民法ゼロから民法#314

共同不法行為(719条)の3類型と関連共同性

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第6章 法定債権 #314/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

運転者と医師はどこまで責任を負うのか 共同不法行為の入口

設例。歩行者C・運転者A・医師B。Cは青信号の横断歩道でAの前方不注意の車にはねられ頭を強く打つ(Cに過失なし)。搬送先でBは精密検査も経過観察もせず一般的な指示だけで帰宅させた(Bの過失)。Cは帰宅後に頭蓋内の出血で死亡(傷は放置すれば死に至るもの)。早く見つけて治療すれば高い確率で助かった。損害=死亡による損害の全体4000万円。問い=AとBはどこまで責任を負うのか。 図:設例

  • 歩行者C・運転者A・医師B
  • Cは青信号の横断歩道でAの前方不注意の車にはねられ頭を強く打つ(Cに過失なし)
  • 搬送先でBは精密検査も経過観察もせず一般的な指示だけで帰宅させた(Bの過失)
  • Cは帰宅後に頭蓋内の出血で死亡(傷は放置すれば死に至るもの)
  • 早く見つけて治療すれば高い確率で助かった
  • 損害=死亡による損害の全体4000万円
  • 問い=AとBはどこまで責任を負うのか

今日はその共同不法行為を扱います。まず、1つの設例を置きます。Cは歩行者です。青信号の横断歩道を渡っていて、Aの運転する車に、はねられました。Aの前方不注意です。Cは頭を強く打ちましたが、Cに落ち度はありません。Cは救急車で病院に運ばれました。医師のBは、外見に大きな傷がなく、意識もはっきりしていたので、頭の精密検査も経過観察もせず、何かあればまた来てください、という一般的な指示だけで帰宅させました。頭を強く打った人は、頭の中で出血が進むことがあります。Bは、そう説明して、しばらく慎重に様子を見るよう指導すべきでした。これを怠ったのです。Cは帰宅後に容体が急変して亡くなりました。死因は、頭を打ったことによる頭の中の出血です。Aにはねられた時点で、Cの傷は、放置すれば死に至るものでした。それでも、早めに見つけて治療していれば、高い確率で助かったはずでした。損害は、死亡による分の全体で、4000万円とします。

AとBがそれぞれどこまで責任を負うのか、答えまでの道のりを示します。まず、719条の3つの型を見て、設例がどの型の話かを決めます。次に、各人が709条の要件を満たす必要があるのか、という問いです。そのあと、共同の意味を見ます。最後に、交通事故と医療事故の場面で、設例の答えを出します。答えを先に言います。AもBも、死亡による損害の全額について、連帯して責任を負います。ただし、なぜそうなるのかは、順に見ていきます。

719条の3つの型

719条の3類型の地図。1項前段=狭義の共同不法行為(数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたとき、各自が連帯して賠償する責任)【この回の主役】/1項後段=加害者不明の共同不法行為(いずれの者が損害を加えたかを知ることができないときも同様)【次回】/2項=教唆・幇助(教唆した者・幇助した者は共同行為者とみなす)【次回】。 図:719条の3類型の地図

719条を、そのまま読みます。

条文民法719条

民法第719条(共同不法行為者の責任) 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

3つの型があります。1つめは、1項の前段です。数人が共同の不法行為によって損害を加えたときに、各自が連帯して賠償する責任を負う型で、狭義の共同不法行為と呼びます。2つめは、1項の後段です。共同行為者のうち、誰が損害を加えたのか分からないときも同様に責任を負う、という型で、加害者不明の共同不法行為と呼びます。3つめは、2項です。行為者を教唆した者、つまりそそのかした者と、幇助した者、つまり手助けした者は、共同行為者とみなされます。設例では、Aが何をし、Bが何をしたかは分かっています。誰が加えたか分からない後段の場面でも、そそのかしや手助けの2項の場面でもありません。だから今日の主役は、前段です。後段と2項は、どこに書いてあるかと意味を一言ずつ押さえるところまでにします。

前段の連帯は、連帯債務と近いのですが、呼び名が違いました。不可分債務と不真正連帯債務の回で見たとおり、判例や学説は、この前段の賠償債務を、不真正連帯債務と呼んできました。弁済など債権者を満足させる事由は他の加害者にも効くが、それ以外、特に免除は他の加害者に及ばない債務です。改正の後は、連帯債務でも免除は相対効、つまり免除した相手との関係でだけ効くことになったので、区別の意味は小さくなりました。設例でいえば、被害者の側は、AにもBにも全額を請求できます。ただ、どちらかが払えば、その分はもう1人の債務も消えるので、二重には取れません。ただ今日は、連帯の中身ではなく、どういうときに共同不法行為になるのか、という入口を扱います。

前段の要件その1 各人に709条の要件は要るのか

709条の要件5つ。①故意・過失 ②権利または法律上保護される利益の侵害 ③損害 ④因果関係(事実的因果関係=あれなければこれなし/相当因果関係=賠償させる範囲)⑤否定する事由がないこと。 図:709条の要件5つ

  • ①故意・過失
  • ②権利または法律上保護される利益の侵害
  • ③損害
  • ④因果関係(事実的因果関係=あれなければこれなし/相当因果関係=賠償させる範囲)⑤否定する事由がないこと

前段の成立には、条文の文言から、2つの問いが出ます。1つめは、各人が独立に709条の要件を満たす必要があるのか。2つめは、各人の間に、どんな共同の関係が要るのか。この共同の関係を、関連共同性と呼びます。まず1つめです。先に、確認です。709条の要件は5つありました。何と何だったか、先に思い出してください?709条です。

条文民法709条

民法第709条(不法行為による損害賠償) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

要件は5つです。故意または過失、権利または法律上保護される利益の侵害、損害、因果関係、そして否定する事由がないことでした。因果関係は、あれがなければこれがない、という事実的因果関係と、賠償させる範囲を決める相当因果関係の2段階でした。709条があるのに、なぜ719条が別にあるのか。そこが論点の中心です。ここで、2つの学説が分かれます。どちらも、学説です。従来の通説は、各人が、因果関係を含めて、709条の要件を独立に満たす必要がある、と考えます。理由は、個人責任の原理、つまり、人は自分の行為から生じた損害についてだけ責任を負う、という考え方に合うからです。では前段の意味は何か。この説では、連帯して賠償責任を負わせる、という効果の点にあります。別の例で見ます。DとGが示し合わせて、Fの店を荒らしました。Dが看板を壊し、60万円の損害。Gが鉢植えを壊し、40万円の損害。709条だけなら、Dは自分の行為による60万円、Gは自分の行為による40万円の範囲です。前段が成立すれば、DもGも、100万円の全額について連帯して責任を負います。近時の有力説は、各人の行為と損害の間の、個別の因果関係までは要らない、と考えます。共同行為と損害の間に、因果関係があれば足りるのです。共同行為をまるごと取り除けば損害は起きなかったか、その共同行為からその損害が生じるのは相当か、の2点を見ます。理由は、誰の行為がどれだけ損害に効いたのかを、被害者が一人ずつ証明するのは難しいことがあり、それでは被害者の保護に欠けるからです。この説では、前段の意味は、709条の要件を修正して、個別の因果関係を不要とする点にあります。共同不法行為が成立しやすくなります。

2つの学説の比較。従来の通説=各人の行為が709条の全要件(因果関係を含む)を備える+関連共同性/前段の意味=連帯して責任を負わせる効果。近時の有力説=共同行為と損害の間の因果関係+関連共同性/前段の意味=709条の要件の修正(個別の因果関係を不要とする)。看板60万・鉢植え40万の例の請求の違いを下段に。 図:2つの学説の比較

  • 従来の通説=各人の行為が709条の全要件(因果関係を含む)を備える+関連共同性/前段の意味=連帯して責任を負わせる効果
  • 近時の有力説=共同行為と損害の間の因果関係+関連共同性/前段の意味=709条の要件の修正(個別の因果関係を不要とする)
  • 看板60万・鉢植え40万の例の請求の違いを下段に

通説は、変わるのは効果だけ、と見ます。有力説は、要件のほうも変わる、と見ます。ここは、論文で論点になりうる場所です。答案では、従来の通説に立って、まず各人について709条の要件を確かめ、次に共同といえるかを論じる、という順で書けます。有力説に立つ書き方も、理由をつければ可能です。ここで、判例の立場も確かめます。最高裁は、各自の行為が客観的に関連し共同して違法に損害を加えた場合に、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは各自が賠償責任を負う、という言い方をしています。ただ、備えない場合にどうなるかまでは述べていません。この後に見る判決も、運転行為と医療行為が、それぞれ死亡という結果と因果関係がある、と判断していますが、それは事案の判断です。設例に当てはめます。Aの運転は、前方不注意という過失があり、Cの身体を侵害し、はねたことが死亡につながっています。Bの医療は、経過観察と指導を怠った過失があり、早く見つけて治療していれば高い確率で助かったので、死亡との関係もあります。どちらも、709条の要件を備えうるのです。2つの説で答えが分かれる場面も見ておきます。仮に、Bが適切に診ていても、Cが助かったかどうか分からなかった、としましょう。従来の通説では、Bが診ていればCは死ななかった、という事実的因果関係が立たないので、Bは、死亡については709条の責任を負わず、前段の共同不法行為者にもなりません。近時の有力説の考え方を当てはめるなら、AとBの共同行為と死亡の間に因果関係があれば足りるので、Bの行為だけを取り出した因果関係が立たなくても、Bにも前段を論じる余地が出ます。実際の設例のように、Bの因果関係も立つ場面では、どちらの説でも同じ答えです。

ただし、それだけでは、前段は成立しません。共同といえるか、という2つめの問いが残っています。

前段の要件その2 「共同」には共謀が要るのか

主観的関連共同説と客観的関連共同説の対比。主観的関連共同説=行為者相互の意思の連絡(共謀など)が必要。客観的関連共同説=意思の連絡は不要・客観的に関連していれば足りる(共謀がある場合ももちろん含む)。例=共謀して殴った型/示し合わせず同じ場所で同時に石を投げて店を壊した型。 図:主観的関連共同説と客観的関連共同説の対比

  • 主観的関連共同説=行為者相互の意思の連絡(共謀など)が必要
  • 客観的関連共同説=意思の連絡は不要・客観的に関連していれば足りる(共謀がある場合ももちろん含む)
  • 例=共謀して殴った型/示し合わせず同じ場所で同時に石を投げて店を壊した型

共同の意味です。2つの考え方があります。主観的関連共同説は、行為者の間に、意思の連絡、つまり共謀などが必要だ、と考えます。客観的関連共同説は、意思の連絡を求めず、行為どうしが客観的な面で結びついていれば足りる、と考えます。主観的関連共同説には、難点があります。示し合わせが無ければ共同と認めない、とすると、全額の連帯を求められる場面が狭くなり、被害者を十分に守れません。たまたま示し合わせていなかった、というだけで、全額の連帯を求められなくなるのです。客観的関連共同説でも、共謀があれば共同と認めてよいのは当然です。客観的関連共同説は、共謀がある場合に加えて、客観的に関連しているだけの場合も、共同不法行為の成立を認める見解です。例で見ます。共謀して殴った型は、主観的にも客観的にも関連しています。もう1つ、示し合わせてはいないけれど、同じ場所で同時に石を投げて、店を壊した型があります。客観的関連共同説なら、この型でも、共同関係を認めうる、という例です。客観的に関連している、というのは、たとえば、示し合わせが無くても、外から見て、行為が一体、つまりひとまとまりと見られる場合です。石を投げた例でいえば、2人の行為が、同じ機会に重なって、店が壊れたという1つの被害を生んでいます。比べてください。示し合わせていない2人のうち、1人が先月、ある店の窓を割り、もう1人が今月、同じ店の看板を壊した。これは、別々の機会の、別々の損害で、一体とは見られません。各自が、709条で、自分が壊した分を負うだけです。

では、一体と見られると、なぜ、自分が壊していない分まで、全額を連帯して負うのでしょう。外から見れば、一緒にやったのと変わらないからです。それなのに、示し合わせていたかどうかだけで、全額の連帯を求められるかが変わると、さっき見た主観的関連共同説の難点、つまり被害者の保護に欠ける、がそのまま出てしまいます。全額の連帯なら、被害者は、どちらからでも全額を取れます。先月と今月の例は、外から見ても別々の行為なので、そこまでは及ばず、709条で各自の分を負うだけです。問いです。共謀はしていない2人が、同じ場所で同時に石を投げて、店を壊しました。客観的関連共同説に立つと、共同関係を認めてよいでしょうか?認めうる、が答えです。ただし、示し合わせがなければ常に共同になる、という意味ではありません。どこまで関連していれば足りるかは、この節の終わりで確かめます。学説の整理では、判例は、客観的関連共同説の立場だとされています。意思の連絡までは要らず、客観的に関連していれば足りる、という立場です。次に見る最高裁の判決も、示し合わせていない運転と医療について、共同不法行為を認めています。ただし、客観的に関連していれば何でも足りる、というわけではありません。統一的な基準は、まだ見いだされていません。実務の大勢は、事案の類型ごとに、個別具体的に考えます。試験で問われる典型が、次に見る交通事故です。

交通事故と、交通事故と医療事故の競合

1個の損害に2つの行為が流れ込む図。A(運転行為)→Cの傷害、B(医療行為)→死亡の拡大、両方→死亡という不可分の一個の結果(相当因果関係)。見出し「1個の死亡に2つの行為」。 図:1個の損害に2つの行為が流れ込む図

  • A(運転行為)→Cの傷害、B(医療行為)→死亡の拡大、両方→死亡という不可分の一個の結果(相当因果関係)
  • 見出し「1個の死亡に2つの行為」

類型の1つめは、複数の加害者の過失が競合した、1個の交通事故です。たとえば、XとYの運転する車が衝突して、近くを歩いていたZが巻き込まれて亡くなった場合です。2台の運転が1つの衝突でぶつかり、その1つの事故から死亡が出ています。外から見て一体と見やすいので、通常は客観的関連共同性が認められる、と整理されています。類型の2つめが、今日の設例です。交通事故のあとに医療事故が時間を置かずに続いた場合です。この2つを一続きの出来事とみて、客観的関連共同性を認める、と整理されています。なぜ一続きと見てよいのかは、判決を見たあとで確かめます。ここで、設例のBの医療ミスは、Cの死亡と関係があるのか、考えてください。Aの運転がCに与えた傷害は、放置すれば死に至るものでした。Bが適切に経過観察をしていたら、Cは助かったでしょうか?答えは、高い確率で助かった、です。以前の因果関係の回で見た、高度の蓋然性、つまり通常の人が疑いを差し挟まない程度の確かさで、Bが診ていればCは助かった、と言えるのです。これが事実的因果関係です。判決は、そのうえで、どちらの行為も、死亡という結果について相当因果関係がある、と言います。その判決を確認します。事案は、交通事故で頭を負傷した被害者が、搬送先の病院で適切な経過観察を受けないまま帰宅して、その後亡くなったものです。

判例最判平13・3・13 民集55巻2号328頁(冒頭の設例は、この判決の事案をもとにした)

交通事故と医療事故の競合 原審の確定した事実関係によれば、本件交通事故により、Eは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの、事故後搬入された被上告人病院において、Eに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば、高度の蓋然性をもってEを救命できたということができるから、本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが、Eの死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。

被害者は、放置すれば死亡するに至る傷害を負いました。病院で適切な経過観察がされて、脳内出血が早く見つかり、治療されていれば、高い確率で救命できました。だから、交通事故と医療事故のどちらも、被害者の死亡という、不可分の一個の結果を招いて、この結果について相当因果関係がある。したがって、運転行為と医療行為は、719条の共同不法行為に当たる、と判断しています。決め手は、不可分の一個の結果と、相当因果関係です。1個の死亡に、2つの行為が流れ込んでいる、という点を押さえてください。不可分の一個の結果とは、Aのせいの部分とBのせいの部分に切り分けられない、1つの死亡のことです。不可分債務の回で見た不可分、つまり給付が性質上分けられない、とは別の話です。ここで分けられないのは、結果のほうです。

判決が言ったこと/言っていないこと。言ったこと=交通事故と医療事故が順次競合し、いずれも死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係がある→719条の共同不法行為=各自が全額について連帯して責任を負う。言っていないこと=「関連共同性」「客観的・主観的」という区別(学説による読み方)・医療ミスがあれば常に共同不法行為になるという一般論。

  • 判決が言ったこと/言っていないこと
  • 言ったこと=交通事故と医療事故が順次競合し、いずれも死亡という不可分の一個の結果を招来し、この結果について相当因果関係がある→719条の共同不法行為=各自が全額について連帯して責任を負う
  • 言っていないこと=「関連共同性」「客観的・主観的」という区別(学説による読み方)・医療ミスがあれば常に共同不法行為になるという一般論

この判決は、客観的関連共同、という言葉を使っているのですか。使っていません。判決は、関連共同性にも、客観的、主観的という区別にも、触れていません。ただ、この判決を、時間的に接着しているために客観的関連共同性を認めたものと読む見解が有力です。これは学説による読み方で、判決が言った形ではありません。そう読むと、筋が通ります。いま見たとおり、Cの死亡は切り分けられません。それなのに、示し合わせがないというだけで共同を否定すると、前の節で見た主観的関連共同説の難点、つまり被害者の保護に欠ける、がそのまま出てしまうのです。判決の事案には条件があります。運転行為による傷害は、放置すれば死に至るものでした。医療行為に過失がなければ、高い確率で救命できたという、不可分の一個の結果の事案です。医療ミスがあれば常に共同不法行為になる、という判決ではありません。

設例の答え。Aの運転行為(前方不注意)とBの医療行為(経過観察・指導の懈怠)→Cの死亡という不可分の一個の結果→どちらも相当因果関係あり→719条の共同不法行為に当たる(判例)=今日の主役の1項前段の場面→A・Bとも死亡による損害4000万円の全額について連帯して責任を負う。 図:設例の答え

設例の答えです。Aの運転行為とBの医療行為は、どちらも、Cの死亡という不可分の一個の結果について相当因果関係があります。判例によれば、719条の共同不法行為に当たります。そのため、AとBは、死亡による損害4000万円の全額について、連帯して責任を負います。

今日の地図(保存版)

まとめ。①719条の3類型=前段(この回)/後段・2項 ②前段の要件=従来の通説(各人に709条の要件が要る・前段の意味は連帯の効果)/近時の有力説(個別の因果関係は不要・前段の意味は709条の修正)③「共同」=判例は客観的関連共同説の立場とされる・認定は類型ごと・交通事故と医療事故が不可分の一個の結果を招いたなら719条(最判平13・3・13)。 図:まとめ

  • ①719条の3類型=前段(この回)/後段・2項
  • ②前段の要件=従来の通説(各人に709条の要件が要る・前段の意味は連帯の効果)/近時の有力説(個別の因果関係は不要・前段の意味は709条の修正)③「共同」=判例は客観的関連共同説の立場とされる・認定は類型ごと・交通事故と医療事故が不可分の一個の結果を招いたなら719条(最判平13・3・13)

まとめます。3本の柱です。1つめ、719条には3つの型があります。1項前段が狭義の共同不法行為、後段が加害者不明、2項が教唆と幇助です。主役は前段でした。2つめ、前段の要件です。従来の通説は、各人に、因果関係を含めた709条の要件が要り、前段の意味は連帯して責任を負わせる点にある、と考えます。近時の有力説は、個別の因果関係は不要で、前段の意味は709条の要件の修正にある、と考えます。ここは論文で論点になりうる所です。3つめ、共同の意味です。判例は、意思の連絡までは要らず、客観的に関連していれば足りる、という客観的関連共同説の立場とされます。認定は類型ごとです。交通事故と医療事故が重なって、不可分の一個の死亡という結果を招いたなら、719条の共同不法行為に当たる、と最高裁は判断しました。冒頭の問いの答えは、AもBも、死亡による損害の全額について、連帯して責任を負う、でした。

参照条文

  • 民法719条
  • 民法709条

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