扱います。

今日の地図(保存版)

第5章の歩き方。契約の基礎と成立(申込みと承諾・契約自由・説明義務・定型約款など)→双務契約の効力(同時履行・危険負担・第三者のためにする契約)→解除→個々の契約(贈与から和解まで)。 図:第5章の歩き方

ここで、第5章が終わります。契約の全体を、地図に戻して、見渡します。第5章の歩き方は、4つでした。契約がどう生まれるかの、基礎と成立。生まれた契約がどう働くかの、双務契約の効力。契約をやめる、解除。そして、個々の契約ごとのルールです。基礎と成立では、申込みと承諾、契約自由、説明義務、定型約款などを見ました。効力では、同時履行、危険負担、第三者のためにする契約を見ました。

13種類の典型契約。贈与/売買/交換/消費貸借/使用貸借/賃貸借/雇用/請負/委任/寄託/組合/終身定期金/和解。5つの分け方=典型か非典型か/諾成か要物か/双務か片務か/有償か無償か/要式か不要式か。和解=諾成・双務・有償・不要式。終身定期金=諾成・不要式(債務と出捐は条文から言い切らない)。要物=書面によらない消費貸借だけ。 図:13種類の典型契約

  • 贈与/売買/交換/消費貸借/使用貸借/賃貸借/雇用/請負/委任/寄託/組合/終身定期金/和解
  • 5つの分け方=典型か非典型か/諾成か要物か/双務か片務か/有償か無償か/要式か不要式か
  • 和解=諾成・双務・有償・不要式
  • 終身定期金=諾成・不要式(債務と出捐は条文から言い切らない)
  • 要物=書面によらない消費貸借だけ

13種類の典型契約が、出そろいました。贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解です。5つの分け方も、もう一度です。民法に規定があるかで、典型か非典型か。合意だけで成立するか、物の受渡しまで要るかで、諾成か要物か。対価として向き合う債務を、双方が負うかで、双務か片務か。双方が、自分の財産を減らす負担、つまり出捐をするかで、有償か無償か。書面などの方式が要るかで、要式か不要式か、です。今日の2つを当てはめます。和解は、諾成、双務、有償、不要式です。終身定期金は、諾成、不要式です。債務と出捐が向き合うかどうか、つまり、双務か、有償かは、条文から言い切りません。

典型契約のうち、要物の契約は、書面によらない消費貸借だけです。契約は、合意だけで成立するのが土台でした。587条だけが、受け取ることによって効力を生ずる、と書いています。

各ブロックの鍵。危険負担=誰のせいで不能になったか。解除=催告解除・無催告解除・複数契約の解除。売買=契約不適合責任。賃貸借=信頼関係破壊・背信的行為・転貸の終わり方。役務を提供する4つの契約=報酬とやめ方。 図:各ブロックの鍵

  • 危険負担=誰のせいで不能になったか
  • 解除=催告解除・無催告解除・複数契約の解除
  • 売買=契約不適合責任
  • 賃貸借=信頼関係破壊・背信的行為・転貸の終わり方
  • 役務を提供する4つの契約=報酬とやめ方

各ブロックの鍵も、呼び戻します。危険負担は、誰のせいで不能になったか、で代金の行方が分かれました。解除は、催告して待つのが原則で、催告なしで解除できる場面と、複数の契約をあわせて解除できる場面がありました。売買は、渡した物が契約の内容に適合しないときの、契約不適合責任が中心でした。賃貸借は、信頼関係を破壊するかどうか、背信的行為かどうか、転貸の終わり方を見ました。雇用、請負、委任、寄託は、人の働きを約束する4つの契約で、報酬をいつ受け取れるかと、途中でのやめ方を、表に並べました。ここからは、これらが混ざった場面で、どの制度が当たるかを選ぶ練習です。4問あります。各問に、答えと理由をつけます。

確かめる 同時履行か、危険負担か、解除か

問1。AがBに中古車を180万円で売る契約。1 車は手元にあるが、Aは「代金が先」と渡さず、Bも「車が先」と払わない。2 引渡し前に台風で車が流された。どちらにも落ち度はない。3 Aは引き渡す準備を整えて申し出たが、Bが受け取りに来ない間に、どちらの落ち度でもなく車が盗まれた。どの制度が当たるか。 図:問1

  • AがBに中古車を180万円で売る契約
  • 1 車は手元にあるが、Aは「代金が先」と渡さず、Bも「車が先」と払わない
  • 2 引渡し前に台風で車が流された
  • どちらにも落ち度はない
  • 3 Aは引き渡す準備を整えて申し出たが、Bが受け取りに来ない間に、どちらの落ち度でもなく車が盗まれた
  • どの制度が当たるか

問1です。ここからは、別の話です。AとBは、中古車の売主と買主です。代金180万円の売買契約です。3つの場面があります。1つめ。車は手元にあります。ところが、Aは代金が先だと言って渡さず、Bは車が先だと言って払いません。どの制度が当たるでしょうか?同時履行の抗弁権です。533条です。履行が可能な場面で、相手が提供するまで、自分の債務の履行を拒めます。2つめ。引渡しの前に、台風で車が流されました。どちらにも落ち度はありません。Bは、代金を払わなければなりませんか?危険負担です。双方に責めがないので、536条1項で、Bは代金を拒めます。ただ、拒めるだけで、代金債務は消えません。消すなら、解除です。542条1項1号です。全部が不能なので、催告をしなくても、直ちに解除できます。3つめ。Aは、引き渡す準備を整えて、引渡しを申し出ました。Bは受け取りに来ません。その間に、どちらの落ち度でもなく、車が盗まれました。

Aが申し出たのに、Bが受け取らない。これが、受領遅滞でした。Bが受け取ってさえいれば、引渡しは済んでいました。だから、この不能はBのせいとみなされ、567条2項も、引渡しのあとと同じ扱いにします。原因を作った側なので、代金は拒めず、解除して逃れることもできません。受け取らなかった人に、その後の不運を負わせる。公平の考え方でした。Aは、浮いた利益があれば、Bに償還します。

問1の答え。分かれ目=履行が可能か不能か。1 可能→同時履行の抗弁権(533条)。2 双方に責めのない不能→危険負担で代金を拒める(536条1項)・消すなら無催告解除(542条1項1号)。3 受領遅滞中の不能→債権者のせいとみなす(413条の2第2項)・売買は567条2項でも引渡し後と同じ扱い→代金を拒めず(536条2項前段)・解除もできない(543条)。 図:問1の答え

  • 分かれ目=履行が可能か不能か
  • 1 可能→同時履行の抗弁権(533条)
  • 2 双方に責めのない不能→危険負担で代金を拒める(536条1項)・消すなら無催告解除(542条1項1号)
  • 3 受領遅滞中の不能→債権者のせいとみなす(413条の2第2項)・売買は567条2項でも引渡し後と同じ扱い→代金を拒めず(536条2項前段)・解除もできない(543条)

分かれ目は、履行が可能か、不能か、です。可能なら、同時履行。不能なら、誰のせいで不能になったか、で分かれます。

確かめる 契約不適合責任か、錯誤か

問2。中古住宅を買った。屋根の腐食が見つかった。買主は「腐食のない家だと思って買った」。契約不適合責任か、錯誤か。 図:問2

  • 中古住宅を買った
  • 屋根の腐食が見つかった
  • 買主は「腐食のない家だと思って買った」
  • 契約不適合責任か、錯誤か

問2です。中古住宅を買いました。あとで、屋根の腐食が見つかりました。買主は、腐食のない家だと思って、買っていました。契約不適合責任でしょうか。錯誤でしょうか?

問2の答え。どちらの要件も満たされることがある。現行法では買主が選べるとする見解が有力だが争いがある。差の実益=契約不適合責任には種類・品質は知った時から1年以内の通知が必要/錯誤取消しにはこの通知が無い(取消権は126条で、追認できる時から5年・行為の時から20年)。 図:問2の答え

  • どちらの要件も満たされることがある
  • 現行法では買主が選べるとする見解が有力だが争いがある
  • 差の実益=契約不適合責任には種類・品質は知った時から1年以内の通知が必要/錯誤取消しにはこの通知が無い(取消権は126条で、追認できる時から5年・行為の時から20年)

どちらの要件も、満たされることがあります。契約不適合責任なら、追完、代金減額、損害賠償、解除です。錯誤なら、基礎事情の錯誤で、95条1項2号です。2項の表示があれば、取り消せます。欠陥のある家を買った人は、欠陥はないと思って買った人でもあります。売買の錯誤との関係で、前に見たところです。現行法では、買主が選べるとする見解が有力です。ただ、争いがあります。差の実益は、期間です。種類や品質の契約不適合責任には、知った時から1年以内の通知が要ります。錯誤取消しには、この通知がありません。取消権は、126条で、追認できる時から5年、行為の時から20年で消えます。いまの錯誤は取消しで、取り消すまでは契約は有効です。だから、2つは並び立ちうる、と考えやすくなりました。ただ、選べるとすると、この1年の通知を、錯誤取消しで逃れられてしまいます。争いがあるのは、このためです。

確かめる 信頼関係破壊か、背信性か

問3。賃貸借。1 賃借人が1か月分の賃料を1回だけ滞納。契約書に「1か月でも滞納したら催告なしで解除できる」とあり、賃貸人が解除を通知した。2 賃借人が賃貸人に黙って友人に部屋を又貸しし、友人が実際に住んでいる。どちらも解除できるか。 図:問3

  • 賃貸借
  • 1 賃借人が1か月分の賃料を1回だけ滞納
  • 契約書に「1か月でも滞納したら催告なしで解除できる」とあり、賃貸人が解除を通知した
  • 2 賃借人が賃貸人に黙って友人に部屋を又貸しし、友人が実際に住んでいる
  • どちらも解除できるか

問3です。賃貸借で、場面が2つあります。1つめ。賃借人が、1か月分の賃料を、1回だけ滞納しました。契約書には、1か月でも滞納したら催告なしで解除できる、とあります。賃貸人は、これを理由に、解除を通知しました。解除できるでしょうか?債務不履行による解除の場面です。信頼関係破壊の法理が当たります。債務不履行があっても、信頼関係を破壊するに足りない場合は、解除できません。無催告解除の特約も、催告しなくても不合理とは認められない事情があるときに限って、効力があります。1回の滞納では、解除できません。賃貸借は、信頼関係を土台に、長く続く契約でした。1回の不履行で、関係ごと断ち切るのは、その性質に合いません。特約が書いてあっても、文字どおりには使えないのは、このためです。2つめ。賃借人が、賃貸人に黙って、友人に部屋を又貸ししました。友人は、実際にそこに住んでいます。

問3の答え。分かれ目=解除の入り口。賃料不払いなどの債務不履行から解除を考える→信頼関係破壊の法理(破壊するに足りなければ解除できない)。無断譲渡・転貸(612条2項)→原則は解除できる・背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できない。 図:問3の答え

  • 分かれ目=解除の入り口
  • 賃料不払いなどの債務不履行から解除を考える→信頼関係破壊の法理(破壊するに足りなければ解除できない)
  • 無断譲渡・転貸(612条2項)→原則は解除できる・背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できない

分かれ目は、解除の入り口です。賃料不払いなどの債務不履行から解除を考えるなら、信頼関係破壊の法理です。無断の譲渡や転貸なら、612条2項で、背信性です。根っこは、1つめで言った、信頼関係を土台にする性質で、同じです。違うのは、入り口です。滞納は、ふつうの債務不履行の解除から入り、信頼関係を壊すほどでなければ、解除を止めます。無断転貸は、612条2項から入ります。承諾なく人に使わせることは、関係を続けるに堪えない、背信的な行為とされるので、原則は解除できます。背信とまでは言えない特段の事情は、条文の要件の外の例外なので、借り手の側が示します。

確かめる 536条2項か、634条か

問4。請負。請負人Aが注文者Bの家を建てる途中で完成できなくなった。1 Bが工事を妨げ、Aを敷地に入れなかった。2 地震で敷地が崩れ、家を建てられなくなった。3 工事の途中で契約が解除された。報酬はどうなるか。 図:問4

  • 請負
  • 請負人Aが注文者Bの家を建てる途中で完成できなくなった
  • 1 Bが工事を妨げ、Aを敷地に入れなかった
  • 2 地震で敷地が崩れ、家を建てられなくなった
  • 3 工事の途中で契約が解除された
  • 報酬はどうなるか

問4です。ここも、別の話です。Aは請負人、Bは注文者です。Aが、Bの家を建てる途中で、完成できなくなりました。3つの場面です。1つめ。Bが工事を妨げて、Aを敷地に入れませんでした。報酬は、どうなるでしょうか?原因が、注文者の側にあります。536条2項の考え方に照らして、報酬は全額です。ただし、仕事をしなくて済んだ分の利益は、Bに返します。損害賠償も、解除も、注文者にはできません。415条1項ただし書と、543条です。完成を妨げたのは、注文者自身です。原因を作った側が、報酬を払わずに済むのは、公平ではありません。だから、全額です。請負は、完成して初めて報酬なので、536条2項を、そのままではなく、考え方に照らして使います。415条1項ただし書は、債務者のAに落ち度のない不履行なら、賠償させません。543条は、原因を作った債権者には、解除をさせません。解除で報酬の債務を消せるなら、全額を払わせる結論が崩れるからです。2つめ。地震で敷地が崩れて、家を建てられなくなりました。

3つめ。工事の途中で、契約が解除されました。

問4の答え。分かれ目=注文者に原因があるか。注文者の側にある→536条2項の考え方で報酬は全額(利益は償還)。注文者に原因が無い(634条1号)・完成前の解除(634条2号)→可分な部分で注文者が利益を受けるとき、利益の割合の報酬。 図:問4の答え

  • 分かれ目=注文者に原因があるか
  • 注文者の側にある→536条2項の考え方で報酬は全額(利益は償還)
  • 注文者に原因が無い(634条1号)・完成前の解除(634条2号)→可分な部分で注文者が利益を受けるとき、利益の割合の報酬

分かれ目は、注文者に原因があるか、です。注文者の側にあれば、536条2項の考え方で、全額です。注文者に原因がなければ、請負人の側に原因があっても、どちらの原因でもなくても、634条1号です。3つめの解除は、634条2号です。条文は、誰が、何を理由に解除したかを、書いていません。どちらの号も、完成しないまま、仕事が止まった場面です。それでも、できた分を注文者が役立てるなら、その分は払わせる。そこが同じなので、同じ扱いになります。634条は、できた部分のうち、切り分けられて、注文者の役に立つ部分を、完成したものとみなします。だから報酬は、注文者が得をする割合で測ります。

到達点

今日のまとめ。終身定期金=死亡に至るまで定期に給付(689条)。和解=互いに譲歩して争いをやめる(695条)。確定力=確証が出ても和解のとおり(696条)。錯誤=争った事項は取り消せない・前提として争わなかった事項は95条の要件を満たせば取り消せる。第5章=基礎と成立→効力→解除→13種。 図:今日のまとめ

  • 終身定期金=死亡に至るまで定期に給付(689条)
  • 和解=互いに譲歩して争いをやめる(695条)
  • 確定力=確証が出ても和解のとおり(696条)
  • 錯誤=争った事項は取り消せない・前提として争わなかった事項は95条の要件を満たせば取り消せる
  • 第5章=基礎と成立→効力→解除→13種

今日の内容を整理します。終身定期金は、誰かの死亡に至るまで、定期に給付する約束です。689条です。690条から694条は、日割り、元本の返還、同時履行、存続の宣告、遺贈への準用でした。和解は、互いに譲歩して、争いをやめる約束です。一方だけが譲る合意は、和解ではありません。諾成、双務、有償です。和解の確定力は、696条です。反対の確証が出ても、和解で決めた内容で権利が確定します。争いが蒸し返されないようにするためです。和解と錯誤です。争って、互譲で決めた事項は、錯誤取消しを主張できません。前提として争わなかった事項は、95条の要件を満たせば、錯誤取消しを主張できます。冒頭の設例です。境が、塀から何メートルの位置にあるかは、争って決めた事項です。古い測量図が出ても覆らず、Aは、1メートルを取り戻せません。第5章は、契約の基礎と成立、効力、解除、13種類の典型契約でした。これで、契約が終わります。ここまでは、合意から生まれる債権でした。次は、合意によらずに生じる債権、事務管理から見ます。

参照条文

  • 民法689条
  • 民法691条1項
  • 民法695条
  • 民法696条
  • 民法95条1項・2項

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