民法ゼロから民法#315

共同不法行為の効果(連帯・求償・過失相殺)

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第6章 法定債権 #315/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

払った人はもう1人にいくら求められるか 共同不法行為の効果

設例の関係図。A(運転者)とB(運転者)が見通しの悪い交差点で衝突し、歩行者Cが巻き込まれて負傷。過失の割合はA6・B2・C2、Cの損害は1000万円。BがCに800万円を賠償した。問い=BはAにいくら求められるか。辺ラベルの語=衝突/負傷/賠償。 図:設例の関係図

  • A(運転者)とB(運転者)が見通しの悪い交差点で衝突し、歩行者Cが巻き込まれて負傷
  • 過失の割合はA6・B2・C2、Cの損害は1000万円
  • BがCに800万円を賠償した
  • 問い=BはAにいくら求められるか
  • 辺ラベルの語=衝突/負傷/賠償

今日はその効果を見ます。まず、設例を1つ置きます。見通しの悪い交差点で、Aの車とBの車が衝突しました。はずみで、横断歩道を渡っていた歩行者のCが巻き込まれて、けがをしました。Aは一時停止を怠って交差点に進入しました。Bは制限速度を超えて進入しました。Cは、歩行者用の信号が点滅に変わってから渡り始めていました。Cにも落ち度があります。事故の原因になった過失を全部まとめると、割合は、Aが6、Bが2、Cが2です。Cの損害は、全部で1000万円とします。この事故で、BがCに賠償をしました。払った額は800万円です。1000万円からCの過失の2割を引いた額で、なぜ800万円なのかは、この回の終わりの部分で説明します。

事故を起こしたのはAとBの2人ですよね。Bだけが払って終わりだと、Bが損をしませんか。そこが今日の問いです。BはAに、いくら求められるでしょうか。答えを先に言います。600万円です。どうして600万円になるのか、道のりを示します。

今日の地図。①各自が全額を連帯して負う(寄与の割合で案分して減らせない)→②払った人が取り戻す求償(負担部分は過失の割合)→③使用者が絡むときの求償の向き→④被害者の落ち度で額を減らす過失相殺(絶対的・相対的)。軸=被害者に対しては全額、加害者どうしでは割合で分ける。 図:今日の地図

  • ①各自が全額を連帯して負う(寄与の割合で案分して減らせない)→②払った人が取り戻す求償(負担部分は過失の割合)→③使用者が絡むときの求償の向き→④被害者の落ち度で額を減らす過失相殺(絶対的・相対的)
  • 軸=被害者に対しては全額、加害者どうしでは割合で分ける

1つめは、AもBもCに全額を払う責任がある、という連帯です。2つめは、払った人がもう1人から取り戻す、求償です。3つめは、会社の従業員が絡むときの、求償の向きです。4つめは、Cの落ち度で額を減らす過失相殺を、同じ数字で計算します。全体を貫く軸は1本です。被害者に対しては、各自が全額を負う。加害者どうしの間では、過失の割合で分け合う。この外と内の区別を持って進んでください。

効果その1 各自が全額を連帯して負う

全額連帯の図。C→A(800万円全額を請求)・C→B(800万円全額を請求)。Bが800万円を払うとCの債権は満たされ、AとBの債務はどちらも消える。辺ラベルの語=請求/弁済。 図:全額連帯の図

  • C→A(800万円全額を請求)・C→B(800万円全額を請求)
  • Bが800万円を払うとCの債権は満たされ、AとBの債務はどちらも消える
  • 辺ラベルの語=請求/弁済

1つめの効果です。719条を、もう一度読みます。

条文民法719条

民法第719条(共同不法行為者の責任) 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

今日の主役は、1項の前段です。前回見たとおり、前段が成り立つと、各自が連帯して賠償する責任を負います。設例では、CはAにも、Bにも、損害の全額を請求できます。1600万円を両方から取れる、とはなりません。連帯ですので、どちらかが払えば、その分だけ、もう一方の債務も小さくなります。Bが800万円を払えば、Cの債権は満たされて、Aの債務も消えます。二重には取れません。この債務には呼び名がありました。不真正連帯債務です。連帯債務に似ていて、弁済など債権者を満足させる事由は他の債務者にも効きますが、それ以外、特に免除は、当然には他の債務者に及ばない債務のことでした。改正の後は、連帯債務でも免除は相対効、つまり免除した相手との関係でだけ効くことになったので、この区別の意味は小さくなりました。

Bは、自分の過失は2割しかないので200万円だけ払います、とCに言えませんか。言えません。ここが今日の1つめの山場です。結果への寄与の割合で、賠償額を案分して減らすことは、許されません。案分とは、割合に応じて分けることです。寄与の割合とは、その人の行為が、結果にどれだけ効いたかという割合です。前回の判決が、この点を述べています。交通事故と医療事故が順次競合した事案です。順次競合とは、別々の加害者の別々の行為が、時間の順に重なって、一つの損害を生んだことです。前回の事案では、交通事故でけがをした被害者が、運ばれた病院で適切な経過観察を受けられず、亡くなりました。この事案で、原審は、寄与度を半分ずつとして案分していました。最高裁は、それを許されないとしました。

判例最判平13・3・13 民集55巻2号328頁

寄与の割合による案分は許されない したがって、本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから、各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから、被害者との関係においては、各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し、各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。けだし、共同不法行為によって被害者の被った損害は、各不法行為者の行為のいずれとの関係でも相当因果関係に立つものとして、各不法行為者はその全額を負担すべきものであり、各不法行為者が賠償すべき損害額を案分、限定することは連帯関係を免除することとなり、共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとしている民法719条の明文に反し、これにより被害者保護を図る同条の趣旨を没却することとなり、損害の負担について公平の理念に反することとなるからである。

読み解きます。まず、被害者の損害は、各人の行為のどれとの関係でも相当因果関係に立つので、各人がその全額を負担すべきだ、と言います。そのうえで、案分して各人の賠償額を限定すると、連帯関係を免除することになり、719条の明文と、被害者保護の趣旨に反する、と言います。この言葉は、被害者との関係について述べたものです。決め手は、被害者がどちらからでも全額を取れること、です。具体例で見ます。設例で、Aに支払う資力がなかったとします。寄与の割合で案分できるとして、仮に寄与の割合を過失と同じ6対2とすると、CがBから取れるのは、800万円の4分の1、200万円までです。Aの分は、取りっぱぐれます。案分できなければ、CはBから800万円全額を取れます。Aの資力がないという危険は、被害者のCでなく、加害者の側のBが負うことになります。

外と内の区別。外=被害者Cとの関係では、AもBも800万円全額(案分できない)。内=AとBの間では、過失の割合で分け合う(次の節の求償)。 図:外と内の区別

  • 外=被害者Cとの関係では、AもBも800万円全額(案分できない)
  • 内=AとBの間では、過失の割合で分け合う(次の節の求償)

Bの過失は2割で、Aの過失は6割ですよね。その割合は、どこにも使われないのですか。使われます。ただし、使われるのは内側です。Cに対しては割合で減らせません。AとBの間では、割合で分け合います。それを、このあとの求償の話で見ます。

効果その2 払った人は求償できる

求償の図。Bが800万円を弁済→Aの負担部分600万円を求償。内部の負担部分の帯(A600万円/B200万円)。辺ラベルの語=弁済/求償。 図:求償の図

  • Bが800万円を弁済→Aの負担部分600万円を求償
  • 内部の負担部分の帯(A600万円/B200万円)
  • 辺ラベルの語=弁済/求償

求償に入る前に、前の回を思い出してください。連帯債務者の1人が弁済したとき、他の債務者に、どう求められるのでしたか。何の割合でしたか?負担部分に応じて、求償できました。442条でした。求償は、他の人がかぶるはずの分を、代わりに払った人が取り戻す仕組みです。負担部分は、債務者どうしの内側で、最後に各自がかぶる分のことでした。共同不法行為者の賠償債務も、連帯債務に近い債務です。ですから、払った人は、他の加害者に求償できます。手がかりは、連帯債務の求償の条文です。442条1項を確認します。

条文民法442条1項

民法第442条 1 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

問題は、共同不法行為者の負担部分を、何で決めるかです。過失の割合で決めます。設例で見ます。Cが受け取れる800万円を、AとBの過失の割合の6対2、つまり3対1で分けます。Aの負担部分が600万円、Bの負担部分が200万円です。なお、加害者どうしの求償の一般的な言い方は、不真正連帯債務の回で見た判決が示していました。この設例のように過失どうしを比べられる事故では、負担部分は過失の割合で決まります。この後に見る、使用者責任が絡む最高裁の判決も、過失の割合で負担部分を定めています。ここで問いです。Bは800万円を払いました。Bの負担部分は200万円です。Bが負担部分を超えて払った額は、いくらでしょうか?

800万円から200万円を引いて、600万円です。200万円までは、Bが最後に自分でかぶる分です。超えた600万円は、Aがかぶるはずの分を、Bが代わりに払った額です。だから、そこを取り戻せます。Aの負担部分は600万円ですので、その限度で、BはAに600万円を求償できます。冒頭の答えです。442条の文言どおりに計算しても、同じです。800万円のうち、Aの負担部分の割合は4分の3です。800万円の4分の3は600万円です。判例の準則も、条文の文言も、この場面では結論が同じです。

負担部分を超えない弁済=Bが150万円だけ払った場合。442条1項の文言=超えるかどうかにかかわらず・Aの負担部分の割合4分の3=約112万円を求償できる/判例の準則=Bの負担部分200万円を超えていない=求償できない(超えることが求償の条件)。改正後どちらによるか=見解が分かれる(考え方①442条の文言を使う/考え方②準則は変わらない)。

  • 負担部分を超えない弁済=Bが150万円だけ払った場合
  • 442条1項の文言=超えるかどうかにかかわらず・Aの負担部分の割合4分の3=約112万円を求償できる/判例の準則=Bの負担部分200万円を超えていない=求償できない(超えることが求償の条件)
  • 改正後どちらによるか=見解が分かれる(考え方①442条の文言を使う/考え方②準則は変わらない)

違いが出うるのは、払った額が、自分の負担部分を超えない場合です。数字を変えます。Bが、Cに対して150万円だけを払ったとします。この150万円の分は、Aの債務も消えます。442条1項は、免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、と書いています。この文言どおりなら、150万円のうち、Aの負担部分の割合の4分の3、約112万円を、Aに求償できます。判例の準則は、共同不法行為者が、自己の負担部分を超えて賠償したとき、その超える部分について求償できる、というものでした。不真正連帯債務の回で見た準則です。この準則の言い方に当てはめると、払った150万円は、Bの負担部分の200万円を超えていません。ですから、準則のもとでは、求償できません。判例の準則は、負担部分を超えて払うことを、求償の条件とするものと理解されてきました。改正の後に、この判例の準則が変わったのか、不真正連帯債務の求償にも442条が及ぶのかは、学説上、見解が分かれています。どちらの考え方にも理由があるからです。1つは、改正で連帯債務と不真正連帯債務の区別の意味が小さくなったのだから、共同不法行為者どうしの求償にも442条の文言を使う、という考え方です。もう1つは、負担部分までは自分が最後にかぶる分で、他の人の分を代わりに払っていないのだから、超える部分だけを求められる、という準則は変わらない、という考え方です。ここでは優劣を決めず、3点を並べて押さえてください。442条の文言、判例の準則、そして見解が分かれていること、です。

ここは、論文で論点になりうる所です。

効果その3 使用者責任が絡むときの求償

設例の広げ方。Bは運送会社P社の配達中の従業員。Aも、場合によっては会社Q社の業務中の従業員。Bを指揮監督する使用者が、P社のほかにもう1社Z社の場合もある。数字は変えない(過失の割合A6・B2、800万円、Aの負担部分600万円、Bの負担部分200万円)。 図:設例の広げ方

  • Bは運送会社P社の配達中の従業員
  • Aも、場合によっては会社Q社の業務中の従業員
  • Bを指揮監督する使用者が、P社のほかにもう1社Z社の場合もある
  • 数字は変えない(過失の割合A6・B2、800万円、Aの負担部分600万円、Bの負担部分200万円)

ここで設例を広げます。Bは、運送会社P社の従業員で、配達の途中でした。使用者責任は、前の回で見ました。そこで残しておいた、共同不法行為と使用者責任が重なるときの求償を、ここで見ます。使用者のP社は、Bの不法行為について、715条で、Bと同じ内容の責任を負います。ですから、Cから見ると、請求先がAとB、そしてP社まで増えます。数字は変えません。過失の割合はAが6、Bが2、Cへの賠償は800万円、Aの負担部分が600万円、Bの負担部分が200万円です。誰が払うかで、求償の向きが変わります。4つの場面を、順に見ます。

図1 使用者が賠償したとき。P社(Bの使用者)がCに800万円を賠償→P社はAに、Aの負担部分600万円を求償。辺ラベルの語=賠償/求償。 図:図1 使用者が賠償したとき

  • P社(Bの使用者)がCに800万円を賠償→P社はAに、Aの負担部分600万円を求償
  • 辺ラベルの語=賠償/求償

1つめは、P社がCに800万円を払った場面です。P社は、Aに求償できるでしょうか。カードの中の記号は、判決の事件のものです。設例のABCとは別です。事案は、タクシー会社の運転手の車と、上告人の車が衝突して、乗客がけがをしたものです。会社が乗客に賠償しました。

判例最判昭41・11・18 民集20巻9号1886頁

使用者が賠償したときの、他の加害者への求償 右事実関係のもとにおいては、被上告会社と上告人及び被上告人Bらは、Dに対して、各自、Dが蒙つた全損害を賠賞する義務を負うものというべきであり、また、右債務の弁済をした被上告会社は、上告人に対し、上告人と被上告人Bとの過失の割合にしたがつて定められるべき上告人の負担部分について求償権を行使することができるものと解するのが相当である。

設例に置き換えます。P社は、AとBの過失の割合で定められる、Aの負担部分について、Aに求償できます。Aの負担部分は600万円です。P社は、Bの側に立っているので、Bの負担部分の200万円は、自分たちでかぶる分です。P社がAに求められるのは、Aがかぶるはずの600万円を、P社が代わりに払ったからです。

図2 第三者が先に賠償したとき。Aが先にCに800万円を賠償。Aの負担部分600万円を超える200万円を、Bの負担部分についてP社に求償。辺ラベルの語=賠償/求償。 図:図2 第三者が先に賠償したとき

  • Aが先にCに800万円を賠償
  • Aの負担部分600万円を超える200万円を、Bの負担部分についてP社に求償
  • 辺ラベルの語=賠償/求償

2つめは、向きが逆の場面です。先にAがCに800万円を払いました。Aの負担部分は600万円ですので、Aは、それを超えて200万円を多く払いました。この200万円を、誰に求められるでしょうか。そこで使用者が出てきます。最高裁は、Aが、被用者のBの負担部分について、使用者のP社に求償できる、と判断しました。

判例最判昭63・7・1 民集42巻6号451頁

第三者が先に賠償したとき、使用者への求償 被用者がその使用者の事業の執行につき第三者との共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、右第三者が自己と被用者との過失割合に従つて定められるべき自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、右第三者は、被用者の負担部分について使用者に対し求償することができるものと解するのが相当である。

読み解きます。Aは、自分と被用者のBとの過失の割合で定まる自分の負担部分、600万円を超えて払っています。超えた200万円は、Bの負担部分の範囲です。その分を、P社に求められます。なぜ、被用者でなく使用者に求められるのか。判決の理由づけは、使用者責任が、使用者が被用者の活動で利益をあげる関係に着目した規定だ、というものです。使用者と被用者は一体をなすとみて、第三者との関係でも、使用者は被用者と同じ内容の責任を負う、と言います。決め手は、一体という見方です。Bの責任はP社の責任でもあります。ですから、Aは、Bの負担部分を、P社に求められるのです。

図3 使用者どうしの求償。AもQ社の従業員で業務中。P社が800万円を賠償。P社の負担部分200万円(Bの過失の割合)を超える部分につき、Aの過失の割合で定まる負担部分600万円の限度で、Q社に求償。辺ラベルの語=賠償/求償。 図:図3 使用者どうしの求償

  • AもQ社の従業員で業務中
  • P社が800万円を賠償
  • P社の負担部分200万円(Bの過失の割合)を超える部分につき、Aの過失の割合で定まる負担部分600万円の限度で、Q社に求償
  • 辺ラベルの語=賠償/求償

3つめは、使用者どうしの求償です。Aも、会社Q社の従業員で、業務中だったとします。AとBの両方に、使用者がいます。P社が、Cに800万円を払いました。P社の負担部分は、Bの過失の割合に従う200万円です。それを超えた部分を、Q社に求められます。

判例最判平3・10・25 民集45巻7号1173頁

一方の加害者の使用者どうしの求償 複数の加害者の共同不法行為につき、各加害者を指揮監督する使用者がそれぞれ損害賠償責任を負う場合においては、一方の加害者の使用者と他方の加害者の使用者との間の責任の内部的な分担の公平を図るため、求償が認められるべきであるが、その求償の前提となる各使用者の責任の割合は、それぞれが指揮監督する各加害者の過失割合に従って定めるべきものであって、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、右の全額を求償することができるものと解するのが相当である。

設例では、こうなります。P社が払った800万円のうち、P社の負担部分は、Bの過失の割合に従う200万円です。超える600万円を、Q社に求められます。Q社の負担部分は、Aの過失の割合に従う600万円です。その限度で、全額を求償できます。判決が求償を認める理由は、使用者どうしの内部の分担の公平です。各使用者は自分が指揮監督する加害者の分を負うので、その加害者の過失の割合が、そのまま負担部分になります。

図4 一方の加害者に使用者が複数。Bの使用者がP社とZ社。Bの負担部分200万円を、責任の割合で分ける(設例では仮に半々で各100万円)。責任の割合の考慮要素=加害行為の態様・加害行為と各使用者の事業の執行との関連性の程度・加害者に対する各使用者の指揮監督の強弱など。辺ラベルの語=賠償/求償。 図:図4 一方の加害者に使用者が複数

  • Bの使用者がP社とZ社
  • Bの負担部分200万円を、責任の割合で分ける(設例では仮に半々で各100万円)
  • 責任の割合の考慮要素=加害行為の態様・加害行為と各使用者の事業の執行との関連性の程度・加害者に対する各使用者の指揮監督の強弱など
  • 辺ラベルの語=賠償/求償

4つめも、同じ判決の続きです。Bを指揮監督する使用者が、P社のほかに、もう1社のZ社もいる場合です。この場合、P社とZ社の間で、Bの負担部分の200万円を、どう分けるか。決めるのは、責任の割合です。加害者の過失の割合とは別のものです。過失の割合は、事故の場面で、Bにどれだけ落ち度があったかの割合です。責任の割合は、そのBの分を、P社とZ社のどちらが多くかぶるべきか、という使用者どうしの割合です。なお、不真正連帯債務の回の判決は、加害者どうしの割合を責任割合と呼んでいました。今日の設例でいえば過失の割合の側で、使用者どうしの責任の割合とは別です。

判例最判平3・10・25 民集45巻7号1173頁

一方の加害者に使用者が複数いるとき また、一方の加害者を指揮監督する複数の使用者がそれぞれ損害賠償責任を負う場合においても、各使用者間の責任の内部的な分担の公平を図るため、求償が認められるべきであるが、その求償の前提となる各使用者の責任の割合は、被用者である加害者の加害行為の態様及びこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度、加害者に対する各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定めるべきものであって、使用者の一方は、当該加害者の前記過失割合に従って定められる負担部分のうち、右の責任の割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対して右の責任の割合に従って定められる負担部分の限度で求償することができるものと解するのが相当である。

責任の割合の考慮要素は、加害者の加害行為の態様、その加害行為と各使用者の事業の執行との関連性の程度、加害者に対する各使用者の指揮監督の強弱などです。たとえば、BがふだんはP社で働き、その日だけZ社に頼まれて、Z社の指示で荷物を運んでいたとします。事故はZ社の事業とのつながりが強く、指揮監督もZ社のほうが強いので、Z社の割合が大きくなりえます。責任の割合は、事案ごとに決まります。判決は、具体的な割合の数字を示していません。設例では、そうした事情を決めずに、仮に半々として、P社が100万円、Z社が100万円とおきます。するとP社は、Aから600万円、Z社から100万円を取り戻せます。最後にP社に残るのは、100万円です。

使用者が被用者にいくら求められるかは、使用者と被用者の内部の関係で決まる話で、前に見た求償の制限です。使用者は、被用者に全額を求められるとは限らず、信義則上、相当と認められる限度までしか求められない、という話でした。使用者どうしの責任の割合を決めるときには、それを持ち込みません。なお、この判決は、事故を起こした車の運行供用者、つまり自分のために車を走らせる立場の人が複数いる場合も、同じように考えられるとしています。運行供用者の中身は、別の回で扱います。

使用者が絡む求償の4方向。使用者→第三者(P社→A 600万円)/第三者→使用者(A→P社 200万円)/使用者→他方の加害者の使用者(P社→Q社 600万円)/使用者→同じ加害者の他の使用者(P社→Z社 100万円)。負担部分は、まず加害者どうしの過失の割合、次に使用者どうしの責任の割合の2段で決める。 図:使用者が絡む求償の4方向

  • 使用者→第三者(P社→A 600万円)/第三者→使用者(A→P社 200万円)/使用者→他方の加害者の使用者(P社→Q社 600万円)/使用者→同じ加害者の他の使用者(P社→Z社 100万円)
  • 負担部分は、まず加害者どうしの過失の割合、次に使用者どうしの責任の割合の2段で決める

4つの場面を、1枚にまとめます。使用者が払えば、第三者に求めます。第三者が先に払えば、使用者に求めます。使用者どうしなら、他方の使用者に求めます。どの場面でも、負担部分は2段で決めます。まず、加害者どうしの過失の割合です。使用者が複数いるときは、次に、使用者どうしの責任の割合です。

効果その4 過失相殺は絶対的か相対的か

722条2項。被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。額を定めるだけで、責任そのものはなくせない。 図:722条2項

  • 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる
  • 額を定めるだけで、責任そのものはなくせない

最後の効果です。その前に、前の回を思い出してください。被害者に落ち度があるとき、722条2項で減らせるのは何でしたか。責任そのものは、なくせるでしょうか?減らせるのは、賠償の額だけです。責任そのものは、なくせません。条文を確認します。

条文民法722条2項

民法第722条第2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

共同不法行為でも、Cに過失があれば、この規定で額が減ります。問題は、どう減らすかです。2通りの考え方があります。絶対的過失相殺は、加害者全員の過失を合わせて、被害者の過失と比べて、1回で相殺します。相対的過失相殺は、加害者ごとに、その加害者と被害者の間の過失の割合で、別々に相殺します。同じ数字で、計算します。まず問いです。Cの過失は2割です。1000万円の損害から2割を引いたら、Cがもらえるのは、いくらでしょうか?1000万円の8割で、800万円です。これが絶対的過失相殺です。AもBも、800万円全額について連帯します。Cは、どちらからも800万円を取れます。この800万円を、内側で、AとBが6対2で分けます。Aが600万円、Bが200万円です。さっきの求償の数字は、ここから来ていました。

絶対的と相対的の計算表。損害1000万円・過失A6・B2・C2。絶対的=1000×(1−2/10)=800万円→AもBも800万円全額を連帯。相対的=CのAに対する請求1000×6/8=750万円・CのBに対する請求1000×2/4=500万円→重なる500万円の範囲でだけ連帯、A単独の責任が250万円残る→Cが取れる総額は最大750万円(絶対的より50万円少ない)。Aに資力がなければBから取れるのは、絶対的なら800万円・相対的なら500万円。 図:絶対的と相対的の計算表

  • 損害1000万円・過失A6・B2・C2
  • 絶対的=1000×(1−2/10)=800万円→AもBも800万円全額を連帯
  • 相対的=CのAに対する請求1000×6/8=750万円・CのBに対する請求1000×2/4=500万円→重なる500万円の範囲でだけ連帯、A単独の責任が250万円残る→Cが取れる総額は最大750万円(絶対的より50万円少ない)
  • Aに資力がなければBから取れるのは、絶対的なら800万円・相対的なら500万円

では、相対的にやったら、どうなるでしょうか。AとCの間だけを見ます。AとCの過失の割合は6対2です。Cの過失は、8分の2です。損害の1000万円の8分の6で、Cは、Aに750万円を請求できます。BとCの間だけを見ます。BとCの過失の割合は2対2です。Cの過失は、半分です。損害の1000万円の半分で、Cは、Bに500万円を請求できます。AとBが連帯するのは、かさなる500万円の範囲だけです。Aだけが負う責任が、250万円残ります。Cが取れる総額は、最大でも750万円です。絶対的の800万円より、50万円少ないです。差は、Aに資力がないときに大きく出ます。絶対的なら、CはBから800万円を取れます。相対的なら、Bから取れるのは500万円までです。被害者の保護に、差が出るのです。

判決が、場面を分けて述べています。2つあります。まず、設例のような、一つの交通事故の場面です。

判例最判平15・7・11 民集57巻7号815頁

一つの交通事故では絶対的過失相殺 複数の加害者の過失及び被害者の過失が競合する一つの交通事故において、その交通事故の原因となったすべての過失の割合(以下「絶対的過失割合」という。)を認定することができるときには、絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について、加害者らは連帯して共同不法行為に基づく賠償責任を負うものと解すべきである。これに反し、各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺をすることは、被害者が共同不法行為者のいずれからも全額の損害賠償を受けられるとすることによって被害者保護を図ろうとする民法719条の趣旨に反することになる。

判決が言うのは、一つの交通事故で、原因となったすべての過失の割合、つまり絶対的過失割合を認定できるときです。そのときは、絶対的過失割合に基づいて相殺した額について、加害者らが連帯します。決め手は、719条の趣旨です。被害者が、どの加害者からも全額を受けられるようにする。相対的にやると、さっき見たとおり、Bから取れる額が減って、その趣旨に反します。設例は、一つの衝突事故で、全員の過失を合算して認定できます。この判決の型です。だから絶対的で、800万円になります。もう1つは、前回見た、交通事故と医療事故の事案です。ここでは、相対的過失相殺が出てきます。

判例最判平13・3・13 民集55巻2号328頁

順次競合した共同不法行為では相対的過失相殺 本件は、本件交通事故と本件医療事故という加害者及び侵害行為を異にする二つの不法行為が順次競合した共同不法行為であり、各不法行為については加害者及び被害者の過失の内容も別異の性質を有するものである。ところで、過失相殺は不法行為により生じた損害について加害者と被害者との間においてそれぞれの過失の割合を基準にして相対的な負担の公平を図る制度であるから、本件のような共同不法行為においても、過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の過失の割合に応じてすべきものであり、他の不法行為者と被害者との間における過失の割合をしん酌して過失相殺をすることは許されない。

加害者も行為も別々の、2つの不法行為が、順次に重なった事案です。事案では、被害者側の過失が、交通事故では3割、医療事故では1割でした。過失の内容が、行為ごとに別の性質を持ちます。そのとき、過失相殺は、各不法行為の加害者と被害者の間の過失の割合に応じてします。他の不法行為者と被害者の間の過失の割合を、考慮してはいけません。決め手は、過失相殺が、加害者と被害者の間の過失の割合で、負担の公平を図る制度だ、という点です。判決は、過失の内容も行為ごとに別の性質を持つ、とも言っています。たとえば、交通事故で比べる落ち度は道路の上での振る舞い、医療事故で比べる落ち度は治療をめぐる振る舞いで、場面も相手も違います。だから、行為ごとに、その加害者と被害者の間で比べます。整理します。設例のように、一つの事故で絶対的過失割合を認定できるときは、絶対的です。前回見た事案のように、別々の不法行為が順次に重なったときは、相対的です。ここは、論文で論点になりうる所です。どちらの場面かを事実から見分けて、理由と一緒に書きます。これで、冒頭の答えがつながりました。Cが払ってもらえる額は、絶対的過失相殺で800万円。内側の負担部分は、Aが600万円、Bが200万円。だから、800万円を払ったBは、Aに600万円を求償できます。

今日の地図(保存版)

まとめ。①全額の連帯=被害者に対しては各自が全額・寄与の割合で案分して減らせない/②求償=負担部分は過失の割合・超えて払えば確実に求められる(超えない場合は442条の文言・判例の準則・見解が分かれる)/③使用者が絡む求償=使用者→第三者・第三者→使用者・使用者どうし・同じ加害者の使用者どうし(2段で負担部分を決める)/④過失相殺=一つの事故で絶対的過失割合を認定できれば絶対的・順次競合は相対的。設例の答え=BはAに600万円を求償できる。 図:まとめ

  • ①全額の連帯=被害者に対しては各自が全額・寄与の割合で案分して減らせない
  • ②求償=負担部分は過失の割合・超えて払えば確実に求められる(超えない場合は442条の文言・判例の準則・見解が分かれる)
  • ③使用者が絡む求償=使用者→第三者・第三者→使用者・使用者どうし・同じ加害者の使用者どうし(2段で負担部分を決める)
  • ④過失相殺=一つの事故で絶対的過失割合を認定できれば絶対的・順次競合は相対的
  • 設例の答え=BはAに600万円を求償できる

まとめます。効果は4つでした。1つめ、被害者に対しては、各自が全額を連帯して負います。寄与の割合で案分して減らすことは、許されません。2つめ、払った人は、他の加害者に求償できます。負担部分は、過失の割合で決めます。自分の負担部分を超えて払えば、その超える部分は確実に求められます。超えない場合は、条文の文言、判例の準則、見解が分かれていること、の3点を押さえます。3つめ、使用者責任が絡むと、求償の向きが4つに分かれます。使用者が第三者に、第三者が使用者に、使用者どうしで、そして同じ加害者の使用者の間で、です。負担部分は、加害者の過失の割合、次に使用者の責任の割合、の2段で決めます。4つめ、過失相殺です。一つの事故で絶対的過失割合を認定できるときは絶対的、順次競合の事案では相対的でした。冒頭の問いの答えは、BはAに600万円を求償できる、でした。被害者には全額、加害者どうしでは割合で、という軸が、数字になった形です。

参照条文

  • 民法719条
  • 民法442条1項
  • 民法722条2項

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