民訴ゼロから民訴#67

既判力とは何か(判決の確定・3つの作用場面)

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第3章 訴訟の終了 #67/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

もう一度、同じ訴えを起こせるか

冒頭事案の関係図(A=土地の賃借権を主張して敗訴した原告、B=土地の所有者/Aが同じ賃借権確認訴訟をもう一度起こそうとしている) 図:冒頭事案の関係図

  • A=土地の賃借権を主張して敗訴した原告、B=土地の所有者
  • Aが同じ賃借権確認訴訟をもう一度起こそうとしている

結論から言うと、その裁判は起こせても、Aさんはまた負けます。前の裁判で決着した中身は、もう争い直せなくなっているからです。訴えを起こすこと自体は誰でもできます。裁判所が門前払いするわけではありません。ただ、いったん決着した中身については、後の裁判所がもう一度審理し直すことを禁じる力が働きます。前回、判決は言い渡しによって効力を持ち、上訴できなくなって確定したとき、既判力や執行力という判決の本番の効力が問題になる、というところまで来ました。今日は、その確定と、既判力そのものを見ていきます。なぜ同じ争いを二度とやり直せないのか、その理由まで含めて確かめましょう。

判決はいつ確定するのか——116条

判決の確定の板(自己拘束力=言い渡した裁判所自身は撤回できない/それでも当事者には上訴という手段が残る/上訴できなくなったとき=確定) 図:判決の確定の板

  • 自己拘束力=言い渡した裁判所自身は撤回できない
  • それでも当事者には上訴という手段が残る
  • 上訴できなくなったとき=確定

前回見た自己拘束力は、言い渡した裁判所自身が、その判決を勝手に書き換えられなくなる、という話でした。ただし、当事者の側にはまだ手段が残っています。上訴です。控訴や上告によって、上の裁判所に判断をやり直させることができます。確定というのは、その上訴という手段が使えなくなったとき、ということですか。ここが自己拘束力との違いです。自己拘束力は裁判所自身が縛られる話、確定は当事者が争う手段を失う話。この2つは別の出来事です。

条文民事訴訟法116条1項

民事訴訟法116条1項(判決の確定時期) 判決は、控訴若しくは上告(第三百二十七条第一項(第三百八十条第二項において準用する場合を含む。)の上告を除く。)の提起、第三百十八条第一項の申立て又は第三百五十七条(第三百六十七条第二項において準用する場合を含む。)、第三百七十八条第一項若しくは第三百八十一条の七第一項の規定による異議の申立てについて定めた期間の満了前には、確定しないものとする。

条文民事訴訟法116条2項

民事訴訟法116条2項(判決の確定の遮断) 2 判決の確定は、前項の期間内にした控訴の提起、同項の上告の提起又は同項の申立てにより、遮断される。

116条タイムラインの板(起算点=電子判決書の送達を受けた日/期間=そこから2週間は控訴できる/期間満了時に確定/期間内に控訴・上告があれば確定は遮断される・116条2項/上告審の判決は言渡しと同時に確定) 図:116条タイムラインの板

  • 起算点=電子判決書の送達を受けた日
  • 期間=そこから2週間は控訴できる
  • 期間満了時に確定
  • 期間内に控訴・上告があれば確定は遮断される・116条2項
  • 上告審の判決は言渡しと同時に確定

条文は長く見えますが、骨組みは単純です。控訴や上告ができる期間のあいだは、判決はまだ確定しません。その期間内に実際に控訴や上告がされれば、確定はそこでいったん止まります。具体的に、時間の流れで追ってみましょう。前回、上訴の期間は電子判決書の送達を受けた日から数えると確認しました。Aさんの事案なら、第一審の電子判決書がAさんに送達された日が起算点です。そこから2週間、控訴できる状態が続きます。期間が満了した、まさにその瞬間に、判決は確定します。逆に、その期間内にAさんが実際に控訴を提起すれば、確定はそこで止まります。これが116条2項の確定遮断です。もし上告審まで争って、上告審が判決を言い渡したとすれば、話が変わります。上告審の判決には、それ以上争う上訴の手段がありません。だから、期間の経過を待つまでもなく、言渡しと同時に確定します。

確定判決に生まれる3つの効力

確定判決の3つの効力の比較表(訴えの種類×効力/給付の訴え・認容確定→執行力=強制執行できる資格/形成の訴え・認容確定→形成力=新しい法律関係を作る/確認・給付・形成いずれも・認容棄却却下いずれも確定すれば→既判力/給付判決でも棄却なら執行力は生まれない) 図:確定判決の3つの効力の比較表

  • 訴えの種類×効力
  • 給付の訴え・認容確定→執行力=強制執行できる資格
  • 形成の訴え・認容確定→形成力=新しい法律関係を作る
  • 確認・給付・形成いずれも・認容棄却却下いずれも確定すれば→既判力
  • 給付判決でも棄却なら執行力は生まれない

判決が確定すると力を持ちますが、その力の種類は、訴えの内容と結果によって変わります。ここは表で整理すると見分けやすくなります。勝てば全部そろって手に入る、というものではないんですか。違います。給付の訴え、つまりお金を払えとか物を渡せという訴えで、認容されて確定すると、強制執行できる資格である執行力が生まれます。形成の訴え、離婚や株主総会決議の取消しのような訴えで、認容されて確定すると、新しい法律関係を作り出す形成力が生まれます。結果が棄却なら、生まれません。例えば、貸したお金を返せという給付の訴えを起こしても、証拠不十分で棄却され確定してしまえば、そこから強制執行できる資格は一切生まれません。執行力は、給付の訴えという入れ物と、認容という結果、この両方がそろって初めて出てくるものです。ところが既判力だけは違います。認容でも棄却でも、訴えそのものが却下された場合でも、判決が確定しさえすれば、必ず生まれます。どの判決も、裁判所が何かについて最終的な判断を示したものだからです。ただし、却下の判決で動かせなくなるのは、訴訟要件が欠けていたという判断だけです。請求の中身は見ていないので、欠けていた要件を整えれば、訴え直すことはできます。

Aさんの訴えは、賃借権があることの確認を求める確認の訴えで、結果は敗訴でした。だから執行力も形成力も生まれません。それでも、判決が確定した以上、既判力だけは生まれています。Aさんの再訴が問題になるのは、まさにこの既判力のせいです。執行力や形成力の中身は、また別の回で扱います。

既判力とは何か

既判力の意義の板(定義=確定した判断の中身を、後の裁判で当事者も裁判所も争い直せなくする拘束力/前訴=既判力が生じた訴訟/後訴=それと関係する後の訴訟/既判力は後訴が起こされて初めて働く) 図:既判力の意義の板

  • 定義=確定した判断の中身を、後の裁判で当事者も裁判所も争い直せなくする拘束力
  • 前訴=既判力が生じた訴訟
  • 後訴=それと関係する後の訴訟
  • 既判力は後訴が起こされて初めて働く

既判力とは、確定した判断の中身について、当事者も裁判所も、もう争い直せなくする拘束力のことです。これは、判断の中身が客観的に正しいと確定する力ではありません。正しいかどうかを、もう争えなくする力です。例えば、後訴の裁判官が、心の中では前訴の判断はおかしかったのではないかと思ったとします。それでも、その裁判官は前訴の判断に従わなければなりません。既判力は、中身の正しさを保証する力ではなく、中身の当否を蒸し返させない力だからです。ここで2つの言葉を導入します。既判力が生まれた最初の訴訟を、前訴と呼びます。それと関係する、あとの訴訟は、後訴と呼びます。Aさんの最初の敗訴訴訟が前訴で、もう一度起こそうとしている訴えが後訴です。

前訴だけでも、既判力は意味を持つんですか。持ちません。既判力は、後訴が起こされて初めて働きます。前訴だけで終わっていれば、既判力が問題になる場面自体がありません。Aさんが再訴を思い立ったからこそ、既判力が表に出てきたんです。

なぜ既判力に拘束されるのか——2つの理由

正当化根拠2本立ての板(制度的効力=既判力が無ければ同じ争いが際限なく蒸し返され紛争解決という制度目的が果たせない/手続保障・自己責任=対等に争う機会を保障された以上不利な結果も自分で引き受ける/現在は二本立てで説明する立場が多数) 図:正当化根拠2本立ての板

  • 制度的効力=既判力が無ければ同じ争いが際限なく蒸し返され紛争解決という制度目的が果たせない
  • 手続保障・自己責任=対等に争う機会を保障された以上不利な結果も自分で引き受ける
  • 現在は二本立てで説明する立場が多数

ここまでは、既判力が何かという話でした。ここからは、なぜそれほど強く拘束するのか、という理由です。理由を「そういう決まりだから」で片づけないのが、今日いちばんの軸です。理由は大きく2つあります。1つは、裁判制度そのものに重点を置く理由です。既判力が無ければ、同じ当事者間で同じ争いが何度でも蒸し返され、紛争を解決するという訴訟制度の役割そのものが果たせなくなります。Aさんの事案で言えば、負けるたびに同じ訴えを起こし直せるなら、Bさんは何度勝っても土地を安心して使えません。しかも、どこかの裁判所が前と逆の判断をすれば、同じ賃借権について正反対の判決が2つ並んでしまいます。もしこの理由だけで説明したら、何が足りないでしょうか。

制度の都合ばかりで、負けた本人がどう感じるかが、置き去りになっている気がします。具体的に考えてみましょう。前訴で、主張の機会をまったく与えられなかった当事者が、それでも同じように既判力で縛られるとしたら、どうなるでしょうか。そこで、もう1つの理由が重視されるようになりました。当事者側に重点を置く理由です。前訴で、対等に主張し立証する機会をきちんと保障された以上、結果が自分に不利でも、それは自分で引き受けるべきだ、という考え方です。裏を返せば、主張の機会が保障されていたからこそ、結果を引き受けさせても正当化できる、という理屈です。会議に置き換えると分かりやすくなります。双方が意見を述べ尽くす機会を保障されたうえで結論が出た会議で、あとになって「あのとき言いそびれた反論がある」と言い出しても、その場に立ち返って会議をやり直すことは認められません。対等に主張する機会があった以上、出た結論は引き受けるしかない、という発想です。

Aさんにも、その機会はあったんでしょうか。ありました。Aさんは前訴で、賃借権があると主張し、証拠を出すことができました。だから、負けた結果も、Aさんが自分の責任として引き受けるべきものになります。かつては制度の理由だけで説明されていましたが、今はこの2つを組み合わせて説明する立場が多数です。この組み合わせは、この先の細かい線引きすべての答えの出どころになります。例えば、なぜ最後に主張できた時点が基準になるのか、なぜある事項には既判力が及ばないのか。こうした問いの答えは、すべてこの2つの理由から出てきます。

職権調査事項の板(既判力の有無は当事者が主張しなくても裁判所が自ら調べる/理由=紛争を一回で終わらせるという制度目的にかかわる事柄だから/関連=訴えの利益の回で見た「誰が調査を始めるか」という軸) 図:職権調査事項の板

  • 既判力の有無は当事者が主張しなくても裁判所が自ら調べる
  • 理由=紛争を一回で終わらせるという制度目的にかかわる事柄だから
  • 関連=訴えの利益の回で見た「誰が調査を始めるか」という軸

もう一点、既判力があるかどうかは、当事者が言い出さなくても、裁判所が自分から気づいて調べます。これを職権調査事項と呼びます。訴えの利益の回で見た、誰が調査を始めるか、という軸の話です。例えば、Bさんが前訴の確定判決の存在をうっかり主張し忘れたとします。それでも、既判力は当事者の主張の巧拙で結論が左右されてよいものではありません。紛争を一回で終わらせるという制度目的にかかわる事柄だからこそ、裁判所が自分から前訴の存在に気づいて、取り上げるようになっています。

既判力はどう働くのか——消極的作用・積極的作用・遮断効

作用の仕方の板(消極的作用=前訴の判断と矛盾する主張は後訴で排斥される/積極的作用=後訴裁判所は前訴の判断を前提に審理する/遮断効=当事者の側から見た同じ現象の呼び方) 図:作用の仕方の板

  • 消極的作用=前訴の判断と矛盾する主張は後訴で排斥される
  • 積極的作用=後訴裁判所は前訴の判断を前提に審理する
  • 遮断効=当事者の側から見た同じ現象の呼び方

既判力が実際にどう働くかを見ていきます。まず、消極的作用です。前訴の判断と矛盾・抵触する主張は、後訴で排斥されます。この消極的作用からは、もう1つ、積極的作用が導かれます。後訴の裁判所は、前訴の判断を前提として審理・判決しなければなりません。Aさんの再訴なら、裁判所は「賃借権は無い」という前訴の判断を前提に、また同じ請求棄却の判決を出すことになります。この現象を当事者の側から見た呼び方が遮断効です。ポイントは、前訴で実際に出した主張だけでなく、前訴の中で出しておくべきだった主張まで封じられることです。例えば、Aさんが前訴で出し忘れていた賃貸借の契約書を持ち出して、今度こそ賃借権があると言おうとしても、それは許されません。前訴で出す機会が保障されていた以上、出さなかった結果も自分の責任になる。さっきの2つめの理由が、ここで効いてきます。

条文民事訴訟法114条1項

民事訴訟法114条1項(既判力の範囲) 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。

既判力の範囲の板(114条1項=確定判決は主文に包含するものに限り既判力を有する/既判力は原則として訴訟物についての判断に生じる/どこまで細かく及ぶかの線引きは時的・客観的・主観的の3つの軸で決まる=次回以降) 図:既判力の範囲の板

  • 114条1項=確定判決は主文に包含するものに限り既判力を有する
  • 既判力は原則として訴訟物についての判断に生じる
  • どこまで細かく及ぶかの線引きは時的・客観的・主観的の3つの軸で決まる=次回以降

既判力は、原則として判決の主文、つまり訴訟物についての判断に生じます。どこまで細かく及ぶかという線引きは、また別の回で扱います。前回の内容を思い出してください。判決が確定する前に、既判力は生じるでしょうか?生じません。前回見たとおり、言い渡しただけの段階ではまだ確定していないので、既判力もまだ問題になりません。判決が確定して、初めて既判力が生まれるんでしたね。

同一関係・先決関係・矛盾関係——3つのパターンで見分ける

同一関係の関係図(A=賃借権確認訴訟で敗訴・確定/Aが同じ土地の賃借権確認をもう一度求める/後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と同じ) 図:同一関係の関係図

  • A=賃借権確認訴訟で敗訴・確定
  • Aが同じ土地の賃借権確認をもう一度求める
  • 後訴の訴訟物が前訴の訴訟物と同じ

既判力が働く場面は、3つのパターンに整理できます。1つめは同一関係です。後訴の訴訟物が、前訴の訴訟物とまったく同じ場合です。前訴と後訴、どちらも「賃借権があるかどうか」が訴訟物で、同じ訴訟物を争っています。前訴で実際に主張したことも、主張しておくべきだったのに出さなかったことも、まとめて封じられます。後訴の裁判所は前訴の判断をそのまま前提にするので、結論はまた棄却になります。

先決関係の関係図(A=所有権確認訴訟で勝訴・確定/Aがその所有権を根拠にBへ土地の明渡しを求める/前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提になる) 図:先決関係の関係図

  • A=所有権確認訴訟で勝訴・確定
  • Aがその所有権を根拠にBへ土地の明渡しを求める
  • 前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提になる

2つめは先決関係です。前訴の訴訟物が、後訴の訴訟物の前提になっている場合です。今度は別の場面を考えます。Aさんが同じ土地について、Bさんを相手に所有権の確認を求める訴えを起こし、勝訴して確定したとします。そのうえで、Aさんがその所有権を根拠に、Bさんへ土地の明渡しを求めたとします。この明渡請求の訴訟物は「明渡請求権があるか」で、所有権確認訴訟の訴訟物とは違います。ただ、明渡しが認められるかどうかは、Aさんに所有権があるかどうかにかかっています。だから、Bさんは明渡請求の裁判で「実は自分が所有者だ」と蒸し返すことはできません。所有権確認訴訟の既判力によって、その主張は遮断されます。Bさんは前訴で、所有者は自分だと主張し、証拠を出す機会を与えられていました。それに、明渡しの裁判で所有権を争い直せるなら、所有権確認の判決は何の決着にもならず、紛争は一回で終わりません。さっきの2つの理由が、ここでもそのまま働いています。裁判所は、Aさんに所有権があることを前提に、明渡しに固有の争点だけを審理します。

例えば、Bさんが実際にその土地を占有しているかどうか、あるいは所有権とは別に、占有を正当化できる権原がBさんに新たにあるかどうか、といった点です。所有権の有無そのものはもう争えませんが、明渡請求を認めるかどうかを決める、それ以外の争点は残っていて、そこはあらためて審理されます。

矛盾関係の関係図(同じA=所有権確認訴訟で勝訴・確定/敗訴したBが今度は自分こそ所有者だと確認を求めて訴え返す/訴訟物は違うが確定した判断と両立しない主張) 図:矛盾関係の関係図

  • 同じA=所有権確認訴訟で勝訴・確定
  • 敗訴したBが今度は自分こそ所有者だと確認を求めて訴え返す
  • 訴訟物は違うが確定した判断と両立しない主張

3つめは矛盾関係です。同じ所有権確認訴訟で考えます。Aさんが勝訴して確定した後、今度は敗訴したBさんが、同じ土地について、自分こそが所有者だと確認を求めて訴えてきたとします。訴訟物は同一でも先決問題でもありません。それでも、1つの土地を、AさんとBさんがそれぞれ単独で丸ごと所有している、ということはありえません。つまり、「Bさんが所有者だ」という主張は、確定した「Aさんが所有者だ」という判断と正面からぶつかります。訴訟物の形を変えれば同じ争いを持ち込める、というのでは、紛争を一回で終わらせることができません。だから、Bさんの所有権の主張は、前訴で実際にしたものも、しないままにしたものも、既判力によって遮断されます。

見た目の場面は違っても、根っこは全部同じです。ここで一度、3つの型を表にして並べておきましょう。

3類型の見分け方の比較表(同一関係=訴訟物が前訴と同じ/遮断される主張=前訴で出した・出すべきだった主張全部/後訴で審理される中身=前訴の後に生じた新しい事実だけ・無ければ前訴の結論を繰り返す/先決関係=前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提/遮断される主張=前訴の訴訟物についての蒸し返し/後訴で審理される中身=前提を除いた明渡し等に固有の争点だけ/矛盾関係=前訴の訴訟物と両立しない別の訴訟物/遮断される主張=前訴の判断とぶつかる主張(出したか出さなかったかを問わない)/後訴で審理される中身=前訴の判断とぶつからない主張だけ・実際にはほとんど残らない) 図:3類型の見分け方の比較表

  • 同一関係=訴訟物が前訴と同じ
  • 遮断される主張=前訴で出した・出すべきだった主張全部
  • 後訴で審理される中身=前訴の後に生じた新しい事実だけ・無ければ前訴の結論を繰り返す
  • 先決関係=前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の前提
  • 遮断される主張=前訴の訴訟物についての蒸し返し
  • 後訴で審理される中身=前提を除いた明渡し等に固有の争点だけ
  • 矛盾関係=前訴の訴訟物と両立しない別の訴訟物
  • 遮断される主張=前訴の判断とぶつかる主張(出したか出さなかったかを問わない)
  • 後訴で審理される中身=前訴の判断とぶつからない主張だけ・実際にはほとんど残らない

こう並べると、違いがはっきりします。同一関係は、訴訟物そのものが同じなので、後訴で審理されるのは、前訴の後に起きた新しい事実、例えば改めて借りる契約を結んだ、といったものだけです。それが無ければ、前訴の結論をそのまま繰り返すことになります。先決関係は、訴訟物こそ違いますが、前訴の判断を前提にしたうえで、それ以外の固有の争点だけが審理されます。矛盾関係は、訴訟物も別、前提でもないけれど、前訴の判断とぶつかる主張は封じられます。後訴で主張できるのは、前訴の判断とぶつからないものだけです。そのため、同一関係と同じく、後訴で新しく審理される中身はほとんど残りません。

ただし、共通しているのは、どの型でも、前訴で確定した判断そのものを蒸し返す主張だけは、必ず封じられるという点です。

今日の地図(保存版)

今日の地図の板(判決は上訴が尽きたとき確定する=116条/確定判決の3つの効力=執行力・形成力・既判力/既判力は2つの理由に支えられる=制度目的・自己責任/既判力は同一・先決・矛盾の3類型で働く) 図:今日の地図の板

  • 判決は上訴が尽きたとき確定する=116条
  • 確定判決の3つの効力=執行力・形成力・既判力
  • 既判力は2つの理由に支えられる=制度目的・自己責任
  • 既判力は同一・先決・矛盾の3類型で働く

今日の4つの軸を、もう一度つなげておきます。判決は、上訴という取り消し手段が尽きたときに確定します。確定した判決には、訴えの種類に応じて執行力や形成力が生まれますが、既判力だけはすべての確定判決に共通して生まれます。既判力は、紛争を一回で終わらせるという制度目的と、対等に争う機会を保障された以上結果を引き受けるという自己責任、この2つの理由に支えられていて、同一関係・先決関係・矛盾関係という3つの場面で働きます。冒頭のAさんの再訴も、これで説明がつきました。前の裁判で決着した賃借権の判断は、もう動かせないんですね。Aさんの再訴は同一関係にあたり、既判力によって蒸し返しが封じられます。ただし、既判力にも限界があります。いつの時点の判断が動かせなくなるのか、どんな事項に既判力が生じるのか、誰にその効力が及ぶのか。この3つの軸で、既判力の範囲は区切られています。

今日の根拠論が、その3つの軸を読み解くときの土台になる、ということですね。

参照条文

  • 民事訴訟法116条1項
  • 民事訴訟法116条2項
  • 民事訴訟法114条1項

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