民法ゼロから民法#353

相続人の範囲と順位・代襲相続と再代襲

民法の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→

印刷用PDFを開く

第8章 相続 #353/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

長男が先に亡くなっていたら、孫は

冒頭の設例。A(祖父・被相続人)、B(長男・5年前に死亡)、C(Bの子=孫)、D(Cの子=ひ孫)、E(Aの妻)。問い=Aが亡くなった。長男Bは5年前に亡くなっている。孫Cは、Aの遺産を受け取れるか。 図:冒頭の設例

  • A(祖父・被相続人)、B(長男・5年前に死亡)、C(Bの子=孫)、D(Cの子=ひ孫)、E(Aの妻)
  • 問い=Aが亡くなった
  • 長男Bは5年前に亡くなっている
  • 孫Cは、Aの遺産を受け取れるか

設例です。祖父が亡くなりました。祖父には妻と、長男がいました。ところが長男は、5年前に亡くなっています。長男には子がいて、祖父から見れば孫にあたります。問いです。孫は、祖父の遺産を受け取れるのでしょうか。先に答えの形だけ言います。孫は、受け取れます。長男に代わって、孫が相続人になる、代襲相続という仕組みがあるからです。前回、同時存在の原則のところで、相続開始の時に存在しない人は相続できないこと、そして同時死亡の場合でも孫が代襲することを見ました。今日は、その代襲を、条文の作りから確かめます。今日の問いは、誰が相続人になるのか、です。範囲、順位、胎児、代襲、再代襲まで、家系図を見て相続人を確定できるようになることが目標です。

相続人は法律が決める

法定相続人。相続人=被相続人の財産を包括して承継できる一般的な資格をもつ者。民法が種類と範囲を画一的に定める(被相続人の意思で相続人を創ることはできない)。法定相続人=①配偶者相続人 ②配偶者以外の相続人(血族相続人)。血族相続人の順位=第1順位 子(その代襲者)→第2順位 直系尊属→第3順位 兄弟姉妹(その子)。 図:法定相続人

  • 相続人=被相続人の財産を包括して承継できる一般的な資格をもつ者
  • 民法が種類と範囲を画一的に定める(被相続人の意思で相続人を創ることはできない)
  • 法定相続人=①配偶者相続人 ②配偶者以外の相続人(血族相続人)
  • 血族相続人の順位=第1順位 子(その代襲者)→第2順位 直系尊属→第3順位 兄弟姉妹(その子)

まず、相続人とは何かです。相続人とは、亡くなった人、つまり被相続人の財産を、まとめて引き継ぐことができる、一般的な資格をもつ人です。ここで大事なのは、その範囲を、民法が全国一律に決めている点です。被相続人が、この人を相続人にする、と決めて、相続人を創ることはできません。民法が定める相続人を、法定相続人といいます。法定相続人は、2種類です。1つ目が、配偶者です。2つ目が、配偶者以外の相続人で、血のつながった親族なので、血族相続人と呼びます。血族相続人には順位があります。第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です。そして、子と兄弟姉妹には、先に亡くなったときなどにその子が代わる、代襲の仕組みがあります。この地図を、今日、順に埋めていきます。

そして順位がある、という意味は、あとで条文で確かめます。まず配偶者から見ます。

配偶者は常に相続人 890条

890条。配偶者は常に相続人。「常に」=順位に関係なく、血族相続人がいてもいなくても相続人になる。血族相続人(887条・889条で相続人となるべき者)がいるときは、その者と同順位(共同相続人)。配偶者=法律上の配偶者(内縁の配偶者は含まない)。取り分は別の回。 図:890条

  • 配偶者は常に相続人
  • 「常に」=順位に関係なく、血族相続人がいてもいなくても相続人になる
  • 血族相続人(887条・889条で相続人となるべき者)がいるときは、その者と同順位(共同相続人)
  • 配偶者=法律上の配偶者(内縁の配偶者は含まない)
  • 取り分は別の回

配偶者の条文です。

条文民法890条

民法第890条(配偶者の相続権) 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

読み取るのは2点です。1つ目、「常に」です。血族の順位とは関係なく、配偶者は、血族相続人がいてもいなくても、相続人になります。2つ目、後段です。887条または889条で相続人になる血族相続人がいるときは、配偶者は、その者と同順位、つまり、共同相続人になります。順位の列に並ぶのではなく、どの順位の相続人とも一緒に相続する立場です。事実上の夫婦として暮らしていた内縁の妻も、配偶者として相続人になるのですか。なりません。ここでいう配偶者は、法律上の配偶者です。内縁、つまり婚姻届のない夫婦は、法律上の配偶者ではありません。内縁の回で見たとおり、配偶者の相続権は、内縁には類推されません。ですから、890条の配偶者には含まれません。取り分、つまり、いくらずつ受け取るのかは、あとの回で扱います。今日は、誰が相続人か、に絞ります。

血族相続人の順位 887条1項・889条

血族相続人の順位。第1順位=子(887条1項)/第2順位=直系尊属(889条1項1号。親等の近い者が先)/第3順位=兄弟姉妹(889条1項2号)。最優先順位の者だけが相続人。先順位がいる限り後順位は相続できない。同順位に複数いれば共同相続人。 図:血族相続人の順位

  • 第1順位=子(887条1項)/第2順位=直系尊属(889条1項1号。親等の近い者が先)/第3順位=兄弟姉妹(889条1項2号)
  • 最優先順位の者だけが相続人
  • 先順位がいる限り後順位は相続できない
  • 同順位に複数いれば共同相続人

血族相続人の順位です。まず、第2順位と第3順位を定める条文を見ます。

条文民法889条

民法第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権) 1 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。  一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。  二 被相続人の兄弟姉妹 2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

柱書を読みます。「887条の規定により相続人となるべき者がない場合には」、直系尊属、次に兄弟姉妹の順で相続人になる、とあります。887条1項は、被相続人の子は相続人となる、という条文です。つまり、順位は、子、直系尊属、兄弟姉妹です。ここでの原則は、最も優先順位の高い者だけが、血族相続人になる、です。子がいる限り、直系尊属は相続人になりません。子も直系尊属もいなければ、はじめて兄弟姉妹の出番です。同じ順位の人が複数いれば、その全員が、共同相続人です。たとえば子が3人なら、3人全員が第1順位の相続人です。

子が1人でもいれば、直系尊属と兄弟姉妹は、相続人になりません。

第1順位 子の範囲と胎児

子の範囲。実子=嫡出子・嫡出でない子(父との関係は認知)。養子(普通養子)=縁組の日から養親の嫡出子の身分(809条)。養親の血族との関係が生じる(727条)。実方の父母との親族関係は縁組後も続く。特別養子=実方の父母及びその血族との親族関係が終了する(817条の9本文)。ただし書=夫婦の一方が他方の子を特別養子にしたとき、他方(実の親)及びその血族との関係は終了しない。 図:子の範囲

  • 実子=嫡出子・嫡出でない子(父との関係は認知)
  • 養子(普通養子)=縁組の日から養親の嫡出子の身分(809条)
  • 養親の血族との関係が生じる(727条)
  • 実方の父母との親族関係は縁組後も続く
  • 特別養子=実方の父母及びその血族との親族関係が終了する(817条の9本文)
  • ただし書=夫婦の一方が他方の子を特別養子にしたとき、他方(実の親)及びその血族との関係は終了しない

第1順位の子から見ます。887条1項の「子」には、どこまで入るのでしょうか。まず、実の子です。婚姻中の夫婦の子である嫡出子は、もちろん入ります。婚姻していない男女の子、嫡出でない子も、子です。ただし、父との関係は、認知によって生じるのでした。認知された子は、父の子として相続人になります。以前は、嫡出でない子の取り分が少ない時代がありましたが、現在の民法にその区別はありません。取り分は、あとの回で扱います。次に、養子です。養子の回で見たとおり、普通養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します。809条です。また、養親の血族との間にも、縁組の日から、親族関係が生じます。727条です。ですから、養子は、養親の子として、養親の相続人になります。

普通養子では、切れません。実方の父母との親族関係は、縁組をしたあとも続きます。ですから、養子は、養親の相続人であると同時に、実の親の相続人でもあります。

特別養子の確認。特別養子縁組=養子と実方の父母及びその血族との親族関係が終了する(817条の9本文)。実方の親から見ると、この養子は原則として親族でなくなっている。例外=ただし書(配偶者の子を特別養子にした場合の、その実の親との関係は続く)。 図:特別養子の確認

  • 特別養子縁組=養子と実方の父母及びその血族との親族関係が終了する(817条の9本文)
  • 実方の親から見ると、この養子は原則として親族でなくなっている
  • 例外=ただし書(配偶者の子を特別養子にした場合の、その実の親との関係は続く)

確認の問いです。特別養子縁組によって、養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、どうなるのでしたか?終了します。817条の9でした。ですから、特別養子は、実方の親から見ると、親族ではなくなっています。実方の親を、原則として相続しません。例外は、夫婦の一方が、配偶者の子を特別養子にした場合です。817条の9のただし書により、その配偶者、つまり生みの親との関係は終了しません。ですから、その生みの親の相続人にはなります。

胎児。886条1項=胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。2項=胎児が死体で生まれたときは、適用しない。設例=夫が死亡したとき、妻は妊娠中。生きて生まれた→子として相続人。死産→相続人でない。 図:胎児

  • 886条1項=胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす
  • 2項=胎児が死体で生まれたときは、適用しない
  • 設例=夫が死亡したとき、妻は妊娠中
  • 生きて生まれた→子として相続人
  • 死産→相続人でない

次は、胎児です。886条は、権利能力のところで一度読みました。今日は、相続の場面で確かめます。まだ生まれていない子は、相続人になるのでしょうか。条文です。

条文民法886条

民法第886条(相続に関する胎児の権利能力) 1 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。 2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

設例です。夫が亡くなりました。そのとき、妻は妊娠中でした。胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされます。ですから、無事に生きて生まれたなら、その子は、夫の死亡の時にすでに子として存在していたものとして扱われ、夫の相続人になります。一方、2項のとおり、死体で生まれたときは、この規定は適用されません。死産であれば、その子は相続人にならなかったことになります。生きて生まれることが、必要なのです。権利能力の回で見た、停止条件説と解除条件説ですね。その説明はそちらに譲ります。相続人になるかどうかという結論は、どちらの説でも同じです。

代襲相続 887条2項

代襲相続。887条2項=被相続人の子が、①相続の開始以前に死亡 ②891条の規定に該当(欠格)③廃除、によって相続権を失ったとき→その者の子が代襲して相続人となる。用語=被代襲者(被相続人の子)/代襲者(その子)/代襲相続。 図:代襲相続

  • 887条2項=被相続人の子が、
  • ①相続の開始以前に死亡
  • ②891条の規定に該当(欠格)③廃除、によって相続権を失ったとき→その者の子が代襲して相続人となる
  • 用語=被代襲者(被相続人の子)/代襲者(その子)/代襲相続

ここから、今日の核心です。まず、前回の確認から入ります。確認の問いです。前回見た同時死亡の推定のとき、被相続人と子は互いに相続しますか。また、子の子、つまり孫は、代襲できますか?互いに相続しません。でも、孫は代襲できます。887条2項の「以前」に、同時も含まれるからでした。それを踏まえて、条文を全文で読みます。

条文民法887条

民法第887条(子及びその代襲者等の相続権) 1 被相続人の子は、相続人となる。 2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。 3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

2項を分けて読みます。代襲が起きる原因は、3つです。1つ目、被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき。2つ目、891条の規定に該当したとき。これは相続欠格です。3つ目、廃除によって相続権を失ったときです。前回少し触れたとおり、欠格は、被相続人を故意に死亡させて刑に処せられたような場合に、資格を失うことです。廃除は、虐待などを理由に、家庭裁判所が相続人から外すことです。欠格と廃除の中身は、次の回で扱います。ここでは、この3つが、代襲相続の原因として条文に挙がっている、と押さえてください。用語を確定します。相続権を失った被相続人の子を、被代襲者といいます。その子を、代襲者といいます。代襲者が相続人になることが、代襲相続です。

問い。長男Bが相続を放棄していた。Bの子C(孫)は、Bに代わって相続人になるか。答え=ならない。887条2項の原因は、死亡・891条該当・廃除の3つだけ。放棄は挙がっていない。 図:問い

  • 長男Bが相続を放棄していた
  • Bの子C(孫)は、Bに代わって相続人になるか
  • 答え=ならない
  • 887条2項の原因は、死亡・891条該当・廃除の3つだけ
  • 放棄は挙がっていない

問いです。長男が、相続を放棄していました。長男の子の孫は、長男に代わって相続人になるでしょうか?代襲相続の原因は、死亡と、欠格と、廃除の3つだったので、放棄は入っていません。だから、ならない、と思います。決め手は条文です。887条2項が挙げる原因は、死亡、891条該当、廃除です。放棄は、挙がっていません。ですから、放棄した人の子は、代襲しません。

再代襲。887条3項=代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は891条該当・廃除によって代襲相続権を失った場合に、前項を準用。A(祖父)→B(長男・先死亡)→C(孫・先死亡)→D(ひ孫)=再代襲。さらにDも→Dの子=再々代襲。子の系統はどこまでも続く。 図:再代襲

  • 887条3項=代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は891条該当・廃除によって代襲相続権を失った場合に、前項を準用
  • A(祖父)→B(長男・先死亡)→C(孫・先死亡)→D(ひ孫)=再代襲
  • さらにDも→Dの子=再々代襲
  • 子の系統はどこまでも続く

次に、3項です。代襲者の孫自身も、相続の開始以前に死亡していたら、どうなるのでしょうか。3項は、2項の規定を、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は891条に該当し、若しくは廃除によって、代襲相続権を失った場合に準用する、と定めています。設例で見ます。祖父Aが亡くなりました。長男Bは先に亡くなっています。その子の孫Cも、先に亡くなっています。ただし、Cには子、つまりAのひ孫のDがいます。この場合、Dが、Cを代襲して相続人になります。これが再代襲相続です。さらに、Dも相続の開始以前に亡くなっていて、Dに子がいれば、その子が代襲します。これは再々の代襲相続です。3項が前項を準用する形なので、何度でも続きます。子の系統は、どこまでも代襲が続く、と押さえてください。

冒頭の答え。A(祖父)の死亡時、B(長男)は5年前に死亡(原因=相続の開始以前の死亡)→Bの子C(孫)がBを代襲して相続人。Aの妻Eは常に相続人→EとCは共同相続人(890条)。 図:冒頭の答え

  • A(祖父)の死亡時、B(長男)は5年前に死亡(原因=相続の開始以前の死亡)→Bの子C(孫)がBを代襲して相続人
  • Aの妻Eは常に相続人→EとCは共同相続人(890条)

冒頭の設例に戻ります。祖父の死亡のとき、長男は5年前に亡くなっていました。これは、相続の開始以前の死亡にあたります。したがって、長男の子である孫が、長男を代襲して、相続人になります。祖父の妻は、890条により常に相続人で、孫と共同相続人になります。

直系卑属でない者は代襲しない ただし書

ただし書。887条2項ただし書=被相続人の直系卑属でない者は、代襲しない。養親A→養子B(先に死亡)。縁組の日の前に生まれていたBの子C/縁組の日より後に生まれたBの子D。727条=縁組の日から親族関係を生ずる。 図:ただし書

  • 887条2項ただし書=被相続人の直系卑属でない者は、代襲しない
  • 養親A→養子B(先に死亡)
  • 縁組の日の前に生まれていたBの子C/縁組の日より後に生まれたBの子D
  • 727条=縁組の日から親族関係を生ずる

887条2項には、ただし書がありました。被相続人の直系卑属でない者は、代襲しない、というものです。直系卑属は、親族の最初の回の言葉で、子や孫のように、本人から真っすぐ下に続く血族でした。養子の回で予告し、前回も少し触れた問いです。養子が、養親より先に亡くなりました。養子の子のうち、縁組の前に生まれていた子は、養親を代襲するでしょうか?縁組の前に生まれていた子は、養親を代襲しません。ただ、理由は血のつながりの有無ではありません。727条は、養子と養親及びその血族との間に、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる、と定めています。縁組の日から、です。養子の回で見たとおり、727条が結ぶのは、養子と、養親およびその血族です。縁組の前に生まれていた子は、縁組の前から、養子の血族です。縁組で新しく引かれるのは、養子と養親の側を結ぶ線だけで、前からある線の先にいる人まで、さかのぼって結ぶことはしません。縁組の前に生まれていた養子の子は、縁組によって、養親との間に血族関係を生じません。したがって、養親の直系卑属ではなく、ただし書にあたります。対して、縁組のあとに生まれた養子の子は、養親の血族として生まれています。養親の直系卑属です。ですから、ただし書の対象ではなく、養親を代襲して、相続人になります。縁組の日の前か後か、が境目です。この問題は、兄弟姉妹の代襲相続の場面でも、最高裁が同じ結論を示しています。のちほど、そこで全文を読みます。

第2順位 直系尊属には代襲がない

直系尊属。889条1項1号=被相続人の直系尊属。親等の異なる者の間では、その近い者が先。同じ親等(父母)は共同相続人。代襲の定め無し。ケース1=A(被相続人・独身・子なし)、B(父・健在)、C(母・先死亡)、D(母方の祖父・健在)、E(父方の祖母・健在)→Bのみ。ケース2=父母とも先死亡→DとEが共同相続人(ともに2親等。直系尊属として自分の資格で)。 図:直系尊属

  • 889条1項1号=被相続人の直系尊属
  • 親等の異なる者の間では、その近い者が先
  • 同じ親等(父母)は共同相続人
  • 代襲の定め無し
  • ケース1=A(被相続人・独身・子なし)、B(父・健在)、C(母・先死亡)、D(母方の祖父・健在)、E(父方の祖母・健在)→Bのみ
  • ケース2=父母とも先死亡→DとEが共同相続人(ともに2親等。直系尊属として自分の資格で)

子も、子の代襲者もいないとき、第2順位の直系尊属に移ります。889条1項1号です。ただし書にあるとおり、親等の異なる者の間では、その近い者が先です。父母は1親等、祖父母は2親等ですから、父母が先です。同じ親等の人、たとえば父と母は、共同相続人です。設例です。被相続人Aは独身で、子がいません。父Bは健在、母Cは先に亡くなっています。母方の祖父Dは健在、父方の祖母Eも健在です。誰が相続人でしょうか。並びません。相続人は、父のBだけです。親等の近い者が先なので、1親等の父が、2親等の祖父母に優先します。母方の祖父は、母に代わる者ではなく、2親等の直系尊属として、父がいる限り、出番がありません。ここで押さえるのは、直系尊属には、代襲相続という仕組みが無い、ということです。889条1項1号に、代襲を認める定めはありません。2項が準用しているのは、前項第2号、つまり兄弟姉妹の場合だけです。では、父母がどちらも先に亡くなっていたらどうでしょう。母方の祖父Dも、父方の祖母Eも、2親等で同じ親等ですから、DとEが共同相続人です。Dは、母を代襲したのではなく、直系尊属として、自分の資格で相続人になるのです。親等の近い父母がいなくなったので、次に近い祖父母に、順番が回ってきたということです。

第3順位 兄弟姉妹の代襲は一代限り

兄弟姉妹。889条1項2号=被相続人の兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)。2項=887条2項を準用(その子〔甥・姪〕が代襲)。887条3項は準用していない=再代襲なし。板=A(被相続人・子なし・両親とも先死亡)、B(兄・健在)、C(姉・先死亡)、D(Cの子=姪)、E(Dの子)。BとDが共同相続人。Eは相続人でない(Dも先に死亡していても、再代襲がないので相続人はBのみ)。 図:兄弟姉妹

  • 889条1項2号=被相続人の兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)
  • 2項=887条2項を準用(その子〔甥・姪〕が代襲)
  • 887条3項は準用していない=再代襲なし
  • 板=A(被相続人・子なし・両親とも先死亡)、B(兄・健在)、C(姉・先死亡)、D(Cの子=姪)、E(Dの子)
  • BとDが共同相続人
  • Eは相続人でない(Dも先に死亡していても、再代襲がないので相続人はBのみ)

子も直系尊属もいないとき、第3順位の兄弟姉妹です。889条1項2号です。そして、先ほど読んだ2項が、887条2項を準用しています。ですから、兄弟姉妹が先に亡くなっていたとき、その子、つまり甥や姪が代襲します。

代襲の有無を順位ごとに比較。子の系統=代襲あり(887条2項)・再代襲あり(887条3項)=何代でも/直系尊属=代襲の定め無し(親等の近い者が自分の資格で相続)/兄弟姉妹の系統=代襲あり(889条2項が887条2項を準用)・再代襲なし(887条3項は準用なし)=その子まで一代限り。 図:代襲の有無を順位ごとに比較

ここで、条文の作りを見てください。2項が準用しているのは、887条2項だけです。再代襲を定めた887条3項は、準用されていません。そのため、兄弟姉妹の系統では、再代襲がありません。子の系統は何代でも、兄弟姉妹の系統は一代限り、と覚えます。

兄弟姉妹。889条1項2号=被相続人の兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)。2項=887条2項を準用(その子〔甥・姪〕が代襲)。887条3項は準用していない=再代襲なし。板=A(被相続人・子なし・両親とも先死亡)、B(兄・健在)、C(姉・先死亡)、D(Cの子=姪)、E(Dの子)。BとDが共同相続人。Eは相続人でない(Dも先に死亡していても、再代襲がないので相続人はBのみ)。 図:兄弟姉妹

  • 889条1項2号=被相続人の兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)
  • 2項=887条2項を準用(その子〔甥・姪〕が代襲)
  • 887条3項は準用していない=再代襲なし
  • 板=A(被相続人・子なし・両親とも先死亡)、B(兄・健在)、C(姉・先死亡)、D(Cの子=姪)、E(Dの子)
  • BとDが共同相続人
  • Eは相続人でない(Dも先に死亡していても、再代襲がないので相続人はBのみ)

設例です。被相続人Aは子がなく、両親も先に亡くなっています。兄のBは健在、姉のCは先に亡くなっていて、Cの子の姪Dがいます。この場合、相続人は、兄Bと、姪Dです。Dは、Cを代襲しています。問いです。姪のDも先に亡くなっていて、Dに子のEがいました。Eは相続人になるでしょうか?887条3項を準用していないので、ならない、と思います。Eは相続人になりません。相続人は、兄のBだけです。なお、兄弟姉妹の場合でも、条文上は欠格と廃除が代襲相続の原因に準用されます。ただし、廃除は、遺留分をもつ推定相続人、つまり、いま相続が始まれば相続人になる人が対象です。892条です。遺留分とは、一定の相続人に保障された、相続財産の最低限の取り分のことです。兄弟姉妹には、この遺留分がありません。1042条1項です。ですから、兄弟姉妹の場面で実際に代襲相続の原因になるのは、主に死亡と欠格です。廃除の本論は、次の回で扱います。

判例。最判令6・11・12(民集78巻6号1377頁)。事案=被相続人Cのいとこ B(Dの姉妹の子)は、Bの子らが生まれたあとに、被相続人の母Dの養子になった(Bは被相続人Cの妹になった)。Bは被相続人より先に死亡。Bの縁組前の子らが、889条2項・887条2項によって代襲して相続人になると主張。原審は「直系卑属でない者」を「傍系卑属でない者」と読み替えて認めた→最高裁は破棄自判。 図:判例

  • 最判令6・11・12(民集78巻6号1377頁)
  • 事案=被相続人Cのいとこ B(Dの姉妹の子)は、Bの子らが生まれたあとに、被相続人の母Dの養子になった(Bは被相続人Cの妹になった)
  • Bは被相続人より先に死亡
  • Bの縁組前の子らが、889条2項・887条2項によって代襲して相続人になると主張
  • 原審は「直系卑属でない者」を「傍系卑属でない者」と読み替えて認めた→最高裁は破棄自判

先ほどの、養子の子の問題が、兄弟姉妹の場面で争われた判例があります。事案です。被相続人のいとこにあたるBは、自分の子らが生まれたあとで、被相続人の母Dの養子になりました。これで、Bは、被相続人の妹になりました。Bは、被相続人より先に亡くなりました。Bの縁組前の子らは、889条2項と887条2項によって、Bを代襲し、被相続人の相続人になる、と主張しました。兄弟姉妹の場面では、ただし書の読み方が問題になりました。甥や姪は、被相続人から見ると、真っすぐ下に続く直系ではなく、傍系です。傍系は、親族の最初の回で見た、兄弟姉妹のように共通の祖先を介してつながる関係です。ですから、ただし書の「被相続人の直系卑属でない者」を文字どおり当てると、甥や姪は、誰も代襲できないことになります。原審は、これを「被相続人の傍系卑属でない者」と読み替えて、子らの主張を認めました。最高裁は、この読み替えを退けました。判旨です。

判例最判令6・11・12 民集78巻6号1377頁

兄弟姉妹の代襲と養子縁組前の子 したがって、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができないと解するのが相当である。

言葉を直します。「共通する親」は、被相続人とその兄弟姉妹の、共通の親のことです。この事案では、被相続人と妹のBは、養子縁組によって、共通の親Dの子の関係になりました。甥や姪は、被相続人から見れば傍系ですが、共通の親から見れば、孫、つまり直系卑属です。縁組のあとに生まれたBの子なら、Dの孫です。縁組の前に生まれていたBの子は、Dの直系卑属ではありません。判決が述べたことは、被相続人の兄弟姉妹が親の養子であるとき、縁組の前に生まれていた養子の子は、共通の親の直系卑属ではなく、養子を代襲して相続人にはなれない、ということです。理由は、先ほどのただし書と同じです。887条2項ただし書は、縁組の前から養子の子である者は、縁組による血族関係を生じないので、代襲できないことを明らかにしたものだ、と最高裁は読みました。その際に、727条を参照しています。889条2項が準用するただし書も、同じ趣旨だと解されたのです。縁組の日の前か後か、という境目は、兄弟姉妹の場面でも変わりません。

今日の地図(保存版)

相続人の確定5ステップ。①配偶者がいれば常に相続人(890条)②子(胎児を含む)がいれば第1順位。子が先に死亡等なら、その子が代襲(何代でも。ただし書=直系卑属でない者は除く)③子の系統が全員いなければ、第2順位=直系尊属(親等の近い者が先・代襲なし)④直系尊属もいなければ、第3順位=兄弟姉妹(その子まで・一代限り)⑤配偶者は、いる順位の者と共同相続人。 図:相続人の確定5ステップ

  • ①配偶者がいれば常に相続人(890条)②子(胎児を含む)がいれば第1順位
  • 子が先に死亡等なら、その子が代襲(何代でも。ただし書=直系卑属でない者は除く)③子の系統が全員いなければ、第2順位=直系尊属(親等の近い者が先・代襲なし)④直系尊属もいなければ、第3順位=兄弟姉妹(その子まで・一代限り)⑤配偶者は、いる順位の者と共同相続人

まとめます。家系図から相続人を確定する手順は、5つです。1つ目、配偶者がいれば、配偶者は常に相続人です。2つ目、子がいれば、第1順位です。胎児も、生きて生まれれば子です。子が先に亡くなっていれば、その子が代襲します。原因は、死亡、欠格、廃除で、放棄は含まれません。子の系統は、何代でも代襲が続きます。ただし、被相続人の直系卑属でない者、たとえば縁組前の養子の子は、代襲しません。3つ目、子の系統に誰もいなければ、第2順位の直系尊属です。親等の近い者が先で、代襲はありません。4つ目、直系尊属もいなければ、第3順位の兄弟姉妹です。先に亡くなっていれば、その子までが代襲し、再代襲はありません。5つ目、配偶者は、いる順位の人と、共同相続人になります。

配偶者の有無×どの順位の者がいるか。配偶者あり+第1順位(子・代襲者)/配偶者あり+第2順位(直系尊属)/配偶者あり+第3順位(兄弟姉妹・その子)/配偶者あり+血族相続人なし→配偶者のみ/配偶者なし→いる最上位の順位の者のみ。取り分は別の回。 図:配偶者の有無×どの順位の者がいるか

  • 配偶者あり+第1順位(子・代襲者)/配偶者あり+第2順位(直系尊属)/配偶者あり+第3順位(兄弟姉妹・その子)/配偶者あり+血族相続人なし→配偶者のみ/配偶者なし→いる最上位の順位の者のみ
  • 取り分は別の回

組合せも整理します。配偶者がいれば、子や代襲者がいるときは配偶者と子の系統、子の系統がいなければ配偶者と直系尊属、それもいなければ配偶者と兄弟姉妹の系統です。血族相続人が誰もいなければ、配偶者だけです。配偶者がいなければ、いる最上位の順位の人だけが相続人です。

兄弟姉妹。889条1項2号=被相続人の兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)。2項=887条2項を準用(その子〔甥・姪〕が代襲)。887条3項は準用していない=再代襲なし。板=A(被相続人・子なし・両親とも先死亡)、B(兄・健在)、C(姉・先死亡)、D(Cの子=姪)、E(Dの子)。BとDが共同相続人。Eは相続人でない(Dも先に死亡していても、再代襲がないので相続人はBのみ)。 図:兄弟姉妹

  • 889条1項2号=被相続人の兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき)
  • 2項=887条2項を準用(その子〔甥・姪〕が代襲)
  • 887条3項は準用していない=再代襲なし
  • 板=A(被相続人・子なし・両親とも先死亡)、B(兄・健在)、C(姉・先死亡)、D(Cの子=姪)、E(Dの子)
  • BとDが共同相続人
  • Eは相続人でない(Dも先に死亡していても、再代襲がないので相続人はBのみ)

先ほどの兄弟姉妹の家系図に、手順を当ててみます。姪のDは健在なので、その子のEに順番は回りません。仮にDが先に亡くなっていても、再代襲がないので、Eは外れます。兄弟姉妹の系統は、その子までで止まります。冒頭の孫は、長男が先に亡くなっていたので代襲して、祖父の妻と一緒に相続人になる、という結論でした。取り分は、あとの回で扱います。次は、相続人の資格を失う、欠格と廃除を見ます。

参照条文

  • 民法890条
  • 民法889条
  • 民法886条
  • 民法887条

民法 全体ロードマップへ →

民法 の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→