民法ゼロから民法#317

親族の範囲・血族と姻族・親等

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第7章 親族 #317/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

夫が亡くなった 夫の母の面倒は見るのか

冒頭の設例。妻の夫が亡くなった。夫の母(義母)が妻に「これからも面倒を見てほしい」と言う。問い=妻に扶養の義務はあるか。答えを出すのに要る部品=①親族とは誰か ②姻族関係はいつ終わるか。 図:冒頭の設例

  • 妻の夫が亡くなった
  • 夫の母(義母)が妻に「これからも面倒を見てほしい」と言う
  • 問い=妻に扶養の義務はあるか
  • 答えを出すのに要る部品=①親族とは誰か ②姻族関係はいつ終わるか

妻に扶養の義務があるかどうか。結論は、この回の最後に出します。先に言っておくと、答えは、ある、でも、ない、でもありません。条件つきです。その条件を読むには、2つの部品が要ります。1つめは、親族とは誰のことか。2つめは、夫が亡くなったあと、夫の母との関係は、まだ続いているのか。この2つを、今日の道のりで作ります。夫の死で、夫の家族との関係も終わるのか。これも、あとで条文で確かめます。前回で、第6章の法定債権が終わりました。事務管理、不当利得、不法行為と、ここまでは主に、お金や物をめぐる財産法でした。今日から第7章、家族の法に入ります。

今日の地図。①家族法の地図(親族と相続)→②血族の3つの軸→③姻族(定義は2つだけ)→④親等の数え方(726条)→⑤親族の範囲(725条)→⑥親族関係の終了(728条・729条)→⑦冒頭の問いの答え(877条)。軸=親族は3つの部品の組み立てで決まる。 図:今日の地図

  • ①家族法の地図(親族と相続)→②血族の3つの軸→③姻族(定義は2つだけ)→④親等の数え方(726条)→⑤親族の範囲(725条)→⑥親族関係の終了(728条・729条)→⑦冒頭の問いの答え(877条)
  • 軸=親族は3つの部品の組み立てで決まる

今日の道のりです。まず、家族法の全体の地図。次に、血族。次に、姻族。次に、親等の数え方。そして、親族の範囲を決める725条。最後に、親族関係がどう終わるのかを見て、冒頭の問いに戻ります。貫く軸は1本です。親族は、部品の組み立てで決まります。部品は、血族、姻族、親等の3つです。迷ったら、血族か姻族か、何親等か、725条の枠に入るか、の順に当てはめます。

家族法の地図 親族と相続

民法典5編の地図。第2編物権・第3編債権=財産法/第4編親族・第5編相続=合わせて家族法/第1編総則=両方に共通するルール(第7章=親族、第8章=相続)。家族法では、婚姻・縁組・認知のように届出で成立する身分の行為が多い。憲法24条=家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等。 図:民法典5編の地図

  • 第2編物権・第3編債権=財産法/第4編親族・第5編相続=合わせて家族法/第1編総則=両方に共通するルール(第7章=親族、第8章=相続)
  • 家族法では、婚姻・縁組・認知のように届出で成立する身分の行為が多い
  • 憲法24条=家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等

民法典は、5つの編でできています。第1編が総則、第2編が物権、第3編が債権、第4編が親族、第5編が相続です。第2編の物権と第3編の債権が、これまで見てきた財産法です。第4編の親族と第5編の相続を合わせて、家族法と呼びます。第1編の総則は、そのどちらにも共通するルールでした。このシリーズでは、第7章が親族、第8章が相続です。大きな違いが1つあります。家族法には、婚姻、縁組、認知のように、届出をして初めて成立する、身分の行為が多いことです。婚姻は結婚、縁組は養子縁組、認知は、胎児の回でも出てきた、婚姻外で生まれた子を、自分の子と認める行為です。財産の取引は、値段と物を交換する場面でした。家族の行為は、人と人との地位をつくったり変えたりする場面です。ですから、条文は、届出の要件や、本人の意思の確かめ方を、細かく置いています。なお、家族生活のあり方については、憲法24条が、個人の尊厳と両性の本質的平等を求めています。ここで、未成年者と成年被後見人の回を、少し思い出してください。身分行為とは何だったか。財産行為の行為能力のルールと、何が違ったでしょうか?

未成年者が契約をするには、5条で、法定代理人の同意が要りました。成年被後見人がした契約は、9条で、取り消せました。身分行為は、本人の意思そのものを尊重する場面でした。ですから、その同意や取消しで本人を包む仕組みが、そのまま当てはまらないのでした。婚姻や縁組は、親や後見人の同意で済ませる行為ではありません。本人の意思そのものが大事だからです。ただし、たとえば、15歳未満の子が養子になるときは、法定代理人が、代わりに承諾します。797条です。これは、養子縁組のところで、詳しく見ます。この点を、頭の片隅に置いて、先へ進みます。

血族 3つの軸

血族の3つの軸。血族=法的な親子関係の連鎖でつながる者。軸①自然血族(出生による血縁)/法定血族(養子縁組によって血族と同じ関係が生じる者)。軸②直系(世代が上下に直線的に連なる)/傍系(共通の祖先を介してつながる)。軸③尊属(自分より前の世代)/卑属(自分より後の世代)。3つの軸は互いに独立。 図:血族の3つの軸

  • 血族=法的な親子関係の連鎖でつながる者
  • 軸①自然血族(出生による血縁)/法定血族(養子縁組によって血族と同じ関係が生じる者)
  • 軸②直系(世代が上下に直線的に連なる)/傍系(共通の祖先を介してつながる)
  • 軸③尊属(自分より前の世代)/卑属(自分より後の世代)
  • 3つの軸は互いに独立

部品の1つめ、血族です。血族とは、法的な親子関係の連鎖でつながる者のことです。親と子、その親、その子、とつながる鎖の上にいる人たちです。血族は、次の3つの軸で分けます。この3つの軸は、互いに独立した切り口です。1つめの軸は、自然血族と法定血族です。自然血族は、出生による血縁でつながる者です。実の親子や、実の兄弟姉妹です。法定血族は、養子縁組によって、法律上、血縁があるのと同じ扱いになる者です。

条文民法727条

民法第727条(縁組による親族関係の発生) 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。

条文の読み方です。養子と、養親、そして養親の血族との間に、縁組の日から、血族間と同じ関係が生じます。例で見ます。AがBを養子にしたとします。AにAの兄Zがいます。Bにとって、Zは、血族のおじと同じ関係になります。Bの実の親は、Aと親戚になるのですか。なりません。ここが注意点です。この条文が結ぶのは、養子と、養親と、養親の血族の間だけです。Bの実の親と、養親のAの間には、何の関係も生じません。養子は、2つの家の間の橋になるわけではなく、養親側に、新しい鎖がつながるだけです。2つめの軸は、直系と傍系です。直系は、世代が上下に、まっすぐ連なる関係です。父母、祖父母、子、孫です。傍系は、共通の祖先を介してつながる関係です。兄弟姉妹は、共通の祖先の父母を介してつながります。おじ、おば、いとこも、傍系です。

家系図(血族)。本人=妻。上段=妻の祖父母。中段=妻の父・母/おじ(妻の父の弟)。妻と同世代=妻・妻の兄・いとこ(おじの子)。下段=妻の子・妻の孫。直系=妻から父母・祖父母、子・孫へまっすぐ/傍系=兄・おじ・いとこ。 図:家系図(血族)

  • 本人=妻。上段=妻の祖父母。中段=妻の父・母
  • おじ(妻の父の弟)。妻と同世代=妻・妻の兄・いとこ(おじの子)。下段=妻の子・妻の孫。直系=妻から父母・祖父母、子・孫へまっすぐ
  • 傍系=兄・おじ・いとこ。

ここから、1つの家系図を、最後まで使います。妻を、本人とします。妻には、父と母がいて、兄がいます。父には弟がいて、このおじに、子がいます。妻のいとこです。妻には子がいて、孫がいます。妻の祖父母は、上にいます。この図で、直系は、妻から、父母、祖父母とまっすぐ上に伸びる線と、子、孫とまっすぐ下に伸びる線です。傍系は、枝分かれした先にいる、兄、おじ、いとこです。3つめの軸は、尊属と卑属です。尊属は、自分より前の世代にあたる人。父母、祖父母、おじ、おばです。卑属は、自分より後の世代にあたる人。子、孫、甥、姪です。

年上の人が尊属で、年下の人が卑属ですか。違います。決め手は、年齢ではなく、世代です。たとえば、おじが、甥より10歳年下だったとします。祖父が、遅くに子をもうけると、そういうことが起きます。それでも、おじは、甥にとって尊属です。世代が、1つうえだからです。兄弟姉妹は、同じ世代です。ですから、尊属でも卑属でもありません。整理します。自然か法定か、直系か傍系か、尊属か卑属か。この3つで、血族の1人1人を、言い当てられます。たとえば、妻の父は、自然血族で、直系で、尊属です。妻のおじは、自然血族で、傍系で、尊属です。

姻族 定義は2つだけ

姻族の2つの定義。姻族=①自己の配偶者の血族 ②自己の血族の配偶者。家系図に足す人=夫・夫の母・夫の父・夫の兄・夫の兄の妻・妻の兄の妻。①の例=妻から見た夫の母・夫の兄。②の例=妻から見た妻の兄の妻。×の例=夫の兄の妻(配偶者の血族の配偶者)・夫婦それぞれの親同士。 図:姻族の2つの定義

  • 姻族=①自己の配偶者の血族 ②自己の血族の配偶者
  • 家系図に足す人=夫・夫の母・夫の父・夫の兄・夫の兄の妻・妻の兄の妻
  • ①の例=妻から見た夫の母・夫の兄
  • ②の例=妻から見た妻の兄の妻
  • ×の例=夫の兄の妻(配偶者の血族の配偶者)・夫婦それぞれの親同士

部品の2つめ、姻族です。姻族は、婚姻でつながった関係です。定義は、2つだけです。1つめは、自分の配偶者の血族。2つめは、自分の血族の配偶者です。家系図に、妻の夫を足します。夫には、母と、兄がいます。兄には、妻がいます。さらに、妻の兄にも、妻がいます。順に、当てはめます。夫の母は、妻にとって、配偶者の血族です。1つめの定義に当たります。ですから、妻と夫の母は、姻族です。夫の母から見れば、妻は、自分の血族、つまり息子の、配偶者です。2つめの定義に当たります。姻族の関係は、お互いさまです。夫の兄も、妻から見れば、配偶者の血族です。姻族です。では、妻の兄の妻はどうでしょう。妻の血族である兄の、配偶者です。2つめの定義に当たります。姻族です。

ここが、この回の山場です。夫の兄の妻は、姻族ではありません。当てはめます。夫の兄の妻は、妻から見て、配偶者の血族の、配偶者です。「配偶者の血族」までは、1つめの定義です。でも、そこにさらに「の配偶者」を重ねています。「の血族」か「の配偶者」を、重ねて使うと、定義の外に出ます。感覚で言うと、婚姻は橋です。渡れる橋は1本だけ。しかも、血のつながりをたどれるのは、橋のこちら側か、向こう側か、どちらか片方だけです。妻は、夫という橋を渡って、向こう側の夫の血族に行けます。夫の兄の妻は、夫の兄の側にある、別の婚姻の橋の向こうです。橋を2本渡るので、姻族にはなりません。もう1つ、似た例です。夫の母と、妻の母を並べます。夫の母は、妻の母にとって、娘の夫の母です。妻の母の血族、つまり娘の、配偶者の、血族です。渡る橋は、娘の婚姻の1本だけです。でも、こちら側で娘へ、向こう側で夫から夫の母へと、血のつながりを両側でたどっています。片側だけ、という条件を満たしません。言葉で言えば、2つめの定義の「血族の配偶者」に、さらに「の血族」を重ねています。ですから、夫婦それぞれの親同士は、姻族ではありません。

法律は、扶養のような権利や義務が及ぶ範囲を決めるので、線を引く必要があります。婚姻でつながりが生まれるのは、結婚した本人が、相手の家族とつながるからです。ですから、線は、結婚した本人を片方の端に置いて、婚姻1つぶんだけ、と引かれます。2つの定義は、どちらも、2人のうち一方が、結婚した本人です。夫の兄の妻と妻は、間に婚姻を2つ挟みます。夫婦それぞれの親同士は、婚姻は1つでも、2人のどちらも、その婚姻をした本人ではありません。

親等の数え方 726条

726条の数え方。直系=親族間の世代数(親子で1・祖父母で2)。傍系=一人(又はその配偶者)から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数。配偶者間に親等はない。喩え=乗換駅(共通の祖先)まで戻って、そこから目的地へ。 図:726条の数え方

  • 直系=親族間の世代数(親子で1・祖父母で2)
  • 傍系=一人(又はその配偶者)から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数
  • 配偶者間に親等はない
  • 喩え=乗換駅(共通の祖先)まで戻って、そこから目的地へ

部品の3つめ、親等です。親等は、親族の近さを表す数字です。数え方は、726条にあります。

条文民法726条

民法第726条(親等の計算) 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。 2 傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。

1項は、直系の数え方です。世代を1つ隔てるごとに、1親等です。親と子は1親等。祖父母と孫は2親等です。2項は、傍系の数え方です。一方から、共通の祖先まで、さかのぼります。そこから、もう一方まで、下ります。この、上った数と、下った数を足したものが、親等です。電車で言えば、乗換駅まで戻って、そこから目的地へ向かう、という数え方です。

家系図と親等。妻から見て=父母1・祖父母2・子1・孫2・兄2・おじ3・いとこ4。傍系=共通の祖先まで上って下る。配偶者(夫)に親等はない。 図:家系図と親等

  • 妻から見て=父母1・祖父母2・子1・孫2・兄2・おじ3・いとこ4
  • 傍系=共通の祖先まで上って下る
  • 配偶者(夫)に親等はない

家系図で、実際に数えます。妻が本人です。妻の父は、1つうえの世代です。1親等です。祖父は、2つうえの世代で、2親等です。子は、1親等。孫は、2親等です。ここまでが、直系です。傍系です。妻の兄を数えます。妻から、共通の祖先の父まで、1つ上ります。父から、兄へ、世代を1つ下ります。足して、2親等です。妻から、共通の祖先の祖父まで、2つ上ります。祖父から、おじまで、1つ下ります。足して、3親等です。では、おじの子、つまり、いとこは?妻から祖父まで、2つ上って、祖父からおじ、おじからいとこへ、2つ下るので、4親等です。いとこは、4親等です。ついでに、はとこです。共通の祖先は、曾祖父母です。妻から3つ上って、そこから3つ下ります。6親等です。図には描きませんが、数え方は同じです。兄の子、つまり甥は、父まで1つ、兄まで1つ、甥まで1つで、3親等です。曾孫は、直系で、世代が3つしたですから、3親等です。

配偶者に、親等はありません。夫婦は、親等で測る関係ではなく、配偶者という、別の関係だからです。姻族は、配偶者を基準に数えます。直系の夫の母は、726条1項の、世代数で数えます。夫から見て1親等ですから、妻から見ても1親等です。傍系の夫の兄は、726条2項の、その配偶者から、にあたります。夫から共通の祖先、つまり両親まで、世代を1つ上り、兄へ1つ下ります。ですから、妻から見て、2親等です。夫のいとこも、夫から数えて、4親等です。最後に、妻の兄の妻です。妻の兄は、妻から2親等です。兄の配偶者なので、妻から見て、2親等の姻族です。ここで確かめます。妻から見て、夫のおじは、何親等ですか?

夫から数えて、夫の父、夫の祖父、おじ、と上って下るので、3親等です。配偶者を基準に、同じ数え方をします。

親族の範囲 725条

725条の親族の範囲。本人=妻。血族は6親等まで、姻族は3親等まで、配偶者は親等なしで親族。夫の兄=姻族2親等で親族。夫のいとこ=姻族4親等で親族でない。夫の兄の妻=姻族でないので親族でない。 図:725条の親族の範囲

  • 本人=妻
  • 血族は6親等まで、姻族は3親等まで、配偶者は親等なしで親族
  • 夫の兄=姻族2親等で親族
  • 夫のいとこ=姻族4親等で親族でない
  • 夫の兄の妻=姻族でないので親族でない

3つの部品がそろいました。組み立てます。親族とは誰か。725条です。

条文民法725条

民法第725条(親族の範囲) 次に掲げる者は、親族とする。  一 六親等内の血族  二 配偶者  三 三親等内の姻族

親族は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。血族は、遠くまで、6親等まで入ります。姻族は、近くまで、3親等までです。配偶者は、親等がありませんが、親族に入ります。立ち止まって、考えてみてください。夫の兄の妻は、妻にとって、親族でしょうか。姻族の2つの定義に、当てはめてみてください。親族でない、が答えです。ほかも、見ていきます。夫の兄は、どうでしょう。配偶者の血族で、2親等の姻族です。3親等内なので、親族です。次に、夫のいとこは?夫のいとこは、姻族ではあるのに、親族ではありません。姻族と親族は、同じ意味ではないのです。姻族の中で、3親等までの人だけが、親族になります。では、妻の兄の妻は?

血族の配偶者で、2親等の姻族です。親族です。夫の兄の妻は、親族ではなく、妻の兄の妻は、親族です。線を引いているのは、配偶者の血族か、血族の配偶者か、という定義の違いです。血族のほうは、6親等まで入りますから、妻のはとこは、親族です。当てはめの順番は、いつも同じです。血族か姻族か。何親等か。725条の枠に入るか。親族は、この3つの部品の組み立てで決まります。親族は、法律の物差しになります。主な使い道は3つです。1つは、扶養の義務を負う人の範囲。1つは、結婚してはいけない近親の範囲。1つは、相続人の範囲です。ただし、相続人の範囲は、725条の枠とは別に、法律が定めています。それぞれの中身は、それぞれの場面で、詳しく見ます。今日は、親族という概念が、何かを決めるための物差しだ、と分かれば十分です。扶養については、この回の最後で、冒頭の問いとして、ひと足先に触ります。

親族関係の終了 728条・729条

離縁による親族関係の終了。729条=養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と、養親及びその血族との親族関係は離縁によって終了する。縁組の取消しでも養親子関係は終わる(808条1項が748条1項を準用=将来に向かってのみ効力)。 図:離縁による親族関係の終了

  • 729条=養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と、養親及びその血族との親族関係は離縁によって終了する
  • 縁組の取消しでも養親子関係は終わる(808条1項が748条1項を準用=将来に向かってのみ効力)

親族関係は、できるだけでなく、終わることもあります。まず、養子縁組のほうから見ます。

条文民法729条

民法第729条(離縁による親族関係の終了) 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。

離縁は、養子縁組を解消することです。離縁をすると、養子と養親の関係が終わるだけでなく、養子の配偶者、養子の直系卑属、その配偶者と、養親及びその血族との親族関係も、終わります。縁組で広がった関係が、まとめて解けるのです。縁組の取消しでも、養親子の関係は終わります。縁組の取消しは、縁組をしたときに、法律が定める取消しの理由があった場合に、あとから縁組を解くことです。縁組も婚姻も、届出でつくる身分の関係なので、民法808条1項が、婚姻の取消しの規定を準用していて、取消しは将来に向かってだけ効力を生じます。それまで親子として暮らした事実を、さかのぼって無かったことにはしない、ということです。次に、姻族関係の終了です。これが冒頭の問いに直結します。

条文民法728条

民法第728条(離婚等による姻族関係の終了) 姻族関係は、離婚によって終了する。 2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

1項、姻族関係は、離婚によって終了します。2項、夫婦の一方が死亡した場合は、生存している配偶者が、姻族関係を終了させる意思を表示したときに、終了します。婚姻の取消しでも、姻族関係は終わります。婚姻の取消しも、離婚と同じく、婚姻を将来に向かって解くものです。そこで749条が、離婚についての728条1項を、婚姻の取消しにも準用しています。

離婚と死亡で何が違うか。離婚(婚姻の取消しも)=姻族関係は当然に終了(728条1項・749条)/配偶者の死亡=当然には終了せず、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了(728条2項)。復氏は別の問題。 図:離婚と死亡で何が違うか

  • 離婚(婚姻の取消しも)=姻族関係は当然に終了(728条1項・749条)/配偶者の死亡=当然には終了せず、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときに終了(728条2項)
  • 復氏は別の問題

並べます。離婚の場合は、当然に終了します。何もしなくても、姻族関係は終わります。婚姻の取消しも同じです。配偶者の死亡の場合は、当然には終わりません。生存配偶者が、終わらせる意思を表示して、初めて終わります。夫が亡くなったあとも、義理の親との関係を続けたい人もいれば、終わらせたい人もいます。どちらも、ありえます。そこで法律は、生存配偶者本人の意思に委ねています。何もしなければ、続きます。終わらせたければ、意思を表示します。この意思の表示は、戸籍法の定めで、役所に姻族関係終了届を出す方法でします。夫の母に口で告げるだけでは、終わりません。届け出て、初めて終わります。夫の母などの同意も、家庭裁判所の許可も、要りません。氏がどうなるかは、別の問題です。離婚や死亡で、氏がどう変わるかは、離婚の回で、あらためて比べます。もう1つ。姻族関係が終わったあとも、直系姻族の間では結婚できない、という定めが残ります。近親婚のところで見ます。ここでは、そういうことがある、とだけ覚えてください。

冒頭の問いの答え 877条

877条(扶養義務者)。1項=直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養の義務/2項=家庭裁判所は特別の事情があるとき3親等内の親族間でも扶養の義務を負わせることができる/3項=審判後に事情が変わったときは家庭裁判所が審判を取り消せる。設例=夫の母は妻にとって1親等の直系姻族。 図:877条(扶養義務者)

  • 1項=直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養の義務
  • 2項=家庭裁判所は特別の事情があるとき3親等内の親族間でも扶養の義務を負わせることができる
  • 3項=審判後に事情が変わったときは家庭裁判所が審判を取り消せる。設例=夫の母は妻にとって1親等の直系姻族。

冒頭の問いに戻ります。夫が亡くなって、夫の母から、面倒を見てほしい、と言われました。妻に、扶養の義務はあるのでしょうか。扶養とは、自分の力では暮らしていけない親族の生活を、お金を出すなどして支えることです。条文を読みます。

条文民法877条

民法第877条(扶養義務者) 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。 2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

順に当てはめます。1項は、直系血族と兄弟姉妹です。妻から見て、夫の母は、血族でしょうか?配偶者の血族なので、姻族です。血族ではないので、1項には入りません。夫の母は、妻にとって、1親等の直系姻族です。直系血族ではないので、1項の、当然の扶養義務は、ありません。2項です。家庭裁判所は、特別の事情があるときは、3親等内の親族間にも、扶養の義務を負わせることができます。夫の母は、1親等の姻族です。3親等内の親族に当たります。そして、夫が亡くなっても、姻族関係は、当然には終わりません。生存配偶者が意思を表示しなければ、続きます。ですから、夫の母は、夫の死後も、妻の親族のままです。

親族のままでも、それだけで扶養の義務がある、とは言えません。2項は、義務を負わせることが「できる」という規定です。家庭裁判所が、特別の事情があると認めて、審判で義務を負わせたときだけ、義務が生じます。審判がなければ、義務はありません。なお、その審判は、あとで事情が変われば、家庭裁判所が取り消せます。答えを整理します。夫の母に対する扶養の義務は、当然には、ありません。夫が亡くなって姻族関係が続いていても、家庭裁判所が特別の事情を認めて義務を負わせたときだけ、生じます。扶養の本体の中身は、扶養の回で、詳しく見ます。妻が、夫の母との関係を終わらせたいときは、姻族関係を終了させる意思を表示すれば、姻族関係そのものが終わります。終われば、夫の母は、妻の親族ではなくなります。ですから、877条2項の、3親等内の親族でもなくなります。義務がなくても、妻が、自分の意思で、夫の母の面倒を見ることは、もちろん自由です。法律が決めているのは、義務になるかどうか、です。

今日の地図(保存版)

まとめ。①家族法=第4編親族・第5編相続/届出で成立する身分の行為が多い ②血族の3軸(自然/法定・直系/傍系・尊属/卑属=世代で決まる)③姻族=配偶者の血族・血族の配偶者(夫の兄の妻・夫婦それぞれの親同士は姻族でない)④親等=直系は世代数・傍系は上って下る・配偶者に親等なし ⑤725条=6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族 ⑥終了=離婚は当然・死亡は意思表示(728条)/離縁(729条)⑦877条2項=家庭裁判所が特別の事情で義務を負わせた場合だけ。 図:まとめ

  • ①家族法=第4編親族・第5編相続/届出で成立する身分の行為が多い
  • ②血族の3軸(自然/法定・直系/傍系・尊属/卑属=世代で決まる)③姻族=配偶者の血族・血族の配偶者(夫の兄の妻・夫婦それぞれの親同士は姻族でない)④親等=直系は世代数・傍系は上って下る・配偶者に親等なし
  • ⑤725条=6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族
  • ⑥終了=離婚は当然・死亡は意思表示(728条)/離縁(729条)⑦877条2項=家庭裁判所が特別の事情で義務を負わせた場合だけ

まとめます。1つめ、家族法の地図です。第4編が親族、第5編が相続。婚姻や縁組のように、届出で成立する身分の行為が多いのが特徴です。2つめ、血族です。自然か法定か、直系か傍系か、尊属か卑属か。尊属と卑属は、年齢ではなく、世代で決まります。3つめ、姻族です。定義は、配偶者の血族と、血族の配偶者の2つだけです。夫の兄の妻や、夫婦それぞれの親同士は、姻族ではありません。4つめ、親等です。直系は世代数。傍系は、共通の祖先まで上って、そこから下る数です。配偶者に親等はありません。5つめ、725条です。親族は、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。6つめ、終了です。離縁で養親子の関係は終わります。離婚では姻族関係は当然に終わり、配偶者の死亡では、生存配偶者が意思を表示したときに終わります。貫く軸は、1本でした。親族は、血族、姻族、親等の3つの部品の組み立てで決まります。最後に、冒頭の問いです。夫の母は、妻にとって直系姻族で、877条1項には入りません。夫の死亡で姻族関係は当然には終わらず、親族のままです。家庭裁判所が、特別の事情を認めて義務を負わせたときだけ、扶養の義務が生じます。終わらせたければ、姻族関係を終了させる意思を表示できます。

参照条文

  • 民法727条
  • 民法726条
  • 民法725条
  • 民法729条
  • 民法728条
  • 民法877条

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