参加承継・引受承継と任意的当事者変更、第4章の全体地図
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第4章 複雑訴訟 #84/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
建物の一部を貸されたら——判決を取っても追い出せないのか
図:冒頭の関係図
- 原告A=土地の貸主・被告B=借地人で建物の所有者=前主
- AはBに建物を取り壊して土地を明け渡せと請求
- 訴訟の途中でBが建物の一部を第三者Cに賃貸しCが住み始める
- 問い=判決を取ってもCを退去させられないのか
前回は、訴訟の途中で被告が亡くなる場面を見ました。判決が出る前に、紛争の主体たる地位が第三者に移ったなら、判決の効力を及ぼすのではなく、動いている手続そのものを引き継がせる。これが訴訟承継です。相続や合併なら、法律上当然に相続人や存続会社が当事者になります。今日は、その続きです。賃貸や売買のように、当事者の行為で地位が移った場合を扱います。場面を用意します。Aさんは土地の貸主で、Bさんは、その土地を借りて建物を建てている人です。AさんはBさんに、賃貸借は終わったので、建物を取り壊して土地を明け渡してください、と訴えました。ところが、訴訟の途中で、Bさんが建物の一部をCさんに貸してしまいました。Cさんは、その部分に住み始めています。
Bさんは被告のままなんですよね。Bさんに勝つ判決を取っても、Cさんは、自分は関係ないと言って居座れませんか。そこが問題です。建物を取り壊すには、中に人がいてはできません。Bさんに対する判決だけでは、Cさんを退去させられないおそれがあります。かといって、Aさんが、Cさんを相手に、最初から訴え直すのも大変です。今日は、この問いに答えます。先に答えを言うと、Cさんを、この訴訟に入れる道があります。入れれば、Cさんも判決の対象になります。持ち帰ってほしいことは5つです。1つめ、当事者の行為で地位が移ったとき、承継人が自分から入る参加承継と、当事者が引き込む引受承継があり、その向きは、権利か義務かで固定されないこと。2つめ、参加承継と引受承継では、審理の原則が食い違うこと。3つめ、承継人は前の当事者の訴訟状態を原則として引き継ぐが、その限界があること。4つめ、法律に基づかない当事者の取換えである、任意的当事者変更。5つめ、第4章全体の地図です。
参加承継と引受承継——向きは固定しない
図:参加承継と引受承継の向きの表
- Aさん=原告・Bさん=被告=前主・Cさん=承継人
- 義務が移った場合=義務承継人C:Cが自分から入る=参加承継=51条前段(47条から49条を準用)
- Aが申し立てて引き込む=引受承継=50条1項
- 権利が移った場合=権利承継人C(AからCへ権利譲渡):Cが自分から入る=参加承継=49条1項
- 相手方Bが申し立てて引き込む=引受承継=51条後段(50条を準用)
相続や合併のような、ひとまとめの承継ではなく、建物の賃貸や売買、債務引受けのように、個別のものが移る場合を特定承継といいます。特定承継では、法律が当然に当事者を入れ替えてくれません。当事者の行為で承継が生じたあと、承継人を訴訟に入れる道が、2つ用意されています。1つは、承継人が自分から訴訟に入る道です。これを参加承継といいます。もう1つは、当事者が裁判所に申し立て、裁判所の決定で、承継人を訴訟に引き込む道です。こちらは引受承継です。条文の見出しの言葉で、訴訟引受ともいいます。冒頭の場面で見ます。Cさんが受け継いだのは、建物から退去する義務です。Cさんが自分から入るなら参加承継で、51条の前段です。Aさんが、Cさんを引き込むなら引受承継で、50条です。申立てをするのは、当事者のAさんです。
義務を引き受けたら引受承継、権利を譲り受けたら参加承継、と覚えればいいですか。違います。そこが、いちばんの落とし穴です。権利か義務かで、参加か引受けかが決まるのではありません。どちらが移った場合にも、承継人が自分から入る道と、当事者が引き込む道の、両方があります。権利が移った場面で確かめます。役割を少し変えて、AさんがBさんに対して持っていた権利を、訴訟の途中でCさんに譲ったとします。Cさんが自分から入るなら、参加承継で、49条です。相手方のBさんが、Cさんを引き込むなら、引受承継で、51条の後段です。覚え方は、これだけです。参加承継は、承継人の意思で入る。引受承継は、当事者の申立てで、裁判所が決定で入れる。移ったものが権利か義務かは、別の軸です。
図:49条から51条の条文板
- 条文の順序=49条=権利承継人の参加
- 50条=義務承継人への引受け
- 51条=それぞれの逆向きを準用
条文を、順に見ます。
条文民事訴訟法49条
民事訴訟法49条(権利承継人の訴訟参加) 第四十九条 訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けたことを主張する者が第四十七条第一項の規定により訴訟参加をしたときは、時効の完成猶予に関しては、当該訴訟の係属の初めに、裁判上の請求があったものとみなす。 2 前項に規定する場合には、その参加は、訴訟の係属の初めに遡って法律上の期間の遵守の効力を生ずる。
49条です。権利を譲り受けた人は、独立当事者参加、つまり、自分の請求を掲げて当事者になる、47条1項の形で入ります。ここで大事なのは、譲り受けた、ではなく、譲り受けたと主張する、と書かれていることです。参加の時点で、本当に譲り受けたかどうかが確定している必要はありません。主張すれば入れて、本当に承継したかどうかは、審理で決まります。
図:49条の効果の板
- 例=Aが時効の近い権利を訴え中に権利をCへ譲渡しCが後から参加
- 参加した日から数えると間に合わないおそれ
- 1項=時効の完成猶予は訴訟係属の初めに裁判上の請求があったものとみなす
- 2項=法律上の期間の遵守も初めに遡る
- 51条前段で義務承継人の参加にも準用
効果も大事です。Aさんが、時効が近づいた権利を訴えていたとします。その権利をCさんが譲り受けて、あとから参加したとき、参加した日から数えたのでは、間に合わないことがあります。そこで、時効の完成猶予については、訴訟が始まった初めに、裁判上の請求があったものとみなされます。1項です。期間を守ったかどうかも、初めに遡ります。2項です。この効果は、義務承継人が51条の前段で参加する場合にも準用されます。
条文民事訴訟法50条
民事訴訟法50条(義務承継人の訴訟引受け) 第五十条 訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。 2 裁判所は、前項の決定をする場合には、当事者及び第三者を審尋しなければならない。 3 第四十一条第一項及び第三項並びに前二条の規定は、第一項の規定により訴訟を引き受けさせる決定があった場合について準用する。
50条です。1項で、当事者の申立てによって、決定で、第三者に訴訟を引き受けさせます。申立人は、当事者です。冒頭なら、典型はAさんです。2項で、決定の前に、当事者と第三者の両方から言い分を聞きます。審尋です。3項は、あとで見ます。
条文民事訴訟法51条
民事訴訟法51条(義務承継人の訴訟参加及び権利承継人の訴訟引受け) 第五十一条 第四十七条から第四十九条までの規定は訴訟の係属中その訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したことを主張する第三者の訴訟参加について、前条の規定は訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けた場合について準用する。
51条が、逆向きを引き受けています。前半で、義務承継人の参加に、47条から49条を準用します。後半で、権利承継人の引受けに、50条を準用します。だから、表の4つのマスが、すべて埋まるのです。文言の違いだけ、1つ押さえておきます。参加のほうは、承継したことを主張する、で足ります。引受けのほうは、50条1項が、承継したとき、と書いています。参加は、本人が入りたいと言うのですから、主張で足ります。引受けは、嫌がるかもしれない第三者を引き込むので、裁判所が、当事者と第三者を審尋したうえで、決定で判断するのです。
図:冒頭事案への当てはめ板
- AのBへの請求=建物収去土地明渡し
- 建物の一部にCがいる
- Cへの判決がないと強制執行でCを退去させられない
- Cの側も占有が問題なのに訴訟の外
- 道1=Cが51条前段で参加
- 道2=Aが50条で引受けを申立て
冒頭の場面に戻ります。AさんがBさんに対して、建物を壊して土地を明け渡せ、と求めています。ところが、建物の一部にはCさんがいます。Aさんは、Cさんに対しても明渡しの判決を得ておかないと、建物の収去と土地明渡しの強制執行、つまり民事執行の段階で、Cさんを退去させられません。一方で、Cさんの側も、自分の占有が問題にされているのに、訴訟の外にいるのは落ち着きません。だから、Cさんが自分から参加する道も、Aさんが引き込む道も、どちらも意味を持ちます。
最高裁の判断——建物の一部を借りた人は承継人か
図:事案の板
- Aさん=土地の貸主・Bさん=借地人で建物所有者
- AはBに対し賃貸借終了を理由に建物収去と土地明渡しを請求
- 係属中にCがBから建物の一部を賃借し建物部分と敷地の占有を承継
- AがCへの訴訟引受けを申し立て原審が許した
- 最高裁は上告を棄却=引受承継の事案
では、Cさんのような人は、本当に承継人といえるのでしょうか。建物の一部を借りただけです。この点を判断した、最高裁の事件があります。冒頭の場面は、この事件と同じ骨格です。事案を確認します。土地の貸主が、賃貸借の終了を理由に、借地人に、地上建物の収去と土地の明渡しを求めていました。その訴訟の途中で、借地人から、建物の一部を借りて、その部分と敷地の占有を受け継いだ人が出てきました。貸主は、その人に訴訟を引き受けさせるよう申し立て、原審は、これを許しました。最高裁は、上告を棄却しました。判決文に出てくるのは、旧民訴の74条です。今の50条にあたります。読み替えて、聞いてください。判決が言っていることは、3つに分かれます。1つめ、Cさんのような人は承継人にあたるか。2つめ、貸主が既存の訴訟を使おうとすることは正当か。3つめ、貸主の請求の根拠が違っても同じか、です。
判例最判昭41・3・22 民集20巻3号484頁
最高裁判決(土地賃貸借の終了を理由とする建物収去土地明渡訴訟の係属中に、建物の一部の賃借人が占有を承継した事件・その1) 賃貸人が、土地賃貸借契約の終了を理由に、賃借人に対して地上建物の収去、土地の明渡を求める訴訟が係属中に、土地賃借人からその所有の前記建物の一部を賃借し、これに基づき、当該建物部分および建物敷地の占有を承継した者は、民訴法七四条にいう「其ノ訴訟ノ目的タル債務ヲ承継シタル」者に該当すると解するのが相当である。けだし、土地賃借人が契約の終了に基づいて土地賃貸人に対して負担する地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含するものであり、当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は、第三者が土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによつて、第三者の土地賃貸人に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとつて、右両者間に移行し、第三者は当該紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したものと解されるからである。
前半は、結論と理由です。建物の一部を借りて占有を受け継いだ人は、50条の、訴訟の目的である義務を承継した者にあたる。理由は、こうです。建物を収去する義務は、建物から立ち退く義務を含んでいる。その存否をめぐる争いのうち、退去の部分は、第三者が占有を受け継ぐことで、第三者と貸主の間の争いの形になって、移っていく。だから、第三者は、その争いの主体たる地位を、借地人から承継したのだ、という筋です。建物を壊すには、中の人が出ていなければなりません。だから、収去の義務の中に、退去の義務が含まれます。その部分の争いが、Cさんに移った、と見ているわけです。同じ判決の、離れた箇所も聞いてください。
判例最判昭41・3・22 民集20巻3号484頁
最高裁判決(同上・その2 貸主の側の要請について) 土地賃貸人が、第三者を相手どつて新たに訴訟を提起する代わりに、土地賃借人との間の既存の訴訟を第三者に承継させて、従前の訴訟資料を利用し、争いの実効的な解決を計ろうとする要請は、民訴法七四条の法意に鑑み、正当なものとしてこれを是認すべきである
こちらは、貸主の側の事情です。貸主が、第三者を相手に新しく訴えを起こすかわりに、既存の訴訟を第三者に引き継がせて、従前の訴訟資料を使い、争いの実効的な解決を図ろうとする。この要請は、正当だと言っています。
図:承継人の範囲の板
- 判例の言い方=紛争の主体たる地位の承継
- 該当の例=Bから建物の一部を借りて占有を承継したC
- 境界の外の例=Bから何も受け取らず自分の事情で同じ建物に入った者
- 決め手=退去の争いがBとAの間からCとAの間へ移ったか
ここから、承継人の範囲を考えます。判例の物差しは、紛争の主体たる地位を承継したか、です。既判力の回で出てきた、口頭弁論終結後の承継人の定義と、同じ言葉です。あちらは基準時のあと、今日は基準時の前、という違いだけです。輪郭を、2つの例で確かめます。Bさんから建物の一部を借りて、占有を受け継いだCさんは、承継人にあたります。では、Bさんから何も受け取らず、自分の事情で、同じ建物に入り込んだ人はどうでしょう。この物差しで考えると、Bさんの退去義務をめぐる争いが、その人に移ったとはいえません。決め手は、Aさんとの間の退去の争いが、Bさんから移ってきたといえるかどうか、です。3つめです。貸主のAさんがBさんに向けた請求は、契約が終わったから返せ、という債権的な請求です。Cさんとの間には契約がないので、Cさんに向けた請求は、所有者として出て行け、という物上の請求です。権利の性質が違っても、この理は左右されない、と判決は言っています。
学説には、従前の紛争から派生した紛争といえるか、そして従前の訴訟資料を使わせることが、当事者間の公平にかなうか、という観点で判断する考え方があります。判決の、従前の訴訟資料を利用する、という言葉と重なります。なお、判決は、引受けの事案についての判断です。参加承継の場合の審理の原則や、訴訟状態の承継の限界には、触れていません。それは、このあと別に整理します。
図:固有の防御方法の板
- 承継人が自分固有の防御方法を持つ例=CはBとは別にAから直接使用の許しをもらっている
- 固有の防御方法を持っていても承継人にはあたる
- 承継後に固有の防御方法を別に出せる=手続保障を害さない
- 既判力の回の整理と同じ
もう1つ、論文で狙われる点があります。承継人が、自分固有の防御方法を持っているとき、たとえば、自分はBさんとは別に、Aさんから直接、使用の許しをもらっている、という言い分があるとき、承継人にあたらなくなるのでしょうか。あたらなくなるなら、言い分がある人ほど引き込まれない、ということになります。そこなのです。既判力の回で見たのと同じ整理で、固有の防御方法を持っていても、承継人にはあたります。そのうえで、承継したあとに、その固有の防御方法を、別に出せるのです。だから、承継人の手続保障を害することにもなりません。
参加承継と引受承継の手続
図:参加承継と引受承継の比較表
- 誰が動く=参加は承継人C・引受けは当事者(典型はA)
- 形式=参加は独立当事者参加の形式(51条前段・49条は47条1項参加)・引受けは申立てと決定
- 裁判の形=参加は判決で審理・引受けは当事者と第三者を審尋して決定(50条2項)
- 前主の脱退=どちらも48条で可能(50条3項)
手続の違いを見る前に、確認です。独立当事者参加の回を、思い出してください。その申出は、どの方式でするのでしたか?書面でして、その書面は当事者の双方に送達されます。参加承継は、その形を借ります。参加承継から見ます。承継人は、独立当事者参加の形式で、当事者になります。旧当事者のBさんと争いがなければ、片面的参加、つまりAさんだけを相手にする参加でも構いません。独立当事者参加の回で見た形です。参加があれば、Bさんは、脱退できます。48条です。訴訟から抜けるのですが、取下げとは違い、判決の効力は、脱退したBさんにも及びます。及ばないとすると、Aさんが勝っても、Bさんとの間では決着がつかないまま残ってしまうからです。脱退には、相手方の承諾が要りました。引受承継は、Aさんが申し立てます。裁判所は、承継人のCさんと当事者を審尋して、決定で、引受けを許すかどうかを裁判します。50条の1項と2項です。
請求を立てる必要があるかどうかは、考え方が分かれます。ただ、Bさんに向けていた請求と同じ内容なら、引受けの際に、改めて請求を立てなくてよいと考えられています。50条3項に戻ります。引受けの決定があった場合、48条と49条、それから41条の第1項と第3項が準用されます。だから、引受けでも、Bさんは脱退できます。時効の完成猶予や期間の遵守も、参加承継と同じように、初めに遡ります。脱退も時効の扱いも、参加承継とそろえてあるわけです。41条のほうは、次で見ます。
審理原則の食い違い——40条か、39条と41条か
図:参加承継の図
- 参加承継=三面訴訟=A・B・Cが互いに向き合う
- 47条4項で40条1項から3項を準用=必要的共同訴訟の規律
- 40条=有利な行為だけ全員に(不利な行為は本人にも効かない)・相手方の行為は全員に・中断中止は全員に
手続の形が違えば、審理の原則も違います。ここが、論文でも短答でも問われるところです。参加承継は、独立当事者参加の形式をとります。だから、47条の4項によって、40条の1項から3項が準用されます。必要的共同訴訟の原理が働くのです。独立当事者参加の回で見たとおり、意味づけは、共同ではなく、対立しあう者を牽制する、という働きでした。40条の3つの規律は、有利な行為だけが全員に及び、不利な行為は本人にも効かない、相手方の行為は全員に及ぶ、中断や中止は全員に及ぶ、というものでした。
図:引受承継の図
- 引受承継=AからBとAからCの二本の請求=39条の通常共同訴訟にとどまる
- 50条3項で41条1項3項を準用=弁論の分離と一部判決の禁止・控訴審の併合
- 結論の統一までは強制しない
引受承継は、違います。参加承継では、Cさんが、自分の請求を掲げて入ってきます。だから、3人が向き合う形になります。引受承継では、Aさんが、Bさんへの請求の横に、Cさんへの請求を足すだけです。原告1人が、被告2人を別々に訴えているのと同じ形です。だから、構造も審理の原則も、通常共同訴訟の39条、つまり、それぞれ独立して進む、にとどまります。そこで、50条3項です。同時審判申出共同訴訟の41条から、第1項と第3項が準用されます。弁論の分離と一部判決が禁止されて、控訴審では併合して審理されます。準用なので、引受けの決定があれば、41条1項と3項の効果が及びます。その限りで、審理の統一が図られます。ただし、結論の統一までは、強制されません。同時審判の回で見たとおりです。整理します。参加承継は40条の規律、引受承継は39条で、50条3項により41条が準用される。この食い違いを、押さえてください。評価も1つ。参加の形が違うだけで、一方には強い合一確定が働き、他方には働かない。これは不自然だ、解釈や運用で両者を近づける必要がある、という指摘があります。確認です。参加承継と引受承継で、審理原則はどう違うでしょうか?
参加承継は、40条の規律が働きます。引受承継は、39条にとどまって、50条3項で41条が準用されます。
訴訟状態の承継はどこまで及ぶか
図:訴訟状態の承継の板
- 原則=承継人は前主の訴訟追行で形成された訴訟状態を引き継ぐ=弁論・証拠調べの結果・自白・時機に後れた攻撃防御方法の制限
- 理由=承継人の利益が前主の追行で代わりに守られている=手続保障の代替
- 限界=承継人固有の攻撃防御方法は出せる・代替されていない場合は限定
本編の最後に、承継人が入ったあと、それまでの訴訟の成果をどこまで引き継ぐのか、を見ます。論文で問われる、骨格の部分です。原則から言います。承継人は、前の当事者の訴訟追行で作られた、訴訟状態を、全面的に引き継ぎます。それまでの弁論や証拠調べの結果を含みます。前の当事者の自白に反する主張や、時機に後れた攻撃防御方法は、原則としてできません。自白の撤回は、自白の回で、時機に後れた攻撃防御方法は、157条の回で、見たものです。例で見ます。Bさんが、Aさんが土地の所有者であることを、自白していたとします。あとからCさんが承継人になった場合、原則として、Cさんは、その自白に拘束されます。争い直せません。
だから、この原則には理由が要ります。学説には、訴訟状態を引き継がせてよい実質的な根拠は、承継人の利益が、前の当事者によって代表されていた、つまり、前の当事者の訴訟追行によって、承継人の手続保障が代わりに満たされていたことにある、と説明するものがあります。そうだとすれば、答えは決まります。代わりに満たされていない部分まで、引き継がせる理由はありません。
図:限界の板
- 限界1=承継人固有の攻撃防御方法=制約されず当然に出せる
- 限界2=前主の訴訟追行が承継人の利益を十分に反映していない場合=馴れ合い・詐害的な処分的訴訟行為が信義則(2条)に反するような場合=前主の追行が承継人の利益を映していないなら承継人自身の立場で主張・立証させる余地
- 答案の三段=原則は拘束・理由は手続保障の代替・例外は代替されていない場合に帰属効を否定
限界は、2つあります。1つめは、承継人固有の攻撃防御方法です。さきほどの、自分はAさんから直接、使用の許しをもらっている、という言い分は、Bさんの追行とは関係がありません。制約されず、当然に出せます。2つめは、前の当事者の追行が、承継人の利益を十分に反映していない場合です。たとえば、BさんとAさんが示し合わせて、承継人のCさんを不利にするために、自白をした。そういう、馴れ合い的、あるいは詐害的な処分的訴訟行為、つまり自白のように訴訟の結果を左右する行為が、信義則、2条に反するような場合です。このときは、Cさんに、自分の立場から、主張や立証をする機会を与えるべきで、さっきの自白を争うことも認める余地がある、と考えられています。答案の型は、3段です。1つめ、原則として、訴訟状態に拘束される。2つめ、理由は、前の当事者の追行で、手続保障が代わりに満たされているから。3つめ、代わりに満たされていない場合には、拘束を否定する。この3段を、事案に当てはめます。ここは、学説の整理です。最高裁の判断としてまとまっているわけではありません。
コラム——任意的当事者変更
図:任意的当事者変更の板
- 役割の言い直し=このコラムだけ別設例=Aは売買代金をB個人に請求して提訴したが実際の買主はBが代表を務める会社C
- 当事者の変更=法定=当然承継・参加承継・引受承継
- 法律に基づかない=任意的当事者変更
- 性質=新訴の提起と旧訴の取下げの複合行為
- 旧訴状の補正利用・印紙の流用
ここから、コラムです。この節だけ、別の小さな場面で、役割を言い直します。Aさんは、品物を売ったのに代金を払ってもらえないので、買主はBさん個人だと思って、Bさんを訴えました。ところが、実際に買ったのは、Bさんが代表者を務める会社の、Cさんでした。当事者が入れ替わる方法には、法律に定めがあるものがあります。当然承継、参加承継、引受承継です。これに対して、法律に基づかずに、当事者を取り換えるものがあります。これが、任意的当事者変更です。訴えの変更の回で、請求ではなく当事者そのものを取り換える話だ、と言ったものの、中身です。
確定した当事者と、現に訴訟に出ている人が別人の場合の、処理です。名前の書き間違いなど、表示の訂正で足りる場合とは別です。性質は、表示の訂正で足りないとき、新訴の提起と旧訴の取下げの、複合行為と理解されます。Cさんに対する新しい訴えを起こして、Bさんに対する古い訴えを取り下げる、ということです。法律に専用の手続がないので、すでにある2つの行為を組み合わせて説明するわけです。ただ、これでは、Aさんは、また最初からやり直しです。そこで、旧訴訟の成果を使う工夫があります。旧い訴状を補正して、Cさんとの訴訟に使う。すでに納めた印紙を、流用する。こうして、取換えの手間を減らします。
図:主観的追加的併合の整理板
- 明文がある形=追加的選定・参加承継・共同訴訟参加(参加型)
- 訴訟引受(引込み型)
- 明文がない形=原告による被告の追加=判例は認めない=別訴を提起して弁論の併合を促せば足り、新訴は当然には旧訴訟に併合されない=併合は裁判所の判断
広い意味では、もう1つ、この仲間に入れられるものがあります。当事者を取り換えるのではなく、足すほうです。すでに当事者になっている人が、第三者を訴訟に引き込んで、その第三者への関連請求を併合して審理してもらう。これを主観的追加的併合といいます。参加承継や引受承継も、実はこの形の一種で、法律に定めがあります。問題は、定めのない形です。ここで、最高裁の判断を、思い出してください。同時審判の回で見た、あの事件です。明文のない、原告による被告の追加は、認められない。別に訴えを起こし、併合するかどうかは裁判所の判断に任せる、という結論でした。学説には、批判が強くあります。誤解しないでください。明文のある参加承継、引受承継、共同訴訟参加、追加的選定は、許される形です。否定されたのは、明文のない、原告による被告の追加のほうです。
第4章の全体地図
図:第4章の全体地図
- 4つの道:1請求を増やす=客観的併合136条・訴えの変更143条・中間確認の訴え145条・反訴146条
- 2当事者が複数=共同訴訟38条から・39条独立の原則・40条必要的共同訴訟・41条同時審判申出
- 3後から入る=補助参加42条・訴訟告知53条(当事者にならない)・独立当事者参加47条・共同訴訟参加52条(当事者になる)
- 4途中で入れ替わる=当然承継(124条以下が手がかり)・参加承継49条51条前段・引受承継50条51条後段・任意的当事者変更
最後に、第4章の全体を、1枚の地図にします。複雑訴訟、つまり1人対1人ではない訴訟と、1つの請求ではない訴訟の、道は4つです。1つめは、請求を増やす道具です。当事者は1人対1人のままで、請求が複数になります。はじめから複数の請求をまとめて立てる、訴えの客観的併合の136条。途中で請求を変える、訴えの変更の143条。理由の中の判断にも既判力を及ぼすための、中間確認の訴えの145条。被告の側から原告に請求を向ける、反訴の146条です。2つめは、はじめから当事者が複数いる訴訟です。共同訴訟で、38条から始まります。審理の規律は、それぞれが別々に訴訟を進める、39条の独立の原則。全員の結論を1つにそろえる、40条の必要的共同訴訟。原告の申出で、弁論と裁判を分けずに進めさせる、41条の同時審判申出共同訴訟でした。3つめは、後から入ってくる道です。当事者にならない参加と、なる参加に分かれます。自分の請求は掲げず、当事者の一方を勝たせるために加わる、補助参加の42条。参加しなかった人にも、その効力を及ぼす道になる、訴訟告知の53条。この2つは、当事者になりません。3人が互いに向き合う三面の訴訟になる、独立当事者参加の47条。当事者として並ぶ形で加わる、共同訴訟参加の52条。この2つは、当事者になります。
図:途中で入れ替わる道の板
- 法律上当然に入れ替わる=当然承継(124条以下が手がかり)
- 承継人が入る=参加承継49条・51条前段
- 当事者が引き込む=引受承継50条・51条後段
- 法律に基づかない=任意的当事者変更
4つめが、今日と前回の、途中で入れ替わる道です。法律上当然に入れ替わる当然承継。まとめた規定はなく、124条以下の中断と受継が手がかりでした。承継人が入る参加承継、49条と51条の前段。当事者が引き込む引受承継、50条と51条の後段。そして、法律に基づかない任意的当事者変更です。
図:補助線の板
- 当事者に加わる
- 代わるの軸×本人の意思
- 当事者の申立て
- 法律上当然の軸=加わる:本人の意思=独立当事者参加・共同訴訟参加
- 代わる:本人の意思=参加承継・当事者の申立て=引受承継・法律上当然=当然承継
もう1本、補助線を引きます。当事者に加わるのか、代わるのか。そして、本人の意思か、当事者の申立てか、法律上当然か。この2つの軸で並べると、参加承継は、代わる、かつ本人の意思。引受承継は、代わる、かつ当事者の申立て。当然承継は、代わる、かつ法律上当然、と位置が決まります。加わっても、もとの当事者は残ります。代わるなら、もとの当事者は抜けていく側です。参加承継や引受承継では、48条の脱退という形で、抜けることができます。ここで区別できていれば、4つの道は混ざりません。ここまでで、第一審の中で、誰がどのように当事者になるのかが、出そろいました。次の章では、判決が出たあとの争い方、上訴と再審に進みます。
今日の地図(保存版)
図:総括の板
- 冒頭の答え=CはBから受け継いだ退去義務の承継人=Cが51条前段で自分から参加するかAが50条で引受けを申し立てて引き込みどちらでも判決の対象になる
- 参加承継=40条の規律・引受承継=39条+50条3項で41条準用
- 訴訟状態は原則拘束・手続保障が代替されていない場合は限定・固有の防御方法は出せる
- 任意的当事者変更=新訴提起と旧訴取下げの複合行為
- 第4章の4つの道
まとめます。冒頭のCさんに戻ります。Bさんから建物の一部を借りて、占有を受け継いだCさんは、最高裁の判断によれば、紛争の主体たる地位を承継した人です。Cさんが51条の前段で自分から参加しても、Aさんが50条で引受けを申し立てて引き込んでも、Cさんは訴訟に入り、判決の対象になります。5つ、振り返ります。1つめ、参加承継は承継人の意思で入る、引受承継は当事者の申立てで決定により入れる。権利承継にも義務承継にも、両方の道があります。49条は、時効の完成猶予と期間の遵守を、初めに遡らせます。2つめ、審理の原則は、参加承継が40条の規律、引受承継は39条で、50条3項により41条が準用されます。3つめ、承継人は、訴訟状態を原則として引き継ぎます。ただし、手続保障が代わりに満たされていない場合には、限りがあります。固有の防御方法は、承継人にあたる人でも別に出せます。4つめ、任意的当事者変更は、法律に基づかない当事者の取換えで、新訴の提起と旧訴の取下げの複合行為です。明文のない、原告による被告の追加を、最高裁は認めていません。5つめ、第4章は、請求を増やす、当事者が複数、後から入る、途中で入れ替わる、の4つの道で整理できます。
参照条文
- 民事訴訟法49条
- 民事訴訟法50条
- 民事訴訟法51条