死亡の損害と逸失利益の算定
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第6章 法定債権 #301/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
亡くなった人の損害を明細書にする
図:冒頭の設例 会社員Bが、Aの運転する車にはねられて亡くなった
- 妻Cが、葬儀を出し、墓碑を建て、仏壇を買った
- 別の事故では、5歳の子Bが亡くなった
- この子には、まだ収入がない
- A=加害行為をした人/B=亡くなった人/C=Bの妻
亡くなった人自身の賠償請求権を、遺族が受け継げるか。その問いに入る前に、そもそも何がいくらの損害か、を数えておく必要があります。今日は、亡くなった人の損害の明細書を作る回です。設例です。会社員のBが、Aの運転する車にはねられて亡くなりました。Bの妻をCとします。Cは葬儀を出し、墓碑を建て、仏壇を買いました。記号は、Aが加害者、Bが亡くなった人、Cがその妻です。墓や仏壇まで加害者の負担にしてよいか、迷うところです。ただ、墓や仏壇は、遺族の趣味ではなく、亡くなった人を弔うために必要になった出費です。入るのか入らないのか、入るならどこまでか。これが1つめの問いです。2つめの問いは、別の事故です。亡くなったのが5歳の子Bだったとします。この子には、まだ収入がありません。将来の収入は、いくらと数えるのでしょうか。ゼロと数えるのか、何かの基準で見積もるのか。今日は、この2つに答えを出します。
図:今日の地図
- 亡くなった人の損害の明細書=①積極的損害(出ていったお金)葬儀・墓碑・仏壇
- ②消極的損害=逸失利益(入らなくなったお金)式=収入×就労可能年数−生活費−中間利息
- ③慰謝料は次回
- 軸=損害は、事故がなかったときとの差を、項目ごとに数えて積み上げる
板に道筋を並べました。軸は1つです。損害は、事故がなかったときとの差を、項目ごとに数えて積み上げます。生きている人の事故で見た明細書と、同じ形です。亡くなった場合の、積極的損害と逸失利益の中身を埋めるのが、今日の仕事です。先に答えだけ言っておくと、墓碑や仏壇の費用も相当な範囲で入り、5歳の子の収入も、ゼロではなく統計の平均で見積もります。
葬儀費用や治療費は誰が請求するか

問いです。損害の分類の回を、思い出してください。出ていったお金と、入ってこなくなったお金は、それぞれ何と呼びましたか?出ていったお金が積極的損害で、入ってこなくなったお金が消極的損害、つまり逸失利益です。亡くなった場合も、この2つに分けて数えます。まず、出ていったお金からです。設例を少し変えます。Bはすぐには亡くなりませんでした。入院して、しばらくして亡くなりました。治療費がかかり、亡くなったあとで葬儀の費用もかかりました。この費用は、誰が請求するのでしょうか。そこで、軸になる考え方があります。誰が払ったか、です。費用が出ていった財布の持ち主に、穴が空いています。その穴を埋めるのが賠償ですから、払った人が請求します。
図:比較表(誰がどの費用を請求するか)
- Bが生前に自分で払った治療費=Bの請求権が相続される(誰が相続するかは次回)
- 妻Cが払った治療費=C自身が請求(前回の肩代わり損害)
- 葬儀費用・墓碑・仏壇=実際に支出した遺族。軸=誰が払ったか。
3つの場合に分けます。1つめ、Bが生きているうちに、自分で払った治療費です。これはBが負った損害で、Bの請求権が相続される、という形になります。2つめ、妻Cが払った治療費です。前回の、肩代わり損害でした。被害者の代わりに、別の人が出した費用のことです。実際に払ったCが、自分で請求できる、と考えられています。ただし、看護に駆けつけた家族の旅費は、前回見たとおり、被害者が家族に返すべきものとして、被害者本人が請求する形でした。3つめ、葬儀の費用です。これも、実際に出した遺族が請求します。Bが払うことはできませんから、Bの相続の話ではなく、出した人の話です。
決め手は、お金が出ていったのが、誰の財布かです。
⭐ 論文で書く規範:【規範(通説・実務)】死亡に伴う積極的損害は、実際に支出した人が請求できると考えられる。生前の本人の治療費は本人の請求権が相続され、遺族が支出した治療費は支出した遺族が請求できると考えられる。葬儀費用は支出した遺族が請求する(墓碑・仏壇と同じ)。 (解釈で立てる規範(出どころ=通説・実務)。条文は誰が請求するかを書いていない。決め手=賠償は穴の持ち主の穴を埋めるものなので、お金を出した財布の持ち主が請求するから)
墓碑と仏壇の費用はどこまで入るか
図:墓碑・仏壇の費用の事案
- 3歳の子が不法行為で亡くなり、その父が墓碑を建て、仏壇を買って、加害者に費用を請求
- 原審=墓碑・仏壇は将来その一家・子孫の霊も祭るものだから損害とはいえないとして、全部退けた
- 最高裁=その部分を破棄し、差し戻した
では、冒頭の問いです。墓碑や仏壇の費用は、損害に入るでしょうか。事案を役割で言います。3歳の子が、不法行為で亡くなりました。その父が、墓碑を建て、仏壇を買って、費用を加害者に請求しました。原審は、全部退けました。理由はこうです。墓碑と仏壇は、将来その一家や子孫の霊も祭るものだから、不法行為による損害とはいえない。最高裁は、この部分を破棄して、差し戻しました。判決の言葉を読みます。3段です。まず、1段目です。
判例最判昭44・2・28 民集23巻2号525頁
墓碑・仏壇の費用 判決の言葉① 人が死亡した場合にその遺族が墓碑、仏壇等をもつてその霊をまつることは、わが国の習俗において通常必要とされることであるから、家族のため祭祀を主宰すべき立場にある者が、不法行為によつて死亡した家族のため墓碑を建設し、仏壇を購入したときは、そのために支出した費用は、不法行為によつて生じた損害でないとはいえない。
言葉を言い直します。霊をまつるとは、亡くなった人を弔うために、墓や仏壇を用意することです。祭祀を主宰すべき立場にある者とは、その家で弔いを取り仕切る立場の人です。設例なら、妻のCです。そのCが、亡くなった家族のために墓碑や仏壇の費用を出したなら、損害でないとはいえない、と言っています。2段目です。どこまで請求できるのかが書かれています。
判例最判昭44・2・28 民集23巻2号525頁
墓碑・仏壇の費用 判決の言葉② したがつて、前記の立場にある遺族が、墓碑建設、仏壇購入のため費用を支出した場合には、その支出が社会通念上相当と認められる限度において、不法行為により通常生ずべき損害として、その賠償を加害者に対して請求することができるものと解するのが相当である。
読み方はこうです。全額ではなく、社会通念上相当と認められる限度で、です。そして、その性質は、不法行為により通常生ずべき損害です。通常生ずべき損害は、416条1項の言葉でした。賠償の範囲の回で、416条を類推すると見ました。それで答えている、ということです。後の世代も使う墓だからといって、全部を否定はしない。その点を、判決の3段目が述べています。
判例最判昭44・2・28 民集23巻2号525頁
墓碑・仏壇の費用 判決の言葉③ 死者の年令、境遇、家族構成、社会的地位、職業等諸般の事情を斟酌して、社会の習俗上その霊をとむらうのに必要かつ相当と認められる費用の額が確定されるならば、その限度では損害の発生を否定することはできず、かつその確定は必ずしも不可能ではないと解されるのであるから、すべからく鑑定その他の方法を用いて右の額を確定し、その範囲で損害賠償の請求を認容すべきである。
斟酌とは、事情をくみ取って考えに入れることです。判決の考えは、こうです。将来の家族や子孫の霊も祭るものだからといって、全部が損害でなくなるのではない。亡くなった人を弔うのに必要かつ相当な額までは、損害です。その額は、亡くなった人の年齢や境遇、家族構成、職業などの事情から決めます。
⭐ 論文で書く規範:【規範(判例で立てる)】祭祀を主宰すべき遺族が墓碑・仏壇の費用を支出したときは、社会通念上相当と認められる限度で、不法行為により通常生ずべき損害として、加害者に請求できる。将来の家族の霊を祭る面があっても、必要かつ相当な額までは損害である。 (解釈で立てる規範(出どころ=判例)。条文は墓碑・仏壇の費用を書いていない。決め手=弔いは習俗上通常必要とされる出費で、額は事情から必要かつ相当な範囲に絞れるから)
設例にあてはめます。妻Cが、葬儀と墓碑、仏壇の費用を出しました。Cが加害者Aに請求します。ただし、額は相当な範囲に絞られます。かけた費用がそのまま全額、とは限りません。判決は、墓碑と仏壇の費用と、その他の葬儀の費用とで、区別するいわれはない、とも述べています。どちらも、亡くなった人を弔うための出費という点で、同じだからです。ですから、葬儀の費用も、同じ考え方で数えます。請求できるのは、弔いに必要かつ相当な範囲です。たとえば、一般的な墓碑と仏壇の費用は、相当な範囲に入ります。一方、亡くなった人の境遇や職業から見て、ふつうは考えにくいほど大がかりな墓を建てたなら、超えた分は相当な限度の外です。決め手は、亡くなった人の事情に照らして、社会の習俗上、必要かつ相当と言える額かどうかです。
死亡の逸失利益の式
図:明細書の「死亡」の行
- 逸失利益=(死亡時の)収入×就労可能年数−生活費−中間利息
- 収入×年数=生きていれば稼げたはずの額/生活費=生きていればかかったので引く/中間利息=将来分を一括で受け取るので引く
次は、入らなくなったお金、逸失利益です。亡くなった人の逸失利益とは、生きていれば稼げたはずなのに、亡くなったために稼げなくなった分のお金のことです。損害の分類の回では、けがで入らなくなった収入が、この欄でした。計算の式は、これです。逸失利益は、死亡時の収入、かける、就労可能年数、引く、生活費、引く、中間利息です。順に見ます。収入かける就労可能年数は、生きていれば稼げたはずの額です。就労可能年数とは、あと何年働けたか、です。実務は、おおむね67歳まで働けたものとして数えます。稼げたはずの額が、そのまま損害になるのではないのですか。そこが、亡くなった場合の特徴です。生きていれば、生活費がかかります。食費や住居費です。亡くなったので、この支出は、しないで済みました。損害は、事故がなければ得ていたものと、いまとの差でした。だから、使わずに済んだ生活費は差し引きます。これが生活費控除です。給料のうち、本人の家賃や食費に消えずに残ったはずの分、のイメージです。生活費は、事情で割合が変わります。最高裁には、交通事故で亡くなった8歳の女児の事案で、平均給与額の5割相当の生活費を控除しても不合理でない、と述べた例があります。割合を暗記する必要はありません。何を引くかは事情で変わる、と押さえてください。最後が中間利息です。将来の収入を、いまここで一括して受け取ります。先にお金をもらえば、その分の利息が付きます。だから、利息相当額を引きます。417条の2と、722条1項の準用でした。前回も出てきました。計算の方法はライプニッツ式という名前があります。中身と法定利率は、あとの回で見ます。
図:設例の当てはめ
- 数字は説明用に置いた仮定。実務の標準値ではない
- 40歳・年収500万円の会社員Bが死亡。就労可能年数=67−40=27年。生活費控除を仮に30%とする。①500万円×27年=1億3,500万円 ②生活費控除後 1億3,500万円×(1−0.3)=9,450万円 ③中間利息を引いた額=最終額(係数の数字は省略)。
設例で計算してみます。ここで置く数字は、説明のための仮定です。実務の標準値ではありません。Bは40歳で、年収は500万円とします。67歳まで働けたと数えると、就労可能年数は、67引く40で、27年です。1段目です。年収の500万円に、27年を掛けて、1億3,500万円です。2段目、生活費です。仮に30%を控除するとします。1億3,500万円かける0.7で、9,450万円です。3段目で、ここから中間利息を引きます。ライプニッツ係数を掛ける計算をします。係数の数字はここでは省きます。最終額は、9,450万円より少なくなる、というところまでにします。
一家の家計を支えていたかどうか、独身かどうかなどで、割合は変わります。式の形を覚えてください。明細書の形に戻します。逸失利益は、損害を項目ごとに数えて積み上げる、積上げ方式の1行です。慰謝料とは、別の行で数えます。損害の分類の回で見た、食事の会計で言えば、逸失利益と慰謝料は、別々の料理です。料理ごとに値段を出して、最後に合計します。
⭐ 論文で書く規範:【規範(通説・実務)】死亡の逸失利益は、死亡時の収入×就労可能年数から、生活費と中間利息を控除して算定する。 (解釈で立てる規範(出どころ=通説・実務)。条文は算定式を書いていない。決め手=損害は事故がなかったときとの差で、生きていれば稼げたはずの額から、使わずに済んだ生活費と、前倒しで受け取る利息分を引くから)
まだ働いていない子の逸失利益
図:別の事故 5歳の子の逸失利益
- 別の事故で、5歳の子Bが亡くなった
- 収入はまだない
- 男児か女児かで基準が変わりうる
- 逸失利益は0円か
問いです。5歳の子には、まだ収入がありません。逸失利益はゼロ円でしょうか?収入の実績がない子でも、逸失利益はゼロにはなりません。将来の就労の蓋然性があれば、統計上の平均賃金で、見積もります。蓋然性とは、そうなる見込みが十分にある、ということです。この統計を賃金センサスと呼びます。国の統計で、年齢や学歴や性別ごとの、平均の給料をまとめたものです。喩えるなら、まだ試合に出ていない新人選手の年俸を、同じ世代の平均で見積もるようなものです。本人の実績はまだ無いので、材料を統計に替えます。式の骨組みは、さきほどと同じです。では、判決を見ます。事案を役割で言います。中学2年の女子が、交通事故で亡くなりました。遺族は、賃金センサスでは、女子労働者の平均賃金と男子労働者の平均賃金に、著しい格差がある、と主張しました。そこで、女子の平均賃金で算定した収入に、家事労働分を加算するよう求めました。最高裁は、この求めを退けました。家事労働分とは、家事をすることの値打ちを、お金に見積もった額です。女子の平均賃金は、男子より低くなっています。その差を、家事の値打ちを足して埋めよう、というのが遺族の求めでした。判決の言葉は、2段で読みます。判決文のDは、亡くなった女子のことです。
図:年少の女子の逸失利益の事案
- 中学2年(14歳)の女子が交通事故で死亡
- 遺族は、女子労働者の平均賃金と男子労働者の平均賃金に著しい格差があるとして、女子の平均賃金で算定した収入に家事労働分を加算するよう求めた
- 最高裁は退けた(上告棄却)
- 判決文中のD=亡くなった女子
判例最判昭62・1・19 民集41巻1号1頁
年少の女子の逸失利益 判決の言葉① Dのような死亡時に現実収入のない就労前の年少女子の場合には、当該女子の将来の就労の時期、内容、程度及び結婚後の職業継続の有無等将来につき不確定な要因が多いのであるが、原審が、Dの将来の得べかりし利益の喪失による損害賠償額を算定するに当たり、賃金センサス昭和五六年第一巻第一表中の女子労働者、旧中・新高卒、企業規模計(パートタイム労働者を除いたもの)の表による平均給与額を基準として収入額を算定したことは、交通事故により死亡した女子の将来の得べかりし利益の算定として不合理なものとはいえず
得べかりし利益とは、得られるはずだった利益、つまり逸失利益のことです。読み方はこうです。まだ働いていない女子は、いつ働くか、どんな仕事をするか、結婚後も続けるかなど、不確定な要素が多い。それでも、賃金センサスの女子労働者の平均給与額を基準に収入を算定することは、不合理とはいえない、と認めました。2段目です。格差の扱いです。
判例最判昭62・1・19 民集41巻1号1頁
年少の女子の逸失利益 判決の言葉② 賃金センサスに示されている男女間の平均賃金の格差は現実の労働市場における実態を反映していると解されるところ、女子の将来の得べかりし利益を算定するに当たつて、予測困難な右格差の解消ないし縮少という事態が確実に生じるものとして現時点において損害賠償額に反映させ、これを不法行為者に負担させることは、損害賠償額の算定方法として必ずしも合理的なものであるとはいえない。
読み方です。判決が加算を退けた理由は、2つあります。1つめは、女子が働いて受ける給与額で算定すれば、将来の利益は評価し尽くされる、という点です。そこへ家事労働分を足せば、同じ利益を二重に評価することになります。2つめが、いま読んだ言葉です。男女の平均賃金の格差は、現実の労働市場の実態を反映している。だから、その格差がいつか解消されるという予測を、確実なものとして、いま賠償額に入れ、加害者に負担させることは、必ずしも合理的ではない、と言いました。将来の格差の縮小を、先取りして数えるか。判決は、そうしませんでした。理屈はこうです。格差がどれだけ縮まるかは、予測が難しい。分からない将来の変化を、確実に起こるものとして、加害者に払わせるのは、穴埋めの範囲を超えます。前回、懲罰的損害賠償を認めない理由で見たとおり、賠償の目的は、現実に生じる損害の穴埋めです。だから、現実の労働市場の実態を映した平均を使います。
⭐ 論文で書く規範:【規範(判例で立てる)】就労前の年少者は、将来の就労が不確定でも、賃金センサスの平均給与額を基準に収入を算定してよい。女子について、男女の平均賃金に格差があっても、その解消を見込んで家事労働分を加算することはしない(家事労働分の加算は二重評価になる)。 (解釈で立てる規範(出どころ=判例)。条文は年少者の算定方法を書いていない。決め手=家事労働分を足すと将来の利益を二重に評価することになり、賃金センサスの格差は現実の労働市場の実態を反映しており、予測困難な格差の解消を確実なものとして加害者に負担させるのは合理的といえないから)
言い過ぎないようにしてください。判決が退けたのは、家事労働分を加算するという求めです。女子の平均ではなく、男女を合わせた全労働者の平均を使う、という考え方もありますが、判決はそれには答えていません。また、無職の成人の扱いも、今日は取り上げません。年少者の事案までです。設例にあてはめます。賃金センサスは男女別の表なので、5歳の子Bが男児か女児かで、使う表が変わりえます。女児なら、判決のとおり、女子の平均に家事労働分を足すことはしません。逸失利益は、働き始める年から67歳までの平均賃金で算定します。働き始める年は、実務では18歳などとされますが、これは実務の例で、判例の規範ではありません。そこから、生活費と中間利息を引きます。式は、さきほどのとおりです。
現に働く人と年少者の算定の違い
図:比較表
- 現に働く人(40歳のB)|年少者(5歳のB)
- 収入=死亡時の現実の収入|現実収入なし→賃金センサス(統計上の平均賃金)
- 働き始める時期=すでに就労中|将来の就労開始時(18歳など)で不確定
- 生活費控除=事情で変わる|事情で変わる
- 争点になりやすい点=収入の立証|男女の格差をどう扱うか(加算しない)
2つの場合を並べます。現に働く人と、年少者です。共通の骨組みは、同じ式です。違うのは、収入をどう見積もるか、だけです。収入は、現に働く人なら、死亡時の現実の収入です。年少者は、現実の収入がないので、賃金センサスです。働き始める時期は、現に働く人なら、すでに働いています。年少者は、将来の就労開始時で、不確定です。生活費の控除は、どちらも事情で変わります。争点になりやすい点は、現に働く人なら、収入をどう立証するかです。年少者なら、男女の格差をどう扱うかで、判決は加算しないと答えました。式は1つで、収入の材料だけが替わります。
今日の地図(保存版)
図:まとめ
冒頭の問いの答えです。墓碑や仏壇の費用は、祭祀を主宰する遺族が出したなら、社会通念上相当な限度で入ります。5歳の子の将来の収入は、賃金センサスの平均賃金で、蓋然性のある額を数えます。まとめます。1つめ、死亡に伴う積極的損害は、実際に支出した人が請求できると考えられます。葬儀の費用も、墓碑と仏壇の費用も、社会通念上相当と認められる限度で、通常生ずべき損害として請求できます。2つめ、死亡の逸失利益は、死亡時の収入かける就労可能年数から、生活費と中間利息を引きます。生活費は、生きていればかかったので引きます。中間利息は、将来分を一括で受け取るので引きます。設例の数字は、説明用の仮定です。3つめ、まだ働いていない年少者でも、将来の就労の蓋然性があれば、賃金センサスの平均賃金で収入を見積もります。女子の男女格差を埋める家事労働分の加算はしません。墓碑と仏壇の費用、年少者の逸失利益の算定は、論文で論点になりうるところです。