民法ゼロから民法#316

加害者不明の共同不法行為・製造物責任法

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第6章 法定債権 #316/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

誰の石が当たったのか分からない 加害者不明の入口

設例の関係図。夕方の通りで、D・E・Fの3人が別々の方向から同じ時刻に石を投げ、石の1つが通行人Cの頭に当たって負傷(損害100万円)。どの石が当たったのかは誰にも分からない。辺ラベルの語=投石/負傷。問い=CはD・E・Fの誰に請求できるか。 図:設例の関係図

  • 夕方の通りで、D・E・Fの3人が別々の方向から同じ時刻に石を投げ、石の1つが通行人Cの頭に当たって負傷(損害100万円)
  • どの石が当たったのかは誰にも分からない
  • 辺ラベルの語=投石/負傷
  • 問い=CはD・E・Fの誰に請求できるか

その前に、前回の結論を思い出します。まず、共同不法行為者は、各自が損害の全額を連帯して負い、寄与の割合では減らせません。次に、払った人は、負担部分を超えた分を求償できます。前回の設例では、BはAに600万円を求償できました。ただし前回は、誰の行為がどう損害を生んだのかが、分かっている場面でした。今日は、それが分からない場面から始めます。夕方の通りで、D、E、Fの3人が、別々の方向から、同じ時刻に石を投げました。石の1つが、通行人のCの頭に当たり、Cはけがをしました。損害は100万円とします。ところが、どの石が当たったのかは、誰にも分かりません。

普通に考えると、誰にも請求できないことになりそうです。709条で請求するには、その人の行為が損害を生んだことを、被害者が証明しなければなりません。Cには、Dの石が当たったことも、Eの石が当たったことも、証明できません。でも、それでは被害者が泣き寝入りになります。民法は、この場面に手当てを置いています。答えを先に言います。D、E、Fの3人が、連帯して全額を負います。ただし、自分の石は当たっていないと証明できた人は、免れます。

今日の地図。①加害者不明の共同不法行為(719条1項後段)→②実行しなかった人の責任(719条2項・教唆と幇助)→③欠陥のある製品の製造物責任法→④自動車事故の自賠法の地図→⑤第6章の締め(法定債権3制度の引き直し)と6問の弁別。軸=被害者が証明しなければならない壁を、どこで、どう低くしているか。 図:今日の地図

  • ①加害者不明の共同不法行為(719条1項後段)→②実行しなかった人の責任(719条2項・教唆と幇助)→③欠陥のある製品の製造物責任法→④自動車事故の自賠法の地図→⑤第6章の締め(法定債権3制度の引き直し)と6問の弁別
  • 軸=被害者が証明しなければならない壁を、どこで、どう低くしているか

今日の道のりです。1つめは、今の石の例の、加害者不明の共同不法行為です。2つめは、自分では実行しなかった人の責任で、教唆と幇助です。3つめは、欠陥のある製品で事故が起きたときの、製造物責任法です。4つめは、自動車事故の自賠法の地図です。最後に、第6章の全体を引き直して、6問で確かめます。貫く軸は1本です。被害者が証明しなければならない壁を、どこで、どう低くしているか。石の例では、因果関係の証明です。製造物責任法では、過失の証明です。壁の動きを見てください。

誰の石か分からないとき 719条1項後段

719条の3類型の地図(前々回の呼び戻し)。1項前段=狭義の共同不法行為(誰がどう加えたか分かっている)/1項後段=加害者不明の共同不法行為【今日の主役】/2項=教唆・幇助【今日の主役】。 図:719条の3類型の地図(前々回の呼び戻し)

  • 1項前段=狭義の共同不法行為(誰がどう加えたか分かっている)
  • 1項後段=加害者不明の共同不法行為【今日の主役】
  • 2項=教唆・幇助【今日の主役】。

前々回に見た、719条の3つの型を思い出します。1項の前段が、狭義の共同不法行為です。1項の後段が、加害者不明の共同不法行為です。2項が、教唆と幇助です。今日の主役は、後段と2項です。条文を、もう一度読みます。

条文民法719条

民法第719条(共同不法行為者の責任) 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

後段の、同様とする、とは、各自が連帯して賠償する責任を負う、ということです。石の例で見ます。3人とも、石を1つずつ投げました。そのうちの1つが、Cのけがを全部引き起こしました。ただ、どの石かが分かりません。いくつかの行為のうちどれか1つが原因なのに、どれかが分からない。この状態を、択一的競合と呼びます。択一的とは、どれか1つ、という意味です。条文は、共同行為者のうち、と書いています。ですから、共同といえることが前提です。設例の3人は、同じ場所で、同じ時に石を投げました。前々回に見た、客観的に関連している型です。ここは共同にあたるとして進めます。

違いは、因果関係の証明です。因果関係とは、その行為がなければその損害は起きなかった、という結びつきでした。前段で、従来の通説に立つと、各人が、因果関係も含めて709条の要件を備える必要があります。被害者は、各人の行為と損害の結びつきを、一人ずつ示すことになります。石の例では、一人ずつ示すことができません。そこで後段は、この壁を取り除きます。Cは、3人それぞれの石とけがの結びつきを、証明しなくてよいのです。

石投げの図。Dの石・Eの石・Fの石のうち1つがCに当たる。当たった石は不明。Cが示すこと=3人がそれぞれ、損害を単独で生じさせ得る石を投げたこと。示さなくてよいこと=どの石が当たったか。辺ラベルの語=Dの石か/Eの石か/Fの石か。 図:石投げの図

  • Dの石・Eの石・Fの石のうち1つがCに当たる
  • 当たった石は不明
  • Cが示すこと=3人がそれぞれ、損害を単独で生じさせ得る石を投げたこと
  • 示さなくてよいこと=どの石が当たったか
  • 辺ラベルの語=Dの石か/Eの石か/Fの石か

この後段の趣旨を、最高裁が述べています。建設現場で石綿を含む建材を扱って病気になった人たちが、建材メーカーらに賠償を求めた事案で、後段についての考え方を示した判決です。この判決は、後段について3つのことを言っています。後段の趣旨、後段が使える条件、そして、後段そのものではない場面での扱いです。順に見ます。

判例最判令3・5・17 民集75巻5号1359頁

後段の趣旨 同項後段は、複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行い、そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明である場合に、被害者の保護を図るため、公益的観点から、因果関係の立証責任を転換して、上記の行為を行った者らが自らの行為と損害との間に因果関係が存在しないことを立証しない限り、上記の者らに連帯して損害の全部について賠償責任を負わせる趣旨の規定であると解される。

読み解きます。惹起とは、引き起こす、という意味です。それのみで惹起し得る行為とは、その行為だけで損害を引き起こすことができる行為です。設例なら、石1つでCのけがを起こせる、ということです。そういう行為を複数の人がして、誰の行為で損害が生じたのか分からないとき、因果関係の立証責任を転換する、と言います。立証責任とは、証明できなかったときに、その不利益を負うことです。ふつう、因果関係の立証責任は被害者にあります。後段は、これを行為者の側に移すのです。移された結果が、判決の後半です。行為者らは、自らの行為と損害との間に因果関係が存在しないことを立証しない限り、連帯して損害の全部について責任を負います。この仕組みを、因果関係が推定される、と言い表します。推定とは、ひとまずそうだと扱う、という意味です。決め手は、被害者の保護です。誰の行為か分からない、という加害者側の事情のせいで、被害者が救われなくなるのは不当だからです。

出口があります。推定にとどまるので、覆せるのです。設例で、Eが、自分の石は反対側の看板に当たった、と証明できたとします。看板に当たった跡が、石と一緒に見つかったような場合です。因果関係がないと証明できたので、Eは免れます。DとFは、連帯して全額を負います。比べてください。Eが、自分の石はそれたと思う、としか言えず、看板に当たった証拠も何も無いなら、証明できたとはいえません。疑いを持たせるだけでは足りず、因果関係がないことを証明する必要があります。ここで問いです。Eが、自分の石は看板に当たった、と証明できました。Eは、Cに対して責任を負うでしょうか?

負わないと思います。因果関係の推定を、覆したからです。もう1つ、この判決は、後段が使える条件も述べています。

判例最判令3・5・17 民集75巻5号1359頁

後段の適用の要件 被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは、民法719条1項後段の適用の要件であると解するのが相当である。

設例で見ます。Cが特定したのは、D、E、Fの3人でした。ところが実は、近くにHもいて、別に石を投げていて、その石でも、けがは起こり得たとします。特定された3人のほかに、それのみで損害を起こし得る行為をした者がいるなら、後段は使えません。3人の中に必ず原因がある、という枠が、後段の前提だからです。

前段と後段の比較。因果関係の証明=前段(従来の通説に立つと)は各人の行為と損害の因果関係が必要/後段は不要(推定)。免れる方法=前段は被害者が因果関係を証明できなければ責任なし/後段は因果関係が存在しないことを行為者が証明。適用の枠=後段は特定された者のほかに、それのみで損害を惹起し得る行為をした者がいないこと。効果=どちらも各自が連帯して損害の全部。 図:前段と後段の比較

  • 因果関係の証明=前段(従来の通説に立つと)は各人の行為と損害の因果関係が必要/後段は不要(推定)
  • 免れる方法=前段は被害者が因果関係を証明できなければ責任なし/後段は因果関係が存在しないことを行為者が証明
  • 適用の枠=後段は特定された者のほかに、それのみで損害を惹起し得る行為をした者がいないこと
  • 効果=どちらも各自が連帯して損害の全部

前段と後段を、1枚にします。因果関係の証明は、従来の通説に立つと、前段は必要で、後段は不要です。後段は、因果関係が推定されます。免れる方法は、前段では、因果関係を証明するのが被害者なので、その証明が足りなければ、責任は生じません。後段では、因果関係が存在しないことを、行為者の側が証明します。効果は、どちらも、各自が連帯して損害の全部です。もう1つ、この判決には、押さえておく所があります。判決の事案は、後段そのものではありませんでした。

場面の違い。前回の判決(前段・交通事故と医療事故)=各自が全額を連帯・寄与の割合で案分は許されない。今回の判決(後段の類推適用・建設アスベスト)=問題のボード3種(石綿含有建材)を直接取り扱ったことによるばく露量は全体の3分の1程度などの事情→寄与度に応じた範囲(各損害の3分の1)で連帯。注意=後段一般が寄与度で減責されると判決が述べたわけではない。 図:場面の違い

  • 前回の判決(前段・交通事故と医療事故)=各自が全額を連帯・寄与の割合で案分は許されない
  • 今回の判決(後段の類推適用・建設アスベスト)=問題のボード3種(石綿含有建材)を直接取り扱ったことによるばく露量は全体の3分の1程度などの事情→寄与度に応じた範囲(各損害の3分の1)で連帯
  • 注意=後段一般が寄与度で減責されると判決が述べたわけではない

この事案では、被災者が石綿の粉じんにさらされた量の全体のうち、問題のボード3種類の建材を、自分で直接取り扱ったことによる分は、3分の1程度でした。しかも、被告のメーカーらが、発症に個別にどの程度の影響を与えたのかは、明らかではありませんでした。だから、後段そのものの場面ではないのです。判決は、後段が適用される場合との均衡から、後段を類推適用しました。類推適用とは、条文そのものの場面ではないが、似た場面に同じ考え方を当てはめることです。そして、因果関係の立証責任が転換されると解したうえで、被告らは、その行為の損害の発生に対する寄与度に応じた範囲、各損害の3分の1について、連帯して責任を負う、としました。ここは、前回の判決との違いに注意してください。前回の判決は、前段の事案で、寄与の割合では案分できず、全額を連帯して負う、としていました。今回は、後段の類推適用の事案で、寄与度の範囲の連帯です。違いは、損害のどこまでとつながっていたかです。前回の事案では、損害は、各人の行為のどれとの関係でも相当因果関係に立っていたので、各人が全額でした。今回は、ボード3種を取り扱ったことによるばく露量が全体の一部にとどまり、被告らの個別の影響も明らかでなかったので、責任も、寄与度に応じた範囲にとどまりました。後段は一般に寄与度で減らせる、と判決が述べたわけではありません。

実行しなかった人の責任 719条2項

719条2項。行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。教唆=そそのかした者/幇助=手助けした者。設例=KがLに店のガラスを割るよう持ちかけた(教唆)、Mが見張りをした(幇助)。 図:719条2項

  • 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する
  • 教唆=そそのかした者/幇助=手助けした者
  • 設例=KがLに店のガラスを割るよう持ちかけた(教唆)、Mが見張りをした(幇助)

次は2項です。条文は、行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する、です。教唆とは、そそのかして実行を決意させることです。幇助とは、手助けすることです。設例を置きます。Kが、Lに、あの店のガラスを割ってこい、と持ちかけました。Lは、ガラスを割りました。Mは、Lの頼みで、近くで見張りをしました。

教唆と幇助の関係図。Kが、実行者Lに持ちかける(教唆)。Mが、Lの実行の際に見張りをする(幇助)。Lが店のガラスを割る。損害=店の損害。K・L・Mは連帯。辺ラベルの語=持ちかけ/見張り/実行。 図:教唆と幇助の関係図

  • Kが、実行者Lに持ちかける(教唆)
  • Mが、Lの実行の際に見張りをする(幇助)
  • Lが店のガラスを割る
  • 損害=店の損害
  • K・L・Mは連帯
  • 辺ラベルの語=持ちかけ/見張り/実行

ガラスを割ったのは、Lだけです。Kは持ちかけただけ、Mは見張っただけです。ですが2項により、KとMは、共同行為者とみなされます。そして1項が適用されて、KもMも、Lと連帯して、店の損害の全額を賠償する責任を負います。自分では割っていなくても、Kは割る決意をさせ、Mは割るのを手助けしました。損害を生んだ行為に加わった以上、実行したLと同じに扱うのが公平だ、という考え方です。みなす、というのは、推定と同じですか。違います。推定は、覆せました。石の例のEが、因果関係がないと証明して免れたようにです。みなす、は、反証を許さず、そう扱うことです。Kが、自分は実行していない、と言っても、2項で共同行為者とみなされることは変わりません。比べるために、条文に当たらない例も見ます。KとLが話しているのを、たまたま近くで聞いていただけの人は、そそのかしても、手助けもしていません。この人は、2項には当たりません。なお、2項は、確認的な規定にすぎない、という見解もあります。確認的な規定とは、その条文が無くても同じ結論になることを、念のため書いた規定です。教唆者や幇助者についても、1項前段の共同の関係が認められるから、というのがその理由です。この見解に立っても、結論は同じで、KもMもLと連帯します。

欠陥のある製品の事故 製造物責任法

製造物責任法の地図。①製造物(2条1項)②欠陥(2条2項)③製造業者等(2条3項)④責任(3条)⑤免責(4条)⑥期間(5条)。軸=過失の証明を欠陥の証明に置き換える。 図:製造物責任法の地図

  • ①製造物(2条1項)②欠陥(2条2項)③製造業者等(2条3項)④責任(3条)⑤免責(4条)⑥期間(5条)
  • 軸=過失の証明を欠陥の証明に置き換える

ここで、前の回を思い出してください。709条で、被害者が証明しなければならない要件のうち、メーカーを相手にすると、とくに証明が難しいのは、どれでしょうか?故意または過失、だと思います。ここから先の設例で、その壁が見えてきます。

設例の関係図。利用者Gが、輸入販売会社J社が輸入して自社の名前を付けて売ったモバイルバッテリーを購入。充電中に発火し、Gが火傷を負い、机も焼けた。製造は海外のメーカー。辺ラベルの語=購入/発火/火傷。問い=GはJ社に何を示せば賠償を求められるか。 図:設例の関係図

  • 利用者Gが、輸入販売会社J社が輸入して自社の名前を付けて売ったモバイルバッテリーを購入
  • 充電中に発火し、Gが火傷を負い、机も焼けた
  • 製造は海外のメーカー
  • 辺ラベルの語=購入/発火/火傷
  • 問い=GはJ社に何を示せば賠償を求められるか

設例です。利用者のGが、モバイルバッテリーを買いました。J社が海外のメーカーから輸入して、自社の名前を付けて売っていたものです。Gが充電していると、バッテリーが発火して、Gは火傷を負い、机も焼けました。709条で、J社に賠償を求めるなら、Gは、J社の過失を証明しなければなりません。ところが、工場でどんな管理をしていたのか、Gには分かりません。内部を見られない消費者に、メーカーの落ち度を証明させるのは、とても難しいのです。そこで、製造物責任法という特別法があります。過失がなくても、欠陥があれば責任を負う、という無過失責任の仕組みです。709条に比べて、請求しやすくなっています。条文を、骨格で見ます。

条文製造物責任法2条

製造物責任法第2条(定義) 1 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。 2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。 3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。  一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)  二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者  三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

1項、製造物は、製造又は加工された動産です。動産とは、不動産以外の物です。ですから、建物のような不動産は、対象外です。診察や工事のようなサービスも、物ではないので、対象外です。収穫しただけの野菜のように、製造も加工もされていないものも、条文の文言から外れます。2項、欠陥は、通常有すべき安全性を欠いていることです。大事なのは、安全性という点です。単に品質が悪い、性能が低い、というだけでは足りません。人の生命や身体、財産を危険にさらすかどうか、が見られます。判断では、製品の特性、通常予見される使用形態、引き渡した時期などの事情が考慮されます。3項、製造業者等は、まず、製造、加工、輸入を、事業としておこなった者です。輸入業者が入る点に注意してください。次に、自分が製造業者だと分かる名前や商標を付けた者や、製造業者と誤認させる表示をした者。さらに、実質的な製造業者と認められる表示をした者です。販売しただけの者は、これらのどれかに当たらなければ、含まれません。設例のJ社は、海外のメーカーから輸入していますから、輸入業者です。自社の名前を付けて売っていることからも、製造業者等に当たります。次に、責任を定める3条です。

条文製造物責任法3条

製造物責任法第3条(製造物責任) 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

条文に、過失という言葉は、どこにもありません。欠陥による事故なら必ず負う、というわけではありません。717条の所有者の責任で見たのと同じく、結果責任ではありません。無過失責任は、落ち度がなくても負う、ということです。結果責任は、結果が出たら原因を問わず負う、ということでした。条文は、欠陥により侵害したとき、と書いています。ですから被害者は、欠陥があったこと、それによって損害が生じたこと、損害の内容を、証明しなければなりません。証明しなくてよいのは、過失です。ただし書にも注意です。損害が、その製造物についてのみ生じたときは、対象外です。設例で、バッテリー自体が壊れただけなら、対象外です。それは、売買の契約不適合責任の側で見た話です。Gの火傷と、焼けた机は、バッテリー以外の損害ですから、対象になります。

欠陥の3つの類型。設計上の欠陥=設計そのものが危険(例=内部構造が過熱しやすい設計)/製造上の欠陥=設計どおりに作られていない個体(例=たまたまこの1個だけ内部で短絡する製造ミス)/指示・警告上の欠陥=危険な使い方を警告していない(例=充電中に布団の下に置くと危険という表示がない)。注記=条文に類型の列挙はなく、一般的な整理。 図:欠陥の3つの類型

  • 設計上の欠陥=設計そのものが危険(例=内部構造が過熱しやすい設計)/製造上の欠陥=設計どおりに作られていない個体(例=たまたまこの1個だけ内部で短絡する製造ミス)/指示・警告上の欠陥=危険な使い方を警告していない(例=充電中に布団の下に置くと危険という表示がない)
  • 注記=条文に類型の列挙はなく、一般的な整理

欠陥のとらえ方を、1つ紹介します。条文には、欠陥の種類の列挙はありません。ただ、一般的な整理として、3つに分けて考えます。1つめは、設計上の欠陥です。設計そのものが危険な場合です。内部の構造が、過熱しやすい設計だった、というバッテリーです。同じ型の製品が全部、危険を抱えています。2つめは、製造上の欠陥です。設計は正しいのに、作られた個体が、設計どおりになっていない場合です。たまたまこの1個だけ、内部で短絡するように作られてしまった、というバッテリーです。3つめは、指示や警告上の欠陥です。製品自体は正常でも、危険な使い方をしないように警告していない場合です。充電中に布団の下に置くと危険、という表示がなかった、というバッテリーです。設例のGが示すのは、バッテリーが通常有すべき安全性を欠いていたこと、つまり欠陥です。J社の工場の管理ミス、つまり過失を、証明する必要はありません。そしてGは、J社に対して、3条で請求できます。

免責と期間の条文。4条=製造業者等が証明したときは3条の責任を負わない(1号 開発危険の抗弁/2号 部品・原材料の製造業者の抗弁)。5条=時効(損害及び賠償義務者を知った時から3年・人の生命又は身体は5年/引渡しから10年/蓄積・潜伏期間のある損害は損害が生じた時から起算)。 図:免責と期間の条文

  • 4条=製造業者等が証明したときは3条の責任を負わない(1号 開発危険の抗弁/2号 部品・原材料の製造業者の抗弁)
  • 5条=時効(損害及び賠償義務者を知った時から3年・人の生命又は身体は5年/引渡しから10年/蓄積・潜伏期間のある損害は損害が生じた時から起算)

責任を免れる方法も、あります。4条です。

条文製造物責任法4条

製造物責任法第4条(免責事由) 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。  一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。  二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

製造業者等が、次の事項を証明したときは、責任を負いません。1号は、引き渡した時の科学や技術の知見では、欠陥があることを認識できなかったことです。開発危険の抗弁と呼びます。引き渡した時点では、誰にも分からなかった危険まで負わせるのは酷だ、という考え方です。2号は、部品や原材料を作った会社の場合です。完成品を作った会社の設計の指示に、そのまま従ったために欠陥が生じ、しかも自分に過失がなかったことを、証明したときです。立証するのは、どちらも製造業者等の側です。最後に、期間です。5条です。

条文製造物責任法5条

製造物責任法第5条(消滅時効) 1 第三条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。  一 被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行使しないとき。  二 その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したとき。 2 人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。 3 第一項第二号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

骨格は、損害と賠償義務者を知った時から3年、引き渡した時から10年、です。2項は、人の生命や身体を侵害した場合の3年が5年になる、という定めです。設例のGの火傷なら、5年です。3項は、体内に蓄積して健康を害する物質による損害や、一定の潜伏期間のあとで症状が出る損害です。10年の起算点が、引き渡した時でなく、損害が生じた時になります。引き渡して何年も後に症状が出る損害を、10年で切ってしまわないためです。

709条とPL法の比較。要件=709条は故意・過失(被害者が証明)/PL法は欠陥(被害者が証明・過失は不要)。責任を負う人=709条は加害者/PL法は製造業者等。対象=709条は制限なし/PL法は製造物(動産)。免責=709条は無し/PL法は4条。期間=709条は724条・724条の2(3年・人の生命身体は5年・不法行為の時から20年)/PL法は5条(3年・人の生命身体は5年・引渡しから10年)。 図:709条とPL法の比較

  • 要件=709条は故意・過失(被害者が証明)/PL法は欠陥(被害者が証明・過失は不要)
  • 責任を負う人=709条は加害者/PL法は製造業者等
  • 対象=709条は制限なし/PL法は製造物(動産)
  • 免責=709条は無し/PL法は4条
  • 期間=709条は724条・724条の2(3年・人の生命身体は5年・不法行為の時から20年)/PL法は5条(3年・人の生命身体は5年・引渡しから10年)

709条と並べます。要件は、709条が過失、製造物責任法が欠陥です。どちらも被害者が証明しますが、過失の証明が要らない分だけ、請求しやすくなります。責任を負う人は、709条が加害者、製造物責任法が製造業者等です。対象は、709条に制限がなく、製造物責任法は製造物、つまり動産です。免責は、709条には書かれておらず、製造物責任法には4条があります。期間は、709条が724条と724条の2で、3年、人の生命や身体は5年、不法行為の時から20年です。製造物責任法は、3年、人の生命や身体は5年、引き渡した時から10年です。使う場面の見分け方です。製品の欠陥が原因なら、製造物責任法で、過失の証明を避けられます。製品の欠陥による事故でなければ、製造物責任法は使えず、709条などに戻ります。

自動車事故の特別法 自賠法の地図

自動車損害賠償保障法3条の地図。対象=生命・身体のみ(物損は709条)/責任を負う人=運行供用者(自己のために自動車を運行の用に供する者)/ただし書=自己及び運転者の無注意・被害者又は運転者以外の第三者の故意又は過失・構造上の欠陥又は機能の障害の無いことの3点を証明すれば免れる(中間責任)。 図:自動車損害賠償保障法3条の地図

もう1つ、人身事故についての特別法を、地図として見ます。自動車損害賠償保障法、略して自賠法です。前回、運行供用者という言葉だけ出ました。その中身が、ここで出てきます。

条文自動車損害賠償保障法3条

自動車損害賠償保障法第3条(自動車損害賠償責任) 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

条文の、自己のために自動車を運行の用に供する者を、運行供用者と呼びます。典型は、車の持ち主のように、その車を自分のために走らせている人です。注意点は3つあります。1つめ、対象は、生命と身体です。条文がそう書いています。車が壊れた、建物が壊れた、という物の損害は、3条の対象外で、709条等で考えます。2つめ、免れる方法です。ただし書の3点、つまり、自分と運転者が注意を怠らなかったこと、被害者か運転者以外の第三者に故意や過失があったこと、自動車に構造上の欠陥や機能の障害がなかったこと、を、3つとも証明したときです。証明する責任は、運行供用者の側にあります。これを中間責任と呼びます。709条なら、過失の証明は被害者の仕事でした。ここでは、無過失を含む3点の証明が、加害者の側の仕事に動いています。冒頭の軸の、壁の動きです。3つめ、3条に書かれていないことは、民法に従います。4条がそう定めています。周辺の条文を、名前だけ押さえます。5条は、責任保険か責任共済の契約を結ぶことを、車に義務づけています。強制保険です。16条は、被害者が保険会社に、損害賠償額の支払を直接請求できる、という定めです。被害者は、加害者の資力に頼らずに済みます。前回の交差点の設例で見ます。Bは、運送会社P社の配達の途中でした。P社が所有して配達に使っている車を、従業員のBが運転していたとします。その場合、運転していないP社も、通常は運行供用者に当たります。車の運行を支配し、その運行から利益を受ける立場にあるからです。運転しているかどうかは、決め手ではありません。歩行者は、P社の過失を証明しなくても、3条でP社に請求できます。そして前回、使用者が絡む求償の判決で、運行供用者が複数いる場合も同じように考えられる、と言いました。運行供用者が複数いるときの求償も、使用者どうしの求償と同じ考え方で決まる、という意味です。

第6章の締め 法定債権3制度の地図

法定債権3制度の地図。事務管理(697条・702条)=頼まれずに他人の事務を管理した管理者が、本人に有益な費用の償還を請求できる(報酬は出ない)/不当利得(703条・704条)=法律上の原因なく利益を受け他人に損失を及ぼした受益者が、利益の存する限度で返還(悪意なら利息を付け、なお損害があれば賠償)/不法行為(709条・714条〜719条・特別法)=他人の権利・利益を侵害した者が損害を賠償。どれも契約が無くても生じる債権。 図:法定債権3制度の地図

  • 事務管理(697条・702条)=頼まれずに他人の事務を管理した管理者が、本人に有益な費用の償還を請求できる(報酬は出ない)/不当利得(703条・704条)=法律上の原因なく利益を受け他人に損失を及ぼした受益者が、利益の存する限度で返還(悪意なら利息を付け、なお損害があれば賠償)/不法行為(709条・714条〜719条・特別法)=他人の権利・利益を侵害した者が損害を賠償
  • どれも契約が無くても生じる債権

第6章の締めです。この章で見たのは、契約がなくても生じる債権、法定債権の3つの制度でした。誰が、何を、どこまで取れるのか、で引き直します。1つめは、事務管理です。頼まれていないのに、他人の事務を管理した管理者が、本人に、有益な費用の償還を請求できます。報酬や手間賃は出ません。本来、他人のことに手を出すのは許されませんが、助け合いを違法にしないために、決まった要件で認める制度でした。2つめは、不当利得です。法律上の原因なく利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした受益者が、利益の存する限度で返します。悪意なら、利益に利息を付けて返し、なお損害があれば、賠償もします。受け取る理由の無い得を、相手の手元から返させる、プラスの調整でした。3つめは、不法行為です。他人の権利や利益を侵害した者が、損害を賠償します。目的は、受けた損害を埋め合わせる、損害の填補でした。

不法行為の地図。709条=一般の不法行為/714条=責任無能力者の監督義務者/715条=使用者(事業の執行について)/717条=土地の工作物(占有者が先・所有者は無過失責任)/718条=動物の占有者/719条=共同(前段・後段・2項)/特別法=製造物責任法・自賠法・失火責任法(重過失)・国賠法2条。賠償額の調整=損害の算定→過失相殺(722条2項)→損益相殺。 図:不法行為の地図

  • 709条=一般の不法行為/714条=責任無能力者の監督義務者/715条=使用者(事業の執行について)/717条=土地の工作物(占有者が先・所有者は無過失責任)/718条=動物の占有者/719条=共同(前段・後段・2項)/特別法=製造物責任法・自賠法・失火責任法(重過失)・国賠法2条
  • 賠償額の調整=損害の算定→過失相殺(722条2項)→損益相殺

不法行為の中の地図も、引き直します。709条が一般の不法行為でした。そこから、責任を負う人を広げたり、責任の形を変えたりする規定が並びます。714条は、責任能力のない人の、監督義務者です。715条は、従業員が事業の執行について加えた損害についての、使用者です。717条は、土地の工作物で、占有者が先、所有者は無過失責任でした。718条は、動物の占有者です。719条は、共同不法行為です。さらに、特別法として、製造物責任法、自賠法、失火責任法、国家賠償法の2条がありました。国家賠償法2条は、道路などの公の営造物の瑕疵の責任でした。失火責任法は、重過失の場合だけ責任を負わせる、修正の方向でした。そして、どこまで払うのか、という調整は、損害を算定したうえで、被害者に落ち度があれば過失相殺、被害者が利益も得ていれば損益相殺、という順でした。地図を持ったので、6問で確かめます。1問ずつ、どの制度か、どの条文かを選んでください。決め手の1語も、あわせて言えれば満点です。

弁別6問 どの制度が当たるか

第1問。旅行中で留守にしている隣家の水道管が破裂した。頼まれていない人が、業者を呼んで水を止め、代金を立て替えた。問い=何の制度か。 図:第1問

  • 旅行中で留守にしている隣家の水道管が破裂した
  • 頼まれていない人が、業者を呼んで水を止め、代金を立て替えた
  • 問い=何の制度か

第1問です。旅行中で留守にしている隣の家で、水道管が破裂しました。頼まれていない人が、業者を呼んで水を止め、その代金を立て替えました。何の制度でしょうか?事務管理だと思います。立て替えた分は、有益な費用として、702条1項で償還を請求できます。決め手は、他人の事務を、義務なく、つまり頼まれてもおらず、法律上の義務もないのに、本人のためにした、の3つです。報酬は出ません。

第2問。他人の空き地に、無断で車を2か月止めていた。問い=所有者は何を根拠に何を取れるか。 図:第2問

  • 他人の空き地に、無断で車を2か月止めていた
  • 問い=所有者は何を根拠に何を取れるか

第2問です。他人の空き地に、無断で車を2か月止めていました。空き地の持ち主は、何を根拠に、何を取れるでしょうか?703条と704条で、払うはずの駐車料金の支出を免れた利益を、返してもらいます。悪意なら、利息を付けて、なお損害があれば賠償もです。さらに、故意か過失があれば、709条の不法行為も、重ねて主張できます。決め手は、落ち度の有無で、使える条文が増える、という点です。

第3問。配達会社の従業員が、配達中に自転車で歩行者にけがをさせた。問い=被害者は会社に請求できるか。 図:第3問

  • 配達会社の従業員が、配達中に自転車で歩行者にけがをさせた
  • 問い=被害者は会社に請求できるか

第3問です。配達会社の従業員が、配達の途中に、自転車で歩行者にけがをさせました。被害者は、会社に請求できるでしょうか?会社に請求する根拠は、715条の使用者責任です。714条は、責任能力のない人の監督義務者の条文で、ここには当たりません。会社は、従業員を使っている側だからです。決め手は、被用者の行為と、事業の執行についてです。人を使って利益を受け取る者は、その損も引き受ける、という報償責任の考え方でした。従業員本人は、709条です。

第4問。8歳の子が、公園でボールを投げ、他人の家の窓を割った。この子には責任能力がないものとする。問い=誰に請求するか。 図:第4問

  • 8歳の子が、公園でボールを投げ、他人の家の窓を割った
  • この子には責任能力がないものとする
  • 問い=誰に請求するか

第4問です。8歳の子が、公園でボールを投げて、他人の家の窓を割りました。この子には、責任能力がないものとします。誰に請求するでしょうか?子どもは責任を負わないので、親に714条で請求します。責任能力の目安は、おおむね12歳前後で、固定の線ではありませんでした。決め手は、責任能力がない加害者と、監督義務者です。責任能力のない人には過失を問えず、そのままでは被害者が救われないので、監督義務者に負わせるのでした。親は、監督義務を怠らなかったことなどを自分で証明すれば、免れます。

第5問。ビルの外壁に取り付けた看板が、取り付けの不備で落ち、通行人がけがをした。問い=誰がどの順で責任を負うか。 図:第5問

  • ビルの外壁に取り付けた看板が、取り付けの不備で落ち、通行人がけがをした
  • 問い=誰がどの順で責任を負うか

第5問です。ビルの外壁に取り付けた看板が、取り付けの不備で落ちて、通行人がけがをしました。誰が、どの順で責任を負うでしょうか?717条で、まず占有者、免れたら所有者だったと思います。決め手は、土地の工作物の、設置や保存の瑕疵です。危険をはらむ物を支配している人が、その物から出た損害を負う、という危険責任の考え方でした。占有者は、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたことを示せば免れます。所有者は、免れる方法が条文にない無過失責任です。

第6問。交差点で2台が衝突して歩行者がけがをした。ところが被害者も落ち度があった。賠償額はどうなるか。加害者2人の関係は。 図:第6問

  • 交差点で2台が衝突して歩行者がけがをした
  • ところが被害者も落ち度があった
  • 賠償額はどうなるか
  • 加害者2人の関係は

第6問です。交差点で2台の車が衝突して、歩行者がけがをしました。ところが、歩行者にも落ち度がありました。賠償額はどうなるでしょうか。2人の運転者の関係は、どうなるでしょうか?額は過失相殺で減ります。運転者2人は、連帯して全額を負って、払った人は求償できます。額は、722条2項の過失相殺で減ります。損益相殺ではありません。損害を、加害者と被害者の間で公平に分担するための仕組みでした。損益相殺は、被害者が事故のせいで利益も得たときの調整でした。決め手は、被害者の落ち度なら過失相殺、被害者の利益なら損益相殺、です。運転者2人は、719条1項前段の共同不法行為で、連帯です。内側は、過失の割合で分けて、求償です。前回の交差点の設例なら、歩行者に800万円が認められ、BはAに600万円を求償できました。

6問の答えの一覧。①事務管理(697条・702条)=他人の事務・義務なし(頼まれていない・法律上の義務もない)・本人のため/②不当利得(703条・704条)+故意過失があれば709条=落ち度の有無で条文が増える/③715条=被用者の行為・事業の執行について(714条ではない)/④714条=責任能力がない加害者・監督義務者/⑤717条=土地の工作物の設置・保存の瑕疵/⑥過失相殺(722条2項)+719条1項前段・求償=被害者の落ち度なら過失相殺・被害者の利益なら損益相殺。 図:6問の答えの一覧

  • ①事務管理(697条・702条)=他人の事務・義務なし(頼まれていない・法律上の義務もない)・本人のため
  • ②不当利得(703条・704条)+故意過失があれば709条=落ち度の有無で条文が増える
  • ③715条=被用者の行為・事業の執行について(714条ではない)
  • ④714条=責任能力がない加害者・監督義務者
  • ⑤717条=土地の工作物の設置・保存の瑕疵
  • ⑥過失相殺(722条2項)+719条1項前段・求償=被害者の落ち度なら過失相殺・被害者の利益なら損益相殺

6問を、1枚にします。決め手の1語で見分けます。頼まれていないなら、事務管理。法律上の原因がなければ、不当利得で、落ち度があれば不法行為も重なります。従業員なら715条、責任能力のない加害者なら714条、土地の工作物の瑕疵なら717条、製品の欠陥なら製造物責任法です。被害者の落ち度なら過失相殺、被害者の利益なら損益相殺です。

今日の地図(保存版)

まとめ。①加害者不明(719条1項後段)=因果関係を推定(立証責任の転換)・自分の行為と損害の因果関係が無いと証明すれば免れる・適用には特定された者のほかに損害をそれのみで惹起し得る行為をした者がいないこと/後段の類推適用の事案では寄与度の範囲(3分の1)で連帯/②教唆・幇助(2項)=共同行為者とみなす/③製造物責任法=過失でなく欠陥・欠陥と因果関係と損害は被害者が証明・4条の免責・5条の期間/④自賠法3条=運行供用者・生命身体のみ・3点を証明して免れる(中間責任)/⑤第6章=事務管理・不当利得・不法行為の3制度の地図。 図:まとめ

  • ①加害者不明(719条1項後段)=因果関係を推定(立証責任の転換)・自分の行為と損害の因果関係が無いと証明すれば免れる・適用には特定された者のほかに損害をそれのみで惹起し得る行為をした者がいないこと/後段の類推適用の事案では寄与度の範囲(3分の1)で連帯
  • ②教唆・幇助(2項)=共同行為者とみなす
  • ③製造物責任法=過失でなく欠陥・欠陥と因果関係と損害は被害者が証明・4条の免責・5条の期間
  • ④自賠法3条=運行供用者・生命身体のみ・3点を証明して免れる(中間責任)
  • ⑤第6章=事務管理・不当利得・不法行為の3制度の地図

まとめます。5つでした。1つめ、加害者不明の共同不法行為です。719条1項後段は、因果関係の立証責任を転換して、因果関係を推定します。自分の行為と損害の因果関係がないと証明すれば、免れます。後段の類推適用が問題になった事案では、判決は、寄与度の範囲で連帯としました。前段の全額の連帯とは、場面が違います。2つめ、教唆と幇助です。2項により、実行しなくても共同行為者とみなされ、実行者と連帯します。3つめ、製造物責任法です。過失でなく、欠陥です。欠陥と因果関係と損害は被害者が証明します。免責は4条、期間は5条です。4つめ、自賠法3条です。運行供用者が、生命と身体の損害について責任を負い、ただし書の3点を証明すれば免れます。5つめ、第6章の地図です。事務管理、不当利得、不法行為。事例を見て、決め手の1語で選べます。冒頭の問いに戻ります。Cは、D、E、Fの3人に、全額を連帯して請求できます。自分の石は当たっていないと証明できた人だけが外れます。後段も、製造物責任法も、自賠法も、被害者が証明しなければならない壁を低くする仕組みでした。これで、第6章は終わりです。

参照条文

  • 民法719条
  • 製造物責任法2条
  • 製造物責任法3条
  • 製造物責任法4条
  • 製造物責任法5条
  • 自動車損害賠償保障法3条

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