民法ゼロから民法#328

婚約破棄と内縁の準婚理論

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第7章 親族 #328/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

挙式3か月前に「やっぱりやめる」と言われた

冒頭の設例。A(男)─婚約(1年)─B(女)。挙式は3か月後。B→式場:申込み済み・キャンセル料40万円が発生する状態。A→B:結納100万円。A「やっぱり別の人と結婚する。この話はなかったことにしてほしい」。問い①Bは「約束どおり結婚しろ」と強制できるか/②BはAに何を請求できるか/③もし2人が届出をしないまま12年夫婦として暮らし、のちAが出て行ったら、婚姻費用の分担や財産分与は求められるか。 図:冒頭の設例

  • A(男)─婚約(1年)─B(女)
  • 挙式は3か月後
  • B→式場:申込み済み・キャンセル料40万円が発生する状態
  • A→B:結納100万円
  • A「やっぱり別の人と結婚する。この話はなかったことにしてほしい」
  • 問い①Bは「約束どおり結婚しろ」と強制できるか
  • ②BはAに何を請求できるか
  • ③もし2人が届出をしないまま12年夫婦として暮らし、のちAが出て行ったら、婚姻費用の分担や財産分与は求められるか

今日の問いは3つです。1つめ。Bさんは、Aさんに、約束どおり結婚しろと、強制できるか。2つめ。Bさんは、Aさんに、何を請求できるか。3つめは、少し先の話です。もし2人が、婚姻届を出さないまま、12年間、夫婦として暮らして、そのあとAさんが出て行ったら、どうなるか。婚姻費用の分担や、財産分与は、求められるでしょうか。先に、答えの形だけ言います。婚約は、破られても結婚は強制できず、取れるのは損害賠償だけです。内縁は、夫婦の実質があるので、法律婚の効果を借りられます。ただし、借りられるのは、実質に着目した保護までです。

婚約も、届出のない夫婦も、結局は届出がないだけですよね。そんなに、扱いが違うんですか。そこが今日の主題です。まだ夫婦ではない婚約と、すでに夫婦としての生活がある内縁。この2つを分けて、順に見ていきます。

今日の地図。婚約(合意だけで成立・破ると損害賠償だけ・結納は贈与)→ 内縁(婚姻意思+夫婦共同生活・届出だけを欠く)→ 準婚理論(婚姻に準ずる=法律婚の効果が類推される)→ 別れ方(離別=財産分与を類推)→ 借りられる効果/借りられない効果の一覧表。貫く軸=届出がないだけで、夫婦の実質はあるか。 図:今日の地図

  • 婚約(合意だけで成立・破ると損害賠償だけ・結納は贈与)→ 内縁(婚姻意思+夫婦共同生活・届出だけを欠く)→ 準婚理論(婚姻に準ずる=法律婚の効果が類推される)→ 別れ方(離別=財産分与を類推)→ 借りられる効果/借りられない効果の一覧表
  • 貫く軸=届出がないだけで、夫婦の実質はあるか

今日の地図です。まず、婚姻の手前にある婚約を見ます。婚約を破られたとき、何が取れるのか。結納は、何のための贈り物なのか。次に、内縁とは何かを押さえます。そして、婚姻に準ずる関係として、法律婚の効果のどこまでが借りられるのかを見ます。離別のときの扱いも、ここで入れます。最後に、借りられる効果と借りられない効果を、表にします。設例の3つの答えは、その表で回収します。なお、内縁の相手が亡くなったときの扱いは、次の回に回します。今日は、別れる場面までを見ます。

婚約は、約束だけで成立する 破られたら賠償だけ

婚約の成立。婚約=将来婚姻をする合意。当事者の合意だけで成立(諾成)。結納の取交し・仮祝言・同棲の有無は成立要件ではない。事案(高校卒業直後の男女が、将来夫婦となる約束で関係を結び、のち男性が別の女性と結婚した)→ 結納や仮祝言がなくても、婚姻予約の不履行による精神上の苦痛の賠償を認めた。 図:婚約の成立

  • 婚約=将来婚姻をする合意
  • 当事者の合意だけで成立(諾成)
  • 結納の取交し・仮祝言・同棲の有無は成立要件ではない
  • 事案(高校卒業直後の男女が、将来夫婦となる約束で関係を結び、のち男性が別の女性と結婚した)→ 結納や仮祝言がなくても、婚姻予約の不履行による精神上の苦痛の賠償を認めた

内縁の話に入る前に、婚姻の手前の婚約から見ます。婚約とは、将来、婚姻をしようという合意のことです。婚約は、当事者の合意だけで成立します。契約と同じで、諾成といいます。書面も、儀式も、いりません。結納や仮祝言を行わなくても、婚約は成立します。仮祝言とは、正式な挙式の前に、内輪で挙げる簡単な式のことです。事案を見ましょう。高校を卒業して間もない男女が、将来夫婦になる約束で関係を結びました。その後、男性が、別の女性と結婚してしまいました。

判例最判昭38・12・20 民集17巻12号1708頁

結納や仮祝言がなくても、婚約の不履行で賠償を求められる たとえ当事者間において結納の取交し、仮祝言の挙行等の事実がなくても、上告人において被上告人に対し、上告人の右婚姻予約不履行により被上告人の蒙つた精神上の苦痛による損害を賠償すべき義務があるとする原判決は相当であるから、

判決の言う婚姻予約とは、婚約のことです。結納や仮祝言がなくても、婚約の不履行を理由に、精神上の苦痛の賠償が認められました。結納や仮祝言は、婚約があったことを示す材料にはなりますが、成立の要件ではありません。設例のAさんとBさんは、婚約から1年で、挙式の日取りも決まり、式場の申込みもあります。合意があったことは、はっきりしています。

婚約の効果と破棄。婚約が成立→互いに婚姻を成立させるよう努める義務。破棄されたとき:婚姻を強制する(強制執行で婚姻を実現する)=できない(婚姻するかは最後まで本人の自由)/損害賠償=正当の理由なく破棄したときに請求できる。取れる手段は損害賠償だけ。 図:婚約の効果と破棄

  • 婚約が成立→互いに婚姻を成立させるよう努める義務
  • 破棄されたとき:婚姻を強制する(強制執行で婚姻を実現する)=できない(婚姻するかは最後まで本人の自由)/損害賠償=正当の理由なく破棄したときに請求できる
  • 取れる手段は損害賠償だけ

婚約が成立すると、二人は、婚姻を成立させるよう、互いに努める義務を負います。ただし、この義務を強制執行で実現して、無理やり婚姻させることはできません。婚姻するかどうかは、最後まで本人の自由だからです。気持ちが離れた人を、裁判で夫婦にしても、意味がありません。ですから、一方が拒んだとき、相手方が取れる手段は、損害賠償だけです。正当の理由なく婚約を破棄したときに、その賠償を請求できます。設例の問い①は、これで答えが出ます。Bさんは、Aさんに、結婚を強制できません。境界の例で比べます。相手が一方的に別の人と結婚すると言い出して、取りやめたのなら、正当な理由がない破棄です。逆に、婚約中に相手が別の人と関係を続けていたと分かって、それを理由に取りやめたような場合は、正当な理由があると認められやすいので、賠償は問題になりにくいでしょう。理由があるかどうかで、分かれます。ここで問いです。婚約を一方的に破られたとき、婚姻を強制できますか。それとも、賠償だけですか?

強制はできなくて、賠償だけです。

結納は、何のための贈り物か

結納の性質。結納=婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与。事案=挙式後8か月余の夫婦生活・婚姻の届出も完了→のち協議離婚。結納を受け取った側に返還義務なし(授受の目的を達したから)。結納は婚約の成立要件ではない。 図:結納の性質

  • 結納=婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与
  • 事案=挙式後8か月余の夫婦生活・婚姻の届出も完了→のち協議離婚
  • 結納を受け取った側に返還義務なし(授受の目的を達したから)
  • 結納は婚約の成立要件ではない

婚約でよく出てくるのが、結納です。設例でも、Aさんの側から100万円が渡されています。結納の性質を押さえましょう。判決を見ましょう。事案では、結納を受け取った側が、挙式後8か月余、夫婦生活を続けました。婚姻の届出も済んで、法律上の婚姻が成立しました。その後、協議離婚をした、というものです。

判例最判昭39・9・4 民集18巻7号1394頁

結納は一種の贈与。婚姻が成立して目的を達したなら返さなくてよい 結納は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与であるから、本件の如く挙式後八ヵ月余も夫婦生活を続け、その間婚姻の届出も完了し、法律上の婚姻が成立した場合においては、すでに結納授受の目的を達したのであつて、たとい、その後結納の受領者たる被上告人からの申出により協議離婚をするに至つたとしても、被上告人には右結納を返還すべき義務はないと解すべきであり、

結納は、一種の贈与です。贈与とは、タダで財産を与える契約です。ただし、ただの贈り物ではありません。婚約の成立を確かめて、婚姻が成立したら、両家の仲を厚くする目的で渡します。この目的は、婚姻が成立すれば達せられます。婚姻が成立して8か月余の夫婦生活を送ったなら、目的は果たされています。その後に離婚しても、返す義務はありません。この判決が判断したのは、婚姻が成立した場合だけです。成立しなかった場合は、断定しないでおきましょう。目的を達していないので、返すべきかが問題になる、とだけ押さえてください。もう1つ大事なことがあります。結納は、婚約の成立要件ではありません。さっき見たとおり、結納がなくても、婚約は成立します。結納は、あくまで婚約の証しと、婚姻成立を目的にした贈与です。

内縁とは何か 夫婦の実質はあるが届出がない

内縁の意義。内縁(事実婚)=夫婦として暮らす意思で共同生活を営んでいながら、婚姻の届出をしていないため、法律上の婚姻と認められない男女関係。婚姻の3段(届出=成立/婚姻意思=有効/取消原因)のうち、内縁は1段目(届出)が欠ける。単なる同棲(恋人どうし)=婚姻意思がないので内縁ではない。対比:婚約=将来夫婦になる合意(まだ夫婦ではない)/内縁=すでに夫婦としての生活がある(届出だけ欠く)。 図:内縁の意義

  • 内縁(事実婚)=夫婦として暮らす意思で共同生活を営んでいながら、婚姻の届出をしていないため、法律上の婚姻と認められない男女関係
  • 婚姻の3段(届出=成立/婚姻意思=有効/取消原因)のうち、内縁は1段目(届出)が欠ける
  • 単なる同棲(恋人どうし)=婚姻意思がないので内縁ではない
  • 対比:婚約=将来夫婦になる合意(まだ夫婦ではない)/内縁=すでに夫婦としての生活がある(届出だけ欠く)

ここから本題の内縁です。内縁とは、夫婦になる意思で夫婦として共同生活を営んでいるのに、婚姻の届出をしていないので、法律上の婚姻とは認められない関係です。事実婚とも呼びます。婚姻の3段を思い出してください。届出で成立し、婚姻意思があれば有効で、取消原因がなければ取り消されない、という3段でした。内縁は、1段目の届出が欠けている状態です。婚姻の回で、届出をしないまま20年、夫婦として暮らした二人を見ました。あの二人が、内縁です。婚約は、これから夫婦になろうという合意です。まだ、夫婦ではありません。内縁は、すでに夫婦としての生活があります。婚姻の届出だけが、ありません。

ならない場合があります。内縁になるには、夫婦としての実質が要ります。婚姻意思と、夫婦共同生活の2つです。境界の例で比べます。お互いに夫婦のつもりで12年暮らし、周りも夫婦と見ている二人は、内縁です。結婚するつもりはなく、同じ部屋に住んでいるだけの恋人は、同棲であって、内縁ではありません。届出はあるので、1段目は満たしています。ただ、本人たちに婚姻意思がないので、2段目で、無効になります。内縁とは別です。欠けている段が、違うからです。届出をしない理由は、人それぞれです。ただ、そこは問われません。夫婦の実質があるかどうかが、決め手です。設例の問い③の、12年暮らした二人は、この内縁にあたります。

準婚理論 婚姻に準ずる関係なら、法律婚の効果を借りられる

準婚理論。内縁=婚姻に準ずる関係→法律婚の効果の多くが類推(準用)される。類推=条文が直接は当てはまらない場面に、似た場面の規定の理屈を当てはめること。昭33の2つの結論:①内縁の不当破棄=婚姻予約の不履行を理由とする損害賠償でも、不法行為を理由とする損害賠償でも請求できる/②民法760条(婚姻費用の分担)は内縁に準用される(別居中の医療費の分担を命じた)。 図:準婚理論

  • 内縁=婚姻に準ずる関係→法律婚の効果の多くが類推(準用)される
  • 類推=条文が直接は当てはまらない場面に、似た場面の規定の理屈を当てはめること
  • 昭33の2つの結論:①内縁の不当破棄=婚姻予約の不履行を理由とする損害賠償でも、不法行為を理由とする損害賠償でも請求できる/②民法760条(婚姻費用の分担)は内縁に準用される(別居中の医療費の分担を命じた)

内縁には、婚姻の届出がありません。そこで、問題になります。婚姻の規定は、内縁に使えるのでしょうか。判例は、内縁を、婚姻に準ずる関係と見ます。そして、婚姻の効果の多くを、内縁にも当てはめます。これを準婚理論といいます。当てはめ方は、類推です。類推とは、条文が直接は当てはまらない場面に、似た場面の規定の理屈を当てはめることです。判決の言葉を見ましょう。結論は2つに分かれます。破棄されたときの賠償と、婚姻費用です。

判例最判昭33・4・11 民集12巻5号789頁

内縁を不当に破棄されたら、予約の不履行でも不法行為でも賠償を求められる。婚姻費用の分担も内縁に準用される いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。…… されば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。…… 内縁が法律上の婚姻に準ずる関係と認むべきであること前記説明の如くである以上、民法七六〇条の規定は、内縁に準用されるものと解すべきであり、

決め手は、届出が欠けていても、男女が協力して夫婦としての生活を営む点は、婚姻と変わらない、ということです。夫婦の実質に着目して、保護を借りるのです。1つめは、内縁を不当に破棄された人の賠償です。婚約を破られたときと同じ婚姻予約の不履行を理由にしても、不法行為を理由にしても、請求できます。内縁を、夫婦になる約束と見れば、約束を破った責任です。夫婦の関係そのものを守られる利益と見れば、不法行為です。判決は、どちらの組み立ても認めました。709条は、権利又は法律上保護される利益の侵害があれば足ります。内縁の関係も、法律上保護される利益として、守られます。2つめは、婚姻費用です。婚姻費用の分担を定めた条文は、何条でしたか?

760条です。760条が、内縁にも準用されます。判決は準用と言っていますが、内縁に当てはめろと定めた条文があるわけではありません。中身は、さっきの類推です。答案では、判決の言葉どおり、760条は準用、768条は類推適用と書けば足ります。呼び名が違うだけで、中身は同じです。

条文民法760条

民法第760条(婚姻費用の分担) 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

夫婦は、資産、収入、その他一切の事情を考えて、婚姻から生ずる費用を分担します。この判決の事案では、内縁の夫婦が別居していて、別居中の医療費の分担が問題になりました。そして、内縁の夫にも、分担を命じました。法律婚の夫婦と同じように、生活費を分担するんです。同じです。届出がなくても、暮らしを一緒に支える関係だからです。これが、準婚理論の基本の発想です。ただし、この判決が決めたのは、破棄の賠償と、婚姻費用の分担までです。別れたあとの財産分与は、次に見る別の最高裁の決定の話です。決定も、判決と同じく、裁判所の判断の1つの形です。ここは、論文で論点になりうる箇所です。届出がなくても、夫婦としての生活を営む結合だという点を、理由として書けるようにしてください。

別れたとき 離別なら財産分与を借りられる

離別の場面。法律婚の離婚=財産分与(768条)の3要素=清算・離婚後の扶養・慰謝料。内縁が離別で解消したとき=768条を類推適用して財産分与を請求できる扱い(最決平12・3・10は、死亡による解消を否定する前置きとして、離別の類推は準婚的法律関係の保護に適し、その合理性を承認し得るとしても、と述べた)。例:内縁を12年続けた夫が一方的に出て行き、関係が終わった。 図:離別の場面

  • 法律婚の離婚=財産分与(768条)の3要素=清算・離婚後の扶養・慰謝料
  • 内縁が離別で解消したとき=768条を類推適用して財産分与を請求できる扱い(最決平12・3・10は、死亡による解消を否定する前置きとして、離別の類推は準婚的法律関係の保護に適し、その合理性を承認し得るとしても、と述べた)
  • 例:内縁を12年続けた夫が一方的に出て行き、関係が終わった

次は、内縁が解消する場面です。内縁の解消は、生きているうちに別れる離別と、一方が亡くなる死亡に分かれます。今日は離別を見ます。死亡は、次の回で扱います。先に、離婚の回を思い出しましょう。離婚のとき、財産分与の3つの要素は何でしたか?清算と、離婚後の扶養と、慰謝料です。法律婚の離婚では、この財産分与を、768条が定めています。

条文民法768条

民法第768条第1項(財産分与) 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

条文は、協議上の離婚をした者に、財産の分与を認めています。内縁には、離婚がありません。ですから、条文のままでは当てはまりません。そこで類推です。設例の問い③のとおり、内縁を12年続けた夫が、一方的に出て行って、関係が終わったとします。残された妻は、共に築いた財産の清算や、別れたあとの暮らしを支える扶養を、求めたいはずです。離婚した夫婦の場合と、状況は同じです。ですから、離別による内縁の解消には、財産分与の規定を類推して、分与を請求できる扱いです。不当な破棄なら、先ほどの賠償も、あわせて問題になります。

最高裁の決定は、離別による内縁解消の場合に財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとして、その合理性を承認し得る、と述べています。ただし、これは次の回で見る死亡の場面を否定する前置きの一節で、離別の事案を判断したものではありません。別居しているだけで、まだ別れていないときは、どうなりますか。そこは分けて考えます。関係が続いたまま別居している間の生活費は、先ほどの760条の準用です。関係そのものが終わったあとの清算と扶養が、財産分与の類推です。次は、ここまで見た効果を、1つの表にまとめます。

借りられる効果と、借りられない効果 一覧表と冒頭の答え合わせ

内縁に借りられる/借りられない効果(空欄)。列=借りられる(婚姻の規定を類推・準用)/条文・判例が直接守る/借りられない。行=賠償・婚姻費用・財産分与(離別)/借家の承継・扶養利益の喪失/同氏・嫡出推定・(次の回で:相続権・死亡による解消への財産分与・配偶者居住権)。 図:内縁に借りられる/借りられない効果(空欄)。列=借りられる(婚姻の規定を類推・準用)/条文・判例が直接守る/借りられない。行=賠償・婚姻費用・財産分与(離別)/借家の承継・扶養利益の喪失/同氏・嫡出推定・(次の回で:相続権・死亡による解消への財産分与・配偶者居住権)。

ここで、内縁に借りられる効果と借りられない効果を、表にします。ここまで見たものを、先に整理します。借りられるものから。1つめは、不当破棄の損害賠償です。2つめは、婚姻費用の分担で、760条です。3つめは、離別のときの財産分与で、768条の類推です。この3つは、婚姻の規定を、類推や準用で借りるものです。4つめと5つめは、相手が亡くなった場面ですが、どちらも前の回で答えが出ているので、表に入れておきます。この2つは、婚姻の規定を類推するのではありません。別の条文や判例が、内縁の配偶者を直接守っています。4つめは、借りていた家の承継です。借地借家法36条は、居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡したとき、届出はないが、事実上夫婦と同様の関係にあった同居者に、承継を認めています。条文そのものが、事実上夫婦と同様の関係にあった同居者、つまり内縁の配偶者のような人に、承継を認めているのです。借家の回で見た表の1行です。5つめは、損害賠償の回で見た、扶養を受けていた利益の喪失です。内縁の夫が、自動車事故で亡くなったとします。妻は、夫の収入で暮らしていました。妻は相続人ではありません。それでも、これから先も夫に養ってもらえたはずの利益を失ったことを、自分自身の損害として、加害者の側に請求できます。判例が、そう認めています。夫の請求権を相続で受け継ぐのとは、別の道です。

借りられない効果の根拠。同氏=750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」→内縁は各自の氏のまま/嫡出推定=772条「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する」→内縁の子は父との関係を認知(779条)で成立させる/(次の回で)配偶者相続権(890条)・死亡による解消への財産分与・配偶者居住権(1028条)。 図:借りられない効果の根拠

今日見られるのは、2つあります。1つめは、氏です。750条は、夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する、と定めます。婚姻の際に氏を定めるのは、婚姻届に氏を書くからです。内縁には、届出がありません。ですから、各自の氏のままです。2つめは、嫡出推定です。772条は、妻が婚姻中に懐胎した子、つまり婚姻中に妊娠した子を、夫の子と推定します。内縁の子には、この推定は及びません。父との関係は、認知で成立させます。779条です。実は、借りられないものは、まだあります。内縁の相手が亡くなったときの、相続権と、財産分与と、配偶者居住権です。この3つは、死亡の場面の話です。次の回で、理由まで含めて見ます。

借りられる/借りられない効果(完成)。借りられる(類推・準用)=不当破棄の損害賠償(予約不履行でも不法行為でも)/婚姻費用の分担(760条)/離別の財産分与(768条)。条文・判例が直接守る=借家の承継(相続人なしのとき・借地借家法36条)/扶養利益の喪失の賠償(判例が固有の損害として)。借りられない=同氏(750条)/嫡出推定(772条→認知779条)/次の回で:配偶者相続権(890条)・死亡による解消への財産分与・配偶者居住権(1028条)。軸=夫婦共同生活の実質に着目した保護は借りられる(直接守る2つも同じ実質に着目)/届出を前提に画一的に定まる身分の秩序は借りられない。

  • 借りられる/借りられない効果(完成)
  • 借りられる(類推・準用)=不当破棄の損害賠償(予約不履行でも不法行為でも)/婚姻費用の分担(760条)/離別の財産分与(768条)
  • 条文・判例が直接守る=借家の承継(相続人なしのとき・借地借家法36条)/扶養利益の喪失の賠償(判例が固有の損害として)
  • 借りられない=同氏(750条)/嫡出推定(772条→認知779条)/次の回で:配偶者相続権(890条)・死亡による解消への財産分与・配偶者居住権(1028条)
  • 軸=夫婦共同生活の実質に着目した保護は借りられる(直接守る2つも同じ実質に着目)/届出を前提に画一的に定まる身分の秩序は借りられない

傾向として言えるのは、こうです。夫婦として共同生活を送っている実質に着目した保護は、借りられます。賠償、生活費の分担、離別の清算です。相続人がいない場合の借家の承継と、扶養利益の喪失も、同じ実質に着目したものですが、こちらは別の条文や判例が直接守っています。一方で、届出があることを前提に、画一的に決まる身分の秩序は、借りられません。氏と、嫡出推定です。届出をしていない関係にまで及ぼすと、誰が夫婦で、誰の子かが、外から分からなくなります。ここで問いです。内縁の妻に類推されない効果を、ひとつ挙げてください。

小さな弁別も1つ。内縁の妻が夫と別居して、別居中の医療費を負担しました。これは、760条の準用です。では、恋人として同棲しているだけの二人は?婚姻意思がないので、内縁にあたらず、準婚の対象になりません。では、冒頭の設例に戻ります。問い①。Bさんは、Aさんに、結婚を強制できるか。できません。婚姻は、本人の自由意思で決まるので、取れる手段は損害賠償だけです。問い②。Bさんは、何を請求できるか。正当な理由のない破棄として、損害賠償を請求できます。精神上の苦痛への慰謝料や、式場のキャンセル料40万円のような損害が、請求の対象になりえます。結納100万円の返還は、別の論点です。判例が直接判断したのは、婚姻が成立した場合だけなので、ここでは断定しません。問い③。12年暮らした内縁で、Aさんが出て行ったら、どうなるか。内縁は、婚姻に準ずる関係です。別居している間の婚姻費用は、760条の準用です。関係が終わったあとの財産分与は、768条の類推で、請求できる扱いです。不当な破棄なら、賠償もあわせて問題になります。

賠償だけの婚約と、効果を借りられる内縁。ここが最大の違いです。婚約は、まだ夫婦ではありません。内縁は、夫婦の実質があるので、法律婚の効果を借りられます。ただし、借りられるのは、実質に着目した保護までです。

今日の地図(保存版)

今日のまとめ。①婚約=合意だけで成立・破られても婚姻は強制できず取れる手段は損害賠償だけ(結納は婚約の証し+婚姻成立を目的とする贈与)②内縁=婚姻意思+夫婦共同生活・届出だけを欠く→準婚理論(類推・準用)で借りられる(賠償・婚姻費用)/条文・判例が直接守る(借家の承継・扶養利益の喪失)/借りられない(氏・嫡出推定)③離別=財産分与(768条)を類推。次の回=死亡の場面。 図:今日のまとめ

  • ①婚約=合意だけで成立・破られても婚姻は強制できず取れる手段は損害賠償だけ(結納は婚約の証し+婚姻成立を目的とする贈与)②内縁=婚姻意思+夫婦共同生活・届出だけを欠く→準婚理論(類推・準用)で借りられる(賠償・婚姻費用)/条文・判例が直接守る(借家の承継・扶養利益の喪失)/借りられない(氏・嫡出推定)③離別=財産分与(768条)を類推
  • 次の回=死亡の場面

最後にまとめます。柱は3本です。1本目。婚約は、合意だけで成立します。破られても、婚姻は強制できません。取れるのは、損害賠償だけです。結納は、婚約の証しであり、婚姻の成立を目的にした贈与です。2本目。内縁は、婚姻意思と夫婦共同生活があって、届出だけを欠く関係です。準婚理論で、賠償と婚姻費用の分担は借りられます。借家の承継や扶養利益の喪失は、別の条文や判例が直接守っています。届出を前提にした氏と嫡出推定は、借りられません。3本目。離別のときです。離婚のときの財産分与、768条が類推されて、財産分与を請求できる扱いです。

内縁なら、別れるときの清算も求められます。では、別れではなく、亡くなったときはどうなるのか。次の回で見ます。今日の表を、整理しておいてください。

参照条文

  • 民法760条
  • 民法768条

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